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【発明の名称】 電力系統の負荷高調波特性測定方法
【発明者】 【氏名】元治 崇

【氏名】須崎 嘉樹

【氏名】澤田 賢良

【氏名】西村 荘治

【氏名】志方 俊彦

【要約】 【課題】SC開閉法において、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定する方法を提供する。

【解決手段】10秒以内の間にコンデンサ8の開閉を行い、コンデンサ8の投入直前1秒以内(a)と投入直後1秒以内(b)の系統条件を測定して当該系統条件から第1の負荷高調波特性(Yn1およびIgn1 )を求め、コンデンサ8の開放直前1秒以内(c)と開放直後1秒以内(d)の系統条件を測定して当該系統条件から第2の負荷高調波特性(Yn2およびIgn2 )を求める。そしてこの第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較し、両特性が互いにほぼ等しい場合に当該第1または第2の負荷高調波特性を測定結果として採用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 測定しようとする電力系統に設けたコンデンサの開閉によって系統条件を変動させて、この変動の前後の系統条件から電力系統の負荷高調波特性を測定する方法において、10秒以内の間に前記コンデンサの開閉を行い、当該コンデンサの投入直前1秒以内と投入直後1秒以内の系統条件を測定して当該系統条件から第1の負荷高調波特性を求め、当該コンデンサの開放直前1秒以内と開放直後1秒以内の系統条件を測定して当該系統条件から第2の負荷高調波特性を求め、この第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較し、両特性が互いにほぼ等しい場合に当該第1または第2の負荷高調波特性を測定結果として採用することを特徴とする電力系統の負荷高調波特性測定方法。
【請求項2】 測定しようとする電力系統に設けたコンデンサの開閉によって系統条件を変動させて、この変動の前後の系統条件から電力系統の負荷高調波特性を測定する方法において、前記コンデンサの開閉を行って、当該コンデンサの開放直前1秒以内と開放直後1秒以内の系統条件を測定して当該系統条件から負荷高調波特性を求めてそれを測定結果として採用することを特徴とする電力系統の負荷高調波特性測定方法。
【請求項3】 測定しようとする電力系統に設けたコンデンサの開閉によって系統条件を変動させて、この変動の前後の系統条件から電力系統の負荷高調波特性を測定する方法において、前記変動の前後の系統条件から前記負荷高調波特性を測定すると共に、この測定に用いたのと同じ系統条件から、変電所変圧器を含んだ上位側のインピーダンスをも測定し、このインピーダンスの測定結果を理論値と比較し、両者の値が互いにほぼ等しい場合に、そのときに測定した負荷高調波特性を測定結果として採用することを特徴とする電力系統の負荷高調波特性測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電力系統に設けたコンデンサを開閉(入切)することによって、その前後の系統条件から、電力系統の負荷高調波特性(より具体的には負荷高調波アドミタンスおよび負荷高調波電流源電流)を測定する方法(いわゆるSC開閉法)の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の測定方法はSC(力率改善用コンデンサ)開閉法と呼ばれており、その概略は次のとおりである。
【0003】図6に、電力系統の一例を簡略化して示し、図7にその等価回路を示す。上位系統2に変電所変圧器4を経由して幾つかの配電系統6が接続されている。図中の符号の意味は以下のとおりである。nは任意の正の整数である。通常は、第5調波に注目することが多い。
【0004】
Esn:上位系統のn次調波相電圧(二次側換算値)
Vn :配電系統のn次調波相電圧Ign:配電線負荷のn次調波電流源電流In :変電所変圧器の二次側を流れるn次調波電流Ztn:変電所変圧器を含んだ上位側のn次調波インピーダンス(二次側換算値)
Yn :配電線負荷のn次調波アドミタンスYsn:一定な容量性のn次調波アドミタンス【0005】図7の等価回路において、次式が成立する。
【0006】
【数1】
Esn=Vn +ZtnInIn =(Yn +Ysn)Vn −IgnVn =(Esn+ZtnIgn)/{1+Ztn(Yn +Ysn)}
