| 【発明の名称】 |
加速度センサ素子、加速度センサ及びこれらの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】滑川 政彦
【氏名】柴田 和義
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| 【要約】 |
【課題】センサ精度及びセンサの信頼性が高い加速度センサ素子及びその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】重錘30と、支台31と、圧電体33を1組の電極57a,57bと58で挟持した圧電素子34a,34bを有する可撓板32により構成され、外部から作用する加速度に対応して生ずる可撓板32の撓みに応じて圧電体34から発生する電荷により、加速度の方向及び大きさを三次元的に検知する加速度センサ素子である。可撓板32の可撓部分32aのみに圧電体34を配設する。重錘30、支台31及び可撓板32の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とし、積層体を一体焼成して焼成体とし、焼成体に対し、厚膜法により圧電素子34a,34bを形成し、焼成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重錘と、当該重錘を中心として周設された、中空部を有する支台と、圧電体を少なくとも1組の電極で挟持した圧電素子を有し、かつ、前記支台の中空部の中心に重錘を釣支するように支台に横架された可撓板により構成され、外部から作用する加速度を、当該加速度に対応して生ずる前記重錘の挙動に基づく前記可撓板の撓みに変換し、当該可撓板の撓みに応じて前記圧電体から発生する電荷により、前記加速度の方向及び大きさを三次元的に検知する加速度センサ素子であって、前記可撓板の可撓部分のみに圧電素子を配設したことを特徴とする加速度センサ素子。 【請求項2】 グリーンシート積層法により、支台、重錘、可撓板を一体焼成した請求項1に記載の加速度センサ素子。 【請求項3】 支台と、重錘と、可撓板とが一体成形された加速度センサ素子であって、支台、重錘、若しくは可撓板のうち少なくとも1つの結晶構造が異なっている請求項1又は2に記載の加速度センサ素子。 【請求項4】 支台と、重錘と、可撓板とが一体成形された加速度センサ素子であって、支台、重錘、若しくは可撓板のうち少なくとも1つの結晶粒径が異なっている請求項1又は2に記載の加速度センサ素子。 【請求項5】 可撓板上部の空間と支台中空部が連通するように、重錘の中心を垂直方向に貫通する孔を設けた請求項1〜4のいずれか一項に記載の加速度センサ素子。 【請求項6】 支台下端面の、当該支台下端面を含む平面上における支台中心を通過する直線に対して相対称する位置に、少なくとも支台外周側の空間と連通する細溝を形成した請求項1〜4のいずれか一項に記載の加速度センサ素子。 【請求項7】 重錘が、当該重錘の下端面に支台下端面を含む平面が接触しないように釣支された請求項1〜4のいずれか一項に記載の加速度センサ素子。 【請求項8】 重錘と、当該重錘を中心として周設された、中空部を有する支台と、圧電体を少なくとも1組の電極で挟持したに圧電素子を有し、かつ、前記支台の中空部の中心に重錘を釣支するように支台に横架された可撓板により構成され、前記可撓板の可撓部分のみに圧電体を配設した加速度センサ素子の製造方法であって、前記重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とする第1工程と、当該積層体を一体焼成して焼成体とする第2工程と、当該焼成体に対し、厚膜法により圧電素子を形成し、焼成する第3工程と、からなることを特徴とする加速度センサ素子の製造方法。 【請求項9】 重錘及び可撓板の断層形状のグリーンシートの中心と、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートの少なくとも二隅とに貫通孔を穿設し、当該貫通孔を支持ピンに貫通した状態で積層し、圧着して積層体とする請求項8に記載の加速度センサ素子の製造方法。 【請求項10】 平板状のグリーンシート上面に、重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とし、当該積層体を一体焼成して焼成体とした後に、重錘の下端が揺動し得るように前記平板状のグリーンシートを切断する請求項8に記載の加速度センサ素子の製造方法。 