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【発明の名称】 非線形及び自励システムの周期的定常解演算装置及び方法、周波数解析装置、及び雑音解析装置
【発明者】 【氏名】奥村 万規子

【氏名】谷本 洋

【要約】 【課題】解析の精度を向上させつつ短時間で周期的定常解を演算することができる非線形システムの周期的定常解演算装置を提供する。

【解決手段】周期的外力を加えたことによって周期的に動作している非線形システムの周期的定常解を演算する周期的定常解演算装置において、数値積分手段1と、初期値決定手段2と、収束判定手段3と、積分結果保存手段4と、出力手段5とを具備し、数値積分手段1は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において2次以上の数値積分を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 周期的外力を加えたことによって周期的に動作している非線形システムの周期的定常解を演算する周期的定常解演算装置において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分手段と、この数値積分手段で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分手段にフィードバックする初期値決定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存手段と、この積分結果保存手段に保存された1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力手段と、を具備し、上記数値積分手段は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において2次以上の数値積分を用いることを特徴とする非線形システムの周期的定常解演算装置。
【請求項2】 自励システムの周期的定常解を演算する装置において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分手段と、この数値積分手段で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分手段にフィードバックする初期値決定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存手段と、この積分結果保存手段に保存された1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力手段と、を具備し、上記数値積分手段は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において損失のない数値積分を用いることを特徴とする自励システムの周期的定常解演算装置。
【請求項3】 前記周期的定常解演算装置と、この周期的定常解演算装置で演算した周期解の離散時刻の周期的線形時変パラメータを保存する周期的線形時変パラメータ保存手段と、前記周期的線形時変パラメータを用いて入力から出力までの離散時刻の周期的時変伝達関数を演算する周期的時変伝達関数演算手段と、前記離散時刻の周期的時変伝達関数を用いて出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段と、を具備したことを特徴とする請求項1記載の非線形システムの周期的定常解演算装置を用いた非線形システムの周波数解析装置。
【請求項4】 前記周期的定常解演算装置と、この周期的定常解演算装置で演算した周期解の離散時刻の周期的線形時変パラメータを保存する周期的線形時変パラメータ保存手段と、前記周期的線形時変パラメータを用いて入力から出力までの離散時刻の周期的時変伝達関数を演算する周期的時変伝達関数演算手段と、前記離散時刻の周期的時変伝達関数を用いて出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段と、を具備したことを特徴とする請求項2記載の自励システムの周期的定常解演算装置を用いた自励システムの周波数解析装置。
【請求項5】 前記周波数解析装置を用いて各雑音源から出力までの出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段と、上記出力スペクトルを用いて出力雑音を演算する出力雑音演算手段と、を具備したことを特徴とする請求項3記載の非線形システムの周波数解析装置を用いた非線形システムの雑音解析装置。
【請求項6】 前記周波数解析装置を用いて各雑音源から出力までの出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段と、上記出力スペクトルを用いて出力雑音を演算する出力雑音演算手段と、を具備したことを特徴とする請求項4記載の自励システムの周波数解析装置を用いた自励システムの雑音解析装置。
【請求項7】 前記離散時刻の伝達関数、及び、前記離散時刻の雑音スペクトルを出力する出力手段を備えたことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1つの装置を用いた非線形システム解析装置。
