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【発明の名称】 アンテナの励振定数測定装置
【発明者】 【氏名】岡村 敦

【氏名】桐本 哲郎

【要約】 【課題】各素子アンテナの励振電流又は励振電圧の相対振幅及び位相を推定する際に、測定に要する時間が少なくて済み、その結果、追従性が向上し相対振幅及び位相を常時高い精度で推定できるアンテナの励振定数測定装置を得る。

【解決手段】信号発生器3からのランダムディジタル信号x1,x2,・・・,xMをそれぞれ各素子アンテナ11,12,・・・,1Mから空間に放射し、対向アンテナ5で受信しそれらの電波の合成波d(i)を得る。一方、上記ランダムディジタル信号を適応フィルタ10に入力させ、上記合成波d(i)と上記適応フィルタ出力の誤差信号が最小になるように適応フィルタの複素荷重w1,w2,・・・,wMを調節し、該当する各素子アンテナの相対振幅及び位相量の推定値として出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のディジタル信号を発生する信号発生手段と、上記複数のディジタル信号をそれぞれデジタルアナログ変換する複数のデジタルアナログ変換器と、上記複数のデジタルアナログ変換器を介した出力に基づき励振された送信波をそれぞれ放射させる複数の素子アンテナでなるアレーアンテナと、上記アレーアンテナからの送信波を受信する対向アンテナと、上記対向アンテナからの出力をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換器と、上記複数のディジタル信号に対応して、入力される誤差信号に基づいた評価関数を最小にする複数の複素荷重をそれぞれ求めると共に、上記複数のディジタル信号に対応する複素荷重をそれぞれ乗算して合成した合成信号を出力する適応フィルタと、上記アナログデジタル変換器の出力から上記適応フィルタから出力される合成信号を減算して誤差信号を求めて上記適応フィルタに与える減算手段とを備え、上記適応フィルタは、上記複数の複素荷重に基づいて上記アレーアンテナの対応する各素子アンテナの励振電流または励振電圧の相対的な振幅及び位相をそれぞれ求めることを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項2】 請求項1記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記適応フィルタは、上記信号発生手段から出力される複数のディジタル信号に対しそれぞれ複素荷重を乗算する複数の荷重乗算器と、これら複数の荷重乗算器の出力を合成した合成信号を出力する合成器と、上記信号発生手段から出力される複数のディジタル信号と上記減算手段から出力される誤差信号とを入力して、上記誤差信号の二乗平均値を評価関数とし該評価関数を最小にする複数の複素荷重をそれぞれ求めて対応する各荷重乗算器に与える荷重制御手段とを備えてなることを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項3】 請求項1または2記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記対向アンテナと上記アナログディジタル変換器とは離隔して設けられると共に、上記対向アンテナは、受信される各素子アンテナからの送信波の合成波を送信する送信用アンテナを有してなり、上記アナログディジタル変換器が設置される側に、上記対向アンテナの送信用アンテナからの合成波を受信する受信用アンテナをさらに備えたことを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生手段は、ディジタルランダム信号を発生する信号発生器と、複数の遅延器を従属接続してなり上記信号発生器からの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出するサンプル遅延手段とを備えてなり、上記信号発生器及び上記各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出することを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項5】 請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生手段は、互いに異なるディジタル信号をそれぞれ発生する複数の信号発生器を備えてなり、この複数の信号発生器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出することを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項6】 請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生手段は、互いに周波数が異なる正弦波信号をそれぞれ発生する複数の信号発生器を備えてなり、この複数の信号発生器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出することを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生手段からの複数のディジタル信号を上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離に応じた遅延時間遅延させて上記適応フィルタに出力する複数の距離対応遅延手段をさらに備えたことを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生手段とは独立してなり、上記アレーアンテナから送信対象としての受信局に向けての送信データを出力する送信信号源と、この送信信号源からの送信データを上記アレーアンテナの各素子アンテナに対応して分配し、かつそれぞれ複素荷重を乗算した複数の送信データを得る分配手段と、上記複数のデジタルアナログ変換器に入力される複数のディジタル信号に上記分配手段を介した複数の送信データをそれぞれ加算する複数の加算手段とをさらに備えたことを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項9】 