| 【発明の名称】 |
車両状態量推定装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】神永 眞杉
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| 【要約】 |
【課題】車両モデルに含まれる状況に応じて変動するモデルパラメータを、オブザーバにおける推定精度に悪影響を与えずに補正したい。
【解決手段】運転者2によって操作されて車両状態量が適宜変化する車両1に、それら車両状態量のうち測定可能な車両状態量に基づいて、測定が不可能な車両状態量等を推定する車両状態量推定装置3を付加する。そして、その車両状態量推定装置3内には、推定を行うオブザーバ4と、オブザーバ4内のモデルパラメータを適応則に従って補正するパラメータ補正部5と、を設ける。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の車両状態量を用いて数学的に構成された車両モデルに含まれる前記複数の車両状態量のうち、測定可能な車両状態量を検出する車両状態量検出手段と、前記車両モデルに基づいた推定式と前記車両状態量検出手段が検出した前記車両状態量とを用いて、前記複数の車両状態量のうちの所望の車両状態量の推定値を求めるオブザーバと、前記車両状態量の検出値と推定値との誤差に基づき、その誤差が0になるように、適応則に従って前記車両モデルに含まれるモデルパラメータを補正するパラメータ補正手段と、を備えたことを特徴とする車両状態量推定装置。 【請求項2】 前記パラメータ補正手段は、前記適応則に従った演算式に前記誤差を入力して得られた値を積分して、前記モデルパラメータの補正値を求めるようになっている請求項1記載の車両状態量推定装置。 【請求項3】 前記パラメータ補正手段は、前記適応則に従った演算式に前記誤差を入力して得られた値を所定の漸化式に入力して、前記モデルパラメータの補正値を求めるようになっている請求項1記載の車両状態量推定装置。 【請求項4】 前記パラメータ補正手段は、前記誤差に代えて若しくは前記誤差と共に、前記車両状態量を代用する代用状態量の検出値と推定値との誤差に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両状態量推定装置。 【請求項5】 前記オブザーバは、前記代用状態量を使用しないようになっている請求項4記載の車両状態量推定装置。 【請求項6】 前記代用状態量は、前記車両状態量の微分値である請求項4又は請求項5記載の車両状態量推定装置。 【請求項7】 前記パラメータ補正手段は、前記車両状態量又は前記代用状態量の前記誤差の符号に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の車両状態量推定装置。 【請求項8】 前記パラメータ補正手段は、前記車両状態量又は前記代用状態量の前記誤差を入力とした関数の出力を用いて前記モデルパラメータを補正するようになっており、その関数の出力は、前記入力としての前記誤差の絶対値が所定のしきい値を越えると飽和するようになっている請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の車両状態量推定装置。 【請求項9】 前記複数の車両状態量は、ヨーレート,車体横滑り角,車速,横加速度及び操舵角を含んでおり、前記車両状態量検出手段は、少なくともヨーレート,車速,横加速度及び操舵角を検出するようになっており、前記オブザーバは、ヨーレートと、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方と、を推定するようになっている請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の記載の車両状態量推定装置。 【請求項10】 前記複数の車両状態量は、ヨーレート,車体横滑り角,車速,横加速度及び操舵角を含んでおり、前記車両状態量検出手段は、少なくともヨーレート,車速,横加速度及び操舵角を検出するようになっており、前記オブザーバは、ヨーレートと、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方と、を推定するようになっており、前記パラメータ補正手段は、前記ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方を代用する代用状態量の検出値と推定値との誤差と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両状態量推定装置。 【請求項11】 前記オブザーバは、前記代用状態量を使用しないようになっている請求項10記載の車両状態量推定装置。 【請求項12】 前記代用状態量は、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方の微分値であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差、及び、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項10又は11記載の車両状態量推定装置。 