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【発明の名称】 分光分析用測定セル
【発明者】 【氏名】佐藤 貴之

【氏名】増崎 宏

【氏名】鈴木 克昌

【氏名】松本 功

【要約】 【課題】凝縮温度と分解温度との差が少ない成分を含むガス中の特定成分を分光分析によって正確に測定することができる分光分析用測定セルを提供する。

【解決手段】セル本体1の両端部に、ガス導入口3a及びガス導出口と,透光性窓材2とをそれぞれ有する分光分析用測定セルにおいて、前記管状セル本体1を加熱する手段5と、前記透光性窓材2を加熱する手段とを設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端部にガス導入口を、他端部にガス導出口をそれぞれ備えた管状セル本体の両端に透光性窓材をそれぞれ装着した分光分析用測定セルにおいて、前記管状セル本体を加熱する手段と、前記透光性窓材を加熱する手段とを設けたことを特徴とする分光分析用測定セル。
【請求項2】 前記透光性窓材を加熱する手段は、該透光性窓材を管状セル本体に装着するためのリング状の緩衝材を発熱体としたものであることを特徴とする請求項1記載の分光分析用測定セル。
【請求項3】 前記透光性窓材を加熱する手段は、該透光性窓材の表面にリング状に堆積させた発熱体であることを特徴とする請求項1記載の分光分析用測定セル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分光分析用測定セルに関し、特に、半導体製造分野で用いられるガスの分析に利用される分光分析用測定セルに関する。
【0002】
【従来の技術】ガス中に含まれる微量の不純物を測定する方法として、赤外吸収分光法が多く用いられている。この方法は、測定セル内を流れる被測定ガスに赤外領域の測定光を照射し、被測定ガスを通過した光の吸収スペクトルを測定することによって不純物の種類や含有量を測定するものであって、測定セルには、被測定ガスが流れるセル本体の両端に、測定光を透過させる透光性窓材をそれぞれ装着したものが用いられている。
【0003】上記測定セルを用いた分光分析では、測定セルの一端部に設けたガス導入口からセル内に被測定ガスを導入し、他端部に設けたガス導出口から導出することによってセル内に被測定ガスを流通させ、この状態で所定の波長の測定光、例えばレーザー光を一端の透光性窓材を介してセル内に導入し、他端の透光性窓材から導出した測定光の解析を行うことによって測定データを得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の半導体製造分野では、常温で凝縮する成分と、高温で分解する成分とを含むガスの分析を高感度で行う必要が生じている。このような成分を含むガスの分析においては、セル内や透光性窓材にガスが凝縮して付着堆積すると、ガスの流通や測定光の透過の妨げとなるため、測定セルを所定温度に加熱してガスの凝縮を防止しなければならない。このとき、測定セルにおけるセル本体は、通常、ステンレス鋼等の金属で形成されているため、その外周をヒーター等で覆うことによって容易に所定温度に加熱することができるが、透光性窓材をヒーター等で覆うことはできないため、透光性窓材は、セル本体からの熱伝導で所定温度に加熱するようにしている。
【0005】ところが、透光性窓材を、凝縮成分が付着しない温度までセル本体からの熱伝導によって加熱するためには、セル本体を必要以上に高温に加熱する必要があり、例えば、透光性窓材を100℃程度に加熱するためには、セル本体を数百℃にまで加熱する必要があった。しかし、セル本体がこのような高温状態になると、高温で分解する成分、例えば、シラン,ジクロロシラン,トリクロルシラン等は、200℃程度から分解が始まるため、これらがセル本体内で分解してしまうことになる。
【0006】すなわち、透光性窓材を凝縮成分が付着しない温度に加熱しようとすると、セル本体を過剰に加熱しなければならないため、セル本体内でガスが分解してしまうことになり、逆に、ガスの分解が生じない範囲にセル本体を加熱した場合は、透光性窓材を十分に加熱できないため、透光性窓材に凝縮成分が付着堆積して測定光の透過が妨げられることになる。したがって、常温で凝縮する成分、高温で分解する成分を含むガス、特に、凝縮温度と分解温度との差が少ない成分を含むガスの測定は、従来の分光分析器では正確に行うことができなかった。
【0007】そこで本発明は、常温で凝縮し、高温で分解する成分を含むガスの分析も正確に行うことができる分光分析用測定セルを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の分光分析用測定セルは、一端部にガス導入口を、他端部にガス導出口をそれぞれ備えた管状セル本体の両端に透光性窓材をそれぞれ装着した分光分析用測定セルにおいて、前記管状セル本体を加熱する手段と、前記透光性窓材を加熱する手段とを設けたことを特徴としている。
