| 【発明の名称】 |
化学分析装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉村 保廣
【氏名】遠藤 喜重
【氏名】三宅 亮
【氏名】寺山 孝男
【氏名】渋谷 武志
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| 【要約】 |
【課題】試薬を無駄にせず、洗浄をほとんど必要とせず、試薬の吐出安定性を有するポンプを備えた化学分析装置を提供する。
【解決手段】化学分析装置は、サンプルを入れる複数の反応容器を保持する反応容器ホルダーと、サンプルに添加する試薬を入れる複数の試薬容器と、試薬容器下部に取り付けられ試薬を反応容器に滴下注入するポンプと、サンプルの物性を計測する計測装置を備えた装置で、ポンプは、シリコン製のポンプ本体と、ポンプ本体の前面に接合され、板状で板中心部に吐出孔を有するシリコン製のノズルとから構成され、ノズルの基板102の表裏面、吐出孔内面に、耐薬品性の二酸化シリコン層103が形成され、さらに基板102前面及び吐出孔101内面に、二酸化シリコン層103上にフッ素樹脂層104が形成されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 サンプルを入れる複数の反応容器を保持する反応容器ホルダーと、前記反応容器中のサンプルに添加するべき各種試薬をそれぞれ入れる複数試薬容器と、該試薬容器の下部に取り付けられ、所定量の試薬を吸入し前記反応容器に滴下注入するポンプと、前記試薬が添加された後に前記サンプルの物性を計測する計測装置を備えた化学分析装置において、前記ポンプは、シリコン製のポンプ本体と、該ポンプ本体の前面に接合され、板状で該板中心部にポンプ本体の流出口に接続する吐出孔を有するシリコン製のノズルとから構成され、該ノズルの基板の表裏面及び吐出孔の内表面に、前記試薬に対して耐食性のある耐薬品層が形成され、さらに該基板の前面、または板の前面及び吐出孔の内面に、前記耐薬品層上にフッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物が形成されたことを特徴とする化学分析装置。 【請求項2】 前記耐薬品層は、二酸化シリコン、Au、Ag、Ptまたは耐食性合金からなる請求項1記載の化学分析装置。 【請求項3】 フッ素樹脂層表面を凹凸にした請求項1または2に記載の化学分析装置。 【請求項4】 前記基板にある吐出孔の先端エッジを丸く面取りした請求項2または3の記載の化学分析装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液体中に溶存する物質の濃度を定量する化学分析装置に係り、特に生体液や水などの成分分析を行う化学分析装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来の化学分析装置として一般的な形態をとるものは、米国特許第4、451、433号明細書に記載の化学分析装置がある。この装置は、血液中の蛋白質、酵素、尿中の成分などを分析・定量するための比色測定部と、血液中のイオンを分析するイオン分析部から成る装置で、一時間に数百テストから、大形の装置になると9000テスト以上の処理速度を持つ。 【0003】上記従来技術に代表される化学分析装置の比色測定項目としては数十種類あり、通常の検査項目でもひとつの検体に対し、最低でも十種類程度の項目について分析を行っている。これらの項目をひとつの装置でこなすために、複数の試薬容器から試薬を選択し、所定の試薬量で順次反応容器に供給する機構が設けられている。上記従来技術の場合、その供給機構として試薬ピペッティング機構と呼ばれる方式を採用している。試薬ピペッティング機構は主に内部に試薬を吸引して保持するノズルと、そのノズルを3次元的に移動させる機構、試料をノズル内に吸引吐出させるための吸引吐出制御ポンプから成る。ポンプの吸引吐出動作を応答性良くノズルに伝達するために、ポンプからノズルの間の管路には純水が満たされている。ただし前記純水と試薬の混合を避けるために両者の間は空気で仕切られている。この空気層は試薬を吸引する前に空気をノズル内に吸引させることで形成させる。試薬の供給は以下の要領で行われる。まず3次元移動機構によりノズルが試薬容器内に浸され、内部に所定量の試薬を吸引する。