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【発明の名称】 自立膜測定装置及び測定方法、並びに走査型プローブ顕微鏡
【発明者】 【氏名】杉崎 克己

【要約】 【課題】このように、既存の検査方法では、空間分解能が十分ではなく、より分解能が高く、自立薄膜に適用するのに適した検査方法が望まれている。

【解決手段】上述の課題を解決するために、本発明では、先端に鋭い探針(1a)を持つカンチレバー(1)と、カンチレバーの先端の変位を検出する変位検出手段(2,3)と、少なくとも一部が自立膜を有した試料(11)と探針との相対的な関係を変化させる可変手段(6,7)と、被検査物及び探針間の相対関係の変化と共に変化する変位検出手段からの信号に基づき、試料の機械的特性を取得する検出部(8,9)とを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端に鋭い探針を持つカンチレバーと、前記カンチレバーの先端の変位を検出する変位検出手段と、少なくとも一部が自立膜を有した試料と前記探針との相対的な関係を変化させる可変手段と、前記被検査物及び前記探針間の相対関係の変化と共に変化する前記変位検出手段からの信号に基づき、前記試料の機械的特性を取得する検出部とを備えたことを特徴とする自立膜測定装置。
【請求項2】 前記可変手段は、前記試料の表面に対して垂直な方向に、前記試料と前記探針とを相対的に移動させる第1の移動手段と、前記試料の表面に対して平行な方向に、前記試料と前記探針とを相対的に移動させる第2の移動手段と少なくとも備えたことを特徴とする自立膜測定装置。
【請求項3】 前記カンチレバーのバネ定数が、前記試料の弾性率の百倍以下になるようにカンチレバーの硬さを選択したことを特徴とする請求項1又は2記載の自立膜測定装置。
【請求項4】 前記検出部は、前記カンチレバーと前記被検査物との距離に対するカンチレバーの先端の変位変化を検出し、その検出された前記変位変化と前記距離との相関関係から、前記被検査物の弾性に関する機械的特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の自立膜測定装置。
【請求項5】 前記検出部は、更に、前記変位変化と前記距離の相関関係が、所望の相関関係と同じとなるか否かを検出することを特徴とする請求項4記載自立膜測定装置。
【請求項6】 前記可変手段は、更に、振動周期を変化させながら、前記カンチレバーを励振する励振機構を備え、前記検出部は、前記被検査物に前記探針が近接された状態における前記カンチレバーの先端の変位変化の振幅を検出し、前記検出されたカンチレバーの先端における変位変化の振幅のうち最大の振幅が得られたときの振動周期を得るを特徴とする請求項2又は3に記載の自立膜測定装置。
【請求項7】 先端に鋭い探針を持つカンチレバーと、前記カンチレバーの先端の変位変化を検出する変位検出手段と、試料と前記探針とを相対的に移動させる移動手段と、を備えた走査型プローブ顕微鏡において、前記カンチレバーのバネ定数が前記試料のバネ定数の100倍以下であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項8】 先端に鋭い探針を持つカンチレバーと少なくとも一部が自立膜を有した試料との相対的な関係を変化させ、前記被検査物及び前記探針間の相対関係の変化と共に変化する前記カンチレバーの先端の変位に基づき、試料の機械的特性を取得することを特徴とする自立膜測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロマシン、X線透過窓などに利用される自立薄膜の機械的特性の測定を行う測定装置及び測定方法に関する。特に、走査型プローブ顕微鏡の基本構成を用いて、自立薄膜の機械的特性の測定を行う装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体の微細加工技術を応用した、非常に小さい機械、マイクロマシンが注目を集めている。このマイクロマシン技術により、シリコン(Si)基板上に数100μmオーダ以下の微細な3次元部品を製作することが可能になり、センサやアクチュエータのマイクロ化が実現されつつある。このマイクロマシンの技術では、薄膜を使って部品を構成し、非常に小さい機械が作られている。また、マイクロマシンを製作するにあたっては、薄膜は基板から分離された状態で使用されることが多く、薄膜の機械的な特性は、薄膜をマイクロマシンの構造材料として利用する上で重要な物性値となっている。
