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【発明の名称】 回転速度検出器を備えた軸受
【発明者】 【氏名】大内 英男

【要約】 【課題】

【解決手段】保持部材204が、第1の円筒部204aと、第1の円筒部204aより大径の第2の円筒部204bと、第2の円筒部204bより大径の第3の円筒部204dとからなり、第1の円筒部204aは内輪組立体102に嵌合取り付けされ、第2の円筒部204bは、シール205のシールリップ205b、205cが摺動する摺動部であるので、シールリップ205b、205cが摺動する第2の円筒部204bの径を小さくでき、それによりシールリップ205b、205cの摺動抵抗を小さくできる。一方、第3の円筒部204dは、外輪101との間で微小スキマΔを保つことによりラビリンスシールを形成してなるので、それによりシールの密封性をより向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軌道を有する固定輪と、軌道を有し、前記固定輪に対して回転自在な回転輪と、両軌道間に配置された複数の転動部材と、前記回転輪に取り付けられたエンコーダと、前記エンコーダに対向して配置され、前記回転輪の回転速度を検出する回転速度検出器と、前記固定輪に対して、前記回転速度検出器を保持する保持部材と、両輪間を密封するシールリップと、前記シールリップを前記回転輪に取り付ける芯金とを有するシールとからなり、前記保持部材は、第1の円筒部と、前記第1の円筒部より大径の第2の円筒部と、前記第2の円筒部より大径の第3の円筒部とからなり、前記第1の円筒部は前記固定輪に嵌合取り付けされ、前記第2の円筒部は、前記シールのシールリップが摺動する摺動部であり、前記第3の円筒部は、前記回転輪及び前記シールの芯金の少なくとも一方との間で微小スキマを保つことによりラビリンスシールを形成してなる回転速度検出器を備えた軸受。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用の軸受に関し、特に回転輪の回転速度を検出できる回転速度検出器を備えた軸受に関する。
【0002】近年、交通の安全を確保すべく、車両において各種の安全装置が実用化されるに至った。その一つに、アンチロックブレーキシステムがある。かかるアンチロックブレーキシステムは、車輪の回転速度を検出して、そのロック状態を検出し、それに応じてブレーキ力を制御するようになっている。
【0003】従って、アンチロックブレーキシステムを備えた車両においては、車輪の回転速度を精度良く検出する必要がある。しかし、車輪の回転速度を直接検出することは一般的に困難であることから、その代わりに車輪を回転自在に支持するハブ・ユニットにおいて、軸受の回転輪の回転速度を検出することが多い。
【0004】図4は、米国特許第4,948,277号に開示されている、従来技術によるハブ・ユニットの部分断面図である。図4において、回転輪となる外輪1に、エンコーダ20aを備えたシール20が取り付けられている。シール20のエンコーダ20aの端面は、周方向にS極とN極とが交互に等ピッチで着磁されている。
【0005】シール20のシールリップ20bは、エンコーダ20aに対向して配置されたセンサEを、固定輪となる内輪2に対して固定するセンサキャリヤ18に摺動接触し、それによりセンサEと、エンコーダ20aと、軸受内部とを外部から密封している。センサキャリヤ18は、内輪2の外周に圧入嵌合されている。
【0006】センサEは、エンコーダ20aが回転移動することに基づく磁界の変化を検出し、対応する周波数を備えた出力信号をハーネス19を介して出力する。かかる周波数は、外輪1の回転速度に比例するため、その周波数が検出出来れば外輪の回転速度も検出できることとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図4に示す従来技術においては、以下に述べるような問題がある。シール20のシールリップ20bは、センサキャリヤ18の比較的大径な内周部に対して摺動しているため、その摺動(摩擦)抵抗は、比較的大きなものとなってしまう。このようなシールリップの摺動抵抗は、わずかであっても車両の燃費に影響を与えるため、省エネルギー上の観点からなるべく低く抑えるべきである。
【0008】一方、シールリップの摺動抵抗を抑えるため、シールリップの緊迫力を弱めると、シールの密封効果が低下してしまう。