【0007】ここで、Esn、Vn およびIn は実測することができ、ZtnおよびYsnは計算で求めることができるけれども、これらの値を数1のVn の式に代入しても、Yn およびIgnの二つが明らかでないため、Yn およびIgnの値を個別に求めることはできない。従って、単に、Esn、Vn およびIn を計測するだけでは、配電線を適切な高調波等価回路にモデル化して、精度の高い高調波特性解析を行うことができない。
【0008】この問題を解決するのがSC開閉法であり、そのためのコンデンサ(力率改善用コンデンサ)8およびスイッチ10を図6の電力系統に付加した電力系統を図8に、その等価回路を図9にそれぞれ示す。図9(a)はコンデンサ8の投入前、図9(b)は投入後の等価回路である。なお、上記Ysnは一定で既知であるため、図8および図9においては(更に図2においても)それを省略している。
【0009】コンデンサ8の投入前後において、Esn、Yn およびIgnが変化しないものと仮定すると、コンデンサ8の投入前は、図9(a)の等価回路より、次式が成立する。
【0010】
【数2】
Ina=YnVna−IgnEsn=Vna+ZtnIna【0011】コンデンサ8の投入後は、図9(b)の等価回路より、次式が成立する。
【0012】
【数3】
Inb=YnVnb+YcnVnb−IgnEsn=Vnb+ZtnInb【0013】上記数2および数3において、Vn およびIn の添字aはコンデンサ8の投入前、添字bは投入後をそれぞれ表す。
【0014】上記数2および数3より、次式が成立し、これによってn次調波アドミタンスYn およびn次調波電流源電流Ignの値を個別に求めることができる。また、上記インピーダンスZtnを求めることもできる。
【0015】
【数4】
Yn =YcnVnb/(Vna−Vnb)−1/ZtnIgn=Esn/Ztn−YcnVnaVnb/(Vna−Vnb)
Ztn=(Vna−Vnb)/(Inb−Ina)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上記測定方法において、コンデンサ8の投入前後の測定中に、コンデンサ8の開閉以外の要因によって系統条件が変化した場合、例えば何らかの原因で上位系統2の高調波条件が変動した場合、下位の配電系統6の高調波条件も変動し、コンデンサ8の投入による変動分以外の変動条件も加わるため、正しい負荷高調波特性(具体的には前述したYn およびIgn)を求めることができない。
【0017】また、当然ながら、配電系統6の負荷変動等によって負荷高調波特性そのものが変動した場合も、それらの正しい値を求めることはできない。
【0018】そこでこの発明は、SC開閉法において、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定する方法を提供することを主たる目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】この発明に係る第1の測定方法は、10秒以内の間に前記コンデンサの開閉を行い、当該コンデンサの投入直前1秒以内と投入直後1秒以内の系統条件を測定して当該系統条件から第1の負荷高調波特性を求め、当該コンデンサの開放直前1秒以内と開放直後1秒以内の系統条件を測定して当該系統条件から第2の負荷高調波特性を求め、この第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較し、両特性が互いにほぼ等しい場合に当該第1または第2の負荷高調波特性を測定結果として採用することを特徴としている。
【0020】また、この発明に係る第2の測定方法は、前記コンデンサの開閉を行って、当該コンデンサの開放直前1秒以内と開放直後1秒以内の系統条件を測定して当該系統条件から負荷高調波特性を求めてそれを測定結果として採用することを特徴としている。
【0021】また、この発明に係る第3の測定方法は、前記変動の前後の系統条件から前記負荷高調波特性を測定すると共に、この負荷高調波特性の測定に用いたのと同じ前記変動の前後の系統条件から、変電所変圧器を含んだ上位側のインピーダンスをも測定し、このインピーダンスの測定結果を理論値と比較し、両者の値が互いにほぼ等しい場合に、そのときに測定した負荷高調波特性を測定結果として採用することを特徴としている。
