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【発明の名称】 蛍光X線分析装置
【発明者】 【氏名】河野 久征

【氏名】倉岡 正次

【要約】 【課題】試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差の少なくとも一方を、簡単な構成で短時間に除去できる蛍光X線分析装置を提供する。

【解決手段】測定に用いる絞りブロック15に設けたスリットシステム14等を利用して試料1とX線源4間の距離を一定に調整する高さ調整手段18、および前記絞りブロック15に設けたモニター試料12等を利用して、モニター試料12の測定強度に基づいて分析対象の試料1の測定強度の測定中の真空度を推定して補正する補正手段20等を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 試料が固定される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料台のX線源に対する高さを調整する高さ調整器と、試料から発生する2次X線の強度を測定する検出手段と、1次X線および検出手段に入射する2次X線を通過させるスリットシステムと、試料への1次X線の照射領域を制限する絞りとを有する絞りブロックと、その絞りブロックを、前記スリットシステムまたは絞りがX線源の前方に位置するように、選択的に位置させる選択手段と、選択手段によりX線源の前方にスリットシステムを位置させ、X線源から試料に1次X線を照射させ、検出手段に試料から発生する2次X線の強度を測定させながら、高さ調整器により、試料台のX線源に対する高さを変化させ、2次X線の測定強度が最大になる高さに調整する高さ調整手段とを備えた蛍光X線分析装置。
【請求項2】 試料が固定される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料台のX線源に対する高さを調整する高さ調整器と、試料から発生する2次X線の強度を測定する検出手段と、1次X線および検出手段に入射する2次X線を通過させるスリットシステムと、測定中の真空度に応じて測定される2次X線の強度が変化するモニター試料と、試料への1次X線の照射領域を制限する絞りとを有する絞りブロックと、その絞りブロックを、前記スリットシステム、モニター試料または絞りがX線源の前方に位置するように、選択的に位置させる選択手段と、選択手段によりX線源の前方にスリットシステムを位置させ、X線源から試料に1次X線を照射させ、検出手段に試料から発生する2次X線の強度を測定させながら、高さ調整器により、試料台のX線源に対する高さを変化させ、2次X線の測定強度が最大になる高さに調整する高さ調整手段と、選択手段によりX線源の前方に絞りを位置させ、X線源から試料に1次X線を照射させ、検出手段に試料から発生する2次X線の強度を測定させる測定手段と、その測定手段の作動の前後に、選択手段によりX線源の前方にモニター試料を位置させ、X線源からモニター試料に1次X線を照射させ、検出手段にモニター試料から発生する2次X線の強度を測定させ、それらモニター試料の測定強度に基づいて前記測定手段による試料の測定強度の測定中の真空度を推定することにより、試料の測定強度を補正する補正手段とを備えた蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差の少なくとも一方を、簡単な構成で短時間に除去できる蛍光X線分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、蛍光X線分析においては、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差は、大きな問題であった。このうち、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差については、例えば、X線源の側方に、レーザ光を用いて距離測定を行う光学変位センサを備え、試料をX線源の下方から変位センサの下方へ水平移動させてX線源との距離を測定してこれが一定の値になるよう試料の高さを調整した後、X線源の下方へ水平移動させて戻すことにより、除去している。また、測定中の真空度の変化による測定誤差については、例えば、真空引きに十分な時間をかけ、真空度を測定しその真空度が一定の高真空になるように制御することにより、除去している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、変位センサを用いて試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差を除去する装置では、変位センサや試料を厳密に水平移動させる機構が必要であり、装置の構成が複雑になる。