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【発明の名称】 生理状態の評価方法および簡易生理状態評価キット
【発明者】 【氏名】中根 英雄

【氏名】山田 幸生

【氏名】浅見 修

【氏名】矢内原 昇

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被験者から体液を採取し、前記体液中のクロモグラニンの濃度から、クロモグラニンの分泌量と相関関係のある生理状態を評価することを特徴とする生理状態の評価方法。
【請求項2】 支持体上に液体貯留構造を伴う抗体固定部を設けると共にこの抗体固定部に抗クロモグラニン抗体を固定した計測片と、前記抗体固定部に投与可能に準備された、標識発現用の物質と、から構成され、生理状態の評価に用いることを特徴とする簡易生理状態評価キット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生理状態の評価方法および簡易生理状態評価キットに関し、更に詳しくは、唾液、血液、尿、髄液、リンパ液等の体液中に分泌され、例えば精神的または肉体的なストレスあるいは負荷状態や、所定の医療上の疾患(例えば、精神、神経系の疾患、あるいは高血圧、内分泌障害や各種腫瘍等と言った広範囲の疾患)等に代表される各種の生理状態を定量的に評価するための生理状態の評価方法および簡易生理状態評価キットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の生理状態の評価方法については、その一例であるストレスを例にとって説明すると、アンケート形式の心理評価、フリッカーなどのタスク評価法、脳波や心拍を測定する電気生理的計測法および血液や尿に含まれるストレス応答物質を測定する生化学測定法などがある。
【0003】上記それぞれの方法には一長一短があるが、このうち生化学測定法は物質濃度を測定することから、客観性、定量性に優れると言う利点がある。そして生化学測定法における公知の測定対象物質としては、ストレスホルモンであるカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)やコルチゾールがしばしば用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、カテコールアミンやコルチゾールは、従来より主としてストレスの評価に限定して用いられるものであり、より広範囲な各種の生理状態、例えば精神、神経系の疾患、あるいは高血圧、内分泌障害や各種腫瘍等と言った広範囲の疾患等の生理状態の評価や診断に利用できるか、は疑問である。
【0005】さらに言えば、ストレス評価に限っての測定対象物質としても、例えば精神ストレスの評価に適したアドレナリンや肉体ストレスの評価に適したノルアドレナリンは、コルチゾールに比較して応答が鋭敏で応答時間も短いと言う長所を持つ一方で、感度不足の問題から唾液中等での測定が困難なために、侵襲性の高い血液採取と言う手段しか取り得ないと言う欠点がある。逆に、コルチゾールは非侵襲性の唾液中測定が可能であるが、応答性に問題がある。
【0006】そこで本発明は、ストレスあるいは負荷状態の評価も含み、さらに広範囲な各種の生理状態を評価でき、しかも唾液、尿等を検体とする非侵襲性の測定も任意に採用でき、かつ例えばコルチゾールのような応答性の問題のない生理状態の評価方法を提供すること、および、その評価を簡便かつ迅速に行うための実用的なデバイスを提供することを、その解決すべき課題とする。
【0007】
【着眼点】本願発明者は、人間が精神的または肉体的なストレスあるいは負荷を受けたとき、あるいは、例えば、精神、神経系の疾患、または高血圧、内分泌障害や各種腫瘍等と言った広範囲の疾患状態に陥ったとき、等の広範囲の生理状態において、これに対応して唾液、血液、尿、髄液、リンパ液等の体液中のクロモグラニンの濃度が、本来の指標物質として使用可能な状態、即ち定量的評価の可能な状態で鋭敏に上昇することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(第1発明の構成)上記課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の発明)の構成は、被験者から体液を採取し、前記体液中のクロモグラニンの増加率から、前記クロモグラニンの分泌量と相関関係のある生理状態を評価する生理状態の評価方法である。
