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【発明の名称】 電力ケーブルの部分放電測定方法
【発明者】 【氏名】角田 美伯

【氏名】美納 智次

【氏名】吉田 健吾

【要約】 【課題】検出感度を向上させる。

【解決手段】パルス印加用電極からパルスを印加し、この結果検出用電極で検出する信号電圧を、スペクトラムアナライザ等、信号の圧縮動作をする回路により処理する。線形動作をする回路により処理した場合に比べて、電荷の変化に対する応答の変化が小さくなる。この為、電荷が小さい場合にも雑音の影響を受けにくくなり、検出感度の向上を図れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電力ケーブルの周囲を覆う絶縁層の外周面に互いに間隔をあけて、それぞれ1対ずつのパルス印加用電極と検出用電極とを添着すると共に、このうちの1対のパルス印加用電極にパルスを印加する事に伴って1対の検出用電極同士の間に発生する電位差を測定する電力ケーブルの部分放電測定方法に於いて、上記1対の検出用電極同士の間に発生する電位差を、圧縮動作を行なう回路で処理する事を特徴とする電力ケーブルの部分放電測定方法。
【請求項2】 部分放電を測定する部位が、1対の電力ケーブルの接続部であり、この接続部は、互いに接続した1対の電力ケーブルの導体の周囲を覆う絶縁層と、絶縁筒を介して軸方向に亙り互いに直列に配置されてこの絶縁層の外周面を覆う金属製のカバーと、このカバーの外周面を覆う絶縁材製の防食層とを備え、1対ずつのパルス印加用電極と検出用電極とは、上記防食層の外周面の一部でそれぞれ上記絶縁筒を挟んだ部分に添着されており、圧縮動作を行なう回路は、同調増幅回路である、請求項1に記載した電力ケーブルの部分放電測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電力ケーブル若しくはその接続部の内部に、送電性能に影響を及ぼす様な空隙、異物等が存在するか否かを知る為に行なう電力ケーブルの部分放電測定方法の改良に関し、より高感度の(測定可能範囲が広い)測定を行なえる様にすべく発明したものである。
【0002】
【従来の技術】電力ケーブル若しくはその接続部の内部に空隙や異物等が存在すると、その大きさ等によっては絶縁性能が劣化する等、送電性能に悪影響を及ぼす可能性がある。この様な空隙や異物等の存在を知る為の非破壊検査方法として、電力ケーブルの部分放電を測定する事が従来から行なわれている。この様な電力ケーブルの部分放電測定方法として従来から、例えば(株)オーム社刊、小崎正光編著の、インターユニバーシティ「高電圧・絶縁工学」、或は、特公平6−7148号公報に記載されたものが知られている。図11〜13は、このうちの特公平6−7148号公報に記載された、部分放電測定方法を実施する状況を示している。
【0003】互いに接続すべき1対の電力ケーブル1、1の中心部に設けた導体2、2の端部同士は、スリーブ3により接続している。これら導体2、2及びスリーブ3の周囲は絶縁体4により覆い、更にこの絶縁体4の周囲を金属製のカバー5、5により覆っている。又、これら1対のカバー5、5の端縁同士の間には絶縁筒6を設け、更にこれらカバー5、5の外周面は、ビニール等の絶縁材製の防食層7、7により被覆している。
【0004】これら各防食層7、7の外周面で、上記絶縁筒6を介して互いに離隔した位置には、それぞれ1対ずつのパルス印加用電極8、8と検出用電極9、9とを添着している。そして、このうちの1対のパルス印加用電極8、8同士の間に、パルス発生器10により、パルスを印加自在としている。又、上記1対の検出用電極9、9同士の間には検出用インピーダンス11を接続し、上記パルス発生器10により上記1対のパルス印加用電極8、8同士の間にパルスを印加する事に伴って、上記1対の検出用電極9、9の間に電位差を発生させる様にしている。そして、測定器12により上記電位差を測定自在としている。尚、図13は、図11〜12に示す様に配置した構成各部材の等価回路である。
