| 【発明の名称】 |
走査型プローブ顕微鏡のスキャナシステム |
| 【発明者】 |
【氏名】久田 菜穂子
|
| 【要約】 |
【課題】微小な領域の測定に対しても測定データを正確なXY位置に関連づけて取得できる簡単な構成のスキャナシステムを提供する。
【解決手段】サンプル3は、XYZ方向に変位し得るチューブスキャナ1上に保持される。チューブスキャナ1は、探針変位検出手段5の出力が一定になるように、Z駆動部6によりZ方向にフィードバック制御されながら、XY走査制御部2によりXY方向に走査される。チューブスキャナ1にはミラー7と8が取付けられており、これらの動きはそれぞれレーザ測長器9と10によって監視される。レーザ測長器9と10の出力パルスはUP/DOWNカウンタ101と102に入力され、1/n回路103と104でn分の1にされ、アドレスとしてフレームメモリ107に供給される。また、アドレス生成と同時に、Z駆動信号が測定データとしてフレームメモリ107に格納される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走査型プローブ顕微鏡に用いられるスキャナシステムであり、試料またはプローブをXY方向に移動し得るスキャナと、スキャナのXおよびY方向の変位を検出する第1および第2の測長器と、第1および第2の測長器で得られるスキャナのXおよびY方向の変位をn分の1にしたデジタル値からなるアドレスを生成するアドレス生成部と、アドレス生成部で生成されたアドレスに画像データを格納する画像データ用記憶素子とを有している走査型プローブ顕微鏡のスキャナシステム。 【請求項2】 請求項1において、測定前に予め既知データが格納され、アドレス生成部で生成されたアドレスに別の既知データが格納される、画像データ用記憶素子中の各アドレスの画像データの有無の判定に用いられる判定用記憶素子と、判定用記憶素子に格納されたデータに基づいて、画像データ用記憶素子中の画像データの格納されていないアドレスを求め、そのアドレスの周辺のアドレスに格納されている画像データから補間データを求め、これを画像データ用記憶素子中の画像データの格納されていないアドレスに格納する補間データ生成部とを更に有している、走査型プローブ顕微鏡のスキャナシステム。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、微小領域を観察する走査型プローブ顕微鏡等に用いられるスキャナシステムに関する。 【0002】 【従来の技術】走査型プローブ顕微鏡は、試料表面の微細形状を原子レベルで観察できる装置で、走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などがあり、各種研究に使用されている。 【0003】AFMは、特開昭62−130302号等に記載されている通り、探針の頂点にある原子と試料表面にある原子との間に働く原子間力を利用して試料の表面形状を測定する装置である。探針を試料の表面に近づけると、引力域と斥力域のあるLennard-Jones ポテンシャルで表される原子間力(斥力、ファンデルワールスカ、共有結合力等)と呼ばれる微小な力が生じる。AFMでは、探針を柔軟なカンチレバーの自由端で支持し、探針と試料間に働く原子間力をカンチレバー(てこ)のたわみ量(探針の変位量)として検出し、たわみ量すなわち力が一定になるように探針と試料の位置関係を制御しながら探針を走査したときの制御電圧を計測することにより、試料の表面形状および相互作用(原子間力や接触力や磁気力など)の分布像を原子レベルの分解能で測定している。このため、AFMは、STMと異なり、試料の導電性と無関係に測定できる。 【0004】工業系市場において、測定装置には常に微小領域の高分解能化が望まれている。このため、走査型プローブ顕微鏡では、走査機構には、高分解能で位置制御できる圧電体スキャナ、特に圧電体チューブスキャナが用いられることが多い。 【0005】走査型プローブ顕微鏡は、例えば、圧電体スキャナを用いて、探針または試料を移動させてXY走査を行いながら、探針または試料をZ方向に移動させて、探針を支持しているカンチレバーの変位を一定に保つ制御を行う。 【0006】初期の走査型プローブ顕微鏡では、XY走査を行うために圧電体スキャナに供給するXY駆動信号が一定量変化するタイミングをサンプリングパルスとし、カンチレバーの変位を一定に保つ制御のために圧電体スキャナに供給するZ駆動信号を試料表面の高さ情報としていた。 【0007】しかし、圧電体スキャナは、その変位特性にヒステリシスを持つため、またクリープ現象を示すため、一方向(例えばX方向)に直線的に圧電体スキャナを走査したつもりでも、実際は歪んだ方向に走査している。従って、圧電体スキャナの駆動信号を画像データとして形成した画像は、ヒステリシスとクリープによる歪みを含んだものとなってしまう。 【0008】このため、最近の走査型プローブ顕微鏡は、通常、圧電体スキャナのXY方向の変位を検出する変位センサを備えており、変位センサで検出されるXY変位情報に従って圧電体スキャナにサーボをかけたうえでXY駆動信号間隔でサンプリングを行っている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】この手法は、10〜100μm程度の比較的大きな領域に対しては有効であるが、10〜100nm程度の微小な領域に対しては、変位センサの分解能の粗さやサーボによるハンチング等による影響が大きく、一定のXY駆動信号間隔でサンプリングした測定データに対応する位置が必ずしも一定の距離間隔にならないため、高分解能な画像を得ることが難しい。 