【請求項8】 周期的外力を加えたことによって周期的に動作している非線形システムの周期的定常解を演算する周期的定常解演算方法において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分工程と、この数値積分工程で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分工程にフィードバックする初期値決定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存工程と、この積分結果保存工程で保存された1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力工程と、を具備し、上記数値積分工程は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において2次以上の数値積分を用いることを特徴とする非線形システムの周期的定常解演算方法。
【請求項9】 自励システムの周期的定常解を演算する方法において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分工程と、この数値積分工程で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分工程にフィードバックする初期値決定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存工程と、この積分結果保存工程で保存された1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力工程と、を具備し、上記数値積分工程は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において損失のない数値積分を用いることを特徴とする自励システムの周期的定常解演算方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非線形及び自励システムの周期的定常解演算装置及び方法、周波数解析装置、及び雑音解析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば回路シミュレーションにおける初期値問題として、数値積分とその繰り返し演算によって、非線形回路の周期的定常解を演算する周期的定常解演算手段が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した周期的定常解演算手段では、過去の情報が初期値のみであるため、初めの1ポイントめは1次数値積分法を用いていた。例えば、2次の数値積分法である台形公式では、1つ前の時刻の微分値が必要であり、Gear法では、2つ前の時刻の微分値が必要である。しかしながら、初めの1ポイントめにはそれらの情報がないため、1次積分法を使わざるを得なかった。1次積分法は2次積分法に比べて誤差が大きく、誤差を小さくするためには、非常に細かく時間を離散化する必要があった。
【0004】市販の回路シミュレータは、解析途中のすべての時刻において2次以上の数値積分法を用いることができるが、初めの1ポイントめは1次積分法を用いている。
【0005】また、発振器の雑音を演算する装置として以下の文献[1]があるが、そこでは、損失のある数値積分法を用いているために高精度の解析を行なうことができなかった。
【0006】文献[1]:奥村、谷本、“自励システムの雑音解析装置”、特願平7−341934号。本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、定常解の周期性を利用して周期解の最後の値を用いて初めの1ポイントめから2次以上の数値積分を用いることにより、解析の精度を向上させつつ短時間で周期的定常解を演算することができる非線形システムの周期的定常解演算装置及び方法、周波数解析装置、及び雑音解析装置を提供することにある。
【0007】また、本発明の他の目的は、損失のない数値積分法を用いて高精度のシミュレーション結果を得ることができる自励システムの周期的定常解演算装置及び方法、周波数解析装置、及び雑音解析装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、第1の発明は、周期的外力を加えたことによって周期的に動作している非線形システムの周期的定常解を演算する周期的定常解演算装置において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分手段と、この数値積分手段で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分手段にフィードバックする初期値決定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存手段と、この積分結果保存手段に保存された1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力手段とを具備し、上記数値積分手段は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において2次以上の数値積分を用いる。
【0009】また、第2の発明は、自励システムの周期的定常解を演算する装置において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう演算する数値積分手段と、この数値積分手段で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分手段にフィードバックする初期値決定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定手段と、前記数値積分手段で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存手段と、この積分結果保存手段に保存された1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定手段で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力手段とを具備し、上記数値積分手段は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において損失のない数値積分を用いる。