【0009】(第2発明の構成)上記課題を解決するための本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、支持体上に液体貯留構造を伴う抗体固定部を設けると共にこの抗体固定部に抗クロモグラニン抗体を固定した計測片と、前記抗体固定部に投与可能に準備された、標識発現用の物質と、から構成され、生理状態の評価に用いる簡易生理状態評価キットである。
【0010】
【発明の効果】
(第1発明の効果)第1発明では、体液中のクロモグラニンの増加率を測定することにより、今までにできなかった広範囲な種類の生理状態を評価することができる。そして、体液中のクロモグラニンの濃度が定量的評価の可能な状態で鋭敏に上昇するので、信頼性の高い評価結果を得ることができる。
【0011】さらに第1発明では、唾液、血液、尿、髄液、リンパ液等の体液を任意に、あるいは最も目的に適応した種類の体液を選択して検体とすることができるので、必要に応じて非侵襲性の測定も容易に可能であり、非常に有用性が高い。
【0012】(第2発明の効果)第2発明によって、前記第1発明にかかる生理状態の評価を簡便かつ迅速に行うための実用的なデバイスが提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、第1発明及び第2発明の実施の形態について説明する。
【0014】(生理状態)本発明の評価対象となる「生理状態」とは、精神的、肉体的な各種の生理状態を広範囲に含み、医学上の有意な疾患あるいは症状と、医学の対象となるような状態に至っていない精神的、肉体的な各種の生理状態とが含まれる。そして本発明に言う「生理状態」として、少なくとも現在のところ、特定の精神的、肉体的生理状態を排除すべき積極的な根拠は見出されていない。
【0015】「生理状態」の代表的なものの一つが、精神的または肉体的なストレスあるいは負荷状態であり、この中には、例えば緊張をしいられた場合のような精神的ストレス、運動や肉体作業等による肉体的ストレス、自動車の長時間運転時のように精神、肉体の両方に基づくストレス等があり、また、負荷の強さ、時間と言う観点から分類すると、急性ストレス、慢性ストレス、あるいは未だストレスと呼ぶに至らないような精神的または肉体的な負荷状態等が含まれる。
【0016】これについては、次の■〜■のようなことが言える。
【0017】■ 体液中のクロモグラニンは血液中のカテコールアミン類、特にノルアドレナリンと共分泌され、分泌速度が相関することが分かっており、従って体液中のクロモグラニンは交感神経活動の指標物質になる。このことから、体液、例えば唾液、尿、血液中等のクロモグラニンを指標物質として、交感神経活動が関与する生理状態、甲状腺髄様がん、褐色細胞腫等の腫瘍の発生を評価、診断することができる。
【0018】■ なお、生理状態の指標物質としての機能ではないが、クロモグラニン分解物がクロム親和性細胞からのノルアドレナリンの分泌を抑制することも分かっており、従ってクロモグラニンはストレスを調節する機能もある。このことから、体液、例えば唾液、尿、血液中のクロモグラニン濃度の測定を利用して、肉体的あるいは精神的生理状態の評価等を行うことが考えられる。
【0019】■ 次に、緊張ストレスのような精神ストレスや、自動車等の運転に係る運転ストレスのような精神/肉体ストレスのような広範囲な種類のストレスの負荷状態において、体液中のクロモグラニン濃度がこれらのストレスの強度に定量的に対応して上昇することが分かっている。このことから、体液、例えば唾液、尿、血液中のクロモグラニンを指標物質として、例えば感性工学的に有効な評価データを取得することができる。そのようなデータの利用例として、例えば利用者にストレスを与えない事務用機器や自動車車室内の設計、同様な意味での音響学的または色彩学的環境の設計などが考えられる。