【請求項13】 前記代用状態量は、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方の微分値であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差の符号と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項10又は11記載の車両状態量推定装置。 【請求項14】 前記代用状態量は、車体横滑り角及び車体横速度うちの少なくとも一方の微分値であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差を入力とした関数の出力と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっており、前記関数の出力は、前記入力の絶対値が所定のしきい値を越えると飽和するようになっている請求項10又は11記載の車両状態量推定装置。 【請求項15】 前記代用状態量は、横加速度であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項10又は11記載の車両状態量推定装置。 【請求項16】 前記代用状態量は、横加速度であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差の符号と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっている請求項10又は11記載の車両状態量推定装置。 【請求項17】 前記代用状態量は、横加速度であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差を入力とした関数の出力と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっており、前記関数の出力は、前記入力の絶対値が所定のしきい値を越えると飽和するようになっている請求項10又は11記載の車両状態量推定装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、車両状態量を推定する車両状態量推定装置に関し、特に、モデルパラメータと車両状態量とを用いて数学的に構成された車両モデルを利用して、測定が困難な車両状態量を推定するようになっている装置において、車両モデルに含まれるモデルパラメータのうち、状況に応じて変化してしまうコーナリングパワー等のモデルパラメータを適宜補正することにより、高精度の推定が行えるようにしたものである。 【0002】 【従来の技術】この種の従来の技術としては、例えば特開平8−268306号公報に開示されたもの(第1従来例)が知られている。かかる公報に開示された従来の方法にあっては、オブザーバの状態方程式に基づいて計算した推定横滑り角及び推定ヨーレートと検出前後速度とにより推定横滑り角を計算する一方で、検出横加速度と前記計算した推定横加速度との比を補正係数として計算し、その補正係数をオブザーバの状態方程式におけるコーナリングパワーに関する因子に乗算するようになっていて、これにより、オブザーバの状態方程式に基づいて横滑り角を推定すると、コーナリングパワーが的確に補正されているので、横滑り角の推定精度が良好になる、というものであった。 【0003】また、オブザーバに適応アルゴリズムを適用したものとして、例えば、「Rajamani,Hedrick " Adaptive observers for active Automotive suspensions ; theory and experiment " IEEE transactions on Control system technology vol.3,no.1 」に開示されたもの(第2従来例)が知られている。その他、適応アルゴリズムに従ったものにおいて出力信号の符号を使用するものとし、例えば、「Tom Connolly " Longitudinal Transition Maneuvers in an Automated HighwaySystem " 1996 ASME,ICE 」や「Chia-shang Liu and Huei Peng " Road Friction coefficent estimation for vehicle Path prediction " 14th IAUSD Synposium on Dynamics of Vehicles on roads and tracks pp.100-102」に開示されたもの(第3従来例)が知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ここで、一般的にタイヤの横力やコーナリングフォースは、タイヤスリップ角が大きな領域では非線形な特性を有するため、タイヤモデルに基づいた推定式を用いて車両の車体横滑り角を推定する場合に、タイヤ特性(タイヤ横滑り角とコーナリングフォースとの関係)が非線形な領域では車体横滑り角の推定精度が低下することが判っている。 