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【発明の名称】 走査プローブ顕微鏡
【発明者】 【氏名】北村真一

【氏名】末吉 孝

【要約】 【課題】ばね定数の大きいカンチレバーや固有振動数の高いニードルタイプのSPMを用いて、試料の凹凸画像および試料の表面電位像の各分解能を向上する。

【解決手段】光検出器7からの出力信号の変化がF/V変換器22によってカンチレバー1の力の勾配を示す電圧に変換されて誤差増幅器11に供給され、この電圧信号固有振動数とのずれを一定に保つようにフィルタ12を介して圧電走査素子4のZ方向の変位にフィードバックされる。そして、フィルタ12の出力が試料3の凹凸像の信号となる。また、第1のロックインアンプ14がF/V変換器22の出力から所定周波数ω成分を検出し、誤差増幅器17はこのω成分がゼロとなるDC電圧Vdcを出力し、このDC電圧Vdcが加算器18を介してカンチレバー1にフィードバックされ、試料3の表面電位とチップ2の電位とが同電位に保たれるとともに、DC電圧Vdcが試料3の表面電位となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 試料に対向して配置された探針と、前記探針を支持しかつこの探針を加振する第1の加振手段と、この第1の加振手段の固有振動数に等しい共振周波数で前記第1の加振手段を共振する加振駆動手段と、前記探針の振動周波数の変化をこの変化に対応した電圧に変換する周波数−電圧変換器と、この周波数−電圧変換器の出力と前記固有振動数とのずれを一定に保つように出力する誤差増幅器と、この誤差増幅器の出力に基づいて前記探針と前記試料との間の距離を制御する探針−試料間距離制御手段と、所定周波数の交流電圧の参照信号を出力する第2の加振手段と、前記周波数−電圧変換器の出力からこの第2の加振手段の出力する参照信号と同じ所定周波数成分を検出し出力する第1の周波数検出手段と、この第1の周波数検出手段の出力がゼロとなる直流電圧を出力する第2の誤差増幅器と、前記第2の加振手段が出力する参照信号の交流電圧と前記第2の誤差増幅器が出力する直流電圧とを加算した電圧を探針−試料間に印加する加算手段とを備え、前記誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料表面の凹凸像を得るとともに、前記第2の誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料の表面電位像を得ることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項2】 試料に対向して配置された探針と、前記探針を支持しかつこの探針を加振する第1の加振手段と、この第1の加振手段の固有振動数に等しい共振周波数で前記第1の加振手段を共振する加振駆動手段と、前記探針の振動周波数の変化をこの変化に対応した電圧に変換する周波数−電圧変換器と、所定周波数の交流電圧の参照信号を出力する第2の加振手段と、前記周波数−電圧変換器の出力からこの第2の加振手段の出力する参照信号の所定周波数と同じ周期の周波数成分を検出し出力する第1の周波数検出手段と、前記周波数−電圧変換器の出力から前記第2の加振手段の出力する参照信号の所定周波数の2倍の周期の周波数成分を検出し出力する第2の周波数検出手段と、入力信号と前記固有振動数とのずれを一定に保つように出力する第1の誤差増幅器と、前記第1の誤差増幅器を、前記周波数−電圧変換器にまたは前記第2の周波数検出手段に選択的に切替接続する切替手段と、前記第1の周波数検出手段の出力がゼロとなる直流電圧を出力する第2の誤差増幅器と、前記第2の加振手段が出力する参照信号の交流電圧と前記第2の誤差増幅器が出力する直流電圧とを加算した電圧を探針−試料間に印加する加算手段と、この第1の誤差増幅器の出力に基づいて前記探針と前記試料との間の距離を制御する探針−試料間距離制御手段とを備え、前記第1の誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料表面の凹凸像を得るとともに、前記第2の誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料の表面電位像を得ることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項3】 前記第1の加振手段は、先端に前記探針を支持するカンチレバーと、前記カンチレバーの後端に支持しかつこのカンチレバーを加振する加振用圧電素子と、前記カンチレバーの撓みを検出して出力する検出器とを備え、この加振用圧電素子によってカンチレバーがこのカンチレバーの固有振動数で加振されるとともに、前記周波数−電圧変換器が前記検出器の出力周波数を電圧に変換することを特徴とする請求項1または2記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項4】 