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【発明の名称】 加速度センサ
【発明者】 【氏名】河本 吉弘

【要約】 【課題】異なる向きに加わる加速度を異なる感度で検出可能とした加速度センサを提供すること。

【解決手段】下方に向けて凹んだ底面を有する容器であって底面の最下位置33から上向きに傾斜してなる複数の傾斜面34、35を有し、その傾斜面34、35が最下位置33から少なくとも二以上の異なる向きにて異なる傾斜角度で形成されている収容体3と、収容体3の最下位置33に配置され所定以上の加速度の付加により傾斜面34、35上を移動するマス4と、マス4が最下位置33から移動したことを検出する検出手段とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 底面の最下位置から上向きに傾斜してなる複数の傾斜部を有し、その傾斜部が前記最下位置から少なくとも二以上の異なる向きにて異なる傾斜角度で形成されてなる収容体と、前記収容体の前記最下位置に配置され前記傾斜部上を移動可能とされているマスと、前記マスが前記最下位置から移動したことを検出する検出手段と、を備えた加速度センサ。
【請求項2】 前記検出手段は、前記底面の前記最下位置に配設される固定接点と、前記最下位置に配置される前記マスを上方から押圧し前記マスが前記最下位置から移動したときに降下して前記固定接点に接触する可動接点と、を備えて構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】 車両に設置され、前記車両の衝突の際に加わる加速度を検出する衝突センサとして用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の加速度センサ。
【請求項4】 前記車両の前方、後方及び側方に向けられた前記収容体の傾斜部がそれぞれ異なる傾斜角度で形成され、その傾斜部の傾斜角度が前記車両の前方、側方、後方の順で大きく形成されていること、特徴とする請求項3に記載の加速度センサ。
【請求項5】 前記車両の衝突時における燃料の供給停止の検知センサとして用いられることを特徴とする請求項3又は4に記載の加速度センサ。
【請求項6】 車両に対して及ぼされる加速度に応じて少なくとも二以上の方向に移動可能なマスと、前記マスの移動を検出する検出手段と、を有し前記車両に及ぼされる加速度を検出する加速度センサであって、前記マスが移動し始める時の加速度が前記二以上の方向のうち少なくとも一つが異なるものとされること、を特徴とする加速度センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加速度を検出するための加速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の加速度センサとして、特開平4−350567号公報に記載されるように、筐体の内壁面の間にばねを架設しそのばねの中央部に磁石を取り付けて構成したものが知られている。このセンサは、加速度の発生に伴う磁石の移動を磁気変化として磁気検出素子により検出し、その磁気検出素子の出力に基づいて加速度を検出しようとするものである。また、この公報の図3には、二つのばねを交差して配設し、それらのばねの交点位置に磁石を設置することにより、加速度センサの前後左右の各方向に加わる加速度の検出を可能とした二次元な加速度センサが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、加速度センサにおいて、用途によっては、加速度が加わる方向が異なるときには異なる感度で加速度を検出したい場合がある。例えば、自動車などに設置され衝突時の加速度を検出するセンサでは、前方部の衝突(以下、「前突」という。)、後方部の衝突(以下、「後突」という。)、側方部の衝突(以下、「側突」という。)による生ずる加速度(負の加速度、即ち減速度を含む。)を異なる検出感度とし、衝突状態に応じて適切な措置を採ることが望ましい。
【0004】しかしながら、前述の公報に記載される加速度センサにあっては、加速度が加わる向きに応じて異なる検出感度とすることは容易でない。例えば、前述の公報の図3に示されるような二次元的な加速度センサでは、直交する二方向の加速度をそれぞれ検出することができるが、その検出した加速度が規定値に達したか否かについてはそれを解析する回路などが複数必要となる。また、ばねの架設方向に加わる加速度に対しては、異なる向きであっても、同じばねが作用するために同じ検出感度となってしまう。このため、異なる向きに加わる加速度を異なる感度で検出することができない。
