トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 車両のヨーレイト演算装置
【発明者】 【氏名】太田 貴志

【要約】 【課題】車両のヨーレイト演算装置において、簡単な構成で車両のヨーレイトを高精度に演算する。

【解決手段】ヨーレイトセンサ11が検出した検出ヨーレイトγa を、ヨーレイトの真値がゼロである停止時に検出して検出基準点の学習補正し、初期補正検出ヨーレイトγa1を求める一方、左右の車輪速度Va ,Vb の差から算出したヨーレイトγb を、車両が発進してから所定時間内にこの算出ヨーレイトγb から初期補正検出ヨーレイトγa1を減算して学習補正して車輪の摩耗による誤差を除去し、補正算出ヨーレイトγb1を求め、車両走行中に、初期補正検出ヨーレイトγa1と補正算出ヨーレイトγb1を基準として学習補正し、ヨーレイトγa2を求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、前記車両の左右の車輪速度を検出する車輪速センサと、該車輪速センサが検出した左右の車輪速度差から前記車両のヨーレイトを算出するヨーレイト算出手段と、前記車両の停止時に前記ヨーレイトセンサが検出したヨーレイトの誤差を学習する初期検出ヨーレイト誤差学習手段と、前記ヨーレイトセンサが検出したヨーレイトを該初期検出ヨーレイト誤差学習手段の学習値に基づいて補正する検出ヨーレイト初期補正手段と、前記車両が走行開始してから所定時間内に該検出ヨーレイト初期補正手段が補正した検出ヨーレイトに基づいて前記ヨーレイト算出手段が算出した算出ヨーレイトの前記車両の速度に比例した誤差を学習する算出ヨーレイト誤差学習手段と、前記車両が走行開始してから所定時間経過した後に該算出ヨーレイト誤差学習手段の学習値に基づいて前記ヨーレイト算出手段が算出した算出ヨーレイトを補正する算出ヨーレイト補正手段と、前記車両の走行中に該算出ヨーレイト補正手段が補正した算出ヨーレイトに基づいて前記検出ヨーレイト初期補正手段が補正した検出ヨーレイトを学習する検出ヨーレイト学習手段と、該検出ヨーレイト学習手段の学習値に基づいて前記検出ヨーレイト初期補正手段が補正した検出ヨーレイトを補正する検出ヨーレイト補正手段とを具えたことを特徴とする車両のヨーレイト演算装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行中に車両に作用するヨーレイトを求める車両のヨーレイト演算装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両が走行する道路が屈曲路であったり、あるいは、直線路であってもその横方向(幅方向)において傾斜していたときには、この車両に対してヨーレイトが発生する。従来、このヨーレイトはヨーレイトセンサによって検出していた。即ち、ヨーレイトセンサは、車両の垂直軸まわりの回転速度を検出しており、この検出値を制御部に出力して制動力制御や操舵力制御などに用いていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このヨーレイトセンサは、一般的に、振動子である四角柱の隣接した2面に振動と検出を兼ねた圧電素子を貼付し、この圧電素子に電圧を与えて振動させると、金属柱に回転力が加わり、この回転速度を応じてコリオリ力が発生し、このときに2面の圧電素子に流れる各電流を検出し、その差を求めることでこのコリオリ力が検出され、この信号を電圧信号に変換して出力することである。ところが、このヨーレイトセンサは上述のような構成となっていることから、周囲の温度変化に対して敏感であり、検出基準点がずれることで検出値が誤差が発生してしまう。そのため、ヨーレイトセンサの検出値を周囲の温度変化に応じて補正する必要がある。
