トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 走査型プローブ顕微鏡
【発明者】 【氏名】伊東 修一

【要約】 【課題】外界からの影響を受けること無く、高分解能な測定を行うことが可能な走査型プローブ顕微鏡を提供する。

【解決手段】カンチレバー26及びカンチレバーと試料24とを相対的に走査させるスキャナ30を有するプローブ顕微鏡ユニットと、プローブ顕微鏡ユニットを支持可能であって且つこのプローブ顕微鏡ユニットに外部振動が伝わるのを除去する除振機構と、この除振機構に支持されたプローブ顕微鏡ユニットを外界からシールドするシールド機構とを備えており、このシールド機構には、外気圧よりも低い圧力に引かれた気密空間領域Tが形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カンチレバー及びカンチレバーと試料とを相対的に走査させるスキャナを有するプローブ顕微鏡ユニットと、プローブ顕微鏡ユニットを支持可能であって且つこのプローブ顕微鏡ユニットに外部振動が伝わるのを除去する除振機構と、この除振機構に支持されたプローブ顕微鏡ユニットを外界からシールドするシールド機構とを備えており、このシールド機構には、外気圧よりも低い圧力に引かれた気密空間領域が形成されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】 前記シールド機構には、遮音性を有する複数のカバー部材によって区画された1つの気密空間領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】 前記シールド機構には、遮音性を有する複数のカバー部材によって区画された複数の気密空間領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば原子オーダーの分解能で試料の表面情報を測定するための走査型プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の走査型プローブ顕微鏡は、自由端に尖鋭化した探針を持つカンチレバーと、探針と試料とを相対的に移動させるスキャナとを備えている。そして、探針を試料に対向して近接させると、探針先端と試料表面との間に働く相互作用(原子間力、斥力、引力、粘性、磁気力など)によって、カンチレバーの自由端が変位する。この自由端に生じる変位量を電気的あるいは光学的に検出しながら、探針を試料表面に沿ってXY方向に相対的に走査することによって、試料の表面情報等(例えば、凹凸情報)を三次元的にSPM測定している。
【0003】また、近年では、上述したようなSPM測定に際し、外界からの影響を除去して高分解能化を実現するために、走査型プローブ顕微鏡全体をシールドする装置が開発されている。
【0004】例えば特開平5−40005号公報には、図6(a)に示すように、探針2及びこの探針2を試料4に対して走査させるチューブスキャナ6等から成るプローブ顕微鏡ユニットを外界からシールドする装置が開示されている(第1の従来技術)。
【0005】この第1の従来技術のシールド装置は、プローブ顕微鏡ユニット全体を覆う所定の厚さの箱体8と、この箱体8の内面全体に亘って貼着された吸音材10とから構成されており、外的磁気ノイズや外的騒音等の影響を受けること無くSPM測定を行うことができるように構成されている。
【0006】例えば特開昭63−121740号公報には、図6(b)に示すように、レーザー光源12から試料14表面にレーザー光を照射しながら、探針16と試料14表面との間に流れるトンネル電流を検出することによって試料14の表面を分析する装置が開示されており、探針16及びこの探針16を試料14に対して走査させるアクチュエータ18等から成るプローブ顕微鏡ユニットが、シールド装置によって外界からシールドされている(第2の従来技術)。
【0007】この第2の従来技術のシールド装置は、プローブ顕微鏡ユニット全体を真空環境下に置くことが可能な真空容器20を備えており、外界からの影響を受けること無くSPM測定を行うことができるように構成されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の従来技術のシールド装置には、以下のような問題が存在する。箱体8の厚さを例えば1mmから5mm程度まで厚くした場合でも、音の強さは、約10dB程度(約30%程度)しか低減させることはできない。即ち、音の強さIと音圧Pとの間には、I=P2 /(ρc)