【0010】また、第3の発明に係る非線形システムの周波数解析装置は、第1の発明において、前記周期的定常解演算装置と、この周期的定常解演算装置で演算した周期解の離散時刻の周期的線形時変パラメータを保存する周期的線形時変パラメータ保存手段と、前記周期的線形時変パラメータを用いて入力から出力までの離散時刻の周期的時変伝達関数を演算する周期的時変伝達関数演算手段と、前記離散時刻の周期的時変伝達関数を用いて出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段とを具備する。
【0011】また、第4の発明に係る自励システムの周波数解析装置は、第2の発明において、前記周期的定常解演算装置と、この周期的定常解演算装置で演算した周期解の離散時刻の周期的線形時変パラメータを保存する周期的線形時変パラメータ保存手段と、前記周期的線形時変パラメータを用いて入力から出力までの離散時刻の周期的時変伝達関数を演算する周期的時変伝達関数演算手段と、前記離散時刻の周期的時変伝達関数を用いて出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段とを具備する。
【0012】また、第5の発明に係る非線形システムの雑音解析装置は、第3の発明において、前記周波数解析装置を用いて各雑音源から出力までの出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段と、上記出力スペクトルを用いて出力雑音を演算する出力雑音演算手段とを具備する。
【0013】また、第6の発明に係る自励システムの雑音解析装置は、第4の発明において、前記周波数解析装置を用いて各雑音源から出力までの出力スペクトルを演算する出力スペクトル演算手段と、上記出力スペクトルを用いて出力雑音を演算する出力雑音演算手段とを具備する。
【0014】また、第7の発明に係る非線形システム解析装置は、第3乃至第6のいずれか1つの装置において、前記離散時刻の伝達関数、及び、前記離散時刻の雑音スペクトルを出力する出力手段を備えている。
【0015】また、第8の発明は、周期的外力を加えたことによって周期的に動作している非線形システムの周期的定常解を演算する周期的定常解演算方法において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分工程と、この数値積分工程で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分工程にフィードバックする初期値決定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存工程と、この積分結果保存工程で保存された1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力工程とを具備し、上記数値積分工程は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において2次以上の数値積分を用いる。
【0016】また、第9の発明は、自励システムの周期的定常解を演算する方法において、決定された解変数の初期値から数値積分を行なう数値積分工程と、この数値積分工程で演算した1周期の積分結果を用いて次の初期値を決定して前記数値積分工程にフィードバックする初期値決定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう収束判定工程と、前記数値積分工程で計算された1周期の積分結果を保存する積分結果保存工程と、この積分結果保存工程で保存された1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していると判断されたときの1周期の積分結果、前記収束判定工程で定常状態に達していないと判断されたときの1周期の積分結果のうち、任意の1周期の積分結果を出力する出力工程とを具備し、上記数値積分工程は、少なくとも最終的に出力する周期解の演算には、初めの1ポイントを含むすべての時刻において損失のない数値積分を用いる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用される非線形システムの周期的定常解演算装置の構成を示すブロック図である。図示のように、この周期的定常解演算装置は、数値積分手段1と、初期値決定手段2と、収束判定手段3と、積分結果保存手段4と、出力手段5と、から構成されている。
【0018】数値積分手段1は、初期値決定手段2で決定した解変数の初期値からシステムの周期Tの時間、数値積分を行なう手段である。初期値決定手段2は、文献[2]、[3]、[4]、[5]に示すようにニュートン法を用いる手法や、数値積分手段1で演算した最後の時刻の解変数の値をそのまま用いる手法を用いて初期値を決定する手段である。
【0019】予め正確な周期がわからない自励システムの場合は、以下の文献[3]、[4]、[5]の方法で周期Tを決定する。
