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【発明の名称】 容量型センサ
【発明者】 【氏名】金子 洋之

【要約】 【課題】高精度であり、かつ従来よりも簡単な工程で製造することが可能な静電容量検出型のセンサを提供する。

【解決手段】加速度、圧力、角速度等の検出用の可動部(振動質量200)への接続回路として、従来のように細い梁上に金属配線を設けるのではなく、可動部を一方の電極として、変位によって容量の変化しない静電容量(220)、(221)を形成し、その静電容量を介して交流信号によって変位に応じた信号を出力するように構成した容量型センサ。細い梁上に設けた極細の金属配線を経由しないので、直列等価抵抗をきわめて低く抑えることが可能となり、それによって感度を向上させることが出来る。また、細い梁上に金属配線を設ける必要が無くなるので、製造工程が容易になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固定部に梁を介して変位可能に支持された可動部と、上記可動部を一方の電極として形成され、上記可動部の変位に応じて容量の変化する第1の電極間静電容量と、上記可動部を一方の電極として形成され、上記可動部が変位しても容量が変化しない第2の電極間静電容量と、を備え、上記第2の電極間静電容量を介して上記第1の電極間静電容量の変化に応じた信号を固定部側に形成した処理回路に取り出すように構成した容量型センサ。
【請求項2】平面な基板上に微小間隔を隔てて形成された可動部となる振動質量と、上記振動質量が上記基板主面と平行に振動可能となるように形成された振動質量を支える梁と、上記振動質量を上記基板主面に平行な第1方向に振動させる励振駆動手段と、上記基板主面に垂直な第3方向を回転軸とした場合に、上記基板主面と平行で第1方向と直角な第2方向に発生するコリオリ力によって生ずる、第2方向への上記振動質量の変位を、上記振動質量を一方の電極として形成された静電容量値の変化として検出することにより、上記回転方向に印加された角速度を検出する容量型センサにおいて、上記振動質量から基板主面と平行に第1方向に伸びた第1の電極と、上記基板に固定され上記第1の電極と平行に対向して配置された第2の電極とから構成され、上記振動質量の第2方向の変位に応じて静電容量値が変化する第1の検出容量と、上記第1の検出容量と同一形状で、第1方向を基準とした線対称の位置に配置された第2の検出容量と、上記振動質量自体若しくはそれに設けられた電極を一方の電極とし、上記基板に固定された第3の電極を他方の電極として形成された静電容量であって、上記振動質量の第1方向および第2方向の変位によって静電容量値が変化しない第3の容量と、を備え、上記第1の検出容量の上記基板に固定された方の電極と、上記第2の検出容量の上記基板に固定された方の電極との間に交流電圧を印加し、上記第3の容量の上記基板に固定された第3の電極にインダクタンスを接続することによって電気的LCR共振回路を構成し、上記第3の電極と上記インダクタンスとの接続ノードの電圧を計測することにより、上記振動質量の第2方向の変位を計測することを特徴とする請求項1に記載の容量型センサ。
【請求項3】請求項1に記載の第2の電極間容量または請求項2に記載の第3の容量は、上記可動部となる振動質量から基板主面と平行に第1方向に伸びた第4の電極と、上記基板に固定され上記第4の電極と平行に対向して配置された第5の電極とから構成され、上記振動質量の第1方向および第2方向の変位に応じて静電容量値が変化する第4の容量と、上記第4の容量と同一形状で、第2方向を基準として上記振動質量の反対側の位置に配置され、上記第4の容量とは相補的に静電容量値の変化する第5の容量と、からなり、上記第4の容量の上記基板に固定された方の電極と前記第5の容量の上記基板に固定された方の電極とを電気的に短絡することによって上記二つの容量を並列接続することにより、上記振動質量の第1方向および第2方向の変位に応じた静電容量の変化を相殺し、全体としては変化しないように構成したものである、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容量型センサ。
【請求項4】請求項1に記載の第2の電極間容量または請求項2に記載の第3の容量は、上記基板の一部を上記可動部となる振動質量の方向に突出させ、上記振動質量と微小間隔を隔てて対向させるように形成した電極と上記振動質量との間に形成した静電容量であるか、若しくは、上記振動質量を基準として、上記基板と反対側に形成した蓋部の一部を上記振動質量の方向に突出させ、上記振動質量と微小間隔を隔てて対向させるように形成した電極と上記振動質量との間に形成した静電容量であるか、若しくは、上記基板の一部を突出させて形成した電極と上記振動質量との間に形成した静電容量と、上記蓋部の一部を突出させて形成した電極と上記振動質量との間に形成した静電容量と、を並列接続したものである、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容量型センサ。