また、測定する真空度が一定の高真空になるように制御して測定中の真空度の変化による測定誤差を除去する装置では、高精度の真空計や制御機構が必要で装置の構成が複雑になり、また、一定の高真空に到達するまでに、すなわち測定開始までに時間がかかる。測定開始までの待ち時間を短縮するために、いわゆる高真空用ポンプを使用すること、例えばドライポンプ(オイルレスポンプ)とTMP(分子ポンプ)とを連続して使用することも考えられるが、待ち時間の短縮には限度がある。
【0004】本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差の少なくとも一方を、簡単な構成で短時間に除去できる蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1の蛍光X線分析装置は、まず、試料が固定される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料台のX線源に対する高さを調整する高さ調整器と、試料から発生する2次X線の強度を測定する検出手段とを備えている。また、この装置は、1次X線および検出手段に入射する2次X線を通過させるスリットシステムと、試料への1次X線の照射領域を制限する絞りとを有する絞りブロックと、その絞りブロックを、前記スリットシステムまたは絞りがX線源の前方に位置するように、選択的に位置させる選択手段とを備えている。
【0006】さらに、この装置は、選択手段によりX線源の前方にスリットシステムを位置させ、X線源から試料に1次X線を照射させ、検出手段に試料から発生する2次X線の強度を測定させながら、高さ調整器により、試料台のX線源に対する高さを変化させ、2次X線の測定強度が最大になる高さに調整する高さ調整手段を備えている。
【0007】請求項1の装置によれば、測定に用いる絞りブロックに設けたスリットシステムと、測定に用いる検出手段とを利用して、試料とX線源間の距離を一定に調整するので、変位センサや水平移動機構が不要で装置の構成が簡単で済む。したがって、この装置によれば、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差を簡単な構成で短時間に除去できる。
【0008】請求項2の蛍光X線分析装置は、まず、試料が固定される試料台と、試料に1次X線を照射するX線源と、試料台のX線源に対する高さを調整する高さ調整器と、試料から発生する2次X線の強度を測定する検出手段とを備えている。また、この装置は、1次X線および検出手段に入射する2次X線を通過させるスリットシステムと、測定中の真空度に応じて測定される2次X線の強度が変化するモニター試料と、試料への1次X線の照射領域を制限する絞りとを有する絞りブロックと、その絞りブロックを、前記スリットシステム、モニター試料または絞りがX線源の前方に位置するように、選択的に位置させる選択手段とを備えている。
【0009】さらに、この装置は、選択手段によりX線源の前方にスリットシステムを位置させ、X線源から試料に1次X線を照射させ、検出手段に試料から発生する2次X線の強度を測定させながら、高さ調整器により、試料台のX線源に対する高さを変化させ、2次X線の測定強度が最大になる高さに調整する高さ調整手段を備えている。さらにまた、この装置は、選択手段によりX線源の前方に絞りを位置させ、X線源から試料に1次X線を照射させ、検出手段に試料から発生する2次X線の強度を測定させる測定手段を備えている。さらにまた、この装置は、その測定手段の作動の前後に、選択手段によりX線源の前方にモニター試料を位置させ、X線源からモニター試料に1次X線を照射させ、検出手段にモニター試料から発生する2次X線の強度を測定させ、それらモニター試料の測定強度に基づいて前記測定手段による試料の測定強度の測定中の真空度を推定することにより、試料の測定強度を補正する補正手段を備えている。
