トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 引張試験機
【発明者】 【氏名】田中 隆

【要約】 【課題】シリンダによる試験片の引張初期において急激な変位が前記試験片に加わるのを回避することが可能な引張試験機を提供しようとするものである。

【解決手段】試験片を上下端で支持固定する上側、下側のチャック部8,12と、前記下側チャック部を下方に向けて引張るシリンダ10と、前記シリンダにより前記下側チャック部を引張った時に前記試験片を通して前記上側チャック部に加わる荷重を測定するための検出器6と、前記試験片の伸びを測定するための変位計とを具備し、前記下側チャック部と前記シリンダとの連結部に1対のピンと一対の長穴を係合させた助走区間を設けたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 試験片を上下端で支持固定する上側、下側のチャック部と、前記下側チャック部を下方に向けて引張るシリンダと、前記シリンダにより前記下側チャック部を引張った時に前記試験片を通して前記上側チャック部に加わる荷重を測定するための検出器と、前記試験片の伸びを測定するための変位計とを具備し、前記下側チャック部と前記シリンダとの連結部に助走区間を設けたことを特徴とする引張試験機。
【請求項2】 前記助走区間は、前記下側チャック部の下部に取付けられた支持軸と前記シリンダに上下動自在に挿入された筒状駆動軸との連結部において、前記駆動軸内に挿入される前記支持軸の下端付近にその中心に対して対称的かつ水平方向に突出された一対のピンを前記駆動軸の上端付近に中心に対して対称的に切欠された一対の長穴に係合することにより構成されることを特徴とする請求項1 記載の引張試験機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張試験機に関する。
【0002】
【従来の技術】引張試験は、材料が静的引張り荷重に対して示す諸特性を決定する試験である。この引張試験は、試験片の軸方向に単純引張荷重を加え、その時の荷重と伸びを測定し、ヤング率、弾性限度、比例限度、降伏点、伸びおよび絞りなどを求めるものである。また、前記試験片が切断するまでに吸収したエネルギーの大小によってその材料の靭性を判定することが可能になる。
【0003】ところで、前述した引張試験に用いられる従来の引張試験機は、試験片を上下端で支持固定する上側、下側のチャック部と、前記下側チャック部の下部に取付けられた支持軸と、この支持軸に連結される上下動自在な駆動軸を有する例えば油圧方式のシリンダと、検出器と、変位計を具備した構造になっている。
【0004】このような引張試験機において、前記上側、下側のチャック部で試験片の上下端を支持固定した後、前記シリンダの駆動軸を下方に向けて駆動することにより前記支持軸を通して前記下側、上側のチャック部で支持固定された試験片を引張り、この時の荷重を前記検出器で測定すると共に、前記試験片の伸びを前記変位計で測定する。
【0005】しかしながら、前記シリンダによりその駆動軸を下方に向けて駆動させて前記試験片を引張る際、引張初期において図3に示すように急激な変位が生じる。このため、前記試験片の諸特性を精度よく測定することが困難になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、シリンダによる試験片の引張初期において急激な変位が前記試験片に加わるのを回避することが可能な引張試験機を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる引張試験機は、試験片を上下端で支持固定する上側、下側のチャック部と、前記下側チャック部を下方に向けて引張るシリンダと、前記シリンダにより前記下側チャック部を引張った時に前記試験片を通して前記上側チャック部に加わる荷重を測定するための検出器と、前記試験片の伸びを測定するための変位計とを具備し、前記下側チャック部と前記シリンダとの連結部に助走区間を設けたことを特徴とするものである。
【0008】このような構成の引張試験機によれば、前記上側、下側のチャック部で試験片の上下端を支持固定した後、前記シリンダを駆動して前記下側チャック部を通して前記試験片を引張る際、前記下側チャック部と前記シリンダとの連結部に助走区間を設けているため、前記シリンダによる前記下側チャック部に対する引張速度が安定してから試験片に引張力を加えることができる。したがって、引張初期において試験片に急激な変位が生じるのを防止できるため、前記試験片の諸特性を精度よく測定することが可能になる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1,図2を参照して詳細に説明する。下面に矩形枠板を有する上部支持板1および上面に矩形枠板を有する下部支持板2は、互いに所定の距離あけて上下に配置されている。これら支持板1,2は、4 本のL形ビーム3に補強治具4およびネジ5により固定されている。検出器であるロードセル6は、前記上部支持板1上に固定されている。第1支持軸7は、その上端部が前記上部支持板1を通して前記ロードセル6に連結され、かつ下端に上側チャック部8が固定されている。