【請求項5】上記基板の一部を突出させて形成した電極および上記蓋部の一部を突出させて形成した電極と上記振動質量との対向面積は、上記振動質量の面積よりも小さく、かつ上記振動質量が変位しても上記電極と上記振動質量の対向面積が変化しない位置に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の容量型センサ。
【請求項6】上記可動部の変位に応じて容量の変化する第1の電極間静電容量の変化は、上記第1の電極間静電容量に交流電圧を印加し、上記第1の電極間静電容量と上記第2の電極間静電容量との直列回路にインダクタンスを接続したLCR共振回路の出力として検出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の容量型センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体技術を利用した静電容量検出方式の容量型センサに関し、例えば高感度、高精度の容量型の角速度センサ、角速度センサ、圧力センサ等を低コストで実現する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の容量型センサの例としては、例えば特開平5−312576号公報に開示されている角速度センサがある。図10は上記従来例の概略平面図である。図10のセンサは、Si半導体基板上のX、Y軸方向に配置された梁で振動質量(100)を支え、X方向に振動させ、Z軸回りの角速度によってY軸方向に生じるコリオリ力を、Y軸方向の変位によって検出するものである。Y軸方向の変位検出は、相互に対向する電極(101)と電極(102)および電極(101)と電極(105)を設け、それらの電極間の距離が変化することによって生じる静電容量変化に基づいて検出する。なお、特開平5−312576号公報では、片側の電極(101)、(102)のみが記載されているが、原理的には、図10に示したように二つの対向電極を設け、両者の差動容量として検出してもよい。また、電極間の容量を大きくして感度を向上させるために櫛歯状の電極を用いることも行なわれている。
【0003】一般に角速度によって発生するコリオリ力は非常に小さいので、検出できる程度に振動質量(100)を変位させるためには、振動質量(100)を重くし、それを支える梁のバネ定数を小さくし、或いは、検出するための静電容量の電極間距離(例えば101と102間の距離)を短くすることが望ましい。この従来例では、振動質量(100)を比較的大きくし、この振動質量(100)を支える梁のバネ定数を下げるために、梁を細く、長くしている。そして検出電極(101)、(102)、(105)を梁上に設け、そこから半導体基板上に設けたAl等の金属配線で外部端子(103)、(104)、(106)に取り出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来は、振動質量上に設けた検出電極から半導体基板上に形成した検出回路に金属配線を用いて信号を取り出すようになっている。そのため図10に示したように、金属配線は細い梁の上に形成する必要が有るが、それによって次のごとき問題が生じる。
【0005】まず、感度向上のために微細化を行なうと、梁上の金属配線の形成が困難になるという問題がある。容量型センサの感度を上げるためには、梁のバネ定数を下げて変位をかせぐことが有効であるが、一般に両端固定された両持ち梁のバネ定数kは、その梁の長さをB、幅をb、厚さをh、ヤング率をEとすると、下記(数1)式で示される。
【0006】
k=(16・E・b・h3)/B3 …(数1)
したがってkを小さくするには、梁の幅b、厚みhを小さくし、長さBを長くすればよい。しかし、センサの小型化を考えると、梁の長さBを長くするよりは、梁の幅bを狭くする方が有効である。そのため小型で高感度なセンサを実現するためには、梁の幅が数μm以下になる場合もあるが、この様に非常に細い梁になると、梁形成時のトレンチ・エッチング・プロセスや、金属配線のパターニング等からの制約で、梁上に金属配線を形成することが非常に困難になる。