【0010】請求項2の装置によれば、測定に用いる絞りブロックに設けたスリットシステムと、測定に用いる検出手段とを利用して、試料とX線源間の距離を一定に調整するので、変位センサや水平移動機構が不要で装置の構成が簡単で済む。また、測定に用いる絞りブロックに設けたモニター試料と、測定に用いる検出手段とを利用し、モニター試料の測定強度に基づいて分析対象の試料の測定強度の測定中の真空度を推定して補正するので、高精度の真空計や制御機構が不要で装置の構成が簡単で済み、一定の高真空に到達する前に測定を開始できるので、測定作業全体が短時間で済む。したがって、この装置によれば、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差の両方を、簡単な構成で短時間に除去できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施形態の装置を図面にしたがって説明する。まず、この装置の構成について説明する。図1に示すように、この装置は、試料1が固定される試料台2と、試料1に1次X線3を照射するX線源であるX線管4と、試料台2のX線管4に対する高さを調整する高さ調整器5と、試料1から発生する蛍光X線、散乱線等の2次X線6の強度を測定する検出手段7とを備えている。ここで、検出手段7は、発散スリット8、分光素子9、受光スリット10および検出器11からなる。また、検出手段7は、試料1に含まれる分析対象の元素の数に応じて、X線管4の周囲に、複数備えてもよい。
【0012】また、この装置は、1次X線3および検出手段7に入射する2次X線6を通過させるスリットシステム14と、測定中の真空度に応じて測定される蛍光X線6の強度が変化するモニター試料12(図2)と、試料1への1次X線3の照射領域を制限する絞り13(図3)とを有する絞りブロック15と、その絞りブロック15を、前記スリットシステム14、モニター試料12(図2)または絞り13(図3)がX線管4の前方に位置するように、紙面垂直方向に移動させて選択的に位置させる選択手段17とを備えている。なお、図1ないし図3において、絞りブロック15、発散スリット8および受光スリット10は、断面で示す。
【0013】ここで、スリットシステム14は、絞りブロック15に形成された、1次X線3を通過させるスリット14aと検出手段7に入射する2次X線6を通過させるスリット14bとからなる。また、図2に示すように、例えば、シリコンウエハ上の付着物を分析対象とする場合には、含まれることが予想される元素のうち、発生する蛍光X線6の吸収が真空度に鋭敏なもの、例えばほう素を、シリコンウエハに付着させたものをモニター試料12とすればよい。モニター試料12の上方には、モニター試料用絞り16が形成されている。なお、図3に示す絞り13は、1次X線3の照射領域の大きさに応じて、紙面垂直方向に複数備えてもよい。また、1次X線3および2次X線6は、いわゆる針状のものに限らず、紙面垂直方向に幅をもつ帯状のものでもよく、その場合には、スリットシステム14、モニター試料用絞り16、絞り13、発散スリット8および受光スリット10等も、対応させて紙面垂直に延びた形状とする。
【0014】絞りブロックは、円板状として、その周囲にスリットシステム、モニター試料および絞りを有するものであってもよく、その場合、選択手段は、その円板状の絞りブロックを中心軸回りに回転させて、スリットシステム、モニター試料または絞りをX線管の前方に選択的に位置させるものとすればよい。なお、複数の絞りを有する絞りブロックと、いずれかの絞りがX線管の前方に位置するように絞りブロックを選択的に位置させる選択手段とは、蛍光X線装置に通常備えられ、本装置においては、その絞りブロックに、スリットシステム14と、モニター試料12(図2)とを設けている。
【0015】さらに、この装置は、以下の高さ調整手段18、測定手段19および補正手段20を含む制御手段21を備えている。図1に示すように、高さ調整手段18は、選択手段17によりX線管4の前方にスリットシステム14を位置させ、X線管4から試料1に1次X線3を照射させ、検出手段7に試料1から発生する2次X線6の強度を測定させながら、高さ調整器5により、試料台2のX線管4に対する高さを変化させ、2次X線6の測定強度が最大になる高さに調整する。
【0016】また、図3に示すように、前記測定手段19は、選択手段17によりX線管4の前方に絞り13を位置させ、X線管4から試料1に1次X線3を照射させ、検出手段7に試料1から発生する蛍光X線6の強度を測定させる。さらに、図2に示すように、前記補正手段20は、その測定手段19の作動の前後に、選択手段17によりX線管4の前方にモニター試料12を位置させ、X線管4からモニター試料12に1次X線3を照射させ、検出手段7にモニター試料12から発生する蛍光X線6の強度を測定させ、それらモニター試料12の測定強度に基づいて前記測定手段19による試料1の測定強度の測定中の真空度を推定することにより、試料1の測定強度を補正する。
