トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 ガス濃度センサの温度制御装置
【発明者】 【氏名】山田 裕彦

【氏名】荘田 裕史

【氏名】鈴木 淳志

【要約】 【課題】ワイヤハーネスの温度特性に関係なく、精度の良い温度制御を実施する。

【解決手段】エンジン10の排気管13にはA/Fセンサ30が配設されている。A/Fセンサ30は、排ガス中の酸素濃度を検出するためのセンサ素子部32と、センサ素子部32を加熱するためのヒータ33とを備え、ワイヤハーネスH1,H2を介してECU15に接続されている。ECU15内のCPU20は、ワイヤハーネスH1,H2を介して検出される電圧及び電流値からヒータ33又はセンサ素子部32の抵抗値を測定すると共に、ワイヤハーネスH1,H2の抵抗値を推定する。さらに、CPU20は、前記推定したハーネス抵抗値に基づいて、前記測定したヒータ33又は素子部32の抵抗値を補正すると共に、補正後のヒータ33又は素子部32の抵抗値に基づいてヒータ通電量を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】被検出ガス中の特定成分の濃度を検出するための素子部と、前記素子部を加熱するためのヒータとを備え、ワイヤハーネスを介してセンサ制御回路に接続されるガス濃度センサに適用され、前記ヒータを通電してセンサ温度を制御する温度制御装置において、前記ワイヤハーネスを介して検出される電圧及び電流値から前記ヒータ又は素子部の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、前記ワイヤハーネスの抵抗値を推定するハーネス抵抗値推定手段と、前記推定したハーネス抵抗値に基づいて、前記測定したヒータ又は素子部の抵抗値を補正する抵抗値補正手段と、前記補正後のヒータ又は素子部の抵抗値に基づいて、ヒータ制御量を設定する制御量設定手段とを備えることを特徴とするガス濃度センサの温度制御装置。
【請求項2】前記抵抗値補正手段は、前記ヒータ又は素子部とそれに接続されたワイヤハーネスとを含む全抵抗分から前記推定したハーネス抵抗値を減算し、その減算した値を真のヒータ抵抗値又は素子抵抗値とする請求項1に記載のガス濃度センサの温度制御装置。
【請求項3】その時々のヒータ抵抗値又は素子抵抗値に応じて複数種の温度制御を切り換えて実施するガス濃度センサの温度制御装置において、前記補正後のヒータ又は素子部の抵抗値に基づいて、前記複数種の温度制御を切り換える制御切換手段を備える請求項1又は請求項2に記載のガス濃度センサの温度制御装置。
【請求項4】被検出ガス中の特定成分の濃度を検出するための素子部と、前記素子部を加熱するためのヒータとを備え、ワイヤハーネスを介してセンサ制御回路に接続されるガス濃度センサに適用され、前記ヒータを通電してセンサ温度を制御する温度制御装置において、その時々のヒータ抵抗値又は素子抵抗値に応じて複数種の温度制御を切り換える制御切換手段と、前記ワイヤハーネスの抵抗値を推定するハーネス抵抗値推定手段と、前記推定したハーネス抵抗値に基づいて、温度制御を切り換えるための判定値を可変に設定する判定値設定手段とを備えることを特徴とするガス濃度センサの温度制御装置。
【請求項5】前記判定値設定手段は、ガス濃度センサの活性判定を行うための判定値を可変に設定するものである請求項4に記載のガス濃度センサの温度制御装置。
【請求項6】前記ガス濃度センサは内燃機関の排気管に配設され、排ガス中の特定成分の濃度を検出するものであって、前記ハーネス抵抗値推定手段は、前記内燃機関の吸入空気の温度又は機関温度に応じてハーネス抵抗値を推定する請求項1〜請求項5のいずれかに記載のガス濃度センサの温度制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排ガス中の酸素濃度(空燃比)やNOx濃度など、被検出ガス中の特定成分の濃度を検出するためのガス濃度センサに適用され、当該ガス濃度センサの温度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年では、排ガス法規制の強化に伴い、有害な排ガス成分の放出を抑制すべく各種の空燃比制御装置が具体化されている。例えばジルコニア素子(ZrO2 )等を使った空燃比センサを機関排気管に備える装置では、センサ出力から空燃比(排ガス中の酸素濃度)を把握し、その検出空燃比に基づいて空燃比がフィードバック制御される。かかる場合、ジルコニア素子は所定の高温域で活性し反応するため、センサによる空燃比検出の精度を高めるにはジルコニア素子をヒータで加熱する必要がある。
