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【発明の名称】 ダイアフラム式センサチップを利用したセンサ
【発明者】 【氏名】神戸 正方

【氏名】岩田 仁

【要約】 【課題】感度変化率が小さくて温度特性に優れるばかりでなく、製造が簡単であって低コストなダイアフラム式センサチップを利用したセンサを提供する。

【解決手段】このセンサ1を構成するリードフレーム3はダイパッド4を備える。センサチップ6は、ダイパッド4に接着剤10を介して軟接着されている。モールド材2は、センサチップ6の周囲に空間8aを確保しつつリードフレーム3を全体的にモールドする。モールド材2としては、線膨張係数が1.6×10-5/℃〜1.7×10-5/℃かつ弾性率が105×103 kg/cm2 〜115×103 kg/cm2 のものが使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ダイパッドを備えるリードフレームと、前記ダイパッドに接着剤を介して軟接着されたダイアフラム式センサチップと、前記センサチップの周囲に空間を確保しつつ前記リードフレームを全体的にモールドするモールド材とを備えるセンサであって、前記モールド材は、線膨張係数が1.4×10-5/℃〜1.8×10-5/℃かつ弾性率が100×103 kg/cm2 〜130×103 kg/cm2 であることを特徴とするダイアフラム式センサチップを利用したセンサ。
【請求項2】ダイパッドを備えるリードフレームと、前記ダイパッドに接着剤を介して軟接着されたダイアフラム式センサチップと、前記センサチップの周囲に空間を確保しつつ前記リードフレームを全体的にモールドするモールド材とを備えるセンサであって、前記モールド材は、線膨張係数が1.6×10-5/℃〜1.7×10-5/℃かつ弾性率が105×103 kg/cm2 〜115×103 kg/cm2 であることを特徴とするダイアフラム式センサチップを利用したセンサ。
【請求項3】前記センサチップはシリコンチップであり、前記リードフレームは厚さが0.25mm〜0.5mmの42アロイ製リードフレームであり、前記接着剤は軟接着が可能なシリコーンゴム系の接着剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイアフラム式センサチップを利用したセンサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイアフラム式センサチップを利用したセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ダイアフラム式の感圧センサチップを利用した加速度センサが多数提案されている。
【0003】この種の加速度センサに用いられる感圧センサチップは、肉厚の基部と肉薄のダイアフラム部とを備えている。ダイアフラム部の表面側には、薄膜形成技術によって複数の歪みゲージが形成されている。これらの歪みゲージは1つのブリッジ回路を構成している。そして、感圧センサチップの基部は、リードフレームのダイパッドに対して接着剤を介して軟接着されている。リードフレームはモールド材によって全体的にモールドされている。ダイボンディングされたセンサチップの周囲には空間が確保されており、そこにはチップ封止用のシリコーンゲルが充填されている。
【0004】ところで、センサを構成している材料は、それぞれ固有の熱歪量を有している。また、センサチップやリードフレームに用いられる金属材料は線膨張係数が比較的小さく、モールド材や接着剤に用いられる樹脂材料はそれよりも線膨張係数が大きい。このような材料間で熱歪量差が大きいと、周囲の温度変化に起因してダイアフラム部に熱応力が加わりやすくなる。すると、ダイアフラム部のエッジ領域にある歪みゲージに歪みが生じ、抵抗値が変化してしまう。そして、これが原因となって感度が変化する結果、センサの温度特性が悪化するという問題があった。
【0005】そのため、従来においては、ダイパッド上に小さなセラミックス基板を接着し、かつそのセラミックス基板上にエラストマーによりセンサチップを軟接着するという対策が講じられていた(第1の対策)。また、センサ外部に温度補正用回路を設けることにより検出信号の補正を電気的に行うという対策が講じられていた(第2の対策)。その結果、センサの感度変化率を、現状の値(±10〜30%程度)から許容範囲である±5%以内に収めていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の対策ではセラミックス基板が必要であるため、材料コストが高くなる。それに加え、第1の対策ではセラミックス基板を接着する工程を実施する必要があるため、製造が面倒になりかつ生産性も低下する。
