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【発明の名称】 荷重配分推定装置、車体加減速度演算装置及び路面状態推定装置
【発明者】 【氏名】梅野 孝治

【氏名】浅野 勝宏

【氏名】小野 英一

【氏名】山口 裕之

【氏名】菅井 賢

【要約】 【課題】各車輪の荷重配分を正確に推定する。

【解決手段】車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数成分でブレーキ圧を微小励振したときのブレーキ圧微小振幅に対する車輪速度微小振幅の比である微小ゲインを各車輪毎に演算する微小ゲイン演算部22と、この微小ゲインと輪荷重とが正の相関関係にあることに基づいて、各車輪の荷重配分を演算する荷重配分推定部26と、を含んで構成する。荷重配分推定部26では、微小ゲインに比例定数を乗算或いは所定のテーブルにより変換することにより各車輪の荷重を算出する。また、各車輪の微小ゲインにより荷重移動を算出し、前後又は横方向の荷重移動の配分比率を算出する。輪荷重と相関のある微小ゲインにより直接的に荷重配分を推定するので、指定精度が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車輪速度が微小振動しているときの各車輪の荷重配分を推定する荷重配分推定装置であって、車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数での車輪速度の微小振幅に基づく共振レベルを、各車輪毎に検出する検出手段と、車輪にかかる荷重と該車輪の共振レベルとが正の相関関係にあることに基づいて、前記検出手段により検出された各車輪の共振レベルにより、各車輪の荷重配分を推定する荷重配分推定手段と、を有することを特徴とする荷重配分推定装置。
【請求項2】 車輪の車輪速度が微小振動しているときの車体の加減速度を演算する車体加減速度演算装置であって、車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数での車輪速度の微小振幅に基づく共振レベルを、前輪と後輪について各々検出する第1の検出手段、及び右輪と左輪について各々検出する第2の検出手段の少なくともいずれかの検出手段と、前記第1の検出手段により検出された前輪の共振レベルと後輪の共振レベルとに基づいて車体の前後方向の加減速度を演算する第1の演算手段、及び前記第2の検出手段により検出された右輪の共振レベルと左輪の共振レベルとに基づいて車体の横方向の加減速度を演算する第2の演算手段の少なくともいずれかの演算手段と、を有することを特徴とする車体加減速度演算装置。
【請求項3】 車輪の車輪速度が微小振動している車体が走行する路面の状態を推定する路面状態推定装置であって、車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数での車輪速度の微小振幅に基づく共振レベルを、前輪と後輪について各々検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前輪の共振レベルと後輪の共振レベルとに基づいて車体の加減速度を演算する演算手段と、車輪の加減速度を検出する車輪加減速度検出手段と、前記演算手段により演算された車体の加減速度及び前記車輪加減速度検出手段により検出された車輪の加減速度の間の関係と、予めデータとして備えられている車体の加減速度及び車輪の加減速度の間の路面状態毎の関係と、の比較に基づいて路面状態を推定する路面推定手段と、を有することを特徴とする路面状態推定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷重配分推定装置、車体加減速度演算装置、及び路面状態推定装置に係り、より詳しくは、車輪にかかる荷重と共振レベルとが正の相関関係にあることを利用して各車輪の荷重配分を推定する荷重配分推定装置、荷重移動による共振レベルの相違に基づいて車体の加減速度を推定する車体加減速度推定装置、及び車体加減速度と車輪加減速度との間の関係により路面状態を推定する路面状態推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ハンドリング、ブレーキ制動、加速などの運転操作に伴うロール、ノーズダイブ、スクォート量を少なくし、最適なアライメント状態を保持することで車両の操縦安定性を向上させる姿勢制御技術が提案されている。
【0003】この姿勢制御技術のうちアンチロール制御では、旋回時、車両の左右横方向に働く加減速度をGセンサ(加速度センサ)で検知して制御量を決定する。旋回時は遠心力によって重心の移動が発生し、外輪側は目標車高値より車高が下がり、内輪側は上がるので、アンチロール制御では、外輪側のサスペンションのシリンダ圧を上昇させると共に内輪側のシリンダ圧を下げ、遠心力に起因して車体をロールさせようとする力を打ち消し、横方向の車両姿勢をほぼフラットにする。なお、旋回時初期の制御応答遅れを補償するために、操舵角と車速との関係からロール開始を予測してロール予見制御を行う。
【0004】また、アンチダイブ、アンチスクォート制御では、減速時或いは加速時に、車両に作用する前後方向の加減速度をGセンサで検知し、検知した値に応じて前後のサスペンションのシリンダ圧を上昇又は下降させることにより前後方向の車両姿勢をほぼフラットにする。
【0005】このように従来の姿勢制御技術では、Gセンサにより検出した横方向の加減速度又は前後方向の加減速度に基づいて、サスペンションの制御量を決定している。
【0006】また、車両旋回時では、タイヤのコーナリング特性の限界を越えてスピンが起こらないように、各車輪にかかる荷重を制御する必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術では、以下のような問題がある。
【0008】すなわち、車両姿勢の制御やアンチスピン制御などのような車両安定化制御を行う場合、各車輪の荷重配分の推定が重要であるが、この荷重配分は、車体特性は勿論のこと、乗員や荷物の荷重分布、サスペンションの状態量などにより異なってくる。このため、Gセンサなどにより検出された加速度などを用いた間接的な推定では、推定が複雑になり過ぎると共に、推定値が不正確となるおそれがあるので、簡単に良好な安定化制御ができないという問題がある。また、路面状態によっても制御を変える必要がある。
【0009】本発明は、上記事実に鑑みて成されたもので、各車輪の荷重配分を簡単かつ正確に推定できる荷重配分推定装置、車体加減速度を正確に演算できる車体加減速度演算装置、走行中の路面の状態を的確に推定できる路面状態推定装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)上記目的を達成するために請求項1の発明は、車輪速度が微小振動しているときの各車輪の荷重配分を推定する荷重配分推定装置において、車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数での車輪速度の微小振幅に基づく共振レベルを、各車輪毎に検出する検出手段と、車輪にかかる荷重と該車輪の共振レベルとが正の相関関係にあることに基づいて、前記検出手段により検出された各車輪の共振レベルにより、各車輪の荷重配分を推定する荷重配分推定手段と、を有することを特徴とする。
(請求項1の発明の原理)重量Wの車体を備えた車両が車体速度ωv で走行している時の車輪での振動現象、すなわち車体と車輪と路面とによって構成される振動系の振動現象を、車輪回転軸で等価的にモデル化した図2に示すモデルを参照して考察する。
【0011】図2のモデルにおいて、ブレーキ力は、路面と接するタイヤのトレッド115の表面を介して路面に作用するが、このブレーキ力は実際には路面からの反作用(制動力)として車体に作用するため、車体重量の回転軸換算の等価モデル117はタイヤのトレッドと路面との間の摩擦要素116(路面μ)を介して車輪113と反対側に連結したものとなる。これは、シャシーダイナモ装置のように、車輪下の大きな慣性、すなわち車輪と反対側の質量で車体の重量を模擬することができることと同様である。
【0012】図2でタイヤリムを含んだ車輪113の慣性をJw 、リムとトレッド115との間のばね要素114のばね定数をK、車輪半径をR、トレッド115の慣性をJt 、トレッド115と路面との間の摩擦要素116の摩擦係数をμ、車体の重量の回転軸換算の等価モデル117の慣性をJV とすると、ホイールシリンダ圧により生じるブレーキトルクTb ’から車輪速ωw までの伝達特性は、車輪運動の方程式より、【0013】
【数1】

