トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 光ファイバ歪み測定装置及び光ファイバ歪み測定方法
【発明者】 【氏名】李 哲賢

【氏名】内山 晴義

【要約】 【課題】短期間で効率よく光ファイバの歪み及び歪み量を検出することができる光ファイバ歪み測定装置及び光ファイバ歪み測定方法を提供すること。

【解決手段】異なるブリルアン周波数シフトを有する2種類の光ファイバをある距離に交互配置した被測定光ファイバ50と、被測定光ファイバ50の歪みがない状態の特性を初期データとして記憶する初期データ記憶部50と、光周波数変換回路14から出射される光パルスのうち、特定の光周波数の光パルスを被測定光ファイバ50へ入射する光パルス取出回路16と、被測定光ファイバ50から出射されるブリルアン散乱光を受光する受光回路24と、受光回路24から出力される信号を演算処理し、被測定光ファイバ50の特性データを得る信号処理部30と、信号処理部36が求めた特性データと初期データとを比較して、歪みが生じているか否かを判断する伸縮判断部58とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 異なるブリルアン周波数シフトを有する2種類の光ファイバをある距離に交互配置した被測定光ファイバと、前記被測定光ファイバの歪みがない状態の特性を初期データとして記憶する初期データ記憶手段と、前記被測定光ファイバに、所定光周波数の光パルスを入射させる入射手段と、前記光パルスを入射した場合に前記被測定光ファイバから出射されるブリルアン散乱光を受光する受光手段と、前記受光手段から出力される信号を演算処理し、前記被測定光ファイバの特性データを得る信号処理手段と、前記信号処理手段が求めた特性データと前記初期データとを比較して、歪みが生じているか否かを判断する判断手段とを具備することを特徴とする光ファイバ歪み測定装置。
【請求項2】 前記初期データは、前記光パルスを前記被測定光ファイバに入射してから、出射されるブリルアン散乱光の光強度の時間変化を示す初期時間変化波形を含み、前記信号処理手段は、前記入射手段が光パルスを入射させてからのブリルアン散乱光の光強度の時間変化を示す時間変化波形を演算処理によって求める手段を有し、前記初期時間変化波形と前記時間変化波形とを比較して歪みが生じた位置を求める手段を具備することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ歪み測定装置。
【請求項3】 前記比較手段は、前記歪みが生じた位置におけるブリルアン散乱光の光強度に基づいて、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する手段を有することを特徴とする請求項2記載の光ファイバ歪み測定装置。
【請求項4】 予め前記被測定光ファイバに入射させる光パルスの光周波数を変化させて得た測定結果を2次曲線に近似する近似手段と、前記近似手段によって得られた2次曲線の係数及び前記2次曲線が極大となる光周波数を記憶する記憶手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ歪み測定装置。
【請求項5】 前記判断手段は、前記2次曲線が極大となる光周波数における光強度と前記特性データの光強度との差からブリルアン散乱光の光強度が極大となる光周波数を算出する手段を有し、前記2次曲線が極大となる光周波数と、当該算出した光周波数とから前記被測定光ファイバの歪み率を算出する歪算出手段を具備することを特徴とする請求項4記載の光ファイバ歪み測定装置。
【請求項6】 異なるブリルアン周波数シフトを有する2種類の光ファイバをある距離に交互配置した被測定光ファイバの歪みがない状態の特性を予め測定する過程と、前記被測定光ファイバに、所定光周波数の光パルスを入射させた場合に出射されるブリルアン散乱光の光強度の時間変化に基づいて前記被測定光ファイバの特性データを得る過程と、予め測定した被測定光ファイバの前記特性と、前記特性データとを比較して、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する過程とを有することを特徴とする光ファイバ歪み測定方法。
【請求項7】 前記特性データの時間変化と、予め測定した前記被測定光ファイバの経時変化特性とを比較して前記被測定光ファイバの歪みが生じた位置を求める過程を有することを特徴とする請求項6記載の光ファイバ歪み測定方法。