【0005】そのため、例えば上記第1従来例のように、検出横加速度と推定横加速度との比に応じた補正係数を用いる等して推定式に含まれるコーナリングパワーを補正することにより、車体横滑り角の推定精度が低下しないようにすることが考えられる。 【0006】しかし、上記第1従来例にあっては、タイヤのコーナリングパワーを、横加速度の検出値と推定値との比に応じて単純に補正するだけであるから、かかる補正演算と、オブザーバによる車両状態量の推定演算とが、同時に相互に補正を行う構造になってしまい、いずれかの誤差が他方の誤差に対して影響を与える構造となっている。このため、数学的には極めて不安定であり、従ってオブザーバにおいて高い推定精度が得られることは保証できないのである。 【0007】本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、車両モデルが状況に応じて変動するモデルパラメータを含んでいても、そのモデルパラメータを、オブザーバにおける推定精度に悪影響を与えずに適宜補正することにより、安定した車両状態量の推定が行える車両状態量推定装置を提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る発明である車両状態量推定装置は、複数の車両状態量を用いて数学的に構成された車両モデルに含まれる前記複数の車両状態量のうち、測定可能な車両状態量を検出する車両状態量検出手段と、前記車両モデルに基づいた推定式と前記車両状態量検出手段が検出した前記車両状態量とを用いて、前記複数の車両状態量のうちの所望の車両状態量の推定値を求めるオブザーバと、前記車両状態量の検出値と推定値との誤差に基づき、その誤差が0になるように、適応則に従って前記車両モデルに含まれるモデルパラメータを補正するパラメータ補正手段と、を備えた。 【0009】また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である車両状態量推定装置において、前記パラメータ補正手段を、前記適応則に従った演算式に前記誤差を入力して得られた値を積分して、前記モデルパラメータの補正値を求めるようにした。 【0010】これに対し、請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明である車両状態量推定装置において、前記パラメータ補正手段を、前記適応則に従った演算式に前記誤差を入力して得られた値を所定の漸化式に入力して、前記モデルパラメータの補正値を求めるようにした。 【0011】そして、請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3に係る発明である車両状態量推定装置において、前記パラメータ補正手段を、前記誤差に代えて若しくは前記誤差と共に、前記車両状態量を代用する代用状態量の検出値と推定値との誤差に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにした。 【0012】また、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明である車両状態量推定装置において、前記オブザーバは、前記代用状態量を使用しないようにした。そして、請求項6に係る発明は、上記請求項4又は5に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量を、前記車両状態量の微分値とした。 【0013】さらに、請求項7に係る発明は、上記請求項4〜6に係る発明である車両状態量推定装置において、前記パラメータ補正手段を、前記車両状態量又は前記代用状態量の前記誤差の符号に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにしたものである。 【0014】また、請求項8に係る発明は、上記請求項4〜7に係る発明である車両状態量推定装置において、前記パラメータ補正手段を、前記車両状態量又は前記代用状態量の前記誤差を入力とした関数の出力を用いて前記モデルパラメータを補正するようにし、その関数の出力を、前記入力としての前記誤差の絶対値が所定のしきい値を越えると飽和するようにした。 【0015】そして、請求項9に係る発明は、上記請求項1〜8に係る発明である車両状態量推定装置において、前記複数の車両状態量は、ヨーレート,車体横滑り角,車速,横加速度及び操舵角を含んでおり、前記車両状態量検出手段は、少なくともヨーレート,車速,横加速度及び操舵角を検出するようになっており、前記オブザーバは、ヨーレートと、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方と、を推定するようにした。 