【0003】そこで従来より、(イ)ヒータ抵抗値とヒータ温度とが所定の関係にあることから、ヒータ抵抗値を測定しそのヒータ抵抗値の測定結果に基づきヒータ温度を所定の温度に制御する、(ロ)ジルコニア素子の抵抗値(素子抵抗値)と同素子の温度とが所定の関係にあることから、素子抵抗値を測定しその素子抵抗値の測定結果に基づき素子温度を所定の温度に制御する、といったセンサの温度制御手法が提案されている。因みに、ヒータ抵抗値は、ヒータにかかる電圧とその際に流れる電流とから測定され、素子抵抗値は、ジルコニア素子にかかる電圧とその際に流れる電流とから測定される。
【0004】上記(イ)の制御手法によれば、ヒータ温度が上昇しすぎてヒータ自身が高温で断線したり、逆にヒータ温度が低すぎてジルコニア素子が活性化しないなどの不具合が解消される。また、上記(ロ)の制御手法によれば、素子温度が上昇しすぎてジルコニア素子の劣化を早めたり、同素子が活性化しないなどの不具合が解消される。
【0005】上記の各温度制御を実施することにより、温度センサにより直接的に温度を測定する場合に比べ、センサが不要となってコストダウンが可能となり、実用的な装置が提供できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一般に、上記(イ)又は(ロ)のような空燃比センサの温度制御は、例えば車両に搭載される電子制御装置により実施される。この場合、電子制御装置は、空燃比センサのヒータ及びジルコニア素子に対してそれぞれ数メートル程度の長さのワイヤハーネスを介して接続される。そのため、エンジンフード内の温度変化に伴いワイヤハーネス自身の温度が変動すると、当該ハーネスの抵抗値が標準値に対して変動し、温度制御に必要なヒータ抵抗や素子抵抗の測定値も不用意に変動してしまう。つまり、ヒータ抵抗値や素子抵抗値の測定時には、ヒータやジルコニア素子自身を抵抗体とすることに加えワイヤハーネスをも抵抗体として、それらを流れる電流を検出して抵抗値が測定される。従って、ヒータ抵抗や素子抵抗の測定値に誤差が生じ、その測定誤差によりヒータ温度や素子温が高すぎたり低すぎたりするという問題を招く。
【0007】図15にはワイヤハーネスの温度特性の一例を示す。同図によれば、ハーネス温度に応じてハーネス抵抗が変動することが分かる。実際には、ハーネス温度が20℃変わると、ハーネス抵抗が約0.1Ω程度変動する。
【0008】また、図16にはワイヤハーネスの温度特性によりヒータ制御温度が受ける影響の度合を示す。なお図16において、縦軸に示す「ヒータ抵抗の測定値」とは、実際にはヒータ抵抗値とハーネス抵抗値とを含むものである。同図によれば、ハーネス温度が変動すると、ヒータ抵抗の測定値が一定でもヒータ温度が一定値に制御されないことが分かる。つまり、例えばハーネス温度が上昇してハーネス抵抗(ヒータ抵抗の測定値)が大きくなると、ヒータ温度が目標値より低くなり、ハーネス温度が低下してハーネス抵抗(ヒータ抵抗の測定値)が小さくなると、ヒータ温度が目標値よりも高くなる。
【0009】本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、ワイヤハーネスの温度特性に関係なく、精度の良い温度制御を実施することができるガス濃度センサの温度制御装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワイヤハーネスを介して検出される電圧及び電流値からヒータ又は素子部の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、ワイヤハーネスの抵抗値を推定するハーネス抵抗値推定手段と、前記推定したハーネス抵抗値に基づいて、前記測定したヒータ又は素子部の抵抗値を補正する抵抗値補正手段と、前記補正後のヒータ又は素子部の抵抗値に基づいて、ヒータ制御量を設定する制御量設定手段とを備える。
【0011】要するに、ガス濃度センサの素子部及びヒータはそれぞれワイヤハーネスを介してセンサ制御回路に接続される。そして、ワイヤハーネスを介して検出される電圧及び電流値によりヒータや素子部の抵抗値が測定される。従来既存の装置では、ワイヤハーネスの雰囲気温度に応じてハーネス抵抗値が不用意に変動した際に、その影響を受けてヒータの通電制御にバラツキ(制御誤差)が生じる。これに対して本発明によれば、ハーネス抵抗値に基づいてヒータ又は素子部の抵抗値が補正され、補正後のヒータ又は素子部の抵抗値によりヒータ制御が実施される。これにより、ハーネス抵抗値が不用意に変動しても、ヒータ又は素子部の正確な抵抗値が把握でき、制御誤差が解消される。その結果、ワイヤハーネスの温度特性に関係なく、精度の良い温度制御を実施することができる。