【請求項8】 前記歪みが生じた位置におけるブリルアン散乱光の光強度に基づいて、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する過程を有することを特徴とする請求項7記載の光ファイバ歪み測定方法。
【請求項9】 予め前記被測定光ファイバに入射させる光パルスの光周波数を変化させて得た測定結果を2次曲線に近似する過程と、前記近似手段によって得られた2次曲線の係数及び前記2次曲線が極大となる光周波数を記憶する過程と、前記2次曲線が極大となる光周波数における光強度と前記特性データの光強度との差からブリルアン散乱光の光強度が極大となる光周波数を算出する過程と、前記2次曲線が極大となる光周波数と、当該算出した光周波数とから前記被測定光ファイバの歪み率を算出する過程とを有することを特徴とする請求項8記載の光ファイバ歪み測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光ファイバ歪み測定装置及び光ファイバ歪み測定方法に係り、特に被測定光ファイバに光パルスを入射した場合に生ずるブリルアン後方散乱光に応じて光ファイバの歪みを測定する光ファイバ歪み測定装置及び光ファイバ歪み測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光パルスを光ファイバへ入射させ、光ファイバ中において生ずるブリルアン散乱光を検出して解析することにより、光ファイバの歪み等を測定する光ファイバ歪測定装置が案出されている。この光ファイバ歪み測定装置は、光ファイバ内のある位置で歪みが生じた場合に、任意位置で発生するブリルアン散乱光の周波数分布(スペクトル)が、歪みがない場合と比較して、歪み量に比例した値だけシフトすることを利用したものである。
【0003】図9は、従来の光ファイバ歪み測定装置の構成例を示すブロック図である。図9において、10は連続光のレーザ光を発生する光源であり、12は光カプラである。光カプラ12は2つの入射端及び2つの出射端が設けられ、一方の入射端には光源10において発生するレーザ光が入射される。光カプラ12は入射するレーザ光を分岐して各々の出射端から出射する。
【0004】光カプラ12の一方の出射端には光ファイバ13が接続されている。また、光カプラ12の他方の出射端は光周波数変換回路14と光ファイバによって接続されている。光周波数変換回路14は、入射される連続光の光周波数を変換し、一定の光周波数差を有する光パルス列を生成する。光周波数変換回路14の出射端は光ファイバによって光パルス取出回路16の入射端と接続されている。光パルス取出回路16は入射される光パルス列から、所定の光周波数νを有する光パルスを取り出して出射する。
【0005】光パルス取出回路16の出射端は光カプラ18の入射端に接続されている。光カプラ18は1つの入射端及び2つの入出射端を有する。一方の入出射端には光ファイバが接続され、この光ファイバは光コネクタ19を介して被測定光ファイバ20と光学的に結合される。また、光カプラ18の他方の入出射端には光ファイバ22が接続されている。
【0006】前述した光ファイバ13及び光ファイバ22は受光回路24へ接続されている。受光回路24は2つのフォトダイオードを有し、一方のフォトダイオードには光ファイバ13を介して出射される光が入射され、他方のフォトダイオードには光ファイバ22から出射される光が入射される。受光回路24は入射される各々の光に対してヘテロダイン検波を行うとともに電気信号へ変換する。
【0007】26は増幅回路であり、受光回路26から出力される電気信号を増幅する。28は、増幅回路26から出力される電気信号に対して標本化及び量子化を行いディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換回路(以下、A/D変換回路と称する)である。30は信号処理部であり、A/D変換回路28から出力されるディジタル信号に対してノイズ除去や対数変換等の信号処理を行う。32は曲線近似部であり、被測定光ファイバ20の光周波数特性を2次曲線に近似するためのものである。34はピーク周波数検出部であり、曲線近似部32において得られた近似2次曲線がピーク値となるときの光周波数を得るためのものである。36は歪量算出部であり、測定結果から歪み量を算出する。38は、CRT(Cathod Ray Tube)や液晶等の表示部である。
【0008】次に、上記構成による光ファイバ歪み測定装置の動作を説明する。
〔時間変化波形の測定〕図9において、光源10から出射された連続光は、光カプラ12において分岐され、分岐された連続光の一方は受光回路24へ入射する。一方、分岐された他方の連続光は、光周波数変換回路14へ入射する。