請求項4記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生器の出力をディジタルアナログ変換するディジタルアナログ変換器と、このディジタルアナログ変換器を介した出力を送信するデータリンク用送信アンテナと、このデータリンク用送信アンテナからの送信信号を受信する受信アンテナと、この受信アンテナの出力をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器と、複数の遅延器を従属接続してなり上記アナログディジタル変換器からの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段とをさらに備え、上記アナログディジタル変換器及び上記受信側サンプル遅延手段の各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として上記適応フィルタに与えることを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【請求項10】 請求項4記載のアンテナの励振定数測定装置において、上記信号発生器からの信号と同一の信号を発生する受信側信号発生器と、この受信側信号発生器からの信号を上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離に応じた遅延時間遅延させる距離対応遅延手段と、複数の遅延器を従属接続してなり上記距離対応遅延手段を介した出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段とをさらに備え、上記距離対応遅延手段及び上記受信側サンプル遅延手段の各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として上記適応フィルタに与えることを特徴とするアンテナの励振定数測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、複数の素子アンテナでなるアレーアンテナ、例えばビーム操作またはパターン形成を行う送信DBF(Digital Beam Forming)アンテナを構成する各素子アンテナの励振電流または励振電圧の相対的な振幅及び位相を測定するアンテナの励振定数測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、DBFアンテナで所望の放射パターン形成や、所望方向へのビーム指向性制御を行うためには、複数のディジタル信号の相対位相、振幅をそれぞれ調整して定めるが、このとき、各送信チャネルとなる素子アンテナの透過位相、振幅の相対値を知ってこれを補償処理する必要がある。このような従来技術として、例えば特公平3−38548号公報に開示された素子電界ベクトル回転法(Rotating Electric field Vector Method,以下REV法と略す)に基づくものがある。
【0003】図7は送信DBFアンテナと上記REV法を応用した従来の透過位相、振幅推定装置を示す構成図である。図7において、11,12,・・・,1Mは送信アレーアンテナを構成する素子アンテナ、21,22,・・・,2MはD/A変換器、5は対向アンテナ、6は受信アンテナ、7はA/D変換器、51,52,・・・,5Mは移相器、60はディジタルの正弦波信号を生成する信号発生器、70はREV信号処理手段である。なお、h1,h2,・・・,hMは各素子アンテナの振幅及び位相を求める際のパラメータとなる複素数でなる励振定数を示し、また、素子アンテナ11,12,・・・,1MとD/A変換器21,22,・・・,2Mとの間にRFアンプ/フィルタ、ミキサ、IFアンプ/フィルタを含む図示しない送信機があり、また、受信アンテナ6とA/D変換器7との間に受信機があるが、簡単のため省略する。
【0004】以下、上記構成に係る動作について説明する。アレーアンテナから送信周波数fRFで代表される周波数帯で電波を送信し、アレーアンテナから所定角度方向の十分遠方にある対向アンテナ5で捕らえる場合を考える。また、測定したい励振定数パラメータである各m(m=1,2,・・・,M)番目の素子アンテナの透過位相及び振幅を複素数hm(振幅:|hm|、位相:arg(hm))で表すとする。なお、アレーアンテナから対向アンテナ5までの電波の経路長差は各素子アンテナにより異なり、これに起因する位相差も複素数hmに含まれているが、対向アンテナ5の方向がわかればこれを補償することができる。
【0005】信号発生手段60で生成されたディジタルの正弦波信号は分配された後、各移相器51,52,・・・,5Mでそれぞれ位相を変えられ、D/A変換器21,22,・・・,2Mでアナログ信号に変換され、さらに図示しない送信機によって増幅、高周波にアップコンバートされた後、それぞれ接続された素子アンテナ11,12,・・・,1Mから空間に放射される。対向アンテナ5は、これらの電波の合成波を捕らえ、その信号r(t)(tは時刻)を受信アンテナ6に送る。この信号は図示しない受信機によって増幅、ダウンコンバートされた後、A/D変換器7でディジタル受信信号d(i)(iはサンプル番号)に変えられる。
【0006】REV信号処理手段70は、移相器51,52,・・・,5Mの位相変化量v1,v2,・・・,vMを制御するが、第m素子アンテナに接続された移相器のみの位相を変化させて、図8に示すように、対向アンテナ5の合成電力、すなわち受信信号d(i)のcosin状の振幅変化を測定する。その測定データより振幅の最大/最小比、振幅を最大にする位相量を求めることにより、該当する第m素子アンテナの相対振幅、位相量を推定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の上記REV法による素子アンテナの相対振幅、位相量推定法では、図8に示すような受信信号d(i)のcosin状の振幅変化を測定するために、移相器の移相量を順次切り替え、L回の測定を行う必要がある。測定回数Lが少ないと振幅曲線の測定精度が劣化するため、一般に測定回数Lの値は小さくない。