【0003】そのため、自立薄膜の物性値をより微細に調べる必要性がある。そこで、自立薄膜の物性値を検出する方法としては、バルジ法、X線回折法、光弾性法、超音波顕微法、ラマン分光法などがある。バルジ法は、自立薄膜に気体などによって圧力をかけ、その膨らみ量から応力、ヤング率などの機械的性質を求める方法であり、比較的よく利用される。
【0004】X線回折法は、X線の回折角から試料の格子定数を求めることにより、応力によるひずみを求めるものである。光弾性法は、等質等方体に荷重を加えたときに起こる複屈折現象を光で計測することにより、物体に生じる応力を求める。超音波顕微法は、残留応力を受けている材料では、音波の伝播速度や偏りに応力の影響がでることを利用したものである。
【0005】ラマン分光法は、ラマンスペクトルのピーク波数シフト量から材料のひずみ、応力を求めるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この様に、マイクロマシンなどに使う自立膜の機械的性質を知ることは重要であり、幾つかの方法を用いて、この自立膜の機械的性質が調べられてきた。しかしながら、現在ある分析手法は、マイクロマシンに使用される自立薄膜の機械的な性質を調べるには十分ではない。
【0007】例えば、バルジ法は容易に計測できる手段であるが、自立膜に対して適用する場合には、薄膜全体の平均的な機械的特性しか得ることはできない。また、X線回折法、光弾性法、超音波顕微法、ラマン分光法は、自立膜の機械的性質の2次元分布を得ることができるが、その空間分解能は数μm程度であり、ナノメータの精度が要求されるマイクロマシンの検査には不十分である。
【0008】このように、既存の検査方法では、空間分解能が十分ではなく、より分解能が高く、自立薄膜に適用するのに適した検査方法が望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するために、本発明では、先端に鋭い探針を持つカンチレバーと、カンチレバーの先端の変位を検出する変位検出手段と、少なくとも一部が自立膜を有した試料と探針との相対的な関係を変化させる可変手段と、被検査物及び探針間の相対関係の変化と共に変化する変位検出手段からの信号に基づき、試料の機械的特性を取得することとした。
【0010】この様にカンチレバーに備えられた探針と被検査物との相対関係を可変手段で変化させながら、カンチレバーの先端の変位変化を検出することで、被検査物の機械的な特性を検出し、十分な分解能を備えることができる。ところで、本発明の好ましい第2の形態として、可変手段は、試料の表面に対して垂直な方向に、試料と探針とを相対的に移動させる第1の移動手段と、試料の表面に対して平行な方向に、試料と探針とを相対的に移動させる第2の移動手段と少なくとも備えることが好ましく、試料と探針との位置関係を可変することで試料と探針の相対関係を可変することでも構わない。
【0011】また、本発明の第3の実施の形態において、カンチレバーのバネ定数が、被検査物の弾性率の百倍以下になるようにカンチレバーの硬さを選択することが好ましい。この様に、カンチレバーのバネ定数を被検査物の弾性率の百倍以下に設定することで、被検査物を破損することなく、被検査物の機械的特性を敏感に取得することができる。
【0012】また、本発明の好ましい第4の形態として、被検査物の機械的特性を検出する場合において、カンチレバーと被検査物との距離に対するカンチレバーの先端の変位変化を検出し、その検出された変位変化と距離の相関関係から、被検査物の弾性に関する機械的特性を検出することが好ましい。この様にカンチレバーと被検査物の距離に対するカンチレバーの先端の変位変化を検出することで、後述するフォース・カーブを取得することができる。このフォース・カーブの所望の部分について解析することで、被検査物の各種の機械的特性を知り得ることができる。そこで、本発明の第4の形態では、自立膜の測定・評価にフォース・カーブを検出し、得られたフォースカーブから自立膜の弾性を検出している。この自立膜の弾性に関する情報により、自立膜の膜厚を知ることができる。
【0013】また、本発明の第5の形態として、自立膜である被検査物の機械的特性を検出する場合において、更に、得られたカンチレバーの先端の変位変化と距離の相関関係が、所望の相関関係と同じとなるか否かを検出することとした。この様に、前記変位変化と前記距離の相関関係が、例えば、フックの法則に沿っているものかどうかを検出することで、自立膜である被検査物の内部応力の有無を検出することとした。この様に本発明の第5の形態では、内部応力を検出することもできる。