【0005】そこで本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、異なる向きに加わる加速度を異なる感度で検出可能とした加速度センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明に係る加速度センサは、下方に向けて凹んだ底面を有する容器であって底面の最下位置から上向きに傾斜してなる複数の傾斜部を有しその傾斜部が最下位置から少なくとも二以上の異なる向きにて異なる傾斜角度で形成されてなる収容体と、収容体の最下位置に配置され所定以上の加速度の付加により傾斜部上を移動するマスと、マスが最下位置から移動したことを検出する検出手段とを備えている。
【0007】この発明によれば、所定以上の加速度が加わると収容体内のマスがいずれかの傾斜部上を移動する。その際、傾斜部が異なる向きで異なる傾斜角度に形成されているため、加速度が加わる向きによりマスが移動する加速度が異なることになる。従って、加速度が加わる向きに応じて異なる感度で加速度の検出が行える。
【0008】また本発明に係る加速度センサは、前述の検出手段が、底面の最下位置に配設される固定接点と、最下位置に配置されるマスを上方から押圧しマスが最下位置から移動したときに降下して固定接点に接触する可動接点とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0009】この発明によれば、磁気検出素子などの特殊な検出素子を用いることなく、マスの移動を検出することが可能となる。また、マスを上方から押圧する構造であるため、水平方向に加速度が付加された際に、その加速度がいずれの向きであってもマスの移動が可能である。従って、水平方向における各向きの加速度を一つのセンサで検出することができる。更に、マスを上方から押圧する構造であるため、振動などにより垂直方向へ加わる加速度の影響を受けにくいものとなる。
【0010】また本発明に係る加速度センサは、車両に設置され、車両の衝突の際に加わる加速度を検出する衝突センサとして用いられることを特徴とする。
【0011】この発明によれば、車両の衝突時の加速度を検出することにより、車両の衝突センサとして用いることが可能である。また、車両が衝突する向きによって異なる感度でその衝突を検出することが可能である。
【0012】また本発明に係る加速度センサは、車両の前方、後方及び側方に向けられた収容体の傾斜部がそれぞれ異なる傾斜角度で形成され、その傾斜部の傾斜角度が車両の前方、側方、後方の順で大きく形成されていること特徴とする。
【0013】この発明によれば、後突、側突、前突の順で衝突による加速度の感度を高く設定することが可能である。
【0014】また本発明に係る加速度センサは、車両の衝突時における燃料の供給停止の検知センサとして用いられることを特徴とする。
【0015】この発明によれば、車両衝突時に燃料の供給を確実に停止することができ、燃料が車外に漏れることなどを防止することができる。
【0016】更に本発明に係る加速度センサは、車両に対して及ぼされる加速度に応じて少なくとも二以上の方向に移動可能なマスと、マスの移動を検出する検出手段とを有し車両に及ぼされる加速度を検出する加速度センサであって、マスが移動し始める時の加速度が二以上の方向のうち少なくとも一つが異なるものとされることを特徴とする。
【0017】この発明によれば、所定以上の加速度が加わるとマスがその加速度の方向に応じて移動し始めるが、マスが移動し始める時の加速度が二以上の方向のうち少なくとも一つが異なるものとされているため、二以上の方向のうち少なくとも一つの加速度を異なる感度で検出することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。尚、各図において同一要素には同一符号を付して説明を省略する。また、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致していない。
【0019】(第一実施形態)図1に本実施形態に係る加速度センサの断面図を示す。図1に示すように、加速度センサ1には、ケース2の内部に収容体3が配設されている。収容体3は、マス4を収容するための容器であり、下方に向けて凹んだ底面を有している。また、収容体3は、上部が開放され底面が下方に向けて先細り状に形成されている。この収容体3は、振動などにより容易に動かないようにねじ止めなどによりケース2の内壁に固定されている。
【0020】図2(a)に収容体3の平面図、図2(b)、(c)に収容体3の垂直断面図を示す。図2(a)に示すように、収容体3の上部開口部31は、ほぼ卵形となっており、その半分がほぼ円形とされその他方の半分が楕円形となっている。また、収容体3の内面(底面)の最下部には、内外を貫通する孔32が設けられている。この孔32は、固定接点51を装着するためのものである。図2(b)、(c)に示すように、収容体3の内面は、孔32上の最下位置33に対し各方位に対して上向きの傾斜面となっている。