その後試薬容器を離れて反応容器上部に移動し、ノズル内部の試薬を吐出する。試薬を吐出した後は、次の試薬への汚染を避けるためにノズル洗浄槽でノズル内部と外部を洗浄液で流す。試薬ピペッティング機構のノズルが移動する軌跡は決まっているため、その移動下部に試薬容器を位置させるための試薬容器の移動機構が設けられている。この試薬供給機構は、ノズルの3次元移動や、洗浄に比較的時間が掛かるため、単位時間当たりのテスト数には限界があるが、比較的多種類の項目について分析する場合には適したシステムである。 【0004】また別の試薬供給機構として、シリンジポンプと流路切替バルブと試薬吐出ノズルから成るディスペンサ機構がある。流路切替バルブには、各試薬容器からチューブが集まっている。また同バルブから同じ数のチューブが各試薬吐出ノズルに延びている。さらに流路切替バルブからは、試薬の流れを制御するためのシリンジポンプまで一本のチューブが繋がれている。まず初期状態として、試薬容器から切替バルブ、切替バルブから試薬吐出ノズルまでのチューブが各試薬が満たされる。この状態で、所望の試薬を吐出したい場合、切替バルブが動作して対応する試薬容器から伸びるチューブとシリンジポンプが接続される。シリンジポンプは吸引動作を行い、所定量の試薬を切替バルブを経てシリンジポンプ側のチューブへ引き込む。次に切替バルブが動作して、シリンジポンプから切替バルブまでのチューブと、切替バルブから試薬吐出ノズルに繋がるチューブと接続する。この状態でシリンジポンプが吐出動作を行いチューブ中の試薬を所定量反応容器中に吐出する。本方式では試薬の切替・供給が高速で出来る。また試薬吐出ノズルは試薬の種類だけあり、ノズルに続くチューブ内を洗浄する必要がない。ただし試薬吐出ノズルを試薬の種類毎に設ける必要があるため、使う試薬の種類が多い場合には適合しない。むしろ種類は少ないがテスト数の多い項目を分析する場合に適している。 【0005】さらに別の従来技術として、特開昭63-131066の自動分析装置がある。これは反応容器を保持した反応容器フォルダの移動軌跡に対して、試薬容器を保持した試薬容器フォルダの移動軌跡をオーバーラップさせることで、装置の小形化を図ることを第1の目的としている。試薬の吐出は各試薬容器の側面に一体形成されたピストンによって行われる。ピストンの駆動は、試薬の吐出位置に設けられたピストンロッド駆動装置によって行われる。吐出位置では、試薬容器のピストンロッド駆動装置が一時的に接続する。次にピストンロッドは上方へ引き上げられ、試薬容器中の試薬をピストン内に吸引する。最上部に至った段階で、ピストンを回転させる歯車と噛合い、その歯車によりピストンを180度回転させる。その際、ピストンの回転により吸引のために開いていた孔が閉じられ、反対に吐出口に繋がる孔が開く。ピストンロッドが下方へ動作すると、ピストン内の試薬は、前記孔を経て反応容器中に放出される。 【0006】一方、特開平7−60972公報にはインクジェットヘッドのノズルをABS樹脂製の流路基板と一帯に形成し、ノズル面を高撥水性とし、ノズル内部の流路を親水性として、インク吐出の勢いをよくし、部品点数を減らした安価なインクジェットヘッドの製造方法について記載されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の試薬供給機構には以下に示す問題点がある。 【0008】試薬ピペッティング機構の場合、次に上げる3つの問題点がある。まず第1は無駄な試薬量が発生するという点である。すなわちノズル内に吸引された試薬は純水と混ざり合わないように、その間に空気層が設けられているが、それでもノズル内壁を伝って純水は試薬の上部に混ざり合う。そこで混ざり合った試薬を分析に供しないようにするために、実際に分析に必要な試薬量より3割程度多めにノズル内に吸引する。本分析に供される試薬は非常に高価であり、したがって、この余分な試薬量は検査コストの無駄に繋がる。第2は洗浄に時間・液量が多く必要という点である。すなわちノズルを介して試薬相互が混合することを避けるために、毎回ノズルの内外を洗浄液で洗浄するが、そのための洗浄液量や洗浄時間が余分に必要という問題である。さらに第3の問題点はノズル内外を洗浄液で洗っても多少は残留が生じるため、測定値に誤差を発生させるという点である。 【0009】試薬ディスペンサ機構の場合、以下に述べる2つの問題点がある。