文献[2]:T.J.Aprilic and T.N.Trick,“Steady-state analysis of nonlinear circuits with periodic inputs, ”Proc.IEEF,Vol.60,No.1,pp.108-114,Jan. 1972.文献[3]:K.S.Kundert,J.K.White,and A.Sangiovanni-Vincentelli,Steady-state methods for simulating analog and microwave circuits,Kluwer Academic Publishers,U.S.A.,1990.文献[4]:F.B.Graosz and T.N.Trick, “Some Modifications to Newton'sfor the Determination of the Steady-State Response of Nonlinear Oscillatory Circuits,”IEEE Trans. Comput.-Aided Des. Integrated Circiuts Syst.,Vol.CAD-1. No.3,July 1982.文献[5]:M.Kakizaki and T.Sugawara,“A modified Newton methods forthe steady-state analysis,”IEEE Trans.Comput.-Aided Des.Integrated Circuits Syst.,Vol.CAD-4,No.4,pp.662-667,Oct.1985.収束判定手段3は、解析結果が定常状態に達しているかどうかの判断を行なう手段である。積分結果保存手段4は数値積分手段1で計算した結果を保存する手段である。出力手段5は積分結果保存手段4で保存した結果を出力する手段である。上記出力手段5は繰り返し毎に解析結果を出力することや、最終的に収束して定常状態に達した1周期の積分結果のみを出力することが可能である。
【0020】以下に図2を参照して図1に示す周期的定常解演算装置の動作を説明する。まず、ステップS1において、収束の有無を示すフラグFをBに設定する。F=Bは1周期の積分結果が収束していないことを示す。次に、数値積分手段1によって数値積分を行なって1周期の積分結果を演算する(ステップS2)。次に、ステップS4に進んで、数値積分手段1によって演算した1周期の積分結果が、定常状態に達した数値積分の結果であるかどうかすなわち、F=A(定常状態に達している)であるか、あるいはF=B(定常状態に達していない)であるかを判断する。この時点ではF=Bとなっているので次のステップS5に進んで1周期の積分結果を用いて次の初期値の決定を行なう。その後、その初期値が定常状態に収束しているかどうかを判断する(ステップS6)。このとき収束している場合はF=Aとし(ステップS8)、収束していない場合はF=BのままステップS9に進む。
【0021】ステップS9において、途中結果を出力しない(No)場合はステップS2に戻って数値積分を行なう。ここで、ステップS2の数値積分にはステップS5で決定した初期値を用いる。また、ステップS3では、ステップS2での数値積分手段1による演算と並行して、その演算結果を積分結果保存手段4によって保存する。
【0022】ステップS9において、途中結果を出力する(Yes)場合は出力手段5を介して、ステップS3で保存した解析結果を出力し(ステップS10)、その後、ステップS2に戻って数値積分を行なう。この数値積分にはステップS5で決定した初期値を用いる。途中結果を出力するかどうかはユーザーが指定する。あるいは、あらかじめ決定しておく。
【0023】ステップS6でYes(F=A)となってステップS2に戻って数値積分を行なう場合は、全ての時刻において、2次以上の数値積分法を用いる。次に、ステップS4に進んで収束しているかどうかの判断をするが、この時点で収束している(F=A)の場合はステップS3で保存した演算結果を最終出力として出力手段5を介して出力する。
【0024】最後にステップS11で最終出力であることが確認されたときに処理を終了する。ここで本実施形態による周期的定常解演算装置では、上記したように、少なくとも最終的に出力する定常状態に達した1周期の積分結果については、その1周期の積分結果の数値積分のすべての時刻において、2次以上の数値積分を用いることを特徴とする。
【0025】例えば、台形公式を用いる場合、1ポイント前の時刻の変数の値と微分値が必要である。したがって、図3に示す時間目盛において、τ1 時刻の計算のためには、0時刻の解変数の値と微分値が必要である。しかしながら、初期値問題として微分方程式を解く場合、与えられるのは初期値のみであり、0時刻の微分値はわからない。そこで従来は、τ1 時刻の数値積分には1つ前の時刻の微分値は必要とせず、1つ前の時刻の変数の値だけで演算できる1次積分法(後退オイラー法)を使わざるを得なかった。
【0026】市販の回路シミュレータには、解析途中のすべての時刻において、2次の数値積分を用いるものがあるが、その場合も第1ポイントめは例外として、1次の数値積分を使わざるを得なかった。1次積分法は2次積分法より誤差が大きくなり、誤差を小さくするためには数値積分の刻み幅を非常に細かく取る必要があった。
【0027】これに対して、本実施形態による周期的定常解演算装置では、図4に示すように、周期的定常解において、0時刻の値は周期T時間後の値と等しい事を利用し、初めの時刻(図3のτ1 )の計算にも、2次以上の数値積分法を用いることができる。台形公式の場合は、T(T=τP )時刻の変数の値と微分値を用い、また、2次のGear法の場合は、τP 時刻とτP-1 時刻の変数の値を用いる。
【0028】初期値決定手段2で、数値積分手段1で演算した最後の時刻の変数の値をそのまま用いて初期値を決定する場合には、過渡解析を何周期か行う手法と同じだから、最終出力に限らず、毎周期ごとに、1ポイントめから2次以上の数値積分法を用いることができる。