【0010】特開平8−248041号は、圧電体スキャナのXY方向の変位をダイナミックレンジの広いレーザ測長器で測長し、測長パルスから直接サンプリングパルスを生成する手法を提案している。これによれば、X方向に走査する間、正確に一定距離間隔でサンプリングされるが、1ラインのX走査中にY方向に動いてはならないため、Y方向に関してサーボをかけるなどの対策が必要である。 【0011】また、同出願人は、特開平8−201403号において、通常よく使用されている分解能の粗いXY変位センサの出力を基に、圧電体スキャナを一方向(例えばX方向)に直線的に駆動させるための駆動信号テーブルを予め作成しておき、実際に画像化する時に駆動信号がテーブルと等しくなる毎に、即ち、圧電体スキャナが一定距離移動する毎に、サンプリングを行う手法を提案している。この手法では、XY方向共にサーボをかけなくてもよく、歪みのない画像が得られ非常に有効である。 【0012】しかし、予め作成したテーブルに基づいてサンプリングを行うのであるから、圧電体スキャナがクリープ現象を呈することを考慮すると、特に微小な領域の測定において、測定データが正確に一定の距離間隔でサンプリングされているとはいえない。 【0013】本発明は、この様な現状に鑑みて成されたものであり、その目的は、簡単な構成でありながら微小な領域な測定に対しても測定データを正確なXY位置に関連づけて取得できる走査型プローブ顕微鏡のスキャナシステムを提供することである。 【0014】 【課題を解決するための手段】本発明は、走査型プローブ顕微鏡に用いられるスキャナシステムであり、試料またはプローブをXY方向に移動し得るスキャナと、スキャナのXおよびY方向の変位を検出する第1および第2の測長器と、第1および第2の測長器で得られるスキャナのXおよびY方向の変位をn分の1にしたデジタル値からなるアドレスを生成するアドレス生成部と、アドレス生成部で生成されたアドレスに画像データを格納する画像データ用記憶素子とを有している。 【0015】走査型プローブ顕微鏡のスキャナシステムは、例えば、測定前に予め既知データが格納され、アドレス生成部で生成されたアドレスに別の既知データが格納される、画像データ用記憶素子中の各アドレスの画像データの有無の判定に用いられる判定用記憶素子と、判定用記憶素子に格納されたデータに基づいて、画像データ用記憶素子中の画像データの格納されていないアドレスを求め、そのアドレスの周辺のアドレスに格納されている画像データから補間データを求め、これを画像データ用記憶素子中の画像データの格納されていないアドレスに格納する補間データ生成部とを更に有している。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。まず、第一の実施の形態について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態のスキャナシステムを備えた走査型プローブ顕微鏡を示している。 【0017】図1に示されるように、サンプル3は、XYZ方向に変位し得るチューブスキャナ1上に保持される。チューブスキャナ1は、探針変位検出手段5の出力が一定になるように、Z駆動部6を介してZ方向にフィードバック制御される。この制御により、カンチレバー4の自由端に設けられた探針とサンプル3との間の距離は常に一定に保たれる。また、チューブスキャナ1はXY走査制御部2の出力するXY駆動信号に従ってXY方向に走査を行う。例えば、X方向に1ライン走査し必要なポイント数のデータをサンプリングした後に、Y方向に1ライン分移動し、同様にX方向に1ライン走査する。この動作を試料の走査範囲として指定された箇所全域に対して行う。 【0018】チューブスキャナ1には、X方向を向いたミラー7とY方向を向いたミラー8が取付けられており、ミラー7の動きはレーザ測長器9によって、ミラー8の動きはレーザ測長器10によって監視されている。レーザ測長器9と10は、それぞれミラー7と8の動きに追従したUPパルス・DOWNパルスを出力する。画像データ生成部100は、この信号を使用して画像データをメモリに蓄積する。 【0019】レーザ測長器9から出力されるX−UPパルスとX−DOWNパルスはUP/DOWNカウンタ101に入力され、さらに1/n回路103でCPU11から設定された数nで割った数値となる。同様に、レーザ測長器10から出力されるY−UPパルスとY−DOWNパルスはUP/DOWNカウンタ102に入力され、さらに1/n回路104でCPU11から設定された数nで割った数値となる。 【0020】例えば、レーザ測長器9と10の1パルスが0.1nmで、XY方向に250nmの領域を1000画素×1000ラインで画像化する場合、CPUはn=2.5を設定する。従って、1/n回路103と1/n回路104の出力は1つの画素を意味する。 【0021】1/n回路103と1/n回路104の出力はバッファ105を介してフレームメモリ107に供給され、フレームメモリ107のアドレスとなり、これは常にチューブスキャナ1の正確なXY位置に対応する。