【0021】図2(a)においてb−bの方向を長径方向、c−cの方向を短径方向とすると、図2(c)に示すように、最下位置33から長径方向へ延びる一方の傾斜面34は、他方の傾斜面35に対して、傾斜角度が大きく形成されている。また、図2(c)に示すように、最下位置33から短径方向へ延びる傾斜面36、36は、長径方向の傾斜面34の傾斜角θ34より小さく傾斜面35の傾斜角θ35より大きく形成されている。このため、傾斜面34の傾斜角度をθ34、傾斜面35の傾斜角度をθ35、傾斜面36の傾斜角度をθ36とすると、次の式(1)の関係となる。
【0022】θ34>θ36>θ35 ‥‥(1)
図1に示すように、収容体3内には、マス4が収容されている。マス4は、所定以上の加速度が加わったときに移動する質量体であり、球形のものが用いられる。このマス4は、少なくともその表面が絶縁体により構成されている。マス4の全体が絶縁体により構成されていてもよいが、例えば、金属製球体の表面に絶縁膜を形成してなるものなどであってもよい。なお、「加速度」とは、速度が増大する加速の場合と、速度が減少する減速の場合との双方を含むものである。
【0023】収容体3の孔32には、固定接点51が装着されている。固定接点51は、マス4の最下位置33からの移動を検出するためのものであって、例えば、導電性金属などからなる棒状部材が用いられる。固定接点51は、その上端面が収容体3の内面とほぼ面一となるように配置されている。固定接点51の下端部はケース2を突き抜けており、ワイヤハーネス61と接続されている。
【0024】ケース2の上部には、可動接点52が配設されている。可動接点52は、マス4の最下位置33からの移動を検出するためのものであって、例えば、導電性金属などからなる棒状部材が用いられる。この可動接点52は、ケース2の天井部を貫通し固定接点51に向けて縦向き(図1では上下方向)に配されており、上下方向に移動自在に取り付けられている。このため、可動接点52は、マス4が最下位置33から移動したときに降下して固定接点51に当接する。ケース2を突き出る可動接点52の上端部には、ワイヤハーネス62が接続されている。また、可動接点52の途中には鍔部52aが形成されている。
【0025】ワイヤハーネス61、62は、それぞれ検出回路7に接続されている。検出回路7は、ワイヤハーネス61、62を介して可動接点52と固定接点51の接触を検出する回路である。
【0026】ケース2内には、可動接点52に外装されてスプリング53が配設されている。スプリング53は、可動接点52の鍔部52aとケース2の天井部との間に縮設され、可動接点52を下方に向けて付勢している。
【0027】次に、加速度センサ1の動作について説明する。
【0028】図1に示すように、固定接点51と可動接点52との間にマス4が配置され、スプリング53の付勢により可動接点52がマス4を上方から押し付けている状態において、水平方向(図1では左右方向又は紙面を貫通する方向など)に加速度が加わると、慣性の法則により、その加速する向きと反対向きにマス4を移動させる力が発生する。しかし、マス4は可動接点52により下方へに押圧されているため、その押圧力に基づき固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる摩擦力により、マス4の移動は阻止される。また、マス4は収容体3の最下位置33に配置されているため、マス4が移動するためには収容体3の傾斜面を登り上がる以上の力がマス4に加わることが必要である。
【0029】図3に示すように、例えば、収容体3の長径方向であって傾斜面35側に向けて正の加速度aが加わる(傾斜面34に向けて負の加速度が加わる場合も同じ。)と、慣性の法則により、マス4に傾斜面34側に向けてマス4を移動させる移動力F(F=m・a。mはマス4の質量)が発生する。その移動力Fの発生に伴い、固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる摩擦力F1が作用する。また、傾斜面34にマス4の自重Wが加わると、マス4には傾斜面34を降下させる向きに力W・sinθ34が生ずる。このため、加速度のよる移動力Fが固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる最大摩擦力FXを超えて、かつ、その移動力Fに基づき傾斜面34に沿って上方へ力W・sinθ34以上の力がマス4に作用しないと、マス4は移動しない。なお、図3においては、移動力F及び摩擦力F1と自重Wとの寸法比率は、現実のものとは一致していない。