【請求項11】 支台の断層形状のグリーンシート上面に、平板状のグリーンシートを載置し、更に重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とし、当該積層体を一体焼成して焼成体とした後に、重錘の下端が揺動し得るように前記平板状のグリーンシートを切断する請求項8に記載の加速度センサ素子の製造方法。 【請求項12】 請求項1〜6のいずれか一項に記載の加速度センサ素子を回路基板に実装し、露点−40℃以下の乾燥雰囲気下において蓋体で密閉することを特徴とする加速度センサの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、圧電体により、外部から作用する加速度の方向及び大きさを三次元的に検知する加速度センサ素子、これを用いた加速度センサ及びこれらの製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 自動車産業や機械産業では、力、加速度、磁気などの物理量を正確に検出できるセンサの需要が高まっている。特に、二次元あるいは三次元の各成分ごとにこれらの物理量を検出し得る小型のセンサが望まれている。例えば、作用体を有する可撓板上に複数個の圧電体を載置したセンサが公開されている(特開平5−26744号公報)。 【0003】 このセンサは、外部から作用体に作用する物理量に対応して可撓板が撓むように構成されており、当該可撓板の撓みに応じて圧電体に発生する電荷により、前記物理量の方向及び大きさを単一のセンサ素子により三次元的に検出することができるものである。 【0004】 前記センサ素子について、作用体を重錘とした加速度センサを例として説明すると、図2に示すように、センサ素子に対し外部から加速度aが作用した場合、重錘10には加速度aと相反する方向に慣性力fが作用するため、重錘10−支台11間に横架された可撓板12に慣性力fに伴う撓み14が生ずる。当該撓み14の方向及び大きさに応じた電荷が可撓板12上に載置された圧電体13に発生するため、当該電荷を検知することにより外部から作用する加速度を三次元的に検知することが可能となるのである。 【0005】 更に詳細に説明すると、例えば、図3に示すセンサ素子において、円筒状の重錘10の可撓板12が横架されている底面の中心を原点Oとして規定し、当該原点Oを含み可撓板12に平行な面をX−Y平面として当該X−Y平面上に相直交するようにX軸、Y軸を規定し、前記原点Oを含み前記X−Y平面に直交するZ軸を規定する。 【0006】 このとき、圧電体13の、上部電極と下部電極の1組の電極に挾持された部分を「1圧電素子」とすれば、例えば、当該素子の可撓板12上にX軸、Y軸に対応する圧電体及び電極を各々4素子づつ、Z軸に対応する圧電体及び電極を8素子配置することができる。 【0007】 この場合において、外部から作用する加速度aにより重錘1に作用する慣性力fを、図4(a)に示すようなX軸方向の慣性力fXについては「圧電素子」E1〜E4に、Y軸方向の慣性力fYについては図示されないE5〜E8に、図4(b)に示すようなZ軸方向の慣性力fZについては「圧電素子」E9〜E12と図示されないE13〜E16に発生した電荷の量により各々の大きさを認識する。 【0008】 また、電荷の極性パターン(例えば、図4(a)の圧電体上面について言えば図左側から[+−+−]、図4(b)の圧電体上面についても同様に図左側から[+−−+])により各々の方向を認識する。こうして検出したfX、fY、fZの合力として慣性力f、ひいては外部から作用する加速度aの方向及び大きさを、単一の小型センサ素子により三次元的に検出することが可能となるのである。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 上述のセンサ素子において、可撓板は全体が均一に撓む訳ではなく、その撓み応力は特に重錘若しくは支台と可撓板との境界部分において急激に上昇する。従って、前記境界部分に圧電素子を配設した場合には、僅かな圧電素子の配設位置のズレや、重錘若しくは支台の形状バラツキによって圧電素子に生ずる電荷が急激に増減するため、各軸毎の出力バラツキ、ひいてはセンサ精度低下の原因ともなり得る。 【0010】 また、前記境界部分に圧電素子を配設した場合には、以下に示すような不具合により、センサの信頼性を低下させる原因となり得る。第1に、センサ素子が急激な加速度を受けた場合、当該境界部分には他の部分に比して更に大きな曲げ応力が加わるため、境界部分の圧電素子ひいては圧電体に特に大きな衝撃が加わることになる。