【0007】また、第2の対策では温度補正用回路が別途必要であるため、やはり高コスト化が避けられない。本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感度変化率が小さくて温度特性に優れるばかりでなく、製造が簡単であって低コストなダイアフラム式センサチップを利用したセンサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、ダイパッドを備えるリードフレームと、前記ダイパッドに接着剤を介して軟接着されたダイアフラム式センサチップと、前記センサチップの周囲に空間を確保しつつ前記リードフレームを全体的にモールドするモールド材とを備えるセンサであって、前記モールド材は、線膨張係数が1.4×10-5/℃〜1.8×10-5/℃かつ弾性率が100×103 kg/cm2 〜130×103 kg/cm2 であることを特徴とするダイアフラム式センサチップを利用したセンサをその要旨とする。
【0009】請求項2に記載の発明では、ダイパッドを備えるリードフレームと、前記ダイパッドに接着剤を介して軟接着されたダイアフラム式センサチップと、前記センサチップの周囲に空間を確保しつつ前記リードフレームを全体的にモールドするモールド材とを備えるセンサであって、前記モールド材は、線膨張係数が1.6×10-5/℃〜1.7×10-5/℃かつ弾性率が105×103 kg/cm2 〜115×103 kg/cm2 のエラストマーであることを特徴とするダイアフラム式センサチップを利用したセンサをその要旨とする。
【0010】請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記センサチップはシリコンチップであり、前記リードフレームは厚さが0.25mm〜0.5mmの42アロイ製リードフレームであり、前記接着剤は軟接着が可能なシリコーンゴム系の接着剤であるとしている。
【0011】以下、本発明の「作用」を説明する。まず、請求項1に記載の発明の作用を説明する。センサを構成している材料の中で容積的に最も大きな割合を占めているのはモールド材である。従って、ダイアフラム部に加わる熱応力の大きさは、モールド材に加わる熱応力の大きさに強く支配される。本発明ではかかる事実に鑑みて使用するモールド材の物性の適正化、特に線膨張係数及び弾性率の適正化を図っている。その結果、材料間の熱歪量差が小さくなり、ダイアフラム部に加わる熱応力の低減が図られる。従って、ダイアフラム部の歪みが解消され、感度変化率も小さな値に抑えられる。ゆえに、温度特性に優れたセンサとすることができる。
【0012】また、セラミックス基板を使用する必要がなく、しかもセンサ外部に温度補正用回路を設ける必要もないので、低コストなセンサとすることができる。さらに、セラミックス基板の接着工程も不要であるため、製造が簡単なセンサとすることができる。
【0013】請求項2に記載の発明によると、使用するモールド材の線膨張係数及び弾性率のよりいっそうの適正化が図られているため、感度変化率が極めて小さい値に抑えられる。ゆえに、温度特性に極めて優れたセンサとすることができる。勿論、請求項1に記載の発明と同様の理由により、低コストであって製造が簡単なセンサとすることができる。
【0014】請求項3に記載の発明によると、シリコンチップ、厚さが0.25mm〜0.5mmの42アロイ製リードフレーム及び軟接着が可能なシリコーンゴム系の接着剤と、上記のようにしたモールド材とを組み合わせた場合に感度変化率が許容範囲である±5%以内に抑えられることが、試験により確認されている。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明をダイアフラム式センサチップを利用した加速度センサに具体化した一実施の形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0016】図1,図2には、本実施形態の加速度センサ1が示されている。この加速度センサ1は、いわゆるプラスティックモールドパッケージの形態を採っている。モールド材2は絶縁体であって、所定の空間8aを確保しつつリードフレーム3をほぼ全体的にモールドしている。リードフレーム3はダイパッド4,5を有している。ダイパッド4には感圧センサチップ6がダイボンディングされ、ダイパッド5には信号処理用のICチップ7がダイボンディングされている。リードフレーム3のインナーリード部3aは、その殆どがモールド材2の中にあり、ダイパッド4,5を包囲している。リードフレーム3のアウターリード部3bは、モールド材2から突出しており、外部接続端子として使用されるようになっている。感圧センサチップ6及びICチップ7は、各インナーリード部3aに対してボンディングワイヤW1 を介してワイヤボンドされている。