【0007】さらに、上記のように金属配線が細くなると、感度が低下してしまうという問題が生じる。すなわち、高感度化を図るためにセンサを微細化し、梁を細くすると、梁上に設ける金属配線も細くする必要があるため、金属配線の電気抵抗が大きくなる。そして電気抵抗が大きくなるとLCR共振回路の電気的尖鋭度Qが低下する。すなわち、金属配線の抵抗をR、インダクタンスをL、電極間の静電容量をCとすれば、尖鋭度Qは下記(数2)式で示されるので、抵抗Rが大きくなれば尖鋭度Qは小さくなる。
Q=ωL/R=1/ωCR=(1/R)・〔√(L/C)〕 …(数2)
容量型センサでLCR共振回路を用いて出力を得るのは、共振点における大きな出力を利用して容量変化分ΔCを増幅して検出するためなので、上記のように金属配線の抵抗Rの増加に伴って電気的尖鋭度Qが低下すると感度が低下することになる。
【0008】本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、高感度、高精度であり、かつ従来よりも簡単な工程で製造することが可能な容量型センサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明においては、特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、請求項1に記載の発明においては、固定部に梁を介して変位可能に支持された可動部への接続用回路として、上記可動部を一方の電極として形成され、上記可動部が変位しても容量が変化しない第2の電極間静電容量を用いるように構成している。上記のように、本発明においては、可動部への接続回路として、従来のように細い梁上に金属配線を設けるのではなく、可動部を一方の電極として、変位によって容量の変化しない静電容量を形成し、その静電容量を介して交流信号によって変位に応じた信号を出力するように構成している。そのため直列等価抵抗をきわめて低く抑えることが可能となり、それによって感度を向上させることが出来る。また、細い梁上に金属配線を設ける必要が無くなるので、製造工程が容易になる。なお、この構成は、例えば後記第1〜第4の実施の形態に相当する。
【0010】また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明を角速度センサに適用した場合の構成を示すものである。なお、この構成は、例えば後記第1〜第4の実施の形態に相当する。
【0011】また、請求項3に記載の発明は、上記接続用回路として用いる容量(請求項1に記載の第2の電極間容量または請求項2に記載の第3の容量)として、可動部となる振動質量から基板主面と平行に設けた電極と、上記基板に固定され上記電極と平行に対向して配置された電極とから構成される容量を、振動質量の両端に、振動質量の変位による静電容量の変化が相補的に生じるようにそれぞれ設け、上記二つの容量を並列接続することにより、上記振動質量の第1方向および第2方向の変位に応じた静電容量の変化を相殺させ、全体としては変化しないように構成したものである。なお、上記の構成は、例えば後記第1の実施の形態に相当する。
【0012】また、請求項4に記載の発明は、上記接続用回路として用いる容量(請求項1に記載の第2の電極間容量または請求項2に記載の第3の容量)として、上記基板の一部を上記可動部となる振動質量の方向に突出させ、上記振動質量と対向させるように形成した電極と上記振動質量との間に形成した静電容量か、若しくは、上記基板と反対側に形成した蓋部の一部を上記振動質量の方向に突出させ、上記振動質量と対向させるように形成した電極と上記振動質量との間に形成した静電容量か、若しくは、上記の両者を並列接続したものを用いるように構成している。なお、上記の構成は、例えば後記第2〜第4の実施の形態に相当する。
【0013】また、請求項5に記載の発明は、上記基板の一部を突出させて形成した電極および上記蓋部の一部を突出させて形成した電極と上記振動質量との対向面積は、上記振動質量の面積よりも小さく、かつ上記振動質量が変位しても上記電極と上記振動質量の対向面積が変化しない位置に設置したものである。このように構成することにより、振動質量が変位しても静電容量は変化せず、単なる接続用回路として用いることが出来る。なお、この構成は、例えば後記第2〜第4の実施の形態に相当する。
【0014】また、請求項6に記載の発明は、可動部の変位に応じて容量の変化する第1の電極間静電容量の変化を検出する手段として、LCR共振回路を用いたものである。なお、この構成は、例えば後記第1〜第4の実施の形態に相当する。
【0015】
【発明の効果】上記のように本発明においては、細い梁上に配線を設けず、静電容量によって振動質量を交流的に接続しているので、直列等価抵抗はきわめて低く抑えることが可能であり、それによって感度を向上させることが出来る。
【0016】また、梁のバネ定数を下げるために梁を細くしても、検出回路での感度低下はないので、小型で高感度のセンサを実現できる。
