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【発明の名称】 走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー及びその製造方法
【発明者】 【氏名】高山 美知雄

【要約】 【課題】レバーの共振周波数を高めるためにレバー長を短くした場合においても、カンチレバー変位検出用のレーザ光が支持部でけられにくい構造の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供する。

【解決手段】支持部1より伸びたカンチレバー部2の自由端近傍に探針部3を備えたAFMカンチレバーにおいて、支持部1のカンチレバー部2の主面と平行な上面及び底面を{100}結晶面で構成し、カンチレバー部2の主面と平行でない支持部側面を{311}結晶面で構成する。これにより支持部1の底面と側面とのなす角度は約25度となり、レバー長を短くしても支持部1でレーザ光がけられる可能性を低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持部より伸びたカンチレバー部の自由端近傍に探針部を備えた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、前記支持部は単結晶シリコンで形成され、前記カンチレバー部の主面と平行でない前記支持部側面の少なくとも一部が{311}結晶面で構成されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項2】 支持部より伸びたカンチレバー部の自由端近傍に探針部を備えた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、前記支持部は単結晶シリコンで形成され、前記カンチレバー部の主面と平行な前記支持部上面及び底面は、該上面及び底面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度傾斜して切り出された結晶面で構成され、且つ前記カンチレバー部は前記〈110〉方向のうち、前記支持部底面と支持部側面のなす角度が小さくなる方向に伸びていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項3】 支持部より伸びたカンチレバー部の自由端近傍に探針部を備えた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、前記支持部は単結晶シリコンで形成され、前記カンチレバー部の主面と平行でない前記支持部側面の一部が、該支持部底面に対して約90度に構成されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項4】 前記請求項1に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法において、面方位{100}の単結晶シリコン基板に支持部を形成するための所定のエッチングマスクを形成し、アルカリ水溶液により第1の異方性湿式エッチングをした後、前記エッチングマスクを剥離して更にアルカリ水溶液により第2の異方性湿式エッチングを行うことにより支持部を形成する工程を備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法。
【請求項5】 前記請求項2に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法において、基板表面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度傾斜して切り出された結晶面で構成された第1の単結晶シリコン基板を酸化シリコン膜層を介して第2の単結晶シリコン基板と貼り合わせて作成したSOI基板を用い、前記第1の単結晶シリコン基板で前記支持部を形成する工程を備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、原子間力顕微鏡(AFM: Atomic Force Microscope)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM: Scanning Probe Microscope)に用いるカンチレバー及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、導電性試料を原子サイズオーダーの分解能で観察できる装置として走査トンネル顕微鏡(STM: Scanning Tunneling Microscope)が Binningと Rohrer らにより発明されてから、原子オーダーの表面凹凸を観察できる顕微鏡として各方面での利用が進んでいる。しかしSTMでは、観察できる試料は導電性のものに限られている。