まず第1は上記と同じく無駄な試薬量が発生するという点である。どの試薬に対しても迅速に試薬を吐出するためには、予め分析を開始する前に、全ての試薬を試薬容器から切替バルブまでのチューブ、切替バルブから吐出ノズルまでのチューブに満たしておく必要がある。この部分に満たされた試薬は、装置の停止時には無駄に捨てられることになる。試薬の種類、チューブの全長にもよるが、百人分以上に相当する試薬を無駄に捨てる場合もある。また第2の問題点は、切替バルブのメンテナンスが面倒な点である。すなわち切替バルブは次々と異なる試薬が通過するため、次第に汚れてくる。異なる試薬同志が触れることでバルブシートが固着する場合が出る。そのため定期的に切替バルブを分解洗浄する必要がある。 【0010】さらに第3の例であるピストン方式では、上記いずれの例と比較しても無駄な試薬量は少ないが、それでも装置のシャットダウン時に試薬容器からピペッタ先端まで流路があるため、試薬が残り、この部分が無駄に捨てられることとなる。また試料の濃度に応じて供給する試薬量は変更する必要があるが、ピストンの往復動作量は、ピストンの上部に設けられた回転させるための歯車の位置が固定されているため、予め決められた試薬量しか吐出することができない。さらにピストンは側面に設けられているため、試薬容器の位置より高い位置に試薬を一時汲み上げる必要がある。また試薬容器からピペッタ先端までの流路による圧力損失も無視できない。これらのためにある程度の圧力を与える必要があり、ピストンの駆動機構が複雑化・大形化する。すなわち簡素で小形なポンプの利用を阻害している。 【0011】以上、従来の試薬供給方式では、いずれの方式においても無駄な試薬量が存在するという点が問題である。また試薬ピペッティング機構では試薬間の相互汚染を防止するために多くの洗浄液が必要である。試薬ディスペンサ機構では定期的に面倒な分解洗浄が必要である。またピストン方式では予め決められた容量の試薬しか供給することができない。あるいは構造が複雑である。 【0012】上記の問題点を解決するためには、試薬の滴下方式、ポンプ構造および分析装置の構造等を改良する必要があると同時に、試薬滴下時の液切れ性を良好にし、滴下量の制御性を向上させる必要がある。そのためには、ノズルの構造や液切れ機能を改良することが重要となる。ノズルの機能改良に関する特開平7−60972公報に記載のアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)基板や撥水処理被膜は、耐薬品性が低く、流体としてインク用にはよいが、酸性や塩基性試薬を吐出するような化学分析に使用するには問題がある。 【0013】そこで本発明の目的は、試薬を無駄にせず、洗浄液をほとんど必要とせず、また定期的な分解洗浄も必要とせず、供給試薬量の微量制御が容易となり、簡素なノズルを備え、なおかつ高い吐出分解能と吐出安定性を有し、耐薬品性のノズルを備えた化学分析装置を提供することである。 【0014】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の化学分析装置は、サンプルを入れる複数の反応容器を保持する反応容器ホルダーと、反応容器中のサンプルに添加するべき各種試薬を一つ一つ入れる複数試薬容器と、該試薬容器の下部に取り付けられ、所定量の試薬を吸入し反応容器に滴下注入するポンプと、試薬が添加された後にサンプルの物性を計測する計測装置を備えた装置において、ポンプは、シリコン製のポンプ本体と、ポンプ本体の前面に接合され、板状で該板中心部にポンプ本体の流出口に接続する吐出孔を有するシリコン製のノズルとから構成され、このノズルの基板の表裏面及び吐出孔の内表面に、試薬に対して耐食性のある耐薬品層が形成され、さらに該基板の前面、または板の前面及び吐出孔の内面に、耐薬品層上にフッ素樹脂層、またはフッ素を含む化合物(例:フルオロカーボン化合物 CF3(CF2)m(CH2)nSi(OCH3)3)が形成されたことを特徴とする。 【0015】そして、耐薬品層は、二酸化シリコン、Au、Ag、Ptまたは耐食性合金からなるものがよい。またフッ素樹脂層表面を凹凸にしたものが好ましい。さらにノズルの基板にある吐出孔の先端エッジを丸く面取りしたものが好ましい。 