【0014】となる。なお、sはラプラス変換の演算子である。タイヤが路面にグリップしている時は、トレッド115と車体等価モデル117とが直結されていると考えると、車体等価モデル117とトレッド115との和の慣性と、車輪113の慣性とが共振する。すなわち、この振動系は、車輪と車体と路面とから構成された車輪共振系とみなすことができる。このときの車輪共振系の共振周波数ω∞は、(1) 式の伝達特性において、 ω∞=√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π (2) となる。この状態は、路面μ特性(スリップ速度に対するμの変化特性)において、ピークμに達する前のスリップ速度の領域に対応する。
【0015】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近づく場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率に対して変化し難くなり、トレッド115の慣性の振動に伴う成分は車体等価モデル117に影響しなくなる。つまり等価的にトレッド115と車体等価モデル117とが分離され、トレッド115と車輪113とが共振を起こすことになる。このときの車輪共振系は、車輪と路面とから構成されているとみなすことができ、その共振周波数ω∞’は、(2) 式において、車体等価慣性Jv を0とおいたものと等しくなる。すなわち、 ω∞' =√{(Jw +Jt )K/Jw t )}/2π (3) となる。この状態は、路面μ特性においてピークμ近傍のスリップ速度領域に対応する。
【0016】(2) と(3) 式とを比較し、車体等価慣性Jv が車輪慣性Jw 、トレッド慣性Jt より大きいと仮定すると、(3) 式の場合の車輪共振系の共振周波数ω∞’は(2) 式のω∞よりも高周波数側にシフトすることになる。
【0017】ところで、上記車輪共振系を構成する車輪が、内力又は外力の作用によって微小振動するとき、その車輪速度は、平均的な車輪速度の回りに該共振系の共振周波数をピークとする振動で微小振動する。そこで、タイヤが路面にグリップしているときの共振周波数ω∞での車輪速度の振動強度(振幅)に基づいて、該共振系の共振レベルを表すことができる。なお、この共振レベルとして、車輪速度の微小振幅値そのものを用いても良い。
【0018】ここで、図14に示すように、タイヤが路面にグリップしている状態からピークμに近づくと、上述したように共振周波数は、ω∞からより高周波数側のω∞’に上昇する。このとき、タイヤが路面にグリップした状態で最大値となっていたω∞での共振レベルは、共振周波数の上昇と共に減少する。従って、この共振レベルに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を判定することができる。
【0019】また、この共振レベルは、タイヤが路面に強くグリップしているほど大きな値をとることから、車輪にかかる荷重(輪荷重)と正の相関があることが予想できる。実際、評価試験等により、車両旋回時において、荷重が増加する旋回外輪のタイヤの共振レベルが増加し、荷重が減少する旋回内輪の共振レベルが減少する結果が得られている。
【0020】このように車輪にかかる荷重と該車輪の共振レベルとは正の相関関係にあるので、旋回時のみならず、車両が直線上で加減速度運動(加速度運動又は減速度運動)を行うことにより前後方向に輪荷重が移動する際にも、タイヤの共振レベルは、輪荷重が移動した方向の車輪では増大し、その反対方向の車輪では減少する。例えば、ブレーキ制動時には、前輪側に荷重が移動するため、前輪の共振レベルが増大し、後輪の共振レベルが減少する。一方、アクセルペダルを踏んだ加速時には、後輪側に荷重が移動するため、後輪の共振レベルが増大し、前輪の共振レベルが減少する。
【0021】そこで、請求項1の発明では、検出手段が、各車輪の共振レベルGi (i=1,2,3,4)を検出する。そして、荷重配分推定手段が、検出された各車輪の共振レベルにより、各車輪の荷重配分を推定する。
【0022】例えば、共振レベルに対し輪荷重が正の相関関数Fで変化する場合、第i輪の荷重Wi を、i = F(Gi ) (4) により求める。
【0023】また、もっと簡単に次式のような略比例関係により求めても良い。
i ≒ k・Gi (5) ただし、kは比例定数である。
【0024】さらに、各車輪の荷重がわかれば、前後方向及び横方向の移動荷重や荷重移動の配分比率などもただちに求めることができる。
【0025】このように本発明では、各車輪の荷重配分が実際に路面に接地している車輪の共振レベルにより直接的に求められるので、Gセンサなどにより検出された加速度に基づいて推定された荷重配分よりも正確な値が得られる。また、これにより、車両安定化制御をより正確かつ安定に行うことができる。例えば、コーナリング時のように横方向の加速度で走行する場合の前後方向の荷重移動は、車体特性、乗員や荷物の荷重分布、サスペンションの状態量などにより異なってくるが、このような場合でも、本発明では、これら諸量により推定することなく各車輪の荷重配分を直接的に求めることができる。
(請求項2の発明)また、請求項2の発明は、車輪の車輪速度が微小振動しているときの車体の加減速度を演算する車体加減速度演算装置において、車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数での車輪速度の微小振幅に基づく共振レベルを、前輪と後輪について各々検出する第1の検出手段、及び右輪と左輪について各々検出する第2の検出手段の少なくともいずれかの検出手段と、前記第1の検出手段により検出された前輪の共振レベルと後輪の共振レベルとに基づいて車体の前後方向の加減速度を演算する第1の演算手段、及び前記第2の検出手段により検出された右輪の共振レベルと左輪の共振レベルとに基づいて車体の横方向の加減速度を演算する第2の演算手段の少なくともいずれかの演算手段と、を有することを特徴とする。
(請求項2の発明の原理)図1に、輪荷重の前後方向の配分を求めるため、車両が加減速度運動を行っているときのハーフカーモデルを示す。なお、図1の各物理パラメータは、以下の通りとなる。
【0026】v : 車体速度G : 車両の重心M : 車両質量g : 重力加速度h : 重心Gの路面からの高さRr,f : 車輪の有効半径(fは前輪、rは後輪に関する)
r,f : 輪荷重(fは前輪、rは後輪に関する)
ωr,f : 車輪速度(fは前輪、rは後輪に関する)
μr,f : 車輪と路面との間の摩擦係数(fは前輪、rは後輪に関する)
r,f : ブレーキ力(fは前輪、rは後輪に関する)
r,f : ブレーキ力のトルク変換係数(fは前輪、rは後輪に関する)
L : 前輪中心から後輪中心までの間隔L1 : 前輪中心から重心Gの水平位置までの間隔L2 : 後輪中心から重心Gの水平位置までの間隔図1のモデルの車両が、dv/dt(tは時間)の加速度(減速度)で走行している場合、該車両には、加速度(減速度)方向とは反対方向に慣性力が作用する。この慣性力の作用は、重心Gに対し、 F=−Mdv/dt (4−2) の力の作用と等価である(図1の力Fの方向はブレーキ制動している減速度時のもの)。
【0027】ここで、この慣性力Fによる前輪の荷重の増分をΔWf 、後輪の荷重の増分をΔWr とすると、慣性力Fは水平方向の成分しかなく、よって車両全体では、鉛直方向の力の増分が無いことから、 ΔWf +ΔWr =0 (5−2) が成立する。
【0028】また、路面からの高さhの重心Gに作用する慣性力Fによって、重心Gから路面まで鉛直方向に垂ろした点Rの回りにはN=F×hのトルクが作用する。このトルクNは、前輪荷重の増分ΔWf 及び後輪荷重の増分ΔWr による点Rの回りのトルクと等しくなるはずである。よって、 Fh = ΔWf 1 −ΔWr 2 (6−2) が成立する。
【0029】(4−2) 〜(6−2) 式より、前輪及び後輪の荷重増分は、【0030】
【数2】

