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【発明の名称】 カンチレバー及びその製造方法
【発明者】 【氏名】中野 勝志

【氏名】原 信也

【氏名】鈴木 美彦

【要約】 【課題】アスペクト比が高くて微細な隙間に探針部を差し入れることが可能であり、しかも、大量生産が可能で安価なカンチレバーを提供する。

【解決手段】カンチレバーは、薄板状のレバー部21と、該レバー部21の先端側に設けられた突起物22とを備える。突起物22は、レバー部21の先端側に突設された柱状のポスト部24と、底面側部分がポスト部24の先端に連結された四角錐状の探針部25とを有する。探針部25の先端の頂点25aに向かう全ての稜線が内側に湾曲する。探針部25の底面側部分の角部25bがポスト部24における先端付近の部分の側方位置より側方に突出する。探針部25の底面側部分の角部25bに向かう全ての稜線が内側に湾曲する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄板状のレバー部と、該レバー部の先端側に設けられた突起物とを備えたカンチレバーであって、前記突起物は、前記レバー部の先端側に突設された柱状のポスト部と、底面側部分が前記ポスト部の先端に連結された四角錐状の探針部とを有することを特徴とするカンチレバー。
【請求項2】 前記探針部の先端の頂点に向かう全ての稜線が内側に湾曲したことを特徴とする請求項1記載のカンチレバー。
【請求項3】 前記探針部の底面側部分の角部が前記ポスト部における先端付近の部分の側方位置より側方に突出したことを特徴とする請求項1又は2記載のカンチレバー。
【請求項4】 前記探針部の底面側部分の角部に向かう全ての稜線が内側に湾曲したことを特徴とする請求項3記載のカンチレバー。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のカンチレバーを製造する方法であって、第1の部材と第2の部材とが接合されてなる型部材であって、前記第1の部材は前記ポスト部の形状を転写するための転写用貫通穴を有し、前記第2の部材は前記探針部の形状を転写するための四角錐状の転写用凹部であって前記転写用貫通穴と連通する転写用凹部を有し、前記転写用貫通穴及び前記転写用凹部は前記転写用貫通穴の一方の開口のみで外部に開口する空間を形成する、型部材を用意する段階と、前記転写用貫通穴を含む前記型部材上の領域に前記レバー部及び前記突起物を構成すべき材料を成膜させる段階と、成膜された前記材料を所定形状にパターニングする段階と、前記型部材を除去する段階と、を備えたことを特徴とするカンチレバーの製造方法。
【請求項6】 前記転写用貫通穴における前記転写用凹部側の開口に対して、前記転写用凹部の矩形の開口の4つの角のうちの少なくとも1つがはみ出していることを特徴とする請求項5記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項7】 前記転写用凹部の内面には酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項8】 前記転写用貫通穴及び前記転写用凹部が形成する前記空間の内壁の全体には、酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項6記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項9】 前記第1の部材は、第1の基板と、該第1の基板上に形成された半導体膜とを有し、前記半導体膜は前記転写用貫通穴に対応する貫通穴を有し、前記第1の基板は前記半導体膜の前記貫通穴付近の部分において除去部を有することを特徴とする請求項5記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項10】 前記第1の部材は、前記半導体膜の前記貫通穴の内面を覆うとともに前記第1の基板及び前記半導体膜からなる構造体の全体を覆う耐エッチング性を持った保護膜を有することを特徴とする請求項9記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項11】 前記保護膜が酸化膜であることを特徴とする請求項10記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項12】 前記第2の部材は、前記第1の部材の前記第1の基板の前記除去部内に入って前記第1の部材における前記貫通穴付近の部分に接合される凸部を持った第2の基板を有し、該第2の基板の前記凸部に前記転写用凹部に対応する凹部が形成されたことを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項13】 前記第2の基板の前記凸部に形成された前記凹部の内面に、酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項12記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項14】 