【0020】「生理状態」の他の代表的なものの一つが、医療上の一定の疾患あるいは症状であり、例えば、次のようなものが対象となる。
神経系疾患 :脳機能障害、中枢神経機能障害、自律神経機能障害等。
精神疾患 :精神障害等。
内分泌系疾患:内分泌障害、副甲状腺機能の亢進あるいは障害等。
各種の腫瘍 :褐色細胞腫、脳下垂体腫瘍、神経芽細胞腫、内分泌器官腫瘍等。
循環器系疾患:高血圧等。
【0021】これらについては、次の■〜■のようなことが言える。
【0022】■ 褐色細胞腫患者において、患者の約8〜9割と言う統計的に有意な確率で、細胞腫の症状に定量的に対応して、体液中のクロモグラニンが異常な高濃度を示すと言うデータが得られており、従って体液、例えば唾液、尿、血液、髄液、リンパ液中のクロモグラニンは褐色細胞腫の診断の指標物質になる。
【0023】■ 各種の内分泌器官の腫瘍、例えば肺小細胞癌、下垂体腫瘍、神経芽細胞腫、甲状腺髄様がん等においても、統計的に有意な確率で、これらの腫瘍群の症状に定量的に対応して、体液中のクロモグラニンが高濃度を示すと言うデータが得られており、従って体液、例えば唾液、尿、血液、髄液、リンパ液中のクロモグラニンはこれらの腫瘍群の診断の指標物質になる。
【0024】■ 高血圧や副甲状腺機能亢進の見られる患者でも、統計的に有意な確率で、これらの腫瘍群の症状に定量的に対応して、体液中のクロモグラニンが高濃度を示すと言うデータが得られており、従って体液、例えば唾液、尿、血液、髄液、リンパ液中のクロモグラニンはこれらの症状の診断の指標物質にもなる。
【0025】■ 腎不全患者でも統計的に有意な確率で体液中のクロモグラニンが高値を示すと言うデータが得られており、従って、体液、例えば唾液、尿、血液中のクロモグラニンはこれらの症状の診断の指標物質にもなる。以上の■〜■に例示したもののうち、精神的または肉体的なストレスあるいは負荷状態に関する生理状態と、医療上の一定の疾患あるいは症状に関する生理状態とでは、本発明を適用するに当たっての技術的な意味あいがかなり異なると考えられる。
【0026】なぜなら、前者は、例えば感性工学的に有効なデータを提供する点から、例えば利用者にストレスを与えない事務用機器や自動車車室内の設計、同様な意味での音響学的または色彩学的環境の設計等への利用が有力に考えられるのに対して、後者はむしろ、医療に対する有効なデータを提供するからである。
【0027】従って、第1発明の下位概念の発明として、次の二つの発明を開示することができる。
【0028】第1−1発明:この発明の構成は、被験者から体液を採取し、前記体液中のクロモグラニンの濃度から、クロモグラニンの分泌量と相関関係のある精神的または肉体的なストレスあるいは負荷状態を評価する生理状態の評価方法である。そして、この発明の効果は、前記第1発明の効果に加え、精神的または肉体的なストレスあるいは負荷状態を評価することができる点から、その評価結果を種々の目的に有効利用できることである。その一例として、いわゆる感性工学への利用が考えられる。即ち、例えば利用者にストレスを与えない事務用機器や自動車車室内の設計、同様な意味での音響学的または色彩学的環境の設計などが考えられる。
【0029】第1−2発明:この発明の構成は、被験者から体液を採取し、前記体液中のクロモグラニンの濃度から、クロモグラニンの分泌量と相関関係のある所定の医療上の疾患を評価する生理状態の評価方法である。そして、この発明の効果は、前記第1発明の効果に加え、精神、神経系の疾患、あるいは高血圧、内分泌障害や各種腫瘍等と言った広範囲の疾患の症状を評価できる点から、これらの有効な診断手段を与えることとなり、医療上の価値が非常に大きいことである。
【0030】(体液)本発明において採取対象となる「体液」とは、例えば唾液、尿、血液、髄液、リンパ液等の広範囲の種類の体液を含む。そして本発明に言う「体液」として、少なくとも現在のところ、特定の種類の体液を排除すべき積極的な根拠は見出されていない。
【0031】これらの各種体液を、いわゆる「検体」としての有利性と言う面から見たとき、一般的には次のような事が言える。