【0009】かかる問題点に鑑み、本発明は、シールリップの摺動抵抗を減少させたにもかかわらず、シールの密封性を十分確保できる回転速度検出器を備えた軸受を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成すべく、本発明にかかる回転速度検出器を備えた軸受は、軌道(112a、122a)を有する固定輪(102)と、軌道(101d、101e)を有し、前記固定輪に対して回転自在な回転輪(101)と、両軌道間に配置された複数の転動部材(103)と、前記回転輪(101)に取り付けられたエンコーダ(202)と、前記エンコーダ(202)に対向して配置され、前記回転輪(101)の回転速度を検出する回転速度検出器(203)と、前記固定輪(102)に対して、前記回転速度検出器(203)を保持する保持部材(204)と、両輪(101,102)間を密封するシールリップ(205b、205c)と、前記シールリップ(205b、205c)を前記回転輪(101)に取り付ける芯金(205a)とを有するシール(205)とからなり、前記保持部材(204)は、第1の円筒部(204a)と、前記第1の円筒部(204a)より大径の第2の円筒部(204b)と、前記第2の円筒部(204b)より大径の第3の円筒部(204d)とからなり、前記第1の円筒部(204a)は前記固定輪(102)に嵌合取り付けされ、前記第2の円筒部(204b)は、前記シール(205)のシールリップ(205b、205c)が摺動する摺動部であり、前記第3の円筒部(204d)は、前記回転輪(101)及び前記シール(205)の芯金(205a)の少なくとも一方との間で微小スキマを保つことによりラビリンスシールを形成してなる。
【0011】
【作用】本発明の回転速度検出器を備えた軸受によれば、前記保持部材(204)が、第1の円筒部(204a)と、前記第1の円筒部(204a)より大径の第2の円筒部(204b)と、前記第2の円筒部(204b)より大径の第3の円筒部(204d)とからなり、前記第1の円筒部(204a)は前記固定輪(102)に嵌合取り付けされ、前記第2の円筒部(204b)は、前記シール(205)のシールリップ(205b、205c)が摺動する摺動部であるので、前記シールリップ(205b、205c)が摺動する第2の円筒部(204b)の径を小さくでき、それにより前記シールリップ(205b、205c)の摺動抵抗を小さくできる。一方、前記第3の円筒部(204d)は、前記回転輪(101)及び前記シール(205)の芯金(205a)の少なくとも一方との間で微小スキマを保つことによりラビリンスシールを形成してなるので、それによりシール(205)の密封性をより向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明による実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の態様にかかるハブ・ユニットの背面図であり、図2は、図1のハブ・ユニットをII−II線で切断して矢印方向に見た図である。
【0013】図2において、本実施の形態にかかるハブ・ユニットは、外輪101と、内輪組立体102と、前記外輪101と前記内輪組立体102との間に配置された二列のボール103と、前記外輪101と前記内輪組立体102の右端に配置されたセンサ・シールユニット200とからなる。
【0014】回転輪となる外輪101は、円筒状の本体101aと、本体101aから半径方向外方に延在する円板状のフランジ部101bとからなる。フランジ部101bは、等間隔に4つのボルト孔101cを有する。かかるボルト孔101cを貫通するボルト(不図示)により、ハブ・ユニットは車輪(不図示)と結合されるようになっている。
【0015】固定輪となる内輪組立体102は、同一形状の円筒状の内輪部材112,122を向かい合わせに当接してなり、その軌道輪112a、122aと、それぞれ対向する外輪101の軌道輪101d、101eとの間に、転動体であるボール103を挟持している。かかる外輪101と、内輪組立体102と、ボール103とでいわゆるアンギュラコンタクトタイプの軸受を構成している。ボール103は、保持器104により適所に保持されている。
【0016】内輪部材122の右端には、クリープ防止ピン105が植設され、軸線方向に延在している。クリープ防止ピン105は、内輪組立体102内に挿入される不図示のスピンドルの肩部に係合し、内輪組立体102とスピンドルとの間における相対回転を防止するようになっている。
【0017】図3は、図2のIII部を拡大して示す図である。センサ・シールユニット200は、ホルダ201と、ホルダ201に取り付けられた多極磁石エンコーダ202と、多極磁石エンコーダ202に対向する回転速度検出器であるセンサ203と、センサ203を保持する保持部材204と、保持部材204に対して当接するシール205とからなる。
【0018】断面L字状のホルダ201は、外輪101の内周に圧入固定され、保持器104と干渉しない位置に取付けられている。ホルダ201のフランジ部201aには、環状の多極磁石エンコーダ202が取り付けられている。エンコーダ202の側面は、N極とS極とが周方向に交互に等ピッチで多極的に着磁されている。エンコーダ202は、外輪101の端面と面一になるまで仮圧入した時点で着磁され、着磁後、圧入治具(不図示)にて正規の軸線方向位置まで圧入される。
【0019】保持部材204は、第1の円筒部204aと、第1の円筒部204aを内包する第2の円筒部204bの左端を、小フランジ204cにより半径方向に連結し、更に第2の円筒部204bと、第2の円筒部204bを内包する第3の円筒部204dの右端を、大フランジ204eにより連結した構成となっている。