【0008】一方、ある素子アンテナについて測定する際には、他の素子はすべて固定しておく必要があり、並列に測定することができない。そのため、M個の素子アンテナすべてを測定するためには、合計M×L回の受信信号d(i)の測定を行わなくてはならない。特に、素子アンテナ数が多数の場合には、M×Lは大きな値になるから、アレーアンテナ全体を測定するまでに多くの時間を要してしまうという課題があった。
【0009】この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、各素子アンテナの励振電流又は励振電圧の相対振幅及び位相を推定する際に、測定に要する時間が少なくて済み、その結果、追従性が向上し相対振幅及び位相を常時高い精度で推定できるアンテナの励振定数測定装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明に係るアンテナの励振定数測定装置は、複数のディジタル信号を発生する信号発生手段と、上記複数のディジタル信号をそれぞれデジタルアナログ変換する複数のデジタルアナログ変換器と、上記複数のデジタルアナログ変換器を介した出力に基づき励振された送信波をそれぞれ放射させる複数の素子アンテナでなるアレーアンテナと、上記アレーアンテナからの送信波を受信する対向アンテナと、上記対向アンテナからの出力をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換器と、上記複数のディジタル信号に対応して、入力される誤差信号に基づいた評価関数を最小にする複数の複素荷重をそれぞれ求めると共に、上記複数のディジタル信号に対応する複素荷重をそれぞれ乗算して合成した合成信号を出力する適応フィルタと、上記アナログデジタル変換器の出力から上記適応フィルタから出力される合成信号を減算して誤差信号を求めて上記適応フィルタに与える減算手段とを備え、上記適応フィルタは、上記複数の複素荷重に基づいて上記アレーアンテナの対応する各素子アンテナの励振電流または励振電圧の相対的な振幅及び位相をそれぞれ求めることを特徴とするものである。
【0011】また、上記適応フィルタは、上記信号発生手段から出力される複数のディジタル信号に対しそれぞれ複素荷重を乗算する複数の荷重乗算器と、これら複数の荷重乗算器の出力を合成した合成信号を出力する合成器と、上記信号発生手段から出力される複数のディジタル信号と上記減算手段から出力される誤差信号とを入力して、上記誤差信号の二乗平均値を評価関数とし該評価関数を最小にする複数の複素荷重をそれぞれ求めて対応する各荷重乗算器に与える荷重制御手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】また、上記対向アンテナと上記アナログディジタル変換器とは離隔して設けられると共に、上記対向アンテナは、受信される各素子アンテナからの送信波の合成波を送信する送信用アンテナを有してなり、上記アナログディジタル変換器が設置される側に、上記対向アンテナの送信用アンテナからの合成波を受信する受信用アンテナをさらに備えたことを特徴とするものである。
【0013】また、上記信号発生手段は、ディジタルランダム信号を発生する信号発生器と、複数の遅延器を従属接続してなり上記信号発生器からの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出するサンプル遅延手段とを備えてなり、上記信号発生器及び上記各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出することを特徴とするものである。
【0014】また、上記信号発生手段は、互いに異なるディジタル信号をそれぞれ発生する複数の信号発生器を備えてなり、この複数の信号発生器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出することを特徴とするものである。
【0015】また、上記信号発生手段は、互いに周波数が異なる正弦波信号をそれぞれ発生する複数の信号発生器を備えてなり、この複数の信号発生器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出することを特徴とするものである。
【0016】また、上記信号発生手段からの複数のディジタル信号を上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離に応じた遅延時間遅延させて上記適応フィルタに出力する複数の距離対応遅延手段をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0017】また、上記信号発生手段とは独立してなり、上記アレーアンテナから送信対象としての受信局に向けての送信データを出力する送信信号源と、この送信信号源からの送信データを上記アレーアンテナの各素子アンテナに対応して分配し、かつそれぞれ複素荷重を乗算した複数の送信データを得る分配手段と、上記複数のデジタルアナログ変換器に入力される複数のディジタル信号に上記分配手段を介した複数の送信データをそれぞれ加算する複数の加算手段とをさらに備えたことを特徴とするものである。
【0018】また、上記信号発生器の出力をディジタルアナログ変換するディジタルアナログ変換器と、このディジタルアナログ変換器を介した出力を送信するデータリンク用送信アンテナと、このデータリンク用送信アンテナからの送信信号を受信する受信アンテナと、この受信アンテナの出力をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器と、複数の遅延器を従属接続してなり上記アナログディジタル変換器からの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段とをさらに備え、上記アナログディジタル変換器及び上記受信側サンプル遅延手段の各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として上記適応フィルタに与えることを特徴とするものである。