【0031】となる。ただし、・は時間に関する1階微分を示す。(7) 式より、前輪の荷重Wf 及び後輪の荷重Wr を重力加速度gを用いて表すと、次式のようになる。
【0032】
【数3】

【0033】となる。ただし、Wf0,Wr0は、静止時の輪荷重(fは前輪、rは後輪に関する)であり、Wは車体の荷重となる。
【0034】ここで、加速度dv/dtを、重力加速度gに対する比α(以下、「加減速度」という)で表すと、【0035】
【数4】

【0036】となる。このαを、輪荷重で表すと、(8) 〜(11)式より、【0037】
【数5】

【0038】が得られる。さらに、(12)式において、Wf0 ≒Wr0を用いると、【0039】
【数6】

【0040】と近似できる。今、仮に、共振レベルが輪荷重と比例すると仮定すると、(5) 式の比例関係を用いて、(13)式より、【0041】
【数7】

【0042】が得られる。ただし、Gf は前輪の共振レベル、Gr は後輪の共振レベルである。
【0043】そこで、請求項2の発明では、第1の検出手段が前輪の共振レベルGf 及び後輪の共振レベルGr を検出し、第1の演算手段が、 (14) に基づいて前後方向の車体加減速度αを演算する。
【0044】また、上記の加減速度の導出は、左右の車輪についても同様に適用することができ、この場合、横方向の車体加減速度α’は、次式により表される。
【0045】
【数8】