ρ:空気密度、 c:空気粒子の速度なる関係があるため、音圧Pは、約55%程度低減するに過ぎない。
【0009】この場合、箱体8の内面全体に吸音材10を貼着しても、例えば100Hz程度の低周波の音を減衰させることは困難であり、音の強さは、せいぜい10%程度)しか低減させることはできない。
【0010】また、第2の従来技術のシールド装置には、以下のような問題が存在する。プローブ顕微鏡ユニットには、図示しないステージ等の摺動部が設けられており、真空中では、この摺動部に用いられている潤滑剤が蒸発してしまうため、円滑な摺動動作を維持することができなくなってしまう。
【0011】また、プローブ顕微鏡ユニットには、光学部品等を固定するために接着剤が用いられており、真空中では、この接着剤が蒸発して光学部品に付着してしまうため、光学部品の光学特性が低下してしまう。
【0012】更に、プローブ顕微鏡ユニットには、電気信号のプリアンプ等としてICが用いられており、真空中では、このICの足同士の間で放電が起こりやすくなっているため、放電が起こった場合にはICが破壊してしまう。
【0013】本発明は、このような問題を解決するために成されており、その目的は、外界からの影響を受けること無く、高分解能な測定を行うことが可能な走査型プローブ顕微鏡を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバー及びカンチレバーと試料とを相対的に走査させるスキャナを有するプローブ顕微鏡ユニットと、プローブ顕微鏡ユニットを支持可能であって且つこのプローブ顕微鏡ユニットに外部振動が伝わるのを除去する除振機構と、この除振機構に支持されたプローブ顕微鏡ユニットを外界からシールドするシールド機構とを備えており、このシールド機構には、外気圧よりも低い圧力に引かれた気密空間領域が形成されている。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡について、図1を参照して説明する。本実施の形態の走査型プローブ顕微鏡に適用可能な測定法としては、探針接触圧設定時のカンチレバーの撓み状態を一定に維持しながら、カンチレバーを励振させること無く探針を試料に沿って走査することによって、試料の表面情報を測定するスタティックモード測定法と、所定の共振周波数でカンチレバーを励振させた状態において、例えば振動中心と試料表面との間の距離を一定に維持しながら、探針を試料に沿って走査することによって、試料の表面情報を測定するダイナミックモード測定法とが知られているが、以下の説明では、両測定法を総称して単にSPM測定ということとする。
【0016】また、走査型プローブ顕微鏡は、固定した試料に対して探針を所定方向に移動させることによって、試料の表面情報をSPM測定する探針走査型と、固定した探針に対して試料を所定方向に移動させることによって、試料の表面情報をSPM測定する試料走査型とに大別されるが、いずれにも本実施の形態に適用することができる。
【0017】なお、探針走査型の走査型プローブ顕微鏡は、スキャナ(例えば、チューブ型圧電体スキャナ)の可動端にカンチレバーが取り付けられており、スキャナに印加する電圧を制御することによって、探針を試料に沿って所定方向に所定量だけ移動させることができるように構成されている。一方、試料走査型の走査型プローブ顕微鏡は、スキャナの可動端に試料を載置することができるようになっており、スキャナに印加する電圧を制御することによって、試料を探針に対して所定方向に移動させることができるように構成されている。
【0018】本実施の形態では、その一例として、図1に示すように、XYステージ22上にセットされた試料24の表面に沿ってカンチレバー26先端の探針28を走査させることによって、試料24の表面情報をSPM測定する探針走査型のプローブ顕微鏡を想定する。
【0019】カンチレバー26は、スキャナ30(例えば、チューブ型圧電体スキャナ)の可動端に取り付けられており、このスキャナ30は、スキャナ支持体32を介してZステージ34に固定されている。このZステージ34は、XYステージ22と共に筐体36に対して移動自在に取り付けられている。そして、以下の説明では、このような構成を有する走査型プローブ顕微鏡をプローブ顕微鏡ユニットと言うこととする。