前記第1および第2の周波数検出手段を、前記カンチレバーのばね定数が大きいときは前記周波数−電圧変換器にまたは前記カンチレバーのばね定数が小さいときは前記検出器に選択的に切替接続する第2の切替手段を備え、前記第2の切替手段により前記カンチレバーのばね定数が大きいときは前記前記周波数−電圧変換器の出力を前記第1および第2の周波数検出手段に入力するとともに、また前記カンチレバーのばね定数が小さいときは前記検出器の出力を前記第1および第2の周波数検出手段に入力することを特徴とする請求項3記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項5】 前記第1の加振手段は、先端に前記探針を支持しかつこの探針を加振する水晶発振器を備え、前記水晶発振器がこの水晶発振器の固有振動数で加振されるとともに、前記周波数−電圧変換器が前記水晶発振器の加振周波数を電圧に変換することを特徴とする請求項1または2記載の走査プローブ顕微鏡。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子間力顕微鏡(AFM)等の試料からの力を受けて試料表面の凹凸像を観察するとともに、試料の表面電位像を観察する走査プローブ顕微鏡(SPM)の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】チップ(探針)と試料との間に生じる物理的な力を測定して試料表面の凹凸像を観察するとともに、試料表面の電位を観察するSPMが、従来から開発されている。図4はこのようなSPMの中の、KFM(Kelvin probe Force micro-scopy)法によるAFMの一例を模式的に示す図である。図中、1は金等の金属をコーティングした導電性でかつ弾性を有するカンチレバー、2はカンチレバー1の先端に取り付けられたチップ、3は試料、4はX軸(図4の左右方向)、Y軸(図4の紙面に直交する方向)、およびZ軸方向(図4の上下方向)の試料3の各位置を制御する圧電走査素子、5はカンチレバー1の後端支持部に取り付けられた加振用の圧電素子、6は光源(例 レーザ光源等)、7はオプチカルディテクター(以下、光検出器ともいう)、8はプリアンプ、9は発振用の圧電素子5に加振出力信号を、振幅を調整して供給するオシレータ(発振電源)、10はオシレータ9の加振出力信号が供給され、この加振出力信号と同期した振幅変化分の信号をセレクトする凹凸像(Topo像)観察用のロックインアンプまたはRMSーDC、11は誤差増幅器、12はフィルタ、13はZ圧電素子駆動電源、14は表面電位観察用の第1のロックインアンプ、15は表面電位観察用の第2のロックインアンプ、16は第1および第2のロックインアンプ14,15に所定周波数ωの交流電圧の参照信号を供給するとともに、振幅を所定の大きさに調整して出力するオシレータ、17は0調整すなわち第1のロックインアンプ14からの入力が0となる直流電圧Vdcを出力するとともに、この直流電圧Vdcをカンチレバー1にフィードバックさせるためのフィルタ等を有する誤差増幅器、18はオシレータ16の加振出力信号と誤差増幅器17の出力直流電圧Vdcとを加算した電位をカンチレバー1に印加する加算器18である。
【0003】このAFMはチップ2と試料3とが互いに対向して非接触(Non Contact)で配置されるNCーAFMであり、光源6からレーザ光等の光がカンチレバー1の背面にフォーカスするように照射されるとともにこの背面に当たって反射し、その反射光が光検出器7に入射するようになっており、光源6、カンチレバー1および光検出器7により光てこ方式のカンチレバー1の変位の検出系が構成されている。この光てこ方式の変位検出系はチップ2−試料3間の原子間力によりカンチレバー1が撓むことによる反射角の変化をカンチレバー1から離れた位置に置かれた光検出器7上での照射位置の変化とし、この照射位置の変化からカンチレバー1の撓み量を検出する方法である。
【0004】このような構成をしたAFMにおいては、オシレータ9から発振出力信号が圧電素子5に供給されることにより、カンチレバー1がそのほぼ固有振動数程度の周波数で加振される。この状態で、チップ2を試料3に数nm程度に接近させると、チップ2と試料3との間に発生する物理的な力によりカンチレバー1が撓む。これにより光検出器7の出力が変化し、変化した出力信号がプリアンプ8によって適当な振幅に増幅されて凹凸像観察用のロックインアンプ10に供給される。このロックインアンプ10は、供給された光検出器7の出力信号とオシレータ9からの出力信号とに含まれる周波数成分とを比較して、共通の周波数成分の振幅に比例した信号を出力し、この出力信号が誤差増幅器11に送られる。誤差増幅器11はこの出力と参照電圧Vにより設定された一定電圧、すなわち固有振動数とのずれを一定に保つように出力し、この出力がフィルタ12を介してZ圧電素子駆動電源13に送られる。このZ圧電素子駆動電源13は、圧電走査素子4に対して、フィルタ12からの出力信号に基づいてチップ2−試料3間の距離を制御するようにフィードバック制御を行う。