【0030】そして、加速度センサ1に加速度aが大きく加わると、マス4に大きな移動力Fが発生する。このとき、移動力Fが最大摩擦力FXを超え、次の式(2)を満たすことにより、マス4が傾斜面34に沿って上方へ移動する。
【0031】F>FX+W・tanθ34 ‥‥(2)
例えば、図4に示すように、移動力Fの発生により、それと反対向きに摩擦力FXがマス4に作用する。また、マス4の自重Wにより、マス4に傾斜面34と平行であって下向きの分力W・cosθ34が作用する。このため、移動力Fにより、マス4が傾斜面34に沿って上方へ移動するためには、マス4に自重Wの分力W・cosθ34以上の力が傾斜面34の上方へ向けて加わる必要があり、具体的には次の式(3)を満たす必要がある。
【0032】
(F−FX)・cosθ34>W・sinθ34 ‥‥(3)
この式(3)をFについて解くことにより、式(2)が導き出されることになる。
【0033】そして、図5に示すように、マス4が収容体3の最下位置33から移動すると、可動接点52が降下して固定接点51と接触する。このため、ワイヤハーネス61、62により構成される回路が閉回路となる。これにより、加速度センサ1に加わった加速度が一定値以上であることが検出される。
【0034】加速度を検出した後、図5に示すように可動接点52が最下位置33に降下した状態となるが、可動接点52の上端を引き上げればマス4が最下位置33に戻る。このため、加速度検出前の状態(図1参照)とすることでき、容易に加速度の再検出が行える。
【0035】一方、図1において、収容体3の長径方向であって傾斜面34側(図1では左側)に向けて正の加速度aが加わる(「傾斜面35に向けて負の加速度が加わる」場合も同じ。)と、慣性の法則により、マス4に傾斜面35側に向けてマス4を移動させる移動力Fが発生する。この場合、前述と同様に移動力Fの発生に伴い、固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる摩擦力F1が作用する。また、傾斜面35にマス4の自重Wが加わると、マス4には傾斜面35を降下させる向きに力W・sinθ35が生ずる。
【0036】このため、加速度のよる移動力Fが固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる最大摩擦力FXを超えて、かつ、その移動力Fに基づき傾斜面34に沿って上方へ力W・sinθ35以上の力がマス4に作用しないと、マス4は移動しない。
【0037】そして、加速度センサ1に加速度aが大きく加わると、マス4に大きな移動力Fが発生する。このとき、移動力Fが最大摩擦力FXを超え、次の式(4)を満たすことにより、マス4が傾斜面35に沿って上方へ移動する。
【0038】F>FX+W・tanθ35 ‥‥(4)
すなわち、移動力Fの発生によりそれと反対向きに摩擦力FXが作用し、また、マス4の自重Wによりマス4に傾斜面35と平行であって下向きの分力W・cosθ35が作用する。このため、移動力Fにより、マス4が傾斜面35に沿って上方へ移動するためには、マス4に自重Wの分力W・cosθ35以上の力が傾斜面35の上方へ向けて加わる必要があり、具体的には次の式(5)を満たす必要がある。
【0039】
(F−FX)・cosθ35>W・sinθ35 ‥‥(5)
この式(5)をFについて解くことにより、式(4)が導き出される。
【0040】そして、図5に示すように、マス4が収容体3の最下位置33から移動すると、可動接点52が降下して固定接点51と接触する。このため、ワイヤハーネス61、62により構成される回路が閉回路となる。これにより、加速度センサ1に加わった加速度が一定値以上であることが検出される。
【0041】この場合、前述の式(1)に示すように、マス4が移動する傾斜面35の傾斜角度θ35が傾斜面34の傾斜角度θ34より小さいので、式(4)におけるtanθ35はtanθ34より小さいものとなる(但し、0<θ34<90°、0<θ35<90°。)。従って、加速度センサ1において、最下位置33から傾斜面35に向けて(図1では左側から右側へ向けて)加速度が加わる場合に対し、最下位置33から傾斜面34に向けて(図1では右側から左側へ向けて)加速度が加わる場合の方が検出感度が高いものとなる。
【0042】図1において、収容体3の短径方向(図1では紙面を貫通する方向)に向けて加速度aが加わると、慣性の法則により、マス4に傾斜面36側に向けてマス4を移動させる移動力Fが発生する。この場合、前述と同様に移動力Fの発生に伴い、固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる摩擦力F1が作用する。また、傾斜面36にマス4の自重Wが加わると、マス4には傾斜面36を降下させる向きに力W・sinθ36が生ずる。