圧電体は、PZT、PMN等の一般的に強度や靱性等の機械的特性に劣る圧電セラミックスからなるため、圧電体が破損するおそれがある。第2に、柔軟な可撓板と強固な支台或いは重錘とでは、衝撃が加わった際の挙動が異なるため、可撓板と支台或いは重錘の双方に圧電素子の下面が接触する構造では、圧電体が破損に至らないまでも圧電素子が可撓板から剥離するおそれがある。 【0011】 またこれとは別に、前記センサ素子において、可撓板は十分な感度を得るために可撓性が高いことが要求される一方、重錘及び支台は受けた加速度を純粋に検出するため、剛性が高く撓み難いことが要求される。別体として作製した重錘、支台、可撓板の各部材を組立ててセンサ素子を構成すれば、前記のような相反する特性を満足させることが可能であるが、多くの部品と工数を要し、生産性の低下は否めないという問題がある。 【0012】 部品と工数を削減し生産性を向上する手段としては、同材質による一体形成が考えられる。セラミックスによる一体成形を例とすれば、図5に示す如く金型30に対しセラミックス粉体31を充填し一軸プレス等により形成したセラミックスグリーンボディー33を切削加工する方法、図6に示す如くセンサ34と総型に形成した金型30に対してセラミックス粉体31を充填し一軸プレスする方法、図7に示す如くセラミックススラリー32を射出成形する方法、或いはスリップキャスティングにより成形する方法等が挙げられる。 【0013】 しかしながら、上述のいずれの方法も一体成形体の可撓部強度が著しく低く、また密度分布のバラツキが大きいため、可撓板の薄板化及び可撓板の厚みの精密な制御が困難である。即ち、上述の方法により形成されたセンサ素子は、可撓板が撓み難いと共に、各可撓板毎に若しくは可撓板の部位により撓み具合が異なることになる。 【0014】 従って、センサ感度が低いことに加えて、同一の加速度を与えても各センサ素子毎に感度が異なる場合があり、更に各軸毎の感度が異なる場合にはその合力から求められる加速度の方向及び大きさが不正確になりセンサ精度が低下するという問題がある。 【0015】 本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記センサ素子の、小型であり、かつ、1基のセンサ素子により三次元的な物理量の測定が可能であるという利点を生かしつつ、更にそのセンサ感度、センサ精度及びセンサの信頼性を向上させること及び当該センサ素子を簡便に製造できる製造方法を提供することにある。 【0016】 【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明によれば、重錘と、当該重錘を中心として周設された、中空部を有する支台と、圧電体を少なくとも1組の電極で挟持した圧電素子を有し、かつ、前記支台の中空部の中心に重錘を釣支するように支台に横架された可撓板により構成され、外部から作用する加速度を、当該加速度に対応して生ずる前記重錘の挙動に基づく前記可撓板の撓みに変換し、当該可撓板の撓みに応じて前記圧電体から発生する電荷により、前記加速度の方向及び大きさを三次元的に検知する加速度センサ素子であって、前記可撓板の可撓部分のみに圧電体を配設したことを特徴とする加速度センサ素子(以下、「センサ素子」という。)が提供される。 【0017】 本発明のセンサ素子は、グリーンシート積層法により、支台、重錘、可撓板を一体焼成したセンサ素子であることが好ましい。また、支台と、重錘と、可撓板とが一体成形された加速度センサ素子であって、支台、重錘、若しくは可撓板のうち少なくとも1つの結晶構造或いは結晶粒径が異なっているセンサ素子であることが好ましい。 【0018】 更に、本発明のセンサ素子においては、可撓板上部の空間と支台中空部が連通するように、重錘の中心を垂直方向に貫通する孔を設けたセンサ素子であることが好ましく、支台下端面の、当該支台下端面を含む平面上における支台中心を通過する直線に対して相対称する位置に、少なくとも支台外周側の空間と連通する細溝を形成したセンサ素子であることが好ましく、重錘が、当該重錘の下端面に支台下端面を含む平面が接触しないように釣支されたセンサ素子であることが好ましい。 【0019】 また、本発明においては、重錘と、当該重錘を中心として周設された、中空部を有する支台と、圧電体を少なくとも1組の電極で挟持した圧電素子を有し、かつ、前記支台の中空部の中心に重錘を釣支するように支台に横架された可撓板により構成され、前記可撓板の可撓部分のみに圧電体を配設したことを特徴とする加速度センサ素子の製造方法であって、前記重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とする第1工程と、当該積層体を一体焼成して焼成体とする第2工程と、当該焼成体に対し、厚膜法により圧電素子を形成し、焼成する第3工程と、からなることを特徴とする加速度センサ素子の製造方法が提供される。 