【0005】ところで、フィルタ12はこのようなフィードバック回路を安定に動作させるためのものであり、このフィルタ12の出力が試料3表面の凹凸像の信号となり、この凹凸像の信号が、図示しない画像表示装置に送られる。そして、このようなチップ2と試料3との間の距離一定制御を行いながらチップ2または試料3を2次元走査(X、Y方向)することにより、試料3の表面の凹凸画像が画像表示装置において得られる。
【0006】一方、プリアンプ8によって振幅が増幅された光検出器7の出力は、試料3の表面電位像観察用の第1のロックインアンプ14および第2のロックインアンプ15に入力される。また、これらの第1および第2のロックインアンプ14,15には、オシレータ16から所定周波数ωの交流電圧の参照信号が供給されている。そして、第1のロックインアンプ14では、この参照信号の所定周波数ωと同じ周期(すなわちω成分)の振幅に相当する信号が検出され、また第2のロックインアンプ15では、この参照信号の周波数ωと2倍周期(すなわち2ω成分)の振幅に相当する信号が検出される。
【0007】第1のロックインアンプ14で検出されたω成分は誤差増幅器17に送られ、誤差増幅器17は入力されるこのω成分がゼロとなるような直流電圧(DC電圧)Vdcを出力し(すなわち0調整を行う)、この出力が加算器18に送られる。また、加算器18には、オシレータ16から参照信号と同じ周波数ωの交流電圧がオシレータ16内の振幅調整器によって振幅が所定の大きさに調整されて供給されている。加算器18は、オシレータ16からの周波数ωの交流電圧と誤差増幅器17からの直流電圧Vdcを加算してカンチレバー1に印加することにより、電圧がフィードバックされる。
【0008】カンチレバー1への交流電圧の印加により、アース電位である試料3とカンチレバー1先端のチップ2との間に静電気力が働き、カンチレバー1の固有振動数のシフトが印加される交流電圧の周期で生じる。このシフトの周期がω成分であり、試料3の表面電位とチップ2の先端の電位が同じとき、2ω成分だけになる。また、カンチレバー1への直流電圧Vdcのフィードバックにより、試料3の表面電位とチップ2の先端の電位とが同電位に保たれる。ところで、誤差増幅器17から出力される直流電圧Vdcが試料3の表面電位となり、この直流電圧Vdcを図示しない画像表示装置に供給することにより、画像表示装置において試料3の表面電位像が得られる。
【0009】一方、第2のロックインアンプ15で検出された2ω成分の信号には、チップ2−試料3間の容量に関係した情報が含まれており、表面電位の観察に応じてこの信号も画像表示装置に表面電位と同時表示させる。
【0010】このように、この例のAFMでは、試料3の表面電位像を観察する手法として、静電気力を直接力F、すなわちカンチレバー1の撓みとして検出し、静電気力が最小となるチップ印加電圧を求めることにより、チップ表面に対する相対的な試料3の表面電位を得るという、いわゆるKFM法が用いられている。
【0011】図5は、従来のSPMの中の、SMM法によるAFMの一例を模式的に示す図である。なお、図4に示すAFMと同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0012】前述の図4に示す例では、ロックインアンプ10によって出力される出力信号を用いてチップ2−試料3間の距離が一定となるように制御しているが、この例では前述の図4のAFMにおける第2のロックインアンプ15の出力である2倍周期の信号(2ω成分)の振幅をチップ2−試料3間の距離の制御信号として用い、この振幅の値が一定となるようにチップ2−試料3間の距離を制御している。
【0013】すなわち、図5に示すようにこの例のAFMでは、第2のロックインアンプ15の出力が誤差増幅器11に入力されるようになっている。この例のAFMの他の構成は、図4に示す例のAFMと同じである。
【0014】このように構成されたAFMにおいては、誤差増幅器11が第2のロックインアンプ15の出力2ωと参照電圧Vにより設定された一定電圧すなわち固有振動数とのずれを一定に保つように出力し、この出力がフィルタ12を介してZ圧電素子駆動電源13に送られる。そして、Z圧電素子駆動電源13は、圧電走査素子4に対して、フィルタ12からの出力信号に基づいてチップ2と試料3との間の距離を制御するようにフィードバック制御を行う。この例のAFMの他の作用効果は、図4に示す例のAFMと同じである。