【0010】上下動自在な筒状駆動軸9を有するシリンダ、例えば油圧シリンダ10は、前記下部支持板2の底面に固定され、かつ前記駆動軸9は前記下部支持板2を貫通して上方に延出されている。第2支持軸11は、その下端部が前記駆動軸9に挿入、係合され、かつ上端に前記上側チャック部8と所定の距離を隔てて対向配置された下側チャック部12が固定されている。前記筒状駆動軸9の上端付近には、図2の(a),(b)に示すように例えば長さ10mmの一対の長穴13が中心軸に対称的に、かつその軸方向に沿って開口されている。前記第2支持軸11の下端付近には、一対のピン14が中心軸に対称的に、かつ水平方向に向けて突出されている。このような前記筒状駆動軸9と前記第2支持軸11との連結部において、前記第2支持軸11の一対のピン14は前記駆動軸9の一対の長穴13にそれぞれ係合されている。なお、前記一対のピン14は前記シリンダ10の駆動前において前記長穴13の下部に位置するように設定されている。また、図示しない変位計、例えば光学式変位計は前記上側チャック部8の下面と、下側チャック部12の上面の間の距離を測定している。
【0011】このような構成によれば、前記上側、下側のチャック部8,12で例えば金属からなる試験片15の上下端を支持固定した後、前記油圧シリンダ10を駆動させると、その筒状駆動軸9が下方に向けて移動する。この筒状駆動軸9の下方への移動において、その移動初期では前記第2支持軸11に係合されず、前記駆動軸9の先端付近の長穴13の長さに相当する距離移動した後、前記支持軸11下端付近に突出した一対のピン14に前記一対の中穴13の上部が当接した時に係合されて、前記第2支持軸11を下方に移動させる。つまり、前記長穴13の長さに相当する助走区間を経過した後、前記第2支持軸11が下方に移動される。
【0012】前記第2支持軸11が下方に向けて移動されると、前記支持軸11上端に固定された下側チャック部12が下方に移動され、これに伴って前記下側、上側のチャック部12,8で支持固定された前記試験片15が引張られる。この時の荷重は、前記上側チャック部8に第1支持軸7を通して連結されたロードセル6により測定され、かつ前記試験片15の伸びは図示しない光学系変位計により測定され、測定された荷重および伸びから前記試験片15のヤング率、弾性限度、比例限度、降伏点のような諸物性が求められる。
【0013】したがって、前記油圧シリンダ10の駆動による前記筒状駆動軸9を下方に移動させて前記下側、上側のチャック部12,8で支持固定された前記試験片15を引張る際、前記駆動軸9と前記第2支持軸11との連結部に前記支持軸11の一対のピン14が係合される前記駆動軸9の一対の長穴13の長さに相当する助走区間を設けているため、前記シリンダ10による前記下側チャック部12に対する引張速度が安定してから前記試験片15に引張力を加えることができる。その結果、引張初期において試験片に急激な変位が生じるのを防止できる。その結果、前記ロードセル6および前記変位計により前記試験片15の荷重および伸びをそれぞれ測定することによって、前記試験片15の諸特性を精度よく測定することが可能になる。
【0014】なお、前記実施例ではシリンダとして油圧シリンダを用いたが、空圧シリンダを用いてもよい。前記実施例では、助走区間を下側チャック部の第2支持軸とシリンダの駆動軸との連結部に設けたがこれに限定されない。例えば、下側チャック部と第2支持軸との連結部に助走区間を設けてもよい。
【0015】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、シリンダによる試験片の引張初期において急激な変位が前記試験片に加わるのを回避することができ、ひいては前記試験片のヤング率、弾性限度、比例限度、降伏点、伸びおよび絞りなどの諸特性を高い精度で測定できる等顕著な効果を奏する引張試験機を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成9年(1997)12月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【公開番号】 特開平11−183346
【公開日】 平成11年(1999)7月9日
【出願番号】 特願平9−351162