| 【発明の名称】 |
カンチレバーホルダ |
| 【発明者】 |
【氏名】八木 明
|
| 【要約】 |
【課題】圧電体に対する防水性及び絶縁性に優れ且つ耐久性に富むカンチレバーホルダを提供する。
【解決手段】カンチレバー12を支持可能であると共に、外界から遮断して圧電体6を収容可能な単一素材から成るホルダ本体26を備える。ホルダ本体には、その内部に圧電体を収容可能な中空収容部28が形成されており、この中空収容部は、底部28bから上部開口28aに向かうに従って、その開口径が徐々に拡大している。また、ホルダ本体の上部開口近傍には、中空収容部に収容された圧電体に電圧を印加するための導通ケーブル18を中空収容部内に引込可能であると共に、導通ケーブルを一定位置に固定可能な引込固定用穴部30を備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カンチレバーを支持可能であると共に、このカンチレバーを励振させる励振素子を外界から遮断して収容可能な単一素材から成るホルダ本体を備えていることを特徴とするカンチレバーホルダ。 【請求項2】 前記ホルダ本体には、その内部に前記励振素子を収容可能な中空収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカンチレバーホルダ。 【請求項3】 前記ホルダ本体には、前記中空収容部に収容された前記励振素子に電圧を印加するための導通ケーブルを一定位置に固定させることが可能な電圧印加機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカンチレバーホルダ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば原子オーダーの分解能で試料の表面情報を測定するための走査型プローブ顕微鏡に用いられるカンチレバーホルダに関する。 【0002】 【従来の技術】従来、走査型プローブ顕微鏡の測定方法としては、所定の共振周波数でカンチレバーを励振させた状態において、例えば振動中心と試料表面との間の距離を一定に維持しながら、探針を試料に沿って走査することによって、試料の表面情報を測定するダイナミックモード測定法が知られている。 【0003】このような測定法を実現するために、例えば特開平7−159422号公報には、図4に示すように、シム2に支持されたカンチレバーチップ4と、シム2に固定された圧電体6とを備えた走査型プローブ顕微鏡が開示されている。なお、シム2は、ホルダ8を介して図示しない顕微鏡本体に保持されており、これらシム2及びホルダ8によって一種のカンチレバーホルダが構成されている。また、カンチレバーチップ4は、先端に探針10を有するカンチレバー12と、このカンチレバー12の基端を支持する支持部14とから構成されている。 【0004】このような構成によれば、励振信号発生器16から導通ケーブル18を介して圧電体6に励振信号を印加して、圧電体6を励振させた際、この圧電体6の励振運動がシム2を介してカンチレバー12に伝達されることによって、カンチレバー12を所定の周波数で振動させることができるようになっている。 【0005】そして、実際のダイナミックモード測定において、探針10と試料(図示しない)とを相対的に移動させるスキャナ(図示しない)によって、探針10を試料に対向して近接させると、探針10先端と試料表面との間に相互作用(斥力、引力、原子間力、磁気力、粘性など)が働いて、カンチレバー12の先端が変位する。このとき、カンチレバー12の先端に生じる変位を電気的或いは光学的に検出しながら、探針10を試料表面に沿って相対的に走査することによって、試料の表面情報(例えば、凹凸情報)が三次元的に測定される。 【0006】このような測定に際し、試料と探針10が空気中に在る場合、試料表面に存在する水分等の吸着層によって、探針10先端と試料表面との間の相互作用力が大きく変化して、カンチレバー12の変位を精度良く測定することが困難になってしまう場合がある。 【0007】そこで、例えば特開平7−174767号公報には、図5に示すように、カンチレバーチップ4を容器20内の液体22中に水没させることによって、試料表面に存在する吸着層の影響を取り除いて、探針10と試料との間に働く微弱な相互作用を精度良く検出する方法が提案されている。なお、このような方法は、培養液(図示しない)中の生体試料を直接測定する場合にも適用される。 【0008】ところで、他の部材を振動させて不要な振動を発生させること無く、カンチレバー12を効率良く振動させるために、圧電体6は、可能な限りカンチレバー12の近傍に配置させることが好ましい。 【0009】この場合、カンチレバーチップ4を容器20内の液体22中に水没させる方法を適用した場合、カンチレバー12の近傍に配置された圧電体6も水没してしまう場合がある。 