【0017】また、梁や振動質量が単一部材からできており、金属配線のような異種材料は一切使用していないため、従来例のような異種部材使用による、温度特性の劣化等の悪影響が無い。また、梁や振動質量といった可動構造体が同一厚みで、同一材料からできているため、設計通りの振動モードが実現でき、高精度なセンサが実現できる。
【0018】また、梁上に金属配線等が存在しないので、比較的簡単なプロセスで梁を形成することができ、しかも配線等を考えずによいので、梁の幅をプロセス限界まで狭くすることが可能であり、簡単な製造工程で感度の高いセンサを低コストで実現できる、等の種々の効果が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)図1は本発明による第1の実施の形態の構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’断面図を示す。この実施の形態は振動型の角速度センサに本発明を適用した場合を例示する。角速度センサは、半導体Si基板(230)の上に形成された、比較的厚い絶縁層(231)を介し、その表面に形成されている。すなわち、Siからなる振動質量(200)はX方向に基板に平行に延びた検出梁(211)4本で、両側に設けられたトラス部(212)に接続され、絶縁層(231)から所定の微小な間隔を隔てて空中に浮いている。上記両トラス部(212)からは、さらにY軸方向に基板と平行な駆動梁(210)が合計8本延びており、基板に固定された4つの共通固定電極(203)に接続されている。
【0020】また、振動質量(200)では、検出用櫛歯状電極がX方向に平行に伸び、基板に固定された検出用固定電極(201)、(202)から伸びている対向検出用櫛歯状電極と、所定の間隔を持って配置されており、静電容量(222)と(223)を形成している。この際、静電容量を形成する複数の櫛歯電極は異なった間隔で配置され、かつ静電容量(222)と(223)とでは順序が異なっている。すなわち、静電容量(222)を形成する櫛歯電極は検出用固定電極(201)側が上(Y軸正方向)になっている方が間隔が狭く、静電容量(223)を形成する櫛歯電極は振動質量(200)側が上になっている方が間隔が狭い。したがって、振動質量(200)が例えば紙面で上方向(Y軸正方向)にわずかに変位すると、静電容量(222)は櫛歯電極の間隔が狭くなるので容量が増加し、もう一つの静電容量(223)は減少する。変位量が、電極の初期間隔に比べて小さければ、変位量と静電容量値の変化は線形となり、静電容量(222)と(223)とは相補的に静電容量値が変化することになる。なお、静電容量(222)と(223)では、検出用固定電極側の櫛歯電極に対して、振動質量側の櫛歯電極がX軸方向の両側(図の左側と右側)から延びているので、振動質量(200)がX軸方向に変位しても検出電極間のオーバーラップ量に変化はない。したがって、これら検出用静電容量(222)、(223)値に変化はない。つまり、Y軸方向の変位のみを検出している。
【0021】また、同様に振動質量(200)からは上述の検出容量とは別のカップリング用静電容量を形成するために、カップリング用櫛歯電極がX軸方向に基板と平行に形成され、カップリング用固定電極(206)、(207)から伸びている対向カップリング用固定櫛歯電極と所定の間隔をもって配置され、静電容量(220)と(221)を形成している。この際、静電容量を形成する櫛歯電極は異なった間隔で配置され、かつ静電容量(220)と(221)とでは順序が異なっている。すなわち、静電容量(220)を形成する櫛歯電極はカップリング固定電極(206)側が上(Y軸正方向)になっている方が間隔が狭く、静電容量(221)を形成する櫛歯電極は振動質量(200)側が上になっている方が間隔が狭い。したがって、振動質量(200)が例えば紙面で上方向(Y軸正方向)にわずかに変位すると、静電容量(220)は櫛歯電極の間隔が狭くなるので容量が増加し、もう一つの静電容量(221)は減少する。Y軸方向の変位量が、電極の初期間隔に比べ小さければ、変位量と静電容量値の変化は線形となり、かつ静電容量(220)と(221)とで相補的に静電容量が変化することになるのは、前記の検出用静電容量(222)、(223)と同様である。しかし、静電容量(220)と(221)では、X軸方向に振動質量(200)が変位した場合にも櫛歯電極のオーバーラップ量が変化するので、この場合にも静電容量(220)と(221)は相補的に変化する。この際、静電容量(220)と(221)の変化は、電極のオーバーラップ量に比例するので、X軸方向への変位量が大きくても、変位量と静電容量値変化の線形性は保たれる。