【0005】各部材を上述の様に配置した状態で、上記パルス発生器10により発生したパルスを1対のパルス印加用電極8、8同士の間に印加すると、上記1対の検出用電極9、9同士の間に接続した検出用インピーダンス11の両側に電位差が発生する。そこで、上記測定器12によりこの電位差を測定すれば、上記絶縁体4内での部分放電の有無、及びその大きさを判定できる。尚、この様な部分放電測定方法を実施する際には、雑音の少ない高周波のパルスを選定して使用する事が好ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の部分放電測定方法は、雑音の少ない高周波のパルスを選定して使用する事により、或る程度高感度の測定を行なえるが、より測定感度を高くする為には改良が望まれている。即ち、従来の部分放電測定方法では、検出用インピーダンス11の両側に発生した電位差を測定器12により処理する場合に、この電位差を線形動作をする回路により処理していた。一方、電力ケーブルの部分放電を測定する場合には、測定器12に組み込んだ周波数変換回路部分等で、多少なりとも雑音が発生する事が避けられない。測定器12で処理した部分放電に基づく電圧値が、上記雑音に基づく電圧値以下になると、部分放電の測定が不可能になる。広い範囲での測定、言い換えれば高感度の測定を行なう為には、検出用インピーダンス11の両端に発生した電位差に基づく電圧値が、広い測定範囲に亙って、上記雑音に基づく電圧値を上回る様にする必要がある。本発明の部分放電測定方法は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の電力ケーブルの部分放電測定方法は、前述した従来の部分放電測定方法と同様に、電力ケーブルの周囲を覆う絶縁層の外周面に互いに間隔をあけて、それぞれ1対ずつのパルス印加用電極と検出用電極とを添着すると共に、このうちの1対のパルス印加用電極にパルスを印加する事に伴って1対の検出用電極同士の間に発生する電位差を測定するものである。特に、本発明の電力ケーブルの部分放電測定方法に於いては、上記1対の検出用電極同士の間に発生する電位差を、圧縮動作を行なう回路で処理する。
【0008】
【作用】上述の様に構成する本発明の電力ケーブルの部分放電測定装置によれば、1対の検出用電極同士の間の電位差に対する応答値の変動を小さくして、より小さな電荷での測定を可能にできる。この結果、測定感度が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の理論的裏付けに就いて、実施の形態に触れつつ説明する。先ず、ケーブルの部分放電による発生電圧は、次の様に評価できる。放電電荷をQ、ケーブル内のパルスの伝搬速度をv、放電の生成時間(電流波形を方形波とする)をt、ケーブルの単位長さあたりの静電容量をC0 とすると、放電により生じる電圧δVD は、δVD =Q/(2・C0 ・v・t)・・・(1)
で表される。この様に、放電により分布定数試料に生じる電圧は、放電場所の両側の限られた部分の、静電容量と放電電荷の大きさとで決まる。
【0010】次に、部分放電を検出する装置の信号レベルは、次の様に表示する。尚、部分放電検出用に、任意の高周波を選択可能な、同調増幅を用いた装置として、スペクトラムアナライザ(以下「SA」とする。)等の同調増幅回路を使用する。SAでは、入力抵抗50[Ω]に1[mW]の電力を供給している場合を基準とし、信号レベルをdBm 単位で表す。即ち、0[dBm ](レベル比較ではdBで表示)は√(50×1 ×10-3)=0.224 [V]となり、レベルが一桁小さくなる毎に、−20[dB]を加える形で、検出信号レベルを表示する。SA内の周波数変換回路内で発生し、このSAによる測定限界となる雑音レベルも、同様に表示する。
【0011】上述の様なSA等の同調増幅回路は、本発明を実施する場合に必要な、信号を圧縮する動作を行なう。即ち、SAは低入力抵抗の装置であり、放電による発生電圧は検出時には減少する。一般に、SAはギガヘルツ程度までの高周波を測定対象とし、50[Ω]等の低入力抵抗の回路方式を採用している。放電信号は、試料内部の直列な静電容量、即ち、図8に示した絶縁体4及び防食層7、7により構成される静電容量を経て、上記低入力抵抗により検出される。この為、上記(1)式で示した放電により生じる電圧δVD は、SAによる測定では、減衰し、小さくなる。
【0012】そこで、放電による電圧等の信号を圧縮する動作(圧縮動作)に就いて述べる。入力電圧をe1 、出力電圧をe2 、比例定数をK、伝達パラメータをnとすると、e2 =K・e1 n ・・・(2)