【0009】光周波数変換回路14は、光源1が生成した連続光に対して一定の光周波数差を有する光パルス列を生成する。光周波数変換回路14から出射される光パルス列は光パルス取出回路16へ入射し、所定の光周波数νを有する光パルスを取り出す。光パルス取出回路16から出射された所定の光周波数νを有する光パルスは、光カプラ18を介して被測定光ファイバ20へ入射する。
【0010】上記光パルスが被測定光ファイバ20に入射すると、該被測定光ファイバ20の各位置でブリルアン散乱光が発生する。被測定光ファイバ20の各位置で発生したブリルアン散乱光は、被測定光ファイバ20の入射端から各位置までの距離に比例した時間だけ遅れながら、順次、光カプラ18を介して受光回路24へ入射する。
【0011】受光回路24は、光源10が生成した連続光を用いて、被測定光ファイバ20の各位置で発生したブリルアン散乱光を順次、ヘテロダイン検波し、各位置のブリルアン散乱光の光強度に比例した電気信号を出力する。増幅回路28は、受光回路24から出力された電気信号を増幅し、A/D変換回路28は、増幅回路26により増幅された電気信号をA/D変換する。
【0012】そして、信号処理部30は、ディジタル信号に変換された電気信号値に対して、ノイズ除去、対数変換等の信号処理を行った後、該電気信号値を、光パルス入射からの経過時間(すなわち、被測定光ファイバの入射端からの距離)に対応させてプロットする。以上の処理により、光周波数νの光パルスを入射した場合におけるブリルアン散乱光の時間変化波形が得られる。
【0013】図10は表示部38に表示される時間変化波形の一例を示す図である。図10において、横軸は、光パルス入射からの時間を示している。ここで、光パルス入射からの時間は、被測定ファイバ20の入射端から測定光ファイバ20内の各位置までの距離に対応している。また、縦軸は、該各位置で発生したブリルアン散乱光の光強度を示している。図10(a)に示したように、光パルスを被測定光ファイバ20へ入射させた場合、被測定光ファイバ20内で生ずるブリルアン散乱光の光強度は、被測定光ファイバ20へ光パルスを入射させてからの時間、つまり光ファイバ20の端部からの距離に応じて弱くなる。
【0014】〔歪み量の算出〕次に、被測定光ファイバ20の歪み量の算出方法について説明する。被測定光ファイバ20の歪み量を算出する場合、図9に示す光ファイバ歪み測定装置は、光周波数変換回路14を用いて、被測定光ファイバ20へ入射される光パルスの光周波数νをある値ずつ順次変化させながら、前述した動作を繰り返す。これにより、図10に示すような時間変化波形が、複数の光周波数各々について得られる。
【0015】図11は、複数の光周波数に対する時間変化波形の一例を示す3次元グラフである。この図において、横軸は、被測定光ファイバ20へ入射される光パルスの光周波数νを示し、縦軸は、ブリルアン散乱光の光強度を示し、両軸と直交する軸(図中符号X1が付された軸)は、光パルス入射からの時間(被測定光ファイバ20の入射端からの距離、すなわち、被測定光ファイバ20内の位置)を示している。つまり、図11の縦軸と符号X1が付された軸とからなる座標平面が、図10に示す座標平面に対応している。
【0016】また、図12は、図11に示す3次元グラフを、符号X1が付された軸上のある距離D(被測定光ファイバの入射端からの距離)において、符号X1が付された軸と直交する平面で輪切りにした場合のグラフである。即ち、図12は、距離Dにおけるブリルアン散乱光の周波数分布(スペクトル)を示す波形(スペクトラム波形)である。
【0017】この処理により、ある距離Dにおけるスペクトラム波形(図12に参照)が得られると、図9に示す曲線近似部32は、このスペクトラム波形が示すデータを2次式にあてはめ、スペクトラム波形の近似曲線(2次近似曲線)を求める。そして、ピーク周波数検出部34は、この近似曲線を微分し、ブリルアン散乱光の光強度が最大値を示す光周波数(ピーク周波数νp)を求める。
【0018】最後に、歪量算出部36は、ピーク周波数検出部34が求めたピーク周波数νpを、以下に示す(1)式に代入し、歪み量εを算出する。
ε=(νp−νb)/(νb×K) ・・・・・・・・・・・(1)
νb:歪みが内場合におけるピーク周波数(被測定光ファイバ6の固有値)