【0014】また、本発明の第6の好ましい形態では、被検査物の機械的特性を検出する場合において、振動周期を変化させながら、カンチレバーを励振する励振機構を備え、被検査物に前記探針が近接された状態におけるカンチレバーの先端における変位振幅を検出し、検出されたカンチレバー先端における変位振幅のうち最大の変位振幅が得られたときの振動周期を得ることとした。この様に得られた振動周期が、被検査物である自立膜の共振周波数となる。この共振周波数は、膜厚や膜の形状によって異なる。したがって、要求されたとおりの理想的な自立膜である場合には、所定の共振周波数を持つことになるが、要求された自立膜とは異なる自立膜では、この共振周波数が異なる。したがって、被検査物を振動させたときのおける共振周波数を検出することで、自立膜の特性を得ることができる。
【0015】また、第2の本発明としては、先端に鋭い探針を持つカンチレバーと、カンチレバーの先端の変位を検出する変位検出手段と、試料と探針とを相対的に移動させる移動手段とを備えた走査型プローブ顕微鏡において、カンチレバーのバネ定数が試料のバネ定数の100倍以下であることとした。この様にカンチレバーのバネ定数を決めることで、試料にダメージを与えず、試料と探針の間の相互作用力を感度良く検出することができる。
【0016】なお、次に本発明を、更に実施の形態を述べながら詳しく説明して行くこととする。
【0017】
【発明の実施の形態】まず、最初に本発明を適用した自立薄膜の測定・評価装置を第1の実施の形態として説明する。なお、この測定・評価装置の構成を図1に示し、測定・評価装置の説明は図1を用いながら説明して行くものとする。
【0018】本発明の第1の実施の形態である自立薄膜の測定・評価装置は、一端が支持体101に固定され、他端で試料11側に探針1aが備えられたカンチレバー1と、カンチレバー1の探針1aが備えられた面とは反対側の面に光を照明する光源2と、カンチレバー1の反射光を受光し、カンチレバー1の先端の変位を検出するポジションセンシティブディテクター(PSD)3と、探針1aに対して自立薄膜11aを有した試料11を相対的に移動させるX−Y試料ステージ4と、X−Y試料ステージ4の移動を制御するX−Y試料ステージコントローラ5と、X−Y試料ステージ4上に備えられ、X−Y試料ステージ4の移動方向とは垂直な方向に被検査物11を移動させるZ軸アクチュエータ6と、Z軸アクチュエータ6を制御するZ軸コントローラ7と、X−Y試料ステージコントローラ5とZ軸コントローラ7とを統合制御し、PSD3からの信号をX−Y試料ステージコントローラ5とZ軸コントローラ7との制御信号と対応づけさせながら出力する制御装置8と、制御装置8から出力される信号を処理するデータ処理装置9と、データ処理装置9で処理されたデータを表示する表示装置10とで構成されている。
【0019】この様な構成を有した本発明の第1の実施の形態では、探針1a先端を試料11の自立薄膜11aに対して、数オングストロームから数百ナノメートル程度に近づけると、試料11と探針1aとの間隔に対して非常に敏感な原子間力(van der waals力) 等の相互作用力が働き、その相互作用力を解析する走査型力顕微鏡を利用して、自立薄膜11aの機械的性質を求めることにしている。
【0020】ところで、走査型力顕微鏡における探針1a先端と試料11との間に働く力の測定は、カンチレバーの撓みを検出することによって行われる。要するに、探針1aと試料11表面との間に働く力によって生じるカンチレバー1の先端の変位を検出し、このカンチレバー1の先端の変位から探針1a先端と試料11との間に働く力を測定している。そして、更に試料11表面と探針1aとの間の相互作用力を調べる方法として、探針−試料間の距離と、探針1aが受ける力との関係を示したフォース・カーブを取得するして、解析する方法がある。
【0021】このフォース・カーブとは、試料11に探針1aを接近させたり、離したりしたときに得られる探針1aが受ける力の変化を記録したものである。このフォース・カーブを解析すれば、試料11表面と探針1aとの間隔に対して、どの程度の相互作用力が作用しているかを調べることが出来る。図2に典型的なフォース・カーブを模式的に示す。図2の経路でA、B、C、Dの順番は、探針1aを試料11に接近させたときに得られるフォース・カーブであり、経路D、E、F、Gの順番は、探針1aを試料11から遠ざけたときに得られるフォース・カーブである。
【0022】そして、このフォースカーブは、次に事を示している。C−D間或いはD−E間の直線の傾きは、試料11に探針1aを押し込んだときの斥力を示しており、これは、試料11の弾性を反映している。また、Eの位置は、表面の吸着力とカンチレバー1の撓んだことにより発生する力とが釣り合っているところであるので、E−F間の距離は、試料11と探針1aとの吸着力を示している。また、その他数々の相互作用力を検出することができる。
