| 【発明の名称】 |
撥液処理表面の検査方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】寺井 洋一
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| 【要約】 |
【課題】撥液処理における撥液膜の特性を判別する方法に関し、特に高分子フィルムを液体で含浸・膨潤し、乾燥後の収縮率を観察することによって撥液性を評価する撥液処理表面の検査方法に関する。
【解決手段】撥液処理表面の撥液性を判定する方法であって、高分子フィルム1を水または溶剤からなる液体で含浸・膨潤する工程と、前記含浸・膨潤した所定の大きさの高分子フィルム1を撥液処理表面3に付着する工程と、前記含浸・膨潤した液体を蒸発させ、蒸発後の前記高分子フィルム形状の収縮率を観察して撥液性を評価する工程からなることを特徴とし、さらに液体に染料を添加することにより、高分子フィルム1を着色し、前記蒸発後の高分子フィルム形状の収縮率を、色の濃淡差によって観察して撥液性を評価することを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 撥液処理表面の撥液性を判定する方法であって、高分子フィルムを水または溶剤からなる液体で含浸・膨潤する工程と、前記含浸・膨潤した所定の大きさの高分子フィルムを撥液処理表面に付着する工程と、前記含浸・膨潤した液体を蒸発させ、蒸発後の前記高分子フィルム形状の収縮率を観察して撥液性を評価する工程からなることを特徴とする撥液処理表面の検査方法。 【請求項2】 請求項1において、前記含浸・膨潤する液体に染料を添加することにより、高分子フィルムを着色し、前記蒸発後の高分子フィルム形状の収縮率を、色の濃淡差によって観察して撥液性を評価することを特徴とする撥液処理表面の検査方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、撥液処理における撥液膜の特性を判別する方法に関し、特に高分子フィルムを液体で含浸・膨潤し、乾燥後の収縮率を観察することによって撥液性を評価する撥液処理表面の検査方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、内燃機関の部品等では、デポジットの付着が問題になる。これは、燃料中にオイル、添加物、水分等の異物が存在し、これが凝集または化学反応を起こして堆積しデポジットと称する堆積物が、燃料等の流れの障害となるものである。このため、エンジン部品へのデポジット付着防止のため、部品表面にフルオロアルキルシラン等の撥液膜を形成する技術が開発されている。この時、撥液膜が適正に形成されているか否かを判断・評価することが品質管理上重要となる。かかる撥液処理膜の検出方法として、従来は着色した霧状の液体を吹きつけた時、液滴のサイズを測定する方法や、実開平7−26751公報には、精度よく水滴を形成し、低速で試料を傾斜出来、試料傾斜角度を正確に読み取ることによって、剥がれ易さから撥水性能評価方法が開示されている。 【0003】従来の技術である吹きつけた液体のサイズを測定する方法では、検査したい部分以外にも液体が付着するため、マスキングなどの保護処置を施す必要があった。従って、その分の作業コストが掛かった。また、専用のインクジェット等を使用する方法が考案されているが設備コストが大きい問題がある。また、前記実用新案のように液滴の剥がれ易さを測定する方法では、試料を回転させるための専用装置が必要であり、かなりの設備コストおよび作業コストを要した。従って、作業性の迅速・低コストが求められる製品の品質検査に、従来の技術を用いるのは困難であった。 【0004】その他の方法としてのオージェ分光分析法は、入射電子線に対して試料表面から出てくるオージェ電子を捉える手法である。したがって、撥液膜に含まれる物質の存在を検出することができる。しかし、観察するためには試料ステージに載る数cm角に試料を予備加工しなければならない。また、観察にも高度な技術と経験を必要とし、多くの工数がかかり、コストも高くなる。また、本手法は撥液膜の成分を測定する方法で、表面の撥液性を直接測定するものではない。そこで、もっと簡単に撥液処理部品の撥液膜特性を判定可能とし、製品製造時の品質管理を容易にする工夫が求められている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来の液体の吹きつける方法等の検査作業は煩瑣であったが、これの簡便な方法を検討し、さらに低コストで撥液性を検査可能とする撥液処理表面の検査方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、吸水性高分子フィルムを液体で含浸・膨潤し、乾燥後の収縮率を指標とする方法を検討し、これと対水接触角との関係から撥液処理の撥液性を評価可能とする撥液処理表面の検査方法を提供することにある。 