【0012】上記の通りヒータ又は素子部の正確な抵抗値を把握するには、請求項2に記載したように、ヒータ又は素子部とそれに接続されたワイヤハーネスとを含む全抵抗分から前記推定したハーネス抵抗値を減算し、その減算した値を真のヒータ抵抗値又は素子抵抗値とするとよい(抵抗値補正手段)。
【0013】また、請求項3に記載の発明では、その時々のヒータ抵抗値又は素子抵抗値に応じて複数種の温度制御を切り換えて実施するガス濃度センサの温度制御装置において、前記補正後のヒータ又は素子部の抵抗値に基づいて、前記複数種の温度制御を切り換える(制御切換手段)。例えばヒータを通電し続ける第1の制御と、ヒータ通電をデューティ制御する第2の制御とを切り換えて実施する場合に、前記補正後のヒータ又は素子部の抵抗値に基づいて第1及び第2の制御を切り換える。この場合、温度制御の切り換えが適切なタイミングで実施できるようになり、ヒータ通電量の過不足が抑制できる。
【0014】請求項4に記載の発明では、その時々のヒータ抵抗値又は素子抵抗値に応じて複数種の温度制御を切り換える制御切換手段と、ワイヤハーネスの抵抗値を推定するハーネス抵抗値推定手段と、前記推定したハーネス抵抗値に基づいて、温度制御を切り換えるための判定値を可変に設定する判定値設定手段とを備える。請求項4の構成によれば、ハーネス抵抗値に基づき温度制御を切り換えるための判定値を可変に設定することで、請求項3の発明と同様に、温度制御の切り換えが適切なタイミングで実施できるようになり、ヒータ通電量の過不足が抑制できる。
【0015】かかる場合、請求項5に記載したように、ガス濃度センサの活性判定を行うための判定値を可変に設定すれば、適切な活性判定とその活性度合に応じた適切なヒータ制御とが実施できる。
【0016】請求項6に記載の発明では、ハーネス抵抗値推定手段は、内燃機関の吸入空気の温度又は機関温度に応じてハーネス抵抗値を推定する。つまり、吸入空気の温度や機関温度(冷却水温)が変化すると、それに追従してハーネス温度が変動する。従って、上記の通りハーネス温度を推定することで、正確且つ簡易的にハーネス温度が認識できる。
【0017】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、この発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、自動車に搭載されるガソリン噴射式内燃機関の燃料噴射量を最適に制御するための空燃比制御システムに具体化したものであって、空燃比制御を司る電子制御装置(以下、ECUという)により空燃比が所望の値に制御される。以下の記載では、ガス濃度センサとしての限界電流式空燃比センサ(A/Fセンサ)について、同センサに内蔵されたヒータを通電してセンサ温度を制御する手順を詳細に説明すると共に、その温度制御を実現するための具体的構成について説明する。
【0018】図1は、本実施の形態における空燃比制御システムの概要を示す全体構成図である。図1において、エンジン10は多気筒4サイクル内燃機関として構成されている。吸気管11には、エンジン10の各気筒に対して燃料を噴射供給するためのインジェクタ12が配設されている。また、排気管13には、排ガス中の酸素濃度(或いは、未燃ガス中の一酸化炭素などの濃度)に比例して広域で且つリニアな空燃比信号を出力する、限界電流式空燃比センサからなるA/Fセンサ30が配設されている。A/Fセンサ30は、固体電解質等を有するセンサ素子部32と、同センサ素子部32を加熱するためのヒータ33とを備えるものであり、その詳細については後述する。さらに、排気管13においてA/Fセンサ30の下流側には、HC,CO,NOxの有害三成分を浄化するための三元触媒14が配設されている。
【0019】ECU15は、インジェクタ12による燃料噴射量を最適に制御するためのエンジン制御用マイコン16を備える。エンジン制御用マイコン16は、回転数センサ17、吸気圧センサ18、水温センサ19など、各種センサからエンジン運転情報を取り込み、これらのセンサ検出結果からエンジン回転数Ne、吸気圧PM、水温Twなどのエンジン運転状態を検知する。
【0020】ECU15内に設けられたCPU20は、所定の制御プログラムに従いヒータ駆動回路25及びバイアス制御回路40を操作し、電圧印加に伴いA/Fセンサ30に流れるセンサ電流を測定する。そして、該測定したセンサ電流から空燃比を検出し、その検出結果(A/F値)をエンジン制御用マイコン16に出力する。また、CPU20は、センサ素子部32が活性状態で維持されるよう、ヒータ駆動回路25を操作し必要に応じてヒータ33を通電する。