【0023】なお、本発明の第1の実施の形態における測定・評価装置では、自立薄膜の弾性に関する機械的性質を取得するものとして、試料のバネ定数を取得する装置を例示することにする。なお、フォースカーブから試料11のバネ定数を取得する方法は、次の通り行われる。図2のD−E間の傾きは試料11の弾性を示しているが、このD−E間の傾きに対応する数値は、試料11とカンチレバー1の合成バネ系のバネ定数Kになっている。この合成バネ定数Kは、カンチレバー1のバネ定数をk1、試料11のバネ定数をk2、カンチレバー1が試料11を押す力をFとすると、式(1)の様な関係になる。
【0024】
F=K×X=k1×x1=k2×x2 ・・・・(1)
なお、この式(1)で、Xはカンチレバーの押し込む量、x1はカンチレバーの撓み量、x2は試料の変形量である。また、これらの関係から、カンチレバー1で計測される合成バネ定数Kは、式(2)の通りとなる。
【0025】
K=k1×k2/(k1+k2) ・・・・・(2)
式(2)の関係から、カンチレバー1のバネ定数が予めわかっていれば、フォースカーブから合成バネ定数Kを得ることができ、演算処理によって試料11のバネ定数k2を求めることができる。この様にして試料11に有する自立薄膜11aの機械的特性を測定することができる。
【0026】ところで、本測定・評価装置は、探針1aに受ける力をカンチレバー1の撓みによって検出している。その詳細は次の通りである。レーザー光源2から発したレーザー光は、先端に鋭い探針1aを持つカンチレバー1の背面に入射させ、カンチレバー1の背面から反射した光をPSD3で検出し、反射光の重心の移動を検出している。この反射光の重心の移動は、カンチレバー1の撓みの変化に応じて変化するので、反射光の重心の移動を検出することで、カンチレバー1の撓みを検出している。
【0027】また、検査すべき自立薄膜11aを持つ被検査物11については、X−Y試料ステージ4及びZ軸アクチュエータ6の上に載置される。そして、被検査物11は、X−Y試料ステージコントローラ5によってX−Y試料ステージ4を制御しながら、被検査物11をその表面と平行に走査させることができ、試料11のあらゆる位置についてフォース・カーブを取得することを可能にする。
【0028】また、被検査物11は、Z軸アクチュエータ6によって、試料11の表面と垂直方向に移動させることができる。試料11の各位置でフォース・カーブを取得する際には、このZ軸アクチュエータ6を駆動させて、試料11と探針1aとを接近させたり、離したりする。なお、このZ軸アクチュエータ6の制御はZ軸コントローラ7で行われる。
【0029】また、制御装置8は、X−Y試料ステージコントローラ5及びZ軸コントローラ7へ出力した制御信号をデータ処理装置9にも出力し、またPSD3から出力されたカンチレバー1の先端の変位に関する変位信号を取得し、カンチレバー1の変位信号は、各コントローラへの制御信号と共にデータ処理装置9に出力する。
【0030】そして、データ処理装置9では、制御装置8からX−Yステージコントローラ5へ出力された制御信号を基に、探針1aが存在する試料11の位置情報を取得し、また、カンチレバー1の変位信号とZ軸コントローラ7の制御信号とからフォース・カーブを計測して、試料11の自立薄膜11aについてのバネ定数を取得する。
【0031】そして、表示装置10は、データ処理装置9で取得された探針1aが存在する試料11の位置情報と、各位置における自立薄膜11aのバネ定数とを対応づけて表示する。なお、制御装置8、データ処理装置9及び表示装置10は、図3のようなフロー図に従って制御が行われる。
【0032】まず最初に、試料11表面の走査範囲をn×n個の格子点に分割し、i,jをカウンターとして、それぞれの格子点を(i,j)とし、更にi,j共に0に初期化する(ステップS001およびS002)。次に、探針1aがi,jで示される位置に来るように、制御装置8はX−Y試料ステージコントローラ5に制御信号を出力する(ステップS003)。試料11の移動が完了したら、制御装置8は、Z軸コントローラ7に制御信号を出力しながら、PSD3で計測されたカンチレバー1の先端の変位に関する信号を取得する。そして、制御装置8からカウンター(i,j)をカンチレバー1の先端の変位に関する信号と共にデータ処理装置9に出力する。そして、データ処理装置9でフォース・カーブを取得する(ステップS004)。このフォース・カーブのデータは、データ処理装置9により解析され、カンチレバー1と試料11との合成バネ定数Kが求められる(ステップS005)。さらに、データ処理装置9で、合成バネ定数Kから試料11のバネ定数k2が演算される(ステップS006)。そして、データ処理装置9で得られたバネ定数k2は配列k2(i,j)に設定する(ステップS007)。