【0016】一方、請求項10に係る発明は、上記請求項1〜3に係る発明である車両状態量推定装置において、前記複数の車両状態量は、ヨーレート,車体横滑り角,車速,横加速度及び操舵角を含んでおり、前記車両状態量検出手段は、少なくともヨーレート,車速,横加速度及び操舵角を検出するようになっており、前記オブザーバは、ヨーレートと、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方と、を推定するようになっており、前記パラメータ補正手段は、前記ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方を代用する代用状態量の検出値と推定値との誤差と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにした。 【0017】請求項11に係る発明は、上記請求項10に係る発明である車両状態量推定装置において、前記オブザーバは、前記代用状態量を使用しないようにした。また、請求項12に係る発明は、上記請求項10又は11に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量は、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方の微分値であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差、及び、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにした。 【0018】そして、請求項13に係る発明は、上記請求項10又は11に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量は、車体横滑り角及び車体横速度のうちの少なくとも一方の微分値であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差の符号と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにした。 【0019】さらに、請求項14に係る発明は、上記請求項10又は11に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量は、車体横滑り角及び車体横速度うちの少なくとも一方の微分値であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差を入力とした関数の出力と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっており、前記関数の出力は、前記入力の絶対値が所定のしきい値を越えると飽和するようにした。 【0020】一方、請求項15に係る発明は、上記請求項10又は11に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量は、横加速度であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにした。 【0021】そして、請求項16に係る発明は、上記請求項10又は11に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量は、横加速度であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差の符号と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようにしたものである。 【0022】さらに、請求項17に係る発明は、上記請求項10又は11に係る発明である車両状態量推定装置において、前記代用状態量は、横加速度であり、前記パラメータ補正手段は、ヨーレートの検出値と推定値との誤差と、前記代用状態量の検出値と推定値との誤差を入力とした関数の出力と、に基づいて前記モデルパラメータを補正するようになっており、前記関数の出力は、前記入力の絶対値が所定のしきい値を越えると飽和するようにした。 【0023】ここで、図1に示すようなシステムを考える。即ち、図1に示すシステムは、運転者2によって操作されて車両状態量δf ,δr ,r,V,αlat ,…が適宜変化する車両1に、それら車両状態量のうち測定可能な車両状態量に基づいて、測定が不可能な車両状態量等を推定する車両状態量推定装置3を付加したものである。また、車両状態量としては、ここでは運転者2の操作によって車両1に直接生じる前輪舵角δf ,後輪舵角δr や、そのような操作が車両1に及ぼされる結果として生じるヨーレートr,車速V,横加速度αlat 等を想定している。 【0024】そして、車両1が、下記の(1),(2)式のような数学的なモデルで表せるものとする。 【0025】 【数1】