【0015】このようにこの例のAFMでは、試料3の表面電位像を観察する手法として、カンチレバー1の撓みを検出し、チップ2への印加交流電圧と同周期のカンチレバー1の振動成分がゼロとなるチップ印加DC電圧を求めることにより、チップ表面に対する相対的な試料3の表面電位を得るという、いわゆるSMM法が用いられている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述の図4および図5に示す、直接力Fを検出するような従来のAFMでは、カンチレバー1の撓みの検出を確実に行うようにするためには、ばね定数が小さいカンチレバー1を使用しなければならない。しかしながら、カンチレバー1のばね定数を小さくすると、カンチレバー1が撓み易くなり、カンチレバー1の先端のチップ2が試料3に接触してしまうおそれがある。特に、図5に示すAFMでは、2倍周期の信号(2ω成分)を用いているため、チップ2−試料3間の距離が小さくなり過ぎて、チップ2が試料3に接触したとき、カンチレバー1の振動が止まり、2ω成分がゼロとなってしまう。このように2ω成分がゼロになることは、チップ2−試料3間の距離が大きい場合と同じになり、したがってチップ2−試料3間の距離をもっと小さくする方向にフィードバックが働いてしまうため、チップ2と試料3とが完全にぶつかってしまう。
【0017】このため、チップ2−試料3間の距離をあまり小さくすることはできなく、その結果試料3の表面電位と同時に観察される凹凸像の分解能をよくすることができないという問題がある。
【0018】一方、NCーAFMによる、表面電位像と同時に観察される試料3表面の凹凸像の観察方法においては、近年ばね定数の比較的大きいカンチレバー1を超高真空下で使用することにより、試料3の原子像観察が可能となっている。このような原子像観察が可能な状態で、従来のように直接力Fを検出するようにした場合には、表面電位の分解能が非常に悪くなってしまうという問題がある。
【0019】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的はばね定数の大きいカンチレバーや固有振動数の高いニードルタイプのSPMを用いて試料表面の凹凸画像の分解能を高くしながら、しかも試料表面の電位像の分解能を向上させることのできる走査プローブ顕微鏡を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、試料に対向して配置された探針と、前記探針を支持しかつこの探針を加振する第1の加振手段と、この第1の加振手段の固有振動数に等しい共振周波数で前記第1の加振手段を共振する加振駆動手段と、前記探針の振動周波数の変化をこの変化に対応した電圧に変換する周波数−電圧変換器と、この周波数−電圧変換器の出力と前記固有振動数とのずれを一定に保つように出力する誤差増幅器と、この誤差増幅器の出力に基づいて前記探針と前記試料との間の距離を制御する探針−試料間距離制御手段と、所定周波数の交流電圧の参照信号を出力する第2の加振手段と、前記周波数−電圧変換器の出力からこの第2の加振手段の出力する参照信号と同じ所定周波数成分を検出し出力する第1の周波数検出手段と、この第1の周波数検出手段の出力がゼロとなる直流電圧を出力する第2の誤差増幅器と、前記第2の加振手段が出力する参照信号の交流電圧と前記第2の誤差増幅器が出力する直流電圧とを加算した電圧を探針−試料間に印加する加算手段とを備え、前記誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料表面の凹凸像を得るとともに、前記第2の誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料の表面電位像を得ることを特徴としている。
【0021】また請求項2の発明は、試料に対向して配置された探針と、前記探針を支持しかつこの探針を加振する第1の加振手段と、この第1の加振手段の固有振動数に等しい共振周波数で前記第1の加振手段を共振する加振駆動手段と、前記探針の振動周波数の変化をこの変化に対応した電圧に変換する周波数−電圧変換器と、所定周波数の交流電圧の参照信号を出力する第2の加振手段と、前記周波数−電圧変換器の出力からこの第2の加振手段の出力する参照信号の所定周波数と同じ周期の周波数成分を検出し出力する第1の周波数検出手段と、前記周波数−電圧変換器の出力から前記第2の加振手段の出力する参照信号の所定周波数の2倍の周期の周波数成分を検出し出力する第2の周波数検出手段と、入力信号と前記固有振動数とのずれを一定に保つように出力する第1の誤差増幅器と、前記第1の誤差増幅器を、前記周波数−電圧変換器