【0021】ここで、CPU20から出力されるバイアス指令信号Vrは、D/A変換器21を介してバイアス制御回路40に入力される。また、その時々の空燃比(酸素濃度)に対応するA/Fセンサ30の出力は、バイアス制御回路40内の電流検出回路50にてセンサ電流として検出され、その検出値はA/D変換器23を介してCPU20に入力される。ヒータ電圧及びヒータ電流はヒータ駆動回路25にて検出され、その検出値はA/D変換器24を介してCPU20に入力される。
【0022】A/Fセンサ30のセンサ素子部32は、ワイヤハーネスH2を介してECU15に接続され、同センサ30のヒータ33は、ワイヤハーネスH1を介してECU15接続されている。ワイヤハーネスH1,H2はエンジンフード内に設けられ、それらは共に周知の温度特性(例えば、図15の特性)を有する。
【0023】エンジン制御用マイコン16による空燃比F/B制御については、本案の要旨ではなく且つその制御内容が周知であるため、ここではその詳細な説明を省略するが、簡単に述べると、エンジン制御用マイコン16は、A/Fセンサ30による空燃比の検出結果(電圧信号)やその他、前記各センサの検出結果を取り込み、それらの検出結果に基づいて現代制御或いはPI制御といった制御アルゴリズムに則って空燃比をフィードバック制御する。つまり、その時々の空燃比が目標空燃比に一致するよう、インジェクタ12からエンジン10の各気筒に噴射供給される燃料量を制御する。本実施の形態では、三元触媒14で最も高い浄化率が得られるよう、理論空燃比(ストイキ)を目標値として空燃比をフィードバック制御する。
【0024】図2は、A/Fセンサ30の概略を示す断面図である。図2において、A/Fセンサ30は前記排気管13の内部に向けて突設されており、同センサ30は大別して、カバー31、センサ素子部32及びヒータ33から構成されている。カバー31は断面コ字状をなし、その周壁にはカバー内外を連通する多数の小孔31aが形成されている。センサ素子部32は、空燃比リーン領域における酸素濃度、若しくは空燃比リッチ領域における未燃ガス(CO,HC,H2 等)濃度に対応する限界電流を発生する。
【0025】センサ素子部32の構成について詳述する。センサ素子部32において、断面コップ状に形成された固体電解質層34の外表面には、排ガス側電極層36が固着され、内表面には大気側電極層37が固着されている。また、排ガス側電極層36の外側には、プラズマ溶射法等により拡散抵抗層35が形成されている。固体電解質層34は、ZrO2 、HfO2 、ThO2 、Bi2 O3 等にCaO、MgO、Y2 O3 、Yb2 O3 等を安定剤として固溶させた酸素イオン伝導性酸化物焼結体からなり、拡散抵抗層35は、アルミナ、マグネシャ、ケイ石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質からなる。排ガス側電極層36及び大気側電極層37は共に、白金等の触媒活性の高い貴金属からなりその表面には多孔質の化学メッキ等が施されている。なお、排ガス側電極層36の面積及び厚さは、10〜100mm^2(平方ミリメートル)及び0.5〜2.0μm程度となっており、一方、大気側電極層37の面積及び厚さは、10mm^2(平方ミリメートル)以上及び0.5〜2.0μm程度となっている。
【0026】ヒータ33は大気側電極層37内に収容されており、その発熱エネルギによりセンサ素子部32(大気側電極層37、固体電極質層34、排ガス側電極層36及び拡散抵抗層35)を加熱する。ヒータ33は、センサ素子部32を活性化するのに十分な発熱容量を有している。
【0027】上記構成のA/Fセンサ30において、センサ素子部32は理論空燃比点よりリーン領域では酸素濃度に応じた限界電流を発生する。この場合、酸素濃度に対応する限界電流は、排ガス側電極層36の面積、拡散抵抗層35の厚さ、気孔率及び平均孔径により決定される。また、センサ素子部32は酸素濃度を直線的特性にて検出し得るものであるが、このセンサ素子部32を活性化するのに約600℃以上の高温が必要とされると共に、同センサ素子部32の活性温度範囲が狭いため、エンジン10の排ガスのみによる加熱では素子温を活性領域に制御できない。そのため、本実施の形態では、ヒータ33への供給電力をデューティ制御することにより、センサ素子部32を活性温度域にまで加熱するようにしている。なお、理論空燃比よりもリッチ側の領域では、未燃ガスである一酸化炭素(CO)等の濃度が空燃比に対してほぼリニアに変化し、センサ素子部32はCO等の濃度に応じた限界電流を発生する。
