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【発明の名称】 固相抽出装置
【発明者】 【氏名】松居 正巳

【要約】 【課題】微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液や多量の試料液について、固相抽出を行うことができる固相抽出装置を提供する。

【解決手段】固相抽出用の充填剤11に試料液を送液する送液手段20(21,22)と、前記送液手段20内の試料液を加圧する加圧手段30,31,32と、送液手段20を保持する保持手段40を備えた構成とし、保持手段40は送液手段20の加圧による送液手段22の変形を制限する機能を備える。加圧手段による加圧により、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液や、多量の試料液についても、充填剤11に試料液を送液することができ、保持手段40によって、加圧による変形を制限して液漏れを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固相抽出用の充填剤に試料液を送液する送液手段と、前記送液手段内の試料液を加圧する加圧手段と、前記送液手段を保持する保持手段を備え、前記保持手段は、前記送液手段の加圧による送液手段の変形を制限する機能を備える固相抽出装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分析成分の抽出を固相の充填剤を用いて行う固相抽出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの物質が混在するサンプルから微量の物質を分析する方法として、HPLC(高速液体クロマトグラフィー),GC(ガスクロマトグラフィー),分光分析等の機器分析が知られている。このような機器分析では、通常サンプルに対して溶液状態への調整や、分析上で妨害となる物質がない状態への精製や、又、測定や検出に適した濃度への調整等の前処理を行っている。この前処理の一方法として固相抽出法が知られている。
【0003】この固相抽出法は、分析成分を含む試料液を充填剤に送液し、充填剤に分析成分を保持させた後、有機溶剤等によって充填剤から分析成分を溶出させるものであり、簡便な操作で目的とする分析成分の抽出を行うことができるという特徴を備えている。
【0004】従来、固相抽出法を実施するには、充填剤を収納したカートリッジと、このカートリッジ内に試料液を送液するためのシリンジや注射器を用い、この構成によって、溶液状のサンプルをシリンジ内に採り、このシリンジからカートリッジ等に収納された充填剤にサンプルを相液することによって分析成分を充填剤に保持させ、これによって分析成分の抽出を行っている。又、充填剤としては、C18,シリカ,フロリシル,不活性けい藻土,アルミナ等の各種官能基が用いられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来、固相抽出法によって分析成分の抽出を行う場合、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分(水中の固形物分)が含まれる試料液については、分析成分の抽出が困難であるという問題点がある。固相抽出法では、固相の充填剤を用いているため、試料液中の微粒子がカートリッジ内に詰まって試料液をカートリッジ内に送液を行うことができなくなり、分析成分の抽出が困難となる。
【0006】これを解決するために、高圧で送液を行うことも考えられるが、カートリッジが微粒子で詰まった状態において高い圧力で送液を行うと、シリンジ等の容器の外壁が変形して試料液が漏洩することになり、分析成分の抽出を行うことができない。図6は、従来の固相抽出の構成で高圧送液を行う場合を説明するための断面図である。図6において、シリンジ20’の一端に充填剤11’を収納したカートリッジ10’を設け、押圧部21’でシリンジ20’内のを押圧すると、カートリッジ10’内が微粒子やSS分で詰まった状態ではシリンジ20’内の圧力が高まり、シリンジ20’の外壁部分が変形し、押圧部21’との間に隙間(図6中のAで示す部分)が生じ、この部分からシリンジ20’内の試料液が外部に漏れることになる。
【0007】又、固相抽出法は微量のサンプルからの分析成分を抽出することがするという点を特徴の一つとする抽出法であるため、大量のサンプルから分析成分を抽出することを前提とせず、一般には、1ml,3ml,6ml,12ml,20ml程度の容量のシリンジを用いている。そのため、多量のサンプルから分析成分を抽出する場合には、シリンジ内への試料のサンプリングとカートリッジへの送液を繰り返したり、多量の処理液を高圧で送液する必要があり、多量のサンプルからの分析成分の抽出に適さないという問題点もある。
【0008】さらに、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液を多量に用いて分析成分の抽出を行う場合は、より抽出は困難となる。