【0026】……(1) y=Cx+Du ……(2) ここで、xは実際の車両状態量を示し、、yはこの車両状態量推定装置3の出力を示す。 【0027】また、A,B,C,Dは、それぞれm×m,m×n,l×m,l×nの行列であって、mは上記ヨーレートr等のように運転者2の操作が車両1に及ぼされた結果として生じる車両状態量のうち車両モデルに用いられているものの個数、nは上記前輪舵角δf のように運転者2の操作によって車両1に直接生じる車両状態量のうち車両モデルに用いられているものの個数、lは車両状態量推定装置3内のオブザーバ4によって推定される車両状態量の個数である。 【0028】そして、上記(1),(2)式で表される車両モデルに対し、オブザーバ4は、以下のように設計される。なお、以下の説明において、右肩に“^”が付されている記号は、それがモデルパラメータの場合には車両状態量推定装置3内のパラメータ補正部5の適応演算によって求められていることを、それが車両状態量であればオブザーバ4の推定演算によって求められていることを表している。同様に、右肩に“〜”が付されている記号は、オブザーバ4によって求められた推定値と、実際に検出された検出値との誤差であること、或いは、パラメータ補正部5によって求められた補正値と、真の値との誤差であることを表している。また、Lは推定された車両状態量の補正量を決定するためのゲインである。 【0029】 【数2】
【0030】……(3) 【0031】 【外1】
【0032】 【数3】
【0033】……(4) そして、オブザーバ4で使用されるモデルパラメータと、実際の車両モデルとの間には誤差があり、それらは下記の(5),(6)式のように表される。 【0034】 【数4】
【0035】……(5) 【0036】 【数5】
【0037】……(6) また、車両状態量xの誤差eは、下記の(7)式で表され、その誤差eの微分値は下記の(8)式で表される。 【0038】 e=x−x^ ……(7) 【0039】 【数6】
【0040】……(8) そして、この(8)式は下記の(9)式のように変形が可能である。 【0041】 【数7】
【0042】……(9) この(9)式の右辺第2項は、車両モデルにおいて変動すると考えられる適応パラメータθと、その適応パラメータθ以外の車両状態量等のパラメータによって構成される既知量Wとを用いると、下記の(10)式のように書き換えることができる。 【0043】 【数8】
【0044】……(10) 適応パラメータθの誤差信号は、下記の(11)式のように表される。 【0045】 【数9】
【0046】……(11) そして、下記の(12)式は、P,Qが正定の重み付けの行列である場合、リヤプノフ関数として知られている式である。さらに、下記の(12)式の一次導関数である下記の(13)式が負定であれば、リヤプノフ関数Vlyapは0に収束することが、リヤプノフの法則により知られている。 【0047】 【外2】
【0048】 【数10】
【0049】……(12) 【0050】 【数11】
【0051】……(13) ここで、上記(13)式は、上記(10)式を用いると下記の(14)式のように書き換えることが可能である。 【0052】 【数12】
【0053】……(14) なお、この(14)式の第2項は、ゲインLを適宜選定することで負定の関数となり、上記(12)式は0に収束する。そこで、下記の(15)式を満足するようにモデルパラメータを選択すればよいことになる。 【0054】 【数13】
【0055】……(15) さらに、上記(11)式を微分することによって得られる下記の(16)式の関数を使用することで、下記の(17)式で表される適応則が得られる。 【0056】 【数14】
【0057】……(16) 【0058】 【数15】
【0059】……(17) この(17)式に、下記の(18)式を満足するP,C,Mが存在するような出力信号yを使用すれば、最終的な適応則である(19)式が定まる。 【0060】 【数16】
【0061】……(18) 【0062】 【数17】
【0063】……(19) 【0064】 【外3】
【0065】 【数18】
【0066】……(20) 【0067】 【外4】
【0068】また、上記(20)式は数学的には正しいが、コンピュータ等の離散値のモデルを扱う装置には不適当である。そこで、離散値系のシステムにあっては、請求項3に係る発明のように、下記の(21)式に示すような漸化式で適応パラメータθを求めることになる。なお、Δtは、離散値系におけるサンプリングタイムである。 【0069】 θ^(k) =θ^(k-1) +ΔtQ-1WT M(y(k-1) −Cx^(k-1) −Du(k-1) ) ……(21) 【0070】 【外5】
【0071】即ち、下記の(22)式のような車両状態量を有するシステムにおいて、その車両状態量のうちの一の車両状態量x1 が測定不能であり、他の車両状態量x2 が測定可能であるものとし、さらに、車両状態量x1 の微分値は測定可能であるシステムを考える。 【0072】 【数19】
【0073】……(22) かかるシステムは、下記の(23)式のように表される。 【0074】 【数20】
【0075】……(23) また、このような車両状態量xにおいて、その車両状態量xの誤差eは、下記の(24)式のように表される。 【0076】 【数21】
【0077】……(24) 【0078】 【外6】
【0079】 【数22】
【0080】……(25) そこで、このような場合には、測定が不能な車両状態量x1 ではなく、請求項4に係る発明のように、それを代用する代用状態量を考える。 【0081】 【外7】
【0082】 【数23】
【0083】……(26) 微分値(dx1 ^/dt)は、下記の(27)式により求められる。 【0084】 【数24】