【0028】センサ素子部32の電圧−電流特性(V−I特性)について図3を用いて説明する。図3によれば、A/Fセンサ30の検出A/Fに比例するセンサ素子部32の固体電解質層34への流入電流と、同固体電解質層34への印加電圧とがリニアな特性を有することが分かる。かかる場合、電圧軸Vに平行な直線部分がセンサ素子部32の限界電流を特定する限界電流検出域であって、この限界電流(センサ電流)の増減はA/Fの増減(すなわち、リーン・リッチの度合)に対応している。つまり、A/Fがリーン側になるほど限界電流は増大し、A/Fがリッチ側になるほど限界電流は減少する。
【0029】このV−I特性において電圧軸Vに平行な直線部分(限界電流検出域)よりも小さい電圧域は抵抗支配域となっており、その抵抗支配域における一次直線部分の傾きは、センサ素子部32における固体電解質層34の内部抵抗(以下、これを素子インピーダンスという)により特定される。この素子インピーダンスは温度変化に伴い変化し、センサ素子部32の温度が低下すると素子インピーダンスの増大により上記傾きが小さくなる。
【0030】図4は、A/Fセンサ30のヒータ33を通電するための電気的構成を示す回路図である。同図において、ヒータ33の一端はバッテリ電源+Bに接続され、他端はワイヤハーネスH1を介してECU15に接続されている。ECU15内のヒータ駆動回路25は、電流検出抵抗25aとスイッチング素子を構成するトランジスタ25bとを有する。トランジスタ25bはCPU20によりON/OFF操作され、トランジスタ25bがONされることによりヒータ33に電流Ihが流れる。電流検出抵抗25aの両端の電圧はそれぞれ、V1,V2として検出され、その検出結果はA/D変換器24を介してCPU20に入力される。なお、電流検出抵抗25aは既知の抵抗値「Rc」を有する抵抗体として構成されている。
【0031】次に、本実施の形態の作用を説明する。本実施の形態では、A/Fセンサ30の温度制御を適正に実施することを要旨としており、ここでは、ヒータ抵抗値Rhをパラメータとして温度制御を実施する。
【0032】図5はヒータ制御ルーチンを示すフローチャートであり、同ルーチンはCPU20により所定間隔(例えば、128msec周期)のタイマ割り込みにて起動される。
【0033】さて、図5のルーチンがスタートすると、CPU20は、先ずステップ101で前記図4のトランジスタ25bがONしている時のVB(電源電圧),V1,V2の各電圧のA/D変換値を取り込む。また、CPU20は、続くステップ102でヒータ33とワイヤハーネスH1との抵抗分を全て含む抵抗値(以下便宜上、全抵抗値Rt1という)を算出する。ここで、全抵抗値Rt1は、前記図4のバッテリ電源+Bからヒータ33及びワイヤハーネスH1を経てECU15に至るまでの全ての抵抗分に相当する。具体的には、Ih=(V1−V2)/Rcとしてヒータ電流Ihを求め、さらに、Rt1=(VB−V1)/Ihとして全抵抗値Rt1を求める。
【0034】また、CPU20は、ステップ103でワイヤハーネスH1の抵抗値(ハーネス抵抗値Rd1)を次の式(1)から推定する。
Rd1=R0 {1+α0 (Th−Th0 )} …(1)
式(1)において、Thはハーネス温度、Th0 はハーネスの標準温度(例えば、20℃)、R0 は標準温度でのハーネス抵抗値、α0 は係数である。ハーネス温度Thは、例えば図6の関係に従い推定される。図6では、水温Twに応じてハーネス温度Thが求められるようになっており、水温Twが高いほどハーネス温度Thが高い値として求められる。
【0035】さらに、CPU20は、ステップ104で全抵抗値Rt1からハーネス抵抗値Rd1を減算し、その差分を真のヒータ抵抗値Rhとする(Rh=Rt1−Rd1)。
【0036】その後、CPU20は、ステップ105でヒータ抵抗値Rhがセンサ素子部32の半活性状態を判定するための所定の判定値(本実施の形態では、1.9Ω程度)以上であるか否かを判別する。例えばエンジン10の低温始動時等においてはRh<1.9Ωとなり、CPU20はステップ106に進んでヒータ33の「100%通電制御」を実施する。この100%通電制御は、ヒータ33へのデューティ比制御信号を100%に維持する制御であり、ヒータ抵抗値Rhが1.9Ω以上になりステップ105が肯定判別されるまで継続して実施される。
【0037】ヒータ33の通電に伴いRh≧1.9Ωになると、CPU20はステップ107に進み、ヒータ抵抗値Rhがフィードバック(F/B)制御を開始するための所定の判定値(本実施の形態では、2.2Ω程度)以上であるか否かを判別する。ステップ107の判定値は、センサ素子部32が略活性状態に達したとみなされる値である。