【0016】吐出ポンプとノズルの材質をシリコンにすると、半導体製造プロセスを使用することにより微細な加工が可能となり、試薬容器への実装ができる。さらに、シリコンの表面に二酸化シリコン、Au、Ag、Ptまたは合金の層を形成すれば、耐薬品性はいっそう向上する。また、ノズル表面に微細な凹凸を形成すれば、表面の形状効果により試薬をさらにはじき易くなる。なお吐出ポンプの表面にも二酸化シリコン層を形成する。 【0017】また、ノズルの吐出孔の先端エッジ部を、その断面が円弧となる構造にすることにより、フッ素樹脂層の厚さが均一化され、したがってエッジ部のフッ素樹脂層が薄い場合に生じる層の剥離を防止できる。 【0018】 【発明の実施の形態】本発明の化学分析装置の実施の形態について図1〜図13を用いて説明する。図1は本発明の試薬供給機構を備えた化学分析装置の全体構成図、図2はその試薬供給機構の詳細説明図、図3は図2の平面図、図4は本発明にかかる試薬供給機構に備えられたポンプノズルの分解斜視図、図5〜8はそれぞれ表面部の構成を異にする各種ノズルの断面図である。図9は本発明のノズルと比較例のノズルの液切れ性、耐久性を試験した結果である。図10は、実施形態であるノズルの試薬吐出孔から試薬が吐出された後の試薬の状態を示すノズルの断面図、図11は、本発明による実施の形態を呈していない場合のノズルの断面図である。図12は、本発明によるノズルの表面の一部を拡大した斜視図で、図13は、本発明による他のノズルの表面の一部を拡大した斜視図で、図14は、本発明による他のノズルの表面の一部を拡大した側面図である。 【0019】まず図1、図2、図3を用いて本発明の化学分析装置の構成について説明する。図1(a)は化学分析装置11の平面図、図1(b)はその正面図である。化学分析装置11上部には試料20の入った複数の試験管21を平面的に円状に並べて保持するサンプルホルダー22が設けられている。またサンプルホルダー22が並ぶ円の脇には試験管21内の試料22を吸引するためのサンプルピペッタ31が設けられている。サンプルピペッタ31は、試験管21から試料を吸引し内部に保持するノズル32、そのノズル32を昇降させ、旋回移動させる3次元駆動機構33、およびノズル32内に試料を吸引したり、吐出するポンプ(図示なし)が設けられている。サンプルホルダー22は、複数の試験管21を逐一サンプルピペッタ31のノズル32の直下に位置せしめるために、回転駆動機構23にて回転駆動するようになっている。サンプルホルダー22の隣りには、サンプルピペッタ31をはさむかのように、反応ディスク42が設置されている。反応ディスク42は、複数の反応容器41を平面的に円状に並べて保持し、順次回転してサンプルピペッタ31のノズル32のもう一方の降下位置に、反応容器41を移動させるようになっている。また各反応容器41の下半分は恒温水が流れる恒温槽43に浸っている。サンプルピペッタ31のノズル32の降下位置に順次反応容器を移動させるために、反応ディスク42は反応ディスク回転駆動機構44で支持されている。反応ディスク42の外周縁の上方には、上記サンプルピペッタ31の他、第1の試薬供給部51、第2の試薬供給部61、反応容器洗浄機構71、分光計測部81が順に設けられている。 【0020】その内、試薬供給部51の構成について図2、図3を用いて詳しく説明する。試薬供給部51は、大別して、複数の試薬容器52、該試薬容器52を保持する試薬ホルダー53、マイクロポンプ54、試薬ホルダー回転駆動機構55の4つの部分から構成されている。試薬ホルダー53は中心軸56の周りに試薬容器52を円周上に保持させる構造になっている。保持される試薬容器52の数と同数の膜形ポンプ54が試薬ホルダー53の底部に設けられている。試薬容器52の底面には接続孔521があり、試薬ホルダー53の底部に向かって強く押しつけることで、マイクロポンプ54の吸入孔541と接続するようになっている。またマイクロポンプ54の先端には、ノズル100が接合されており、ノズル100に形成された吐出孔542が鉛直下方に向かって設けられている。なお、ここでノズル100は、後述するいくつかのノズルを総称したものである。試薬容器52の側面には試薬の種類を記載したデータが書き込まれた磁気部522が設けられている。また試薬ホルダー53の対応する円周位置には磁気部522のデータを読み込むための磁気リーダ531が設けられている。磁気リーダからの信号線は、判断部57に接続されている。