で表される。この(2)式で、n=1ならば比例(線形)関係にあるが、n≠1の場合は、非線形の関係になる。又、n≠1の場合で、n<1ならば圧縮動作となり、n>1ならば伸長動作となる。これら圧縮動作及び伸長動作は、非線形素子を含む回路動作であり、図2に示す様に、整流器を用いる事によって、上述の様な圧縮動作又は伸長動作を行なう非線形回路を構成できる。尚、図2(A)は圧縮動作を行なわせる為の回路を、同図(B)は伸長動作を行なわせる為の回路を、それぞれ表している。又、上記(2)式の関係を直線目盛で表すと、n=1の線形の場合は、図3の実線aで示す様に、傾きKの直線となる。これに対して、n≠1の非線形の場合には、両対数目盛りにより表すと、傾きnの直線になり、直線目盛で表すと、図3の破線b及び鎖線cに示す様な曲線になる。即ち、n<1の圧縮動作の場合は図3の破線bに示す様に、n>1である伸長動作の場合には同図の鎖線cに示す様に、それぞれなる。又、n<1である圧縮動作を直線目盛りにより表すと、図3に破線bで示す様に、ある値を境に、比例動作と大小が入れ替わる。従って、上述の様な圧縮動作は、瞬時電圧に対する動作である。言い換えれば、圧縮動作と言うのは、比例動作と大小が入れ替わるまでの間の、瞬間的な動作を言う。
【0013】そこで、パルス信号に対してSA等の同調増幅回路が行なう圧縮動作が、雑音の低減効果がある理由に就いて説明する。図4の線図の右下部に示す様に、パルス発生器PGとSAとを用い、電荷と応答との関係を測定した。図4の線図にその結果を示す様に、SAとPGの間に抵抗を挿入する事により、SAに入力される電荷の大きさを変えても、電荷と応答との傾きは変わらず、平行移動するだけである。この電荷と応答との関係を表す直線の傾きは、比例動作の場合には1であるのに対して、圧縮動作の場合には<1(図示の場合には0.8 )となっている。これは、上記図3に示す様な非線形の圧縮動作によるものであり、PGによるパルスと、圧縮動作を行なうSA等の同調増幅回路との組合わせにより実現するものである。又、この様な圧縮動作が行なわれるのは、パルスの様に、断続する信号に対する過渡応答によるものである。上記図4にその結果を示した実験の結果から、後述する図1及び上述の図3に示す様に、非線形の圧縮動作で、比例動作よりも大きい応答を得られる範囲を利用する事により、小さい電荷領域での応答を増大し、雑音を低減したと同等の動作をし、検出感度の向上を図れる事が分る。この様な、同調増幅回路の非線形応答による検出感度の検討に就いては、従来は全く行なわれていなかった事項である。即ち、パルス信号の処理を、高周波同調増幅器で検出するSA等を使用した場合に生じる、特徴的な特性であり、本発明者が実験により始めて明らかにした特性である。
【0014】尚、上述の図4に示した非線形特性は、同調増幅回路のパルス応答の建幅特性による、波高値の圧縮動作として、以下の様に説明できる。同調増幅回路に信号を突印した場合の振幅の立上り応答を示すものが建幅特性である。この時、振幅の応答は、同調周波数でなく、直流的なユニットステップの応答に置き換え、信号の包絡線として解析可能となる。扱う信号は放電で生じたパルスであり、特定の立上りと波尾時間を持っている。図5に示す様に、同調増幅回路のパルス波高値応答は、上記建幅特性から、同調周波数の包絡線を表す、二つの指数関数の合成応答として解析できる。この波高値の応答率は、常に1未満となる。
【0015】波高値の応答率は、二つの指数関数の過渡現象として解析され、波高値は、過渡現象の時間内に生じている。過渡現象では、電流や電圧の応答は、時間に対して非線形な状態となる。つまり、過渡現象に於ける時定数は現象初期の時間変化率を時定数と定義している。線形動作であれば、時定数だけの時間経過で最終値に達するはずである。しかし、現実には、最終値に至るには、図6に示す様に、時定数の数倍の時間が必要である(時定数相当の時間では、最終値の63%、時定数の5倍で99.34 %)。即ち、過渡現象が終わり、定常状態になるまでの間は、電圧や電流は時間に対しては、非線形応答と考えられる。同調増幅によるパルス(断続)信号の増幅は、総て過渡現象の状態にあるので、非線形の動作と考える事ができる。つまり、断続したパルス現象を同調増幅して測定する場合は、過渡現象の時間内の測定となり、時間に対する振幅の応答は非線形になる。この様に、断続現象であるパルス信号に対しては、非線形応答時間内の過渡現象であり、n<1の特性となる。即ち、同調増幅回路であるSA等に、図7(A)に示す様なパルス信号が入力されると、SA等の建幅特性に基づき、同図(B)に示す様な応答が出される。