【0022】上記第1の測定方法によれば、■10秒以内という短時間の間にコンデンサの開閉を行うので、測定期間中に、コンデンサの開閉以外の要因によって系統条件が変動する可能性を小さくすることができる。■更に、第1の負荷高調波特性を求めるための系統条件の測定を、コンデンサの投入直前および直後のそれぞれ1秒以内という極めて短時間の間に行うので、この測定期間中においても系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができる。■同様に、第2の負荷高調波特性を求めるための系統条件の測定を、コンデンサの開放直前および直後のそれぞれ1秒以内という極めて短時間の間に行うので、この測定期間中においても系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができる。上記■〜■の理由から、測定期間中に系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができる。
【0023】上記のようにして求めた第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較してほぼ等しければ、測定期間中に、コンデンサの開閉以外の要因による系統条件の変動はなかったと言うことができる。反対に、第1および第2の負荷高調波特性がほぼ等しくなければ、測定期間中に、コンデンサの開閉以外の要因によって系統条件が変動したと考えられ、二つの負荷高調波特性の内のどちらかが、または両方共が、正しく測定されていないと言える。
【0024】従って、第1および第2の負荷高調波特性が互いにほぼ等しいときのものを測定結果として採用することよって、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定することができる。
【0025】ところで、上述したように、第1の負荷高調波特性は、それを求めるための系統条件の測定を、コンデンサの投入直前および直後のそれぞれ1秒以内という極めて短時間の間に行うので、その測定期間中に系統条件が変動する可能性は非常に小さい。第2の負荷高調波特性についても同様である。従って、このようにして求めた第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較せずに、どちらか一方の負荷高調波特性をそのまま測定結果として採用しても、かなり正確な測定結果を得ることができる。
【0026】その内でも、第1の負荷高調波特性を求めるときはコンデンサの投入による過渡変動が電力系統に比較的長時間続いているのに対して、第2の負荷高調波特性を求めるときはコンデンサの開放による過渡変動が電力系統に殆ど生じないので、過渡変動の影響を避けながら測定期間をより短くして系統条件変動の影響をより少なくすることができ、従って第2の負荷高調波特性の方をそのまま測定結果として採用する方が、より正確な測定結果を得ることができる。この発明に係る上記第2の測定方法は、このような測定を行うものである。しかもこのようにすれば、第1の負荷高調波特性を求める工程が不要になり、かつ第1と第2の負荷高調波特性を互いに比較する工程も不要になり、更に比較の結果差が生じた場合にどちらが正しいか分からないために差が生じなくなるまで測定をやり直さなければならないという作業も不要になるので、測定作業が非常に簡単になる。
【0027】更に、第1の負荷高調波特性を求める際に、同時に計算により変電所変圧器を含んだ上位側のインピーダンスが求まる。このインピーダンスの値は、変電所変圧器のインピーダンスと上位側送電線の線路インピーダンスとを合わせたものであるが、変電所変圧器は、一定の規格に従って製作されており、そのインピーダンスは一定と考えられる。また、上位側の送電線のインピーダンスも一定と考えられ、更に変電所変圧器のインピーダンスよりかなり小さい。従って、この上位側のインピーダンスは、変電所変圧器のインピーダンスでほぼ決定される。この値を理論値とする。つまり、上位側インピーダンスの測定結果が、変電所変圧器を含む上位側のインピーダンスの理論値とほぼ等しければ、負荷高調波特性も正確に測定できていると言える。上記第3の測定方法は、この考えに基づくものである。
【0028】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る測定方法におけるコンデンサの開閉状況を示す図である。図2は、コンデンサの投入前(a)、投入後(b)、開放前(c)および開放後(d)の電力系統の等価回路図である。電力系統の構成は、図8と同様であるのでそれを参照するものとする。図6〜図9の従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0029】この発明に係る測定方法では、図1に示すように、短い時間tの間に、前述したコンデンサ8の開閉(具体的にはスイッチ10の開閉)を行い、次のようにして、コンデンサ8の投入直前(図1中の測定時点a)と投入直後(図1中の測定時点b)の系統条件を測定して当該系統条件から第1の負荷高調波特性(具体的には前述したアドミタンスYn および電流源電流Ign)を求め、コンデンサ8の開放直前(図1中の測定時点c)と開放直後(図1中の測定時点d)の系統条件を測定して当該系統条件から第2の負荷高調波特性(具体的にはアドミタンスYn および電流源電流Ign)を求める。