請求項1乃至4のいずれかに記載のカンチレバーを製造する方法であって、第1の基板と、該第1の基板上に形成された半導体膜と、耐エッチング性を持った保護膜とを有する第1の部材であって、前記半導体膜は前記ポスト部の形状を転写するための転写用貫通穴に対応する貫通穴を有し、前記第1の基板は前記半導体膜の前記貫通穴付近の部分において除去部を有し、前記保護膜は前記半導体膜の前記貫通穴の内面を覆うとともに前記第1の基板及び前記半導体膜からなる構造体の全体を覆っている、第1の部材を用意する段階と、前記第1の部材の前記第1の基板の前記除去部内に入って前記第1の部材における前記貫通穴付近の部分に接合可能である凸部を持った第2の基板を用意する段階と、前記第2の基板の前記凸部が前記第1の部材の前記第1の基板の前記除去部内に入って前記第1の部材における前記貫通穴付近の部分に接合されるように、前記第1の部材と前記第2の基板とを接合する段階と、前記第1の部材と前記第2の基板とを接合した後に、前記第1の部材における前記保護膜で覆われた前記貫通穴から前記第2の基板の前記凸部をエッチングして、前記凸部に、前記探針部の形状を転写するための四角錐状の転写用凹部に対応する凹部を形成する段階と、前記凸部に前記凹部を形成した後に、前記第1の部材の前記貫通穴を含む前記第1の部材上の領域に前記レバー部及び前記突起物を構成すべき材料を成膜させる段階と、成膜された前記材料を所定形状にパターニングする段階と、前記第1の部材及び前記第2の基板を除去する段階と、を備えたことを特徴とするカンチレバーの製造方法。
【請求項15】 前記凸部に前記凹部を形成する段階において、前記エッチングはアンダーエッチングを起こすように行われることを特徴とする請求項14記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項16】 前記凸部に前記凹部を形成する段階の後であって前記材料を成膜させる段階の前に、当該構造体を酸化させて酸化膜を形成する段階と、前記パターニングする段階の後に前記酸化膜を除去する段階と、を備えたことを特徴とする請求項14又は15記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項17】 前記第1の部材を用意する段階は、片面に酸化膜を持ち、もう片面には酸化膜とその上に半導体膜を持つ半導体基板に、前記半導体膜上にダミー基板を接合する段階と、前記積層基板における下面の前記酸化膜及び前記半導体基板の一部を除去して除去部を形成する段階と、前記除去部の形成後に前記ダミー基板を除去する段階と、前記ダミー基板の除去後に前記除去部に対応する位置において前記半導体膜に貫通穴を形成する段階と、前記貫通穴の形成後に前記積層基板における上面の酸化膜のうちの前記除去部から外部に露出した部分を除去する段階と、前記露出した部分を除去した後の構造体の全体に前記酸化膜を形成する段階と、を含むことを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載のカンチレバーの製造方法。
【請求項18】 前記半導体基板及び前記第2の基板がそれぞれシリコン単結晶基板であることを特徴とする請求項17記載のカンチレバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査型プローブ顕微鏡等に用いられるカンチレバー及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、走査型プローブ顕微鏡では、平板状のレバー部と、該レバー部の先端側領域に突設されたピラミッド型又は円錐型の探針とを有するカンチレバーが用いられ、試料の3次元形状等が測定されてきた。しかし、これらの探針のアスペクト比は、ピラミッド型の探針では1程度、円錐型の探針では2程度とそれ程高くなく、探針の基部の幅がかなり大きかった。そのため、例えば、急峻な斜面形状や、深い溝等の観察は、探針の側面が当該斜面や溝の入口部に接触してしまったり、探針先端が溝の底や斜面に届かない等の理由で、正確な形状等の測定が不可能であった。前記従来のカンチレバーを原子間力顕微鏡のカンチレバーとして用いて、半導体プロセスで作られたアスペクト比の高い溝3を有する試料2を観察しようとする例を図6(a)に示す。溝3の幅は現在のリソグラフィーの限界の分解能である0.2μmであり、溝3の深さは1μmである。図6(a)において、1は前記従来のカンチレバーの探針を示す。図6(a)からわかるように、探針1の先端が、試料2の溝3の底4に届かない。また、この探針1では、溝3の側面5の形状も測定することは不可能である。
【0003】そこで、比較的アスペクト比の高いブーツ型の探針の製造方法が提案され(特開平3−135702号公報)、また、その探針を用いて試料の側面形状を測定する技術が報告されている(Yves Martin and H. Krmar Wickramasinghe, Appl.Phys. Lett. 64 (19), 9 May 1994, "Method for imaging sidewalls by atomic force microscopy")。
【0004】また、アスペクト比の高い他のプローブとして、従来のプローブの先端に電子線を照射し、カーボンのウイスカーを成長させる技術がある(Y. Akamine, E. Nishimura and A. Sakai, J. Vac. Sci. Technol. A 8 (1), Jan / Feb 1990)。
【0005】また、アスペクト比の高い更に他のプローブとして、細長い部分と、前記細長い部分の先端に前記細長い部分の軸方向に向いて突出した1つの円錐状の突起(スパイク)と、前記細長い部分の先端付近における周囲表面に前記細長い部分の軸と垂直な方向に向いて突出した2つの円錐状の突起(スパイク)とからなる探針を有する、カンチレバーの製造方法が、特開平8−285872号公報において提案されている。この製造方法では、周囲表面と前端部表面とを有する実質上縦方向に細長い固体チップを形成し、上記固体チップ上の上記周囲表面に沿って第1、第2のマスクを、上記前端部表面上に第3のマスクをそれぞれ形成し、上記固体チップと上記第1、第2及び第3のマスクの両者から材料を除去するために予め定められた時間だけ上記固体チップをエッチングし、予め定められた時間の後に上記各マスクを完全に除去し、上記固体チップからの材料の除去によって上記各マスクが除去された位置の方向を向いた3個のスパイクを形成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述したいずれの従来のカンチレバーにおいても、問題が生じていた。