K :歪み係数以上の処理により、被測定光ファイバ20内のある位置(入射端からの距離D)における歪み量εが求められ、表示部38に表示される。以上で、図9の構成による光ファイバ歪み測定装置の動作説明を終了する。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した従来の光ファイバ歪み測定装置においては、被測定光ファイバの歪み量を算出する場合、測定を行う毎に、光周波数νを順次変化させながら、複数(具体的には、40〜100種類)の光周波数について、上述したブリルアン散乱光の時間変化波形を測定する必要がある。1つの光周波数に対して1つの時間変化波形の測定には2〜3(秒)の時間を要するので、被測定光ファイバの歪み量を測定する場合には、その40〜100倍、すなわち、最大6(分)の時間を必要とする。
【0020】このように、従来の光ファイバ歪み測定装置は、被測定光ファイバの歪み量の測定に多大な時間がかかるため、測定効率がわるいという問題があった。特に、ファイバセンサとして用いる場合には、測定時間が短いということが需要な要因となる。従って、従来の光ファイバ歪み測定装置はファイバセンサに適していないという問題があった。
【0021】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、短期間で効率よく光ファイバの歪み及び歪み量を検出することができる光ファイバ歪み測定装置及び光ファイバ歪み測定方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、異なるブリルアン周波数シフトを有する2種類の光ファイバをある距離に交互配置した被測定光ファイバと、前記被測定光ファイバの歪みがない状態の特性を初期データとして記憶する初期データ記憶手段と、前記被測定光ファイバに、所定光周波数の光パルスを入射させる入射手段と、前記光パルスを入射した場合に前記被測定光ファイバから出射されるブリルアン散乱光を受光する受光手段と、前記受光手段から出力される信号を演算処理し、前記被測定光ファイバの特性データを得る信号処理手段と、前記信号処理手段が求めた特性データと前記初期データとを比較して、歪みが生じているか否かを判断する判断手段とを具備することを特徴とする。また、本発明は、前記初期データが、前記光パルスを前記被測定光ファイバに入射してから、出射されるブリルアン散乱光の光強度の時間変化を示す初期時間変化波形を含み、前記信号処理手段が、前記入射手段が光パルスを入射させてからのブリルアン散乱光の光強度の時間変化を示す時間変化波形を演算処理によって求める手段を有し、前記初期時間変化波形と前記時間変化波形とを比較して歪みが生じた位置を求める手段を具備することを特徴とする。また、本発明は、前記比較手段が、前記歪みが生じた位置におけるブリルアン散乱光の光強度に基づいて、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する手段を有することを特徴とする。また、本発明は、予め前記被測定光ファイバに入射させる光パルスの光周波数を変化させて得た測定結果を2次曲線に近似する近似手段と、前記近似手段によって得られた2次曲線の係数及び前記2次曲線が極大となる光周波数を記憶する記憶手段とを具備することを特徴とする。また、本発明は、前記判断手段が、前記2次曲線が極大となる光周波数における光強度と前記特性データの光強度との差からブリルアン散乱光の光強度が極大となる光周波数を算出する手段を有し、前記2次曲線が極大となる光周波数と、当該算出した光周波数とから前記被測定光ファイバの歪み率を算出する歪算出手段を具備することを特徴とする。上記課題を解決するために、本発明は、異なるブリルアン周波数シフトを有する2種類の光ファイバをある距離に交互配置した被測定光ファイバの歪みがない状態の特性を予め測定する過程と、前記被測定光ファイバに、所定光周波数の光パルスを入射させた場合に出射されるブリルアン散乱光の光強度の時間変化に基づいて前記被測定光ファイバの特性データを得る過程と、予め測定した被測定光ファイバの前記特性と、前記特性データとを比較して、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する過程とを有することを特徴とする。また、本発明は、前記特性データの時間変化と、予め測定した前記被測定光ファイバの経時変化特性とを比較して前記被測定光ファイバの歪みが生じた位置を求める過程を有することを特徴とする。また、本発明は、前記歪みが生じた位置におけるブリルアン散乱光の光強度に基づいて、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する過程を有することを特徴とする。