【0019】さらに、上記信号発生器からの信号と同一の信号を発生する受信側信号発生器と、この受信側信号発生器からの信号を上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離に応じた遅延時間遅延させる距離対応遅延手段と、複数の遅延器を従属接続してなり上記距離対応遅延手段を介した出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段とをさらに備え、上記距離対応遅延手段及び上記受信側サンプル遅延手段の各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として上記適応フィルタに与えることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1に係るアンテナの励振定数測定装置を示す構成図である。図1において、11,12,・・・,1Mは送信アレーアンテナを構成する素子アンテナ、21,22,・・・,2MはD/A変換器、3はディジタルランダム信号u(i)を発生する信号発生器、42,43,・・・,4Mは従属接続されて上記信号発生器3からの出力信号を順次サンプル遅延させるサンプル遅延手段を構成する遅延器を示し、上記信号発生器3と共に、上記D/A変換器21,22,・・・,2Mにそれぞれベースバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMを出力する信号発生手段を構成している。
【0021】また、5は上記アレーアンテナの各素子アンテナからの送信波を受信する対向アンテナであり、受信用アンテナ5aと該受信用アンテナ5aにより受信された各素子アンテナからの送信波の合成波を送信する送信用アンテナ5bを有する。6は上記対向アンテナ5とは離れた後述する適応フィルタの設置側に設けられた受信アンテナ、7はA/D変換器、81,82,・・・,8Mは上記アレーアンテナと上記対向アンテナ5との距離に応じた遅延量Dが与えられた距離対応遅延器である。
【0022】また、91,92,・・・,9Mは上記遅延器81,82,・・・,8Mを介して入力されるベースバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMに対しそれぞれ複素荷重w1,w2,・・・,wMを乗算する荷重乗算器、10aはこれら荷重乗算器91,92,・・・,9Mからの出力の合成信号y(i)を得る合成器、20は上記A/D変換器7の出力信号d(i)から上記合成器10aから出力される合成信号y(i)を減算して誤差信号e(i)を求める減算器である。
【0023】さらに、10bは上記減算器20からの誤差信号e(i)を入力して誤差信号の二乗平均値を評価関数とし上記遅延器81,82,・・・,8Mを介して入力されるベースバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMに対し該評価関数を最小にする複素荷重w1,w2,・・・,wMをそれぞれ求めて対応する各荷重乗算器に与える荷重制御器を示し、上記荷重乗算器91,92,・・・,9M及び上記合成器10aと共に適応フィルタ(ADF: Adaptive Digital Filter)10を構成し、上記荷重制御器10bは、各複素荷重w1,w2,・・・,wMに基づいてアレーアンテナの対応する各素子アンテナ11,12,・・・,1Mの励振電流または励振電圧の相対的な振幅及び位相を表す複素数h1,h2,・・・,hMを求めることができる。なお、素子アンテナ11,12,・・・,1MとD/A変換器21,22,・・・,2Mの間に、RFアンプ/フィルタ、ミキサ、IFアンプ/フィルタを含む図示しない送信機があり、また、受信アンテナ6とA/D変換器7との間に図示しない受信機があるが、簡単のため省略する。
【0024】以下、上記構成に係る動作について説明する。アレーアンテナ1から送信周波数fRFに較べて十分狭い帯域幅で電波を送信し、その送信波がアレーアンテナ1から所定角度方向の十分遠方にある対向アンテナ5で捕らえる場合を考える。また、測定したいパラメータである各m(m=1,2,・・・,M)番目の素子アンテナの透過位相及び振幅を複素数hm(振幅:|hm|、位相:arg(hm))で表すとする。
【0025】信号発生器3でディジタルランダム信号u(i)を発生し、これを遅延器42,43,・・・,4Mでなるサンプル遅延手段で遅延することによってべ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMを得る。これらべ一スバンドディジタル信号xm(m=1,2,・・・,M)はそれぞれ対応するD/A変換器21,22,・・・,2Mでアナログ信号に変換され、さらに、図示しない送信機を介して増幅され高周波にアップコンバートされた後、各素子アンテナ11,12,・・・,1Mから空間に放射される。
【0026】対向アンテナ5は、これらの電波を受信用アンテナ5aを介して受信し、その合成波を捕らえ、その信号r(t)を送信用アンテナ5bを介して離隔した受信アンテナ6に送る。この信号は図示しない受信機により増幅されダウンコンバートされた後、A/D変換器7でべ一スバンドディジタル受信信号d(i)に変えられる。
【0027】一方、べ一スバンドディジタル信号xm(m=1,2,・・・,M)は、それぞれ距離対応遅延器81,82,・・・,8Mで遅延された後、荷重乗算器91,92,・・・,9Mで複素荷重wm(m=1,2,・・・,M)がそれぞれ乗じられ、合成器10aで合成された後、適応フィルタ10の出力信号y(i)として出力される。ここで、距離対応遅延器81,82,・・・,8Mの遅延量Dは、送信アレーアンテナ−対向アンテナの距離Δによる遅延時間(Δ/c,cは電波の速度)で与える。
【0028】減算器20は、上記A/D変換器7から出力されるべ一スバンドディジタル受信信号d(i)と上記適応フィルタ10の出力信号y(i)に基づいて e(i)=d(i)−y(i) (1)
なる複素演算を実行して誤差信号e(i)を得る。荷重制御器10bは、誤差信号e(i)の電力が最小になるように適応アルゴリズムに基づいて複素荷重Wmを逐次調節し、複素荷重Wmを該当する第m素子アンテナの相対振幅及び位相量の推定値として出力する。