さらに判断部57はマイクロポンプ制御部58と接続されている。マイクロポンプ54はマイクロポンプ制御部58にて駆動される。試薬ホルダー53は、試薬ホルダー回転駆動機構55にて回転移動される構成となっている。なお、第2の試薬供給部61は第1の試薬供給部51と同様に構成されている。 【0021】図4は、第1、第2の試薬供給部51、61のマイクロポンプ54と吐出孔542とに取り付けるノズル100の外形図である。なお、マイクロポンプの内部構造は図示しない。ノズル100には、吐出孔101(上記吐出孔542に同じ)が設けら、そしてマイクロポンプ54本体の出口と接続する吐出孔101の上部は皿穴加工されている。ここで示すノズル100は矩形の板状であるが、円板状、楕円板状およびその他の形状でもよい。 【0022】以下にマイクロポンプの先端に取り付けるノズルの実施例を説明する。 (実施例1)図5は、実施例1のノズル100Aの構成を示す断面図(図4のAA断面)である。ノズル100Aは、シリコンからなる板状で該板中心に吐出孔が形成されたノズル基板102と、ノズル基板102の表面を形成する二酸化シリコン層103と、ノズル基板102の下面及び吐出孔101内面において二酸化シリコン層103上に形成されたフッ素樹脂層104と、から構成されている。ノズル基板102の材質すなわちシリコンは、半導体プロセスで代表されるマイクロマシニング加工により、微小かつ複雑な形状の加工が可能である。二酸化シリコン103層は熱酸化により形成して、ノズル基板102の耐薬品性を向上させる。またフッ素樹脂層104はノズル基板102の下面及び吐出孔101内面に撥水性を与える。 【0023】(実施例2)実施例1と同様にシリコンのノズル基板に熱酸化シリコン層を形成した後、フッ素を含む化合物層を形成した。フッ素を含む化合物はフルオロアルキルシランである。 【0024】(実施例3)シリコンのノズル基板の吐出孔先端のエッジ部を、断面が円弧となるように加工した。その後、実施例1と同様にノズル基板に熱酸化シリコン層を形成し、次いでフッ素樹脂層104を形成した。 【0025】(実施例4)図6は、実施例4のノズル100Bの構成を示す断面図である。ノズル基板102は、図5と同様シリコンであり、その表面には熱酸化シリコン103を形成した。熱酸化シリコン103の上に、Au層107を形成した。さらに、ノズルの試薬吐出側に、Au層107の上にフッ素樹脂層104を形成した。Au層107を設けることにより、フッ素樹脂層104にピンホールが存在し、試薬が浸透した場合でも、Auは耐アルカリ性、耐酸性が高く溶出しないため、フッ素樹脂層104は剥離することがない。さらに、Auが試薬吐出側と反対側の面に形成されていると、この面は、マイクロマイクロポンプ54本体と接合する面でありAuが存在することにより接合性を向上させる。このAu層107は、Auに限定するものではなく、耐薬品性が高いものであればいずれでもよく、たとえばハステロイ等の超合金、ポリプロピレン等の樹脂やSi3N4等のセラミックス、AgやPt等でもよい。また、マイクロポンプ54本体との接合性(低温接合または拡散接合における接合性)を向上させるためには金属を使用することが望ましい。 【0026】(実施例5)図7に示す実施例5のノズル100Cは、図6に示すノズルで熱酸化シリコン層がない場合であり、シリコン基板102の上にAu層107を形成し、その上にフッ素樹脂層104を形成した。これにより、Auが耐薬品性であるために熱酸化シリコン層を無くし、加工工程を簡略することができる。 【0027】(実施例6)図8は実施例6のノズル100Dの構成を示す断面図である。ノズル100Dは、シリコン基板102にAu層107を形成し、ノズルの全面にフッ素を含む化合物114を形成した場合である。この場合、マイクロポンプ54本体との接合性を向上させるために、接合面のフッ素樹脂層114の上にさらにAu層115を形成した。 【0028】(実施例7)シリコンのノズル基板102の表面に、マイクロマシンプロセスにより図12に示したな格子状の凹凸を形成した。その後、実施例1と同様の熱酸化シリコン層103、フッ素樹脂層104を形成した。 【0029】(実施例8)シリコンのノズル基板102の表面に、粒径120nmの二酸化シリコンの微粒子をコーティングした。その後、実施例1と同様のフッ素樹脂層104を形成した。 