【0017】モールド材2の一部には有底筒状のゲル収容部8が形成されている。前記ダイパッド4は、ゲル収容部8の底面中央部に位置している。そして、このゲル収容部8内の空間8aには、シリコーン系封止材としてのシリコーンゲル9が充填されている。その結果、ダイパッド4に搭載された感圧センサチップ6の封止が図られている。なお、シリコーンゲル9は加速度を感圧センサチップ6に伝達する慣性体としての役割も果たす。
【0018】図2,図3に示されるように、感圧センサチップ6は、肉厚の基部6aと肉薄のダイアフラム部6bとを備えている。ダイアフラム部6bの表面側には、スパッタリング等の薄膜形成技術によって複数の歪みゲージ11が形成されている。これらの歪みゲージ11は1つのブリッジ回路を構成している。ブリッジ回路からの出力信号は、信号処理用のICチップ7において処理された後にセンサ外部に出力されるようになっている。
【0019】感圧センサチップ6の基部6aは、リードフレーム3のダイパッド4に対して接着剤10を介してダイボンドされている。本実施形態では、シリコーン系であって軟接着が可能な接着剤10が使用されている。より具体的には、シリコーンゴム系接着剤(加熱硬化型であって1液型)10が使用されている。同接着剤10の線膨張係数は55×10-5/℃であり、弾性率は0.06×103 kg/cm2である。
【0020】上記の加速度センサ1では、加速度の変動の影響をまず慣性体であるシリコーンゲル9が受けるとともに、そのシリコーンゲル9を介してダイアフラム部6bにその影響が波及する。すると、ダイアフラム部6bにはその加速度の大小・方向に応じた撓みが生じる。より具体的にいうと、図2において加速度センサ1が上側から下側に向かって加速されたとき(正圧時)には、ダイアフラム部6bは下面側に撓むようになる。図2において加速度センサ1が下側から上側に向かって加速されたとき(負圧時)には、ダイアフラム部6bは上面側に撓むようになる。このような撓みが生じると、各歪みゲージ11の抵抗値にも変化が起こる。従って、このときの抵抗値の変化に基づいて加速度が感知されるようになっている。
【0021】ところで、この加速度センサ1に使用されるモールド材2は、線膨張係数が1.4×10-5/℃〜1.8×10-5/℃かつ弾性率が100×103 kg/cm2 〜130×103 kg/cm2 であることが必要とされる。なお、前記線膨張係数は1.6×10-5/℃〜1.7×10-5/℃であることがより好ましい。同じく弾性率は105×103 kg/cm2 〜115×103 kg/cm2 であることがより好ましい。その理由は、かかる事実が後述する比較試験において確認されているからである。
【0022】次に、加速度センサ1を製造する手順について説明する。まず、42アロイ等の導電性金属板をプレス加工またはエッチング加工することによって、所定パターンを備えるリードフレーム3を製造する。本実施形態では、厚さが0.25mm〜0.5mmの42アロイ製リードフレーム3を選択している。42アロイはニッケルを約42重量%含む鉄合金であって、線膨張係数の平均値は0.67×10-5/℃〜0.68×10-5/℃である。弾性率は0.15×103 kg/cm2 である。また、あらかじめ感圧センサチップ6及びICチップ7をそれぞれ用意しておく。本実施形態では、厚さが0.5mm〜0.6mm程度のシリコンチップを感圧センサチップ6として選択している。シリコンの線膨張係数の平均値は0.26×10-5/℃〜0.36×10-5/℃であり、弾性率は1000×103 kg/cm2 〜1600×103 kg/cm2 である。
【0023】リードフレーム製造工程の後、リードフレーム3をスクリーン印刷機にセットし、従来公知の方法によりダイパッド4,5上に液状の前記シリコーンゴム系接着剤10を所定厚さに印刷塗布する。このとき、印刷厚は数十μm程度に設定される。