【0006】さらに、本発明の別の目的は、前記吸水性高分子フィルムを液体で含浸・膨潤する際、この液体に染料を添加して発色した高分子フィルムとして、乾燥後の色の濃淡によって撥液処理の撥液性を評価可能とする撥液処理表面の検査方法を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記の目的は、撥液処理表面の撥液性を判定する方法であって、高分子フィルムを水または溶剤からなる液体で含浸・膨潤する工程と、前記含浸・膨潤した所定の大きさの高分子フィルムを撥液処理表面に付着する工程と、前記含浸・膨潤した液体を蒸発させ、蒸発後の前記高分子フィルム形状の収縮率を観察して撥液性を評価する工程からなることを特徴とする撥液処理表面の検査方法によって達成される。 【0008】また、上記の目的は、前記含浸・膨潤する液体に染料を添加することにより、高分子フィルムを着色し、前記蒸発後の高分子フィルム形状の収縮率を、色の濃淡差によって観察して撥液性を評価することを特徴とする撥液処理表面の検査方法によっても達成される。 【0009】 【発明の実施の形態】第1発明においては、水、アルコール類または有機溶剤などの液体を含浸させた高分子フィルムを、被検体の被検査部分に貼り付ける。液体が蒸発することにより、膨張していた高分子フィルムは収縮しようとする。この時の被検体の撥液性が高い場合、高分子フィルムと試料の間の摩擦抵抗が小さいため、高分子フィルムの収縮量が大きい。しかし、撥液性が小さい場合は、収縮が妨げられるので収縮量が小さい。従って、乾燥前後の高分子フィルムの面積または長さ変化から収縮率を求めれば、撥液性の大小を調べることができる。 【0010】また、高分子フィルムそのものは、均等に収縮しようとするため、部分的に撥液性が小さい所があるとその周囲にシワが発生し、逆に撥液性が大きい部分があるとその周囲にクラックが発生するため、部分的な評価も可能である。 【0011】なお、評価後の高分子フィルムは軽くこすることにより、または高圧エアーを吹きつける等により除去が可能である。なお、高分子フィルムとしては、メタクリ樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリアミド、酢酸セルローズ、ポリスルホン、フェノール、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。また、液体としてのアルコール類は、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ブタノール、オクチルアルコール等が使用され、有機溶剤としては、アセトン、エーテル、キシレン、酢酸イソブチル、シクロヘキサノール、スチレン、トルエン等が適当である。 【0012】第2発明では、着色した高分子フィルムを用いることにより、収縮率の差をフィルムの濃淡の違いで判断する方法である。すなわち、収縮率が大きいものはフィルムの色が濃く、収縮率が小さいものは色が淡い。濃淡の違いの判断は目視で行うかまたは光学式測定器等を用いることができる。この方法は、被検体形状が平坦以外のもの、すなわち円柱形状や波状のもので、フィルムの収縮率測定が困難な被検体の検査に有効である。なお、染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料から使用する高分子フィルムに適合するものを選択すればよい。以下に本発明について実施例に基づいてさらに説明する。 【0013】 【実施例】 実施例1本実施例では、図2(a)に示す高吸水性ポリマーフィルム1(厚み0.1mm、直径30mmφ)に水を飽和状態まで吸収させ、直径を50mmφとした。図2(b)のように、これを被検体である撥液処理を施した表面が平坦なSUS板(60mmφ)および、同形状で撥液処理を施さないSUS板にそれぞれ貼り付けた。また、比較用として、撥液処理を施した後、高温で熱処理して撥液性を低下させた被検体の2種類についても同様に行った。フィルムは膨張状態でもある程度の強度をもっているため、先端が平らなピンセット等を使って張りつけることができる。 【0014】これを温度が80℃の恒温槽にて大気雰囲気中で1時間保持し、高吸水性ポリマーフィルム1中の吸収水分をほぼ完全に蒸発させた。