【0009】特に、本発明の分光分析用測定セルは、前記透光性窓材を加熱する手段が、該透光性窓材を管状セル本体に装着するためのリング状の緩衝材を発熱体としたもの、あるいは、透光性窓材の表面にリング状に堆積させた発熱体であることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の分光分析用測定セルの第1形態例を示す一部断面正面図である。この分光分析用測定セルは、所定長さの管状のセル本体1と、該セル本体1の両端開口部に所定角度でそれぞれ装着された透光性窓材2と、セル本体1の一端部に接続されたガス導入管3及び他端部に接続されたガス導出管4と、セル本体1の外周に筒状に設けられた加熱手段5と、前記透光性窓材2をセル本体1に固着するための固定フランジ6及び押えフランジ7と、透光性窓材2の内外に設けられるOリング8及び緩衝材9と、両フランジ6,7を締結するためのボルト10とによって形成されている。
【0011】前記セル本体1は、通常はSUS316で形成されるが、他のステンレス鋼をはじめとして、ニッケル鋼、クロム・モリブデン鋼、ハステロイ等、表面における水分の吸着が少なく、耐食性に優れた金属で形成することができる。また、セル本体1等において、被測定ガスが接触する部分には、電界研磨処理や酸化クロム被覆処理のようなパッシベーションを施しておくことが好ましい。また、両フランジ6,7には、通常はセル本体1と同一の材料が用いられるが、フランジ6は、セル本体1と溶着(溶接)等によって一体化が可能なものが好ましいが、接触腐食の問題がなければ、各種材料を適宜組合わせて使用することができる。さらに、前記加熱手段5には、通常の電熱線と断熱材とからなるものやラバーヒーター等を用いることができる。また、フランジ部分等にも、必要に応じて同様の加熱手段を設けることができる。
【0012】前記透光性窓材2は、通常のガラス、一般の可視域用光学ガラス(例えばBK−7)、石英ガラス,サファイヤ等のガラス系材料の他、CaFのようなセラミック等の絶縁物で、表面に触媒作用がない光透過材料であれば、各種のものを用いることができる。この透光性窓材2の設置角度は、セル本体1の軸線と、透光性窓材2の軸線とが、例えば石英ガラスの場合は56度で交わる、いわゆるブリュスターアングルと呼ばれる角度に設定されている。このブリュスターアングルは、光の反射を軽減できる角度であって、分光分析用測定セルには好適に用いられている。
【0013】また、前記ガス導入管3のガス導入口3a及びガス導出管4のガス導出口は、管路の軸線が透光性窓材2の中心を向き、かつ、セル本体1の軸線を含めた3本の軸線が一つの平面上に存在する位置に設けられている。このように形成することにより、ガス導入管3からセル本体1内に導入される被測定ガスが透光性窓材2に反射してからセル本体1内を軸線方向に流れる状態にすることができるので、ガス流を円滑に形成できるとともに、温度ムラも低減することができる。さらに、導入・導出部を上述のように形成することにより、セル本体1の両端におけるガス溜まりもほとんど無くすことができる。
【0014】透光性窓材2を支持する内側のOリング8には、バイトンゴムやフッ素系ゴム等のゴム系材料あるいはメタルCリング等が用いられており、外側の緩衝材9は、透光性窓材2をOリング8を介してフランジ6に均等に押圧するとともに、熱膨張等による応力を吸収することができるように、適度な弾性を有する材料で形成されている。
【0015】そして、本形態例では、緩衝材9として、ラバーヒーターを所定のリング状に形成したものを用いている。このラバーヒーターは、適度な弾性と耐熱性とを有するゴム系材料に発熱線を埋めこんで発熱体としたものであって、該ラバーヒーターに接続したヒーター線11から電力を供給することによって発熱するように形成されている。
【0016】このように、緩衝材9として、通常のゴム製緩衝材に代えて、所定の弾性を有するラバーヒーターを使用することにより、透光性窓材2を緩衝材9で直接加熱することができ、加熱手段5によるセル本体1の加熱温度とは別に透光性窓材2の加熱温度(加熱能力)を設定することができるので、セル本体1及び透光性窓材2を所定の温度に確実に加熱することができる。
【0017】これにより、透光性窓材2の部分でのガスの凝縮を防止できるとともに、セル本体1内でのガスの分解も防止でき、凝縮成分と分解成分とを含むガスの分析も正確に行うことができ、半導体製造分野で用いる特殊ガス中の微量成分の分析を確実に行うことができる。
