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【発明の名称】 角加速度検出装置
【発明者】 【氏名】赤羽 章

【氏名】堀内 雅士

【要約】 【課題】角加速度に応じて相対変位する第1および第2のスリット群を備えた角加速度検出装置において、ディスクの偏心誤差、スリットのピッチ誤差等に起因する出力変動の影響を受けることなく精度の高い検出を可能にすること。

【解決手段】角加速度検出装置10は、回転軸13に発生する角加速度に応じて相対変位する第1および第2のスリット群16、17を備えている。これらのスリット群の相対変位を検出するために等角度間隔で同心円上に配列した3個の半導体位置検出装置18(1)〜18(3)を備えている。これらの検出信号S(1)〜S(3)は出力補償回路40で加算されて平均化される。この結果、検出信号に含まれる誤差成分が効果的に除去された検出信号が得られる。この検出信号に基づき精度の良い角加速度検出を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸に対して一体回転するように固定されている第1のディスクと、前記回転軸に対して一体回転するように固定されている第2のディスクと、光学式検出手段とを有しており、前記第1のディスクは剛体であり円周方向に配列した第1のスリット群を備え、前記第2のディスクは、円周方向に配列した第2のスリット群が形成されたスリット形成部分と、このスリット形成部分を当該ディスクに作用する角加速度に応じて円周方向に弾性変位させるばね部分とを備えており、前記第1および第2のディスクは前記第1および第2のスリット群が対峙するように配置され、前記光学式検出手段によって検出される前記第1のスリット群と前記第2のスリット群の相対変位に基づき前記回転体に発生する角加速度を検出する角加速度検出装置において、3個以上の奇数個の前記光学式検出手段と、出力補償手段とを有し、前記光学式検出手段は前記第1および第2のスリット群の配列方向に沿って等角度間隔で同心円上に配列されており、前記出力補償手段は、前記光学式検出手段のそれぞれからの検出信号を受け取り、これらの検出信号の平均値を算出するようになっており、前記出力補償手段からの出力される前記検出信号の平均値に基づき前記回転体に発生する角加速度を検出することを特徴とする角加速度検出装置。
【請求項2】 請求項1において、3個の前記光学式検出手段を備えていることを特徴とする角加速度検出装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転軸に対して一体回転するように固定されていると共に相互に対峙させた第1および第2のディスクを有し、第1のディスクが剛体であり円周方向に配列した第1のスリット群を備え、第2のディスクが、円周方向に配列した第1のスリット群が形成されたスリット形成部分と、このスリット形成部分を当該ディスクに作用する角加速度に応じて円周方向に弾性変位させるばね部分とを備え、これら第1のスリット群と第2のスリット群の相対変位に基づき回転軸に発生する角加速度を検出可能となっている角加速度検出装置に関するものである。
【0002】さらに詳しくは、各ディスクの取り付け誤差、スリットのピッチ誤差等に起因する出力変動成分を検出信号から除去して精度の高い角加速度を検出可能な角加速度検出装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】従来において、回転軸の角加速度を検出するための角加速度センサとしては、液体ロータ型角加速度計、渦電流式の角加速度計が知られている。
【0004】液体ロータ型角加速度計は、サーボ型加速度計の振り子の代わりに液体の動きを検出し、この液体の動きをサーボ機構によりバランスさせるときのフィードバック電流から角加速度を測定するものである。一方、渦電流を利用した角加速度計は、永久磁石を用いて磁気回路を構成し、この回路内に円筒形のアルミニウム製のロータを配置し、このロータの回転速度の変化に応じて発生する磁気起電力に基づき、角加速度を検出するものである。
【0005】しかしながら、液体ロータ型角加速度計は回転角度に制限があり、無限回転角度に渡る角加速度の検出はできないという問題点がある。また、渦電流を利用した角加速度計は、得られる検出信号が微弱であるので、高感度の信号処理回路が必要となる。
【0006】本願人は、かかる点に鑑みて、国際公開番号WO93/20451号において、簡単な構成で無限角度範囲に渡って回転軸の角加速度を検出可能な角加速度検出装置を提案している。この角加速度検出装置は、回転軸に対して一体回転するように固定されていると共に相互に対峙させた第1および第2のディスクを有し、一方のディスクが、円周方向に配列したスリット群が形成されたスリット形成部分と、このスリット形成部分を当該ディスクに作用する角加速度に応じて円周方向に弾性変位させるばね部分とを備え、他方のディスクが剛体であり円周方向に配列したスリット群を備え、各ディスクに形成されているスリット群の相対変位に基づき回転軸に発生する角加速度を検出できるように構成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この形式の角加速度検出装置においては、双方のディスクに形成されているスリットのピッチ誤差に起因して、検出出力に変動が発生する。例えば、検出対象の回転軸に角加速度が発生していない場合においてもスリットのピッチ誤差のために、僅かに角加速度が発生している場合と同様な検出信号が出るおそれがある。また、各ディスクが偏心回転する場合においても、検出信号には実際に回転軸に発生している角加速度とは関係の無い出力変動が発生する。