【0032】被験者からの採取の容易さや、検体採取操作の非侵襲性から言えば、唾液が最も優れる。次に尿が利用し易く、医療用途の評価を行う際には血液も利用し易い体液である。
【0033】しかしながら、評価すべき生理状態の種類と体液の種類とのマッチング、即ち両者の定量的な対応関係を考慮したときには、髄液、リンパ液やその他の体液が相対的に優れている場合もある。
【0034】(被験者からの体液採取)第1発明において、生理状態を評価すべき被験者から体液を採取するタイミングは、特に評価すべき生理状態が例えば一時的なストレスのような一過性のものである場合において、検討すべき問題である。
【0035】しかし、一般的に言って、そのタイミングには特に限定がない。ただし、同一の評価試験における複数の実験例あるいは比較例の各被験者は同一の適当なタイミングで体液を採取することが好ましい。
【0036】なお、より厳密に評価試験を行いたい場合には、当該評価試験の予備試験などにより既知となった当該生理状態に対する体液中クロモグラニンの分泌量曲線(検量線)に基づいて、体液採取のタイミングを決定しても良い。
【0037】評価すべき生理状態が、例えば一時的なストレスのような一過性のものである場合も、上記と同様の体液中クロモグラニンの分泌量曲線に基づき、そのストレスの負荷終了後における所定時間の経過を見計らって体液を採取することが好ましい。
【0038】このようなタイミングの単なる一例として、一過性のストレスの負荷終了直後、あるいはその10分以内が考えられる。このタイミングなら、クロモグラニンの分泌量がピークに達しており、あるいはその分泌量が有効に評価可能な量に達している場合が多いからである。このことからも、クロモグラニンの応答性の鋭敏さが理解される。
【0039】(クロモグラニン)クロモグラニンにはクロモグラニンAとクロモグラニンBとが知られ、また、類似物質としてセクレトグラニン(クロモグラニンC)が知られ、その他にも、未だ解明されていないクロモグラニン物質が存在する可能性があるが、本発明の評価対象にはそれらのいずれもが含まれる。
【0040】また本発明者は、これらのクロモグラニン物質の分解物もまた有効な評価対象とすることができる可能性を否定しない。但し評価対象物質は、抗クロモグラニン抗体を用いる評価手法の場合には、上記の種々の物質のうち、前記抗体と特異的に結合する物質の範囲に限定される。
【0041】(クロモグラニン濃度の測定)体液中のクロモグラニン濃度の測定方法については、公知の各種の手法を任意に採用すれば良い。
【0042】その一例として、抗体法が挙げられる。この方法は、抗クロモグラニンA抗体、抗クロモグラニンB抗体、抗クロモグラニン分解物質抗体などを用いることにより、クロモグラニンA、クロモグラニンB、クロモグラニン分解物質などをそれぞれ測定できる方法である。
【0043】そして抗体法は、上記抗体を標識する方法により、酵素を用いるエンザイムイムノアッセイ、放射性物質を用いるラジオイムノアッセイ、蛍光色素を用いる蛍光抗体法などに分類される。
【0044】また、1ステップだけの抗体を使用する直接法(例えば、標識された競合用のクロモグラニンを別途に所定量準備しておいて、これを体液検体に加えたもとで標識を発現させて、間接的に体液検体中のクロモグラニン濃度を知る方法)や、抗体に捕捉されたクロモグラニンに対してさらに標識された二次抗体を用いる間接法等がある。
【0045】(生理状態の評価)クロモグラニン濃度の測定結果に基づく生理状態の評価は、本発明の実験例と適当なブランク試験との対比によっても可能であるし、ブランク試験を行わずに取得済みのクロモグラニン分泌量曲線データを基準として判定しても良い。またストレスの評価等においては、被験者に対する心理評価を並行して行っても良い。さらに正確を期するために、これらの方法を併用しても良い。
【0046】(簡易生理状態評価キット)簡易生理状態評価キットにおける計測片の支持体は、その形状、寸法、材質などについて特段の限定はされないが、例えば偏平で細長く、ある程度の堅牢な材料のものを使用することが好ましい。支持体上に設ける抗体固定部の液体貯留構造は、抗体固定部に投与される体液あるいはその希釈液を流失させない構造であれば良い。その一例として、抗体固定部を取り囲むように設けた筒状の構造が考えられる。