【0018】図2は、本発明の第2形態例を示す要部の断面図である。本形態例では、透光性窓材2の外側に通常の緩衝材9を用いるとともに、緩衝材9の内周側にリング状に形成したヒーター12を設け、このヒーター12を、押え金具13によって透光性窓材2の外面に押し付けるようにしたものである。なお、前記第1形態例と同一の構成要素には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0019】前記ヒーター12は、透光性窓材2における測定光の通過部分を避けた大きさ(径)で、透光性窓材2を所定の温度範囲に加熱することができれば、任意の形状で形成することができる。また、ヒーター12としては、透光性窓材2の表面に電熱線を直接設けることもでき、電熱線を耐熱性絶縁材で覆ったものなども使用することができる。
【0020】図3は、本発明の第3形態例を示す要部の断面図である。本形態例は、前記第2形態例における押え金具13の部分にバネ14を介在させ、バネ14によってヒーター12を均等に透光性窓材2の外面に押し付けるようにしたものである。すなわち、押え金具13で直接ヒーター12を押し付けると、押し付け量のバランスによって透光性窓材2に歪みを発生させたり、Oリング8との間の気密性が損なわれるおそれがあるが、このようにバネ14を介在させることにより、歪みの発生を防止でき、ヒーター12の寸法精度も緩和できる。
【0021】図4は、本発明の第4形態例を示す要部の断面図である。本形態例に示す加熱手段15は、透光性窓材2における測定光通過部16の外周に、カーボン膜やタングステン膜、SnO膜(透明導伝膜)を、真空蒸着,スパッタ,CVD等の方法で堆積させ、その両端にヒーター線11を接続したものである。このように加熱手段15として、発熱性を有する膜を透光性窓材2に一体的に形成することにより、セル本体1への透光性窓材2の装着を容易に行うことができる。なお、加熱手段15の外面側を、適宜な断熱材で覆うようにしてもよい。
【0022】また、各形態例において、セル本体1及び透光性窓材2にそれぞれ熱電対等の温度検出手段を設け、両温度検出手段と両加熱手段の電源制御部とを適当に組合わせることにより、測定セル全体を所定の温度に効率よく加熱保持することができる。なお、セル本体1と透光性窓材2とは、必ずしも同一温度に加熱する必要はなく、セル本体1は、高温で分解する成分が分解しない範囲に加熱し、透光性窓材2は、透光性窓材2に設けた加熱手段による直接加熱とセル本体1からの熱伝導とにより、凝縮する可能性のある成分が凝縮して付着しない程度の温度に加熱すればよい。
【0023】したがって、常温で凝縮し、高温で分解する成分を含むガスの分析を行う場合、該ガスに含まれる各種成分の凝縮温度や分解温度に応じて各部を適当な温度に加熱することができるので、ガス成分の凝縮や分解を生じることがなくなり、正確な分光分析を行うことが可能となる。また、セル本体1を必要以上に加熱する必要がなくなるので、測定セル全体の温度分布における温度差を小さくすることができ、温度差による金属等の負担も軽減できる。
【0024】
【実施例】MOCVD法により、トリメチルインジウム(TMIn)とホスフィン(PH)とを原料としてInPを成長させる場合に、装置から排出される排ガス中の未分解のTMInの濃度を近赤外分光分析法で測定した。測定セルには、緩衝材にラバーヒーターを用いた図1に示す構成のもの(実施例セル)と、緩衝材を通常のゴム製としたもの(比較例セル)とを使用した。なお、セル本体及び各フランジはSS316製とし、セル本体は長さ50cm、内径20mmとした。また、透光性窓材には、厚さ10mmの透明石英ガラスを使用した。
【0025】排ガス中に含まれる副生成物のリン(P,P)が凝縮して透光性窓材に付着しないように、透光性窓材を100℃に加熱した。その結果、図5の温度分布に示すように、実施例セルの場合は、セル本体中央部Cの温度が120℃程度のときに,両側の透光性窓材部分A,Bが100℃となり、リンの凝縮やTMInの分解を生じることなくTMInの濃度を正確に測定することができた。一方、比較例セルの場合は、透光性窓材部分A,Bを100℃に加熱するためには、セル本体中央部Cの温度を200℃にしなければならなかった。TMInは、130℃程度から分解が始まるため、加熱途中でTMInの分解が生じるとともに、透光性窓材にリンが付着し、正確な測定を行うことができなかった。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の分光分析用測定セルによれば、セル本体と透光性窓材とを所定の温度に加熱することができるので、凝縮温度と分解温度との差が少ない成分を含むガス中の特定成分を分光分析によって正確に測定することができる。
【出願人】 【識別番号】000231235
【氏名又は名称】日本酸素株式会社
【出願日】 平成9年(1997)12月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦 (外1名)
【公開番号】 特開平11−183366
【公開日】 平成11年(1999)7月9日
【出願番号】 特願平9−358144