【0029】図5及び図6は、LCフィルタの周期的定常解演算結果を示す図である。図5は第1ポイントに1次の数値積分法の後退オイラー法を用いたものであり、図6は第1ポイントに2次の数値積分法の台形公式を用いた結果を示している。図5と図6で、数値積分の刻みはそれぞれ同じ固定刻み幅を用いた。図5では初めの1ポイントめに1次積分法を用いたため、その誤差が何周期かに渡って影響している。市販の回路シミュレータで‘すべて台形公式’の項目を選択した場合でも、第1ポイントめは1次の数値積分法を用いているため、LCフィルタの解析結果は図5のように誤差を含んだものになる。
【0030】周期的定常解を演算する目的の一つに、2信号を加えたときの相互歪みを観測する場合がある。回路設計の段階で相互歪みを見積もることは非常に重要である。たとえば、図7のように、周波数がf1 とf2 である2つの信号を加えたとき、f2 −f1 ,2f1 −f2 ,2f2 −f1 の周波数成分を見るとする。このためには、周期的定常解の何周期分かをフーリエ変換するが、ここでもし、インパルス状の誤差を含んだ周期的定常解をフーリエ変換すると、図8に示すように、誤差による雑音で、観測したい成分が隠れてしまう。このように、周波数定常解が精度の良いものでないと、小さい相互歪みの成分を正しく観測することができない。
【0031】このように、図5に示すように誤差を含んだ周期的定常解では、誤差による雑音で歪み成分が隠れてしまうが、本実施形態による周期的定常解演算装置では、歪み成分も正しく観測できる。
【0032】以下に、本発明の第2実施形態を図面を参照して説明する。図9は本発明の第2実施形態が適用される自励システムの周波数解析装置の構成を示すブロック図である。図示のように、この周波数解析装置は、周期的定常解演算手段6と、周期的線形時変パラメータ保存手段7と、離散時刻の周期的時変伝達関数演算手段8と、出力スペクトル演算手段9と、出力雑音演算手段10と、から構成されている。
【0033】周期的定常解演算手段6は、損失のない数値積分法を用いて周期的定常解を演算する手段である。定常解が得られるまで数値積分を行なう方法や、シューティング法(前記した文献[3][4])を用いて演算する手法がある。
【0034】以下に、損失のない数値積分法を用いる理由を図10に示す簡単な発振器のモデルを用いて説明する。図10の回路はRLCの共振器と負性抵抗−rから成る。ここで、負性抵抗−rは能動素子の利得を意味する。回路が定常的に発振しているとき、負性抵抗値rと抵抗Rは等しく、R−r=0で、回路のQは無限大となる。しかしながら、損失のある数値積分を用いて発振しているシミュレーション結果では、図11に示すように、数値積分のために生じた損失RL ,RC を含めて発振しているため、R+RL +RC −r=0となる。すなわち、過剰な負性抵抗が数値積分の損失を補っている。この過剰な負性抵抗が等価回路のQを減少させており、雑音の周波数特性の精度が大幅に落ちてしまう。
【0035】その結果、位相雑音のシミュレーション結果は図12に示すように、発振周波数の近傍で平らになってしまう。位相雑音は図13に示すように、1/f雑音が支配的な周波数では離調周波数に対して、9dB/octaveで減少し、白色雑音が支配的な周波数では離調周波数に対して、6dB/octaveで減少することが知られている(文献[6])。ここで、横軸の周波数はlogスケールである。このように、損失のある数値積分を使うと、離調周波数の近傍の雑音が正しくシミュレーションできない。
【0036】文献[6]:D.B.Leeson, “A simple model of feedback oscillator noisespectrum, ”Proceedings of the IEEE,pp.329−330,Feb.1966.
上記したように、第2実施形態では、数値積分は主に損失のない手法を用いる。損失のない数値積分法の一つには台形公式がある。また、第1実施形態で説明した非線形システムの解析装置と同様に、自励システムの定常解の周期性を利用し、第1ポイントめから、2次積分を用いることを特徴とする。
【0037】周期的線形時変パラメータ保存手段7では、周期的定常解演算手段6で演算した周期的定常解の一周期に渡る数値積分の各離散時間ごとに、自励システムの線形パラメータを保存する手段である。例えば、次式で表される自励システムを考える。
【0038】
【数1】

【0039】(1)式で表されるシステムは安定な1周期の積分結果yst(t) を持つと仮定する。
st(t+T)=yst(t) (2)
(2)式の1周期の積分結果の線形時変パラメータは次の(3)式の左辺の行列を構成する各小行列、Jm ,Km である。この例では、初めの1ポイントを含むすべての時刻で損失のない2次の数値積分法である台形公式を用いた。
【0040】
【数2】

【0041】
【数3】

【0042】ここで、h,P,τの定義は図14に示す通りである。Xm ,for m=12,…,Pは離散時刻の周期的時変伝達関数であり、uは雑音源の位置を表すベクトルである。例えば、雑音源を等価電流源で置き換え、回路方程式をMNA(修正接点解析法)を用いて作成した場合、等価電流源の正のノードの変数が−1、負のノードの変数が1で、他の変数はすべて0であるベクトルとなる。
【0043】周期的線形時変パラメータ保存手段7は、(3)式の左辺の小行列Jm ,Km,for m=1,2,3,…,P、あるいは、Jm ,Km を構成するために必要な情報、あるいは、(3)式のXm ,for m=1,2,…,Pを演算するために必要な情報を保存する手段である。