【0085】……(27) これにより、本来の出力信号yから適応則を求めることが不可能な場合であっても、実質的に有効な適応則を得ることができ、車両モデルのモデルパラメータが変動した場合であってもそれを補正して高精度な推定が行えるのである。 【0086】かかる場合の具体例としては、オブザーバが測定する車両状態量であって、測定が不可能な車両状態量として車体横滑り角βが、その微分値として車体横滑り角速度(dβ/dt)が考えられる。 【0087】次に、上記(22)〜(24)式で表されるシステムを想定するとともに、下記の(28)式のようなリヤプノフ関数Vlyapは上述の第3従来例にも示されるものであり、その一次導関数は下記の(29)式で与えられ、さらに下記の(30)式を用いると下記の(31)式のように書き換えることができる。 【0088】 【数25】
【0089】……(28) 【0090】 【数26】
【0091】……(29) 【0092】 【数27】
【0093】……(30) 【0094】 【数28】
【0095】……(31) さらに、上記(9)式並びに下記の(33)式を用いると、下記の(34)式が得られる。 【0096】 【数29】
【0097】……(32) 【0098】 【数30】
【0099】……(33) これにより、適応則としては下記の(34)式が得られ、請求項7に係る発明のように、誤差eの符号e* を使用することで、適応パラメータθの補正が可能であることが判る。 【0100】 【数31】
【0101】……(34) さらに、上記(30)式の代わりに、請求項8に係る発明のように、図2に示すような飽和関数を用いることもできる。この場合の誤差e* は、下記の(35)式のようになる。 【0102】 【数32】
【0103】……(35) かかる飽和関数は、図2に示すように、誤差e1 ,e2 を入力とした関数であって、入力としての誤差e1 ,e2 の絶対値が所定のしきい値Φ未満であれば出力は0〜1の間でリニアに変化し、入力としての誤差e1 ,e2 の絶対値がしきい値Φを越えると例えば1又は−1に飽和するような関数である。 【0104】このような構成であっても、請求項1に係る発明と同様の作用が得られる。さらに、上記(25)〜(27)式に示したような状態推定方法にあっては、基本的には図3に示すような信号の流れで車両状態量の推定を行っている。そして、ここでは代用状態量を使用して、車両状態量の推定と、適応パラメータθとの推定を行っている。 【0105】しかし、代用状態量は、本来の信号そのものではないため、その本来の信号に対して誤差を含んでいる場合が多い。しかも、車両状態量の推定は、モデルパラメータの適応に比べて誤差に対し敏感である。そこで、請求項5に係る発明に従って、図4に示すように、代用状態量の使用を、モデルパラメータの適応のみに限定することが望ましいのである。かかる目的は、例えば、上記(27)式に代えて下記の(37)式を用いることにより達成される。 【0106】 【数33】
【0107】……(37) 【0108】 【発明の効果】本発明によれば、車両状態量の検出値と推定値との誤差に基づき、その誤差が0になるように、適応則に従って車両モデルに含まれるモデルパラメータを補正するパラメータ補正手段を設けたため、モデルパラメータが状況に応じて変動したとしても、それを良好に補正してオブザーバにおける推定精度を向上でき、高精度に車両状態量を推定することでき、しかも適応則に従って補正しているからシステムの安定性も確保できるという効果がある。 【0109】特に、請求項4〜8に係る発明にあっては、モデルパラメータを補正する適応則に本来必要な車両状態量の測定が不能であったとしても、モデルパラメータを適宜補正することができるという効果がある。 【0110】さらに、請求項7に係る発明のように誤差の符号に基づいてモデルパラメータを補正する、或いは、請求項8に係る発明のように誤差を所定の関数に入力した場合の出力に基づいてモデルパラメータを補正するようにすれば、車両状態量検出手段の検出精度がそれほど高くない場合でも、補正したモデルパラメータの安定性が確保されるという効果がある。 【0111】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図5は本発明の一実施の形態の全体構成を示すブロック図であり、本実施の形態における車両は、車体横滑り角推定装置10と、目標制動力設定装置20と、制動力制御装置30と、を備えて構成されている。なお、目標制動力設定装置20は、車体横滑り角推定装置10から供給される各値(ヨーレートr,目標ヨーレートrd ,車速V及び車体横滑り角β^)に基づいて適切な制動力を設定するための装置であって、その具体的構成は、実行される制御(例えば、VDC,ABS,TCS等のように車両に適用可能な制御)に応じて適宜決定されるものであるが、その内容は本発明の本質ではないため、その具体的な説明は省略する。また、制動力制御装置30も、実行される制御に応じて適宜公知の構成が採用可能であるから、その具体的な説明も省略する。 