【0020】また、本実施の形態の走査型プローブ顕微鏡に適用したシールド装置は、プローブ顕微鏡ユニットを支持可能であって且つこのプローブ顕微鏡ユニットに外部振動が伝わるのを除去する除振機構と、この除振機構に支持されたプローブ顕微鏡ユニットを外界からシールドするシールド機構とを備えている。
【0021】除振機構は、プローブ顕微鏡ユニット全体をセット可能な定盤38と、この定盤38を床面40上に支持すると共にプローブ顕微鏡ユニットに外部振動が伝わるのを除去する除振台42とを備えている。除振台42としては、例えば、エアスプリング、ゴム(樹脂)、機械的バネに代表されるような弾性体(弾性部材、弾性機構など)を用いることが効果的である。
【0022】シールド機構は、プローブ顕微鏡ユニット全体を覆うような形状(例えば、矩形状)を成しており、定盤38上に取付可能な遮音性の外カバー44と、この外カバー44の内側に配置され且つ定盤38上に取付可能な遮音性の内カバー46とを備えている。
【0023】これら外カバー44及び内カバー46は、シール材48を介して定盤38上に取り付けられている。このため、外カバー44と内カバー46との間には、外界からの空気が流入しない気密空間領域Tが形成される。
【0024】ところで、ある物体を通過する音に対する遮音性は、その物体の面密度の増加に伴って向上する(一般に質量則という)。従って、外カバー44及び内カバー46は、共に、面密度の高い材質(例えば、鉄やステンレス等の金属)で形成することが好ましい。
【0025】また、外カバー44及び内カバー46には、夫々、プローブ顕微鏡ユニットのメンテナンス(例えば、カンチレバーの取換など)や、試料24の交換等のために、外扉50及び内扉52が開閉自在に取り付けられており、外扉50と外カバー44との間及び内扉52と内カバー46との間には、外扉用シール材54及び内扉用シール材56が設けられている。
【0026】また、外カバー44と内カバー46との間に形成された気密空間領域Tには、外カバー44に取り付けられたチューブ58を介して真空ポンプ60が連通接続されており、外カバー44とチューブ58との間には、チューブ接続用シール材62が設けられている。
【0027】真空ポンプ60としては、例えば真空機工株式会社製の型式DA−20Dのポンプを使用することが可能であり、この真空ポンプ60によってチューブ58を介して気密空間領域Tの真空圧力を例えば100kPaから5kPa程度まで低圧にすることができる。
【0028】このような構成によれば、外扉50及び内扉52を閉めた状態において、真空ポンプ60によって気密空間領域Tを真空(外気よりも低圧)にした後には、外扉50と外カバー44との間及び内扉52と内カバー46との間並びに外カバー44とチューブ58との間を介して外部空気が気密空間領域Tに流入するのを防止することができる。
【0029】なお、外扉50及び内扉52には、夫々、図示しないロック機構が設けられており、外扉50及び内扉52を閉めた際の空気漏れ等が防止されている。次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0030】例えば外扉50及び内扉52を開いた後、試料24をプローブ顕微鏡ユニットのXYステージ22上にセットする。次に、外扉50及び内扉52を閉めてロックさせると、この状態で、外カバー44と内カバー46との間には、外界からの空気が流入しない気密空間領域Tが形成される。
【0031】続いて、真空ポンプ60を駆動して気密空間領域Tの空気を抜く。ここで、外カバー44の幅寸法を1m、高さ寸法を0.6m、奥行寸法を1mとすると共に、内カバー46の幅寸法を0.9m、高さ寸法を0.55m、奥行寸法を0.9mとすると、気密空間領域Tの容積は、約150リットルとなる。この場合、真空機工株式会社製の型式DA−20Dのポンプを用いると、約1分で気密空間領域Tの圧力を3.32kPa(大気圧の3%)まで低減することができる。
【0032】そして、気密空間領域Tを目標の圧力(例えば、3.32kPa)に低減した後は、上述したようなSPM測定が外部コントローラ(図示しない)を操作することにより行われる。
【0033】このSPM測定中において、真空ポンプ60の脈動がチューブ58から気密空間領域Tを介して伝達され、SPM測定データにノイズとなって重畳するような場合には、例えばチューブ58の途中にバルブ(図示しない)を取り付けて、このバルブを閉めてから真空ポンプ60を停止したり、或いは、例えばチューブ58の途中にアキュムレータ(図示しない)を取り付けて、真空ポンプ60の脈動に起因した圧力変動を吸収すれば良い。この結果、真空ポンプ60の脈動の影響を受けること無く、高分解能なSPM測定を行うことができる。