また、本発明は、予め前記被測定光ファイバに入射させる光パルスの光周波数を変化させて得た測定結果を2次曲線に近似する過程と、前記近似手段によって得られた2次曲線の係数及び前記2次曲線が極大となる光周波数を記憶する過程と、前記2次曲線が極大となる光周波数における光強度と前記特性データの光強度との差からブリルアン散乱光の光強度が極大となる光周波数を算出する過程と、前記2次曲線が極大となる光周波数と、当該算出した光周波数とから前記被測定光ファイバの歪み率を算出する過程とを有することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による光ファイバ歪み測定装置の構成を示すブロック図であり、図9と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図1に示された本発明の一実施形態による光ファイバ歪み測定装置が、図9に示された従来の光ファイバ歪み測定装置と異なる点は、初期データ記憶部52、光強度対歪テーブル54、時間変化波形比較部56、伸縮判断部58、及び光強度対歪算出部60が新たに設けられた点である。また、図9に示された被測定光ファイバ20と異なる被測定光ファイバ50が設けられている。尚、被測定光ファイバ50についての詳細は後述する。
【0024】初期データ記憶部52は信号処理部30、曲線近似部32、及び歪量算出部36と接続され、予め測定したデータに基づいて、被測定光ファイバ50の光強度と光パルス入射からの時間との関係を示すデータ(図10参照)、光強度と光周波数との関係を示すデータ(図9参照)、及び光強度と光周波数との関係を2次曲線で近似したデータ等の初期データを記憶する。
【0025】また、光強度対歪テーブル54は、光強度と被測定光ファイバ50との対照関係が格納される。つまり、光強度対歪テーブル54には、被測定光ファイバ50のある位置において、光強度の値がいくらになれば歪みはいくらであるかを示すデータが格納される。上記初期データ記憶部52及び光強度対歪テーブル54は、例えば、不揮発性のICメモリ、ハードディスク装置、又は光磁気ディスク等の大容量記憶装置等で構成される。
【0026】時間変化波形比較部56は、信号処理部30及び初期データ記憶部52と接続されている。この時間変化波形比較部56は、信号処理部30から出力される歪み測定よって得られた時間変化波形と、上記初期データ記憶部52に記憶された初期データとを比較し、波形を比較して波形の相違を得るためのものである。伸縮判断部58は時間変化波形比較部56によって得られた波形の相違から被測定光ファイバ50が伸びている状態であるのか、又は縮んでいる状態であるのかを得るためのものである。
【0027】また、光強度対歪算出部60は伸縮判断部58の判断結果から光強度対歪テーブル54に記憶されたデータに基づいて、被測定光ファイバ50の歪み量を算出する。上記時間変化波形比較部56、伸縮判断部58、及び光強度対歪算出部60は、例えば、CPU(中央処理装置)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等(何れも図示省略)によって構成され、ROMに格納されたプログラムに基づいてCPUが処理を行うことによって実現される。
【0028】また、前述した被測定光ファイバ50は、一例として、異なるブリルアン周波数シフトを有する光ファイバを交互に配置して構成される。図1に示されたように、被測定光ファイバ50は複数の光ファイバ50a〜50d,…が順に接続されて構成される。光ファイバ50a,50c,…はある特定のブリルアン周波数シフトを有し、光ファイバ50b,50d,…は、光ファイバ50a,50c,…とは異なるブリルアン周波数を有する光ファイバが用いられる。
【0029】例えば、被測定光ファイバ50をなす光ファイバ50a〜50d,…の長さは、入射光のパルス幅(ns)×(2m/10ns)に設定され、異なるブリルアン周波数シフト値は、1/入射光のパルス幅(ns)である通常の通信用光ファイバで構成される。図2は、被測定光ファイバ50の構成例を示す模式図である。図2中符号P1が付された箇所は被測定光ファイバ50へ光パルスが入射する点であり、符号P2が付された箇所は光ファイバ50aと光ファイバ50bとの接続点である。以下同様に、光ファイバ50b,50c,50d,50e,…各々の接続点をP2,P3,P4,P5,P6,…とする。
【0030】図2に示された被測定光ファイバ50にある光周波数νb1の光を入射した場合には、図3に示した測定結果が得られる。図3は、被測定光ファイバにある光周波数νb1の光を入射したときに得られる光強度と光パルス入射からの時間との関係を示す図である。光ファイバ50b,50d,…と、光ファイバ50a,50c,…とは異なるブリルアン周波数を有するので、各光ファイバの接続点P2〜P6,…においては、得られる光強度が不連続となる。