【0022】さらに、トラス部(212)からは、駆動用櫛歯電極がX軸方向に基板と平行に形成されており、駆動用固定電極(204)、(205)から、やはりX軸方向に基板と平行に伸びている対向駆動用固定櫛歯電極と、所定の間隔を持って配置され、静電容量を形成している。
【0023】以上説明してきたこれらの振動質量(200)、検出梁(211)、トラス部(212)、駆動梁(210)、各固定電極(201)〜(207)および櫛歯電極は、全て同一部材からできており、厚みも同じである〔図1(b)の断面図を参照〕。また、各電極(201)〜(207)は外部との接続のための金属電極を示しており、通常のワイヤボンディングで外部と電気的な接続が自由に行えるようになっている。ここで特徴的なのは、従来例と異なり、振動質量や、それを支える梁上に一切の異種部材(金属配線等)が存在せず、単一の半導体Si材料で形成されていることである。
【0024】なお、各金属電極(201)〜(207)と、その下地である半導体Siとのオーミックコンタクトをとるために、各金属電極の下に、高濃度の不純物拡散を行なってもよいが、本実施の形態では図示を省略した。
【0025】次に、図2は本実施の形態における検出用静電容量(222)、(223)の微小変化を外部に取り出すための電気的接続図であり、図3は、その等価回路図である。図2において、検出用交流電源(Vs)は検出用固定電極(201)に接続され、もう一方の検出用固定電極(202)は接地される。カップリング用固定電極(206)と(207)は外部で共通に接続され、LCR共振回路を構成するために、インダクタ(300)に接続される。つまりカップリング容量(220)と(221)とは並列接続されている。また、インダクタ(300)の他方は接地される。一方、半導体Si基板(230)の電位は基板裏面等を介して、共通固定電極(203)と外部で接続され、可動部である振動質量(200)、トラス部(212)等は基板(230)と同電位に保たれている。なお、角速度センサとしては、駆動用固定電極(204)、(205)と、共通固定電極(203)との間に交流電圧を印加し、振動質量(200)、検出梁(211)およびトラス部(212)をX軸方向に振動(変位)させる必要があるが、この部分は従来と同様なので、簡略化のため省略した。
【0026】次に、図3に示す等価回路において、C1(静電容量222に相当)、C2(静電容量223に相当)は、前記のようにY軸方向で相補的な変化をする検出容量である。また、Cc1(静電容量220に相当)、Cc2(静電容量221に相当)は、やはりY軸方向で相補的な変化をするカップリング容量であるが、この二つは並列接続されているので、振動質量(200)のX方向、Y方向の動きに関係なく常に一定の静電容量となる。また、Lはインダクタ(300)のインダクタンス、RLはインダクタ(300)の直列等価抵抗、Rbは梁の等価抵抗、Rsは振動質量(200)の分布等価抵抗(何れも電気的な抵抗)である。
【0027】また、Cs1、Cs2、Cs3はそれぞれ基板と、検出用固定電極(201)、(202)および振動質量(200)間の浮遊容量である。この角速度センサにおいては、XY平面での動きによって生ずる各櫛歯電極の静電容量変化率を大きくし、感度を向上させるために、絶縁層(231)は比較的厚くしてあるので、これらの浮遊容量Cs1、Cs2、Cs3は検出容量C1、C2、カップリング容量Cc1、Cc2に比較して小さい値である。
【0028】次に、第1の実施の形態における作用を説明する。前記のように、カップリング用固定電極(206)、(207)と振動質量(200)との櫛歯電極で形成されるCc1(静電容量220)、Cc2(静電容量221)は、振動質量(200)がY軸方向に変位した場合にもX軸方向に変位した場合にも相補的に変化する。したがって、駆動用信号の印加や角速度の印加によって振動質量(200)がX軸方向やY軸方向に変位しても、その変位に応じて一方の静電容量値が減少し、他方の静電容量値は増加し、両者は相補的に変化する。そのため、Cc1とCc2とを並列に接続しておけば、全体の静電容量値は両者の和となり、全体の静電容量値は常に変化しない。すなわち、Cc1とCc2とを並列接続した合成の静電容量値は、振動質量(200)がY軸方向およびX軸方向のどちらに変位した場合でも常に変化せず、その部分に固定の静電容量が接続されているのと同等に作用し、電気的には交流信号を通過させる回路となる。
【0029】上記のごとき構成において、駆動用固定電極(204)、(205)に印加された図示しない交流電圧によって、振動質量(200)、検出梁(211)およびトラス部(212)がX軸方向に振動しているとする。ここで角速度がZ軸回りに印加されると、振動質量(100)にはコリオリ力が発生してY軸方向にも振動を開始する。このY軸方向の変位が検出用静電容量C1とC2の差となるが、図3に示す様にLCR共振回路を組むことにより、Q倍(QはLCR共振回路の尖鋭度)になって出力される。ノード(301)での出力電圧の変化△Voutは、下記(数3)式に示すようになる。