【0020】 本発明の製造方法においては、重錘及び可撓板の断層形状のグリーンシートの中心と、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートの少なくとも二隅とに貫通孔を穿設し、当該貫通孔を支持ピンに貫通した状態で積層し、圧着して積層体とすることが好ましい。 【0021】 また、本発明の製造方法においては、平板状のグリーンシート上面に、重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とし、当該積層体を一体焼成して焼成体とした後に、重錘の下端が揺動し得るように前記平板状のグリーンシートを切断することが好ましい。 【0022】 更に、本発明の製造方法においては、支台の断層形状のグリーンシート上面に、平板状のグリーンシートを載置し、更に重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とし、当該積層体を一体焼成して焼成体とした後に、重錘の下端が揺動し得るように前記平板状のグリーンシートを切断することが好ましい。 【0023】 また、本発明によれば、本発明の加速度センサ素子を回路基板に固定し、露点−40℃以下の乾燥雰囲気下において蓋体で密閉することを特徴とする加速度センサの製造方法が提供される。 【0024】 【発明の実施の形態】 本発明に使用するセンサ素子は、例えば図3に示すように、重錘10と、重錘10を中心として周設された支台11と、圧電体13を少なくとも1組の電極で挟持した圧電素子を有し、かつ、重錘10を釣支して対向する支台11間に横架される可撓板12により構成される。当該センサ素子は、外部から作用する加速度の大きさ、方向に基づいて重錘10に発生した力により可撓板12が撓みを生じ、当該撓みに応じて発生する圧電素子の電荷量及び電荷の極性パターンにより、前記加速度の方向及び大きさを三次元的に検知する。 【0025】 本発明において、支台11とは、重錘10を中心として周設された、可撓板12及び重錘10を支持するための部材である。従って、可撓板12及び重錘10を支持し得る強度を有する限りにおいてその形状、材質等は特に限定されないが、加工が容易で、X−Y平面内の加速度に対する対称性が比較的高い点において、図3に示すような外部形状が四角柱状で円筒状中空部16を有する形状が好ましく、剛性が高く、電磁波の影響を受け難い材質であるセラミックスにより構成することが好ましい。 【0026】 本発明において重錘10とは、上端面を可撓板12に当接するように釣支された、外部から作用する加速度の大きさ、方向に基づいて発生した力により、可撓板12に撓みを生じさせるための部材であって、可撓板12に接着剤等により接着してもよく、或いは可撓板12と一体成形してもよい。 【0027】 重錘は、上端面を可撓板に当接するように釣支できる形状である限りにおいて特に限定されず、筒状の他、円錐台や異径円筒のように外径が連続的に或いは不連続に変化するものも包含される。但し、X−Y平面内の加速度に対する対称性が高い点において図3に示すような円筒状が好ましい。材質も特に限定されないが、十分な質量があり密度の高いことに加えて、電磁波の影響を受け難く、熱膨張率の低い材質であるセラミックスにより構成することが好ましい。 【0028】 本発明において可撓板12とは、重錘10を釣支して対向する支台11間に横架された、圧電素子を有する板状部材であって、可撓板全体を圧電体で構成してもよい。可撓板は、可撓性を有し、重錘の挙動により破損しない限りにおいて、形状、材質等は特に限定されないが、ヤング率が高く、圧電体に歪みを誘起しやすい材質であるセラミックスが好ましく、形状としては、図8に示すように1枚の板状体により構成することが加工が容易で好ましい。 【0029】 可撓板には圧電体13を少なくとも1組の電極で挟持した圧電素子が配設される。圧電体としては、PZT、PMN、PNN等の圧電セラミックスや有機圧電体等を用いることができるが、圧電特性に優れるPZTを用いることが好ましい。圧電体は、可撓板自体を圧電体で構成してもよいが、例えば図9に示すように可撓板12の上面全体に圧電体13を配設しても良く、図8に示す如く円形可撓板12上に重錘10中心を原点Oとして放射状に圧電体13を配設しても良い。 