【0030】経験によれば、10秒を超えると電力系統の条件(具体的には上位系統2の高調波条件および/または下位側の配電系統6の負荷高調波特性)が変動する可能性が大きいので、コンデンサ8の開閉を行う上記時間tは、10秒以内という短時間にするのが好ましく、その内でもこれまでの経験から、5秒以内であれば系統条件は殆ど変動しないので、5秒以内にするのがより好ましい。
【0031】更に、測定期間中の系統条件の変動をできる限り排除するために、測定時点aは、コンデンサの投入直前の1秒以内、好ましくは0.5秒以内に持って来るのが良く、その内でもコンデンサ投入時点に限り無く近づけるのがより好ましい。同様の理由から、測定時点bも、コンデンサ投入直後の1秒以内、好ましくは0.5秒以内に持って来るのが好ましく、その内でもコンデンサ投入時点により近づけるのが好ましい。これは、経験から、2〜3秒程度で系統条件が変動する場合がたまにあり、上記のようにすれば測定時点a〜b間の時間が2(=1+1)秒以内になるのでその間に系統条件の変動が起こるのをほぼ確実に排除することができ、測定時点a〜b間の時間を1(=0.5+0.5)秒以内にすればより確実に排除することができるからである。但し、コンデンサ投入直後は、コンデンサ投入による過渡変動が電力系統に比較的長時間続くので、その間に測定時点bを持って来るのは避けるのが好ましい。
【0032】例えば、図3および図4に、関西電力株式会社のT変電所においてコンデンサ投入時(図3)および開放時(図4)の前述した変電所変圧器の二次側電流In(但しここでは基本波)を実測した結果を示す。図3から、コンデンサ投入直後約20ms程度は過渡変動が続いていることが分かる。図4から、コンデンサ開放時は過渡変動は殆ど生じていないことが分かる。なお、図4においてコンデンサ開放に時間幅があるのは、スイッチ(実際は遮断器)10を遮断してコンデンサ8を開放するとき、細かく見ると、コンデンサ8に流れる三相電流は、各相の電流が完全に零になった時点で順次遮断されるため、遮断器10の遮断指令から遮断完了までに通常は1/4サイクル(約4ms)程度を要するからである。
【0033】上記実測結果から、コンデンサ投入時の過渡変動が測定に影響するのを避けるために、測定時点bは、厳密に言えば、コンデンサ投入時点から20ms以上離す(遅らす)方が好ましい。安全を見て、100ms程度離せば、過渡変動の影響は全くなくなると言える。
【0034】同じく測定期間中の系統条件の変動をできる限り排除するために、測定時点cは、コンデンサ開放直前の1秒以内、好ましくは0.5秒以内に持って来るのが良く、その内でもコンデンサ開放時点に限り無く近づけるのがより好ましい。同様の理由から、測定時点dも、コンデンサ開放直後の1秒以内、好ましくは0.5秒以内に持って来るのが好ましく、その内でもコンデンサ開放時点に限り無く近づけるのがより好ましい。その理由は上記と同じである。また、コンデンサ開放直後は、図4を参照して上に説明したように、コンデンサ開放による電力系統の過渡変動は殆ど生じないので、測定時点dはコンデンサ開放時点に限り無く近づけても良い。但し、上述したように、コンデンサ開放用のスイッチ(遮断器)10は、遮断指令後完全に電流遮断するまでに1/4サイクル程度を要するので、これを考慮する必要はある。
【0035】なお、上記各測定時点a〜dにおけるデータ収集は、最低1サイクルあれば行うことができるけれども、測定誤差を少なくする観点からは、複数サイクル(例えば8サイクル)分のデータを収集して、これを例えば高速フーリエ変換器によって平均化したデータを測定結果として採用するのが好ましい。
【0036】コンデンサ8の投入前、投入後、開放前および開放後の等価回路を図2(a)、(b)、(c)および(d)にそれぞれ示す。ここで、Ycnは、投入するコンデンサ8のn次調波アドミタンスである。また、添字a〜dは、コンデンサ8の投入前、投入後、開放前および開放後をそれぞれ表す。
【0037】コンデンサ8の投入前(図2(a))および投入後(図2(b))から、数2および数3の場合と同様に、次の数5の連立方程式が成立する。
【0038】
【数5】
Vna=(Esna +ZtnIgna )/(1+ZtnYna)
Vnb=(Esnb +ZtnIgnb )/{1+Ztn(Ynb+Ycn)}
Ztn=(Vna−Vnb)/(Inb−Ina)