【0029】以下、複素荷重Wmから第m素子アンテナの相対振幅及び位相量が推定できることについての原理を説明する。第m素子アンテナの相対振幅及び位相量を表す未知パラメータである複素数hmをM素子分まとめて、次式の未知系ベクトルとして定義する。
h=[h12・・・hMT (2)
ここで、Tは転置を表す。
【0030】また、複素数で示される信号発生器3からのべ一スバンドディジタル信号u(i)をサンプル遅延することによって生成した信号xmをM素子分まとめて次式の入力信号ベクトルとして定義する。
x(i)=[x1(i)x2(i)・・・xM(i)]T =[u(i)u(i−1)・・・u(i−M+1)]T (3)
【0031】対向アンテナ5の受信信号r(t)は、式(2)、(3)を用いて式(4)のように表せられる。
【0032】
【数1】

【0033】ここで、n(t)は外乱であり、送信機や受信機で生じたり、対向アンテナ5に混入するノイズである。従って、複素数でなるべ一スバンドディジタル信号である受信信号d(i)は式(5)になる。
d(i)=hTx(i)+n(i) (5)
【0034】一方、適応フィルタ10では、入力信号xmに複素荷重wmを乗じ合成して信号y(i)を得る。複素荷重ベクトルWを式(6)のように定義すれば、y(i)は式(7)で与えられる。
w=[w12・・・wMT (6)
y(i)=wTx(i) (7)
ここで、誤差信号e(i)の二乗平均値を評価関数Φに考える。
【0035】評価関数Φは、式(1)、(5)、(7)により式(8)で示される。
Φ(w)≡E[|e(i)|2
=E[|hTx(i)−wTx(i)+n(i)|2] (8)
ここで、Eは平均操作を示す。
【0036】また、外乱n(t)とu(i)は無相関であるとすれば、評価関数Φは式(9)のように展開される。
Φ(w)=E[|(h−w)Tx(i)|2]+E[n(i)|2
=(h−w)TR(h−w)*+σ2 (9) R=E[x(i)x(i)*T] (10)
σ2=E[|n(i)|2] (11)
ここで、RはM×M次元の入力信号共分散行列、σ2 は外乱の電力、*は複素共役を示す。
【0037】上記評価関数Φは、R、σ2 がwと無関係であることに注意すると、式(9)より適応フィルタ10の複素荷重wの二次関数であることが分かる。従って、式(9)より評価関数Φを最小にする複素荷重w(これをwopt と記す)は求めたい未知系ベクトルhと等しくなることが分かる。つまり、式(12)を得る。
opt =h (12)
【0038】以上のことから、適応フィルタ10の荷重制御器10bにより、評価関数Φすなわち誤差信号e(i)の二乗平均値を最小にするよう適応フィルタ10の複素荷重wを制御すれば、このときの荷重wopt から送信DBFアレーアンテナの各素子アンテナの相対振幅、相対位相hを知ることができることになる。
【0039】評価関数式(9)の最小二乗解woptは、よく知られているように、適応アルゴリズムに基づく逐次式を解くことによって求めることができる。例えば、演算量が素子数Mの1乗オーダで済む適応アルゴリズムは次式で示される。
w(i+1)=w(i)+μ(i)e(i)x(i)* (13)
ここで、μ(i)はステップサイズである。これは、荷重を評価関数の傾斜方向に逐次更新することにより、最小二乗解woptすなわち真の素子アンテナの振幅及び位相データhに近づけていくものである。
【0040】適応フィルタ10では、データサンプル毎にフィルタの複素荷重の更新を行う。従って、本実施の形態による素子アンテナの相対振幅、位相量の推定は、データサンプル毎に実施できることになる。一方、従来のREV法では、従来技術の説明で述べたように、相対振幅、位相量推定値を得るまでに、M×L個のデータサンプルを必要とする。従って、従来のREV法に比べ、本実施の形態による装置が測定に要する時間が少なくて済む。
【0041】ある素子アンテナの相対位相値推定の過程を図2に例示する。位相真値の時間変化が十分早い場合には、本実施の形態による方が追従性に優れ、総じて精度が高くなり得る。相対振幅値推定も同様である。例えば、素子アンテナの数Mを600、測定回数Lを8とすると、本実施の形態による素子アンテナの振幅、位相の更新は従来のREV法の1/4800の時間で行うことができる。
【0042】なお、上記実施の形態では、信号発生器3でディジタルランダム信号を発生したが、式(10)の行列Rを特異にする信号を用いない限り、任意の信号であっても構わない。また、上記実施の形態では、遅延器81,82,・・・,8Mの遅延量Dは固定値としたが、可変のものでもよく、送信アレーアンテナから対向アンテナ5までの距離Δが十分小さい場合には省略しても構わない。また、上記実施の形態では、対向アンテナ5bとA/D変換器7の間を無線で結んでいるが、有線で結んでも構わない。また、上記実施の形態では、対向アンテナ5は素子アンテナから離れた別体のものとしたが、アレーアンテナを構成する素子アンテナの一部を対向アンテナとして用いる場合でも同様な効果を得ることができる。さらに、上記実施の形態では、荷重制御器10bが複素荷重wmを更新する際に、演算量が素子数Mの1乗オーダで済む適応アルゴリズムで説明したが、RLS(Recursive Least Squares)やそれに類する適応アルゴリズムでも構わない。
【0043】実施の形態2.次に、図3は実施の形態2に係るアンテナの励振定数測定装置を示す構成図である。図3において、図1に示す実施の形態1と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。新たな符号として、31,32,・・・,3Mはそれぞれ互いに異なるランダム系列のディジタル信号を発生する信号発生器であり、例えば乱数発生プログラムにそれぞれ異なる初期値を与えることによってランダム系列を得ることができる。これにより、べ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMはそれぞれ互いに異なるランダム系列になる。従って、原理、効果は実施の形態1と同様である。信号発生器31,32,・・・,3Mは、それぞれ互いに異なる正弦波以外の任意の信号を発生するようなものでも構わない。