【0007】すなわち、前記ブーツ型探針は、横幅を300nm程度より小さく形成することが難しく、それより細い隙間には探針を差し入れることができなかった。一方、工業製品分野では特に半導体産業においてメモリーやICパターンの微細化が進み、VLSI等の線幅は200nm程度になっている。また、ブーツ型プローブは先端が平らのため、溝の底面をイメージングすることもできなかった。
【0008】また、前記カーボンのウイスカーを成長させるカンチレバーでは、探針部のアスペクト比を高くすることができるものの、製造に際して、プローブ1本1本に電子線を照射しなければならないため、大量生産が困難でコストが高くなっていた。さらに、成長させるウイスカーがカーボンであるため、シリコンや窒化シリコンでできている従来のプローブに比べ脆くてすぐに折れてしまうという問題点もあった。
【0009】さらに、特開平8−285872号公報に開示されたカンチレバーでは、探針部のアスペクト比を高くすることができるとともに側面形状の測定も可能であるが、製造に手数を要し、大量生産が困難でコストが高くなってしまう。すなわち、前記第1、第2及び第3のマスクをそれぞれ固体チップの3方向の面にそれぞれ形成するためには、固体チップをカーボンベースのガスを含んだ雰囲気に配置し、電子ビームを固体チップに3方向から照射しなければならず、やはりプローブ1本1本に電子ビームを照射しなければならないのみならず、各プローブ毎に3方向から電子ビームを照射しなければならないことから、大量生産が困難でコストが高くなっていた。また、各スパイクの先鋭度を高めるためには、固体チップのエッチングは前記第1、第2及び第3のマスクがちょうど除去される時点で停止させる必要があるが、当該時点でエッチングをちょうど停止させることは極めて困難であり、当該時点を過ぎてもエッチングが継続されてしまうことが多い。このため、各スパイクの先鋭度が低下してしまい、測定の分解能が低下せざるを得なかった。
【0010】なお、以上説明した事情は、原子間力顕微鏡用のカンチレバーに限らず、走査型トンネル顕微鏡、走査型電気容量顕微鏡、走査型静電気力顕微鏡及び走査型磁気力顕微鏡などの他の種々の走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバーについても、同様である。
【0011】本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アスペクト比が高くて微細な隙間に探針部を差し入れることが可能であり、しかも、大量生産が可能で安価なカンチレバー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】また、本発明は、アスペクト比が高くて微細な隙間に探針部を差し入れることが可能であるとともに溝の底のみならず側面の測定も可能であり、しかも、大量生産が可能で安価なカンチレバー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明の第1の態様によるカンチレバーは、薄板状のレバー部と、該レバー部の先端側に設けられた突起物とを備えたカンチレバーであって、前記突起物は、前記レバー部の先端側に突設された柱状のポスト部と、底面側部分が前記ポスト部の先端に連結された四角錐状の探針部とを有するものである。
【0014】この第1の態様によるカンチレバーでは、探針部が柱状のポスト部の先端に設けられているので、アスペクト比が高くなり、微細な隙間に探針部を差し入れることが可能となる。また、前記第1の態様によるカンチレバーでは、ポスト部が柱状をなすとともに探針部が四角錐状をなしており、当該突起物の形状が従来のカンチレバーの突起物の形状とは全く異なるため、後述する第4乃至第17の態様のような製造方法によって製造することができる。すなわち、前記第1の態様によるカンチレバーによれば、電子ビームの照射等、技術的に難しいプロセスは用いることなく、既に確立された半導体微細加工技術を使い、バッチプロセスで、一括して大量に製造することができる。したがって、前記第1の態様によるカンチレバーは、安価に提供することができる。また、前記第1の態様によるカンチレバーは、後述する第4乃至第17の態様のような型を用いた製造方法によって製造することができるので、特開平8−285872号公報に開示されたカンチレバーと異なり、エッチング時間に依存することなく探針の先鋭化を図ることができ、測定の分解能が低下するような事態を招くことがない。
【0015】本発明の第2の態様によるカンチレバーは、前記第1の態様によるカンチレバーにおいて、前記探針部の先端の頂点に向かう全ての稜線が内側に湾曲したものである。
【0016】この第2の態様によるカンチレバーでは、前記第1の態様によるカンチレバーと同様の利点が得られる他、探針部の先端の頂点に向かう全ての稜線が内側に湾曲しているので、当該探針部の先端の頂点を一層先鋭化することができ、試料の溝の底等の測定の分解能を向上させる上で好ましい。
【0017】本発明の第3の態様によるカンチレバーは、前記第1又は第2の態様によるカンチレバーにおいて、前記探針部の底面側部分の角部が前記ポスト部における先端付近の部分の側方位置より側方に突出したものである。
【0018】この第3の態様によるカンチレバーでは、前記第1の態様によるカンチレバーと同様の利点が得られる他、探針部の底面側部分の角部が側方に突出しているので、当該角部によって、試料の溝の側面も測定することができ、好ましい。