【0047】抗体固定部は、直接法においては抗クロモグラニン抗体、間接法においては抗クロモグラニン一次抗体がそれぞれ適当な手段で固定されていれば良く、その構造や表面形状に特段の限定はない。例えば前記支持体上に設けられ、前記液体貯留構造で取り囲まれた、平面的なクロモグラニン固定用の膜体を用いることができる。
【0048】計測片と共に、前記抗体固定部に投与可能に準備された標識発現用の物質がキットを構成する。ここに「投与可能に準備された」とは、容器封入などの保存性の考慮のもとに、計測片と一体的なセットとして市場流通できる状態にされていることを言う。
【0049】「標識発現用の物質」とは、前記した抗体法の分類に従って、酵素基質や蛍光発光剤などを含み、かつ、直接法においては、例えば標識された競合用のクロモグラニンを含み、間接法においては、標識された抗クロモグラニン二次抗体を含む。
【0050】(高速計測法)1検体あたり10〜20分程度でクロモグラニンの正確な定量が可能な、フローインジェクション分析を利用した高速計測法を図1に示す。
【0051】この方法では、まず検体ループ4に測定検体である体液を注入し、バルブ5を切り換え、キャリア緩衝液2を利用してポンプ8により測定検体を反応部9へ送る。反応部9には抗クロモグラニン一次抗体が固定されているので、検体中のクロモグラニンが捕捉される。
【0052】次いで検体ループ4に酵素標識した抗クロモグラニン抗体(二次抗体)を注入し、これも同様に反応部9へ送る。そして反応部9において両者を反応させた後、未反応であった検体および酵素標識抗クロモグラニン抗体を洗い流し、バルブ6を切り換えて酵素基質溶液1を送る。
【0053】こうして、反応部9で捕捉されている標識酵素による基質反応生成物を検出器10で検出することで、計測を行うのである。なお、バルブ7を切り換えて再生液3を送液し、反応部9に結合しているクロモグラニンや酵素標識抗クロモグラニン抗体を除去すれば、次回の使用に備えて反応部9を再生できる。
【0054】
【実施例】
(実施例で用いた方法)以下の実施例1および実施例2においては、唾液中クロモグラニン濃度の計測を行い、その際に、O'Connorらの方法(Clin. Chem. 35, 1631-1637, 1989 )に準拠して行った。具体的には、実施例の要点は次の通りである。
【0055】採取後、凍結保存した唾液を室温にて自然解凍し、15,000rpmで10分間遠心した上清300μlを使用した。これに 125Iでラベルしたクロモグラニン、および抗クロモグラニン抗体をそれぞれ150μl加え、攪拌後4°Cにて一晩静置した。そしてこれにキャリア抗原としてウサギ血清100μlを加え、攪拌後5分間室温に静置した後、ヤギ抗ウサギγグロブリン抗体溶液を50μl加え、攪拌後5分間静置した。
【0056】次に、これにポリエチレングリコール溶液1mlを加え、攪拌後10分間静置した後、遠心して抗原抗体複合体を沈澱させた。その上清を吸引除去し、沈澱の放射活性を測定した。
【0057】一方、既知の濃度のクロモグラニン溶液を用いて同様に操作して、検量線を作成し、この検量線に基づき、検体におけるクロモグラニン濃度を判定した。
【0058】実施例1においては、唾液中のクロモグラニン濃度の測定と共に、被験者に対する心理評価によるアンケートも並行して実施した(緊張感)。アンケートにおける心理評価のスコアは被験者の申告による0〜3の相対評価である。
【0059】また、実施例2においては、唾液中のコルチゾールの濃度測定もクロモグラニンの場合と同様の手法によって行い、かつ、被験者に対する心理評価によるアンケートも並行して実施した(緊張感および疲労感)。アンケートにおける心理評価の緊張感および疲労感のスコアは、午前および午後の各運転前のレベルを0として正規化し、「緊張感や疲労感を感じない」を0、「緊張感や疲労感を強く感じる」を1として、0〜1の間のスコアで評価した。
【0060】(実施例1)本実施例は、緊張ストレスの評価例である。即ち、若手の研究者が重要会議において研究発表を行ったときの唾液中クロモグラニン濃度の変化を心理評価のスコアと共に図2に示す。