【0024】印刷工程の後、リードフレーム3をダイボンダにセットして、感圧センサチップ6及びICチップ7をそれぞれダイパッド4,5上にダイボンディングする。この後、接着剤10を所定温度に加熱することにより熱硬化を行う。従って、接着剤10には上述のように熱硬化性が付与されていることが望ましい。そして、このような熱硬化処理を行うと、接着剤10の流動性が失われて弾性体化する。その結果、感圧センサチップ6がダイパッド4に対して軟接着され、かつICチップ7がダイパッド5上に軟接着される。
【0025】ダイボンディング工程の後、リードフレーム3をワイヤボンダにセットして、ワイヤボンディングを行う。その結果、複数本のボンディングワイヤW1 を介して、感圧センサチップ6及びICチップ7がそれぞれインナーリード部3aに電気的に接続される。
【0026】ワイヤボンディング工程の後、リードフレーム3を成形用金型内にセットして、モールド材2によるモールドを行う。モールドを行うと、ICチップ7は完全にモールド材2の中に封入されてしまう。一方、感圧センサチップ6の周囲にはゲル収容部8が形成される。なお、このようなモールド工程に先立って、アウターリード部3bを略L字状に屈曲させるリードフォーミング工程を実施してもよい。勿論、モールド工程後にリードフォーミング工程を実施しても構わない。
【0027】モールド工程の後、ゲル収容部8内にシリコーンゲル9を充填し、感圧センサチップ6をそのシリコーンゲル9によって完全に封止する。以上の結果、図1,図2に示す所望の加速度センサ1を得ることができる。
【0028】次に、モールド材2としていくつかのものを用いて行なった比較試験について説明する。図5の表には、この比較試験において使用した各モールド材2の特性、即ち線膨張係数及び弾性率がそれぞれ示されている。
【0029】表中、Aで表わされるモールド材2は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)である(比較例1)。その線膨張係数は2.5×10-5/℃であり、弾性率は75×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲外にある。
【0030】Bで表わされるモールド材2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)である(比較例2)。その線膨張係数は2.2×10-5/℃であり、弾性率は140×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲外にある。
【0031】Cで表わされるモールド材2は、エポキシ系のものである(実施例1)。その線膨張係数は1.4×10-5/℃であり、弾性率は120×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲内にある。
【0032】Dで表わされるモールド材2も、エポキシ系のものである(実施例2)。その線膨張係数は1.8×10-5/℃であり、弾性率は120×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲内にある。
【0033】Eで表わされるモールド材2も、エポキシ系のものである(実施例3)。その線膨張係数は1.5×10-5/℃であり、弾性率は123×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲内にある。
【0034】Fで表わされるモールド材2は、シリコーンゴム系のものである(実施例4)。その線膨張係数は1.7×10-5/℃であり、弾性率は113×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲内にある。
【0035】Gで表わされるモールド材2は、エポキシ系のものである(比較例3)。その線膨張係数は1.9×10-5/℃であり、弾性率は200×103 kg/cm2 である。従って、線膨張係数及び弾性率はともに好適範囲外にある。
【0036】そして、以上列挙した各エラストマーを用いてそれぞれ加速度センサ1を製造するとともに、下記の点について「TSS値」についての調査を行なった。ここで「TSS値」とは、特定の温度幅を設定したときの感度変化率(%)を表わすものであり、Temperature Sensitive Shiftの頭文字をとったものである。例えば、基準温度T1 (℃)において、印加圧力が0(mmHg)のときのセンサ出力電圧をV01(V)、印加圧力がP1 (mmHg)のときのセンサ出力電圧をV1 (V)とする。この場合、単位圧力あたりのセンサ出力電圧(V/mmHg)は、次式1で表わされる。
【0037】
VP1=(V1 −V01)/P1 ・・・(1)