【0039】ここで、数6の条件が成立すると仮定したとき、即ちコンデンサ8の投入前および投入後で上位系統2の高調波条件および下位の配電系統6の負荷高調波特性が変化していないと仮定したとき、数7が成立する。このときの負荷高調波特性を表すn次調波アドミタンスをYn1、n次調波電流源電流をIgn1 とする。
【0040】
【数6】
Yna=Ynb=Yn1Igna =Ignb =Ign1Esna =Esnb =Esn【0041】
【数7】
Yn1=YcnVnb/(Vna−Vnb)−1/ZtnIgn1 =Esn/Ztn−YcnVnaVnb/(Vna−Vnb)
【0042】同様に、コンデンサ8の開放前(図2(c))および開放後(図2(d))から、次の数8の連立方程式が成立する。
【0043】
【数8】
Vnc=(Esnc +ZtnIgnc )/{1+Ztn(Ync+Ycn)}
Vnd=(Esnd +ZtnIgnd )/(1+ZtnYnd)
Ztn=(Vnd−Vnc)/(Inc−Ind)
【0044】ここで、数9の条件が成立すると仮定したとき、即ちコンデンサ8の開放前および開放後で上位系統2の高調波条件および下位の配電系統6の負荷高調波特性が変化していないと仮定したとき、数10が成立する。このときの負荷高調波特性を表すn次調波アドミタンスをYn2、n次調波電流源電流をIgn2 とする。
【0045】
【数9】
Ync=Ynd=Yn2Ignc =Ignd =Ign2Esnc =Esnd =Esn【0046】
【数10】
Yn2=YcnVnc/(Vnd−Vnc)−1/ZtnIgn2 =Esn/Ztn−YcnVndVnc/(Vnd−Vnc)
【0047】そして、上記数7および数10でそれぞれ求めた負荷高調波特性を互いに比較し、より具体的にはここでは、互いに対応するYn1とYn2とを互いに比較し、かつIgn1 とIgn2 とを互いに比較し、各特性がそれぞれ互いにほぼ等しい(即ちYn1≒Yn2かつIgn1 ≒Ign2 )場合に、数7または数10で求めた負荷高調波特性(Yn およびIgn)を測定結果として採用する。ほぼ等しくない場合は、正しい負荷高調波特性を求めたとは言えないので、どちらの特性も、測定結果として採用しない。この場合は、例えば再度測定を行う。
【0048】これは、数7および数10で求めた負荷高調波特性が互いに等しければ、数6および数9が同時に成り立ち、これは即ち、Esn、Yn およびIgnが、コンデンサ開閉による計測の間に変動がなく、従って求められた負荷高調波特性(Yn およびIgn)も正しい結果を表していると言えるからである。
【0049】上記のようにして第1および第2の負荷高調波特性が互いにほぼ等しいときのものを測定結果として採用することよって、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定することができる。
【0050】なお、上記のようにコンデンサ8の開閉の前後の4点a〜dで計測するのではなく、3点a〜cで計測する測定方法が同一出願人によって別途提案されている。この測定方法は、図5に示すように、10秒以内(好ましくは5秒以内)の時間tの間に上記コンデンサ8の開閉を行い、コンデンサ8の投入前(測定時点a)と投入後(測定時点b)の電力系統から数7の場合と同様にして第1の負荷高調波特性(Yn1およびIgn1 )を求め、コンデンサ8の投入後(測定時点b)と開放後(測定時点c)の系統条件から数10の場合と同様にして第2の負荷高調波特性(Yn2およびIgn2 )を求め、この第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較し、両特性が互いにほぼ等しい場合に当該第1または第2の負荷高調波特性を測定結果として採用するものである。
【0051】この別途提案の測定方法に対する本願発明の利点を説明すれば次のとおりである。即ち、別途提案の測定方法の場合は、コンデンサ投入直後の計測を行うためには測定時点bをコンデンサ投入時点に近づけるのが好ましい。これは、測定時点bをコンデンサ投入時点から遅らせるほど、他の要因による系統条件の変動が入り込む余地が大きくなるからである。そのために、測定時点bとc間の時間t6はコンデンサ開閉の時間tにほぼ等しくするのが最短であり、この時間t6とバランスを取るために測定時点aとb間の時間t5も時間tにほぼ等しくしており、従って上記第1または第2の負荷高調波特性を求めるための測定期間(t5またはt6)は、それぞれ、時間tを5秒とすれば約5秒、時間tを10秒とすれば約10秒と、比較的長くなる。また、全測定期間、即ち測定時点aからcまでの時間(t5+t6)は、時間tを5秒とすれば約10秒、時間tを10秒とすれば約20秒と、かなり長くなる。