【0044】実施の形態3.実施の形態3は、前述した図3に示す実施の形態2と同様な構成を備えるが、信号発生器31,32,・・・,3Mが、それぞれ互いに異なる周波数f1,f2,・・・,fMの正弦波のディジタル信号を発生する。但し、周波数f1,f2,・・・,fMの間の周波数差は、送信電波のRF周波数fRFに較べ十分に小さいものとする。原理、効果は実施の形態1と同様である。
【0045】実施の形態4.次に、図4は実施の形態4に係るアンテナの励振定数測定装置を示す構成図である。図4において、図1に示す実施の形態1と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。新たな符号として、30は信号発生器3とは独立して設けられ、受信局50に向けての送信データを出力する送信信号源、40は上記送信信号源30からの出力信号をアレーアンテナの各素子アンテナ11,12,・・・,1Mに対応して分配する分配手段を示し、分配器40aと、この分配器40aからの各出力信号にそれぞれ複素荷重v1,v2,・・・,vMを乗算する荷重乗算器群40bとを備えている。また、101,102,・・・,10Mは、ベースバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMに、上記分配器40aを介して分配され上記荷重乗算器群40bを介して複素荷重がそれぞれ乗算された送信信号源30からのデータを加算する加算器を示す。
【0046】この実施の形態4は、送信アレーアンテナの較正のための各素子アンテナの励振電流または励振電圧の相対的な振幅及び位相の測定と、受信局に向けてのデータ、音声等の情報伝送を同時に行うものである。受信局50に送信ビームを形成するような複素荷重をv1,v2,・・・,vMとする。信号発生器3でディジタルランダム信号u(i)を発生し、これをサンプル遅延器41,42,・・・,4Mで遅延することによってべ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMを得る。
【0047】一方、送信信号源30から出力される送信データs(i)は、分配手段40で分配され、かつそれぞれ複素荷重v1,v2,・・・,vMが乗じられて、加算器101,102,・・・,10Mでそれぞれベースバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMに加算される。これらの合成信号xm+vms(i)(m=1,2,・・・,M)はそれぞれD/A変換器21,22,・・・,2Mでアナログ信号に変換され、さらに図示しない送信機により増幅され高周波にアップコンバートされた後、接続された第m番目の素子アンテナ1mから空間に放射される。
【0048】対向アンテナ5は、これらの電波の合成波を捕らえ、この信号r(t)を受信アンテナ6に送る。この信号は、図示しない受信機により増幅されダウンコンバートされた後、A/D変換器7でべ一スバンドディジタル受信信号d(i)に変えられる。受信局50に送信ビームを形成するような複素荷重をM素子分まとめて、式(14)のベクトルとして定義する。
v=[v1v2・・・vM] (14)
対向アンテナ5の受信信号r(t)は、式(2)、(3)、(14)を用いて式(15)のように表せられる。
【0049】
【数2】

【0050】従って、受信アンテナ6及びA/D変換器7を介した複素数のべ一スバンドディジタル信号である受信信号d(j)は式(16)になる。
d(i)=hT[x(i)+s(i)v]+n(i) (16)
適応フィルタ10の評価関数である誤差信号e(i)の二乗平均値Φは、式(1)、(7)、(16)により式(17)のようになる。
Φ(w)≡E[|e(i)|2
=E[|hT[x(i)+s(i)v]
−wTx(i)+n(i)|2] (17)
【0051】ここで、送信信号s(i)とランダム系列u(i)は無関係であるから、評価関数Φは式(18)のように展開される。
Φ(w)=E[|(h−w)Tx(i)|2
+E[|hT[s(i)v|2]+E[|n(i)|2
=(h−w)TR(h−w)*+PsTvvT*h*+σ2 (18)
なお、Ps=E[|s(i)|2]は送信信号電力である。
【0052】そして、R、σ2,v,Psがwと無関係であることに注意すると、式(18)より評価関数Φは複素荷重wの二次関数であり、評価関数Φを最小にする荷重w(これをwopt と記す)は、実施の形態1と同様に、求めたい未知系ベクトルhと等しくなることが分かる。以上のことから、受信局50に向けて送信を行う場合でも、適応アルゴリズムに基づく逐次式(13)によりフィルタの複素荷重を制御すれば、このときの複素荷重wから送信DBFアレーアンテナの各素子アンテナの相対振幅及び位相を知ることができる。信号発生手段3は、送信信号と独立な時系列であれば、正弦波以外の任意の信号を発生するようなものでも構わない。
【0053】実施の形態5.次に、図5は実施の形態5に係るアンテナの励振定数測定装置を示す構成図である。図5において、図1に示す実施の形態1と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。新たな符号として、1aは信号発生器3からの出力をディジタルアナログ変換器2aを介して受け送信するデータリンク用の送信アンテナ、6aは送信アンテナ1aからの送信信号を受信する受信アンテナ、7aはその受信アンテナ6aの出力をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器、4aは複数の遅延器を従属接続してなり上記アナログディジタル変換器7aからの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段を示し、アナログディジタル変換器7a及び受信側サンプル遅延手段4aの各出力がべ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMとして適応フィルタ10に入力される。なお、アナログディジタル変換器7は、実施の形態1と異なり、受信アンテナ6を介することなく対向アンテナ5に接続されている。