【0003】そこで、STMにおけるサーボ技術を始めとする要素技術を利用しながら、STMでは測定し難かった絶縁性の試料を原子サイズオーダーの精度で観察することのできる顕微鏡として、原子間力顕微鏡(AFM)が提案された。このAFMは、例えば特開昭62−130302号公報(IBM、G.ビニッヒ、サンプル表面の像を形成する方法及び装置)に開示されている。
【0004】AFMの構造はSTMに類似しており、走査型プローブ顕微鏡の一つとして位置づけられている。走査型プローブ顕微鏡としては、この他に磁気力顕微鏡(MFM)、走査型近接場光顕微鏡などが挙げられる。AFMでは、自由端に鋭い突起部分(探針部)を持つ片持ち梁(カンチレバー)を、試料に対向して近接させ、探針部の先端の原子と試料原子との間に働く相互作用力により変位する片持ち梁の動きを、電気的あるいは光学的にとらえて測定しつつ、試料をXY方向に走査し、片持ち梁の探針部との位置関係を相対的に変化させることによって、試料の凹凸情報などを原子サイズオーダーで三次元的にとらえることができるようになっている。
【0005】このような構成のAFM等の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーチップとしては、T.R.Albrechtらが半導体IC製造プロセスを応用して作製することのできる酸化シリコン膜製のカンチレバーを提案して以来(Thomas R. Albrecht andCalvin F. Quate : Atomic resolution imaging of a nonconductor AtomforceMicroscopy J. Appl. Phy. 62(1987)2599)、ミクロンオーダーの高精度で優れた再現性をもって作製することが可能になっている。また、このようなカンチレバーチップは、バッチプロセスによって作製することができ、低コスト化が実現されている。したがって、現在では、半導体IC製造プロセスを応用して作製されるカンチレバーチップが主流となっている。
【0006】AFMの測定方式としては、試料と探針部を1nm程度に近接させて測定する接触方式、5〜10nm離して測定する非接触方式、試料表面を探針部で軽くたたきながら移動させて測定するタッピング方式等がある。これらの測定方式のうち、非接触方式及びタッピング方式では、硬いカンチレバーを用いる必要がある。硬いカンチレバーを作製するためには、レバー膜を厚くする必要があり、このようなAFMカンチレバーとして、探針部、レバー部、支持部をシリコンで一体に形成するものが広く知られている(例えば、O. Wolter, Th. Bayer, and J. Greschner : Micromachined silicon sensors for scanning force microscopy J. Vac.Sci. Technol. B9(2), May/April 1991参照)。
【0007】また、最近では測定時間を短縮するため、カンチレバーを速くXY方向に走査させる検討がなされている。このような目的に用いるAFMカンチレバーとしては、レバーの共振周波数を、通常の非接触測定用AFMカンチレバーのkHzオーダーからMHzオーダーに高めたものが必要となる。レバーの共振周波数は、前述のG.ビニッヒの特許公開公報にも記載されているように、レバー厚をt,レバー長をLとした時、t/L2 に比例する。したがって、レバー厚tを厚くするかレバー長Lを短くすれば、レバーの共振周波数を高くすることが可能となるが、作製便宜上レバー厚はせいぜい数倍程度しか厚くできないため、レバー長を短くして対処せざるを得ない。
【0008】次に、図8を参照しながら、従来より実施されている半導体IC製造プロセスを応用してシリコン製AFMカンチレバーを作製する方法について説明する。まずスタート基板として、表面が{100}結晶面である2枚のシリコン基板を酸化シリコン膜層を介して貼り合わせて接合したSOI基板101 を用い、図8の(A)に示すように、一方のシリコン基板に探針部となる突起102 を形成する。次に、図8の(B)に示すように、前記突起102 がパターン先端に配置されるようにカンチレバーパターン103aを形成する。次に、図8の(C)に示すように、前記突起102 及びカンチレバーパターン103aを酸化シリコン膜104 等で保護し、下地シリコン基板に支持部を形成するための所定のエッチングマスク105 を形成した後、下地シリコン基板をKOH水溶液等のアルカリ水溶液を用いて異方性湿式エッチングすることにより、支持部106 を形成する。最後に前記エッチング保護膜104 及びSOI基板の中間の酸化シリコン膜を剥離することにより、図8の(D)に示すように、先端に探針部となる突起102 を備えたカンチレバー部103 と支持部106 とからなるシリコン製AFMカンチレバー107 が完成する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記AFMカンチレバーの作製方法において述べたように、通常カンチレバー支持部は、異方性湿式エッチングにより形成されるが、通常用いられる表面が{100}結晶面のシリコン基板を用いた場合、支持部の側面は{111}面となるため、カンチレバー面と支持部側面のなす角度は約55度となる。