【0031】次に、被測定光ファイバ50において生ずるブリルアン散乱光のブリルアン周波数について説明する。図4は、被測定光ファイバ50において生ずるブリルアン散乱光の周波数特性を示す図である。図4中符号C1が付された曲線は、光ファイバ50a,50c,…において生ずるブリルアン散乱光の周波数特性を示しており、符号C2が付された曲線は、光ファイバ50b,50d,…において生ずるブリルアン散乱光の周波数特性を示している。図示されたように、発生するブリルアン散乱光は光周波数領域において広がりを有するともに、曲線C1及び曲線C2は中心周波数が異なる。
【0032】図4に示されるように、曲線C1及び曲線C2は光周波数νmにおいて交差する。つまり、光周波数がνmである光パルスを被測定光ファイバ20へ入射すれば、光ファイバ50a,50c,…において生ずるブリルアン散乱光の光強度と、光ファイバ50b,50d,…において生ずるブリルアン散乱光の光強度とが同一となるため、図3に示されたような接続点P2〜P6における光強度の不連続性がなくなる。図5は、光周波数がνmである光パルスを被測定光ファイバ20へ入射したときに得られる光パルス入射からの時間と光強度との関係の一例を示す図である。
【0033】次に、伸縮による歪みとブリルアン散乱光の強度との関係について説明する。被測定光ファイバ20のある局部に伸びによる歪みが加わると、光ファイバ50a,50c,…から得られるブリルアン散乱光の強度は、光ファイバ50b,50d,…から得られるブリルアン散乱光の強度より大きくなる。逆に被測定光ファイバ20のある局部に縮みによる歪みが加わると、光ファイバ50b,50d,…から得られるブリルアン散乱光の強度は光ファイバ50a,50c,…から得られるブリルアン散乱光の強度より大きくなる。従って、ブリルアン散乱光の強度を、予め測定した強度の値と比較することによって歪みが光ファイバの伸びによるものか又は縮みによるものかが判断できるとともに、その強度の差を算出することによって歪みの程度を得ることができる。
【0034】次に、本発明の一実施形態による光ファイバ歪み測定装置に適用される光ファイバ歪み測定方法について説明する。図6及び図7は、本発明の一実施形態による光ファイバ歪測定方法を示すフローチャートである。本実施形態による光ファイバ歪み測定方法は、大別すると図6に示された被測定光ファイバ50に歪みがない状態で測定を行い測定データを得る過程と、図7に示された被測定光ファイバ50の歪みを測定する過程とに大別される。上記図6に示された測定データを得る過程は一度行えば、省略することができる。
【0035】まず、図6に示された測定データを得る過程について説明する。ステップPS1においては、図1中の被測定光ファイバ50へ入射する光パルスの周波数を順次変化させながら測定を行い、図11に示された3次元グラフを得る処理が行われる。つまり、被測定光ファイバ50へ入射する光パルスの光周波数を一定にして測定を行い、光パルス入射からの時間と光強度との関係を測定し、順次入射させる光パルスの光周波数を順次変化させながら3次元グラフを得る処理が行われる。この測定結果は、初期データとして図1中の初期データ記憶部52に記憶される。
【0036】測定が終了するとステップSP2へ進む。ステップSP2では、ステップSP1において得られた測定結果から光ファイバの所定の位置における光強度と光周波数との関係を求め(図12参照)、求めた結果から2次近似式を求める処理が行われる。つまり、ステップSP1において得た初期データに基づいて、まず、光強度(y)対周波数シフト(x)との関係を2次近似式から求め(y=ax^2+bx+c)、光強度対歪テーブル54に格納する。
【0037】光強度対歪テーブル54に格納されている値は、2次近似式の係数a,b,cである。従って、係数a,b,cを有する式(y=ax^2+bx+c)を微分すれば、被測定光ファイバ50に歪みが無い状態のブリルアン散乱光の強度が極大となる光周波数を以下の(2)式から得ることができる。
x=−b/2a ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0038】この光周波数xも光強度対歪テーブル54に格納される。また、歪みが無い状態の歪み量εは0%と設定される。上記測定によって、被測定光ファイバ50内の光ファイバ50a,50c,…と光ファイバ50b,50d,…とのブリルアン散乱光のブリルアン周波数は異なり、図4に示されたような結果が得られるので、2次近似式を求める場合には各々の曲線について行う。