【0054】以下、上記構成に係る動作について説明する。信号発生手段3でディジタルランダム信号u(i)を発生し、これをサンプル遅延手段4aで遅延することによってべ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMを得る。べ一スバンドディジタル信号xm(m:1,2,・・・,M)はそれぞれD/A変換器21,22,・・・,2Mでアナログ信号に変換され、さらに図示しない送信機により増幅され高周波にアップコンバートされた後、接続された第m番目の素子アンテナから空間に放射される。対向アンテナ5は、これらの電波の合成波を捕らえる。この信号r(t)は図示しない受信機により増幅されダウンコンバートした後、A/D変換器7aでべ一スバンドディジタル受信信号d(i)に変えられる。
【0055】一方、ディジタルランダム信号u(i)は、別途D/A変換器2aでアナログ信号に変換され、さらに図示しない送信機により増幅され高周波にアップコンバートされた後、送信アンテナ1aから受信アンテナ6aへ送られ、ダウンコンバートされた後、A/D変換器7で再びディジタルランダム信号u(i)に変えられ、サンプル遅延手段4aで遅延することによってべ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMを得て、これを適応フィルタ10に入力する。
【0056】べ一スバンドディジタル信号xm(m:1,2,・・・,M)はそれぞれ荷重乗算器91,92,・・・,9Mで複素荷重wmが乗じられ、合成器10aで合成されてフィルタ出力信号y(i)として出力される。減算器20は、式(1)より誤差信号e(i)を得ることになり、荷重制御器10bにより、適応アルゴリズムに基づく逐次式(13)によりフィルタの複素荷重wmを制御すれば、このときの複素荷重から送信DBFアレーアンテナの各素子アンテナの相対振幅及び位相を知ることができる。
【0057】上述したようにして、本実施の形態5は、実施の形態1と同じく測定に要する時間が少なくて済むが、適応フィルタ10を始めとする主たる演算手段を対向アンテナ5側に設置することができる。従って、人工衛星や航空機などに送信DBFアレーアンテナを搭載する際に有利である。なお、送信DBFアレーアンテナから対向アンテナまでの距離Δと、アンテナ1aからアンテナ6aまでの距離との差を補償するために、D/A変換器2aやA/D変換器7aの前後に遅延を設けることもできる。
【0058】実施の形態6.次に、図6は実施の形態6に係るアンテナの励振定数測定装置を示す構成図である。図6において、図1に示す実施の形態1と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。新たな符号として、3aは信号発生器3と同一の信号を発生する受信側信号発生器、8aはアレーアンテナと対向アンテナとの距離に応じた遅延量Dが設定されている受信側遅延器、4aは図5に示す実施の形態5と同様な受信側サンプル遅延手段を示し、遅延器8a及び受信側サンプル遅延手段4aの各出力がべ一スバンドディジタル信号x1,x2,・・・,xMとして適応フィルタ10に入力される。なお、アナログディジタル変換器7は、実施の形態1と異なり、受信アンテナ6を介することなく対向アンテナ5に接続されている。
【0059】この実施の形態6において、信号発生器3aは、信号発生器3と同一の時系列を出力するものである。遅延器8aの遅延量Dは送信アレーアンテナー対向アンテナの距離Δによる遅延時間で与える。従って、送信アレーアンテナ側の信号x1,x2,・・・,xMと同一の信号を適応フィルタ10に入力させることができる。本実施の形態6では、実施の形態5とは異なり、受信側である適応フィルタ10側に信号発生器3aを備えているので、信号x1,x2,・・・,xMを適応フィルタ10側に伝送する必要はない。本実施の形態6は、実施の形態5と同様に、人工衛星や航空機などに送信DBFアレーアンテナを搭載する際に有利であるが、信号伝送用のアンテナ、送信機等が不要であるのでさらに有利である。なお、遅延器8aは、送信DBFアレーアンテナから対向アンテナまでの距離Δが十分小さい場合には省略しても構わない。
【0060】
【発明の効果】以上のように、この発明に係るアンテナの励振定数測定装置によれば、複数のディジタル信号を発生する信号発生手段と、上記複数のディジタル信号をそれぞれデジタルアナログ変換する複数のデジタルアナログ変換器と、上記複数のデジタルアナログ変換器を介した出力に基づき励振された送信波をそれぞれ放射させる複数の素子アンテナでなるアレーアンテナと、上記アレーアンテナからの送信波を受信する対向アンテナと、上記対向アンテナからの出力をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換器と、上記複数のディジタル信号に対応して、入力される誤差信号に基づいた評価関数を最小にする複数の複素荷重をそれぞれ求めると共に、上記複数のディジタル信号に対応する複素荷重をそれぞれ乗算して合成した合成信号を出力する適応フィルタと、上記アナログデジタル変換器の出力から上記適応フィルタから出力される合成信号を減算して誤差信号を求めて上記適応フィルタに与える減算手段とを備え、上記適応フィルタは、上記複数の複素荷重に基づいて上記アレーアンテナの対応する各素子アンテナの励振電流または励振電圧の相対的な振幅及び位相をそれぞれ求めるようにしたので、素子アンテナの相対振幅及び位相を推定する際に、測定に要する時間が少なくて済み、その結果、追従性が向上し素子アンテナの相対振幅及び位相を常時高い精度で推定できるアンテナの励振定数測定装置を得ることができる。
【0061】また、上記適応フィルタは、上記信号発生手段から出力される複数のディジタル信号に対しそれぞれ複素荷重を乗算する複数の荷重乗算器と、これら複数の荷重乗算器の出力を合成した合成信号を出力する合成器と、上記信号発生手段から出力される複数のディジタル信号と上記減算手段から出力される誤差信号とを入力して、上記誤差信号の二乗平均値を評価関数とし該評価関数を最小にする複数の複素荷重をそれぞれ求めて対応する各荷重乗算器に与える荷重制御手段とを備えたので、複素荷重を制御することで、素子アンテナの相対振幅及び位相を常時高い精度で推定できる。