【0030】
△Vout=(Vs・Q・△C)/(2・C0) …(数3)
但し、Vs:印加交流電圧C0:変位が無い時の静電容量(C1=C2=C0)
△C:容量の変化分(C1=C0+△C、C2=C0−△C)
(数3)式において、Vsは交流であるから、出力電圧Voutも交流となり、したがってCc1とCc2との並列静電容量を介して外部に取りだすことが出来る。
【0031】なお、電気的共振周波数frは下記(数4)式で示され、機械的振動によらず一定である。fr=1/{2π×√〔L(C1+C2+Cc1+Cc2)〕} …(数4)また、可動部である振動質量(200)およびトラス部(212)は、半導体Si基板(230)と同電位になっているため、両者間に静電引力は生じず、可動部が基板に貼り付いてしまうこともない。
【0032】上記のように、第1の実施の形態においては、図3の等価回路図に示すように、検出容量C1、C2の変化として検出される角速度に対応した信号は、並列に接続されたカップリング容量Cc1、Cc2とカップリング用固定電極(206)、(207)とを介して外部に取り出される。したがって振動質量(200)を支える細い梁上に、信号検出用の金属電極を設ける必要が全く無くなる。
【0033】以下、第1の実施の形態における効果について説明する。LCR共振回路の尖鋭度Qは、前記(数2)式に示したように、共振回路に存在する直列等価抵抗Rに依存する。したがってRが大きくなれば、Qは小さくなり、前記(数3)式から判るように感度が低下する。しかし、本実施の形態においては、細い梁上に配線を設けず、カップリング用静電容量Cc1、Cc2によって振動質量(200)を交流的に接続し、金属配線は太い配線の可能なカップリング用固定電極(206)、(207)から取出している。そのため、直列等価抵抗はきわめて低く抑えることが可能であり、それによって感度を向上させることが出来る。
【0034】さらに、感度を高めるため、梁のバネ定数を下げるために梁を細くしても、検出梁の電気抵抗(Rb)は増加するものの、LCR共振回路とは無関係であるため、検出回路での感度低下はない。
【0035】また、従来例のように、梁上に金属配線を設けた場合には、金属とSiのような異種部材同士では熱膨張係数に差があるので、温度が変化すると、梁や振動質量に歪み変化が生じ、オフセットや感度が変化してしまう。特にこのように異なった電位の金属配線を引き回すには、下地となる半導体Si基板と絶縁をする必要があり、例えばSi酸化膜等を梁や振動質量の表面に形成する必要がある。しかし、やはり絶縁膜といった異種部材を梁や振動質量上に形成すると、熱膨張係数の差から温度特性が悪化する。その点、本実施の形態においては、梁や振動質量が単一部材からできており、余分な異種材料は一切使用していないため、従来例のような異種部材使用による温度特性の劣化等の悪影響が無い。
【0036】また、従来例のように、Siと密度の異なる金属等を部分的に梁や振動質量上に形成すると、振動質量や梁のバランスが崩れる原因となる。特に従来例のようにXY平面上で高精度な振動・検出を行なうセンサの場合には、X方向、Y方向の一次モード以外の高次振動が誘起され、センサ特性に悪影響を与える。その点、本実施の形態においては、梁や振動質量といった可動構造体が同一厚みで、同一材料からできているため、設計通りの振動モードが実現でき、高精度なセンサが実現できる。
【0037】また、静電容量を構成する電極を、従来例のように形成しようとしても、対向面積の確保が困難となる。例えば前記図10の電極(101)、(102)は紙面に垂直方向にも厚みを持たなければならないが、金属電極をSiの構造体の厚み方向に選択的に形成することは非常に難しい。理想的には構造体であるSiの厚み方向一杯に電極を形成できれば、有効に対向面積を確保することができるが、一般に通常の半導体プロセスでは基板に垂直方向の面に、パターニングされた電極を形成することは非常に困難である。その点、本実施の形態においては、梁上に金属配線等が存在しないので、比較的簡単なプロセスで梁を形成することができ、しかも配線等を考えずによいので、梁の幅をプロセス限界まで狭くすることが可能で、感度の高いセンサを実現できる。