【0030】(比較例)シリコンのノズル基板102の表面に、熱酸化により二酸化シリコン層を形成した。 【0031】上記の実施例で形成した熱酸化による二酸化シリコン層は、特に二酸化シリコンに限ることはなく、基板素材であるシリコンの化合物であれば良い。たとえば窒化シリコンSi3N4などである。 【0032】Au層の形成はスパッタを用い、ノズル基板の試薬吐出側面とその反対面を順次コーティングしたが、2面同時にスパッタ可能な装置があれば、スパッタ時間を短縮することが可能である。 【0033】なお、ノズル素材はマイクロマシンプロセスの行い易さからシリコンを使用したが、特にシリコンに限定することはなく、耐アルカリ性のステンレス鋼(SUS)等の金属材料、あるいは耐酸性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂でもよい。 【0034】また、図5〜図8で示したフッ素樹脂層は、ノズルの吐出孔の内壁面にも形成されているが、ノズル基板102の下面において必須であり、吐出孔の内壁面には、形成しなくてもよい。これは、フッ素樹脂層の撥水性の点から、液切れ時の液と空気との界面の位置が、ノズル先端面となるか吐出孔内部になるかの違いである。 【0035】以上の実施例1〜8と比較例の各ノズルについて試薬の吐出試験を実施し、試薬切れ性とフッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層の耐久性を検討した。吐出試験方法は、試薬を繰り返し吐出したときの、吐出された試薬量を測定し、その変動量で評価した。評価結果は、試薬の変動量が、吐出量の10%以内の場合を良好とした。試薬の変動量が10%以上となった場合、検体の分析結果に影響を及ぼすことは、本発明の分析装置が光学的測定を利用していることからの制約条件である。耐久性は、吐出試験後のノズルの濡れ性とフッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層の剥離の有無を目視により判定した。 【0036】吐出試験結果を図9に示す。吐出性能は実施例1〜8のノズルは、いずれも良好である。比較例のノズルは、不良であった。耐久性は、実施例3〜8は良好であった。実施例1、2と比較例は不良であった。 【0037】図10は、ノズルから試薬を吐出し、試薬が途切れる寸前の様子を示す図である。フッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層104の表面張力が低いため、試薬は液玉116となり、この液玉116の大きさがある一定の大きさになるとフッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層104の表面張力の影響を受け、ノズル孔に充満している試薬から離脱する。このため試薬が途切れ易くなり、吐出する試薬の量の安定性も向上する。 【0038】一方、図11は、フッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層を形成していないノズルで、試薬を吐出した後の試薬の状態を示す図である。試薬117は、ノズルの試薬吐出側に濡れ広がり、次に試薬を吐出するときには、この濡れ広がった試薬分も吐出することになり、試薬の量の安定性がよくない。また、試薬の切れ性も低い。 【0039】上記で説明した各実施例のノズルを使用すると、試薬の吐出量の変動が10%以内になり、高性能な化学分析装置となる。 【0040】フッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層は試薬に濡れにくいことが必要である。アルコール系試薬は、水系試薬より表面張力が小さいため、接触角は低くなるが、65度以上であれば液切れ性は良好であった。 【0041】フッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層の表面が平滑であれば、水に対する接触角は、100度〜110度程度である。この接触角をさらに、向上させるためには、フッ素を含む化合物層の表面に微細な凹凸を形成することが好ましい。