【0004】そこで、ヨーレイトセンサの零点を補正するようにしたものとして、例えば、特開平6−117873号公報に開示されたものがある。この公報に記載された「ヨーレイトセンサの零点ドリフト補正装置」は、ヨーレイトセンサの検出信号の一部を複数のフィルタを3段直列結合して構成したフィルタ回路を介して演算器に演算信号として入力し、検出信号のオフセット補正し、ヨーレイトセンサの零点ドリフト補正を確実に行うようにしている。ところが、この「ヨーレイトセンサの零点ドリフト補正装置」は、ローパスフィルタによる周波数成分だけで零点ドリフト補正しており、正確に零点ドリフトが補正されない場合がある。
【0005】また、ヨーレイトセンサを用いずに、左右輪の回転差を基に車両旋回時の幾何学的関係から導いた線形式で車両のヨーレイトを求めることができる。ところが、車両のタイヤは長期の使用によって磨耗し、且つ、この摩耗量は左右輪で一定でないことから、この方法によって求めたヨーレイトには、タイヤの摩耗量の影響が含まれてしまい、この誤差は車速に比例して大きくなり、ヨーレイトの検出精度が低下してしまう。
【0006】本発明はこのような問題を解決するものであって、簡単な構成で車両のヨーレイトを高精度に演算することを可能とした車両のヨーレイト演算装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するための請求項1の発明の車両のヨーレイト演算装置では、ヨーレイトセンサと車輪速センサを設けると共に車輪速センサが検出した左右の車輪速度差から車両のヨーレイトを算出するヨーレイト算出手段を設け、車両の停止時に初期検出ヨーレイト誤差学習手段が検出ヨーレイトの誤差を学習し、検出ヨーレイト初期補正手段はこの学習値に基づいて検出ヨーレイトを補正する一方、車両が走行開始してから所定時間内に算出ヨーレイト誤差学習手段は検出ヨーレイト初期補正手段が補正した検出ヨーレイトに基づいて算出ヨーレイトの車両の速度に比例した誤差を学習し、車両が走行開始してから所定時間経過した後に算出ヨーレイト補正手段はこの学習値に基づいて算出ヨーレイトを補正し、車両の走行中に検出ヨーレイト学習手段は算出ヨーレイト補正手段が補正した算出ヨーレイトに基づいて検出ヨーレイト初期補正手段が補正した検出ヨーレイトを学習し、検出ヨーレイト補正手段はこの学習値に基づいて検出ヨーレイト初期補正手段が補正した検出ヨーレイトを補正するようにしてある。
【0008】従って、車両の停止時に検出ヨーレイトの誤差を補正し、車両が走行開始してから所定時間内にこの補正された検出ヨーレイトに基づいて算出ヨーレイトを補正することで、車両の走行中にはこの補正された算出ヨーレイトに基づいて検出ヨーレイトを補正しており、ヨーレイトセンサが検出したヨーレイトへの温度変化による誤差を補正すると共に、左右の車輪速度差から求めたヨーレイトへの車輪摩耗量による速度に比例した誤差を補正することで、常時、高精度なヨーレイトを求めることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】図1に本発明の一実施形態に係る車両のヨーレイト演算装置を表す制御ブロック、図2に本実施形態の車両のヨーレイト演算装置による制御方法を表すフローチャートを示す。
【0011】本実施形態の車両のヨーレイト演算装置は、図1に示すように、車両のヨーレイトγa を検出するヨーレイトセンサ11と、この車両の左右の車輪速度Va ,Vb を検出する車輪速センサ12,13とを有しており、ヨーレイト算出手段14はこの各車輪速センサ12,13が検出した左右の車輪速度差から車両のヨーレイトγb を算出する。ヨーレイトセンサ11は、一般的に、車両への取付位置によっては温度変化が影響して検出基準点がずれてしまい、このヨーレイトセンサ11によって検出されたヨーレイトγa は、周囲の温度が高くなると誤差が発生してしまう。一方、長期の使用によって磨耗する摩耗量は左右輪が一定でないことから、車輪速センサ12,13が検出した左右の車輪速度Va ,Vb にはタイヤの摩耗量の影響が含まれてしまい、この左右の車輪速度Va ,Vb の差から求めたヨーレイトγb には車輪摩耗量による速度に比例した誤差が発生してしまう。