【0046】ただし、(15)式のGR は右輪の共振レベル、GL は左輪の共振レベルである。また、L’は、右輪と左輪の車輪間隔である。
【0047】そこで、請求項2の発明では、第2の検出手段が右輪の共振レベルGR 及び左輪の共振レベルGL を検出し、第2の演算手段が、 (15) に基づいて横方向の車体加減速度α’を演算する。
【0048】なお、(14)、(15) 式は、1つの演算例であって、本発明はこれに限定されるものではなく、他の演算方法、例えば(4) 式より演算された輪荷重に基づいて、車体加減速度を演算する方法も適用可能である。
【0049】このように本発明では、Gセンサなどを用いることなく、車体の加減速度を精度良く推定し、種々の車両安定化制御に有効に用いることができる。
(請求項3の発明)また、請求項3の発明は、車輪の車輪速度が微小振動している車体が走行する路面の状態を推定する路面状態推定装置において、車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数での車輪速度の微小振幅に基づく共振レベルを、前輪と後輪について各々検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前輪の共振レベルと後輪の共振レベルとに基づいて車体の加減速度を演算する演算手段と、車輪の加減速度を検出する車輪加減速度検出手段と、前記演算手段により演算された車体の加減速度及び前記車輪加減速度検出手段により検出された車輪の加減速度の間の関係と、予めデータとして備えられている車体の加減速度及び車輪の加減速度の間の路面状態毎の関係と、の比較に基づいて路面状態を推定する路面推定手段と、を有することを特徴とする。
(請求項3の発明の原理)路面から反力として各車輪に作用することにより車体を動かす制動力は、駆動トルクとブレーキトルクとによる作用が同じ場合でも、高い摩擦係数μの路面ほど大きくなる。このため、車輪の加減速度αw に対する車体の加減速度αの変化特性は、図3に示すように、路面状態(高μ路、中μ路、低μ路)によって異なってくる。すなわち、図3に示すように、低μ路、中μ路、高μ路の各場合において、車輪の加減速度αw の同じ値に対し、高いμの路面ほど、車体の加減速度の絶対値が大きい。また、車輪の加減速度αw の増大に対し、高いμの路面ほど車体の加減速度の変化率が大きい。
【0050】図3のような特性を逆に利用し、本発明では、演算手段により車体の加減速度αを演算すると共に、車輪加減速度演算手段により車輪の加減速度αw を随時演算し、これらの加減速度のデータの間の関係と、予めデータとして備えられている車体の加減速度及び車輪の加減速度の間の路面状態毎の関係と、の比較に基づいて路面状態を推定する。例えば、観測されたαとαw との関係が、図3のどの路面状態の関係に最も近いかを判定することにより、現在走行中の路面の状態を推定することができる。
【0051】このように本発明では、路面状態を推定することができるので、推定された路面状態に応じて制御パラメータを変更する処理等を行えば、種々の車両安定化制御をより高いレベルで実行することができる。
【0052】なお、本発明に係る共振レベルを、次のような微小ゲインで表すようにしても良い。ただし、この微小ゲインを演算する際には、車輪と車体と路面とからなる振動系の共振周波数ω∞((3) 式) でブレーキ圧Pb を微小励振することが前提となる。
【0053】まず、ブレーキ圧Pb が微小励振されると、車輪速度ωw も平均的な車輪速度の回りに共振周波数ω∞で微小振動する。ここで、このときのブレーキ圧Pb の共振周波数ω∞の微小振幅をPv 、車輪速度の共振周波数ω∞の微小振幅をωwvとした場合、微小ゲインGd を、d =ωwv/Pv (16)により演算する。なお、この微小ゲインGd を、ブレーキ圧Pb に対する車輪速ωw の比(ωw /Pb )の共振周波数ω∞の振動成分とみなし、d =((ωw /Pb )|s=jω∞) (17)と表すこともできる。
【0054】外力による車輪速度の微小振動がきわめて小さい場合などでも、ブレーキ圧の励振による微小ゲインは、安定した共振レベルを示すことができ、上記各発明における推定精度を向上させることができる。また、ブレーキ圧微小振幅で正規化しているので、ブレーキ圧が変動する条件でも正確な値が得られる。
【0055】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)図4には、本発明の第1の実施の形態に係る荷重配分推定装置の構成ブロック図が示されている。同図に示すように、本荷重配分推定装置10が適用される車両の右前輪(FR)、左前輪(FL)、右後輪(RR)、左後輪(RL)には、各車輪の車輪速度を各々検出する車輪速センサ20a、20b、20c、20dが備えられている。
【0056】そして、本実施の形態の荷重配分推定装置10には、車輪速センサにより検出された各車輪速度ω1 、ω2 、ω3 、ω4 から、各車輪の微小ゲインGd1、Gd2、Gd3、Gd4を各々演算する微小ゲイン演算部22a、22b、22c、22dが備えられており、これらの微小ゲイン演算部は、演算された各車輪の微小ゲインに基づいて各車輪の荷重配分を推定する荷重配分推定部26に接続されている。また、前輪用の微小ゲイン演算部22a、22bと荷重配分推定部26との間には、微小ゲインの演算値を車体速度に応じて遅延させて出力する遅延部24a、24bが介在されている。
【0057】さらに、遅延部24a、24bの出力端及び微小ゲイン演算部22c、22dの出力端には、遅延された前輪の微小ゲインGd1、Gd2と後輪の微小ゲインGd3、Gd4とに基づいて(14)式、(15)式から車体の前後方向の加減速度及び横方向の加減速度を演算出力する車体加減速度演算部30が接続されている。
【0058】また、荷重配分推定装置10には、車輪速センサにより検出された各車輪速度ω1 、ω2 、ω3 、ω4 から各車輪の加減速度を演算する車輪加減速度演算部28と、演算された各車輪の加減速度の時間的な変化率を演算する加減速度変化率演算部32と、演算された車体の加減速度及び車輪の加減速度の間の関係が、どの路面状態での関係に最も近いかを判断することにより現在走行中の路面の状態を推定する路面状態推定部34と、が備えられている。なお、車体の加減速度及び車輪の加減速度の間の関係は、路面状態だけでなく加減速度変化率によってもそれぞれ異なるため、本実施の形態の路面状態推定部34では、演算された加減速度変化率に応じて判断基準を変更している。
【0059】このうち荷重配分推定部26は、(5) 式で示したように共振レベル(微小ゲイン)と輪荷重とが略比例関係にあると仮定した場合、例えば、図5のように構成することが可能となる。
【0060】図5に示すように、本実施の形態の荷重配分推定部26は、各車輪の微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4を総和することにより、車体重量Wに対応する共振レベルGw を演算する総和器36と、総和Gw に1/4を乗じる乗算器38とを備えている。