【0043】このため、加速度のよる移動力Fが固定接点51及び可動接点52とマス4の表面との間に生ずる最大摩擦力FXを超えて、かつ、その移動力Fに基づき傾斜面34に沿って上方へ力W・sinθ36以上の力がマス4に作用しないと、マス4は移動しない。
【0044】そして、加速度センサ1に加速度aが大きく加わると、マス4に大きな移動力Fが発生する。このとき、移動力Fが最大摩擦力FXを超え、次の式(6)を満たすことにより、マス4が傾斜面36に沿って上方へ移動する。
【0045】F>FX+W・tanθ36 ‥‥(6)
すなわち、移動力Fの発生によりそれと反対向きに摩擦力FXが作用し、また、マス4の自重Wによりマス4に傾斜面36と平行であって下向きの分力W・cosθ36が作用する。このため、移動力Fにより、マス4が傾斜面36に沿って上方へ移動するためには、マス4に自重Wの分力W・cosθ36以上の力が傾斜面36の上方へ向けて加わる必要があり、具体的には次の式(7)を満たす必要がある。
【0046】
(F−FX)・cosθ36>W・sinθ36 ‥‥(7)
この式(7)をFについて解くことにより、式(6)が導き出される。
【0047】そして、図5に示すように、マス4が収容体3の最下位置33から移動すると、可動接点52が降下して固定接点51と接触する。このため、ワイヤハーネス61、62により構成される回路が閉回路となる。これにより、加速度センサ1に加わった加速度が一定値以上であることが検出される。
【0048】この場合、前述の式(1)に示すように、マス4が移動する傾斜面36の傾斜角度θ36が傾斜面34の傾斜角度θ34より小さく、かつ、傾斜面35の傾斜角度θ35より大きいので、式(6)におけるtanθ36はtanθ34より小さくtanθ35より大きいものとなる(但し、0<θ34<90°、0<θ35<90°、0<θ36<90°。)。従って、加速度センサ1において、最下位置33から傾斜面36に向けて(図1では紙面を貫通する方向へ向けて)加速度が加わる場合、最下位置33から傾斜面35に向けて(図1では左側から右側へ向けて)加速度が加わる場合より検出感度が高いものとなり、最下位置33から傾斜面34に向けて(図1では右側から左側へ向けて)加速度が加わる場合より検出感度が低いものとなる。
【0049】なお、加速度センサ1にあっては、傾斜面の傾斜角度を異なるものとすることにより加速度の検出感度を変えることができるが、その他、マス4の質量、スプリング53の押圧力(ばね定数)、マス4と固定接点51及び可動接点52との間の摩擦係数などを適宜変えることにより、検出すべき加速度を変えることができる。
【0050】このように、本実施形態に係る加速度センサ1によれば、加速度センサ1に所定以上の加速度が加わると、収容体3内のマス4がいずれかの傾斜面上を移動する。その際、傾斜面が異なる向きで異なる傾斜角度に形成されているため、加速度が加わる向きによりマス4が移動する加速度が異なることになる。従って、加速度が加わる向きに応じて異なる感度により加速度を検出することができる。
【0051】また、機械的な構造により構成されているため、マス4の移動を検出するために磁気検出素子などの特殊な検出素子が不要である。このため、強い衝撃に耐え得るものとなる。また、低コストでの製造も可能である。
【0052】また、マス4を上方から押圧する構造であるため、加速度が付加された際にマス4が全方位へ移動することが可能である。従って、全方位における加速度の検出が行える。
【0053】なお、マス4と可動接点52の相対的な大きさ、最下位置33からの各傾斜面の傾斜角度の立ち上がり状態によっては、最下位置33からマス4が移動する際に、マス4が可動接点52を上方へ押し上げなければならない場合もある。この場合、加速度の付加によるマス4が移動する条件として可動接点52の押圧力を考慮する必要があるが、収容体3の傾斜面が異なる向きで異なる傾斜角度に形成されることにより加速度が加わる向きに応じて異なる感度により加速度を検出することができることは前述と変わらない。
【0054】次に、加速度センサ1の使用方法の一例を説明する。
【0055】図6、図7に加速度センサを車両の衝突センサとして用いる場合の説明図を示す。図6に示すように、加速度センサ1は、自動車などの車両8の中央部に配置される。例えば、車両フロア上、トンネル上に配置される。このように加速度センサ1を車両8の中央位置に配置することにより、前後左右における車両8の衝突を正確に検出することができる。また、加速度センサ1は、収容体3の傾斜面34が車両8の前方に向くように配置される。このため、収容体3の傾斜面35は車両8の後方へ向けられ、収容体の傾斜面36、36はそれぞれ車両8の側方へ向けられる。