【0030】 本発明においては、前記圧電体を上下面から1組の電極(上部電極及び下部電極)で挟持した部分を圧電素子という。従って、素子数は圧電体の数のみならず、電極の配置の仕方によっても増加させることができる。当該圧電素子により外部から作用する加速度の方向及び大きさに基づいて発生した可撓板の撓みを電気的に検出することが可能となる。 【0031】 本発明のセンサ素子は上述のようなセンサ素子において、支台或いは重錘に比して低剛性な、可撓板の可撓部分のみに圧電素子を配設したことを特徴とする。当該構成によれば、圧電体の焼成収縮或いは冷却過程における圧電体、電極、可撓板間の熱膨張差に基づくセンサ素子内の残留応力が可撓板に吸収され、重錘と支台の相対位置が変化しないため、高精度のセンサ素子となる。 【0032】 図1のセンサ素子(以下、「センサ素子A」という。)は、前記構成をセンサ素子に適用した例であり、重錘30と支台31間に横架した円形可撓板32のうち、重錘30及び支台31の上端面に固定されている部分を非可撓部分32a、それ以外の部分を純粋な可撓部分32bとすれば、可撓部分32bのみに圧電素子34を配設している。 【0033】 センサ素子Aに対し外部から加速度aが作用すると、重錘30には加速度aと相反する方向に慣性力fが作用し、重錘30−支台31間に跨設された可撓板32に慣性力fに伴う撓みが生ずるが、センサ素子Aは、撓み応力が急激に変化する、可撓部分32bと非可撓部分32aとの境界部分を避けるように圧電素子34を配設しているため、圧電素子34に安定的に電荷が発生する。また、センサ素子Aは他の部分に比して大きな曲げ応力が加わる前記境界部分を避けるように圧電素子34を配置している。従って、加速度aが過大なものであっても、可撓板32からの圧電素子34の剥離、圧電体33の破損が起こり難く、センサの信頼性が向上する。 【0034】 一方、図9に示すような、圧電素子14が可撓部分12bから非可撓部分12aに掛かるように設けられたセンサ(以下、「センサ素子B」という。)は撓み応力が集中する部分に圧電素子が配置されている。従って、センサ感度は高いものの、圧電体焼成時に可撓板が応力を吸収できないため、焼成収縮による可撓板12の歪みが生じ易く、重錘と支台の相対位置が変化し易い。また、センサ素子Bは、前記境界部分に圧電素子14が配置されているため、加速度aが過大なものである場合、大衝撃により圧電素子14の剥離、圧電体13の破損が生ずるおそれがあり、センサの信頼性が低下する。 【0035】 また、センサ素子Aとは異なり、図10に示すように僅かな圧電素子14の配設位置のズレや、重錘10若しくは支台11の形状バラツキによって圧電素子14に生ずる電荷が急激に増減するため、各軸毎の出力がばらつき、ひいてはセンサ精度が低下するおそれがある。 【0036】 以上のような構成のセンサ素子は、グリーンシート積層法により、支台、重錘、可撓板を一体焼成したものであることが好ましい。グリーンシートはセラミックス微粉末と溶剤等との混合スラリーを一定厚みの薄板状に乾燥したもので、可撓性、加工性に富み、切断や穴開け、接着が可能であるという特徴を有する。従って、所望形状の断層形状に切断した複数のグリーンシートを積層し、一体に圧着した後、焼成することにより所望形状を成形することが可能である(以下、この方法を「グリーンシート積層法」という。)。 【0037】 本発明のセンサ素子についてもグリーンシート積層法を適用でき、支台、重錘、可撓板を一体焼成することが可能であるが、このように形成されたセンサ素子は以下に示すような極めて顕著な効果を奏する。 【0038】 第1に、グリーンシート自体の薄板化が容易で、シート毎の厚み再現性やシート全体の厚み均一性に優れるため、可撓板の薄板化及び可撓板の厚みの精密な制御が容易である。即ち、上述の方法により形成されたセンサ素子は、低加速度でも可撓板が大きく撓むため好感度であると共に、各可撓板毎若しくは可撓板の部位毎の撓み具合のバラツキが少ないためセンサ素子毎の再現性と各軸毎の合力から求められる加速度の方向及び大きさの精度に優れる。 【0039】 第2に、薄板の積層枚数を選択することにより厚み調整ができるため、特にX軸、Y軸方向の感度に影響を与える薄板の積層枚数により重錘の厚みを微調整して、Z軸方向の感度と均衡させることも容易である。即ち、上述の方法により形成されたセンサ素子は、X軸、Y軸方向とZ軸方向の感度のバランスが良く、回路による電気的な較正が少なくて済む。 