【0061】また、荷重配分推定部26は、各車輪の微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4のいずれかと、乗算器38の出力Gw /4との差の絶対値(以下、単に「差分」という)|Gd1−Gw /4|,|Gd2−Gw /4|,|Gd3−Gw /4|,|Gd4−Gw /4|を各々演算する差分器62a、62b、62c、62dを備えている。また、これらの差分器の出力端には、演算された各差分値に基づいて車体の前後の荷重移動比率及び左右の荷重移動比率を演算出力する荷重移動比率演算器65が接続されている。
【0062】さらに、荷重配分推定部26は、各車輪の微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4に対し比例定数kを各々乗算する乗算器64a,64b,64c,64dを備えている。
【0063】次に、車体加減速度演算部30は、(5) 式で示したように共振レベル(微小ゲイン)と輪荷重とが略比例関係にあると仮定した場合、例えば、図6のように構成することが可能となる。
【0064】図6に示すように、車体加減速度演算部30は、各車輪の微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4のうち、前輪の微小ゲインであるGd1とGd2との平均値Gf を演算する前輪平均部66、後輪の微小ゲインであるGd3とGd4との平均値Gr を演算する後輪平均部67、右輪の微小ゲインであるGd1とGd3との平均値GR を演算する右輪平均部68、及び左輪の微小ゲインであるGd2とGd4との平均値GLを演算する左輪平均部69を備えている。これらの平均部66,67,68,69は、後段の処理で割り算があるため、本実施の形態では、平均化操作の際に1/2を乗じないで、単なる加算器として構成している。
【0065】また、前輪平均部66及び後輪平均部67には、前輪平均値Gf と後輪平均値Gr とを加算する加算器72及び前輪平均値Gf から後輪平均値Gr を減算する減算器73が接続されている。また、加算器72及び減算器73の出力端には、減算器73の演算結果(Gf −Gr )を加算器72の演算結果(Gf +Gr )で除算する除算器74が接続されており、さらに除算器74の出力端には、除算器74の演算結果に定数(−L/2h)を乗じる定数器75(図1のハーフカーモデル参照)が接続されている。なお、この定数器75の演算結果が車体の前後方向の加減速度となる。
【0066】また、右輪平均部68及び左輪平均部69には、右輪平均値GR と左輪平均値GL とを加算する加算器76及び右輪平均値GR から左輪平均値GL を減算する減算器77が接続されている。また、加算器76及び減算器77の出力端には、減算器77の演算結果(GR −GL )を加算器76の演算結果(GR +GL )で除算する除算器78が接続されている。さらに除算器78の出力端には、除算器78の演算結果に定数(−L’/2h)を乗じる定数器79(図1のハーフカーモデル参照)が接続されている。なお、この定数器79の演算結果が車体の横方向の加減速度となる。
【0067】次に、路面状態推定部34の詳細な構成を図7を用いて説明する。図7に示すように、本実施の形態の路面状態推定部34は、車体の加減速度αの時系列データと、車輪の加減速度αw の時系列データとの間に成り立つ関係を最小自乗法に基づいて演算する最小自乗法演算部80を備えている。なお、車体の加減速度αとして、図4の車体加減速度演算部30により演算された前後方向の加減速度を用いることができ、また、車輪の加減速度αw として、車輪加減速度演算部28により演算された各車輪の加減速度の平均値を用いることが可能である。
【0068】この最小自乗法演算部80は、例えば、図3に示すように車体の加減速度と車輪の加減速度の次元からなる平面上に各時系列データをプロットしたとき、各データとの距離の自乗が最小となるような直線を求め、この直線の勾配a及び切片bを出力する。この勾配aは、αの変化に対するαw の変化の割合(切片の次元はαw となる)、或いはαw の変化に対するαの変化の割合(切片の次元はαとなる)のいずれかである。
【0069】なお、最小自乗法演算部80では、得られた加減速度のデータに基づいて直線の勾配及び切片を推定する際に、発進、停止のようにαw が大きく変化するところでは、短期間のうちに演算したデータに基づいて推定し、定常走行に近くαwの変化が小さいところでは、より多くのデータを集めて推定する。これにより、αw の大きさに依らず、ほぼ一定の精度で直線勾配等を推定することが可能となる。
【0070】また、路面状態推定部34は、各路面状態(本実施の形態では、例えば、低μ路、中μ路、高μ路の3種類とする)毎に、車体の加減速度αと車輪の加減速度αw と車輪の加減速度の変化率との間に成り立つ関係を予め記憶した高μ路テーブル82a、中μ路テーブル82b、及び低μ路テーブル82cを各々備えた変換部84a、84b、84cを有している。なお、このように車輪の加減速度の変化率毎の関係を各テーブルに表したのは、ドライバの踏力の大きさでブレーキトルクが変化し、よって、その反力として路面から作用する摩擦力の係数μが同じ種類のμ路でも変化するからである。
【0071】これらの変換部84a、84b、84cは、各テーブルに基づいて、入力された車輪の加減速度の変化率に応じた、車体加減速度と車輪加減速度との関係(以下、「α−αw 特性」という)を求め、入力されたα、αw のいずれかの演算値に対応する「α−αw 特性」での勾配及び切片をそれぞれ変換出力する。
【0072】また、これらの変換部84a、84b、84cの後段には、各変換部の出力と最小自乗法演算部80の出力とを照合する照合演算部85が接続されている。この照合演算部85は、最小自乗法演算部80により演算された勾配及び切片と、変換部84a、84b、84cにより出力された勾配及び切片との間の距離を各々算出する。
【0073】さらに、照合演算部85の後段には、算出された各距離の中から最小値を選択する最小値選択部86が接続されている。この最小値演算部86は、距離の最小値を与えた変換部に対応する路面状態の情報コードを出力する。
【0074】ところで、本実施の形態では、平均ブレーキ圧Pm の回りに車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数ω∞((3) 式)のブレーキ圧微小振幅Pvを印加する微小励振手段を備えており、該手段によりブレーキ圧を微小励振したときの微小ゲインを共振レベルとして演算する。
【0075】ここで、微小励振手段について説明する。まず、平均ブレーキ圧指令及び微小励振指令を実際の車輪への制動トルクに変換する部分(バルブ制御系)は、図10に示すように、マスタシリンダ48、制御バルブ52、ホイールシリンダ56、リザーバー58及びオイルポンプ60を備えている。