【0012】そこで、本実施形態では、周囲の温度変化の影響を受けやすいヨーレイトセンサ11の検出ヨーレイトγa を、ヨーレイトの真値がゼロである停止時の検出ヨーレイトを基に学習補正し、一方、タイヤの摩耗量の影響を受けやすい左右の車輪速度Va ,Vb の差から算出したヨーレイトγb を、車両が発進してから所定時間内にこの学習補正された検出ヨーレイトγa を基準として学習補正する。そして、車両の走行中には、初期補正した検出ヨーレイトγa1に対して、学習補正された算出ヨーレイトγb1を基準として学習補正し、周囲の温度変化の影響を除去することで高精度なヨーレイトγa2を求めるようにしている。
【0013】即ち、車両発進前の停止時には、ヨーレイトの真値は必ずゼロであるため、このときにヨーレイトセンサ11が検出したヨーレイトγa がゼロでなければ、その値が誤差値Ca となる。そして、検出ヨーレイト初期補正手段16は、初期検出ヨーレイト誤差学習手段15が学習して求めた誤差値Ca に基づいてヨーレイトセンサ11が検出したヨーレイトγa を補正し、初期補正検出ヨーレイトγa1を求める。
【0014】一方、車両が走行開始してから所定時間(例えば、100秒間)内には、ヨーレイトセンサ11の周囲の温度変化がまだ少ないため、検出ヨーレイト初期補正手段16が補正した初期補正検出ヨーレイトγa1に誤差はほとんどない。そのため、このときに算出ヨーレイト誤差学習手段17は、この初期補正検出ヨーレイトγa1に基づいてヨーレイト算出手段14が算出した算出ヨーレイトγb の車両の速度に比例した誤差を学習する。つまり、車両の走行中に左右の車輪速度Va,Vb の差からヨーレイト算出手段14が算出したヨーレイトγb は、タイヤの摩耗量の影響を受けて車速に比例した誤差をもっており、ヨーレイトγb から初期補正検出ヨーレイトγa1を減算することで誤差値Cb を求める。そして、車両が走行開始してから所定時間(例えば、100秒間)経過した後に、算出ヨーレイト補正手段18は算出ヨーレイト誤差学習手段が求めた誤差値Cb に基づいてヨーレイト算出手段14が算出した算出ヨーレイトγb を補正し、補正算出ヨーレイトγb1を求める。
【0015】車両が走行開始してから所定時間経過した後に、走行中、検出ヨーレイト学習手段19は算出ヨーレイト補正手段18が補正した補正算出ヨーレイトγb1に基づいて検出ヨーレイト初期補正手段16が補正した初期補正検出ヨーレイトγa1を学習する。つまり、車両が走行を開始してから所定時間経過すると、エンジンなどが温まってきてヨーレイトセンサ11の周囲の温度が変化(上昇)し、ヨーレイトセンサ11にはこの温度変化(上昇)が影響してくる。そこで、初期補正検出ヨーレイトγa1から補正算出ヨーレイトγb1を減算することで誤差値Cd を求める。そして、検出ヨーレイト補正手段20は、この検出ヨーレイト学習手段19の誤差値Cd に基づいて初期補正検出ヨーレイトγa1を補正し、補正検出ヨーレイトγa2を求める。
【0016】ここで、上述した本実施形態の車両のヨーレイト演算装置の制御の流れをフローチャートを用いて説明する。図2に示すように、ステップS1にて、ヨーレイトセンサ11が検出した車両のヨーレイトγa を読み込むと、ステップS2では、図示しない車速センサが検出した車速Vが0より大きいか、即ち、車両が走行しているかどうかを判定する。このステップS2で、車両が停止していたら、ステップS3に移行し、以下のステップS4,S5,S6にてヨーレイトセンサ11が検出したヨーレイトγa の学習補正を行う。即ち、ステップS4では、エンジンなどが温まっておらずにヨーレイトセンサ11の周囲の温度変化が少ない停止時に、ヨーレイトセンサ11が検出したヨーレイトγa が0となるように学習して誤差値Ca を求め、ステップS5で、この誤差値Ca に基づいて検出ヨーレイトγa を補正し、ステップS6で、初期補正した検出ヨーレイトγa1をメモリする。