【0017】次に、この装置の動作について説明する。まず、図1に示すように、あらかじめ、例えば何も付着させていないブランクウエハが基準となる試料1として試料台2に固定され、制御手段21に距離特性を求めるべき旨が入力されると、高さ調整手段18は、選択手段17によりX線管4の前方(下方)にスリットシステム14を位置させ、X線管4からブランクウエハ1に1次X線3を照射させ、検出手段7にブランクウエハ1から発生するけい素(シリコン)の特性X線、Si−Kα線である蛍光X線6の強度を測定させながら、高さ調整器5により、試料台2のX線管4に対する高さを変化させ、図4に示すような、蛍光X線6の測定強度Iの、試料1とX線管4(厳密にはX線管4のターゲット)間の距離dT に対する特性を求め、グラフ、表または式の形で記憶する。
【0018】また、高さ調整手段18は、この距離特性において蛍光X線6の測定強度Iが最大IMAX になる試料台2の高さを、基準高さとして記憶する。ここで、前述したように、スリットシステム14は、1次X線3を通過させるスリット14aと、検出手段7に入射する蛍光X線6を通過させる、すなわち検出手段7における発散スリット8、分光素子9および受光スリット10等の光学系に合致したスリット14bとからなるから、蛍光X線6の測定強度Iが最大IMAX になるとき、試料1の表面はX線管4に対し、図1に示すような、発生する蛍光X線6が、最大強度でスリット14bを通過して検出手段7に入射する高さにある。換言すると、試料1の表面とX線管4(厳密にはX線管4のターゲット)間の距離は、最適な距離dTGになっている。ブランクウエハ、すなわち基準となる試料1におけるこのような試料台2の最適の高さを、基準高さとするのである。
【0019】以後、試料1が固定されるときには、試料台2はまずこの基準高さにあるものとする。なお、これら距離特性と基準高さは、装置固有のものであり、経時変化を考慮しても一定期間(例えば24時間)ごとに求めておけば足りるので、手動で求めて高さ調整手段18に記憶させてもよい。
【0020】また、図2に示すように、あらかじめ、制御手段21に真空度特性を求めるべき旨が入力されると、装置の測定雰囲気の真空引きが開始され、補正手段20は、選択手段17によりX線管4の前方にモニター試料、前述したように例えばほう素を付着させたシリコンウエハ12を位置させ、X線管4からモニター試料12に1次X線3を照射させ、検出手段7にモニター試料12から発生するほう素の特性X線、B−Kα線である蛍光X線6の強度を測定させ、図5に示すような、蛍光X線6の測定強度 MIの時間tに対する時間特性を求め、グラフ、表または式の形で記憶する。なお、添字 Mは、モニター試料12に関する数値であることを示す。
【0021】ここで、蛍光X線6の測定強度 MIと雰囲気の密度ρx (真空度に関係する)に対する関係が、次式(1)に示すように、既知とし得る数値を用いて表されるので、これも記憶する。ただし、実際には、X線管4から試料1までの吸収は、試料1から検出器11までの吸収に比べて、きわめて小さいので、これを無視して式(1)において第2項 exp{−(μ/ρ)S ・ρx MS }を1としてもよい。なお、これら時間特性と式(1)は、装置固有のものであり、経時変化を考慮しても一定期間(例えば24時間)ごとに求めておけば足りるので、手動で求めて補正手段20に記憶させてもよい。
【0022】
【数1】

【0023】また、簡単のため、以上の高さ調整手段18と補正手段20との動作において、それぞれ図1または図2に表した同一の検出手段7を用いて説明したが、実際には、両検出手段7は測定する蛍光X線6の波長が異なるから、同一のものでなく、少なくとも一方は紙面上にない。以下において、測定手段19の動作説明も含めて、同様である。
【0024】以上で前もっての準備が終わり、図1に示すように、試料台2に分析対象である試料1、例えばほう素を付着物として有するシリコンウエハ1が固定される。このとき、前述したように、試料台2は前記基準高さにあるが、試料1の厚みやそりのばらつきにより、図4に示すように、試料1の表面とX線管4との間の距離dT1には、前記最適の距離dTGから例えば±30μm程度の範囲でずれdC が存在し得る。そこで、制御手段21にこの試料1について測定を行うべき旨が入力されると、まず、図1の高さ調整手段18が、選択手段17によりX線管4の前方にスリットシステム14を位置させ、X線管4から試料1に1次X線3を照射させ、高さ調整器5により、試料台2のX線管4に対する高さを、少なくとも2種類の高さで、例えば基準高さから上下に0.3mm変化させ、検出手段7に試料1から発生する蛍光X線6の強度IA ,IB を測定させる。