にまたは前記第2の周波数検出手段に選択的に切替接続する切替手段と、前記第1の周波数検出手段の出力がゼロとなる直流電圧を出力する第2の誤差増幅器と、前記第2の加振手段が出力する参照信号の交流電圧と前記第2の誤差増幅器が出力する直流電圧とを加算した電圧を探針−試料間に印加する加算手段と、この第1の誤差増幅器の出力に基づいて前記探針と前記試料との間の距離を制御する探針−試料間距離制御手段とを備え、前記第1の誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料表面の凹凸像を得るとともに、前記第2の誤差増幅器の出力信号に基づいて、前記試料の表面電位像を得ることを特徴としている。
【0022】更に請求項3の発明は、前記第1の加振手段が、先端に前記探針を支持するカンチレバーと、前記カンチレバーの後端に支持しかつこのカンチレバーを加振する加振用圧電素子と、前記カンチレバーの撓みを検出して出力する検出器とを備え、この加振用圧電素子によってカンチレバーがこのカンチレバーの固有振動数で加振されるとともに、前記周波数−電圧変換器が前記検出器の出力周波数を電圧に変換することを特徴としている。
【0023】更に請求項4の発明は、前記第1および第2の周波数検出手段を、前記カンチレバーのばね定数が大きいときは前記周波数−電圧変換器にまたは前記カンチレバーのばね定数が小さいときは前記検出器に選択的に切替接続する第2の切替手段を備え、前記第2の切替手段により前記カンチレバーのばね定数が大きいときは前記前記周波数−電圧変換器の出力を前記第1および第2の周波数検出手段に入力するとともに、また前記カンチレバーのばね定数が小さいときは前記検出器の出力を前記第1および第2の周波数検出手段に入力することを特徴としている。
【0024】更に請求項5の発明は、前記第1の加振手段が、先端に前記探針を支持しかつこの探針を加振する水晶発振器を備え、前記水晶発振器がこの水晶発振器の固有振動数で加振されるとともに、前記周波数−電圧変換器が前記水晶発振器の加振周波数を電圧に変換することを特徴としている。
【0025】
【作用】このような構成をした請求項1の発明の走査プローブ顕微鏡においては、周波数−電圧変換器の出力である力の勾配を用いて試料の表面電位が検出されるようになる。したがって、表面電位の検出において、ばね定数の大きいカンチレバーや固有振動数の高いニードルタイプのSPMを使用しても、表面電位像の分解能が良好になるとともに、ばね定数の大きいカンチレバーや固有振動数の高いニードルタイプのSPMを使用することにより、表面電位像と同時観察される試料の凹凸像の分解能が原子レベルまで向上するようになる。
【0026】また、請求項2の発明の走査プローブ顕微鏡においては、SMM法による観察を行う際に、始めに切替手段により第1の誤差増幅器を周波数−電圧変換器に接続することにより、KFM法に基づいてチップ−試料間の距離が設定される。次いで、切替手段により第1の誤差増幅器を第2の周波数検出手段に接続してSMM法による観察のためのチップ−試料間の距離設定が、KFM法により設定されたチップ−試料間の距離に基づいて行われる。これにより、SMM法による観察におけるチップ−試料間の距離を、チップを試料にぶつけてクラッシュさせることなく最適値に容易に設定することが可能となる。しかも、切替手段により、KFM法による観察およびSMM法による観察のいずれも簡単に行うことが可能となる。
【0027】更に、請求項3の発明においては、カンチレバーの力の勾配を用いて試料表面の表面電位像および凹凸像の観察が行われる。したがって、ばね定数の大きいカンチレバーのSPMを使用しても、試料の表面電位像および試料の凹凸像の分解能がともに高レベルに向上するようになる。特に、請求項4の発明においては、カンチレバーのばね定数に基づいて、すなわちこのばね定数が小さいときはカンチレバーの力を用いて表面電位の観察および凹凸像の観察が可能になるとともに、ばね定数が大きいときはカンチレバーの力の勾配を用いて表面電位の観察および凹凸像の観察が可能になる。その場合、第2の切替手段により、カンチレバーの力あるいは力の勾配のいずれかの選択を簡単に行うことが可能となる。