【0061】図2より明らかなように、発表直後の唾液中クロモグラニン濃度は、発表前に比較して2倍以上に上昇していることが確認された。事後のインタビューによっても、この研究者は「発表に際して非常に緊張した。」と回答している。
【0062】(実施例2)本実施例は、運転ストレスの評価例である。即ち、37歳の男性が午前と午後にそれぞれ2時間ずつ高速道路を走行したときの唾液中クロモグラニン濃度、唾液中コルチゾールの濃度を測定し、かつ、被験者に対する心理評価によるアンケートも実施した。その結果を図3に示す。
【0063】図3のプロットからも分かるように、唾液のサンプリングおよび心理評価のスコアリングは、午前、午後共に走行直前、走行開始1時間後(中間点)および走行直後に行った。
【0064】図3のデータから、唾液中クロモグラニン濃度は運転ストレスの負荷や心理評価のスコアに対して非常に鋭敏に、かつ応答時間上のタイムラグなしに対応しているが、これに比較すると唾液中コルチゾールの濃度は1時間近いタイムラグを伴って変化している。
【0065】このことから、唾液中クロモグラニン濃度は即時型の優れたストレス指標であることが分かる。一方、唾液中コルチゾール濃度はクロモグラニン濃度に比較すると評価の実施上においてタイムラグの正確な処理が必要となり、利用し難い指標であることが分かる。
【0066】(実施例3)本実施例は、簡易生理状態評価キットに係る計測片の一例を示す。図4(a)および図4(b)において、計測片11は、任意の堅牢な材質からなる細長い方形板状の支持体12の一端側に、液体貯留構造を構成する筒13を立設し、筒13の内側底部に抗体固定部14を設けた構造となっている。
【0067】抗体固定部14は膜体であって、抗クロモグラニン抗体が固定されている。図に明らかなように、抗体固定部14の上方には筒13によって一定容積の液溜めが形成されている。なお、この計測片11は、前記したように、図示しない標識発現用物質とセットになって簡易生理状態評価キットを構成するものである。
【0068】標識発現用物質は、例えばガラス製またはプラスチック製の簡易なアンプル包装として準備されていても良く、かつ、そのアンプル包装等が計測片11と一体に形成されていても良いが、別体に形成されている場合でも計測片11と同一の包装箱等に封入されていれば足りる。
【0069】標識発現用物質の内容も前記した通りである。計測方式に従って、酵素基質や蛍光発光剤など、直接法においては例えば標識された競合用のクロモグラニン、間接法においては標識された抗クロモグラニン二次抗体を必要に応じて含み、さらに、必要なら唾液希釈用や洗浄用の蒸留水などを含んでも良い。
【0070】本実施例に係る簡易生理状態評価キットの使用方法は、例えば次の通りである。即ち、まず、抗体固定部14上の液溜めに検体唾液約0.5mlと、これと等量の蒸留水とを添加し、軽く浸とうした後、5分程度静置してから液を捨てる。次いで酵素標識した抗クロモグラニン二次抗体の液を約0.5ml添加し、5分程度静置する。そして抗体固定部14上を1mlの蒸留水で3回洗浄した後、発色式の酵素基質溶液を加えて5分程度静置し、その発色の強さから生理状態を判定するのである。
【0071】以上の操作から分かるように、簡易生理状態評価キットを用いると、特段の機械器具をなんら使用することなく極めて簡便に生理状態の評価を実施することができ、また、計測片11が液体貯留構造を備えているので、唾液等の体液をこぼして計測に失敗したり床を汚したりする心配がない。
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【識別番号】597096105
【氏名又は名称】株式会社 矢内原研究所
【出願日】 平成9年(1997)7月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】北川 治
【公開番号】 特開平11−23572
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−180204