【0019】本発明の第4の態様によるカンチレバーは、前記第3の態様によるカンチレバーにおいて、前記探針部の底面側部分の角部に向かう全ての稜線が内側に湾曲したものである。
【0020】この第4の態様によるカンチレバーでは、探針部の底面側部分の角部に向かう全ての稜線が内側に湾曲しているので、当該角部を一層先鋭化することができ、試料の溝の側面の測定の分解能を向上させる上で好ましい。
【0021】本発明の第5の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第1乃至第4のいずれかの態様によるカンチレバーを製造する方法であって、(a)第1の部材と第2の部材とが接合されてなる型部材であって、前記第1の部材は前記ポスト部の形状を転写するための転写用貫通穴を有し、前記第2の部材は前記探針部の形状を転写するための四角錐状の転写用凹部であって前記転写用貫通穴と連通する転写用凹部を有し、前記転写用貫通穴及び前記転写用凹部は前記転写用貫通穴の一方の開口のみで外部に開口する空間を形成する、型部材を用意する段階と、(b)前記転写用貫通穴を含む前記型部材上の領域に前記レバー部及び前記突起物を構成すべき材料を成膜させる段階と、(c)成膜された前記材料を所定形状にパターニングする段階と、(d)前記型部材を除去する段階と、を備えたものである。
【0022】この第5の態様によれば、前述した構成を有する型部材が用いられているので、電子ビームの照射等、技術的に難しいプロセスは用いることなく、既に確立された半導体微細加工技術を使い、バッチプロセスで、一括して大量にカンチレバーを製造することができる。
【0023】本発明の第6の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第5の態様による製造方法において、前記転写用貫通穴における前記転写用凹部側の開口に対して、前記転写用凹部の矩形の開口の4つの角のうちの少なくとも1つがはみ出しているものである。
【0024】この第6の態様によれば、前記第3の態様のような、探針部の底面側部分の角部がポスト部における先端付近の部分の側方位置より側方に突出したカンチレバーを製造することができる。
【0025】本発明の第7の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第5又は第6の態様による製造方法において、前記転写用凹部の内面には酸化膜が形成されているものである。
【0026】この第7の態様では、転写用凹部の内面には酸化膜が形成されているので、例えば酸化膜を熱酸化により成長させて形成すると、その成長速度は平坦な部分では速いとともに角の部分では遅いという性質を有していることから、転写用凹部の内面を急峻化することができる。したがって、前記第2の態様のような、探針部の先端の頂点に向かう全ての稜線が内側に湾曲したカンチレバーを製造することができる。
【0027】本発明の第8の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第6の態様による製造方法において、前記転写用貫通穴及び前記転写用凹部が形成する前記空間の内壁の全体には、酸化膜が形成されているものである。
【0028】この第8の態様では、転写用貫通穴及び転写用凹部が形成する空間の内壁の全体に酸化膜が形成されているので、例えば酸化膜を熱酸化により成長させて形成すると、その成長速度は平坦な部分では速いとともに角の部分では遅いという性質を有していることから、探針部の先端の頂点に向かう全ての稜線が内側に湾曲するとともに、探針部の底面側部分の角部に向かう全ての稜線が内側に湾曲したカンチレバーを製造することができる。
【0029】本発明の第9の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第5の態様による製造方法において、前記第1の部材は、第1の基板と、該第1の基板上に形成された半導体膜とを有し、前記半導体膜は前記転写用貫通穴に対応する貫通穴を有し、前記第1の基板は前記半導体膜の前記貫通穴付近の部分において除去部を有するものである。前記第1の基板は、単層の基板であってもよいし、単層の基板に1層以上の膜を成膜した積層基板であってもよい。
【0030】本発明の第10の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第9の態様による製造方法において、前記第1の部材は、前記半導体膜の前記貫通穴の内面を覆うとともに前記第1の基板及び前記半導体膜からなる構造体の全体を覆う耐エッチング性を持った保護膜を有するものである。
【0031】本発明の第11の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第10の態様による製造方法において、前記保護膜が酸化膜であるものである。
【0032】本発明の第12の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第9乃至第11のいずれかの態様による製造方法において、前記第2の部材は、前記第1の部材の前記第1の基板の前記除去部内に入って前記第1の部材における前記貫通穴付近の部分に接合される凸部を持った第2の基板を有し、該第2の基板の前記凸部に前記転写用凹部に対応する凹部が形成されたものである。
【0033】本発明の第13の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第12の態様による製造方法において、前記第2の基板の前記凸部に形成された前記凹部の内面に、酸化膜が形成されているものである。
