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【発明の名称】 履帯の疲労寿命の測定方法及びその測定装置
【発明者】 【氏名】佐野 公彦

【氏名】丹羽 清和

【氏名】佐原 崇彦

【氏名】竹野 裕之

【要約】 【課題】実車と同様の履帯の疲労破損の状態を再現することができる履帯の疲労寿命の測定方法及び測定装置を提供する。

【解決手段】対向するトラックリンクにトラックピンとトラックブッシュとを組み込み、該トラックブッシュを固定し、トラックブッシュに対向するトラックピン間の中心線を軸心とする軸心回りの回転モーメントを交互に逆方向に連続的に付与して、前記トラックリンクに発生する亀裂長さ等の亀裂状態を評価する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】多数のトラックリンクが無端環状に連結されている履帯のトラックリンクにかかる応力分布と疲労破損の状態について、実車と同様の状態を再現して評価する方法において、対向するトラックリンクにトラックピンとトラックブッシュとを組み込み、該トラックブッシュを固定し、該トラックブッシュに対向するトラックピン間の中心線を軸心とする軸心回りの回転モーメントを交互に逆方向に連続的に付与して、前記トラックリンクに発生する亀裂長さ等の亀裂状態を評価することを特徴とする履帯の疲労寿命の測定方法。
【請求項2】前記トラックピンを掴んだ治具のシャフトを正逆両回転させることによって、前記回転モーメントを付与する請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】前記シャフトを±14°以下回動させてなる請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】対向するトラックリンクの一端を連結するトラックブッシュを固定する手段と、該トラックリンクの他端を連結するトラックピンをトラックピン間の中心線を軸心とする軸心回りの両方向に所定の角度回転させる手段と、を具備したことを特徴とする履帯の疲労寿命の測定装置。
【請求項5】前記トラックピンを掴持する治具を連設したシャフトと、該シャフトに外嵌固定したクランクと、該クランクのレバーに連結したコンロッドとを具備してなり、該コンロッドを上下動させることによって、前記トラックピンを正逆両方向に回転させてなる請求項4に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、無限軌道を構成する履帯のトラックリンクに発生する応力分布と亀裂状態を、実車(実機)と同様の状態に再現して、履帯の疲労寿命を迅速に推定することができる測定方法及びその測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】無限軌道を構成する履帯の応力分布を測定するには、実車における履帯の応力分布を測定するのが望ましいが、実車における測定は、装置が大掛かりとなり、作業能率が上がらない問題があった。
【0003】そのため、従来から履帯の一部を使用して履帯のトラックリンクに発生する応力分布をベンチテスト(台上試験)で再現する方法が行われている。
【0004】このような方法として、特開昭61−280545号明細書に記載の方法が知られている。この方法は、トラックリンクの上にボルト等で締結された履板の両端を、油圧を用いたアムスラー万能試験機を交互に押し込むことにより、トラックリンクに捻りの応力を発生させ、実車の極大応力を再現するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法では極大応力の再現は可能であるが、継続的に累積負荷をかけることが困難であったため、疲労破損の状態を再現することができない問題があった。
【0006】この発明は、このような点に着目してなされたものであり、実車と同様の履帯の疲労破損の状態を再現することができる履帯の疲労寿命の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的に沿う本発明の測定方法は、多数のトラックリンクが無端環状に連結されている履帯のトラックリンクにかかる応力分布と疲労破損の状態について、実車と同様の状態を再現して評価する方法において、対向するトラックリンクにトラックピンとトラックブッシュとを組み込み、該トラックブッシュを固定し、該トラックブッシュに対向するトラックピン間の中心線を軸心とする軸心回りの回転モーメントを交互に連続的に付与して、前記トラックリンクに発生する応力分布と亀裂長さ等の亀裂状態を評価することを特徴とする。
【0008】また本発明の測定装置は、対向するトラックリンクの一端を連結するトラックブッシュを固定する手段と、該トラックリンクの他端を連結するトラックピンをトラックピン間の中心線を軸心とする軸心回りの両方向に所定の角度回転させる手段と、を具備したことを特徴とする。
【0009】本発明者等は、左右いずれかのトラックリンクだけで疲労試験を行う方法を種々検討したが、この方法では、捩り負荷に対する応力分布が、実車と著しく異なる問題の解決ができなかった。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。供試体であるトラックリンク1,1′の一端には、トラックブッシュ2が圧入固定され、同トラックブッシュ2は、対向面にそれぞれ半円状の溝を形成した上部固定具3と下部固定具4とで挟持固定されている。