【0008】本発明の課題は、このようなスリットのピッチ誤差等に起因した出力変動を除去して精度の高い角加速度検出を行うことのできる角加速度検出装置を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の角加速度検出装置は、回転軸に対して一体回転するように固定されている第1のディスクと、前記回転軸に対して一体回転するように固定されている第2のディスクと、光学式検出手段とを有しており、前記第1のディスクは剛体であり円周方向に配列した第1のスリット群を備え、前記第2のディスクは、円周方向に配列した第2のスリット群が形成されたスリット形成部分と、このスリット形成部分を当該ディスクに作用する角加速度に応じて円周方向に弾性変位させるばね部分とを備えており、前記第1および第2のディスクは前記第1および第2のスリット群が対峙するように配置され、前記光学式検出手段によって検出される前記第1のスリット群と前記第2のスリット群の相対変位に基づき前記回転体に発生する角加速度を検出する角加速度検出装置において、次の構成を備えたことを特徴としている。
【0010】すなわち、本発明の角加速度検出装置は、3個以上の奇数個の前記光学式検出手段と、出力補償手段とを有しており、また、前記光学式検出手段は前記第1および第2のスリット群の配列方向に沿って等角度間隔で同心円上に配列されており、更に、前記出力補償手段は、前記光学式検出手段のそれぞれからの検出信号を受け取り、これらの検出信号の平均値を算出するようになっており、前記出力補償手段からの出力される前記検出信号の平均値に基づき前記回転体に発生する角加速度を検出するようになっている。
【0011】本発明の角加速度検出装置の典型例では、3個の前記光学式検出手段が取り付けられる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して、本発明の角加速度検出装置の実施の形態について説明する。
【0013】図1(A)には本発明を適用した角加速度検出装置の縦断面を示してあり、図1(B)には当該装置の光学式検出手段の配置を示してある。本例の角加速度検出装置10は薄い円筒状のハウジング11を有し、このハウジング11の中央を、ベアリング12を介して、測定対象の回転軸13が回転自在に貫通している。ハウジング11内に位置する回転軸13の外周には、第1のディスク14および第2のディスク15が対峙した状態で固定されている。これらのディスク14、15の外周側の部分には、円周方向に向けて一定の角度間隔でそれぞれ第1のスリット群16および第2のスリット群17が形成されている。
【0014】これらの第1および第2のスリット群16、17を挟む状態に、3組の半導体位置検出装置18(1)、18(2)、18(3)の検出部が配置されている。これらの検出部は等角度間隔(本例では120度の間隔)で同心円上に配列されている。各半導体位置検出装置18(1)〜18(3)は同一構成である。また、それらの検出部も同一構成であり、発光ダイオード20と半導体位置検出器21から構成されている。
【0015】第1のディスク14は剛体ディスクである。これに対して、第2のディスク15は、第2のスリット群17の部分が円周方向に弾性変位可能な構成となっている。
【0016】図2には第2のディスク15の形状を示してある。この図に示すように、第2のディスク15は、最も外周側の部分が環状のスリット形成部分15aであり、ここに第2のスリット群17が形成されている。このスリット形成部分15aの内側には、その内周面から120度間隔で中心に向かって延びる3本の板ばね15cからなるばね部分15bが形成されている。これらの3本の板ばね15cの内側端は、回転体13の外周に固定した軸固定部分15dの外周に連続している。4本の板ばね15cのそれぞれは、スリット形成部分15aに作用する角加速度に応じて円周方向に弾性変形する。
【0017】ここで、軸固定部分15dは、図2(A)において点線で示すような環状のものとすればよいが、各板ばね15cの間の部分は半径方向の外方に向けて突出した変位制限用突出部分153とされている。この突出部分153の円周方向の両側端154、155は、対応する板ばね15cの両側端151、152に沿って一定のギャップで平行に延びている。従って、各板ばね15cが円周方向に弾性変形して隣接する突出部分153の端154あるいは155に当たると、各板ばね15cはそれ以上に変形することはない。従って、各突出部分153によって各板ばね15cの弾性変形が許容量以下に制限される。
【0018】なお、第2のディスク15は、例えば、ステンレススチール製のものとすることができる。この場合、ワイヤカットにより、ステンレススチール製のディスク素材を裁断して、上記のようなスリット形成部分15a、ばね部分15b、軸固定部分15dおよび変位規制用突起153を形成すればよい。
【0019】次に、第1および第2のディスク14、15に形成されている第1および第2のスリット群16、17について説明する。
【0020】第1のディスク14のスリット形成部分14aに形成された第1のスリット群16は、一定の角度間隔で形成された半径方向に延びるスリット16aから構成されている。これに対して、第2のディスク15のスリット形成部分15aに形成した第2のスリット群17は、同一の角度間隔ではあるが、半径方向に対して一定の角度だけ傾斜した方向に延びるスリット17aから構成されている。