【0009】そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液の固相抽出を行うことができる固相抽出装置を提供することを目的とし、又、多量の試料液の固相抽出処理を行うことができる固相抽出装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の固相抽出装置は、固相抽出用の充填剤に試料液を送液する送液手段と、前記送液手段内の試料液を加圧する加圧手段と、送液手段を保持する保持手段を備えた構成とし、保持手段は送液手段の加圧による送液手段の変形を制限する機能を備えたものとする。この構成によって、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液や、多量の試料液についても固相抽出を行うことができる。
【0011】本発明の送液手段は、試料液や溶剤を充填剤内に送り込む手段であり、一実施形態では、一端に充填剤側と連通する開口部を備えた筒状体と、この筒状体内をスライドする押圧部とを備えた注射器状の機構で構成することができる。この注射器状の機構の容量を大きくすることによって、一度に多量の試料液を充填剤に送液することができる。
【0012】本発明の加圧部は、送液手段内の試料液を加圧して試料液を充填剤側に送り込む手段であり、送液手段の押圧部を押すための、手動、電動、油圧、空圧等の任意の機構を適用することができる。この加圧部で送液手段内の試料液の圧力を高めることによって、微粒子状の物質やSS分でカートリッジ内が詰まった状態であっても、又、多量の試料液であっても、送液を行うことができる。
【0013】本発明の保持手段は、送液手段を保持する手段である。送液手段の加圧による送液手段の変形を制限する機能の一実施形態は、送液手段の外周部分を外側から被う筒状体を備え、これによって、加圧による送液手段の外周部分の膨張を抑え、送液手段の変形によって生じる液漏れを防止することができる。
【0014】本発明の固相抽出装置によれば、送液手段内に試料液等の溶液を注入し、その一端に充填剤を収納したカートリッジを取り付ける。加圧手段によって、送液手段内の試料液の圧力を高めると、試料液は充填剤内に送液される。試料液中に微粒子状の物質やSS分が含まれる場合であっても、又、試料液が多量の場合であっても、この加圧によって送液を行うことができる。このとき、送液手段は保持手段によって保持されるため、加圧による変形は抑えられて、液漏れ等を起こすことはない。
【0015】したがって、本発明の構成によれば、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液や多量の試料液について、固相抽出を行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の固相抽出装置の第1の構成例を説明するための斜視図であり、一部分を切り欠いて示している。又、図2は本発明の固相抽出装置の第1の構成例を説明するための断面図である。第1の構成例は、送液手段20(21,22)と、充填剤11を保持するカートリッジ10とを連続させ、加圧手段(30,31,32)によって送液手段(21,22)及びカートリッジ10の両端に圧力を印加する構造とするものである。
【0017】送液手段は、カートリッジ10側の一端に開口部23を有する筒状体22と、この筒状体22内をスライドするシリンダ状の押圧部21を備えた注射器状の構成とすることができる。試料液体や溶剤は筒状体20内に収納され、押圧部21を開口部23側に押すことによって、開口部23から充填剤11側に移動する。
【0018】充填剤11は、C18,シリカ,フロリシル,不活性けい藻土,アルミナ等の各種官能基等の固相状の物質を用い、カートリッジ10内に収納される。カートリッジ10の一方は開口部23を通して筒状体22内と連通し、他方は開口部12及び放出端13を通して外部と連通している。
【0019】加圧手段は、駆動部30と可動桿31と支持部32を備える。可動桿31は押圧部21を充填剤11側に押すことによって筒状体20内の溶液の圧力を高める手段であり、駆動部30によって動かされる。駆動部30は、可動桿31を押圧する機構であれば手動,電動、油圧、空圧等の任意の機構を採用することができ、たとえば、ねじ機構により構成することができる。
【0020】又、支持部32はカートリッジ10の端部を支持し、駆動部30と共に、送液手段とカートリッジ10を両端から把持することによって、圧力の印加を行う。
【0021】なお、支持部32の一部には切り欠き部分33を設け、この部分を通してカートリッジの放出端13を通して、送液手段及びカートリッジの設置を行うことができる。