【0056】また、図7に示すように、加速度センサ1の固定接点51、可動接点52にそれぞれ接続されるワイヤハーネス61、62は、ECU81に接続される。ECU81は燃料噴射に関する制御装置であり、加速度センサ1の固定接点51と可動接点52の接触を検出する検出手段として機能する。また、ECU81には、燃料噴射用のインジェクタ82、フューエルタンクの燃料をエンジンに供給するためのフューエルポンプ83が接続される。その他、ECU81には、図示しないが、スロットルポジションセンサなど各種のセンサやイグニッションコイルなどが接続される。
【0057】車両8が走行時などに前方の構造物や他の車両などに衝突した場合、その衝突により所定値以上の加速度(減速度も含む)が加速度センサ1に作用すると、加速度センサ1のマス4が最下位置33から移動する。このマス4の移動により、可動接点52が降下して固定接点51に接触する。このため、可動接点52及び固定接点51を介してワイヤハーネス61、62が導通する。
【0058】そして、ECU81は、可動接点52と固定接点51が接触したことをワイヤハーネス61、62を介して検出する。すると、インジェクタ82に燃料噴射を停止すべき信号を出力し、フューエルポンプ83に燃料供給を停止すべき信号を出力する。各信号を受けて、インジェクタ82は燃料噴射を停止し、フューエルポンプ83は燃料供給を停止する。
【0059】このように、車両8が前突し所定値以上の加速度を受けた場合、自動的にエンジンへの燃料噴射及び燃料供給を確実に停止でき、燃料が車外に漏れることなどが防止できる。なお、車両8の衝突時に、エンジンへの燃料噴射及び燃料供給の停止のうちいずれか一方のみを行う場合もある。
【0060】車両8が前突した場合について説明したが、車両8が側突又は後突した場合も、その衝突により車両8が所定値以上の加速度を受けたときには、同様にして自動的にエンジンへの燃料噴射及び燃料供給が確実に停止でき燃料が車外に漏れることなどが防止できる。
【0061】ここで、加速度センサ1を設置した車両8が前突したときに加速度センサ1がその衝突を検知する加速度(検知可能な最小加速度)をa1、車両8が側突したときに加速度センサ1がその衝突を検知する加速度(検知可能な最小加速度)をa2、車両8が後突したときに加速度センサ1がその衝突を検知する加速度(検知可能な最小加速度)をa3とすると、次の式(8)の関係となる。
【0062】a1>a2>a3 ‥‥(8)
すなわち、前突、側突、後突の順で加速度センサ1の検出感度が低く設定できる。このため、一般に車両衝突時に発生する加速度は前突、側突、後突の順に大きいので、その特性に合せて適正な衝突検知が行える。
【0063】また、加速度センサ1の収容体3を傾斜角度の異なる別の収容体と付け替えることにより、加速度センサ1の検出感度を変えることができる。このため、車種が異なる場合でも、収容体3のみを付け替えるだけで、車両に合わせた適正な衝突検出が行える。
【0064】(第二実施形態)第一実施形態に係る加速度センサ1にあっては、マス4の移動を検出する検出手段としてマス4を上下に挟み込む可動接点52、固定接点51などを備えたものが用いられているが、本発明に係る加速度センサ1はそのようなものに限られるものではなく、マス4の最下位置33からの移動を検出できるものであればその他のものであってもよい。例えば、収容体3の傾斜面の途中に円周方向に沿って複数の接点スイッチを並設し、加速度の発生によりマス4が移動して接点スイッチの位置まで移動して来たときに、マス4の移動を検知するものであってもよい。
【0065】(第三実施形態)第一実施形態及び第二実施形態に係る加速度センサにあっては、収容体3の底面が滑らかに連続する面であるが、本発明に係る加速度センサはそのようなものに限られるものではなく、下向きに角錐状に凹むような底面を形成してなる収容体を備えて構成するものであってもよい。また、第一実施形態及び第二実施形態に係る加速度センサにあっては、前後左右の二次元方向の加速度を検出可能なものであるが、異なる向きで検出感度が異なるものであれば、1次元方向の加速度を検出ものであってよい。
【0066】(第四実施形態)次に、第四実施形態に係る加速度センサについて説明する。
【0067】本実施形態に係る加速度センサは、車両に設けられるものであって、車両に対して及ぼされる加速度に応じて少なくとも二以上の方向に移動可能なマス4と、そのマス4の移動を検出する検出手段とを備えて構成され、車両に及ぼされる加速度を検出する加速度センサである。そして、マス4が移動し始める時の加速度が二以上の方向のうち少なくとも一つが異なるものとされるものである。この加速度センサにおけるマス4は、第一実施形態に示すように球形のものでもよいが、非球形のものであってもよい。また、検出手段は、第一実施形態に示すようにマス4を押圧支持するものでもよいし、マス4の移動を検出できるものであればその他のものであってもよい。また、ここでいう「二以上の方向」とは、車両の前方、後方、側方、車両斜め方向のうち二つ以上の方向をいう。