【0038】次に、第1の実施の形態に示した素子の製造方法について説明する。図4(a)〜(e)は第1の実施の形態における製造工程の一例を示す断面図である。まず、(a)に示すように、半導体Si基板(230)上に比較的厚い絶縁層(231)を堆積する。前述の浮遊容量Cs1、Cs2、Cs3を下げて感度を上げるためには、例えば絶縁層(231)の厚さを数十〜数百μmとする。通常、CVD等の半導体プロセスでは、比較的厚い絶縁層を堆積するのは困難であるが、例えばボロンガラスを厚く堆積するスート法等が利用できる。またガラス基板をSi基板に陽極接合等で接合した後、所定の厚みまで絶縁層(この場合ガラス)を研削またはエッチング・研磨してもよい。
【0039】次に、(b)に示すように、絶縁層(231)上にSi基板(400)を接着する。この方法は陽極接合方法でも、高温接合でも構わない。次に、(c)に示すように、接着したSi基板(400)を所定の厚さまで研削またはエッチングし、研磨した後、SiO2等のマスクを用い、所定のパターンでトレンチエッチングを行い、Siをパターニングする。
【0040】次に、(d)に示すごとく、絶縁層(231)が溶解する、例えばHF等の溶液を用い、前述のパターニングされた孔から絶縁層(231)の部分をエッチングする、いわゆる犠牲層エッチングを行なうことにより、固定部と、空中に浮いた可動部(振動質量200など)とを形成する。次に、(e)に示すごとく、Al等の金属電極を、例えばシャドウマスク法を用い、必要な固定部上に形成する。
【0041】なお、上記の例では、可動部の形成方法として、犠牲層エッチング法を用いたが、あらかじめギャップとなる部分を基板の絶縁層に形成した後、貼りあわせて、エッチングしてもよい。また、工程(e)におけるAl電極形成も、あらかじめ工程(c)の段階で形成しておき、その後のプロセスで、Alがエッチングされないように保護膜で保護する方法をとっても構わない。いずれにしても、本実施の形態の構造においては、可動部自体を電極としているので、構造の側面にAl電極を形成したり、絶縁膜を構造体の上に形成したりすることなく、比較的簡単にセンサを製造できる。
【0042】(第2の実施の形態)図5は本発明の第2の実施の形態の構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’断面図を示す。この実施の形態において、振動質量、梁、トラス部、検出電極、駆動電極等は前記第1の実施の形態と同様なので、説明を省略する。この実施の形態では、カップリング容量を半導体Si基板(230)と振動質量との間に形成している点が、第1の実施の形態と異なる。
【0043】図5において、カップリング電極(500)は、振動質量(200)に微小間隔を隔てて対向させるため、半導体Si基板(230)から絶縁層(231)を貫いて凸型に形成されており、このカップリング電極(500)と振動質量(200)との間に形成される静電容量がカップリング容量(501)となる。この際、カップリング電極(500)の平面的な大きさは振動質量(200)の対向面内に包含される大きさとし、振動質量(200)がXY平面上を動いても、両者の対向面積は変わらないように設定する。したがって振動質量(200)に、交流電圧の駆動によるX軸方向の変位や角速度の印加によるY軸方向の変位が生じても、カップリング容量(501)の値は変化しない。
【0044】上記のようなカップリング電極(500)を設けたことにより、図1におけるカップリング容量(220)、(221)やカップリング用固定電極(206)、(207)は設けられていない。その他の構造は図1と同様である。
【0045】図6は、図5のセンサの等価回路図である。図5において、Cc3が前記のカップリング容量(501)である。第1の実施の形態と異なる点は、半導体Si基板(230)から伸びるカップリング電極(500)により、カップリング容量Cc3が形成され、このカップリング容量Cc3を経由して振動質量(200)が半導体Si基板(230)に直接に容量結合されている点である。
【0046】次に、第2の実施の形態の作用を説明する。前記のように、振動質量(200)に、交流電圧の駆動によるX軸方向の変位や角速度の印加によるY軸方向の変位が生じても、カップリング容量(501)は変化しない。そのため、カップリング容量(501)は固定の静電容量が接続されているのと同等に作用し、電気的には交流信号を通過させる回路となる。したがって、振動質量(200)はカップリング容量(501)を介して半導体Si基板に接続されていることになるので、振動質量(200)に接続するための金属配線を細い梁上に形成する必要が無くなる。その他の作用は前記第1の実施の形態と同様である。
【0047】次に、第2の実施の形態の効果を説明する。第2の実施の形態の主なる効果は前記第1の実施の形態と同じであるが、静電容量の大きさは面積に比例するので、縦方向への厚みが取れない場合には、第1の実施の形態のような櫛歯電極よりも面積の大きな振動質量(200)の面に電極を設けた方が面積が稼げる場合がある。そのため設計条件によっては、カップリング容量が第1の実施の形態よりも大きく取り易いという利点がある。また、第1の実施の形態のようにX方向に突き出た部分が無いので、XY二次元平面での大きさを第1の実施の形態より小さくできる場合がある。
