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【発明の名称】 塗装合成樹脂成形品用の引掻き試験機
【発明者】 【氏名】度会 弘志

【氏名】伊藤 敏安

【氏名】服部 弘樹

【氏名】中村 和幸

【要約】 【課題】合成樹脂塗膜の硬質材尖端に対する耐引っ掻き性をきめ細かい基準で再現性良く評価できる引っ掻き試験機を提供すること。

【解決手段】塗装合成樹脂成形品の耐引っ掻き性評価用の引掻き試験機。試験片20を保持する試験台22と、被試験体20に接触する尖端部32aを有する引掻き子32を被試験体20上に接触可能に保持する保持部34を備えた荷重腕24とからなる。荷重腕24と試験台52とが、荷重腕24の軸方向で相対移動可能に、荷重腕24と試験台52との少なくとも一方が往復移動手段54とで連結されている。また、荷重腕24は試験台52に対して鉛直方向に相対移動可能に配設されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塗装合成樹脂成形品の耐引掻き性評価用の引掻き試験機であって、被試験体を保持する試験台と、尖端部を有する引掻き子を被試験体上で前記尖端部を接触可能に保持する保持部を有する荷重腕とを備え、該荷重腕と前記試験台とが、前記荷重腕の軸方向で相対移動可能に、前記荷重腕と前記試験台との少なくとも一方が往復移動手段と連結されており、前記荷重腕は前記試験台に対して鉛直方向に相対移動可能に配設されていることを特徴とする塗装合成樹脂成形品用の引掻き試験機。
【請求項2】 請求項1記載の引掻き試験機を用いて耐引掻き性評価を行う方法であって、前記引掻き子と被試験体との接触面の形状を、前記荷重腕の軸方向に長軸を有する扁平形状となるように該引掻き子の尖端形状を設定したことを特徴とする塗装合成樹脂成形品の引掻き試験方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装合成樹脂成形品の耐引掻き性評価用の引掻き試験機及び該試験機を用いた引掻き試験方法に関する。
【0002】
【背景技術】昨今、自動車のサイドモールのような合成樹脂成形品にも、板金塗装に近い耐引掻き性が要求されるになってきた。これらの合成樹脂成形品は、通常、耐候性に優れた合成樹脂塗料からなる、例えば、アクリル系塗料からなる合成樹脂仕上げ塗膜を備えている。
【0003】一方、サイドモール等においては、自動車に装着後、サイドモールに付着した異物を、爪等で引っ掻いて取り除くことがある。また、ワックスや異物がサイドモール本体12と車体14または金属色トリム16との隙間にあるとき、先のとがった硬質合成樹脂板(スキージ)18などで引っ掻いて取り除くことがある(図1参照)。このような先がとがったもので引っ掻いたときに、耐引掻き性が、即ち、引掻き傷(塗膜破れ発生するような目立つ傷)が発生しないことが要求される。該引掻き傷の発生挙動は、研摩粉を含むワックス等を用いて布拭きしたときに発生する微小傷(擦傷:乱反射により光沢の低下が発生する)の発生挙動とは異質である。即ち、合成樹脂成形品は、成形品本体自体が金属成形体(板金)等に比して柔らかく、引っ掻いた場合、塗膜が一定以上の硬度を有していても、支持基体が柔らかいため、塗膜破れが発生し易い傾向にある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような場合、合成樹脂成形品の上に形成した合成樹脂仕上げ塗膜が、そのような耐引掻き性を有するか否かの耐引掻き性評価を行う必要がある。
【0005】そして、引掻き試験の方法としては、引掻き硬度試験がある。例えば、■ビアバウム引掻き硬度、■コヒノール度(JIS K 5400参照)、■モース硬度、■マルテンス引掻き硬度、等がある。
【0006】上記■、■及び■の場合は、引っ掻き1回で塗膜の引っ掻き傷(基材露出)が発生したとき荷重値を基準とする。また、上記■の場合は、各種硬度の鉛筆を使用する場合は、引っ掻くたびに鉛筆を毎回新たに研いで用いるため再現性にかける。
【0007】いずれの場合も、同一箇所を何回も引っ掛かれる場合を想定しておらず、合成樹脂仕上げ塗膜の場合きめ細かな評価基準が要求されるため、上記にような塗膜の耐引掻き性評価の試験方法としては不適である。