【0038】ステップ107が否定判別されると、CPU20はステップ108に進み、「電力制御」によりヒータ33の通電を制御する。つまり、未だF/B制御が実施される状態でないとみなし、通電量をオープン制御する。このとき、図7のマップに示すように、前記ステップ104で算出したヒータ抵抗値Rhに応じて電力指令値が決定され、その電力指令値に応じた制御デューティ比によりヒータ33が通電される。
【0039】一方、ステップ107が肯定判別されると、CPU20はステップ109に進み、前記ステップ104で算出したヒータ抵抗値Rhをヒータ温Thに換算する。このとき、例えば図8の関係を用いてヒータ温Thを算出する。
【0040】その後、CPU20は、ステップ110で「ヒータ温F/B制御」を実施する。このヒータ温F/B制御では、その時々のエンジン運転状態に応じた目標ヒータ温Thtgと前記算出したヒータ温Thとの偏差に応じてヒータ33の通電がデューティ制御される。目標ヒータ温Thtgは例えば図9の関係に従い設定され、高回転・高負荷域ほど、高い目標ヒータ温Thtgが設定される。
【0041】本実施の形態では、ヒータ温F/B制御の一例としてPID制御手順を用いる。つまり、次の式(2)〜(4)により比例項GP,積分項GI,微分項GDを算出する。
【0042】
GP=KP・(Th−Thtg) …(2)
GI=GIi-1 +KI・(Th−Thtg) …(3)
GD=KD・(Th−Thi-1 ) …(4)
上式において、「KP」は比例定数、「KI」は積分定数、「KD」は積分定数を表し、添字「i−1」は前回処理時の値を表す。
【0043】そして、上記比例項GP,積分項GI,微分項GDを加算してヒータ通電のためのデューティ比Dutyを算出し(Duty=GP+GI+GD)、該算出したデューティ比Dutyによりヒータ33を通電する。
【0044】なお本実施の形態では、前記図5のステップ102が請求項記載の抵抗値測定手段に、同ステップ103がハーネス抵抗値推定手段に、同ステップ104が抵抗値補正手段に、同ステップ108,110が制御量設定手段に、同ステップ105,107が制御切換手段に、それぞれ相当する。
【0045】以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(a)本実施の形態では、ヒータ33とそれに接続されたワイヤハーネスH1とを含む全抵抗値Rt1を算出すると共に、ハーネス抵抗値Rd1を推定し、全抵抗値Rt1からハーネス抵抗値Rd1を減算して真のヒータ抵抗値Rhを求めた。そして、その真のヒータ抵抗値Rhに基づいて電力制御とヒータ温F/B制御とを実施するようにした。
【0046】従来既存の装置では、ワイヤハーネスの雰囲気温度に応じてハーネス抵抗値が不用意に変動することでヒータの通電制御にバラツキ(制御誤差)が生じたが、本実施の形態の構成によれば、ハーネス抵抗値が不用意に変動してもヒータ33の正確な抵抗値が把握でき、制御誤差が解消される。その結果、ワイヤハーネスの温度特性に関係なく、精度の良い温度制御を実施することができる。
【0047】(b)ハーネス抵抗値Rd1にて補正したヒータ抵抗値Rhに基づいて、ヒータ33の100%通電制御と電力制御とヒータ温F/B制御とを切り換えるようにした。この場合、温度制御の切り換えが適切なタイミングで実施できるようになり、ヒータ通電量の過不足が抑制できる。これにより、A/Fセンサ30が最適な活性状態で維持できる。
【0048】(c)水温Twに応じてハーネス抵抗値Rd1を推定するようにしたため、正確且つ簡易的にハーネス温度を認識できる。
(d)温度特性に優れた高価なワイヤハーネスを使わなくても精度の良い温度制御が実施できるようになり、コストの高騰が回避できる。
【0049】(e)上記の通り、A/Fセンサ30の温度制御が精度良く実施できることから、当該センサ30を組み込んだ空燃比制御システムにおいて、高精度な空燃比制御が実施できる。よって、排気エミッションの低減を図ることができる。
【0050】次に、本発明における第2,第3の実施の形態を説明する。但し、以下の各実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0051】(第2の実施の形態)第2の実施の形態を図10〜図12を用いて説明する。上記第1の実施の形態では、ヒータ抵抗値Rhに基づいてA/Fセンサ30の温度制御を実施したが、本実施の形態ではこれを変更し、A/Fセンサ30(固体電解質層34)の素子インピーダンスZsに基づいて同センサ30の温度制御を実施する。実際には、前記図5のルーチンに代えて、図10のヒータ制御ルーチンを実施する。