【0048】次に、第2の実施の形態に示した素子の製造方法について説明する。図7(x)、(y)、(b)〜(e)は第2の実施の形態における製造工程の一例を示す断面図である。まず、(x)に示すように、半導体Si基板(230)をエッチングし、後にカップリング電極(500)となる凸型部(232)を形成する。次に、(y)に示すように、全面に絶縁層(231)を形成し、表面を平坦化する。この絶縁層(231)の厚さは、凸型部(232)の厚さよりも犠牲層の分だけ厚く形成する。
【0049】以下、(b)〜(e)の工程は、前記第1の実施の形態と同様であるが、工程(d)における犠牲層エッチング時には、凸型部(232)上の絶縁層(231)が完全にエッチング除去され、凸型部(232)が表面に表れるようにする。
【0050】(第3の実施の形態)図8は、本発明の第3の実施の形態の構造を示す断面図である。この第3の実施の形態では、センサ基板上部に半導体材料またはガラス等からなる蓋部(700)を設け、この蓋部(700)における振動質量(200)の上部付近に、カップリング電極(701)を配置し、振動質量(200)との間にカップリング容量(702)を形成したものである。この際、カップリング電極(701)の大きさは、振動質量(200)の対向面に包含される大きさとする。これにより、振動質量(200)がXY平面上を動いても、対向面積は変わらず、カップリング容量(702)が変化しないようにしている。なお、カップリング電極(701)としては、蓋部(700)がSi等の半導体材料の場合にはそれ自体を凸型にして用いてもよいし、蓋部(700)がガラス等の絶縁材料の場合には当該部分に金属膜等の電極を形成してもよい。第3の実施の形態における作用は、前記第1および第2の実施の形態と同じである。
【0051】次に、第3の実施の形態における効果について説明する。第3の実施の形態の主なる効果は前記第1、第2の実施の形態と同じであるが、第2の実施の形態のように半導体Si基板(230)を加工することなく、蓋部(700)にカップリング電極(701)を形成すればよいので、基板を加工するよりもプロセスが簡単になる場合がある。特に、このような振動型センサの場合には、大気中で動作させるよりも減圧下で動作させる方が、機械的なQ値を高めることができるという利点があるので、第3の実施の形態のような気密の蓋部を形成することが必要な場合もある。このような場合には、蓋部の加工時に同時にカップリング電極(701)を作り込めば容易に製造することが出来る。
【0052】なお、第3の実施の形態に示した素子の製造方法の詳細は省略するが、蓋部の加工や電極の形成は、一般の半導体プロセスを用いて容易に行なうことが可能である。
【0053】(第4の実施の形態)図9は、本発明の第4の実施の形態の構造を示す断面図である。この実施の形態は、前記第2と第3の実施の形態を組み合わせたものであり、半導体Si基板(230)にも凸型部によるカップリング電極(500)を設け、かつ蓋部(700)にもカップリング電極(701)を設け、両者で振動質量(200)を垂直方向に挟んだ形にしたものである。
【0054】次に、第4の実施の形態の作用を説明する。第4の実施の形態においては、カップリング電極(500)とカップリング電極(701)とで振動質量(200)を垂直方向に挾み、それぞれにカップリング容量(501)と(702)を形成している。この二つのカップリング容量は、振動質量(200)がZ軸方向に微小に変位した場合には、一方が増加すると他方が減少し、相補的に変化する。そのため二つのカップリング容量(501)と(702)を並列に接続すれば、振動質量(200)がZ軸方向に変位した場合でも、変位が微小な場合には、合計のカップリング容量値は変化しない。したがって、振動質量(200)が通常は変位しないZ軸方向に変位した場合でも、出力に余計な雑音成分を送出するおそれが無くなる。なお、第4の実施の形態に示した素子は、第2と第3の実施の形態と同様の製造方法で実現できる。
【0055】また、これまでの実施の形態においては、角速度センサを例として説明してきたが、圧力センサや加速度センサでも同様に本発明を適用できる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】中村 純之助 (外1名)
【公開番号】 特開平11−271354
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−71583