【0112】そして、車体横滑り角推定装置10は、実際にはマイクロコンピュータや必要なインタフェース回路等によって構成され、車両に発生しているヨーレートを検出するヨーレートセンサ11から供給されるヨーレートrと、車両に発生している横加速度を検出する横加速度センサ13から供給される横加速度αlat と、車速を検出する車速センサ14から供給される車速Vと、前輪及び後輪のそれぞれの操舵角を検出する操舵角センサ15から供給される前輪舵角δf ,δr とに基づいて、所定の演算処理を実行して、車体横滑り角β^を求めるようになっている。 【0113】ここで、車体横滑り角推定装置10は、図6に示すような車両モデルに基づいた後述する推定式と、各センサから供給される各検出信号とに基づいて、車体横滑り角β^を推定するオブザーバ機能と、このオブザーバ機能の基礎となっている車両モデルのモデルパラメータのうち、状況に応じて変化するモデルパラメータであるコーナリングパワーCPf ,CPr を補正するパラメータ補正機能と、を実現するように構成されている。 【0114】そして、図6に示す車両モデルは、数学的には下記の(38)〜(46)式のように表すことができる。但し、各式中、Mは車両の質量、Iはヨー慣性、βは車体の横滑り角、rはヨーレート、αは横加速度、aは車両重心から前輪側車軸までの水平距離、bは車両重心から後輪側車軸までの水平距離、Vは車速、δf は前輪舵角、δr は後輪舵角、Yf は前輪のタイヤ横力、Yr は後輪のタイヤ横力、CPf は前輪のコーナリングパワー、CPr は後輪のコーナリングパワーであって、図6中、WF は前輪、WR は後輪である。また、前輪舵角δf は、運転者によるステアリングホイールの操舵角と、前輪操舵系のステアリングギア比とから求めることもできる。 【0115】 【数34】
【0116】……(38) 【0117】 【数35】
【0118】……(39) 【0119】 【数36】
【0120】……(40) 【0121】 【数37】
【0122】……(41) 【0123】 【数38】
【0124】……(42) 【0125】 【数39】
【0126】……(43) 【0127】 【数40】
【0128】……(44) 【0129】 【数41】
【0130】……(45) 【0131】 【数42】
【0132】……(46) そして、このような車両モデルにおいて、各車両状態量のうち状況に応じて変動するために補正が必要な適応パラメータθと、それ以外の既知量Wとは、上記(9),(10)式から、下記のように求められる。 【0133】 【数43】
【0134】……(47) 【0135】 【数44】
【0136】……(48) 【0137】 【数45】
【0138】……(49) 【0139】 【数46】
【0140】……(50) 【0141】 【数47】
【0142】……(51)【0143】 【数48】
【0144】……(52)また、ここで車体横滑り角β及びその推定値β^の一次導関数を、下記のように定義する。 【0145】 【数49】
【0146】そして、誤差信号を、車両状態量としてのヨーレートrと、車両状態量としての車体横滑り角βの代用状態量であるその一次導関数βdot と、から生成することとし、さらにそれら誤差を入力とした図2に示したような飽和する関数を用いれば、本実施の形態における適応則は、下記の(53) 式のようになる。ここで、p1 ,p2 ,q1 及びq2 は重み付けを行う正の定数であり、これら定数を含む行列は正定の行列となる。 【0147】 【数50】
【0148】……(53)ここで、代用状態量βdot 及びその推定値β^dot ,は、下記の(54),(55)式によって求めることができる。 【0149】 【数51】
【0150】……(54) 【0151】 【数52】
【0152】……(55) そして、上記(53) ,(55)式は、車体横滑り角推定装置10内のマイクロコンピュータにおける演算処理に用いるために、下記の(56) ,(57) 式のような漸化式とすることができる。 【0153】 【数53】
【0154】……(56)【0155】 【数54】
【0156】……(57)図7は、車体横滑り角推定装置10内における処理の概要を示すフローチャートであって、以下図7に従って本実施の形態の動作を説明する。 【0157】先ず、そのステップ101において、予め記憶してあるモデルパラメータ,各センサからの入力値,前回の処理で推定した車体横滑り角β^,ヨーレートr^等を用いて、上記(39)〜(46),(49)〜(52) 式に従って各パラメータA11〜A22,B11〜B22,W11〜W22を演算する。 【0158】次いで、ステップ102に移行し、横加速度αlat ,車速V及びヨーレートrの各検出値に基づき、上記(54)式に従って、代用状態量としての微分値βdotを演算する。 【0159】次いで、ステップ103に移行し、前回の処理で推定した車体横滑り角β^,ヨーレートr^等を用いて、上記(55)式に従って、代用状態量としての微分値β^dot を演算する。 【0160】そして、ステップ104に移行し、上記(56) 式の適応則に従って、コーナリングパワーCPf ,CPr の補正値CPf ^,CPr ^を演算し、この演算された補正値CPr ^,CPr ^を今後のモデルパラメータとして用いる。 