【0033】そして、処理装置8内のカウンターがi=i+1の処理を行い(ステップS008)、n回繰り返されるまで、ステップS003からステップS008の処理を繰り返す。そして、n回繰り返されたら(ステップS009)、処理装置8内のカウンターがj=j+1の処理を行い(ステップS010)、n回繰り返されるまで、ステップS003からステップS010の処理を繰り返す。
【0034】そして、n回繰り返されたら(ステップS011)、表示装置10においてカウンタの数字である(i,j)と対応づけて、それぞれの位置における試料11のバネ定数を表示する。この様にして、試料11上の各位置において試料11のバネ定数k2が全て(n×n個)を行い、表示することで一連の測定、評価は終了する。
【0035】以上の様に、本発明の第1の実施の形態である測定・評価装置では、試料11のバネ定数k2を求めるプロセスを、探針1aが試料11を走査されながらn×n回行なわせることで、試料表面の弾性率の分布を得ることができる。なお、本発明の第1の実施の形態において、試料11のバネ定数k2を精度良く求めるためには、試料11のバネ定数k2に対する合成バネ定数Kの変化が大きいところを使えばよい。
【0036】そこで、本発明の第1の実施の形態では、カンチレバー1のバネ定数に対して、試料11のバネ定数が変化したとき、フォースカーブで計測される合成バネ定数Kの変化を調査した。その結果を図4に示す。この図4から明らかなように、試料11のバネ定数k2に応じて合成バネ定数kは変化するが、カンチレバー1のバネ定数k1と試料のバネ定数k2が近い値の部分では、試料のバネ定数k2の変化に対する合成バネ定数kの変化が大きい。したがって、試料11のバネ定数k2の1/100から100倍の間にあることが。この範囲が先の説明からわかるように適当である。もし、この範囲から外れたバネ定数を持つカンチレバーを使用した場合、例えば、試料11のバネ定数k2の100倍よりも大きいものを使用した場合、試料11に形成された自立薄膜11aのもつ弾性の影響を受けずらくなり、カンチレバー1が撓まなくなってしまう。また、自立薄膜11aそのものを損傷してしまう可能性が高くなるという問題がある。また、試料11のバネ定数k2の1/100倍よりも小さいものを使用した場合は、弾性による試料11の形状変化を敏感に検知することが難しくなると言う欠点がある。この様なことから、少なくとも試料11のバネ定数k2の100倍よりも小さいバネ定数を持ったカンチレバー1を使用することが好ましい。そして、良好な検出感度が必要な場合は、試料11のバネ定数k2の1/100倍よりも大きいバネ定数を持ったカンチレバー1を使用することが好ましい。
【0037】ところで、本発明の第1の実施の形態として、フォースカーブを取得して、試料11のバネ定数を得る測定・評価装置について説明したが、本発明はこれに限られず、試料11の機械的な共振周波数を得ることで試料11の機械的特性を得る測定・評価装置や、フォースカーブを使って試料の弾性を求め、その弾性特性についてフックの法則からのずれを導き出し内部応力を計測することで、試料11の機械的特性を得る測定・評価装置でも構わない。
【0038】次に、機械的な共振周波数を得ることで、試料11の機械的特性を検出する本発明の第2の実施の形態の測定・評価装置について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態である測定・評価装置を図示したものである。なお、図1と同一符号のものは、本発明の第1の実施の形態である測定・評価装置と同一な部材又は装置であるので、ここでの説明は省略するものとする。
【0039】ところで、第2の実施の形態である測定・評価装置は、更に支持体101とカンチレバー1の支持側との間にピエゾ圧電素子からなる励振部材12と、その励振部材12を制御する励振部材制御装置13とを備えている。なお、励振部材12は、カンチレバー1を振動させるために設けられており、励振部材制御装置13の制御により振動周期を変化させながら振動することができる。また、励振部材制御装置13は、励振部材12の振動周期に関する制御信号を制御装置8aから受けて、励振部材12の振動周期を制御する。