【0010】ところで、測定時カンチレバーの変位は、通常カンチレバーの自由端近傍にレーザ光をあて、カンチレバーにより反射されるレーザ光を検出することにより求められる。光てこ方式と呼ばれる検出方式においては、このレーザ光はカンチレバー面に傾けて照射される。
【0011】前述したように高速走査用AFMカンチレバーにおいては、レバーの共振周波数を高めるためレバー長を短くせねばならないが、図9の(A)に示すようにレバー長が長い場合には問題はないけれども、図9の(B)に示すようにレバー長が短くなると、検出用レーザ光が支持部でけられてしまうおそれが生ずる。
【0012】一方また、カンチレバーの支持部上面はカンチレバーをしっかり固定するために、一定の幅を持たねばならないが、前述したように支持部側面は支持部底面と約55度をなすため、結果的にカンチレバーチップ幅は、支持部上面の幅に、(2×支持部厚/ tan55°)を加えたものとなる。所定の支持部上面幅を持っていれば、カンチレバーチップ幅は小さければ小さいほど基板1枚あたりのカンチレバーチップ収量が増えるため、安価にAFMカンチレバーを提供することが可能となる。図10の(A),(B)に示すように、支持部上面幅aを一定にして、支持部の厚みcを減らせばカンチレバーチップ幅dを低減でき、結果的に図10の(B)に示すようにカンチレバーチップ収量を増やすことができるが、薄い基板を用いて製造せねばならないため、製造工程途中でカンチレバーチップが破損してしまうおそれが生ずる。なお、図10の(A),(B)において、bはチップ間隔(一定)である。
【0013】本発明は、従来のAFMカンチレバーなどの走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおける上記問題点を解消するためになされたもので、請求項1及び2に係る発明は、レバー長の短いカンチレバーにおいてもカンチレバー変位検出用のレーザ光が支持部でけられにくい構成の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することを目的とする。請求項3に係る発明は、支持部厚みを薄くすることなく、シリコン基板1枚あたりのカンチレバーチップ収量が多くコスト低減の可能な走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することを目的とする。請求項4に係る発明は、請求項1に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを容易に製造することの可能な製造方法を提供することを目的とする。請求項5に係る発明は、請求項2に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを容易に製造することの可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため、請求項1に係る発明は、支持部より伸びたカンチレバー部の自由端近傍に探針部を備えた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、前記支持部は単結晶シリコンで形成され、前記カンチレバー部の主面と平行でない前記支持部側面の少なくとも一部が{311}結晶面で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】通常のアルカリ水溶液による異方性湿式エッチングを用いて作製する支持部のカンチレバー面と平行でない面は、{111}面で形成されるため、支持部底面と支持部側面とのなす角度は約55度であるが、支持部側面の少なくとも一部を{311}面で形成することにより、支持部底面との角度を約25度とすることができるため、レバー長を短くしても支持部でレーザ光がけられる可能性を低くすることができる。
【0016】請求項2に係る発明は、支持部より伸びたカンチレバー部の自由端近傍に探針部を備えた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、前記支持部は単結晶シリコンで形成され、前記カンチレバー部の主面と平行な前記支持部上面及び底面は、該上面及び底面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度傾斜して切り出された結晶面で構成され、且つ前記カンチレバー部は前記〈110〉方向のうち、前記支持部底面と支持部側面のなす角度が小さくなる方向に伸びていることを特徴とするものである。