同様に温度T2 (℃)において、印加圧力が0(mmHg)のときのセンサ出力電圧をV02(V)、印加圧力がP2 (mmHg)のときのセンサ出力電圧をV2 (V)とする。この場合、単位圧力あたりのセンサ出力電圧(V/mmHg)は、次式2で表わされる。
【0038】
VP2=(V2 −V02)/P2 ・・・(2)
このときのVP1→VP2のセンサ出力電圧の変化に基づいて、次式3のように表わしたものをTSS値(%)と定義する。
【0039】
TSS={(VP2−VP1)/VP1}×100 ・・・(3)
なお、この比較試験では基準温度T1 を常温(具体的には25℃)に設定し、かつ印加圧力を+100mmHgに設定した。そして、温度T2 を−40℃,80℃にした場合(つまり温度幅を120℃にした場合)についてTSS値を算出し、その値が許容範囲である±5%以内にあるか否かを調査した。その結果を図5の表に示す。同表に示された値は、−40℃のときの値及び80℃のときの値のうち大きいものの値である。なお、いくつかのものについては比較のために、図4のグラフにさらに詳細なデータを示す。同グラフの横軸は温度(℃)であり、縦軸はTSS値(%)である。白抜き三角(△)を通る線分は、比較例1であるPBTのデータである。白抜き丸(○)を通る線分は、実施例3のデータである。黒塗り四角(■)を通る線分は、実施例4のデータである。実施例1及び実施例2についてのデータは、実施例3のデータに酷似していたため敢えてここでは割愛する。
【0040】グラフ及び表から明らかなように、比較例1〜3についてはいずれもTSS値が±15%以上であった。従って、TSS値が許容範囲外になるという事実に鑑みると、×という判定を下さざるを得なかった。
【0041】一方、実施例1〜4については、いずれもTSS値が±3%以下という小さな値に抑えられ、TSS値が許容範囲内にあることが確認された。また、グラフからも明らかなように、それらの中でも実施例4のTSS値が際立って小さかった。従って、実施例1,2,3については○という判定を下し、実施例4については◎という判定を下した。
【0042】次に、図3に基づき、この加速度センサ1の各構成材料間における熱応力の伝達について説明する。既に述べたように、加速度センサ1を構成している材料は複数種にわたっていて、それらは皆固有の熱歪量を有している。従って、加速度センサ1が温度変化に遭遇した場合、普通であれば、各構成材料には自身の物性に応じた大きさの熱応力が付加することになる。しかしながら、前記構成材料の中で容積的に最も大きな割合を占めているのは、図1,図2からも明らかなようにモールド材2である。しかも、モールド材2として使用されるエラストマーは金属材料である感圧センサチップ6やリードフレーム3に比べて線膨張係数が大きく、ゆえに熱歪量も大きいという特徴を有している。
【0043】従って、リードフレーム3は、線膨張係数が比較的小さくても、モールド材2の変形に伴う応力を受けて変形する。これは、モールド材2以外の構成材料に加わる熱応力の大きさは、モールド材2に加わる熱応力の大きさに強く支配されることを意味する。もっとも、前記接着剤10は硬化後に弾性体となり感圧センチップ6をダイパッド4に対して軟接着しうるエラストマーなので、ある程度の応力を緩和することが可能である。ところが、従来のようにモールド材2の物性の適正化が図られていないと、応力緩和域を超える応力が接着剤10に付加しやすく、ダイアフラム部6bに大きな歪みをもたらす結果となる。
【0044】それに対して、モールド材2の物性の適正化を図った本実施形態によると、応力緩和域を超える応力が接着剤10に付加しにくくなると考えられる。よって、たとえモールド材2及びリードフレーム3に変形が起こっても、その影響は接着剤10によって食い止められ、ダイアフラム部6bへの波及が回避されるものと推測されている。
【0045】さて、以下に本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(イ)本実施形態では、モールド材2の線膨張係数及び弾性率を上記好適範囲内に設定することによる適正化を図っている。よって、材料間の熱歪量差が小さくなり、ダイアフラム部6bに加わる熱応力の低減が図られている。従って、ダイアフラム部6bの歪みが解消され、感度変化率も±3%以内という小さな値に抑えられる。ゆえに、温度特性に優れた加速度センサ1とすることができる。