【0034】また、SPM測定中において、外部振動が外カバー44に伝わった場合、この外部振動は、外カバー44を振動させた後、気密空間領域Tから内カバー46を介してシールド機構内に侵入しようとする。
【0035】しかし、気密空間領域Tは、大気圧の3%程度の低圧(3.32kPa)に引かれており、この気密空間領域Tの空気密度は、0.03kg/cm3 まで減少している。
【0036】ここで、音圧Pと空気密度ρとの間には、P=ρcvc:音速、 v:空気粒子の速度なる関係があり、音圧Pと空気密度ρとは比例関係にある。
【0037】また、シールド機構のシールド性実験結果によれば、装置に与えた音圧Pと、この音圧Pに起因するノイズ(外部振動)とは比例関係にあることが知られている。
【0038】従って、気密空間領域Tの圧力を大気圧の3%程度に減圧することによって、外部振動に起因したノイズを3%程度に減少させることができる。即ち、第1の従来技術(音圧を約55%程度に低減させた技術)に比べて、本実施の形態に適用したシールド機構は、音圧を約20倍程度低減させることができる。
【0039】また、本実施の形態に適用したシールド機構によれば、外カバー44及び内カバー46自体も遮音性を有するため、上記の音圧低減効果を計算値以上に向上させることができる。
【0040】更に、本実施の形態に適用したシールド機構において、大気圧100kPaに対する気密空間領域Tの圧力を3.32kPaに低減した場合、この圧力差(約97kPa)に対応した圧力で外カバー44及び内カバー46が圧迫される。従って、外部振動によって外カバー44及び内カバー46が振動しても、その振動振幅は、圧力がかかっていない場合に比較して小さくなる。つまり、外カバー44及び内カバー46が外部振動に起因して振動しても、その振動振幅は小さくなる。
【0041】また、本実施の形態に適用したシールド機構によれば、外気に対する気密空間領域Tの空気密度が小さくしているため、断熱効果を向上させることができる。従って、外気温度が変化(気密空間領域Tの温度よりも増加又は減少)しても、その外気温度変化は、外気よりも空気密度の小さい気密空間領域Tによって断熱されるため、シールド機構内に配置された走査型プローブ顕微鏡は、外気温度変化の影響を受けることは無い。この結果、SPM測定データが、外気温度変化に起因してドリフトすることは無い。
【0042】更に、本実施の形態に適用したシールド機構によれば、プローブ顕微鏡ユニットの周囲及び雰囲気は、真空に引かれておらず、大気と同一の空間領域を形成することができるため、従来技術のようなステージを円滑に摺動させるための潤滑剤の蒸発、光学部品等を固定するための接着剤の蒸発等が生じることは無い。このため、常に円滑なステージ移動を確保することができると共に、光学部品の光学的特性を低下させることも無い。この結果、高分解能なSPM測定を行うことができる。
【0043】このように本実施の形態によれば、外界からの影響を受けること無く、高分解能な測定を行うことが可能な遮音性及び断熱性に優れた走査型プローブ顕微鏡を提供することができる。
【0044】なお、本発明は、上述した実施の形態の構成に限定されることは無く、種々変更することが可能である。例えば図2(a)には、第1の変形例に適用したシールド機構の構成が示されており、このシールド機構は、プローブ顕微鏡ユニット全体を覆うように組み立てることが可能な複数のカバーユニット64から構成されている。なお、プローブ顕微鏡ユニットの構成は、図1と同一であるため、図2(a)中では、省略する。
【0045】これらカバーユニット64は、夫々、中空気密構造を成しており、各々のカバーユニット64内には、気密空間領域Tが形成されている。また、図3(a)に示すように、各々のカバーユニット64は、チューブ58を介して真空ポンプ60が連通接続させることができるようになっており、カバーユニット64とチューブ58との間には、チューブ接続用シール材62が設けられている。
【0046】このような構成によれば、真空ポンプ60によって各々のカバーユニット64の気密空間領域Tを真空(外気よりも低圧)にした状態において、図3(b)に示すように、チューブ58の途中をバンド66で気密状に締めた後、このバンド66と真空ポンプ60との間でチューブ58を切断すれば、各々のカバーユニット64の気密空間領域Tを半永久的に真空状態に維持させることができる。