【0052】図10において、CPU20は、ステップ201でセンサ素子部32とワイヤハーネスH2との抵抗分を全て含む抵抗値(以下便宜上、全抵抗値Rt2という)を算出する。具体的には、センサ素子部32に負の印加電圧Vneg、すなわちA/Fセンサ30のV−I特性において限界電流検出域にかからない電圧を印加し、その時のセンサ電流Inegを計測する。そして、Rt2=Vneg/Inegとして全抵抗値Rt2を測定する。
【0053】また、CPU20は、ステップ202でワイヤハーネスH2の抵抗値(ハーネス抵抗値Rd2)を次の式(5)から推定する。
Rd2=R0 {1+α0 (Th−Th0 )} …(5)
式(5)は、前述の式(1)に準ずる。
【0054】さらに、CPU20は、ステップ203で全抵抗値Rt2からハーネス抵抗値Rd2を減算し、その差分を真の素子インピーダンスZsとする(Zs=Rt2−Rd2)。
【0055】その後、CPU20は、ステップ204で素子インピーダンスZsがセンサ素子部32の半活性状態を判定するための所定の判定値(本実施の形態では、200Ω程度)以下であるか否かを判別する。例えばエンジン10の低温始動時等においてはZs>200Ωとなり、CPU20はステップ205に進んでヒータ33の「100%通電制御」を実施する(前記図5のステップ106に同じ)。この100%通電制御は、素子インピーダンスZsが200Ω以下になりステップ204が肯定判別されるまで継続して実施される。
【0056】ヒータ33の加熱作用により素子温が上昇し、ステップ204が肯定判別されると、CPU20はステップ206に進み、素子インピーダンスZsがF/B制御を開始するための所定の判定値(本実施の形態では、40Ω程度)以下であるか否かを判別する。ステップ206の判定値は、センサ素子部32の活性状態を判定するものであって、目標インピーダンス(本実施の形態では、30Ω)に対して「+10Ω」程度の値として設定される。
【0057】A/Fセンサ30の活性化完了前であって、ステップ206が否定判別されると、CPU20はステップ207に進み、「電力制御」によりヒータ33の通電を制御する。このとき、図11のマップに示すように素子インピーダンスZsに応じて電力指令値が決定され、その電力指令値に応じた制御デューティ比によりヒータ33が通電される。
【0058】一方、A/Fセンサ30の活性化が完了し、ステップ206が肯定判別されると、CPU20はステップ208に進み、前記ステップ203で算出した素子インピーダンスZsを素子温Tsに換算する。このとき、例えば図12の関係を用いて素子温Tsを算出する。
【0059】その後、CPU20は、ステップ209で「素子温F/B制御」を実施する。この素子温F/B制御では、前述の図5の処理と同様に、PID制御手順に従いヒータ通電をデューティ制御する。つまり、その時々のエンジン運転状態に応じた目標素子温と前記算出した素子温Tsとの偏差に応じてヒータ通電のためのデューティ比Dutyを求め、そのデューティ比Dutyによりヒータ33を通電する。
【0060】なお本実施の形態では、図10のステップ201が請求項記載の抵抗値測定手段に、同ステップ202がハーネス抵抗値推定手段に、同ステップ203が抵抗値補正手段に、同ステップ207,209が制御量設定手段に、同ステップ204,206が制御切換手段に、それぞれ相当する。
【0061】以上第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、ワイヤハーネスの温度特性に関係なく、精度の良い温度制御を実施することができる等の優れた効果が得られる。
【0062】(第3の実施の形態)次に、第3の実施の形態を図13及び図14を用いて説明する。本実施の形態では、A/Fセンサ30の活性判定に用いるヒータ抵抗値の判定値を、ハーネス抵抗値に基づいて可変に設定する。実際には、前記図5のルーチンに代えて、図13のヒータ制御ルーチンを実施する。
【0063】図13において、CPU20は、ステップ301でハーネス抵抗値を推定し(前記式(1)参照)、続くステップ302でハーネス抵抗値に応じて2つの判定値β1,β2を可変に設定する(但し、β1<β2)。判定値β1,β2は、A/Fセンサ30の活性判定を行うものであって、例えば図14の関係に従い設定される。