【0040】 第3に、支台、重錘、可撓板の各々について断層形状に切断した薄板を積層するところ、各部材毎に異なる材質のシート又は異なる厚みのシートを選択することが可能となるため、可撓板には可撓性の高い肉薄のシート、他の部材は剛性の高い肉厚のシート等の使い分けが可能となる。即ち、上述の方法により形成されたセンサ素子は、一体成形でありながら可撓部は撓み易く支台及び重錘は剛性が高いため高感度かつ高精度となる。 【0041】 この他にもグリーンシート積層法は、一枚のシートから金型打抜きにより多数のセンサを作成することができ、生産性が高いため、経済性の高いセンサが提供可能である等の効果を奏する。これらの効果は他の一体成形の方法では得ることができない。前記グリーンシート積層法により形成したセンサに、スクリーン印刷等の厚膜法の技術を用いて下部電極、圧電体、上部電極を形成することにより小型で高感度かつ高精度のセンサ素子を簡便に製造することが可能となる。 【0042】 また、本発明のセンサ素子は、支台と、重錘と、可撓板とが一体成形された加速度センサ素子であって、支台、重錘、若しくは可撓板のうち少なくとも1つの結晶構造或いは結晶粒径が異なっているセンサ素子であることが好ましい。部品と工数を削減し生産性を向上するという一体成形の利点を生かしつつ、各部材の特性を制御することが可能となるからである。例えば、可撓板を撓みやすい結晶構造或いは結晶粒径とし、重錘や支台は剛性が高い結晶構造或いは結晶粒径とすることにより高感度かつ高精度のセンサとすることが可能となる。 【0043】 このような結晶構造或いは結晶粒径により可撓板等の特性を制御する方法は、セラミックスの他、金属を用いた一体成形の場合においても有用である。合成樹脂の場合であれば重合度により可撓板等の特性を制御してもよい。 【0044】 本発明のセンサ素子においては、図11に示すように可撓板32上部の空間と支台中空部36が連通するように、重錘30の中心を垂直方向に貫通する孔35を設けることが好ましい。 【0045】 支台31、重錘30、可撓板32の一体焼成体に対し、厚膜法により圧電体を形成し、焼成する方法を採る場合、可撓板32は圧電体の焼成収縮に合わせて変形するため可撓板32には残留応力が発生する。当該残留応力は、可撓板32のバネ定数を大きくするため、可撓板32が硬化して撓み難くなりセンサ感度が低下することになる。 【0046】 重錘30に貫通孔35を設けることにより、重錘30に貫通孔35を設けることにより、可撓部の残留応力が開放される一方、重錘に当該残留応力が逃げ、結果として重錘に応力がかかった状態となり、重錘の剛性が高まることになる。 【0047】 また、従来は図18に示すように前記一体焼成体48に対し圧電素子34を形成する際に可撓板32や重錘30に対する相対位置を精密に制御できず、寸法精度が必ずしも高くなかったが、貫通孔35を基準にして電極や圧電体等を形成することにより、寸法精度の高い高精度のセンサを簡便に形成することが可能となる。 【0048】 また、本発明のセンサ素子においては、例えば図12に示すように支台下端面31aの、支台下端面31aを含む平面上における支台中心Oを通過する直線l1,l2に対して相対称する位置に、少なくとも支台31外周側の空間と連通する細溝39を形成することが好ましい。圧電素子形成後の支台下端面31aに細溝39を形成することにより、貫通孔35と同様に可撓板32の残留応力を緩和し、センサ感度の低下を抑制することが可能となるためである。 【0049】 また、細溝39は、センサ素子を回路基板やパッケージに接着固定する際に接着強度を向上させるアンカー効果を有する。即ち、センサ素子を回路基板等に接着固定する際には、接着位置の微調整を容易にするため、支台下端面31aや回路基板等の表面38に接着剤37のない状態でセンサ素子を位置決めし、その後接着することが好ましい。 【0050】 支台31外周側の空間と連通する細溝39を設けることにより、センサ素子を位置決め後にセンサ素子周辺部から接着剤37を塗布しても、接着剤37が細溝39を伝って支台下端面31aに入り込むので強固な接着が可能となる。かかる効果は自動車エアバッグ起動用等、強い衝撃に耐える高い接着性が要求される用途で特に有効である。 【0051】 更に、本発明のセンサ素子においては、図13に示すように重錘30が、重錘の下端面30aに支台下端面を含む平面38が接触しないように釣支されていることが好ましい。 【0052】 従来は重錘30の振動により重錘下端面30aと回路基板等38が接触するのを防止するために図11に示すように接着剤37の塗布具合により支台31を浮かせるようにセンサ素子を設置していた。