【0039】上記処理が終了するとステップSP3へ進む。ステップSP3では、ステップSP2において得られた2つの曲線の交点、つまり図4中に示した交点Cにおける光周波数νmを求める処理が行われる。この処理は2つの二次曲線の交点を求める処理であるので、演算により容易に求めることができる。以上の処理が終了すると、光周波数νmによる時間変化波形の測定データを初期データとして初期データ記憶部52に格納する(ステップSP4)。
【0040】次に、被測定光ファイバ50の歪みを測定する過程について図7を参照して詳細に説明する。測定が開始されると、光ファイバ歪み測定装置は、光周波数νmの光パルスを入射した場合におけるブリルアン散乱光の時間変化波形を測定する(ステップS1)。本実施形態では、一例として、歪みがない場合における時間変化波形(初期データ)として、図10(a)に示す波形が得られ、歪みが生じている場合における時間変化波形として、図10(b)に示す波形が得られたものとする。つまり、歪みが生じた箇所は、光パルスを被測定光ファイバ50へ入射してから時間tDが経過したときに、光パルスが位置する箇所である。
【0041】以下の説明では、歪みが生じた位置をDx,Dx′とする。図10(b)に示す時間変化波形では、被測定光ファイバ50内の距離DxとDx′において光強度が変化している。上記測定が終了すると、図1中の時間変化波形比較部は、初期データ記憶部52に格納されている図10(a)に示す時間変化波形データと、ステップS1において測定した図10(b)に示す時間変化波形データとを比較して波形の相違を得る(ステップS2)。
【0042】ステップS2の処理が終了するとステップS3へ進む。ステップS3では、時間変化波形比較部56の比較結果から被測定光ファイバ58が伸びているか、又は縮んでいるかを判断する。ここで、歪みが生じていると判断されると、波形の相違位置であって、光強度が低下している位置を検出ポイントDxとし、検出するポイントDxに隣接し、光強度が高くなっている位置を検出ポイントDx′とする。また、検出ポイントDxにおけるブリルアン散乱光の光強度をL1とし、検出ポイントDx′におけるブリルアン散乱光の光強度をL2とする。以上の処理によって、被測定光ファイバ50内において歪みが生じた箇所を特定することができる。
【0043】上記処理が終了すると、ステップS4へ進む。ステップS4では図6に示された処理によって予め求めた2次近似式から検出ポイントDxのブリルアン周波数シフトを求める処理が行われる。この処理は図1中の光強度対歪算出部60が行う。光強度対歪算出部60は、まず光強度対歪テーブル54から図6中のステップSP2において求めた係数a,b,c、及び歪みが無い状態における光強度が最大となる光周波数xを読み出す。
【0044】前述した検出ポイントDx,Dx′における光強度L1,L2は測定により求められる。いま、ブリルアン周波数シフト値をx′とすると、ブリルアン周波数シフト値x′は以下の(3)式から算出される。
x′=(−b±((b^2−4a(c−L1)))^0.5)/2a・・(3)
【0045】次に、ブリルアン周波数シフトについて説明する。図8はブリルアン周波数シフトを説明するための説明図である。被測定光ファイバ50に歪みが生じていない場合には図8(a)に示されたような光強度と光周波数との関係が得られる。これらのデータは、図6中に示された処理によって初期データとして初期データ記憶部52に記憶されている。
【0046】いま、被測定光ファイバ50の歪みを測定するために用いた光パルスの光周波数はνmであるので、仮に被測定光ファイバ50に歪みがないとすると、図5に示したように、接続点P2〜P6,…で不連続とならない時間変化波形が得られる。また、光ファイバ50a,50c,…及び光ファイバ50b,50d,…において発生するブリルアン散乱光の周波数分布はほぼ同一となる。
【0047】いま、被測定光ファイバ50に歪みが生じたとすると、光ファイバ50a,50c,…及び光ファイバ50b,50d,…において生ずるブリルアン散乱光の周波数がシフトする。その様子を図8(b),(c)に示す。図8(b),(c)中符号C1,C2が付された曲線は図8(a)中の符号C1,C2が付された曲線をそれぞれ示す。
【0048】図8(b)中符号AC1が付された曲線及び図8(c)中符号BC1が付された曲線は、光ファイバ50a,50c,…に歪みがある場合に、入射させる光パルスの周波数を変化させた場合に得られるブリルアン散乱光である。また、符号AC2が付された曲線及び図8(c)中符号BC2が付された曲線は、光ファイバ50b,50d,…に歪みがある場合に、入射させる光パルスの周波数を変化させた場合に得られるブリルアン散乱光である。