【0076】このうちブレーキペダル46は、ブレーキペダル46の踏力に応じて増圧するマスタシリンダ48を介して制御バルブ52の増圧バルブ50へ接続されている。また、制御バルブ52は、減圧バルブ54を介して低圧源としてのリザーバー58へ接続されている。さらに、制御バルブ52には、該制御バルブによって供給されたブレーキ圧をブレーキディスクに加えるためのホイールシリンダ56が接続されている。この制御バルブ52は、入力されたバルブ動作指令に基づいて増圧バルブ50及び減圧バルブ54の開閉を制御する。
【0077】なお、この制御バルブ52が増圧バルブ50のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ56の油圧(ホイールシリンダ圧)は、ドライバがブレーキペダル46を踏み込むことによって得られる圧力に比例したマスタシリンダ48の油圧(マスタシリンダ圧)まで上昇する。逆に減圧バルブ54のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ圧は、ほぼ大気圧のリザーバ58の圧力(リザーバ圧)まで減少する。また、両方のバルブを閉じるように制御されると、ホイールシリンダ圧は保持される。
【0078】ホイールシリンダ56によりブレーキディスクに加えられるブレーキ力(ホイールシリンダ圧に相当)は、マスタシリンダ48の高油圧が供給される増圧時間、リザーバー58の低油圧が供給される減圧時間、及び供給油圧が保持される保持時間の比率と、圧力センサ等により検出されたマスタシリンダ圧及びリザーバー圧とから求められる。
【0079】従って、制御バルブ52の増減圧時間をマスタシリンダ圧に応じて制御することにより、所望のブレーキトルクを実現することができる。そして、ブレーキ圧の微小励振は、平均ブレーキ力を実現する制御バルブ52の増減圧制御と同時に共振周波数に対応した周期で増圧減圧制御を行うことにより可能となる。
【0080】具体的な制御の内容として、図11に示すように、微小励振の周期(例えば24[ms])の半周期T/2毎に増圧と減圧のそれぞれのモードを切り替え、バルブへの増減圧指令は、モード切り替えの瞬間から増圧時間ti 、減圧時間trのそれぞれの時間分だけ増圧・減圧指令を出力し、残りの時間は、保持指令を出力する。平均ブレーキ力は、マスタシリンダ圧に応じた増圧時間ti と減圧時間tr との比によって定まると共に、共振周波数に対応した半周期T/2毎の増圧・減圧モードの切り替えによって、平均ブレーキ力の回りに微小振動が印加される。
【0081】ここで、この微小励振手段によりブレーキ圧が微小励振されたときの共振レベルを表す微小ゲインを演算する微小ゲイン演算部22の詳細な構成を図8を用いて説明する。図8に示すように、微小ゲイン演算部22は、平均ブレーキ圧の回りに共振周波数ω∞でブレーキ圧を微小励振したときの、車輪速度ωi (iは車輪番号、i=1,2,3,4 )の共振周波数ω∞の微小振幅(車輪速微小振幅ωwv)を検出する車輪速微小振幅検出部40と、共振周波数ω∞のブレーキ圧の微小振幅Pv を検出するブレーキ圧微小振幅検出部42と、検出された車輪速微小振幅ωwvをブレーキ圧微小振幅Pv で除算することにより微小ゲインGd を出力する除算器44と、から構成される。ここで、車輪速微小振幅検出部40は、共振周波数ω∞の振動成分を抽出するフィルタ処理を行う図9のような演算部として実現できる。例えば、この振動系の共振周波数ω∞が40[Hz]程度であるので、制御性を考慮して1周期を24[ms]、約41.7[Hz]に取り、この周波数を中心周波数とする帯域通過フィルタを設ける。このフィルタにより、車輪速度信号ωi から約41.7[Hz]近傍の周波数成分のみが抽出される。さらに、このフィルタ出力を全波整流器により全波整流、直流平滑化し、この直流平滑化信号から低域通過フィルタによって低域振動成分のみを通過させることにより、車輪速微小振幅を出力する。また、周期の整数倍、例えば1周期の24[ms]、2周期の48[ms]の時系列データを連続的に取り込み、41.7[Hz]の単位正弦波、単位余弦波との相関を求めることによっても実現できる。
【0082】なお、ブレーキ圧微小振幅Pv は、マスタシリンダ圧、図11に示したバルブの増圧時間ti の長さ、及び減圧時間tr の長さによって所定の関係で定まるので、図8のブレーキ圧微小振幅検出部42は、マスタシリンダ圧、増圧時間ti及び減圧時間tr からブレーキ圧微小振幅Pv を出力するテーブルとして構成することができる。
【0083】次に、本実施の形態の作用を説明する。所定条件の成立時に、微小励振手段が共振周波数ω∞でブレーキ圧を微小励振する。ここで、所定条件とは、車体が加減速度運動をするときの条件であり、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれたとき、操舵角が所定角度を超えたとき、アクセル開度が所定値を超えたときなどが挙げられる。ここで、図10のブレーキ圧制御系において、アクセル開度が所定値を超えたときなどのようにブレーキペダルが踏み込まれていない状態でも、踏力とは無関係に増圧バルブ50を介して制御バルブ52へ高油圧を加える手段を設けることにより、ブレーキ圧の微小励振が可能となる。
【0084】ブレーキ圧が微小励振されると、図4の微小ゲイン演算部22a,22b,22c,22dが、各車輪の車輪速度ω1 ,ω2 ,ω3 ,ω4 から微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4を演算し、荷重配分推定部26へ出力する。ここで、右前輪及び左前輪の微小ゲインは、遅延部24a,24bにより、車体速度Vに応じた遅延時間Tだけ遅延されて荷重配分推定部26へ伝達される。なお、前後の荷重配分を求める場合、この遅延時間Tを、例えば、次式により演算することができる。
【0085】T = V/Lここで、Lは図1に示すように前後車輪間の間隔である。すなわち、この時間Tの遅延によって、前後の車輪で同じ路面位置(同じμ値)での微小ゲインの比較が可能となる。
【0086】次に、荷重配分推定部26において、総和器36が4輪の微小ゲインをすべて加算することにより総和Gw (=Gd1+Gd2+Gd3+Gd4)を出力し、乗算器38が総和Gw に1/4を乗じた値Gw /4を算出する。なお、微小ゲインが輪荷重に比例すると仮定した場合、総和Gw は車両重量Wに対応する共振レベルを表し、よって、この乗算器38の出力Gw /4は、1つの車輪の平均的な荷重に対応する共振レベルを表すこととなる。
【0087】すなわち、本実施の形態では、各車輪の静止荷重がほぼ均等の場合を想定している。ただし、各車輪の静止荷重が均等でない場合でも、総和Gw を各車輪の静止荷重の比に応じて振り分けることで対応できる。
【0088】そして、各差分器62a、62b、62c、62dは、各微小ゲインと乗算器38の出力Gw /4との差分|Gd1−Gw /4|,|Gd2−Gw /4|,|Gd3−Gw /4|,|Gd4−Gw /4|を各々算出する。これらの差分は、荷重移動による共振レベルの増加分或いは減少分を表している。
【0089】各差分器により差分が算出されると、荷重移動比率演算器65は、前後の荷重移動配分比率P1 を次式に従って演算する。
【0090】
【数9】