【0017】表面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度傾斜して切り出した結晶面を持つ基板を用いて、アルカリ水溶液による異方性湿式エッチングをおこなった場合、そのエッチング側面は{111}面で形成されるため、基板表面と〈110〉方向のエッチング側面との角度は、通常の表面が{100}面の場合の約55度から、基板表面が{100}面から傾斜している角度分ずれたものとなる。したがって、支持部の上面及び底面がそのような基板表面になるようにすれば、{100}面から〈110〉方向に傾斜して切り出す際の角度をθとした場合、〈110〉方向の支持部側面のうち片方の支持部側面と支持部底面とのなす角度は、約55°+θ°であり、もう一方の支持部側面と支持部底面との角度は約55°−θ°となる。そこでカンチレバー部が伸びる方向を、支持部側面と底面との角度が約55°−θ°になる側面側にすることにより、請求項1に係る発明と同様に、レバー長を短くしても支持部でレーザ光がけられる可能性を低くすることが可能となる。
【0018】請求項3に係る発明は、支持部より伸びたカンチレバー部の自由端近傍に探針部を備えた走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、前記支持部は単結晶シリコンで形成され、前記カンチレバー部の主面と平行でない前記支持部側面の一部が、該支持部底面に対して約90度に構成されていることを特徴とするものである。
【0019】このように構成することにより、通常の約55度で支持部側面が構成されるものに比べ、支持部上面の幅を同一に保ちながらカンチレバーチップの横幅を細くすることが可能となる。したがって、薄い基板を用いる必要なく基板1枚あたりのカンチレバーチップ収量を多くすることが可能となるため、製造工程途中で破損するおそれもなく、安価な走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することが可能となる。
【0020】請求項4に係る発明は、前記請求項1に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法において、面方位{100}の単結晶シリコン基板に支持部を形成するための所定のエッチングマスクを形成し、アルカリ水溶液により第1の異方性湿式エッチングをした後、前記エッチングマスクを剥離して更にアルカリ水溶液により第2の異方性湿式エッチングを行うことにより支持部を形成する工程を備えていることを特徴とするものである。
【0021】このような手法を用いることにより、第2の異方性湿式エッチングによって、第1の異方性湿式エッチングにて形成された支持部側面と支持部表面との角部からエッチングが進行し、{311}面が形成されるため、容易に請求項1に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを製造することが可能となる。
【0022】請求項5に係る発明は、前記請求項2に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの製造方法において、基板表面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度傾斜して切り出された結晶面で構成された第1の単結晶シリコン基板を酸化シリコン膜層を介して第2の単結晶シリコン基板と貼り合わせて作成したSOI基板を用い、前記第1の単結晶シリコン基板で前記支持部を形成する工程を備えていることを特徴とするものである。
【0023】このような基板を用いることにより、支持部を形成するための異方性湿式エッチング工程でカンチレバー部をそこなうことなく容易に請求項2に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを製造することが可能となる。
【0024】なお、本明細書では{100}面、{311}面、〈110〉方向というような表記を用いているが、例えば支持部の一側面が{311}面であった場合、他の三方の支持部側面はそれぞれ{131}面、{31}面、{31}面と表記すべきであるが、これらは全て等価(相対的なもの)であるため、簡便に{311}面で代表して示している。同様に各結晶面、結晶軸と等価なものは、その一表記で代表して示すこととする。
【0025】