【0028】更に、請求項5の発明においては、水晶発振器を用いて試料表面の凹凸像および表面電位像が観察される。この場合、水晶発振器を用いることによりカンチレバーより高い固有振動数が簡単に得られるため、力の勾配を検出する上でネックとなっている周波数−電圧変換器の応答周波数帯域を改善することが可能となる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明にかかる走査プローブ顕微鏡の実施の形態の一例を、AFMに適用した場合について模式的に示す図である。なお、図4に示す従来のAFMと同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0030】前述の図4に示すAFMにおいては、オシレータ9およびロックインアンプまたはRMSーDC10が設けられているが、本例のAFMは、図1に示すようにこれらのオシレータ9およびロックインアンプまたはRMSーDC10が削除されており、代わりにプリアンプ8の出力が位相調整器19に入力されるとともに、この位相調整器19の出力が波形変換器20に入力されるようになっている。また、波形変換器20の出力が振幅調整器を有するアッテネータ21および周波数−電圧変換器(F/V変換器)22に供給されるようになっている。
【0031】アッテネータ21の出力は、振幅が調整されて加振用圧電素子5に供給されるようになっており、またF/V変換器22の出力が、誤差増幅器11、第1および第2のロックインアンプ14,15に供給されるようになっている。本例のAFMの他の構成は、図4に示す従来のAFMと同じである。
【0032】このように構成された本例のAFMにおいては、図4のAFMと同様に光源6からの光がカンチレバー1に当たって反射した反射光が光検出器7によって検出され、この光検出器7の出力がプリアンプ8によって適当な大きさの振幅に増幅される。プリアンプ8で振幅が増幅された光検出器7の出力は、位相調整器19によって発振系(加振用圧電素子5ー光検出器7ープリアンプ8ー位相調整器19ー波形変換器20ーアッテネータ21からなる系)が加振用圧電素子5への最大の正帰還となるようにその位相が調整された後、例えばコンパレータ等の波形変換器20により電源電圧のようなある一定の振幅の方形波に変換されて、参照波が形成される。その場合、この参照波が予期しないカンチレバー1の振幅の変化に対しても変化しない程度にプリアンプ8のゲインを調整しておく。
【0033】更に、アッテネータ21は、この参照波の抵抗分割等によって、カンチレバー1の振動振幅が適当な大きさになるように、加振用圧電素子5に印加する電圧振幅を設定する。以上の発振系により、カンチレバー1は、その加振振幅が一定に保持された状態でかつカンチレバー1の固有振動数で発振する。
【0034】一方、波形変換器20からの参照波は、その周波数の変化がF/V変換器22によってその変化に対応した電圧に変換される。このF/V変換器22の出力は誤差増幅器11に供給され、前述の図4のAFMと同様にこの誤差増幅器11において参照電圧Vにより設定された一定電圧すなわち固有振動数とのずれを一定に保つようにフィルタ12およびZ圧電素子駆動電源13を介して圧電走査素子4のZ方向の変位にフィードバックされる。そして、フィルタ12はこのフィードバック回路を安定させ、その出力が試料3の凹凸像の信号となる。
【0035】この凹凸像を観察する部分はFM検出法を用いたNC−AFMであり、プリアンプ8の出力がカンチレバー1の力Fとなっているとともに、F/V変換器22の出力がカンチレバー1の力の勾配(周波数シフト)F′となっている。このF/V変換器22の出力信号が第1および第2のロックインアンプ14,15に入力される。以後、前述の図4に示すAFMと同様に、誤差増幅器17は第1のロックインアンプ14で検出されたω成分がゼロとなるDC電圧Vdcを出力し、このDC電圧Vdcが加算器18を介してカンチレバー1にフィードバックされ、試料3の表面電位とチップ2の先端の電位とが同電位に保たれるとともに、DC電圧Vdcが試料3の表面電位となる。また、第2のロックインアンプ15で検出された2ω成分の信号により、チップ2−試料3間の容量に関係した情報の画像が画像表示装置に表面電位と同時表示される。
【0036】このようにして、本例のAFMによれば、第1および第2のロックインアンプ14,15にカンチレバー1に作用する力の勾配F′を用いているので、従来のようなカンチレバー1に作用する力Fを用いる場合に比べて、ばね定数の大きいカンチレバー1を用いての表面電位の観察が可能となり、表面電位の分解能が向上する。また、ばね定数の大きいカンチレバー1を用いることから、チップ2−試料3間の距離をより小さくすることができるようになる。したがって、試料3の表面の凹凸像の分解能も向上する。
【0037】図2は、本発明の実施の形態の他の例を示す、図1と同様の図である。なお、図1および図4に示す従来のAFMと同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0038】図1に示す例のAFMでは、カンチレバー1を用いているが、この例のAFMは、図2に示すようにカンチレバー1に代えて、チップ2が取り付けられたクォーツ(水晶発振器)23を用いたニードルタイプのAFMである。この例のAFMは、図1に示す例のAFMにおける、加振用圧電素子5、光源6、光検出器7、プリアンプ8、位相調整器19、波形変換器20、およびアッテネータ21を備えていない。