本発明の構造であれば、センサ素子自体の構造として重錘下端面30aを回路基板等38から非接触の状態に保つことができる。 【0053】 本発明のセンサ素子は、重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートを積層し、圧着して積層体とする第1工程と、当該積層体を一体焼成して焼成体とする第2工程と、当該焼成体に対し、厚膜法により圧電素子を形成し、焼成する第3工程と、からなる製造方法により好適に製造することができる。 【0054】 グリーンシート積層法を用いることにより、可撓板の薄板化・均質化、重錘厚みの微調整、各部材に対する材質の最適化、生産効率の向上という効果が得られる他、シートごとに材質を変えることも可能であるため、結晶構造の異なる材質或いは結晶粒径の異なる材質を一体成形することも可能となる。 【0055】 また、本発明の製造方法においては、重錘及び可撓板の断層形状のグリーンシートの中心と、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシートの少なくとも二隅とに貫通孔を穿設し、当該貫通孔を支持ピンに貫通した状態で積層し、圧着して積層体とすることが好ましい。こうすることにより重錘中心に貫通孔を有するセンサ素子を極めて簡便に製造することが可能となる。また、支持ピンにより重錘、支台及び可撓板の相対的な位置決め精度が高まり寸法精度の高いセンサ素子を製造することが可能となる。 【0056】 更には、図14に示すように重錘及び可撓板の断層形状のグリーンシート40,42の中心と、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシート41,42の四隅とに貫通孔45,43を穿設し、当該貫通孔45,43に支持ピン44を貫通した状態で積層し、圧着して積層体46とした方が位置精度が高まるため、より好ましい。 【0057】 また、図15に示すように平板状のグリーンシート47上面に、重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシート40,41,42を積層し、圧着して積層体46とし、当該積層体46を一体焼成して焼成体48とした後に、重錘30の下端が揺動し得るように前記平板状のグリーンシート47を切断することが好ましい。 【0058】 当該方法によれば、支台31下端側を閉塞し、積層体46の剛性が保たれている状態で焼成するため、焼成ひずみが少ないという利点がある。なお、グリーンシートは積層体の焼成後、圧電素子形成前に切断してもよいが、圧電体の焼成収縮により重錘と支台の相対位置が変化し、他軸感度が増大するおそれがあるため、圧電素子形成後に切断することが好ましい。 【0059】 グリーンシート47切断の方法は重錘30の下端が揺動し得るように切断する限りにおいて特に限定されず、支台中空部36の形状に沿って切断する方法の他、図19に示すようにダイスにより直線的に切断する方法も可能である。 【0060】 ダイスを用いた切断方法を採る場合は、重錘30の切り離しと同時に支台下端面31aに支台31外周側の空間と連通する細溝39を形成することが可能である。なお、グリーンシート47には、焼成時の脱脂用として小孔47aを設けておくことが好ましい。 【0061】 更には、図17に示すように支台の断層形状のグリーンシート41上面に、平板状のグリーンシート47を載置し、更に重錘、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシート40,41,42を積層し、圧着して積層体46とし、当該積層体46を一体焼成して焼成体48とした後に、重錘の下端が揺動し得るように前記平板状のグリーンシート47を切断してもよい。 【0062】 この方法によれば、図20に示すように各センサ素子毎に中子等の治具を挿入することなく、重錘の下端面30aに支台下端面を含む平面38が接触しないように釣支されたセンサ素子を形成することが可能となる。なお、この場合においても上述した焼成ひずみ抑制の効果が得られるのはいうまでもなく、ダイスを用いた切断方法により、支台下端面31aに支台31外周側の空間と連通する細溝39を形成することが可能である。 【0063】 図21,22に示すように、本発明の加速度センサ素子50は回路基板51に固定し、蓋体53で密閉することにより加速度センサ54とするが、加速度センサ54を製造する際には露点−40℃以下の乾燥雰囲気下において蓋体53で密閉することが好ましい。