【0068】第一実施形態に係る加速度センサ1でも二以上の方向のうち少なくとも一つの方向の加速度を異なる感度で検出することが可能であるが、本実施形態に係る加速度センサとしては、例えば、各方向に形成される傾斜面のうち少なくとも一つを異なる角度とするものであればよい。この場合、二以上の方向のうち少なくとも一つの方向の加速度を他の方向の加速度に対し異なる感度で検出することができる。
【0069】また、本実施形態に係る加速度センサとしては、例えば、ほぼ平らとした底面上にマス4を配置し、加速度が加わってマス4に移動力が生じたときにそのマス4の移動を抗する手段を設けたものであってもよい。その移動を抗する手段としては、例えば、マス4が移動する底面の表面上に凹凸などを設け、マス4と底面との摩擦係数をマス4の配置位置から異なる二以上の方向のうち少なくとも一つの方向で異なるものとしたものが挙げられる。この場合、マス4は、非球形のもの、例えば円柱体を横向きに配置したものが用いられる。この加速度センサによれば、二以上の方向のうち少なくとも一つの方向の加速度を他の方向の加速度に対し異なる感度で検出することができる。
【0070】また、本実施形態に係る加速度センサにおいて、マス4の配置位置を中心としてその周囲に複数の磁石を設置し、それらの磁石の磁力を異ならせることにより、加速度が加わる際に生ずるマス4の移動力を異なる二以上の方向のうち少なくとも一つの方向で異ならせるものであってもよい。この場合、マス4の移動を抗する手段としては、第一実施形態に係る加速度センサ1の収容体3のようにマス4の配置位置の周囲に傾斜面を形成してもよいし、マス4の配置位置の周囲の底面とマスの間の摩擦係数を増大させたものであってもよい。また、マス4としては磁性を有するものが用いられる。このような加速度センサであっても、二以上の方向のうち少なくとも一つの方向の加速度を他の方向の加速度に対し異なる感度で検出することができる。
【0071】更に、本実施形態に係る加速度センサとして、上部開口部31が円形であってすり鉢状の底面を有し中心位置に最下位置33が形成される収容体3と、その収容体3に収容されるマス4を備えて構成されるものであってもよい。この場合、収容体3を車両に対して傾けて設置することにより、水平方向に対し異なる傾斜角度となる傾斜面を設けることができる。従って、二以上の方向のうち少なくとも一つの方向の加速度を他の方向のものに対し異なる感度で検出することができる。
【0072】以上のように、本実施形態に係る加速度センサによれば、所定以上の加速度が加わるとマス4がその加速度の方向に応じて移動し始めるが、マス4が移動し始める時の加速度が二以上の方向のうち少なくとも一つが異なるものとされているため、二以上の方向のうち少なくとも一つの加速度を異なる感度で検出することができる。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0074】傾斜部が異なる向きで異なる傾斜角度に形成されているため、加速度が加わる向きによりマスが移動する加速度が異なることになる。従って、加速度が加わる向きに応じて異なる感度で加速度の検出が行える。
【0075】また、検出手段が固定接点と可動接点とを備えて構成されることにより、磁気検出素子などの特殊な検出素子を用いることなく、マスの移動を検出することができる。また、マスを上方から押圧する構造であるため、水平方向に加速度が付加された際にその加速度がいずれの向きであっても、マスの移動が可能であり加速度の検出が行える。
【0076】また、車両に設置することにより、車両の衝突センサとして用いることができる。その際、車両が衝突する向きによって異なる感度でその衝突を検出することができる。
【0077】また、車両の前方、後方及び側方に向けられた収容体の傾斜部をそれぞれ異なる傾斜角度で形成し、その傾斜部の傾斜角度を車両の前方、側方、後方の順で大きく形成することにより、後突、側突、前突の順で衝突による加速度の感度を高く設定することができる。
【0078】更に、車両の衝突時における燃料の供給停止の検知センサとして用いることにより、衝突時にエンジンへの燃料噴射及び燃料供給が確実に停止でき、燃料が車外に漏れることなどが防止できる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外1名)
【公開番号】 特開平11−160350
【公開日】 平成11年(1999)6月18日
【出願番号】 特願平9−324646