【0010】圧電体6には、その表面に金属製の電極(図示しない)が設けられており、湿気に弱く、水中に電流が漏れて圧電体6を励振させるに充分な電圧(即ち、励振信号)を印加できなくなる場合がある。また、例えば生理食塩水のような液体22の場合には、電極の腐食や電触に起因した劣化が極端に早くなり、圧電体6の寿命を短くしてしまう。そこで、圧電体6に対する防水及び絶縁処理として、例えばエポキシやシリコン樹脂等の防水性及び絶縁性樹脂24によって圧電体6を被覆している。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の防水及び絶縁処理では、防水性及び絶縁性樹脂24が液体22中に剥き出しの状態になるため、例えば導通ケーブル18に引張力やストレスがかかって、防水性及び絶縁性樹脂24に亀裂が入った場合、圧電体6と液体22との間の防水及び絶縁状態が保持できなくなる場合がある。 【0012】また、従来のカンチレバーホルダは、材質の異なるシム2及びホルダ8によって構成されているため、図5に示すように、これら材質の異なるシム2及びホルダ8が液体22中で混在する場合、素材間のイオン化傾向の差によって誘起される腐食即ち電触反応が促進して、シム2及びホルダ8の劣化が早まるため、カンチレバーホルダの耐久性を向上させることが困難になってしまう場合がある。 【0013】本発明は、このような問題点を解決するために成されており、その目的は、圧電体に対する防水性及び絶縁性に優れ且つ耐久性に富むカンチレバーホルダを提供することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明のカンチレバーホルダは、カンチレバーを支持可能であると共に、このカンチレバーを励振させる励振素子を外界から遮断して収容可能な単一素材から成るホルダ本体を備えている。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態に係るカンチレバーホルダについて、図1を参照して説明する。なお、本実施の形態の説明に際し、上述した従来のカンチレバーホルダ(図4及び図5参照)と同一の構成には、同一符号を付して、その説明を省略する。 【0016】本実施の形態のカンチレバーホルダが用いられる走査型プローブ顕微鏡には、所定の共振周波数でカンチレバー12を励振させた状態において、例えばカンチレバー12の振動中心と試料表面との間の距離を一定に維持しながら、探針(特に図示しないが、図4の符号10で示す探針参照)を試料に沿って走査することによって、試料の表面情報を測定するダイナミックモード測定法が適用されており、この測定方法によって、例えば生理食塩水等の液体中に培養された生体試料の表面情報を精度良く測定することができるように構成されている。 【0017】このような走査型プローブ顕微鏡は、固定した試料に対して探針を所定方向に移動させることによって、試料の表面情報を測定する探針走査型と、固定した探針に対して試料を所定方向に移動させることによって、試料の表面情報を測定する試料走査型とに大別されるが、いずれにも本実施の形態のカンチレバーホルダを適用することができる。 【0018】この場合、探針走査型の走査型プローブ顕微鏡は、図示しないスキャナ(例えば、チューブ型圧電体スキャナ)の可動部にカンチレバーホルダが取り付けられており、スキャナに印加する電圧を制御することによって、探針を試料に沿って所定方向に所定量だけ移動させることができる。一方、試料走査型の走査型プローブ顕微鏡は、スキャナの可動部に試料を載置することができるようになっており、スキャナに印加する電圧を制御することによって、試料を探針に対して所定方向に移動させることができる。 【0019】また、圧電体6に対する防水性及び絶縁性と電触反応に対する素材の耐久性とを同時に向上させるために、本実施の形態のカンチレバーホルダは、カンチレバー12を支持可能であると共に、このカンチレバー12を励振させる励振素子例えば圧電体6を外界から遮断して収容可能な単一素材から成るホルダ本体26を備えている。 【0020】ホルダ本体26には、その内部に圧電体6を収容可能な中空収容部28が形成されており、この中空収容部28の上部開口28aから圧電体6を挿入することによって、カンチレバー12の近傍部分(好ましくは、経験や実測又は計算によって設定したカンチレバー12を最も効率的に振動させることが可能な部分)に圧電体6を位置決めすることができるようになっている。 【0021】なお、ホルダ本体26は、例えばロストワックス法やロストコア法等によって形成することが可能であり、本実施の形態では、その一例として、底部28bから上部開口28aに向かうに従って、その開口径が徐々に(連続的に)拡大した中空収容部28が形成されている。 【0022】また、ホルダ本体26には、中空収容部28に収容された圧電体6に電圧を印加するための導通ケーブル18を一定位置に固定させることが可能な電圧印加機構が設けられている。 