【0046】(ロ)本実施形態によれば、セラミックス基板上にセンサチップを軟接着するという対策や、センサ外部に温度補正用回路を設けるという対策を講じるまでもなく、±5%以内という許容範囲内に感度変化率を収めることができる。このため、セラミックス基板を使用する必要がなく、しかもセンサ外部に温度補正用回路を設ける必要もない。よって、低コストな加速度センサ1とすることができる。
【0047】(ハ)また、セラミックス基板の接着工程も不要であるため、製造が簡単な加速度センサ1とすることができる。このため、加速度センサ1の生産性を確実に向上することができる。
【0048】なお、本発明は上記の実施形態のみに限定されることはなく、例えば次のように変更することが可能である。
◎ 本発明は、リードフレーム3の形成材料として42アロイとは異なる組成を有する鉄合金を選択した場合についても適用されることが可能である。このような鉄合金としては、例えば、約29重量%のニッケルと約17重量%のコバルトとを含むコバールや、約46重量%のニッケルを含む46アロイや、約52重量%のニッケルを含む52アロイや、約42重量%のニッケルと約6重量%のクロームとを含む鉄合金や、約45重量%のニッケルと約6重量%のクロームとを含む鉄合金などが挙げられる。以上列挙した鉄合金は42アロイと組成が近似しており、42アロイの物性と類似しているからである。
【0049】◎ 実施形態において使用したシリコーンゴム系接着剤10に代えて、非シリコーン系の接着剤を使用することも可能である。即ち、軟接着が可能なものであれば、例えばフッ素系接着剤、軟質エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤などの使用も許容されることができる。
【0050】◎ 本発明は、シリコーンゲル9に代えてシリコーンオイルをシリコーン系封止材として用いた場合にも適用されることができる。
◎ ブリッジ回路を構成する抵抗体である歪みゲージ11は、薄膜形成技術以外の手法によって形成されたものであっても勿論よい。例えば、印刷法、貼付法、不純物拡散法などにより形成された抵抗体によってブリッジ回路を構成してもよい。
【0051】◎ 前記実施形態では本発明をセンサチップ6を利用した加速度センサ1に具体化したが、その他にも例えばセンサチップ6を利用した圧力センサに具体化することも勿論許容される。
【0052】ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項1において、前記モールド材は線膨張係数及び弾性率が前記好適範囲内にある前記エポキシ系またはシリコーンゴム系の成形材料であることを特徴とするダイアフラム式センサチップを利用したセンサ。この構成であると、感度変化率が小さくて温度特性に優れるばかりでなく、製造が簡単であって低コストなセンサを確実に提供することができる。
【0053】(2) 請求項1〜3のいずれか1項において、前記センサは加速度センサであり、前記センサチップはダイアフラム部表面側のエッジ領域に抵抗体を有する感圧センサチップであり、前記空間は前記感圧センサチップを包囲するゲル収容部内にある空間であり、その空間には前記ダイアフラム部に加速度を伝達する慣性体としてのシリコーンゲルが収容されていることを特徴とするダイアフラム式センサチップを利用したセンサ。
【0054】なお、本明細書中において使用した技術用語を次のように定義する。「軟接着が可能な接着剤: 硬化後に弾性体となる性質を有するためセンサチップをダイパッドに対して弾性的に接着することができる接着剤のことを指し、例えばシリコーンゴム系接着剤やフッ素系接着剤等がある。」
【0055】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、感度変化率が小さくて温度特性に優れるばかりでなく、製造が簡単であって低コストなダイアフラム式センサチップを利用したセンサを提供することができる。
【0056】請求項2に記載の発明によれば、感度変化率が極めて小さくて温度特性に極めて優れるばかりでなく、製造が簡単であって低コストなダイアフラム式センサチップを利用したセンサを提供することができる。
【0057】請求項3に記載の発明によれば、感度変化率を許容範囲である5%以内に確実に抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
【出願日】 平成9年(1997)7月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開平11−23613
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−179598