【発明の実施の形態】次に、実施の形態について説明する。図1の(A)〜(C)は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーの第1の実施の形態のAFMカンチレバーの上面、横側面及び後方側面を示す概略図である。図において、1は支持部、2は該支持部1より伸びたカンチレバー部、3はカンチレバー部2の自由端近傍に設けられた探針部で、これらの支持部1,カンチレバー部2及び探針部3は全て単結晶シリコンにて形成されている。但し、カンチレバー部2及び探針部3は必ずしも単結晶シリコンで形成する必要はない。そして、支持部1のカンチレバー部2の主面、すなわち探針部3が形成されている面と平行をなす支持部上面及び底面は{100}結晶面であり、カンチレバー部主面とは平行でない他の側面すなわち支持部側面は、{311}結晶面で構成されている。したがって、カンチレバー部主面は{100}結晶面で構成されているため、支持部1の側面とカンチレバー部2の主面とのなす角度は約25度となる。
【0026】次に、本実施の形態に係るAFMカンチレバーの製造方法を、図2の(A)〜(F)に示す製造工程図に基づいて説明する。スタート基板として、表面が{100}結晶面である2枚のシリコン基板を酸化シリコン膜を介して貼り合わせたSOI(Silicon on Insulator)基板11を用いる。まず図2の(A)に示すように、SOI基板11の裏面に支持部を形成するための所定のエッチングマスク12を形成する。このマスク12の材質としては酸化シリコン,窒化シリコン等が用いられ、マスクパターンの四角には、異方性湿式エッチングでの横方向へのエッチング進行による支持部形状劣化を押さえるため、いわゆる補償パターンを付加しておくことが望ましい。
【0027】次に図2の(B)に示すように、探針部13となる突起を前記支持部形成用エッチングマスク12を形成した面と逆の面に形成する。なお、図では錐体状の探針部を示したが、探針部の形状には特に規定はなく、また特に大きな突起を設けずレバーの先端を探針部として用いるようにしても構わない。更にカンチレバー作製途中で探針部を形成せず、カンチレバー完成後に何らかの方法で探針部となる部材をレバー先端に接着するようにしても構わない。次に図2の(C)に示すように、カンチレバーパターン14を前記探針部13がその先端に配置されるように形成する。なお、上記図2の(A)〜(C)に示した各工程は順序を入れ換えても構わない。
【0028】次に図2の(D)に示すように、カンチレバーパターン14及び探針部13を酸化シリコン膜等の保護膜15で保護した後、前述したエッチングマスク12をマスクとして、基板をKOHあるいはTMAH等のアルカリ水溶液にて第1の異方性湿式エッチングを施し、保護膜15を除去することにより、図2の(E)に示すように、仮支持部16を備えた通常のカンチレバー形態を形成する。この状態においては、仮支持部16の側面は{111}結晶面で構成されるため、仮支持部底面と仮支持部側面とは約55度の角度を形成することになる。
【0029】次に、エッチングマスク12を剥離し、KOH等のアルカリ水溶液にて第2の異方性湿式エッチングを施すと、仮支持部16が上面からエッチングされると共に、上面と側面の角部からもエッチングが進行し、新たに{311}結晶面が表出してくる。エッチングを更に続け、支持部側面を{311}結晶面が覆いつくしたところで第2の異方性湿式エッチングを停止することにより、図2の(F)に示すように、支持部底面と支持部側面とが約25度をなす支持部17が形成され、該支持部17とカンチレバー部18と探針部13とからなる上記第1の実施の形態のAFMカンチレバーが完成する。
【0030】なお、上記第1の実施の形態においては、支持部側面が全て{311}結晶面が覆いつくされるまで第2の異方性湿式エッチングを行い、支持部低面と側面とが約25度の角度をなす支持部を形成したものを示したが、第2の異方性湿式エッチングを途中で停止させることにより、図3の(A)〜(C)の上面図、横側面図及び後方側面図に示すように、支持部側面を{311}結晶面と{111}結晶面とで形成し、支持部低面と約55度をなす側面と、約25度をなす側面をもつ支持部1′を構成するようにしてもよい。
【0031】次に、第2の実施の形態について説明する。図4の(A)〜(C)は、第2の実施の形態に係るAFMカンチレバーの上面、横側面、後方側面を示す概略図である。図において、21は支持部、22は該支持部21より伸びたカンチレバー部、23はカンチレバー部22の自由端近傍に設けられた探針部で、これらの支持部21,カンチレバー部22及び探針部23は全て単結晶シリコンにて形成されている。但し、第1の実施の形態と同様に、カンチレバー部22及び探針部23は必ずしも単結晶シリコンで形成する必要はない。そして、支持部21のカンチレバー部22の主面と平行をなす上面及び底面は、その面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度θ°傾斜して切り出された結晶面で構成されている。一方、支持部21の側面は全て{111}結晶面で構成されている。