【0034】前記第9乃至第13の態様は、型部材の具体的な構造例を挙げたものである。なお、前記半導体膜がポスト部の型を構成するが、当該半導体膜の厚さ(ポスト部の長さに対応)は薄く、当該半導体膜単独では剛性を保つことができずに製造時の取り扱いが困難となる。そこで、前記第9の態様では、半導体膜を支持する第1の基板を設けることによって、製造時の取り扱いの際の剛性を担保したものである。
【0035】本発明の第14の態様によるカンチレバーの製造方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載のカンチレバーを製造する方法であって、(a)第1の基板と、該第1の基板上に形成された半導体膜と、耐エッチング性を持った保護膜とを有する第1の部材であって、前記半導体膜は前記ポスト部の形状を転写するための転写用貫通穴に対応する貫通穴を有し、前記第1の基板は前記半導体膜の前記貫通穴付近の部分において除去部を有し、前記保護膜は前記半導体膜の前記貫通穴の内面を覆うとともに前記第1の基板及び前記半導体膜からなる構造体の全体を覆っている、第1の部材を用意する段階と、(b)前記第1の部材の前記第1の基板の前記除去部内に入って前記第1の部材における前記貫通穴付近の部分に接合可能である凸部を持った第2の基板を用意する段階と、(c)前記第2の基板の前記凸部が前記第1の部材の前記第1の基板の前記除去部内に入って前記第1の部材における前記貫通穴付近の部分に接合されるように、前記第1の部材と前記第2の基板とを接合する段階と、(d)前記第1の部材と前記第2の基板とを接合した後に、前記第1の部材における前記保護膜で覆われた前記貫通穴から前記第2の基板の前記凸部をエッチングして、前記凸部に、前記探針部の形状を転写するための四角錐状の転写用凹部に対応する凹部を形成する段階と、(e)前記凸部に前記凹部を形成した後に、前記第1の部材の前記貫通穴を含む前記第1の部材上の領域に前記レバー部及び前記突起物を構成すべき材料を成膜させる段階と、(f)成膜された前記材料を所定形状にパターニングする段階と、(g)前記第1の部材及び前記第2の基板を除去する段階と、を備えたものである。
【0036】前記第9乃至第13の態様では、型部材を構成する第1及び第2の部材をそれぞれ別個に予め完成させておき、両者を接合することによって型部材を用意してもよいし、あるいは、例えば、前記第1の部材を予め完成させるか又は前記第1の部材のいわば半製品を用意するとともに、前記第2の部材のいわば半製品を用意し、両者を接合した後に更に処理を施すことにより型部材を用意してもよい。前者の場合には、第1部材と第2の部材との接合の際に第1の型部材の転写用貫通穴と第2の型部材の転写用凹部とを厳密に位置合わせする必要がある。これに対し、後者の場合には、第2の部材の半製品として転写用凹部の形成前のものを用意し、第1の部材と第2の部材との接合後に、第1の型部材の転写用貫通穴に相当する貫通穴を利用してエッチングを施すことによって転写用凹部を形成すれば、接合時の厳密な位置合わせが不要となり、一層好ましい。前記第14の態様は、このような例に相当するものである。
【0037】本発明の第15の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第14の態様による製造方法において、前記凸部に前記凹部を形成する段階において、前記エッチングはアンダーエッチングを起こすように行われるものである。
【0038】この第15の態様のようにアンダーエッチングを起こすようにすると、転写用貫通穴における転写用凹部側の開口に対して、転写用凹部の矩形の開口の4つの角がはみ出した状態を実現することができ、ひいては、前記第3の態様のような、探針部の底面側部分の角部がポスト部における先端付近の部分の側方位置より側方に突出したカンチレバーを製造することができる。
【0039】本発明の第16の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第14又は第15の態様による製造方法において、前記凸部に前記凹部を形成する段階の後であって前記材料を成膜させる段階の前に、当該構造体を酸化させて酸化膜を形成する段階と、前記パターニングする段階の後に前記酸化膜を除去する段階と、を備えたものである。
【0040】この第16の態様によれば、前記構造体を酸化させるので、転写用貫通穴及び転写用凹部が形成する空間の内壁全体に酸化膜が形成されることになる。酸化膜の成長速度は平坦な部分では速いとともに角の部分では遅いという性質を有していることから、探針部の先端の頂点に向かう全ての稜線が内側に湾曲するとともに、探針部の底面側部分の角部に向かう全ての稜線が内側に湾曲したカンチレバーを製造することができる。
【0041】本発明の第17の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第14乃至第16のいずれかの態様による製造方法において、前記第1の部材を用意する段階は、(a)片面に酸化膜を持ち、もう片面には酸化膜とその上に半導体膜を持つ半導体基板に、前記半導体膜上にダミー基板を接合する段階と、(b)前記積層基板における下面の前記酸化膜及び前記半導体基板の一部を除去して除去部を形成する段階と、(c)前記除去部の形成後に前記ダミー基板を除去する段階と、(d)前記ダミー基板の除去後に前記除去部に対応する位置において前記半導体膜に貫通穴を形成する段階と、(e)前記貫通穴の形成後に前記積層基板における上面の酸化膜のうちの前記除去部から外部に露出した部分を除去する段階と、(f)前記露出した部分を除去した後の構造体の全体に前記酸化膜を形成する段階と、を含むものである。
【0042】前記第17の態様は第1の部材を用意する段階の例であるが、この段階はこの例に限定されるものではない。