【0008】即ち、合成樹脂成形品の尖端に対する耐引掻き性を、きめ細かい基準で再現性良く評価できる引掻き試験機及び耐引掻き性評価試験方法は、本発明者らが知る限りにおいては存在しない。
【0009】本発明は、上記にかんがみて、合成樹脂塗膜の硬質材尖端に対する耐引掻き性を、きめ細かい基準で、再現性良く評価できる引掻き試験機及び耐引掻き性評価試験方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記要求も満足させる引っ掻き試験機の開発に努力をする過程で、「JIS L 0823」に開示されている染色堅牢度試験用摩擦試験機に着目して、下記構成の塗装合成樹脂成形品用引掻き試験機及び耐引掻き性評価試験方法に想到した。
【0011】本発明の塗装合成樹脂成形品用の引掻き試験機は、被試験体を保持する試験台と、尖端部を有する引掻き子を被試験体上で尖端部を接触可能に保持する保持部を有する荷重腕とを備え、該荷重腕と前記試験台とが、荷重腕の軸方向で相対移動可能に、荷重腕と試験台との少なくとも一方が往復移動手段と連結されており、荷重腕は、試験台に対して鉛直方向に相対移動可能に配設されていることを特徴とする。
【0012】また、本発明の塗装合成樹脂成形品の耐引っ掻き性評価試験方法は、上記構成の引掻き試験機を用いて耐引掻き性評価を行う方法であって、引掻き子と被試験体との接触面の形状を、前記荷重腕の軸方向に長軸を有する扁平形状となるように該引掻き子の尖端形状を設定したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を、図例に基づいて詳細に説明をする(図2〜4参照)。
【0014】(1) 本発明の引掻き試験機は、塗装合成樹脂成形品の耐引掻き性評価用の試験機であることを前提とする。
【0015】該引掻き試験機は、基本的には、被試験体20を保持する試験台22と、該試験台22の上方に配される荷重腕24とを含むものである。
【0016】上記被試験体20を保持態様は、例えば、試験台22に形成されれた被試験体保持溝28と、該被試験体保持溝28を摺動してねじ固定される被試験体止め部材30とからなる。
【0017】荷重腕24は、試験台22に対して鉛直方向に相対移動可能に配設されている。具体的には、荷重腕24は、元端側でヒンジ結合されるとともに、先端側に引掻き子32を保持する引掻き子保持部34を備えている。
【0018】該ヒンジ結合の態様は、図例では、一対の荷重腕支持支柱36、36の間に橋渡された固定軸38に荷重腕24の元部側が、荷重腕カラー部24aを介して支持されて形成されている。また、作業性の観点から、該荷重腕24を上方へ約60°程度回動させたとき、その状態を維持できるように、荷重腕24の元端にはバランスウェイト40が取りつけられているとともに、支柱36、36の間に、バランスウエイト40と干渉するストッパ42が突設されている。
【0019】また、引掻き子保持部34は、図例では、引掻き子32の上方部を嵌合する引掻き子保持孔44を備え、かつ、引掻き子32を圧着固定する止めねじ46を備えた構成である。
【0020】引掻き子保持部34の上端には引掻き時の負荷荷重を調整可能に、分銅48をねじ止め(図例では蝶ねじ49)等により取り付け可能となっている。この引掻き子保持部34は、具体的構成は図示しないが、Sを支点として回動するようにして、白矢印の如く、引掻き子32の角度を往復移動方向で調整できるようにしておいてもよい。
【0021】そして、荷重腕24と試験台22とが、荷重腕24の腕伸張方向(軸方向)に相対移動可能に、荷重腕24と試験台22との少なくとも一方が往復搬送手段50と連結されている。
【0022】該往復搬送手段50は、図例では、試験台22が滑走する滑走レール52と、試験台22を駆動させるエアシリンダ54とを含む。試験台22の元端ににエアシリンダ54のピストンロッド56が連結されている。なお、往復搬送手段の駆動源は、エアシリンダに限らず、任意であり、電動モータと連結したねじ駆動等であってもよい。該搬送手段は、荷重腕24側に連結させてもよく、さらには、試験台22と荷重腕は24が、それぞれ、独立搬送されるようにしてもよい。
【0023】次に、上記引掻き試験機を用いての、試験方法を説明する。