そして恒温槽から取り出した部品を室温にて冷却したところ、図2(c)および(d)のように、高吸水性ポリマーフィルム1の外周形状は円形を保って収縮していた。図2(c)では、撥液処理品であって、対水接触角θ=120度で、図2(d)では、撥液処理後に熱処理した熱処理品であって、対水接触角θ=90度の結果を示す。撥液性の大である図2(c)のものでは、図2(d)の撥液性を劣化させたものに比較して、高吸水性ポリマーフィルムの収縮度合いは大きいことがわかる。なお、図5に示されるような、対水接触角θ=40度のものは高吸水性ポリマーフィルム1の表面全体にクラック6が発生していた。 【0015】そこで直径を等角4方向について測定しその平均値から円の面積を計算した。結果を表1に示す。 【0016】 【表1】
【0017】なお撥液性を表わす値としてそれぞれの被検体について対水接触角(接触角が大きいほど撥液が大)を測定した値を表1中に示した。この結果を図にしたものが、図1である。この図より、撥液性が大きいほど高吸水性ポリマーフィルムの収縮率が大きく、両者に明らかな相関性が見られた。撥液性の判定には、上記のように高吸水性ポリマーフィルムの径を正確に実測する方法の他に、サイズの限度見本を定めておけば、それよりも大きいか小さいか、あるいはクラックが有るか無いかを目視で判断することが可能であるため、撥液性の判断が容易に行える。 【0018】次に、図4のように被検体の中心部に、周りの部分よりも撥液性が小さい約10mmφの円形部分4がある被検体について同様な検査を行ったところ、撥液性が小さい部分の周囲の高吸水性ポリマーフィルムにシワ5が形成されているのが見られた。従って、部分的に欠陥がある被検体についても、目視的に検査判別が可能である。 【0019】実施例2本実施例では、ポリビニルアルコールのフィルム(厚さ0.1mm、直径30mmφ)をエチルアルコール中に浸して飽和状態まで、十分膨潤させ、直径を約38mmφとしたものを実施例1と同様の被検体に貼り付け、室温にて3時間以上保持してエチルアルコールをほぼ完全に揮発させたものである。その後フィルムの直径を実施例1と同様に測定した。その結果を表2に示す。 【0020】 【表2】
【0021】これより撥液性が大きいほどポリビニルアルコールのフィルムの収縮率は大きくなり、最大33.4%であり、両者には実施例1と同様に明らかな相関性が認められた。 【0022】実施例3本実施例では、赤色の水溶性染料を溶かした水を高吸水性ポリマーフィルム1(厚み0.1mm、たて×よこ=10×10mm)に飽和状態まで水を吸収させたものである。これを図3に示す円柱形状(R10)の被検体3の側面に貼り付けた。なお被検体は撥液処理を施したもの、および撥液処理を施さないもの、そして撥液処理を施した後、高温で熱処理して撥液性を低下させたものを用いた。 【0023】これを温度が80℃の恒温槽にて大気雰囲気中で1時間保持し、高吸水性ポリマーフィルム中の吸収水分をほぼ完全に蒸発させた。そして恒温槽から取り出した部品を室温にて冷却した後、高吸水性ポリマーフィルム1の赤色の濃淡を目視で判定した。その結果を表3に示す。 【0024】 【表3】
【0025】表3より、撥液性が大きい高吸水性ポリマーフィルムの色が濃くなることが確認された。実際の製品検査工程では、色の限度見本を定めておけば、それとの比較から撥液性の大小を容易に判断できる。なおフィルムの濃淡の判定は、目視以外に光学式の濃淡測定機器を用いる方法でもよい。 【0026】 【発明の効果】本発明によれば、従来のオージェ分光分析法のように、分析用に試料を加工する必要が無く、非破壊検査手法であり、高吸水性ポリマーフィルムの収縮率によって撥液処理表面の撥液性を評価することが可能である。また、本発明は従来技術のような液体の飛散がないため、ドラフター等の設備が不要である。また本発明では周りに液体が付着することがないため、クリーンな環境を保てる。さらに、特殊な装置が必要ないため、作業が短時間、低コストで行える。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)6月27日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−23445 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)1月29日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−171984 |
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