【0025】高さ調整手段18は、この2点の測定結果IA ,IB を、記憶した図4の距離特性にあてはめて、図4上のdTG−dT1として、前記ずれdC を求め、高さ調整器5により、試料台2を基準高さからdC だけ上昇させることにより、この試料1において、蛍光X線6の強度が最大になる試料台2の最適の高さに調整する。これにより、その試料1について、試料1の表面がX線管4に対し、図1に示すような、発生する蛍光X線6が、最大強度でスリット14bを通過して検出手段7に入射する最適の高さになる。なお、このような動作によらず、分析対象試料1ごとに、図4に示すような距離特性を求めて、測定される蛍光X線6の強度が実際に最大になる高さに、試料台2の高さを調整してもよい。
【0026】この装置によれば、測定に用いる絞りブロック15に設けたスリットシステム14と、測定に用いる検出手段7とを利用して、試料1とX線管4間の距離を一定dTGに調整するので、変位センサや水平移動機構が不要で装置の構成が簡単で済む。すなわち、この装置によれば、試料1とX線管4間の距離dT のばらつきによる測定誤差を簡単な構成で除去できる。また、高さ調整において測定する蛍光X線6としては、分析対象の試料1から発生するもののうち、吸収が真空度に鈍感なもの、例えば以上に説明した場合ではSi −Kα線を採用することが望ましく、そうすれば、装置内の真空度が高真空に達しないうちに高さ調整を行うことができ、測定作業全体をより短時間で済ませることができる。
【0027】次に、図2に示すように、補正手段20は、後述する測定手段19の作動の前に、選択手段17によりX線管4の前方にモニター試料12を位置させ、X線管4からモニター試料12に1次X線3を照射させ、検出手段7にモニター試料12から発生するほう素の特性X線、B−Kα線である蛍光X線6の強度を、例えば1秒間測定させ、その測定強度 M0 を記憶する。
【0028】続いて、図3に示すように、測定手段19は、選択手段17によりX線管4の前方に絞り13を位置させ、X線管4から分析対象の試料1に1次X線3を照射させ、検出手段7に試料1から発生するB−Kα線である蛍光X線6の強度を、例えば1秒間ずつn回すなわちn秒間測定させ、それらの測定強度I1 〜In を記憶する。
【0029】この測定手段19の作動の後にさらに続いて、図2に示すように、補正手段20は、選択手段17によりX線管4の前方にモニター試料12を位置させ、X線管4からモニター試料12に1次X線3を照射させ、検出手段7にモニター試料12から発生するB−Kα線6の強度を、例えば1秒間測定させ、その測定強度Mn+1 を記憶する。
【0030】そして、補正手段20は、以下のように、記憶したモニター試料12の測定強度 M0 Mn+1 に基づいて、記憶した試料1の測定強度I1 〜In の測定中の雰囲気の密度ρ1 〜ρn (真空度に関係する)を推定することにより、試料1の測定強度I1 〜In を補正する。まず、モニター試料12の測定強度 M0 Mn+1 を図5の時間特性に当てはめ、対応する時刻を0,n+1とする。また、横軸において0からn+1までをn+1等分することにより、試料1についてn回測定した1からnの各回に対応する時刻を求め、さらに、各時刻に対応すべきモニター試料12の測定強度(実際には測定していない) M1 Mn を求める。そして、時刻0,n+1における雰囲気の密度ρ0 ,ρn+1 を、式(1)を変形した次式(2),(3)により算出し、同様に、時刻1〜nにおける雰囲気の密度ρ1 〜ρn を、次式(4)により推定算出する。
【0031】
【数2】

【0032】
【数3】

【0033】
【数4】

【0034】ここで、試料1の測定強度Ij (I1 〜In )は、式(1)のモニター試料12の測定強度 MIと同様に、次式(5)で表されるので、補正手段20は、前記求めた雰囲気の密度ρ1 〜ρn を用いて、次式(6)により、試料1の測定強度Ij から、この装置における最高到達真空度において測定されるべき1回当たり(1秒当たり)の平均の強度 CIを求める。
【0035】
【数5】

【0036】
【数6】

【0037】ほう素以外の元素について、対応する検出手段7で測定する場合にも、対応する既知とし得る数値(μ・ρ)S ,(μ・ρ)D ,dD 等と、前記求めた雰囲気の密度ρ1 〜ρn (ほう素以外の元素についても適用できる)とを用いて、同様に、その元素の特性X線について、試料1の測定強度Ij から、この装置における最高到達真空度において測定されるべき平均強度 CIを求める。