【0064】その後、CPU20は、ステップ303でヒータ抵抗値Rhがセンサ素子部32の半活性状態を判定するための判定値β1以上であるか否かを判別する。Rh<β1の場合、CPU20はステップ106に進んでヒータ33の「100%通電制御」を実施する。また、Rh≧β1の場合、CPU20はステップ304に進み、ヒータ抵抗値RhがF/B制御を開始するための判定値β2以上であるか否かを判別する。
【0065】Rh<β2の場合、CPU20はステップ108に進み、「電力制御」によりヒータ33の通電を制御する。一方、Rh≧β2の場合、CPU20はステップ109,110に進み、「ヒータ温F/B制御」を実施する。但し、ステップ106,108〜110の処理は前記図5の処理と同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0066】なお本実施の形態では、図13のステップ303,304が制御切換手段に相当し、同ステップ301がハーネス抵抗値推定手段に相当する。また、同ステップ302が判定値設定手段に相当する。
【0067】以上第3の実施の形態によれば、温度制御の切り換えが適切なタイミングで実施できるようになり、ヒータ通電量の過不足が抑制できる。また、A/Fセンサ30の活性判定を行うための判定値β1,β2を可変に設定することで、適切な活性判定とその活性度合に応じた適切なヒータ制御とが実施できる。
【0068】なお、本発明の実施の形態は、上記以外に次の形態にて具体化できる。上記各実施の形態では、ハーネス抵抗値の推定に際し、水温Twに基づいてハーネス温度Thを求めたが、これを変更する。例えば吸入空気の温度、エンジンフード内の温度又はシリンダ壁面の温度に基づいてハーネス温度を求め、このハーネス温度に応じてハーネス抵抗値を推定する。この場合、異なる温度データを複合的に用いてハーネス温度を求めるようにしてもよい。
【0069】上記各実施の形態では、ヒータ制御に際し、「100%通電制御」と「電力制御」と「ヒータ温(又は素子温)F/B制御」とを選択的に実施したが、この構成を変更する。例えば100%通電制御又は電力制御の何れか一方を省略する。この場合、エンジンの始動当初は100%通電制御又は電力制御を実施し、その後、ヒータ温(又は素子温)F/B制御を実施する。
【0070】上記各実施の形態では、ヒータ温F/B制御時或いは素子温F/B制御時においてPID制御手順を用いたが、これを変更し例えばPI制御やP制御を実施するようにしてもよい。
【0071】ヒータ抵抗値Rhをヒータ温Thに換算してヒータ温F/B制御を実施したが(図5及び図13のステップ109,110)、ヒータ温Thに換算せずに、ヒータ抵抗値Rhを用いてヒータ抵抗F/B制御を実施してもよい。また、素子インピーダンスZsを素子温Tsに換算して素子温F/B制御を実施したが(図10のステップ208,209)、素子温Tsに換算せずに、素子インピーダンスZsを用いて素子インピーダンスF/B制御を実施してもよい。
【0072】上記第2の実施の形態では、素子インピーダンス(全抵抗値Rt2)の測定に際し、直流インピーダンスを測定したが、交流インピーダンスを測定するようにしてもよい。この場合、A/Fセンサ30の印加電圧を一時的に正方向及び負方向に変化させる。そして、この電圧変化時における正負いずれか一方又は両方の電圧変化量ΔVと電流変化量ΔIとから素子インピーダンスを測定する(素子インピーダンス=ΔV/ΔI)。
【0073】上記第3の実施の形態では、ハーネス抵抗値に基づいて、A/Fセンサ30の活性判定に用いる「ヒータ抵抗値の判定値β1,β2」を可変に設定したが、「素子インピーダンスの判定値」を可変に設定する構成としてもよい。この場合、ハーネス抵抗値が大きくなるほど、素子インピーダンスの判定値(例えば前記図10のステップ204,206の判定値)を大きな値に設定するとよい。
【0074】本発明を空燃比リーン領域でのリーン燃焼を行わせるリーン燃焼制御システムに適用してもよい。この場合にも同様に、既述の優れた効果が得られる。上記実施の形態では、限界電流式空燃比センサ(A/Fセンサ)に本発明を具体化したが、他のガス濃度センサに具体化して実現することも可能である。例えば空燃比が理論空燃比(ストイキ)に対してリッチかリーンかで異なる電圧信号(起電力)を出力するO2 センサや、排ガス中のNOx濃度に応じた電流信号を出力するNOxセンサなど、他のガス濃度センサにも適用できる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成10年(1998)3月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開平11−271264
【公開日】 平成11年(1999)10月5日
【出願番号】 特願平10−74188