【0021】図3には、これらの第1および第2のスリット群16、17を円周方向から直線方向に展開した状態で示してある。この図において点線で示すスリット群が第1のディスク14に形成された第1のスリット群16であり、実線で示すものが第2のディスク15に形成した第2のスリット群17である。また、想像線で囲った範囲が発光ダイオード20からの平行光の照射領域である。スリット群16は一定のピッチpで形成されたスリット16aから構成され、他方のスリット群17は、スリット16aに対して一定の角度だけ傾斜したスリット17aから構成されている。これらのスリット16aと17aの交差部分Aが光通過部分を区画形成している。双方のスリット16a、17aが横方向の相対的に移動すると、この交差部分Aが垂直方向に向けて移動する。この移動位置が半導体位置検出器21の側において検出される。
【0022】図4には、本例の角加速度検出装置10の制御系を示してある。半導体位置検出装置18(1)の発光ダイオード20からの平行光が、スリット16a、17aの交差部分を通過して半導体位置検出器21の検出面21aに照射すると、その照射位置に応じた比率に配分された光電流出力i1、i2がこの検出器21から出力される。本例においては、出力i1とi2の和が一定値になるように、発光ダイオード20の光量を制御している。したがって、検出器21の検出出力、例えばその一方の検出信号Sから、交差部分Aの移動位置を測定することができる。
【0023】回転軸13が回転を開始し、あるいは回転速度が変化した場合には、第2のディスク15の側の第2のスリット群17が他方の第1のディスク14の側の第1のスリット群16に対して円周方向にずれる。すなわち、第2のディスク15の側のスリット形成部分15aの慣性力によって、そのばね部分15bが円周方向に弾性変形するので、第2のスリット群17もそれに伴って円周方向にずれる。この結果、第1のスリット群16と第2のスリット群17の間に形成される交差部分A(光透過部分)は、半径方向にずれる。このために、半導体位置検出器21の側における受光位置が移動する。この移動に伴い、この検出器21の出力S(1)が変化する。よって、この検出器出力S(1)から、回転軸13に発生した角加速度を測定できる。残りの2個の半導体位置検出装置18(2)、18(3)の検出器21からも同様に検出器出力S(2)、S(3)が得られる。
【0024】ここで、第1および第2のディスク14、15に形成された第1および第2のスリット群16、17の各スリットにピッチ誤差がある場合や、各ディスクが僅かに偏心した状態で回転軸13に取り付けられている場合には、それらが原因となって検出出力Sには、1回転1周期で現れる出力変動が含まれる。すなわち、スリットのピッチ誤差やディスクの偏心回転に起因して双方のスリット群の交差部分Aの位置が、角加速度の増減に関係なく、あたかも移動したかのような検出出力が得られてしまう。この弊害を回避するために、本例では次のようにして検出出力Sを補償している。
【0025】前述のように、本例では3個の半導体位置検出装置18(1)〜18(3)を備え、それらの検出部は120度間隔で同心円上に配列されている。図4に示すように、各検出部の検出器21から得られる検出信号S(1)〜S(3)は出力補償回路40に供給される。この出力補償回路40においては、これらの検出信号S(1)〜S(3)を加算してその平均値を求める。出力補償回路40からは、この平均化された値が補償出力として出力される。この補償出力に基づき、角加速度が算出される。
【0026】ここで、従来においては、図5に示すように、半導体位置検出装置19を2個あるいは4個等角度間隔に配置し、これらの出力信号間の誤差成分をキャンセルすることにより、実際の角加速度に関係の無い誤差成分を除去するようにしている。しかしながら、本発明者らの実験によれば、従来のように偶数個の半導体位置検出装置から得られる信号に基づき誤差成分を除去する場合に比べて、本発明のように奇数個の半導体位置検出装置からの検出信号を加算して平均化することにより誤差成分を除去する場合の方が、誤差成分をより効果的に除去できることが確認された。
【0027】例えば、3個の半導体位置検出装置を配置した場合には、各半導体位置検出装置からの出力信号には120度づつ位相のずれた1回転1周期の正弦波状の誤差成分が主要な誤差成分として含まれる。これは主としてディスクの偏心によるものである。このような誤差成分は、3個の半導体位置検出装置からの出力を加算して平均化することにより効果的に除去することができる。本発明者等の実験によれば、4個の半導体位置検出装置を90度間隔に配置した場合に各装置から得られる4個の検出信号に基づき誤差を除去する場合(図5(C))と少なくとも同程度の結果が得られることが確認された。
【0028】なお、本例では、第1および第2のスリット群の相対的変位を検出するために半導体位置検出装置を用いているが、これ以外の光学式検出手段を用いてもよいことは勿論である。また、使用する光学式検出手段の個数は、3個以上の奇数個であればよい。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の角加速度検出装置は、3個以上の奇数個の光学式検出手段からの検出信号を加算してそれらの平均値を求めることにより、各検出信号に含まれる誤差成分を除去するようにしている。この本発明の構成によれば、従来のように偶数個の光学式検出手段に基づき検出を行う場合に比べて、誤差成分を効果的に除去できる。換言すると、少ない個数の光学式検出手段を用いて精度の高い角加速度の検出を行うことが可能になり、従来に比べて同一精度の角加速度検出を行うための装置を廉価でコンパクトに構成できる。
【出願人】 【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
【出願日】 平成9年(1997)12月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
【公開番号】 特開平11−174075
【公開日】 平成11年(1999)7月2日
【出願番号】 特願平9−338305