【0039】そして、このクォーツ23がオシレータ駆動電源24に接続されているとともに、このオシレータ駆動電源24はF/V変換器22にも接続されている。この例のAFMの他の構成は、図1に示す例のAFMと同じである。
【0040】このように構成されたこの例のAFMにおいては、オシレータ駆動電源24により、クォーツ23をその固有振動数(共振周波数)で共振させる。これにより、チップ2はクォーツ23の固有振動数で振動するが、チップ2−試料3間の力の勾配F′によってこのチップ2の共振周波数がシフトする。オシレータ駆動電源24からこの周波数のシフトが生じた発振波形がF/V変換器22に入力される。以後、図1の例のAFMと同様に、F/V変換器22で周波数のシフトが電圧に変換されて、試料3の凹凸像、試料3の表面電位像、およびチップ2−試料3間の容量に関係した情報の像が得られる。
【0041】この例のAFMでは、水晶発振器23を用いているので、カンチレバー1よりも高い固有振動数が簡単に得られ、力の勾配F′を検出する上でネックとなるF/V変換器22の応答周波数帯域が改善されるようになる。この例のAFMの他の作用効果は、図1の例と同じである。なお、前述の各例では、NC−AFMによりFM検出法を用いているが、スロープ(Slope)検出法にも本発明を適用することができる。
【0042】図3は、本発明の実施の形態の更に他の例を示す、図1と同様の図である。なお、図1および図4に示す従来のAFMと同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0043】図1の例のAFMでは、表面電位像の観察手法としてKFM法のみを用いるようにしているが、この例のAFMでは、表面電位像の観察手法としてKFM法とSMM法との両方を用いることができるようにしている。すなわち、図3に示すようにこの例のAFMは、KFM/SMM切替スイッチ25と、カンチレバー1のばね定数切替スイッチ26とを備えている。
【0044】KFM/SMM切替スイッチ25は、試料3の表面電位の観察をKFM法で行う場合には破線で示す位置に設定され、また表面電位の観察をSMM法で行う場合には実線で示す位置に設定されるようになっている。
【0045】ばね定数切替スイッチ26は、カンチレバー1のばね定数kが大きく、カンチレバー1の力の勾配F′で試料3の表面電位の観察を行う場合は実線で示す位置に設定され、またカンチレバー1のばね定数kが小さく、カンチレバー1の力Fで試料3の表面電位の観察を行う場合は破線で示す位置に設定されるようになっている。この例のAFMの他の構成は、図1に示すAFMと同じであるこのように構成されたこの例のAFMにおいては、まず、ばね定数kの大きなカンチレバー1を用いてKFM法で試料3の凹凸像および表面電位像の観察を行う場合は、KFM/SMM切替スイッチ25を破線で示す位置に設定するとともに、ばね定数切替スイッチ26を実線で示す位置に設定する。これにより、F/V変換器22の出力がKFM/SMM切替スイッチ25を介して誤差増幅器11に入力されるとともに、ばね定数切替スイッチ26を介して第1および第2ロックインアンプ14,15に入力される。この状態は、図1に示す例のAFMとまったく同じ状態になっており、この状態でのAFMの作動についての説明は前述と同じであるので省略する。
【0046】ばね定数kの小さなカンチレバー1を用いてKFM法で試料3の凹凸像および表面電位の観察を行う場合は、KFM/SMM切替スイッチ25およびばね定数切替スイッチ26をともに破線で示す位置に設定する。これにより、F/V変換器22の出力がKFM/SMM切替スイッチ25を介して誤差増幅器11に入力されるとともに、プリアンプ8の出力がばね定数切替スイッチ26を介して第1および第2ロックインアンプ14,15に入力される。この状態では、発振系、試料3の凹凸像の観察、およびZ圧電素子駆動電源13による、チップ2−試料3間の距離を一定に保つ圧電走査素子4に対するフィードバック制御が、それぞれ図1に示す例のAFMと同じになる。また、この状態での表面電位の観察、チップ2−試料3間の容量に関係する情報の観察、およびチップ2への電圧フィードバック制御が、図4に示す従来のAFMと同じになる。