【0022】保持手段40は、筒状体22の外周部分を外側から被う筒体で構成することができ、筒状体22を外側から保持し、加圧による筒状体22の変形を制限する強度を奏するものであれば、アルミニウム等の金属や合成樹脂等の任意の素材を用いて形成することができる。この保持手段40は、筒状体22と別体で形成したものを挿入して取り付ける構成とすることも、又、筒状体22と一体で形成することもできる。
【0023】図3は、第1の構成例による固相抽出装置の動作を説明するための概略図である。図3(a)において、筒状体内に蒸留水や所定の溶液を注入して、充填剤内に送液し、充填剤内を所定の状態とするコンディショニングの処理を行う。次に、図3(b)において、筒状体内に試料液を注入し、加圧手段によって試料液を加圧し、充填剤内に試料液を送液する。この加圧を行うことによって、試料液中に微粒子状の物質やSS分が含まれている場合や、多量の試料液であっても、送液を行うことができる。
【0024】この後、図3(c)において、分析成分以外の夾雑物質を取り除くために、所定の溶剤を筒状体内に注入し、再び、加圧手段によってこの溶剤を加圧して充填剤内に送液する。これにより、充填剤からは夾雑物質が取り残され、分析成分の分画を行うことができる。次に、図3(d)において、分析成分を取り出すために、所定の溶剤を筒状体内に注入し、再び、加圧手段によってこの溶剤を加圧して充填剤内に送液する。これにより、充填剤からは分析成分が溶出し、分析成分の取り出しを行うことができる。上記処理において、加圧時に筒状体内の液体の圧力は高められるが、筒状体は保持手段によって保持されているため変形は制限され、液漏れは発生しない。
【0025】図4は本発明の固相抽出装置の第2の構成例を説明するための斜視図である。第2の構成例は、送液手段20(21,22,23)と、充填剤11を保持するカートリッジ10とを分離し、加圧手段(30,31,32)によって送液手段(21,22)のみに圧力を印加する構造とするものである。送液手段は、第1の構成例と同様に、カートリッジ10側の一端に開口部23を有する筒状体22と、この筒状体22内をスライドするシリンダ状の押圧部21を備えた注射器状の構成とすることができ、押圧部21を開口部23側に押すことによって、開口部23から充填剤11側に移動する。
【0026】充填剤11は第1の構成例と同様の物質を用いることができ、筒状体22と別体に形成したカートリッジ10内に収納される。カートリッジ10の一方は開口部23に接続することによって筒状体22内と連通し、他方は放出端13を通して外部と連通している。
【0027】加圧手段は、駆動部30と可動桿31と支持部32を備える。可動桿31は、第1の構成例と同様に、押圧部21を充填剤11側に押すことによって筒状体22内の溶液の圧力を高める手段であり、駆動部30によって動かされ、第1の構成例と同様の構成とすることができる。又、支持部32は筒状体22の端部を支持し、駆動部30と共に、送液手段を両端から把持することによって、圧力の印加を行う。
【0028】保持手段40は、筒状体22の外周部分を外側から被う筒体構成であり、第2の構成例では、加圧手段側の支持部32と連続して形成している。なお、保持手段40を形成する素材と同様とすることができる。
【0029】なお、図4では、送液手段を保持手段に取り付ける構成については示していないが、保持手段40の上方開口部分から送液手段を挿入する構成や、保持手段40の一部に切り欠き部分を設ける構成とすることができる。
【0030】図5は本発明の固相抽出装置の第3の構成例を説明するための斜視図である。第3の構成例は、加圧手段として、既存の接着剤や充填剤のチューブに用いるコーキングガンと呼ばれる器具を転用した例である。
【0031】抽出用注射器21,22をコーキングガン30に取り付け、押し出し棒31によって、押圧部(シリンダ)21を押し出して加圧を行う。又、抽出用注射器の筒状体22の外周部分に筒状の保持手段40を取り付ける。
【0032】コーキングガン30の一端には、一部に切り欠き部分が形成された支持部32が形成され、抽出用注射器の端部を支持している。このコーキングガン30を用いる場合には、通常チューブを保持する部分に抽出用注射器を設け、通常のコーキングガンの動作によって、押し出し棒31で押圧部(シリンダ)21を押し出して加圧を行うことができる。
【0033】この第3の構成によれば、既存の器具を用いて、固相抽出装置を構成することができる。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の固相抽出装置によれば、微粒子状の物質が含まれる試料液やSS分を含む試料液や多量の試料液について、固相抽出を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【出願日】 平成9年(1997)12月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 松司 (外1名)
【公開番号】 特開平11−160297
【公開日】 平成11年(1999)6月18日
【出願番号】 特願平9−330312