【0161】次いで、ステップ105に移行し、上記(57) 式に従って、車体横滑り角β及びヨーレートrの各推定値β^,r^を演算する。推定値β^,r^は、ステップ106において、目標ヨーレートrd や車速V等とともに目標制動力設定装置20に出力される。なお、目標ヨーレートrd は、例えば前輪舵角δf 及び車速Vに基づいて所望の車両ステア特性を実現するように設定されるようになっている。 【0162】そして、ステップ107に移行し、今回の処理で求めた各推定値等をメモリに保存し、これで今回の図7の処理を終了し、次の割り込みタイミングなったら上記ステップ101に戻って上述の処理を繰り返し実行する。 【0163】このように、本実施の形態にあっては、上記(56) 式に示した適応則に従ってコーナリングパワーCPf ,CPr を適宜補正するようにしているから、システムの安定性を損なうことなくモデルパラメータを真の値に近づけることができ、もって車体横滑り角β^等の推定精度を向上することができる。 【0164】しかも、上記(56) 式に用いる誤差信号として、誤差そのものではなく、図2に示すような関数に誤差を入力した場合の出力を用いているため、所謂スライディングモード制御を実行したことと等価である。このため、ヨーレートセンサ11等の検出精度がそれほど高くない場合であっても、安定性の高い適応演算が行える。 【0165】さらに、車体横滑り角βに代えて微分値βdot を代用状態量として適用しているから、車体横滑り角βの実測が不可能であるにも関わらず、適応則を用いてコーナリングパワーCPf ,CPr の補正が行えるという利点もある。 【0166】ここで、本実施の形態にあっては、ヨーレートセンサ11,横加速度センサ13,車速センサ14及び操舵角センサ15によって車両状態量検出手段が構成され、車体横滑り角推定装置10内におけるステップ105の処理がオブザーバに対応し、車体横滑り角推定装置10内におけるステップ104の処理がパラメータ補正手段に対応する。 【0167】なお、上記実施の形態では、図2に示すような飽和する関数を用いて適応則に用いる最終的な誤差信号を得るようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、元の誤差の符号(正負)を用いるようにしてもよく、そのような構成とした場合でも、上記実施の形態と同様に車体横滑り角β等の推定精度を向上することができる。しかも、符号に基づく適応であれば、上記関数を用いた場合と同様に、安定性の高い適応演算が行える。 【0168】また、ヨーレートセンサ11等の検出精度が十分に高い場合には、誤差そのものを適用則に用いるようにしても構わない。さらに、上記実施の形態では、車体横滑り角βの代用状態量として、その微分値βdot を用いているが、車体横滑り角βの代用状態量はこれに限定されるものではない。例えば、代用状態量として横加速度αlat を用いることができる。この場合、横加速度αlat の推定値αlat ^は、上記(54)式から、下記の(58)式により求めることができる。 【0169】 αlat ^=V(β^dot +r) ……(58)そして、かかる場合の適応則は、誤差信号として本来の誤差を図2に示したような関数の出力を用いるのであれば、下記の(59) 式のようになる。なお、かかる関数の出力に代えて、本来の誤差の符号を用いてもよいし、或いは、誤差そのものを用いてもよい。 【0170】 【数55】
【0171】……(59)即ち、車体横滑り角βの代用状態量としては、上述のようにその微分値βdotが好適であるし、また、その微分値βdot に対して、他の推定対象であるヨーレートrを含んだ線型の関係式でもって関係が表現される例えば横加速度αlat のようなものでもよく、要は、車体横滑り角βに近似した挙動を示す微分値βdotのような車両状態量や、車体横滑り角β若しくはそれに近似した挙動を示す他の車両状態量、若しくは車体横滑り角βとヨーレートrから線形結合等の演算を用いて得られる車両状態量に近似した車両状態量であれば、代用状態量として十分に適用可能である。 【0172】また、上記実施の形態では、車体横滑り角βを推定するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば車体横速度を推定する装置であっても本発明は適用可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月25日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】森 哲也 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−160205 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)6月18日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−323343 |
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