こうすることにより、センサ内の結露を防止でき、加速度に影響を与えるような、可撓板32や重錘30への結露による重量の変化が防止されるため、センサの精度が維持される。 【0064】 なお、前記のような加速度センサの製造方法において、図11に示すような重錘30の中心に貫通孔35を設けたセンサ素子は貫通孔35により可撓板32上部の空間と支台中空部36が連通するため、支台中空部36の空間も露点の低い乾燥ガスに置換される点において、図13に示すような重錘の下端面30aが回路基板等38と接触しないように釣支されたセンサ素子は、重錘下端面30a側の乾燥ガスの流通が容易となる点において好ましい。 【0065】 【実施例】 以下、本発明のセンサ素子の好ましい実施例につき製造方法とともに説明する。 【0066】(実施例1) まず、図17に示すように支台の断層形状のグリーンシート41上面に、平板状のグリーンシート47を載置し、更に円筒状の重錘、四角柱に円筒形の中空部を有する支台及び可撓板の断層形状のグリーンシート40,41,42を積層し、圧着して積層体とした。 【0067】 この際には、重錘及び可撓板の断層形状のグリーンシート40,42の中心と、支台及び可撓板の断層形状のグリーンシート41,42の四隅に貫通孔45,43を穿設し、図16と同様に当該貫通孔45,43に支持ピン44を貫通した状態で積層した。次いで、積層体を1400〜1500℃で2時間一体焼成して焼成体とした。 【0068】 更に、図18と同様に焼成体48に対し、圧電素子34を形成した。この際には、重錘中心の貫通孔35を基準として、図1のセンサと同様に可撓板32の可撓部分32aのみに下部電極58、圧電体33、上部電極57a,57bをスクリーン印刷により順次配設した後、1200〜1300℃で3時間焼成した。 【0069】 なお、圧電素子は、図1のセンサと同様にドーナツ状に下部電極58、圧電体33を印刷した後、8箇所に区分して上部電極57a,57bを印刷することにより合計8個の圧電素子を形成した。最後に、図19と同様に、前記平板状のグリーンシートを円筒状の重錘30に外接する格子状にダイスで切断し、重錘30の下端を切り離して本発明のセンサ素子を得た。 【0070】 当該センサ素子は以下の方法により加速度センサとした。即ち、図21,22に示すようにセンサ素子50を回路基板51上の所望の位置に位置決めした後、接着剤を支台下端面外周側から注入し、センサ素子50を回路基板51上に固定した。 【0071】 当該回路基板51をCANパッケージベース52に半田付けで固定して、グローブボックス付きCANシール装置(日本アビオニクス社)内で、乾燥窒素ガスをパージして、露点−40℃以下の乾燥雰囲気とした後、気密的にCANパッケージケース53を溶接して密閉封止し加速度センサ54とした。 【0072】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明のセンサ素子は、焼成収縮による可撓板の歪みが生じ難く、撓み応力が急激に変化する、可撓部分と非可撓部分との境界部分を避けるように圧電素子を配設している。従って、圧電素子に安定的に電荷が発生すると共に、僅かな圧電素子の配設位置のズレや、重錘若しくは支台の形状バラツキによって圧電素子に生ずる電荷が急激に増減することがないため、各軸毎の出力バラツキが抑制され、センサ精度が向上する。 【0073】 また、センサ素子が急激な加速度を受けた場合でも、可撓板から圧電素子が剥離せず、圧電体も破損し難いため、センサの信頼性が向上する。更に、本発明の製造方法によれば高感度、高精度、高信頼性のセンサ素子を簡便に製造することが可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004064 【氏名又は名称】日本碍子株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)3月25日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】渡邉 一平
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| 【公開番号】 |
特開平11−271353 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)10月8日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−78137 |
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