【0052】そのために、測定期間中に系統条件が変動する可能性が比較的大きく、それによって、上記のようにして求めた第1および第2の負荷高調波特性が互いにほぼ一致しない場合がしばしば生じる。その場合は、どちらの特性が正しいかは分からないので両特性がほぼ一致するまで何度も測定をやり直さなければならず、非常に手間がかかる。例えば、実験によれば、上記時間t5を5秒としても、2回に1回程度しか、即ち50%前後の確率でしかほぼ一致しない。
【0053】これに対してこの発明の測定方法では、前述したように、第1または第2の負荷高調波特性を求めるための測定期間(t1+t2またはt3+t4)は、それぞれ、2(=1+1)秒以内(好ましくは1秒以内)という極めて短時間にするので、この各測定期間中に系統条件が変動する可能性は非常に小さい。即ち、測定期間を2秒としても、その間に系統条件が変動する可能性は別途提案の測定方法の場合の2/5〜2/10になる。
【0054】更に、全測定期間、即ち測定時点aからdまでの時間(t1+t+t4)も、時間tを5秒とすれば7秒(t1とt4を0.5秒にすれば6秒)、時間tを10秒とすれば12秒(t1とt4を0.5秒にすれば11秒)となり、別途提案の測定方法の場合の7/10〜12/20になるので、全測定期間中に系統条件が変動する可能性も非常に小さくなる。
【0055】上記二つの理由から、この発明の測定方法の方が、測定期間中に系統条件が変動する可能性が小さく、それゆえに、上記のようにして求めた第1および第2の負荷高調波特性が互いにほぼ一致しない可能性は非常に小さい。従って、測定をやり直す必要性は殆ど生じないので、測定が簡単になる。例えば、実験によれば、t=5秒、t1=t3=t4=0.3秒、t2=0.4秒とした場合、第1および第2の負荷高調波特性は90%前後の確率でほぼ一致した。
【0056】ところで、この発明に係る測定方法では、上に説明したように、第1および第2の負荷高調波特性を求めるための測定期間中に系統条件が変動する可能性は非常に小さいので、上記のようにして求めた第1および第2の負荷高調波特性を互いに比較せずに、どちらか一方の負荷高調波特性をそのまま測定結果として採用しても、かなり正確な測定結果を得ることができる。
【0057】その内でも、前述したように、第1の負荷高調波特性を求めるときはコンデンサ8の投入による過渡変動が電力系統に比較的長時間続いているのに対して、第2の負荷高調波特性を求めるときはコンデンサ8の開放による過渡変動が電力系統に殆ど生じないので、過渡変動の影響を避けながら測定期間をより短くして系統条件変動の影響をより少なくすることができ、従って第2の負荷高調波特性、即ちコンデンサ開放の直前と直後から求めた負荷高調波特性の方をそのまま測定結果として採用する方が、より正確な測定結果を得ることができる。この発明に係る第2の測定方法は、このような測定を行うものである。しかもこのようにすれば、第1の負荷高調波特性を求める工程が不要になり、かつ第1と第2の負荷高調波特性を互いに比較する工程も不要になり、更に比較の結果差が生じた場合にどちらが正しいか分からないために差が生じなくなるまで測定をやり直さなければならないという作業も不要になるので、測定作業が非常に簡単になる。
【0058】また、数5と数8において、計算上負荷高調波特性と同時に求まる(即ち、同じ系統条件を用いて求まる)上位側インピーダンスを求め、この結果が理論値とほぼ等しければ、そのときの負荷高調波特性も正確に測定されていると言える。例えば、基本波において、上位側インピーダンスの内、変電所変圧器のインピーダンスは10MVAベースで約8%、それより上位の送電系統のインピーダンスは1%程度と言われており、合計で約9%と言われている。これが第5次調波では45%となり、これはオーム値で1.9602Ωである。次の実施例ではこの値を理論値として採用した。
【0059】即ち、関西電力株式会社のT変電所において測定を行った結果を表1に示す。この表は、上位側インピーダンスと負荷高調波特性の第5次調波の結果である。ここで、理論値との差は、次式に従ってベクトル計算で求めた。上位側第5次調波インピーダンスの理論値をZt5t とし、測定値をZt5とした。
【0060】
【数11】理論値との差=(Zt5−Zt5t )/Zt5t ×100(%)
【0061】
【表1】

【0062】上記の表から分かるように、No.3、4の計測は、変電所変圧器を含んだ上位側インピーダンスの理論値と測定値との差が50%以上もあり、正しく計測できているとは言えず、同時に求められる負荷高調波特性も測定値として採用できない。これは、計測期間中に上位高調波条件または下位側負荷高調波特性が変化したためであると考えられる。