【0016】次に、上述した様な圧縮動作が、部分放電測定の検出感度の向上に寄与する理由に就いて述べる。電荷q1 とq2 とを表す信号の大きさの比をデシベルで表示する場合、電荷と電圧とが、前記(2)式の関係にあると、 [dB]=20log10(q1 /q2n =n ・20・log10 (q1 /q2
・・・(3)
で表せる。ここで、圧縮動作として、n=0.8 とすると、10倍の電荷の大きさは、0.8 ×20=16[dB]の差になる。比例動作であるn=1の場合は20[dB]である。この様に、信号処理の動作が圧縮動作である場合と比例動作である場合との比較を、図1に示す。電荷の大きさが10倍異なる100 [pC]と10[pC]との場合で応答の差は、上述の様に、n=1の場合で20[dB]、n=0.8 の場合で16[dB]である。この図1に於いて、100 [pC]の電荷で n=1の場合とn=0.8 の場合との[dB]の値を、前述の図4に示したPGとSAとの間の抵抗値調整等により合わせた場合、圧縮動作(n<1)の方が、同一範囲の電荷に対する[dB]の表示レベルの範囲は狭くなる。言い換えれば、電荷の変動に対する応答の変動が小さくなる。この為、100 [pC]の電荷で[dB]の値を合わせると、電荷が小さい領域では、比例動作の場合よりも応答の大きさ(変動値ではなく絶対値)が大きくなる。この結果、同一の雑音レベルに対応する電荷は小さくなる。言い換えれば、雑音レベルが同じであれば、より小さな電荷に対しても応答の測定が可能になる。この結果、比例動作の場合に比べ、雑音の影響が小さくなり、検出感度の改善に寄与できる。つまり、圧縮動作により、小さい電荷に対応する応答の絶対値を増大させ、雑音レベルを減少させたと同様の動作となり、検出感度を向上させる事ができる。これは、前述の図3から判る様に、小さい信号領域の応答は、圧縮動作では、比例動作よりも大きい為である。尚、n=1の場合で、応答の絶対値を高くすれば、電荷が小さい場合の測定は可能になるが、反対に電荷が大きい場合の測定を、測定器自体の測定限界上の問題から行なえなくなるので、測定範囲の拡大は図れない。これに対して本発明の場合は、電荷が小さい場合だけでなく、大きい場合も、測定可能範囲を広げる事になる。
【0017】本発明の効果を確認する為、図8に示す様な模擬回路により、検出感度の確認実験を行った。この実験では、直接校正と間接校正の比率(直間比)が2となる様に、ケーブル長と検出周波数の条件(サージインピーダンスへの収束)とから検出周波数を選定し、間接校正を用いた。尚、この図8に示した模擬回路の構成に就いては、構成各部に前述の図11〜13と同じ符号を付して説明を省略する。但し、測定器12に関しては、従来方法を実施する場合とは異なり、SAを組み込んだものを使用した。図9に、この様にして行なった実験により求めた電荷の校正結果を示す。この図9には、10[pC]と100 [pC]との2点の電荷に対するデシベル値を求め、対数目盛を外挿した結果を示している。このうちの左側の線図は、700 [mS](50Hzの35サイクル)の時間に亙って測定した特定の周波数の雑音を、右側の線図はそのうちの初期の2サイクル分の雑音を、それぞれ示している。縦軸の目盛から、1[pC]程度の放電を検出可能な状態にある事が分る。又、図10には、時間特性を見る為に、10分間の雑音特性の傾向を示している。この図10から、時間の経過に拘らず雑音特性が殆ど変化しない事が分る。これらの実験から、測定装置の雑音レベルを1[pC]未満とする事ができ、導電接続部で1[pC]以上の大きさの部分放電を安定して検出可能な事が確認できた。更に、直接校正により検出感度を確認した。上述した図9と図10とでは、検出感度の評価の為の電荷校正は、間接校正で行なった。そこで、模擬ケーブルに電荷を直接注入し、検出感度を検討した。その結果、注入した数の校正電荷が縦軸の表示に一致する事を確認した。
【0018】
【発明の効果】本発明の部分放電測定方法は、以上に述べた通り構成され作用するので、部分放電の測定をより高感度で行なう事が可能になり、送電ケーブルの品質向上、保守管理の適正化等に寄与できる。
【出願人】 【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開平11−23642
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−179560