【0011】固定は、基台5上に固定した凹状部材6に、上部固定具3と下部固定具4とを載置し、凹状部材6上端に板体7を螺子等によりねじ込み固定し、板体7で上部固定具3を押圧することにより行っている。
【0012】トラックリンク1,1′の他端には、ピン孔が形成され、同ピン孔には、トラックピン8が回動自在に嵌合されている。
【0013】トラックピン8は、断面コ字状の掴持部材9で掴持され、同掴持部材9には、シャフト10が連結されている。
【0014】シャフト10の中央部と後端には、基台5に立設した板体11,11′の貫通孔に、ベアリング12を介して回動自在に支持されている。
【0015】板体11と11′との間のシャフト10には、クランク13が嵌合固定され、クランクレバー14に貫通固定された軸15の両端は、上下動するコンロッド16の下端に軸止されている。
【0016】コンロッド16の上端には、アクチュエータ17が接続され、同アクチュエータ17によって、コンロッド16は、上下動するようになっている。アクチュエータ17としては、コンロッド16を上下動させることができるなら特に限定されないが、例えば疲労試験器を利用すると良い。
【0017】上記のように構成されているので、コンロッド16を上下動させることによって、シャフト10は、図1の矢印で示すように、両方向に交互に所定の角度回転し、トラックピン8は図2の中心線Aを軸心として、両方向に所定の角度回転し、トラックリンク1,1′は中心線の回りの両方向に所定の角度回転する。
【0018】このようにして、多数回コンロッド15を上下動させ、供試体(トラックリンク)の応力分布と疲労破損の状況を観察して、トラックリンクの疲労寿命を評価する。
【0019】応力分布の測定は、公知の応力検出手段を使用して行うことができる。例えば、歪ゲージをトラックリンク1,1′の表面に貼付して行えば良い。
【0020】図4に示すように、シャフト9の捩り角度は、±14°以下好ましくは±3°以下とするのが良く、捩りトルクは、±4tf・m以下(±20tf以下)とするのが良い。
【0021】本発明によって試験するトラックリンクは、特に限定されないが、例えば171ピッチT/L〜216ピッチT/Lのものが挙げられる。
【0022】本発明の被試験体としては、一般には、左右一対のトラックリンクにトラックピンとトラックブッシュとを組み込んだもの(以下、L/Aと略す)が使用される。しかしながら、更に他の部品を組み込んだ状態で測定しても差し支えない。
【0023】次に、上記図1〜図3に示す本発明の疲労寿命測定装置の機能テストを実施した結果を示す。供試体として、216ピッチのL/Aを使用した。
【0024】(1)応力分布の測定供試体に、1.6tf・m(荷重8tf)の捩りトルクを繰り返し与え、トラックリンクに発生した応力分布を測定した。
【0025】結果は、図5に示す如く、トラックリンク外側面各部に、比較的大きな応力が発生したのに対し、図6に示す如く、内側面には、さほどの応力は生じなかった。これは、実車の状態と一致するものである。尚、図5、図6中の数字は、応力の大きさ(単位はkgf/mm2)を表し、正の記号は引っ張りを負の記号は圧縮を表し、矢印は応力の大きさと向きとを視覚的に表したものである。
【0026】(2)荷重と応力との関係の測定−8〜+8tfの繰り返し荷重を付与し、図7のトラックリンクの外側面各部位1〜5に発生した応力を測定した。付与した荷重と発生応力との関係を図7のグラフに示す。図7に示すように、測定した各部位1〜5において、応力は荷重に対して、ほぼ直線関係にあることを確認した。
【0027】(3)疲労試験次表1に示す3体の供試体について、それぞれ次表1に示す捩りトルク、捩り角及び繰り返し数(N)で、疲労試験を実施した。トラックリンク外側面に発生した亀裂の長さを次表1に、亀裂の発生状況を図8に示す。
【0028】

【表1】
【0029】図8に示すように、亀裂発生位置は、ブッシュ側の窓穴部であり、これは実機における破損状況とほぼ同じである。
【0030】本発明に於いては、対向するトラックリンクを連結するトラックピンに、トラックピン間の中心線を軸心とする軸心回りの両方向に所定の角度回転させるので、トラックリンクには、実車と同様の捩じれ状態が再現されるから、供試体の応力分布と疲労破損の状況が、実機の様相をほぼ再現できるものと思われる。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、継続的に累積負荷をかけることができるので、トラックリンクの応力分布だけでなく疲労破損の状況を、ベンチテストによって、実車と同様の状態に再現できるという従来のこの種測定装置及び測定方法では解決できなかった課題を解決することができる。その結果本発明の測定装置又は測定方法を使用することによって、履帯の疲労寿命を迅速且つ正確に測定することができる。
【0032】
【出願人】 【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)12月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 仁義
【公開番号】 特開平11−173949
【公開日】 平成11年(1999)7月2日
【出願番号】 特願平9−344752