【0043】本発明の第18の態様によるカンチレバーの製造方法は、前記第17の態様による製造方法において、前記半導体基板及び前記第2の基板がそれぞれシリコン単結晶基板であるものである。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態によるカンチレバーについて、図1を参照して説明する。本実施の形態によるカンチレバーは、原子間力顕微鏡用のカンチレバーとして構成されている。図1は、本実施の形態によるカンチレバーを示す概略斜視図である。
【0045】本実施の形態によるカンチレバーは、図1に示すように、薄板状のレバー部21と、該レバー部21の先端側部分に設けられた突起物22と、レバー部21を支持する支持体23とから構成されている。突起物22は、レバー部21の先端側に突設された柱状のポスト部24と、底面側部分がポスト部24の先端に連結された四角錐状の探針部25とを有している。
【0046】本実施の形態では、ポスト部24は、四角柱状に構成されているが、例えば円柱状に構成してもよい。
【0047】また、本実施の形態では、探針部25の先端の頂点25aに向かう全ての稜線が内側に湾曲しており、探針部25の先端の頂点25aが極めて先鋭化されている。本実施の形態では、このように探針部25の先端の頂点25aが先鋭化されているので、試料の溝の底等の測定の分解能を向上させる上で好ましい。もっとも、本発明では、必ずしもこのような先鋭化を図らなくてもよい。
【0048】さらに、本実施の形態では、探針部25の底面側部分の4つの角部25bがポスト部24の先端の付近の部分の側方位置よりも側方に突出している(後述する図6(b)も参照)。したがって、本実施の形態では、当該角部25によって、アスペクト比の高い試料である半導体のラインアンドスペースやトレンチの側面をイメージングすることができ、好ましい。なお、4つの角部25bの全てが側方に突出している必要はなく、少なくとも1つが側方に突出していればよい。もっとも、本発明では、溝の側面の測定を行わない場合には、4つの角部25bの全てが側方に突出していなくてもよい。
【0049】また、本実施の形態では、各角部25bに向かう全ての稜線も内側に湾曲しており、探針部25の底面側部分の角部25bも極めて先鋭化されている。本実施の形態では、角部25bが先鋭化されているので、試料の側面の測定の分解能を向上させる上で好ましい。もっとも、本発明では、必ずしもこのような先鋭化を図らなくてもよい。
【0050】また、本実施の形態では、レバー部21が窒化珪素膜で構成され、ポスト部24及び探針部25も同じく窒化珪素で構成されている。しかし、本発明では、レバー部21、ポスト部24及び探針部25の材料は窒化珪素膜に限定されるものではない。前記支持体24は、パイレックスガラス(商品名)部材26と、該パイレックスガラス部材26が接合されている箇所の前記窒化珪素膜とから構成されている。もっとも、支持体24の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、半導体基板を用いて構成してもよい。
【0051】次に、図1に示すカンチレバーの製造方法の一例について、図2、図3、図4及び図5を参照して説明する。図2は図1に示すカンチレバーの製造工程の一例を示す概略断面図、図3は図2に示す工程に引き続く工程を示す概略断面図、図4は図3に示す工程に引き続く工程を示す概略断面図、図5は図4示す工程に引き続く工程を示す概略断面図である。
【0052】まず、シリコン単結晶基板30上の上面にシリコン酸化膜31とその上にシリコン単結晶膜34を持ち、下面にはシリコン酸化膜32を持つ、市販されているSOIウエハ(積層基板)33を用意する(図2(a))。
【0053】その後、シリコン膜34の上面にダミー基板35をクールグリース36を用いて接合する。このダミー基板35は、後述する除去部37の形成のためのエッチングからシリコン膜34を保護するためのものである。したがって、ダミー基板35としては、その保護作用を有するものを用いればよく、例えば、シリコン基板やガラス基板など任意の材料の基板を用いることができる。なお、シリコン基板を用いた場合には、除去部37の形成のためのエッチングにより厚みが減ることになる。なお、ダミー基板35に代えて、適宜、保護膜を形成してもよい。
【0054】次いで、リソグラフィー法及びドライエッチング法を用いてSOIウエハ33の下面のシリコン酸化膜32をパターニングすることによって、シリコン酸化膜32の所定箇所に、基板30の下面を露出させる一辺が30μmの正方形の開口32aを形成する(図2(b))。開口32aの形状、大きさ等は任意に設定することができる。
【0055】次に、図2(b)に示す状態のウエハを水酸化カリウム(KOH)水溶液又はテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液などのシリコン用のエッチング液に浸漬し、シリコン酸化膜32をマスクとして、開口32aから露出したシリコン基板30の部分を台形状に異方性エッチングして、開口32aに連続した凹部30aを形成する(図2(c))。前記開口32a及び凹部30aが、SOIウエハ33における下面のシリコン酸化膜32及びシリコン基板30の一部を除去して形成した除去部37を構成している。
【0056】次に、図2(c)に示す状態のウエハを70゜C程度に加熱してクールグリース36を溶かし、ダミー基板35を剥離して除去し、その後、シリコン膜34上に付着して残ったクールグリース36を、払拭して取り除く。次いで、シリコン膜34上にレジスト38を塗布し、前記除去部37に対応する位置において、リソグラフィーによりレジスト38に一辺が0.3μmの正方形の開口38aを形成する(図2(d))。次に、ドライエッチングにより、レジスト38をマスクとして開口38aからシリコン膜34に四角形の貫通穴34aを形成する(図2(e))。この貫通穴34aは、図1に示すカンチレバーのポスト部24の形状を転写するための転写用貫通穴に対応するものである。その後、ドライエッチングによりレジスト38を除去するとともに、上面のシリコン酸化膜31のうちの前記除去部37から外部に露出した部分及び下面のシリコン酸化膜31を取り去る(図3(a))。