【0091】
【数10】

【0092】すなわち、右輪の差分の和と、左輪の差分の和との比率である。ところで、車両がコーナリングするときの荷重移動の前後配分が、例えば60:40のとき、各輪の荷重は、 前輪外輪=W/4+0.6ΔW 後輪外輪=W/4+0.4ΔW 前輪内輪=W/4−0.6ΔW 後輪内輪=W/4−0.4ΔWとなる。ただし、Wは車両重量、ΔWは、コーナリング中に車両にロールを発生させる遠心力によるモーメントNに起因する左右の荷重移動である(ΔW=N/L’,L’は左右輪間の間隔)。よって、微小ゲインが輪荷重に比例すると仮定した場合、(18)式により、前後配分の比率(60:40)が直ちに求められることがわかる。
【0093】このコーナリング時の前後の荷重配分は、前後方向の加速度及び横加速度だけからは求めることができず、車体特性、コーナリング時のサスペンションの状態量などにより定まるが、本実施の形態では、微小ゲインに基づいて直接的に荷重配分を求めるので、該荷重配分のより正確な値を得ることができる。また、このことは、加速時、ブレーキ制動時における前後及び左右の荷重移動の場合においても成立する。
【0094】さらに、本実施の形態では、乗算器64a、64b、64c、64dが、(5)式に基づき各車輪の微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4に比例定数kを乗算することにより、それぞれ右前輪の荷重W1 、左前輪の荷重W2 、右後輪の荷重W3、左後輪の荷重W4 を直ちに算出する。
【0095】これらの輪荷重は、加速度等から間接的に推定されるのではなく、路面に実際に接地している車輪の共振特性を表す微小ゲインにより演算されるので、本実施の形態によれば、より正確な輪荷重値を得ることができる。
【0096】なお、微小ゲインの値は、荷重のみならず路面μの値に依存するが、遅延部24a、24bにより、前輪の微小ゲインを車体速度に応じて遅延させることにより、ほぼ同じ路面位置(同じ路面μ)での前輪と後輪の微小ゲインを用いて荷重配分や輪荷重を算出するので、車輪間の路面状態の相違による演算結果の誤差を少なくすることができる。
【0097】以上のように本実施の形態に係る荷重配分推定部26では、荷重配分や輪荷重を精度良く推定することができるので、これらのパラメータを用いた制御をより正確かつ安定に行うことができる。例えば、アクティブサスペンションにより荷重配分を所定範囲になるように制御する車両姿勢制御、荷重が多い車輪に大きい制動力を加えることによる車両安定制御、及び自動変速機の変速点の変更制御などに有効に適用することができる。さらに、演算した車輪の荷重を用いてタイヤのコーナリング特性が限界を超えないように制御することにより、スピンを防止するアンチスピン制御にも応用することができる。
【0098】また、本実施の形態に係る車体加速度演算部30は、図6に示す構成によって、演算された各車輪の微小ゲインGd1,Gd2,Gd3,Gd4に対し、(14)式及び(15)式に相当する演算を実行することにより、前後方向の車体加減速度及び横方向の車体加減速度を算出する。この車体加減速度は、次に述べる路面状態推定部34で用いられる以外に、車両姿勢制御などに有効に用いることができる。
【0099】さらに、本実施の形態に係る路面状態推定部34では、図7の最小自乗法演算部80が、車体加減速度演算部30により演算された車体加減速度αの時系列データと、車輪加減速度演算部28により演算された車輪加減速度αw の時系列データとの間に成り立つ関係を、誤差の自乗和が最小となるような直線で近似し、該直線の勾配a0 及び切片b0 を求める。
【0100】ここで、実際の路面におけるα−αw 特性のグラフを図12に示す。同図の横軸は重力加速度gに対する車体減速度の比、縦軸は重力加速度gに対する車輪減速度の比を表している。また、この図は、車体減速度比0の状態からブレーキ制動を開始し、車体減速度比が約1.63のところでブレーキオフし、その後車体減速度比が0になるまでのα−αw 特性の時間的変化を、矢印に沿って高μ路(0.8)、中μ路(0.4)、低μ路(0.2)毎に示したものである。
【0101】図12に示すように、路面状態が異なると、α−αw 特性のグラフの勾配及び切片の値が異なっており、これらの値から路面状態が識別できることがわかる。また、ブレーキオフ以降では、同じμ路でも、勾配等が異なっており、ブレーキトルクの大きさ(本実施の形態では、車輪加減速度の変化率等で表す)に応じて判断基準を変更する必要があることがわかる。
【0102】そこで、図7の変換部84a、84b、84cは、高μ路テーブル82a,中μ路テーブル82b,低μ路テーブル82cから、加減速度変化率演算部32により演算された車輪加減速度の変化率に対応するα−αw 特性を抽出する。そして、抽出されたα−αw 特性から、入力された車体加減速度の演算値(α1 とする)及び車輪加減速度の演算値(αw 1 とする)のいずれかに対応する勾配及び切片を求める。
【0103】例えば、入力されたα1 (又はαw 1 )の前後の2つの値と、該値に対応する2つの車輪加減速度の値(又は車体加減速度)をα−αw 特性から求め、これら2つの座標点を結ぶ直線の勾配及び切片を求める。なお、最小自乗法演算部80が複数の加減速度のデータを用いているので、これらのデータに対応する複数の点を、抽出されたα−αw 特性上で求め、該複数点に基づいて勾配及び切片を求めても良い。
【0104】また、処理速度を向上させるために、各テーブル82a、82b、82cを、車輪の加減速度の変化率及び車体加減速度(又は車輪加減速度)に対して、直接、勾配及び切片のデータを与えるテーブルとして構成しても良く、この場合には、各変換部は、入力された車輪の加減速度の変化率及び車体加減速度(又は車輪加減速度)に基づき直ちに勾配及び切片に変換することができる。
【0105】このようにして変換部84a,84b,84cが、勾配a及び切片bのデータを変換出力すると、照合演算部85では、これらのデータと最小自乗法演算部80の出力(a0 ,b0 )とをそれぞれ照合することにより、各変換部に対し次式のような距離値D1 ,D2 ,D3 を各々算出する。ただし、変換部84a,84b,84cの出力をそれぞれ(a1 ,b1 ),(a2 ,b2 ),(a3 ,b3 )とする。
【0106】
1 ={(a0 −a1 2 +(b0 −b1 2
2 ={(a0 −a2 2 +(b0 −b2 2 } (20) D3 ={(a0 −a3 2 +(b0 −b3 2
次に、最小値選択部86では、(20)式により演算された各距離値D1 ,D2 ,D3 の中から最小値を選択し、この最小値を与えた変換部に対応する路面状態の情報コードを出力する。例えば、D2 が最小値の場合、変換部84bに対応する路面状態である”中μ路”の情報コードを出力する。
【0107】なお、(20)式の距離値D1 〜D3 は、実際に検出されたαとαw との間の関係と、各路面状態毎にモデル化されたαとαw との間の関係とが、どれだけ離れているかを示すパラメータであり、従って、この距離値が小さいということは、該距離値を与えたモデルに近い路面状態であるということを示している。