【0047】そして、このように真空に引かれた気密空間領域Tを有する各々のカバーユニット64を図2(a)のように組み立てれば、遮音性及び断熱性に優れたシールド機構によってプローブ顕微鏡ユニット全体を覆うことができる。
【0048】また、プローブ顕微鏡ユニットのメンテナンス(例えば、カンチレバーの取換など)や試料24の交換等のために、複数のカバーユニット64によって構成したシールド機構には、気密性に優れた開閉扉68を設けることが好ましい。
【0049】この開閉扉68は、中空気密構造を成しており、その内部には、気密空間領域Tが形成されている。この開閉扉68の気密空間領域Tも各カバーユニット64の気密空間領域Tと同低圧にすることが好ましい。
【0050】開閉扉68の気密空間領域Tを真空に引く方法としては、例えば真空ポンプ60によって開閉扉68の気密空間領域Tを真空にした状態において(図3(a)参照)、チューブ58の途中をバンド66で気密状に締めた後、このバンド66と真空ポンプ60との間でチューブ58を切断すれば良い(図3(b)参照)。また、図示しない真空装置によって気密空間領域Tが予め真空に引かれた開閉扉68を用意しても良い。
【0051】また、開閉扉68を締めた状態において、外部空気がプローブ顕微鏡ユニット周囲及び雰囲気に流入するのを防止するために、開閉扉68とこの開閉扉68に隣接する各カバーユニット64との間には、シールド部材70を設けることが好ましい。
【0052】また、開閉扉68の開閉機構としては、例えばヒンジ72を用いることが可能である。この第1の変形例によれば、開閉扉68の開閉動作に関係無く、常に、プローブ顕微鏡ユニット全体を覆っている各々のカバーユニット64の気密空間領域Tを低圧に保持することができるため、開閉扉68の開閉毎に各々のカバーユニット64を真空に引く必要が無くなる。この結果、個々の試料に対するSPM測定準備時間を短くすることができる。更に、各々のカバーユニット64が箱構造となるため、カバーユニット64全体の剛性が上がり、外部振動に対して強固なシールド機構を実現することができる。
【0053】なお、その他の作用効果は、上述した一実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。また、例えば図2(b)には、第2の変形例に適用したシールド機構の構成が示されており、このシールド機構は、プローブ顕微鏡ユニット全体を覆うように延出した1つのカバーユニット64´から構成されている。なお、プローブ顕微鏡ユニットの構成は、図1と同一であるため、図2(b)中では省略する。
【0054】このカバーユニット64´は、上記第1の変形例に適用した複数のカバーユニット64を一体化した形状を成しており、その内部には、1つの気密空間領域Tが形成されている。また、このカバーユニット64´には、第1の変形例に適用した開閉扉68が気密状に開閉自在に取り付けられている。
【0055】また、図3(a)に示すように、カバーユニット64´は、第1の変形例と同様に、チューブ58を介して真空ポンプ60が連通接続させることができるようになっており、カバーユニット64´とチューブ58との間には、チューブ接続用シール材62が設けられている。
【0056】この第2の変形例によれば、真空ポンプ60によってカバーユニット64´の気密空間領域Tを真空(外気よりも低圧)にした状態において、図3(b)に示すように、チューブ58の途中をバンド66で気密状に締めた後、このバンド66と真空ポンプ60との間でチューブ58を切断すれば、カバーユニット64´の気密空間領域Tを半永久的に真空状態に維持させることができる。
【0057】そして、このように真空に引かれた気密空間領域Tを有するカバーユニット64´を図2(b)のように配置すれば、遮音性及び断熱性に優れたシールド機構によってプローブ顕微鏡ユニット全体を覆うことができる。
【0058】なお、この第2の変形例の作用効果は、第1の変形例と同様であるため、その説明は省略する。また、例えば図4には、第3の変形例に適用したシールド機構の構成が示されている。このシールド機構は、上述した一実施の形態に適用した外カバー44及び内カバー46に加えて、内カバー46の内側に配置され且つプローブ顕微鏡ユニット全体を覆うように定盤38上に取付可能な最内カバー74を備えている。なお、プローブ顕微鏡ユニットの構成は、図1と同一であるため、図4中では省略する。