【0032】また、カンチレバー部22は、〈110〉方向のうち、支持部側面と支持部底面とのなす角度が約55°−θ°となる側面のある方向に伸びている。ちなみにカンチレバー部22が伸びている側と反対側の支持部側面と支持部底面とのなす角度は、約55°+θ°である。
【0033】次に、本実施の形態に係るAFMカンチレバーの製造方法を、図5の(A)〜(E)に示す製造工程図に基づいて説明する。スタート基板として、第1の実施の形態と同様に貼り合わせSOI(Silicon on Insulator)基板を用いるが、本実施の形態では基板表面の垂線が{100}面から〈110〉方向に任意の角度θ°傾斜して切り出された結晶面で構成された単結晶シリコン基板32(第1の単結晶シリコン基板)を、酸化シリコン膜層33を介して他の単結晶シリコン基板34(第2の単結晶シリコン基板)と貼り合わせて作製したSOI基板31を、AFMカンチレバー製造用スタート基板として使用する。
【0034】まず、図5の(A)に示すように、第1の単結晶シリコン基板32側の面に支持部を形成するための所定のエッチングマスク35を形成する。このマスク35の材質としては、酸化シリコン,窒化シリコン等が用いられ、マスクパターンの四角には、異方性湿式エッチングでの横方向へのエッチング進行による支持部形状劣化を押さえるため、いわゆる補償パターンを付加しておくことが望ましい。
【0035】次に図5の(B)に示すように、探針部36となる突起を前記支持部形成用エッチングマスク35を形成した面と逆の面、すなわち第2の単結晶シリコン基板34側に形成する。なお図では錐体状の探針部を示したが、探針部の形状には特に規定はなく、また特に大きな突起を設けずにレバーの先端を探針部として用いるようにしても構わない。更に、カンチレバー作製途中で探針部を形成せず、カンチレバー完成後に何らかの方法で探針部となる部材をレバー先端に接着するようにしても構わない。次に図5の(C)に示すように、カンチレバーパターン37を前記探針部36がその先端に配置されるように形成する。なお、上記図5の(A)〜(C)に示した各工程は順序を入れ換えても構わない。
【0036】次に図5の(D)に示すように、カンチレバーパターン37及び探針部36を酸化シリコン膜等の保護膜38で保護した後、前述したエッチングマスク35をマスクとして、第1の単結晶シリコン基板32にKOHあるいはTMAH等のアルカリ水溶液にて異方性湿式エッチングを施し、最後にエッチングマスク35やエッチング保護膜38を剥離することにより、図5の(E)に示すように、底面となす角度が55°−θ°及び55°+θ°となる側面を有する支持部39と、カンチレバー部40と探針部36とからなる上記第2の実施の形態に係るAFMカンチレバーが完成する。
【0037】次に、第3の実施の形態について説明する。図6の(A)〜(C)は、第3の実施の形態に係るAFMカンチレバーの上面、横側面、及び後方側面を示す概略図である。図において、41は支持部、42は該支持部41より伸びたカンチレバー部、43はカンチレバー部42の自由端近傍に設けられた探針部で、これらの支持部41,カンチレバー部42,探針部43は全て単結晶シリコンにて形成されている。但し第1の実施の形態と同様に、カンチレバー部42及び探針部43は必ずしも単結晶シリコンで形成する必要はない。そして、支持部41のカンチレバー部42の主面と平行をなす支持部上面及び底面は{100}結晶面であり、支持部41のカンチレバー部42の伸びる側の側面は{111}結晶面で構成されている。一方、支持部41の他の三方の側面は全て、{111}結晶面と、支持部底面と約90度をなす面とで構成されている。このため、従来例に比べ、支持部41をカンチレバー部42に対して探針部43とは反対側の端部に寄せて形成することができるので、ウェハー1枚あたりのカンチレバー収量を多くすることが可能となる。一方、カンチレバー部の伸びる側の側面は従来同様{111}結晶面で構成されているため、変位検出用レーザ光が従来例に比べ、支持部でけられやすくなるようなことはない。
【0038】次に、本実施の形態に係るAFMカンチレバーの製造方法を、図7の(A)〜(H)に示す製造工程図に基づいて説明する。スタート基板として、第1の実施の形態と同様に、表面が{100}面もしくはその等価な結晶面である2枚のシリコン基板52,53を、酸化シリコン膜層54を介して貼り合わせたSOI(Silicon on Insulator)基板51を用いる。まず図7の(A)に示すように、基板51の裏面に支持部を形成するための所定のエッチングマスク55を形成する。このマスク55の材質としては酸化シリコン、窒化シリコン等が用いられ、マスクパターンの四角には、異方性湿式エッチングでの横方向へのエッチング進行による支持部形状劣化を押さえるため、いわゆる補償パターンを付加しておくことが望ましい。