【0108】以上のように本実施の形態に係る路面状態推定部34は、現在走行中の路面状態を、正確に判断することができる。また、既に述べた荷重配分推定部26による荷重配分等の推定結果や車体加減速度の演算結果を用いた車両安定化制御において、路面状態推定部34により推定された路面状態に応じて制御量や目標値等を変更することにより、路面状態に係わらず常に安定な制御を行うことが可能となる。
(第2の実施の形態)次に、第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態の構成は、第1の実施の形態の構成と同様であるので、同一の符号を付して詳細な説明を省略し、異なる構成部分についてのみ説明する。
【0109】第1の実施の形態では、微小ゲインと輪荷重とが略比例関係にあると仮定したが、より厳密には、正の相関関係の関数でモデル化することができる。そこで、第2の実施の形態では、図13に示すように、演算された微小ゲインGd を輪荷重に変換する変換部90を各車輪毎に設ける。
【0110】図13の変換部90は、少なくとも微小ゲインGd と輪荷重との間の正の相関関係を示す関数92を記憶したテーブル91を備えている。なお、微小ゲインGd と輪荷重以外の1又は2以上の他のパラメータに応じて関数92が変化する場合、このテーブル91を、当該他のパラメータ毎に微小ゲインGd と輪荷重との間の関数92を記憶する3次元以上のテーブルとして構成することができる。
【0111】なお、各車輪毎の変換部90は、図4の微小ゲイン演算部22a,22b,22c,22dと、荷重配分推定部26(及び車体加減速度演算部30)との間にそれぞれ介在される。ただし、前輪の変換部に関しては遅延部24a、24bの前段及び後段のいずれでも良い。
【0112】次に、第2の実施の形態の作用を説明する。第i輪(i=1,2,3,4 )の変換部90に、第i輪の微小ゲインGdiが入力されると、変換部90は、テーブル91により示された関数92により、Gdiを第i輪の荷重Wi に変換して出力する。そして、後段に接続されている荷重配分推定部26及び車体加減速度演算部30では、微小ゲインGdiを輪荷重Wi に置き換えた演算を行う。この輪荷重Wi は、微小ゲインと輪荷重とが略比例関係にあると仮定した時よりも精度の良い値として求められているので、第2の実施の形態では、第1の実施の形態より正確に荷重配分や車体加減速度を演算することができる。
【0113】また、第2の実施の形態では、変換部90により直ちに輪荷重が求められるので、図5の乗算器64a,64b,64c,64dを省略することができる。
【0114】なお、他のパラメータ(操舵角、路面勾配等)を考慮する場合、変換部90は、当該他のパラメータが入力されると、該パラメータを1つの次元として有するテーブル91より、この入力値に対応する微小ゲインと輪荷重との関係を抽出し、抽出された関係に基づいて、入力された微小ゲインGdiを第i輪の荷重Wi に変換して出力する。この場合、さらに正確に荷重配分や車体加減速度を演算することができる。
【0115】以上が本発明の各実施の形態であるが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において種々に変更可能である。
【0116】例えば、第1の実施の形態では、共振レベルとして微小ゲインを用いたが、すべての車輪のブレーキ圧微小振幅が同じとなる条件では、ブレーキ圧微小振幅値で正規化する必要はなく、車輪速微小振幅そのものを共振レベルとして用いることができる。この場合、図4の構成において、微小ゲイン演算部22a、22b、22c、22dを、図8の車輪速微小振幅検出部40に置き換えることができる。
【0117】また、荷重配分推定部26や車体加減速度演算部34では、各車輪の微小ゲインを各車輪の車輪速微小振幅に置き換えることにより、荷重配分や車体加減速度を演算することができる。荷重配分推定部26や車体加減速度演算部34では、共振レベルの比が問題となるので、ブレーキ圧微小振幅によらず正確な演算値が得られる。
【0118】なお、第2の実施の形態において、図13の変換部への入力を、車輪速微小振幅とした場合、テーブル92を少なくとも車輪速微小振幅と輪荷重とブレーキ圧微小振幅との関係を示すテーブルにすると共に、他のパラメータとして、少なくともブレーキ圧微小振幅を用いることが必要になる。
【0119】また、第1の実施の形態では、微小励振手段により共振周波数ω∞でブレーキ圧を微小励振したが、路面等から共振周波数成分を含む自然外乱を受けるときは、微小励振手段を用いずに各車輪の共振レベルを検出し、該共振レベルに基づいて荷重配分、車体加減速度、及び路面状態を推定することができる。
【0120】この場合、図4の構成において、微小ゲイン演算部22a、22b、22c、22dを、図8の車輪速微小振幅検出部40に置き換えることができる。すなわち、共振レベルを車輪速微小振幅で表す。また、荷重配分推定部26や車体加減速度演算部34では、各車輪の微小ゲインを各車輪の車輪速微小振幅に置き換えることにより、荷重配分や車体加減速度を演算することができる。荷重配分推定部26や車体加減速度演算部34では、共振レベルの比が問題となるので、外乱振幅によらず正確な演算値が得られる。
【0121】なお、第2の実施の形態で、図13の変換部への入力を、外乱による車輪速微小振幅とした場合、外乱振幅の変化によって車輪速微小振幅が変化することを正規化するため、テーブル92を少なくとも車輪速微小振幅と輪荷重と外乱振幅との関係を示すテーブルにすると共に、他のパラメータとして、少なくとも共振周波数成分での外乱振幅を用いることが必要になる。
【0122】また、路面状態推定部34において、高μ路、中μ路、低μ路の3種類の路面状態を識別させたが、本発明は、これに限定されるものでなく、2種類の路面状態や、さらにきめ細かく4種類以上の路面状態を識別させることも可能である。
【0123】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、各車輪の荷重配分を、実際に路面に接地している車輪の共振レベルに基づいて直接的に求めるようにしたので、荷重配分の推定を簡単かつ正確に行うことができる、という効果が得られる。
【0124】また、請求項2の発明によれば、各車輪の共振レベルに基づいて正確に加減速度を演算することができる、という効果が得られる。
【0125】さらに、請求項3の発明によれば、各車輪の共振レベルに基づく車体加減速度と車輪加減速度との間の関係を用いて路面状態を推定するようにしたので、路面状態の推定精度が向上する、という効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【出願日】 平成9年(1997)7月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外1名)
【公開番号】 特開平11−23425
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−181608