【0063】No.1、2では変圧器を含んだ上位側インピーダンスの理論値と測定値との差は3%程度以下であり、この値であれば上位側インピーダンスの理論値とほぼ等しいと言え、負荷高調波特性も同程度の精度で求められていると考えられ、このときの負荷高調波特性を測定値として採用することとする。
【0064】今回は、上位側インピーダンスの理論値と測定値との差が5%以下である場合に正確に測定が行われたとして、そのときの負荷高調波特性の測定結果を、正しい測定結果であるとして採用することとした。
【0065】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0066】請求項1記載の発明によれば、10秒以内という短時間の間にコンデンサの開閉を行うので、測定期間中に系統条件が変動する可能性を小さくすることができる。更に、第1および第2の負荷高調波特性を求めるための系統条件の測定を、前者はコンデンサの投入直前および直後のそれぞれ1秒以内、後者はコンデンサの開放直前および直後のそれぞれ1秒以内という極めて短時間の間に行うので、これらの測定期間中においても系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができる。これらの理由から、測定期間中に系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができる。
【0067】しかも、コンデンサの投入直前と投入直後の系統条件から求めた第1の負荷高調波特性と、コンデンサの開放直前と開放直後の系統条件から求めた第2の負荷高調波特性とを互いに比較して、両特性が互いにほぼ等しいときの負荷高調波特性を測定結果として採用することにしたので、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定することができる。
【0068】また、上記のように測定期間中に系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができるので、第1および第2の負荷高調波特性が互いにほぼ等しくならない可能性を非常に小さくすることができ、従って測定のやり直しの必要性が殆ど生じないので、測定が簡単になる。
【0069】請求項2記載の発明によれば、負荷高調波特性を求めるための系統条件の測定を、コンデンサの開放直前および直後のそれぞれ1秒以内という極めて短時間の間に行うので、この測定期間中において系統条件が変動する可能性を非常に小さくすることができる。しかも、コンデンサ開放時は過渡変動が電力系統に殆ど生じないので、過渡変動の影響を避けながら測定期間をより短くして系統条件変動の影響をより少なくすることができる。その結果、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定することができる。
【0070】しかもこの測定方法によれば、第1および第2の負荷高調波特性を求めて両者を比較する方法と違って、第1の負荷高調波特性を求める工程が不要になり、かつ第1と第2の負荷高調波特性を互いに比較する工程も不要になり、更に比較の結果差が生じた場合にどちらが正しいか分からないために差が生じなくなるまで測定をやり直さなければならないという作業も不要になるので、測定作業が非常に簡単になる。
【0071】請求項3記載の発明によれば、負荷高調波特性を求める測定過程において、その測定に用いたのと同じ系統条件から、上位側インピーダンスも求める。この上位側インピーダンスは、本来ならばほぼ理論値通りになるはずであり、系統の条件に左右されない。従って、この上位側インピーダンスの測定結果と理論値とを互いに比較して、互いにほぼ等しいときの負荷高調波特性を測定結果として採用することにしたので、測定期間中のコンデンサ開閉以外の要因による系統条件の変動の影響を排除して、負荷高調波特性を正しく測定することができる。
【0072】しかも、この測定方法では、測定された上位側インピーダンスの理論値からの誤差を算出することができ、その誤差は、負荷高調波特性と上位側インピーダンスとが互いに同じ系統条件を用いて測定されていることから、負荷高調波特性の誤差とも言え、その測定の精度を表すことにもなり、従って測定結果の確認を行いやすい。
【出願人】 【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山本 惠二
【公開番号】 特開平11−23628
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−194749