【0039】次に図7の(B)に示すように、探針部56となる突起を前記支持部形成用エッチングマスク55を形成した面と逆の面に形成する。なお、図では錐体状の探針部を示したが、探針部の形状に特に規定はなく、また特に大きな突起を設けずレバーの先端を探針部として用いるようにしても構わない。更に、カンチレバー作製途中で探針部を形成せず、カンチレバー完成後に何らかの方法で探針部となる部材をレバー先端に接着するようにしても構わない。次に図7の(C)に示すように、カンチレバーパターン57を前記探針部56がその先端に配置されるように形成する。なお、上記図7の(A)〜(C)に示した各工程は順序を入れ換えても構わない。
【0040】次に図7の(D)に示すように、カンチレバーパターン57及び探針部56を酸化シリコン膜等の保護膜58で保護する。次に図7の(E)に示すように、カンチレバーパターン周辺の中間酸化膜54のみ剥離した後、図7の(F)に示すように、RIE(Riactive ion etching)等の反応性ガスを用いたドライエッチングにて下地シリコン基板52を掘り込み、カンチレバーパターン周辺に溝59を形成する。このとき掘り込む溝59の深さは、数十μmから 300μm程度である。掘り込む溝59の深さが深ければ深いほど、隣接するカンチレバーチップ間隔を狭められるため、ウェハー内のカンチレバーチップ収量を上げることができる。
【0041】次に図7の(E)に示すように、RIEにてエッチングした溝59の表面に酸化シリコン膜等の保護膜60を形成した後、前述のエッチングマスク55をマスクとして、下地シリコン基板52をKOHあるいはTMAH等のアルカリ水溶液にて異方性湿式エッチングを施す。最後に、エッチングマスク55やエッチング保護膜58,60等を剥離することにより、図7の(H)に示すように、カンチレバー部の伸びる側の側面は{111}結晶面で構成され、他の三方の側面は全て{111}結晶面と、底面と約90度をなす面とで構成されている支持部61と、カンチレバー部62と、探針部56とからなる上記第3の実施の形態のAFMカンチレバーが完成する。
【0042】なお、本実施の形態では、支持部41のカンチレバー部42の伸びる側の側面は{111}結晶面のみで構成されるような構造としたが、変位検出用レーザ光が支持部でけられるおそれのないものであれば、この側面にもカンチレバー部42の主面と90度をなす面を一部に設けて支持部を形成しても、勿論構わない。
【0043】以上、各実施の形態においては、本発明をAFMカンチレバーに適用したものについて説明を行ったが、本発明は走査型トンネル顕微鏡(STM)、磁気力顕微鏡(MFM)、走査型近接場光顕微鏡などの他の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーに適用することもできる。
【0044】
【発明の効果】以上実施の形態に基づいて説明したように、請求項1及び2に係る発明によれば、支持部側面と支持部底面との角度を通常の約55度よりも小さく作製することが容易にできるので、レバー長の短いカンチレバーにおいてもカンチレバー変位検出用のレーザ光が支持部でけられにくい構成の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することができる。また請求項3に係る発明によれば、カンチレバー部の伸びる方向以外の支持部側面の一部に支持部底面と90度をなす面を形成しているため、薄い基板を用いる必要なくウェハー1枚あたりのカンチレバーチップ収量を多くすることが可能となるため、製造工程途中で破損するおそれもなく、コストの低減可能な走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを提供することができる。また請求項4及び5に係る発明によれば、レバー長の短いカンチレバーにおいてもカンチレバー変位検出用のレーザ光が支持部でけられにくい構成の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーを容易に作製することができる製造方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス光学工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】最上 健治
【公開番号】 特開平11−271347
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−92209