【0059】最内カバー74は、シール材48を介して定盤38上に取り付けられており、最内カバー74と内カバー46との間には、外界からの空気が流入しない気密空間領域Tが形成されている。
【0060】最内カバー74は、外カバー44及び内カバー46と同様に、面密度の高い材質(例えば、鉄やステンレス等の金属)で形成することが好ましい。また、最内カバー74には、プローブ顕微鏡ユニットのメンテナンス(例えば、カンチレバーの取換など)や試料24の交換等のために、最内扉76が開閉自在に取り付けられており、最内扉76と最内カバー74との間には、最内扉用シール材78が設けられている。
【0061】最内カバー74と内カバー46との間の形成された気密空間領域Tには、内カバー44に取り付けられたチューブ58を介して真空ポンプ60が連通接続されており、内カバー44とチューブ58との間には、チューブ接続用シール材80が設けられている。
【0062】このような構成によれば、外扉50及び内扉52並びに最内扉76を閉めた状態において、真空ポンプ60によって2つの気密空間領域Tを真空(外気よりも低圧)にした後には、外扉50と外カバー44との間及び内扉52と内カバー46との間並びに外カバー44とチューブ58との間、最内扉76と最内カバー74との間及び内カバー46とチューブ58との間を介して外部空気が2つの気密空間領域Tに流入するのを防止することができる。
【0063】なお、その他の構成は、上述した一実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。この第3の変形例によれば、遮音性を有するカバー44,46,74の数を増やして、低圧の気密空間領域Tを2重(即ち、上述した一実施の形態に比べて2倍)にしたことによって、シールド機構の遮音性及び断熱性を2倍に向上させることが可能となる。
【0064】また、上述した変形例では、気密空間領域Tを2重にしたが、これに限定されることは無く、3重、4重及びそれ以上に増やすことが可能であり、気密空間領域Tを増やすことによって、シールド機構の遮音性及び断熱性を更に向上させることができる。
【0065】また、このような遮音性及び断熱性の向上は、例えば図2(a),(b)に示されたカバーユニット64,64´を複数層に重ねることによっても実現することができる。
【0066】なお、その他の作用効果は、上述した一実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。また、例えば図5には、第4の変形例に適用した除振機構の構成が示されている。上述した実施の形態及び第1〜第3の変形例では、気密空間領域Tを介してプローブ顕微鏡ユニットに伝搬される外部振動を除去する点に着目した実施の形態を記載した。しかしながら、外部振動は、外カバー44及び内カバー46を少なからず振動させるため、シール材48を介して定盤38を振動させる可能性がある。従って、定盤38の振動は、即ち、外部振動であり、プローブ顕微鏡ユニットに影響を与える。
【0067】そこで、図5に示された除振機構には、プローブ顕微鏡ユニットを載置可能な第2の定盤90と、この第2の定盤90を定盤38上に支持すると共にプローブ顕微鏡ユニットに定盤38からの外部振動が伝わるのを除去する第2の除振台92とを更に備えている。この第2の除振台92としては、例えば、エアスプリング、ゴム(樹脂)、機械的バネに代表されるような弾性体(弾性部材、弾性機構など)を用いることが効果的である。
【0068】なお、他の構成は、上述した一実施の形態(図1参照)と同様であるため、その説明は省略する。このような構成によれば、気密空間領域Tを介してプローブ顕微鏡ユニットに伝搬される外部振動及び定盤38からの外部振動を除去することができるため、より効果的に外部振動が除去され、外界からの影響を受け難い高分解能な測定を行うことが可能な走査型プローブ顕微鏡を実現することができる。
【0069】
【発明の効果】本発明によれば、外界からの影響を受けること無く、高分解能な測定を行うことが可能な走査型プローブ顕微鏡を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス光学工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
【公開番号】 特開平11−271335
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−74512