【0040】この様な構成を有して、Z軸アクチュエータ6で試料11の自立薄膜11aと探針1aとを接触するまで接近させ、励振部材12を振動させ、そのときのカンチレバー1の振動の状態をPSD3で検知する。そして、励振部材12の振動周期を逐次可変しながら、カンチレバー1の振幅が最大となる振動周期を制御装置8で検出する。そして、その振動周期に対する周波数を自立薄膜11aの共振周波数としてデータ処理装置9aに出力する。この様に、自立薄膜11aの共振周波数を検出することで、自立薄膜11a全体の機械的特性を検出することが出来る。
【0041】また、フォース・カーブを使って試料の弾性を求め、その弾性特性についてフックの法則からのずれを導き出し、内部応力を計測することで、試料11の自立薄膜11aにおける機械的特性を得ることができる。この様な測定・評価装置については、次の通りである。フォース・カーブを使って弾性係数を計測する場合、試料11aに内部応力が存在していると、カンチレバー1と試料11との距離に対してカンチレバー1の先端の変位が比例関係にならなくなる。言い換えれば、試料11の自立薄膜11aに内部応力が存在すると、その試料の弾性特性はフックの法則に従わなくなると言うことである。
【0042】したがって、図1に示した装置構成で、データ処理装置9aで得られたフォース・カーブのうち、探針1aが試料11の自立薄膜11aに接していて、押したり引いたりしている領域(つまり図2のC−D間やD−E間)がフックの法則による比例直線関係に対して、実際得られたフォース・カーブとのずれを計測することで、内部応力の存在の有無を検出することが可能となる。この様な処理をデータ処理装置9に加えることで、内部応力の有無を検出できる測定・評価装置を得ることが出来る。
【0043】なお、ここで自立薄膜の内部応力は、カンチレバー1を使って自立薄膜11aに力を掛けなくとも、すでに内部である程度の力が発生している状態と考えられる。そのため、たとえカンチレバー1から試料11に掛ける力が弱い場合でもフックの法則からずれている可能性もある。しかし、この場合でも、フックの法則からのずれは、掛ける力を大きくすればするほど大きくなるというある関数にあると考えられることから、掛ける力を大きくしていきながらフックの法則からのずれを検討すれば、試料11の内部的に掛かる力([つまりカンチレバー1によって掛かる力]+[内部応力によって掛かる力])が0になる位置を推定することができる。したがって、内部的に掛かる力が0になるときは、カンチレバーによって掛ける力と、内部応力によって掛かる力とが、釣り合っている状態と考えることができる。
【0044】そのことから、このときのカンチレバーによって掛ける力のマイナス値が、試料の内部応力ということになり、試料の内部応力を求めることができる。以上の様に、非常に鋭利な先端を有した探針1aを用い、探針1aと自立薄膜を有した試料11との相互関係を検出することで、微小な領域における機械的特性を検出することができる。また、探針1aと自立薄膜を有した試料11との相互関係をあらゆる試料11上の各位置において、検出することで機械的特性の分布状態を検出することが出来、更に探針1a自体が非常に鋭利な先端を有しているため、非常に高い空間分解能で微細な機械的特性を知ることができる。この分布状態を検出できれば、自立膜において欠陥を有した部分を特定したり、自立膜に微細な構造物を作り込んだものであれば、その構造物が所望の形状になっているか否かを測定することができる。そして、空間分解能が非常に高いので、自立膜に存在する欠陥や構造物が非常に微細でも検出可能となる。
【0045】また、X線投影露光装置に用いられるマスクなどは、自立薄膜の厚さや材質などを変化させることで投影するパターンを形成している。したがって、この様なマスクの検査に膜厚や材質等を検査する必要が出てくる。膜厚や材質等が変化する機械的性質も変化することが知られているので、このことを利用して、本発明の実施の形態である測定・評価装置を用い、検査することも可能となる。更に微細な領域毎に機械的特性の分布を知ることができるので、綿密な検査が可能となる。
【0046】
【発明の効果】以上の通り、本発明による自立薄膜の測定装置並びに測定方法を用いれば、これまで困難であった、マイクロマシン、X線透過窓などに利用される自立薄膜の機械的な特性の測定が可能となり、自立薄膜の局所的な機械的特性を計測することができる。
【出願人】 【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
【出願日】 平成10年(1998)3月25日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−271344
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−78088