また、アドレス生成と同時に、Z駆動信号が測定データとしてバッファ108を介してフレームメモリ107に格納される。このようにして測定データを正確なXY位置に関連づけてサンプル3の画像データを得ることができる。 【0022】CPU11は、上述したフレームメモリ107ヘの書き込み動作とは関係なく、バッファ109とバッファ110を介してフレームメモリ107から画像データを読み出し、モニタ(図示せず)に表示する。 【0023】読み出しの時、CPU11はバッファ109とバッファ110に許可信号を送り、この許可信号は論理積回路106にも入力され、フレームメモリ107ヘの書き込み動作は禁止される。 【0024】論理積回路106は、XY走査制御部2の走査中信号に基づき、走査が行われている間、クロック信号CLKのタイミングで、バッファ105とバッファ108に許可信号を出力する。 【0025】データの書き込みは、チューブスキャナ1の動作とは全く関係のない高速なクロック信号CLKのタイミングで行われ、従って、書き込み回数は画素数よりもはるかに多い。つまり、X方向には画素数よりも多くデータのサンプリングが行われ、Y方向には必要なライン数よりも多いライン数で走査される。 【0026】これにより、測定データを正確なXY位置に関連づけて取得でき、従って、正確な歪みのない画像が得られる。次に、第二の実施の形態のスキャナシステムについて図2を用いて説明する。図2は、図1の画像データ生成部100に代わる別の画像データ生成部を示している。 【0027】図2に示されるように、本実施形態による画像データ生成部200は、画像データを格納する第1フレームメモリ107に加えて、第1フレームメモリ107の画像データの有無を判定するための第2フレームメモリ201を備えている。第2フレームメモリ201は第1フレームメモリ107と同等のものが用いられる。 【0028】第2フレームメモリ201には、バッファ203を介して、走査前に予め既知データが書き込まれ、走査中、第1フレームメモリ107のデータの書き込まれたアドレスに対応するアドレスに別の既知データが書き込まれる。 【0029】例えば、走査に先立って、第2フレームメモリ201の全てのメモリセルに“0”が書き込まれ、第1のフレームメモリ107と同じタイミングで“1”が書き込まれる。その結果、走査終了後、画像データが格納されたメモリーセルすなわち画素は“1”となり、画像データが格納されなかったメモリーセルすなわち画素は“0”となる。 【0030】CPU11は、バッファ202を介して第2フレームメモリ201のデータを読み出し、第2フレームメモリ201でデータが“0”のメモリセルに対応する第1フレームメモリ107のメモリセルすなわち画素に対して、第2フレームメモリ201でデータが“1”のメモリセルに対応する第1フレームメモリ107のメモリセルすなわち画素の画像データに基づいて補間データを生成し、この補間データを書き込む。 【0031】つまり、第2フレームメモリ201に格納されたデータに基づいて、画像データの書き込みが行われなかった画素が識別され、この画像データの書き込みが行われなかった画素には、その近辺の書き込みの行われた画素の画像データに基づいて生成された補間データが書き込まれる。 【0032】これにより、例えばY方向に関して画素数よりも少ないライン数で走査しても、必要な領域の画像が得られる。このようにY方向に少ないライン数で走査することによって、測定時間が短縮される。 【0033】以上の二つの実施の形態の説明から分かるように、測定データは、これがサンプリングされたサンプル上のXY位置に対応するフレームメモリのアドレスに格納される。つまり、本発明のスキャナシステムは、チューブスキャナにサーボをかけない簡単な構成でありながら、測定データを正確なXY位置に関連づけて取得できる。従って、これを用いた走査型プローブ顕微鏡は、歪みの少ない高分解能の画像を得ることができる。本発明は上述した実施の形態に何等限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行われるすべての実施を含む。 【0034】 【発明の効果】本発明によれば、微小な領域の測定に対しても測定データを正確なXY位置に関連づけて取得できる簡単な構成のスキャナシステムが提供される。従って、簡単な構成でありながら歪みの少ない高分解能の画像を取得できる走査型プローブ顕微鏡が提供される。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000376 【氏名又は名称】オリンパス光学工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年(1998)3月23日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
|
| 【公開番号】 |
特開平11−271333 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)10月8日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−73926 |
|