【0047】ばね定数kの大きなカンチレバー1を用いてSMM法で試料3の凹凸像の観察および表面電位の観察を行う場合は、まず、チップ2を試料3にアプローチするために、KFM/SMM切替スイッチ25を破線で示すKFM側に設定するとともに、ばね定数切替スイッチ26を実線で示す位置に設定する。このようにKFM/SMM切替スイッチ25をKFM側に設定した後、通常のNC−AFMと同様にチップ2を試料3に接近させる。チップ2のアプローチが完了した後、前述と同様のNC−AFMでのKFM法による周波数のシフト量を観察し、そのときのF/V変換器22の出力を記憶しておく。次に、Z圧電素子駆動電源13を用いて、試料3をチップ2から一旦遠ざけた後、KFM/SMM切替スイッチ25を実線で示すSMM側に設定する。次いで、誤差増幅器11の参照電圧Vの値、すなわちチップ2−試料3間の距離を、先ほど記憶したF/V変換器22の出力を目安に設定し直す。そして、KFM/SMM切替スイッチ25を実線位置(SMM側)に設定した状態では、F/V変換器22の出力がばね定数切替スイッチ26を介して第1および第2ロックインアンプ14,15に入力されるとともに、第2のロックインアンプ15の出力(2ω成分)が誤差増幅器11に入力されるようになる。
【0048】この状態で、NC−AFMでのSMM法による凹凸像および表面電位像の観察を行う。その場合、誤差増幅器11は、第2ロックインアンプからの出力(2ω成分)と新しく設定し直された参照電圧Vに基づいて、前述と同様に固有振動数のずれを一定に保つように出力し、フィルタ12を介してZ圧電素子駆動電源13に送り、Z圧電素子駆動電源13は圧電走査素子4に対して、チップ2−試料3間の距離を一定に保つようにフィードバック制御を行う。そして、このときのフィルタ12の出力が試料3表面の凹凸像(Topo像)の信号となる。また、表面電位像の観察は、F/V変換器22の出力が第1および第2ロックインアンプ14,15に供給されることから、図1に示す例のAFMでのKFM法による場合と同じに行われる。
【0049】更に、ばね定数kの小さなカンチレバー1を用いてSMM法で試料3の凹凸像の観察および表面電位像の観察を行う場合は、チップ2を試料3にアプローチするために、KFM/SMM切替スイッチ25を破線で示すKFM側に設定するとともに、ばね定数切替スイッチ26を破線で示す位置に設定する。そして、前述のSMM法の場合と同様に、誤差増幅器11の参照電圧Vを設定し直して、KFM/SMM切替スイッチ25を実線のSMM側に設定する。
【0050】この状態で、試料3の凹凸像観察と表面電位観察とを行うが、凹凸像の観察は前述のSMM法による観察と同じであり、また表面電位像の観察は、図5に示す従来のNC−AFMでのSMM法による表面電位像の観察と同じである。
【0051】なお、前述のカンチレバーによるAFMの各例では、光てこ方式を用いているが、これに限定されるものではなく、光干渉、静電容量等の他の方式を用いることもできる。
【0052】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項1の発明の走査プローブ顕微鏡によれば、力の勾配を用いて試料の凹凸像および表面電位像を観察しているので、ばね定数の大きいカンチレバーや固有振動数の高いニードルタイプのSPMを使用できる。これにより、表面電位像の分解能を良好にできるとともに、試料の凹凸像の分解能を原子レベルまで向上できる。
【0053】また、請求項2の発明の走査プローブ顕微鏡によれば、SMM法による観察のためのチップ−試料間の距離設定を、KFM法により設定したチップ−試料間の距離に基づいて行うようにしているので、SMM法による観察におけるチップ−試料間の距離を、チップを試料にぶつけてクラッシュさせることなく最適値に容易に設定することができる。しかも、切替手段により、KFM法による観察およびSMM法による観察のいずれも簡単に行うことが可能となる。
【0054】更に、請求項3の発明によれば、カンチレバーの力の勾配を用いて試料表面の表面電位像および凹凸像の観察を行うようにしているので、ばね定数の大きいカンチレバーを使用することができる。これにより、試料の表面電位像および試料の凹凸像の分解能をともに高レベルに向上できる。特に、請求項4の発明によれば、カンチレバーのばね定数が小さいときはカンチレバーの力を用いて表面電位の観察および凹凸像の観察を行うことができるとともに、ばね定数が大きいときはカンチレバーの力の勾配を用いて表面電位の観察および凹凸像の観察を行うことができる。その場合、第2の切替手段により、カンチレバーの力あるいは力の勾配のいずれかの選択を簡単に行うことが可能となる。
【0055】更に、請求項5の発明によれば、水晶発振器を用いて試料表面の凹凸像および表面電位像を観察するようにしているので、水晶発振器を用いることによりカンチレバーより高い固有振動数が簡単に得られるため、力の勾配を検出する上でネックとなっている周波数−電圧変換器の応答周波数帯域を改善することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二 (外7名)
【公開番号】 特開平11−23588
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−182305