【0017】一方、ステップS2で、車速センサが検出した車速Vが0より大きくなって、車両が走行開始したら、ステップS6にてタイマをスタートする。そして、ステップS7にてこのタイマが100秒をカウントしてしていなければ、以下のステップS8,S9,S10にて左右の車輪速度Va ,Vb からヨーレイト算出手段14が算出したヨーレイトγb の学習補正を行う。即ち、ステップS8にて、車輪速センサ12,13が検出した左右の車輪速度Va ,Vb を読み込むと、ステップS9では、この各左右の車輪速度Va ,Vb の差から車両のヨーレイトγbを算出し、ステップS10では、タイヤの摩耗量の影響を有する算出ヨーレイトγb からすでに求めた初期補正検出ヨーレイトγa1を減算することで、この誤差値Cb を求める学習を行う。この算出ヨーレイトγb の学習は100秒間にわたって行われ、例えば、その間の平均を求めてもよい。
【0018】このように100秒間にわたって算出ヨーレイトγb から誤差値Cb が求められ、ステップS7にてタイマが100秒をカウントすると、ステップS11でタイマをリセットする。そして、ステップS12で、この誤差値Cb に基づいて算出ヨーレイトγb を補正し、補正算出ヨーレイトγb1を求める。その後、車両の走行中には、エンジンなどが温まってきてヨーレイトセンサ11の周囲の温度が上昇し、初期補正検出ヨーレイトγa1にはこの影響がある。そこで、ステップS13では、この初期補正検出ヨーレイトγa1から補正算出ヨーレイトγb1を減算することで誤差値Cd を求めて学習する。そして、ステップS14にて、初期補正検出ヨーレイトγa1から誤差値Cd を減算して補正し、補正検出ヨーレイトγa2を求め、出力する。
【0019】このように本実施形態の車両のヨーレイト演算装置にあっては、ヨーレイトセンサ11が検出した検出ヨーレイトγa を、ヨーレイトの真値がゼロである停止時に検出して検出基準点の学習補正し、初期補正検出ヨーレイトγa1を求める一方、左右の車輪速度Va ,Vb の差から算出したヨーレイトγb を、車両が発進してから所定時間内にこの算出ヨーレイトγb から初期補正検出ヨーレイトγa1を減算して学習補正して車輪の摩耗による誤差を除去し、補正算出ヨーレイトγb1を求め、その結果、車両走行中に初期補正検出ヨーレイトγa1と補正算出ヨーレイトγb1を基準として学習補正し、高精度なヨーレイトγa2を求めるようにしている。従って、温度変化による検出誤差や車輪摩耗量による速度に比例した誤差を除去することで、常時、高精度な車両のヨーレイトを求めることができる。
【0020】
【発明の効果】以上、実施形態において詳細に説明したように本発明の車両のヨーレイト演算装置によれば、ヨーレイトセンサと左車輪速センサ及び右車輪速センサが検出した左右の車輪速度差から車両のヨーレイトを算出するヨーレイト算出手段とを設け、車両の停止時に検出ヨーレイトの誤差を学習して補正する一方、車両が走行開始してから所定時間内に補正した検出ヨーレイトに基づいて算出ヨーレイトの車両の速度に比例した誤差を学習し、所定時間経過した後にこの学習値に基づいて算出ヨーレイトを補正し、車両の走行中に補正した算出ヨーレイトに基づいて初期補正した検出ヨーレイトを学習して補正するようにしたので、車両の停止時には検出ヨーレイトの誤差を補正することで温度変化の影響を受けない検出ヨーレイトを求め、車両が走行開始してから所定時間内には初期補正された検出ヨーレイトに基づいて算出ヨーレイトを補正することで速度変化の影響を受けない算出ヨーレイトを求め、車両の走行中に、この補正検出ヨーレイトと補正算出ヨーレイトとからヨーレイトを求めることとなり、温度変化による誤差や車輪摩耗による誤差のない高精度なヨーレイトを演算することができる。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎 (外2名)
【公開番号】 特開平11−23606
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−180970