【0057】その後、図3(a)に示す状態の構造体を熱酸化によって酸化し、当該構造体の全体に酸化膜39を形成する(図3(b))。本実施の形態では、この酸化膜39が、図3(d)を参照して後述する凹部51bの形成のためのエッチングに対して耐エッチング性を有する保護膜となっている。
【0058】本実施の形態では、以上説明した図1(a)から図3(b)までの工程が、図3(b)に示す第1の部材を用意する段階を構成している。前述した説明からわかるように、図3(b)に示す第1の部材は、シリコン基板30とシリコン膜34及びシリコン酸化膜31からなる積層基板(第1の基板)と、耐エッチング性を有する保護膜としての酸化膜39とを有している。そして、シリコン膜34は、図1に示すカンチレバーのポスト部24の形状を転写するための転写用貫通穴に対応する貫通穴34aを有している。シリコン基板30及びシリコン酸化膜31からなる積層基板は、貫通穴34aの付近の部分において除去部40(この除去部40は、シリコン基板30に形成された前記凹部30aとシリコン酸化膜31の前記除去部分とから構成されている。)を有している。酸化膜39は、シリコン膜34の貫通穴34aの内面を覆うとともに、シリコン基板30とシリコン膜34及びシリコン酸化膜31からなる積層基板からなる構造体の全体を覆っている。
【0059】このようにして図3(b)に示す第1の部材を用意する一方、前記第1の部材の除去部40内に入って前記第1の部材における貫通穴34a付近の部分に接合可能である凸部51aを持った第2の基板51を用意する(図3(c))。この基板51は、具体的には、厚さ250μm、(100)面方位のシリコン単結晶基板を用い、当該基板に対してリソグラフィーと異方性エッチングを施すことにより、高さ20μm程度の凸部51aを形成することによって、用意する。
【0060】次に、この第2の基板51の凸部51aが図3(b)に示す第1の部材の除去部40内に入って前記第1の部材における貫通穴34a付近の部分に接合されるように、前記第1の部材と第2の基板51とを直接接合法等により接合する(図3(c))。
【0061】その後、図3(c)に示す状態の構造体をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液に浸漬することによって、酸化膜39をマスクとして、前記第1の部材における酸化膜39で覆われた貫通穴34から第2の基板51の凸部51aを四角錐状に異方性エッチングして、凸部51aに、図1に示すカンチレバーの探針部25の形状を転写するための転写用凹部に対応する凹部(トレンチ)51bを形成する(図3(d)、図4(a))。この異方性エッチングはアンダーエッチングを起こすように行われ、凹部51bの矩形の開口の各辺の長さが貫通穴34aの下側の開口の各辺の長さより長くなる。この部分の拡大図を図4(a)に示す。
【0062】次に、図3(d)及び図4(a)に示す状態の構造体を熱酸化によってもう一度酸化し、その表面に酸化膜52を形成する(図4(b))。この酸化の現象は、シリコン表面に大気中の酸素が飛び込むことにより起こり、酸化された部分は飛び込んだ酸素の量に応じて膨れる。ここで特に微小な形状である四角柱状の貫通穴34a及び四角錐状の凹部51bを見てみると、酸化膜の膨張により、それぞれのコーナーにおいて膜内部に応力集中が起こり、コーナーにおける酸化レートは、その他の部分に比べ遅くなっている。そのため、それぞれのコーナー部分がくびれを起こす。この部分の拡大図を図4(c)に示す。さらに、酸化によりシリコン表面が盛り上がるため、貫通穴34aと、四角錐状の凹部51bの空間が狭くなる。これによって、後述工程によりこの空間を型として形成されるカンチレバーのポスト部24及び探針部25はより微細に形成されるとともに、探針部25の先端の頂点25aの前述した先鋭化及び探針部25の底面側部分の角部25bの前述した先鋭化を図ることができることになる。
【0063】本実施の形態では、以上説明した図2(a)から図4(b)(c)までの工程が、図4(b)(c)に示す型部材を用意する段階を構成している。図4(b)(c)に示す型部材は、図3(b)に示す部材に前記酸化膜52が更に形成されてなる第1の部材と、第2の部材とが接合された構成を有している。内面に酸化膜39,52が形成された貫通穴34aが、図1に示すカンチレバーのポスト部24の形状を転写するための転写用貫通穴となっている。また、前記第2の部材は、内面に酸化膜52が形成された四角錐状の凹部51bが形成された凸部51aを持った第2の基板51と、該第2の基板51の下面に形成された酸化膜52とから構成されている。内面に酸化膜52が形成された凹部51bが、図1に示すカンチレバーの探針部25の形状を転写するための四角錐状の転写用凹部であって前記転写用貫通穴と連通する転写用凹部となっている。前記転写用貫通穴(内面に酸化膜39,52が形成された貫通穴34a)及び前記転写用凹部(内面に酸化膜52が形成された四角錐状の凹部51b)は、前記転写用貫通穴の上側の開口のみで外部に開口する空間(図1に示すカンチレバーの突起物22の型となる空間)を形成している。また、前述した説明からわかるように、当該空間の内壁全体には酸化膜が形成されている。さらに、前記転写用貫通穴における前記転写用凹部側の下側開口に対して、前記転写用凹部の矩形の開口の4つの角がはみ出している。