具体的には、ノズル基板がシリコンの場合は、マイクロマシニングを用いて、シリコンの表面に図12に示す格子状の突出部118と窪み部119または図13に示す突出部120と窪み部121を形成し、その上にフッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層をコーティングした。突出部118、120と窪み部119、121の構造は、円筒状、円錐状、角錐状、角柱状、樹枝状、花弁状等およびこれらの複合に形成されていればよい。 【0042】また、ノズル基板がシリコン以外の場合は、ノズル基板の上にシリコンをコーティングすればマイクロマシニングを使用できる。また、樹脂の場合は、イオン注入やプラズマ照射等のドライプロセスにより表面に凹凸を形成させることが可能となる。また、金属の場合は、上記ドライプロセスに加え、化合物析出やエッチング等のウェットプロセスも有効である。 【0043】図14は、表面に凹凸を形成させる他の方法を示した図である。基板120の上に微粒子121を単層または多層に配列して、凹凸を形成する。このとき、粒子121の粒径が小さすぎると、液滴の大きさに対する凹凸の効果がなくなり、大きすぎると凹部に試薬が浸入し濡れてしまうため、理論的には粒子121は直径5nm〜100μmでよいが、実用上、低コストで入手容易な粒子は10〜500nmである。粒子の配列は、粒子をアルコールに分散した液にノズルをディップして配列させたが、単一粒径のみでも混合粒径でも良く、また、配列方法としては、一回で配列、数回で配列する場合のいずれでもよく、スプレー法等で粒子を配列させてもよい。 【0044】図12、図13、図14で説明した表面の凹凸は、少なくとも統計的に自己相似性を有しフラクタル次元が定義できる状態であり、そのフラクタル次元が略2.2以上であれば液切れ性の向上に効果がある。しかし、フラクタル次元が略2.8以上の場合は複雑性が増し、乱雑過ぎて強度的に凸部が壊れ易くなったりして、凹凸の効果が得られなくなる。 【0045】フッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層の表面張力は、水系試薬の場合、その接触角を65度以上にするため、30mN/m以下であることが望ましい。表面張力は、ヤングの固気液界面の釣り合いの式を用い、固液の界面張力が固体の表面張力よりも十分小さいと仮定し、水の表面張力を72mN/mとして算出した。また、接触角65度以上で、吐出試薬の変動量が10%以内となり、液切れ性が良好であることは確認済みである。 【0046】なお、フッ素樹脂層の膜厚は、ディップ条件に依存するが今回は1〜20μmの範囲であった。フッ素を含む化合物層の膜厚は、5〜100nmであった。フッ素樹脂またはフッ素を含む化合物をコーティングする場合、その膜厚はノズルのエッジ部分において薄くなり、熱酸化シリコンまで貫通する孔が発生し易くなる。この場合、アルカリ性の試薬は熱酸化シリコンを溶解し、フッ素を含む化合物層は剥離する。エッジ部分を、図10で示すように、断面形状が円弧111、112となるようにSR加工すれば、フッ素樹脂層またはフッ素を含む化合物層の膜厚が均一となり、貫通孔が発生せず、アルカリ性試薬に対してもフッ素を含む化合物層が剥離しないことは図9で示した試薬吐出試験の結果の実施例3の結果から明らかである。 【0047】 【発明の効果】本発明によれば、試薬を無駄にせず、洗浄液をほとんど必要とせず、また定期的な分解洗浄も必要とせず、試薬供給量の微量制御が容易となり簡素なノズルを備え、なおかつ、試薬の液切れ性がよく、吐出精度が高く、耐薬品性の高いノズルを備えた化学分析装置を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)12月12日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】鵜沼 辰之
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| 【公開番号】 |
特開平11−174062 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)7月2日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−342391 |
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