【0020】第1の円筒部204aは、内輪102の端部外周に嵌合取り付けされている。小フランジ204cには開口(不図示)が形成されており、かかる開口にセンサ203が取り付けられ、その先端を多極磁石エンコーダ202に対向させている。センサ203は、MR素子あるいはホール素子と波形整形回路が組み込まれた検出器が樹脂モールドされ、ホルダを一体的に形成されてなる。
【0021】センサ203の後端は、ハーネス206に接続されている。図1に示すように、ハーネス206は、たるまないように保持部材204の円筒部に沿って取り回され、第3の円筒部204dの外周に配置されたコネクタ207に接続されている。
【0022】図3に戻り、コネクタ207は、断面が矩形状となっており、その左側面から「し」字形状のアーム部207aが下方に延在している。アーム部207aの先端は、第3の円筒部204dに形成された孔204に嵌合し、それによりコネクタ207は保持部材204外周に取り付けられている。コネクタ207は、ハーネス206がたるまない位置に固定されており、軸受を車両組立ラインへ搬送する際や車両に組み付ける際に、他部品に引っかけたりすることに起因するハーネス206の切断等が生じないようにしている。一旦、軸受が車両に組み込まれれば、コネクタ207は保持部材204から外され、不図示の制御装置から配線されたハーネス先端のコネクタ(不図示)と結合される。なお、コネクタ同士の結合にも、コネクタの不用意な係脱を防止するための係合装置は必要である。かかる場合、保持部材204との係合に用いる係合装置(アーム部207a)を、コネクタ同士の結合に共通に使用できる構成とすればよい。それにより単純な構造で安価なコネクタを供することができる。
【0023】シール205は、断面L字状であり、かつ外輪101の端部に取り付けられた芯金205aと、芯金205aから保持部材204に向かって延在する3つのリップ205b、205c、205dとからなる。リップ205b、205cは、保持部材204の第2の円筒部204bの外周に当接し、リップ205dは、大フランジ204eの内側面に当接している。
【0024】保持部材204の第3の円筒部204dは、外輪101の外周との間にわずかなスキマΔを形成するような内径寸法を有する。
【0025】本実施の形態にかかるハブ・ユニットが車輪に取り付けられ、車輪が回転したときには、多極磁石エンコーダ202の端面が、センサ203の前面を横切るので、センサ203は外輪101の回転に応じた周波数を含む出力信号を出力する。
【0026】かかる出力信号は、ハーネス206を介してコネクタ207に送られ、更にコネクタ207から不図示の制御装置に送られ、かかる出力信号に基づき回転速度が検出されるようになっている。
【0027】本実施の形態によれば、シール205のリップ205b、205cが当接する保持部材204の第2の円筒部204bは比較的小径となっており、それによりリップ205b、205cの摺動抵抗を小さくすることができる。リップ205b、205cの摺動抵抗を小さくできれば、ハブ・ユニットに生じる回転トルク損失をより低く抑えることができる。
【0028】一方、本実施の形態によれば、外輪101の外周と、保持部材204の第3の円筒部204dとの間のスキマΔを微小としており、それによりラビリンスシールを形成して、外部の塵埃や水等が軸受内部に侵入することを防止できる。
【0029】以上、本発明を実施の態様を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の態様に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、保持部材の第3の円筒部がラビリンスシールを形成する相手は、外輪でなくシールの芯金であっても良い。また、保持部材はプレス成形により形成されても、溶接により形成されても良い。
【0030】
【発明の効果】本発明の回転速度検出器を備えた軸受によれば、保持部材が、第1の円筒部と、前記第1の円筒部より大径の第2の円筒部と、前記第2の円筒部より大径の第3の円筒部とからなり、前記第1の円筒部は軸受の固定輪に嵌合取り付けされ、前記第2の円筒部は、シールのシールリップが摺動する摺動部であるので、前記シールリップが摺動する第2の円筒部の径を小さくでき、それにより前記シールリップの摺動抵抗を小さくできる。一方、前記第3の円筒部は、軸受の回転輪及び前記シールの芯金の少なくとも一方との間で微小スキマを保つことによりラビリンスシールを形成してなるので、それによりシールの密封性をより向上させることができる。またかかる構成による本願発明を適用することにより、よりコンパクトな構成のハブ・ユニットが供されることとなる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−23598
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−186016