【0064】以上のようにして図4(b)(c)に示す型部材を用意した後、前記転写用貫通穴(内面に酸化膜39,52が形成された貫通穴34a)を含む当該型部材上の領域に、図1に示すカンチレバーのレバー部21、突起物22及び支持体23の一部を構成すべき材料としての窒化珪素53を、減圧CVD法等により成膜させる(図4(d))。これにより、前記転写用貫通穴及び前記転写用凹部が形成している空間内にも窒化珪素53が入り込み、当該空間に入り込んだ窒化珪素53に、図1に示すカンチレバーのポスト部24及び探針部25からなる突起物22の形状が転写される。なお、同時に、基板51の下面の酸化膜52の下面にも、窒化珪素膜54が成膜される。
【0065】次に、リソグラフィー法を用いて、前記型部材の上面に成膜された窒化珪素膜53に対して、レバー部21及び支持体23の所望の形状に合わせて、パターニングする。同時に、下面の窒化珪素膜54が除去される。その後、窒化珪素膜53上の所定箇所に支持体23を構成するパイレックスガラス部材26を陽極接合法等により接合する(図5(a))。
【0066】次いで、図5(a)に示す状態の構造体をKOH水溶液又はTMAH水溶液に浸漬して、カンチレバーのレバー部21、ポスト部24、探針部25及び支持体23の一部を構成する窒化珪素膜53と、支持体23の他の一部を構成するパイレックスガラス部材55を残し、他の全てを除去する(図5(b))。
【0067】最後に、必要に応じて、レバー部21の上面に、原子間力顕微鏡の力検出に広く用いられている光てこ法用の反射面として、金56をメタライズする。これにより、図1に示すカンチレバーが完成する。
【0068】以上説明した製造方法では、電子ビームの照射等、技術的に難しいプロセスは用いられておらず、既に確立された半導体微細加工技術が使用されており、バッチプロセスで、図1に示すカンチレバーを一括して大量に製造することができる。したがって、図1に示すカンチレバーは、安価に提供することができる。
【0069】図1に示す本実施の形態によるカンチレバーを使いて、半導体プロセスで作られたアスペクト比の高い溝3を有する試料2の溝3をイメージングする例を、図6(b)に示す。溝3の幅は現在のリソグラフィーの限界の分解能である0.2μmであり、溝3の深さは1μmである。前述した製造方法では、ポスト部24と探針部25をリソグラフィーの技術を用いて形成するが、前述したように酸化によるシリコン酸化膜の膨張を利用することにより、カンチレバーの探針部25の横幅をリソグラフィーの限界の分解能の値よりも細くすることができる。そのため、図6(b)に示すように、リソグラフィーの限界の大きさで形成された溝3の内部に差し入れることができ、溝3の底面4をイメージングすることができる。さらに、図1に示すカンチレバーでは、探針部25の底面側部分の4つの角部25bが側方に突出しているため、溝3の側面5もイメージングすることができる。
【0070】以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はその実施の形態に限定されるものではない。
【0071】例えば、本発明では、前述した製造方法を次のように変形してもよい。
【0072】すなわち、探針部25の先鋭化の程度は低下するものの、前述した製造方法において、図3(d)に示す構造体を酸化させる工程を省略し、図3(d)に示す構造体をそのまま型部材として用いてもよい。
【0073】また、前述した製造方法では、図3(b)に示す第1の部材と基板51とを接合した後に、当該第1の部材をエッチングマスクとして利用して基板51の凸部51aに凹部51bを形成していた。しかし、本発明では、図3(b)に示す第1の部材と基板51とを接合する前に、基板51単独の状態において予め凸部51aに凹部51bを形成しておき、前記第1の部材の貫通穴34aと基板51の凸部51aに形成した凹部51bとを位置合わせして、前記第1の部材と前記基板51とを接合してもよい。この場合、貫通穴34a及び凹部51bの大きさや両者の位置合わせを適宜設定することにより、転写用貫通穴における転写用凹部側の下側開口に対して、転写用凹部の矩形の開口の4つの角がはみ出さないように設定したり、当該4つの角のうちの一部のみがはみ出すように設定することもできる。また、基板51単独の状態において予め凸部51aに凹部51bを形成する場合には、図3(b)に示す第1の部材をエッチングマスクとして利用しないので、図3(b)に示すような酸化膜39の形成は不要となり、図3(a)に示す構造体をそのまま基板51と接合してもよい。
【0074】また、前述した図1に示すカンチレバーにおいて、少なくとも探針部25の先端に金属膜等の導電膜や磁性膜を形成すれば、走査型トンネル顕微鏡、走査型電気容量顕微鏡、走査型静電気力顕微鏡及び走査型磁気力顕微鏡などの他の種々の走査型プローブ顕微鏡において用いることができる。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、アスペクト比が高くて微細な隙間に探針部を差し入れることが可能であり、しかも、大量生産が可能で安価なカンチレバー及びその製造方法を提供することができる。
【0076】また、本発明は、アスペクト比が高くて微細な隙間に探針部を差し入れることが可能であるとともに溝の底のみならず側面の測定も可能であり、しかも、大量生産が可能で安価なカンチレバー及びその製造方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
【出願日】 平成9年(1997)7月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】四宮 通
【公開番号】 特開平11−23590
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−194843