【0044】離散時刻の周期的時変伝達関数演算手段8では、周期的線形時変パラメータ保存手段7で保存した情報を用いて、(3)式のXm ,for m=1,2,…,Pを演算する手段である。(3)式を解く手法としてはLU分解法やKrylov subspace を用いる方法[7]などがある。
【0045】文献[7]:R.Telichevesky,K.S.Kundert and J.White, “Efficient AC andNoise Analysis of Two-Tone RF Circuits,”in Proc.Design Automation Conferense,June 1996.出力スペクトル演算手段9は、離散時刻の周期的時変伝達関数を用いて、そのフーリエ成分を数値的に演算する手段である。周期的時変伝達関数H(Ω,t)とそのフーリエ成分Hc (Ω)の関係は以下の通りである。
【0046】
【数4】

【0047】ここで、ω0 =2π/T,Tは自励システムの周期である。これらのフーリエ成分の意味は、H0 (Ω)は入力周波数Ωと同じ周波数に出力される成分の伝達関数であり、Hc (Ω)(cは0でない)は周波数変換されてΩ+cω0 に出力される成分の伝達関数と考えることができる。
【0048】出力雑音演算手段10は、出力スペクトル演算手段9で演算した出力スペクトルを用いて雑音源からの電力スペクトル密度を演算する手段である。ある雑音源からの周期的時変回路の出力雑音電力スペクトル密度は(5)式で表されることが知られている。
【0049】
【数5】

【0050】ここで、sn は雑音源の電力スペクトル密度であり、白色雑音では周波数に依存しない定数となる。Hc (ω−cω0 )は入力周波数がω−cωのとき周波数変換されて、周波数ωに現れる成分の伝達関数を表している。それぞれのHc (ω−cω0 )については出力スペクトル手段9で演算する。
【0051】ここで、前記した離散時刻の周期的時変伝達関数演算手段8で演算した入力uからの離散時刻の伝達関数、X1 (Ω),X2 (Ω),…,XP (Ω)はH(jΩ,τ1 )u,H(jΩ,τ2 )u,…,H(jΩ,τP )uに対応する。(5)式の出力雑音電力スペクトル密度は1つの雑音源からの出力雑音である。全雑音源からの出力雑音電力スペクトル密度を演算するにはそれぞれの電力スペクトル密度を全て足し合わせる。
【0052】本実施形態における周波数解析装置では、離散時刻の周期的時変伝達関数演算手段8で演算した離散時刻の周期的時変伝達関数、X1 (Ω),X2 (Ω),…,XP (Ω)の周波数を固定し、それらを表示することが可能である。
【0053】雑音解析装置では、指定された雑音源の電力スペクトル密度の平方根、例えばコンダクタンスGの熱雑音の場合、(4kTG)1/2 をXm (Ω),m=1,2…,Pに掛けたもの、あるいはその電力を表示する。
【0054】図15は、横軸に時間を取り、トランジスタのベース抵抗RBの熱雑音の出力雑音の周波数を固定し、その1周期の時間変化を表示したものである。このように統計的性質が周期的に変化する雑音を周期定常確率過程の雑音と呼ぶ。定常確率過程の雑音は周期的時変伝達関数を通過することにより、その出力雑音は周期定常確率過程となる。本実施形態による雑音解析装置では、周期的定常確率過程の雑音を演算し、表示することが可能である。図15の結果は時間領域の周期的定常確率過程の雑音であり、(5)式に基づいて演算した雑音は周波数領域の雑音である。
【0055】また、ダイオードのショット雑音のように雑音源の電力スペクトル密度が1周期の間で変化するもの(雑音源が周期的定常確率の場合)の出力雑音は以下の文献[7]、[8]の手法を用いて演算する。
【0056】文献[7]:奥村万規子,谷本洋,菅原勉,“二つの入力信号を持つ非線形回路の計算機による雑音解析,”電子情報通信学界論文誌A,vol.J73−A,No.8,1990年8月.
文献[8]:Makiko Okumura,Hiroshi Tanimoto,Tetsuro Itakura,and Tsutomu Sugawara, “Numerical Noise Analysis for Nonlinear Circuits with a Periodic Large Signal Excitation including Cyclostationary Noise Sources,”IEEE Transactions on Circuits and Systems,I:Fundamental Theory and Applications,vol.40,No.9,CAS-I,Sept.1993.雑音源が周期定常確率過程の場合の時間領域の雑音の表示としては、【0057】
【数6】

【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、周期的定常解の計算の初めの1ポイントめから2次以上の数値積分を用いることにより、高精度に、また、数値積分刻みを細かく取る必要がなく、短時間で周期的定常解を演算することが可能となる。
【0059】また、発振器や周期的非線形回路の雑音を演算する装置において、損失のない数値積分法を用いることで、精度よく雑音をシミュレーションすることが可能となる。また、時間域の周波数特性、あるいは、雑音特性を表示することは、回路設計者に有用な情報を与えることとなる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成9年(1997)6月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【公開番号】 特開平11−23632
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−174680