【0024】まず、荷重腕24を上方へ回動させた状態で、図4に示すような合成樹脂製または金属製の引掻き子32を取付ける。このとき、引掻き子32は、引掻き子32と被試験体20との接触面の形状を、荷重腕24の軸方向に長軸を有する扁平形状となるように引掻き子32の尖端形状を設定することが好ましい。これにより、引っ掻き面積(往復スパン×移動軸直交方向の接触幅)を小さく保ったまま、引掻き子32先端への、往復移動に伴う負荷を軽減でき、引掻き子32の耐久性向上、及び、試験の再現性向上が図れる。
【0025】引掻き子32を合成樹脂製とする場合は、尖端部32aへたりが発生しがたいロックウェル硬度でHRM70以上のものを使用する。具体的には、ナイロン6、ナイロン66等が好適に使用できる。また、引掻き子32の尖端部32aの形態は、テーパ角度α:10〜120°、尖端R:0〜2.0mm、尖端長さ(長軸方向長さ)L:2〜20mmとする。テーパ角度αが小さ過ぎると、尖端部32がへたり易く、引掻き試験が困難となる。逆に、テーパ角度αが大きすぎたり、尖端Rが大き過ぎると、該試験は、摩耗試験に近くなり引掻き試験の範疇に入らなくなる。また、引掻き子32を金属製とする場合の尖端部32aの具体的仕様とは、例えば、テーパ角度α:90°、尖端R:0.1mm、尖端長さ(長軸方向長さ)L:10mmのものが好適である。
【0026】そして、合成樹脂塗膜20aを形成した塗装合成樹脂成形品である被試験体20を試験台22の保持溝28に嵌合し、止め部材30で固定してセットする。
【0027】続いて、エアシリンダ54を作動させてピストンロッド56を後死点位置とした後、荷重腕24を下げる。
【0028】この状態で、エアシリンダ54を設定速度で往復移動させる。すると、試験台22が往復移動することにより、相対的に引掻き子28が被試験体20の合成樹脂塗膜20a上を、引掻きながら設定速度で往復移動をする。
【0029】このときの試験条件は、要求される耐引掻き性により異なるが、例えば、分銅重さ500g、試験台往復スパン:60mm、試験台往復スピード:50往復/分とする。
【0030】そして、試験台22を往復移動させることにより、引掻き傷は、被試験体に基材が露出した時点で、または引掻き子32を所定回数、往復相対移動させた時点で、引掻き試験を終了する。
【0031】荷重腕24を上げて、試験台22から被試験体20を取り出し、所定回数、往復相対移動させる試験では、引掻き傷の有無を目視判定する。
【0032】
【発明の効果】本発明の合成樹脂成形品用の引掻き試験機及び耐引掻き性評価試験方法は、上記構成及び方法により、後述の試験例で示す如く、合成樹脂塗膜の硬質高分子材尖端に対する耐引掻き性をきめ細かな基準で再現性良く評価できる。
【0033】
【試験方法】本発明の効果を確認するために、表1に示す各組成のポリプロピレン系組成物からなる成形品にアクリル系塗膜を形成したものから調製した被試験体(幅30mm×長さ100mm×厚み3mm)について、下記各条件で耐引っ掻き性評価試験を行った。
【0034】■本発明方法:引っ掻き子としてロックウェル硬度がHRM79でナイロン6製で、形状がA=20mm、B=32mm、C=8mm、α=35°、R=0、L=2mmのものを使用した。引っ掻き条件は、分銅重さ500g、試験台往復スパン:60mm、試験台往復スピード:50往復/分とした。
【0035】■鉛筆硬度法(コヒノール度):JIS K 5400 に準じて行った。
【0036】■テーバースクラッチ法(モース硬度法の一種):炭化タングステンでメッキ処理した金属からなる引っ掻き子で引っ掻き試験を行い、基材が露出した荷重値で評価した。試験機は、テーバースクラッチテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いた。
【0037】それらの結果を表1に示すが、従来法では評価の差別化ができなかったのに対し、本発明の方法では、差別化ができ、きめ細かな評価が可能であることが分かる。
【0038】また、塗膜の剥れ状態も、本発明の方法で行った塗膜剥れモードは、実車でのそれと同一であることが、目視表面観察により確認できた。
【0039】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫 (外1名)
【公開番号】 特開平11−248615
【公開日】 平成11年(1999)9月17日
【出願番号】 特願平10−48179