【0049】つまり、図8(b),(c)に示されたように、被測定光ファイバ50に歪みが生ずると、周波数νmの光パルスを入射させたとしても、光ファイバ50a,50c,…から出射されるブリルアン散乱光及び光ファイバ50b,50d,…から出射されるブリルアン散乱光の光強度が変化する。本実施形態においては、この光強度の変化を利用して歪みを測定している。
【0050】上記処理が終了すると処理はステップS5へ進む。ステップS5では、歪みが伸びによるものか又は縮みによるものかを判断する処理が行われる。この処理では、前述した検出ポイントDxにおけるブリルアン散乱光の光強度L1と、検出ポイントDx′におけるブリルアン散乱光の光強度L2とを比較することにより歪みが伸びによるものか、縮みによるものかを判定することができる。
【0051】図8(b)は、歪みが伸びの場合のブリルアン散乱光の周波数分布を示しており、この場合、図示されたように、L1>L2となる。つまり、Dxにおけるブリルアン散乱光の光強度L1が、検出ポイントDx′におけるブリルアン散乱光の光強度L2よりも大きい場合には、歪みが伸びによるものであることが分かる。
【0052】また、図8(c)は、歪みが縮みの場合のブリルアン散乱光の周波数分布を示しており、この場合、図示されたように、L1<L2となる。つまり、Dxにおけるブリルアン散乱光の光強度L1が、検出ポイントDx′におけるブリルアン散乱光の光強度L2よりも小さい場合には、歪みが縮みによるものであることが分かる。
【0053】次に、どの程度歪んでいるかを求める処理が行われる。まず、歪みが伸びである場合には、以下の(4)式に示されるブリルアン周波数シフト量が用いられる。
x′=(−b+((b^2−4a(c−L1)))^0.5)/2a・・(4)
また、歪みが縮みである場合には、以下の(5)式に示されるブリルアン周波数シフト量が用いられる。
x′=(−b−((b^2−4a(c−L1)))^0.5)/2a・・(5)
【0054】上記処理が終了すると、光強度対歪算出部60は、ステップS4によって求められたブリルアン周波数シフト(x′)を前述した(1)式に代入し、歪み量εを算出する。以上の動作により、各ポイントにおける歪み量εが求められ、表示部38に表示される。例えば、歪みが無い状態において、出射されるブリルアン散乱光の光周波数が10.9GHzであり、光強度が40dBであるとする。いま、歪みが生じたとし、ブリルアン散乱光の光周波数が10.6GHzに変化し、光強度が37dBに変化したとすると、歪み量εは0.6085%であることが分かる。
【0055】従来は、歪み量測定に約6分も時間を費やしていたが、本発明を用いれば、2〜3秒程度で測定することができる。また、従来では測定できなかった動的歪み量の評価を行えることができる。動的歪み量の評価とは、例えば光ファイバに対して故意に歪みを生じさせ歪みの変化に応じた光ファイバの特性を測定・評価することである。従って、本発明を適用すると歪みセンサとしての利用範囲は大きく拡大することになる。
【0056】以上、本発明の実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、異なるブリルアン周波数シフトを有する2種類の光ファイバをある距離に交互配置した被測定光ファイバと、被測定光ファイバの歪みがない状態の特性を初期データとして記憶する初期データ記憶手段と、被測定光ファイバに、所定光周波数の光パルスを入射させる入射手段と、光パルスを入射した場合に被測定光ファイバから出射されるブリルアン散乱光を受光する受光手段と、受光手段から出力される信号を演算処理し、被測定光ファイバの特性データを得る信号処理手段と、信号処理手段が求めた特性データと初期データとを比較して、歪みが生じているか否かを判断する判断手段とを備えたので、被測定光ファイバを布設した場合に被測定光ファイバに歪みが生じているか否かを短時間で容易に判断することができるという効果がある。また歪み量も短時間で効率よく測定することができ、測定時間が要求されている光ファイバセンサへの応用が可能となるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000117744
【氏名又は名称】安藤電気株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外2名)
【公開番号】 特開平11−23415
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−172504