【0062】また、上記対向アンテナと上記アナログディジタル変換器とは離隔して設けられると共に、上記対向アンテナは、受信される各素子アンテナからの送信波の合成波を送信する送信用アンテナを有してなり、上記アナログディジタル変換器が設置される側に、上記対向アンテナの送信用アンテナからの合成波を受信する受信用アンテナをさらに備えたことにより、アナログディジタル変換器及び適応フィルタが対向アンテナと離隔して設置される場合であっても、受信用アンテナを介してベースバンドディジタル受信信号を得ることができ、これに基づき素子アンテナの相対振幅及び位相を常時高い精度で推定できる。
【0063】また、上記信号発生手段は、ディジタルランダム信号を発生する信号発生器と、複数の遅延器を従属接続してなり上記信号発生器からの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出するサンプル遅延手段とを備えてなり、上記信号発生器及び上記各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出するようにしたので、サンプル遅延手段を用いて各素子アンテナ側にそれぞれ与える複数のディジタル信号を発生させることができ、素子アンテナの相対振幅及び位相を高い精度で推定できる。
【0064】また、上記信号発生手段は、互いに異なるディジタル信号をそれぞれ発生する複数の信号発生器を備えてなり、この複数の信号発生器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出するようにしたので、複数の信号発生器を用いて互いに異なるディジタル信号を発生させることができ、互いに異なるディジタル信号を用いた場合の素子アンテナの相対振幅及び位相を高い精度で推定できる。
【0065】また、上記信号発生手段は、互いに周波数が異なる正弦波信号をそれぞれ発生する複数の信号発生器を備えてなり、この複数の信号発生器から出力される信号を複数のディジタル信号として送出するようにしたので、複数の信号発生器を用いて互いに周波数が異なる正弦波信号を発生させることができ、互いに異なる正弦波信号を用いた場合の素子アンテナの相対振幅及び位相を高い精度で推定できる。
【0066】また、上記信号発生手段からの複数のディジタル信号を上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離に応じた遅延時間遅延させて上記適応フィルタに出力する複数の距離対応遅延手段をさらに備えたので、上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離を考慮して素子アンテナの相対的な振幅及び位相を常時高い精度で推定できる。
【0067】また、上記信号発生手段とは独立してなり、上記アレーアンテナから送信対象としての受信局に向けての送信データを出力する送信信号源と、この送信信号源からの送信データを上記アレーアンテナの各素子アンテナに対応して分配し、かつそれぞれ複素荷重を乗算した複数の送信データを得る分配手段と、上記複数のデジタルアナログ変換器に入力される複数のディジタル信号に上記分配手段を介した複数の送信データをそれぞれ加算する複数の加算手段とをさらに備えたので、データを送信する場合であっても送信を中断することなく同時にアンテナの測定ができ、アレーアンテナの利用効率が高く、しかもアンテナの励振定数測定に要する時間が少なくて済み、その結果、追従性が向上し素子アンテナの相対的な振幅及び位相を常時高い精度で推定できる。
【0068】また、上記信号発生器の出力をディジタルアナログ変換するディジタルアナログ変換器と、このディジタルアナログ変換器を介した出力を送信するデータリンク用送信アンテナと、このデータリンク用送信アンテナからの送信信号を受信する受信アンテナと、この受信アンテナの出力をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器と、複数の遅延器を従属接続してなり上記アナログディジタル変換器からの出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段とをさらに備え、上記アナログディジタル変換器及び上記受信側サンプル遅延手段の各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として上記適応フィルタに与えるようにしたので、測定に要する時間が少なくて済み、その結果、追従性が向上し素子アンテナの相対的な振幅及び位相を常時高い精度で推定できる上に、主たる演算手段を送信DBFアレーアンテナから離れて設置することができので、送信アレーアンテナを搭載する人工衛星や航空機などがより単純、軽量、小型、低消費電力なもので済む。
【0069】さらに、上記信号発生器からの信号と同一の信号を発生する受信側信号発生器と、この受信側信号発生器からの信号を上記アレーアンテナと上記対向アンテナとの距離に応じた遅延時間遅延させる距離対応遅延手段と、複数の遅延器を従属接続してなり上記距離対応遅延手段を介した出力信号を順次サンプル遅延した出力信号を送出する受信側サンプル遅延手段とをさらに備え、上記距離対応遅延手段及び上記受信側サンプル遅延手段の各遅延器から出力される信号を複数のディジタル信号として上記適応フィルタに与えるようにしたので、測定に要する時間が少なくて済み、その結果、追従性が向上し素子アンテナの相対的な振幅及び位相を常時高い精度で推定できる上に、主たる演算手段を送信アレーアンテナから離れて設置することができので、送信DBFアレーアンテナを搭載する人工衛星や航空機などがより単純、軽量、小型、低消費電力なもので済むと共に、さらに受信側である適応フィルタ側に信号発生器を備えたので、複数のディジタル信号を適応フィルタ側に伝送する必要はなく、信号伝送用機器を不要にすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開平11−23633
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−176043