【0023】本実施の形態に適用した電圧印加機構は、その一例として、ホルダ本体26の上部開口28a近傍に、圧電体6に電圧(即ち、励振信号)を印加するための導通ケーブル18を中空収容部28内に引込可能であると共に、導通ケーブル18を一定位置に固定可能な引込固定用穴部30を備えている。 【0024】引込固定用穴部30を上部開口28a近傍に配置することによって、カンチレバーチップ4を液体中に水没させた状態で測定を行う場合でも、この引込固定用穴部30を介して液体が中空収容部28内に流れ込むことは無い。 【0025】また、引込固定用穴部30に耐水性部材(例えば、樹脂など)を充填して、漏水を防止することも好ましい。このような構成において、導通ケーブル18を介して圧電体6に励振信号を印加して、圧電体6を励振させた際、この圧電体6の励振運動がホルダ本体26を介してカンチレバー12に伝達されることによって、カンチレバー12を所定の周波数で振動させることができる。 【0026】本実施の形態によれば、カンチレバーチップ4及びホルダ本体26以外の部材を液体に対して非接触状態に維持することができるため、圧電体6及び導通ケーブル18の腐食による劣化を防止することが可能となる。この結果、圧電体6及び導通ケーブル18の寿命を長くすることができる。 【0027】また、ホルダ本体26を単一素材から構成したことによって、電触反応に対するカンチレバーホルダの耐久性を向上させることができる。更に、導通ケーブル18を引込固定用穴部30で固定したことによって、導通ケーブル18に引張力やストレスがかかった場合でも、導通ケーブル18と圧電体6との接合部が、屈曲疲労することは無い。 【0028】なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることは無く、以下のように変更することが可能である。例えば図2に示すように、電圧印加機構は、導通ケーブル18の先端に接続された第1のコネクタ32と、この第1のコネクタ32を着脱可能に構成されていると共に、中空収容部28の上部開口28a近傍に固定され且つ導線18´を介して圧電体6に接続された第2のコネクタ34とを備えて構成しても良い。 【0029】この第1の変形例によれば、走査型プローブ顕微鏡本体(図示しない)に対するホルダ本体26の取付処理と同時に、導通ケーブル18に対する圧電体6の電気的接続処理を行うことができる。このため、装置の組立効率を向上させることが可能となる。更に、第1の変形例によれば、第2のコネクタ34と圧電体6との間の位置関係は、常時一定に維持されるため、導通ケーブル18に引張力やストレスがかかった場合でも、導線18´と圧電体6との接合部が屈曲疲労することは無い。 【0030】また、例えば図3に示すように、圧電体6が取り付けられた領域の中空収容部28の開口径よりも上部開口28aの開口径が小さくなるように、ホルダ本体26の厚みを部分的に変化させても良い。 【0031】この第2の変形例では、その一例として、圧電体6が取り付けられた面S1に対向した面S2の厚みを変化させることによって、上部開口28a側の中空収容部28の開口径を絞っている。 【0032】このように第2の変形例によれば、ホルダ本体26の厚みを部分的に変化させたこと(具体的には、厚くしたこと)によって、ホルダ本体26の機械的剛性を向上させることができる。 【0033】また、上述した実施の形態並びに第1及び第2の変形例において、ホルダ本体26は、気密性及び液密性に優れた素材であれば任意に選択することが可能であるが、例えば金属材料でホルダ本体26を形成した場合、その表面に例えばガラスや樹脂等をコーティングすることが防水効果及び腐食防止効果を高める上で有効である。 【0034】また、上述した実施の形態並びに第1及び第2の変形例では、液体中の試料の表面情報を測定する場合を想定して説明したが、化学反応によって腐食が起きる環境や導電性の雰囲気中でも、圧電体6及び導通ケーブル18に対する腐食防止効果及び絶縁効果並びにカンチレバーホルダの耐久性の向上を実現することが可能である。 【0035】 【発明の効果】本発明によれば、圧電体に対する防水性及び絶縁性に優れ且つ耐久性に富むカンチレバーホルダを提供することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000376 【氏名又は名称】オリンパス光学工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年(1998)3月23日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
|
| 【公開番号】 |
特開平11−271334 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)10月8日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−73927 |
|