【0038】なお、高さ調整手段18による、分析対象試料1における試料台2の高さ調整は、補正手段20による、1回目のモニター試料12の蛍光X線6の強度 M0の測定と、測定手段19による、その分析対象試料1の蛍光X線6の強度I1 〜In の測定との間に行ってもよい。
【0039】この装置によれば、測定に用いる絞りブロック15に設けたモニター試料12と、測定に用いる検出手段7とを利用し、モニター試料12の測定強度 M0 Mn+1 に基づいて分析対象の試料1の測定強度I1 〜In の測定中の真空度を推定して補正するので、高精度の真空計や制御機構が不要で装置の構成が簡単で済み、一定の高真空に到達する前に測定を開始できるので、測定作業全体が短時間で済む。したがって、前記高さ調整手段18による効果と併せて、この装置によれば、試料1とX線管4間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差の両方を、簡単な構成で短時間に除去できる。
【0040】次に、本発明の第2実施形態の装置を図6にしたがって説明する。第2実施形態の装置は、高さ調整手段18の作動時に使用される検出手段27、すなわちスリットシステム14に対応する検出手段27の構成が、前記第1実施形態の装置における検出手段7(図1)と異なる。具体的には、この検出手段27は、分光素子を含まず、発散スリット8、受光スリット10、X線シャッター22および検出器11からなる。高さ調整手段18は、作動時に、進退手段23により検出器11の前方からX線シャッター22を退避させ(図6に示す状態)、非作動時には、進退手段23により検出器11の前方にX線シャッター22を進出させる。
【0041】スリットシステム14に対応する検出手段27に分光素子を用いないのは、前述したように高さ調整において測定する蛍光X線6としてSi −Kα線を採用すると、分析対象の試料1が例えば厚さ数μmのアルミニウムを製膜されたシリコンウエハ1である場合には、基板であるシリコンから発生したSi −Kα線6が厚いアルミニウムの膜に吸収され微弱となり、これを分光素子で回折させるとさらに微弱となって、検出器11での強度測定が困難となるからである。なお、分光素子を用いず検出器11がSSDでなくても、Si −Kα線6が極端に微弱でなければ、検出器11に通常用いられる波高分析器で分光して強度測定が可能であり、高さ調整のための強度測定としてはそれで十分である。
【0042】また、分析対象の試料1がけい素(シリコン)を含まない場合には、波長においてSi −Kα線近傍の散乱線6の強度を検出器11で測定すれば高さ調整が可能であるが、そのような場合にも、散乱線6がより微弱にならないように分光素子を用いるべきでない。
【0043】スリットシステム14に対応する検出手段27の検出器11の直前にX線シャッター22を設けて、高さ調整手段18の非作動時に進退手段23により検出器11を覆うように進出させるのは、この検出手段27においては検出器11が試料1を見込む方向を向いており、X線シャッター22がなければ、測定手段19による分析対象の試料1についての測定時(図3)等に、試料1から発生する強い強度の蛍光X線6が検出器11に入射し続け、検出器11の寿命を無駄に短くしてしまうからである。以上に述べた以外の構成、動作、作用効果は、前記第1実施形態の装置と同様である。
【0044】なお、本発明において、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差の除去のみを目的とする装置の場合は、前記測定手段19を備えず、手動で、選択手段17によりX線管4の前方に絞り13を位置させ、X線管4から分析対象の試料1に1次X線3を照射させ、検出手段7に試料1から発生する蛍光X線6の強度を測定させてもよい。また、同装置の場合は、前記絞りブロック15におけるモニター試料12、補正手段20も備えなくてよい。
【0045】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、試料とX線源間の距離のばらつきによる測定誤差と、測定中の真空度の変化による測定誤差の少なくとも一方を、簡単な構成で短時間に除去できる。
【出願人】 【識別番号】000250351
【氏名又は名称】理学電機工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)9月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司 (外1名)
【公開番号】 特開平11−174007
【公開日】 平成11年(1999)7月2日
【出願番号】 特願平10−273158