トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 赤外線撮像素子および赤外線センサ
【発明者】 【氏名】梅澤 徹

【要約】 【課題】温度制御不要の赤外線撮像素子を得る。

【解決手段】金属ボロメータを使った赤外線撮像素子を、基板上に固定された2本の金属ボロメータと同一の材質でできた支柱と、上記支柱により2点で空中に支えられた金属ボロメータと、上記金属ボロメータと同一の材質でできており、基板内に埋め込まれた抵抗体で構成し、上記金属ボロメータと上記抵抗体の抵抗地の商を出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 赤外線を検知する赤外線撮像素子において、赤外線を検知する金属ボロメータと、上記金属ボロメータを2点支持で空中に支える上記金属ボロメータと同一材質の2本の支柱と、上記2本の支柱の上記金属ボロメータに接していない端をそれぞれ固定する基板と、上記2本の支柱のうち一本と上記基板の固定点にて電気的に接続し、かつ上記基板に埋め込まれた上記金属ボロメータと同一材質の抵抗体と、上記金属ボロメータの抵抗値と上記抵抗体の抵抗値の商を出力する読み出し回路とを備えたことを特徴とする、赤外線撮像素子。
【請求項2】 上記金属ボロメータと上記抵抗体を、それぞれ演算増幅器の帰還抵抗および入力抵抗に接続することで、上記読み出し回路を構成する、請求項1記載の赤外線撮像素子。
【請求項3】 上記金属ボロメータと、上記2本の支柱と、上記抵抗体を薄膜形成技術により同時に形成することを特徴とする、請求項1記載の赤外線撮像素子。
【請求項4】 請求項1の赤外線撮像素子を、1次元または2次元に複数個配置し、赤外線映像を測定する機能を有する、赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は赤外線を検知する赤外線撮像素子と赤外センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5は従来の半導体ボロメータによる赤外線撮像素子の構成を示す図であり、1は半導体ボロメータ、2は半導体ボロメータ1を2点で空中に支えるための導体支柱、3は支柱2の半導体ボロメータ2に接続していない端をそれぞれ固定する基板、4は半導体ボロメータと直列に接続された抵抗体、5は基板3の温度を測定する温度計、6は基板3の温度を調整するペルチェ素子である。
【0003】図6は従来の赤外線撮像素子を駆動させる駆動回路の概略である。半導体ボロメータ1の抵抗値をRf、抵抗体4の抵抗値をRs、バイアス電圧をV、出力電圧をVoutとする。半導体ボロメータ1は赤外線放射を受けると温度が変化し、それに伴い抵抗値Rfも変化する。Rfの変化はVout=Rf×V/(Rf+Rs)の形で電圧に変換される。Rsが一定であることを仮定した場合、Voutの変化は半導体ボロメータ1の受けた赤外線放射に対して一価の関数になるため、Voutをモニタすることにより赤外線放射の量を検出することができる。なお、上記のRs一定の仮定であるが、これは温度計5により常に基板の温度変化をモニタし、基準温度相当の電圧Vtと比較し、差分をペルチェ素子6フィードバックすることで、ある誤差の範囲内に押さえることで実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の赤外線撮像素子では、基板3の温度を一定に保つためペルチェ素子等の電子冷却器を用いているが、これらの電子冷却は一般に消費電力が非常に大きく、したがって屋外での電池等による長時間動作を不可能にしている。
【0005】この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、基板の温度制御を必要とせず、屋外等で長時間使用できる赤外線撮像素子および赤外線センサを得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明の赤外線撮像素子は、赤外線放射を受ける部分に金属ボロメータを使用し、金属ボロメータと同じ金属でできた2本の支柱により、上記金属ボロメータを2点支持で空中に支える。この時の上記金属ボロメータの抵抗値と、上記金属ボロメータと同一金属で構成され、基板に埋め込まれた抵抗体の抵抗値の商を出力することにより、温度制御を必要としない赤外線撮像素子を得るものである。
【0007】第2の発明の赤外線撮像素子は、第1の発明において、金属ボロメータおよび抵抗体をオペアンプの帰還抵抗および入力抵抗にして反転増幅器を構成することにより、金属ボロメータと抵抗体の抵抗値の比を電圧の形で取り出すことで、温度制御を必要としない赤外線撮像素子を実現するものである。
【0008】第3の発明の赤外線撮像素子は、第1の発明において、金属ボロメータ及び抵抗体を薄膜形成技術により同時製膜して形成することにより、金属ボロメータと抵抗体の物性値の固有差を抑制することで。赤外線撮像の精度を向上させ、温度制御を必要としない赤外線撮像素子を得るものである。
【0009】第4の発明の赤外線センサは、第1の発明の赤外線撮像素子を、1次元または2次元に複数個配置することにより、赤外線画像を得るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1を示す図であり、7は金属ボロメータ、8は金属ボロメータ7を中空で支える金属ボロメータと同一の材質でできた2本の支柱、9は支柱8の一方の端を固定する基板、10は金属ボロメータと電気的に接触し基板9に埋め込まれた金属ボロメータと同一の材質でできた抵抗体である。
【0011】金属ボロメータ7が赤外線放射を受けると、その温度が変化し、それに伴い抵抗値Rfが変化する。金属はその性質上、抵抗の温度依存性はRf=Rfo×exp(kf・T)で表わされる。ここでRfoはボロメータの形状で決まる定数である。また、kfは温度抵抗係数であり金属の場合、種類によって一定である。同一のことが抵抗体10の抵抗値Rsにもいえ、Rs=Rso×exp(ks・T)で表わされる。理想的にはkfとksは同一である。
【0012】金属ボロメータ7の温度がT1である場合、その内訳は赤外線放射を受けたことによる温度上昇ΔTおよび基板温度T2の和である(T1=ΔT+T2)。したがって、この時の抵抗値はRf=Rfo×exp(kf(ΔT+T2))となる。この際、基板9の温度T2は周辺の温度変化等の影響により一定値ではない。この時の抵抗体10の抵抗値RsはRso×exp(ks・T2)である。従って、金属ボロメータ7と抵抗体10の抵抗値の商はRf/Rs=(Rfo/Rso)×exp(kf(ΔT+T2)−ks・T2))となる。同一の金属を使用していることから原理的にkf=ksであるので、上記式はRf/Rs=(Rfo/Rso)×exp(kf・ΔT)となり、基板の温度変化T2に依存しない表式となる。
【0013】また、現実的な場合な金属ボロメータ7と抵抗10に同一の金属を選択しても、δk=kf−ks≠となり、したがってRf/Rs=(Rfo/Rso)×exp(kf・ΔT)×exp(δk・T2)となる。これに対しては、金属ボロメータ7と抵抗体10を薄膜製造プロセスにより同時に製膜することにより、物性をそろえ、δk≒0を実現し、実質的な誤差が出ないように対処する。
【0014】以上により、Rf/Rsをモニタすることにより、温度制御を行わなくても赤外線放射による影響のみを純粋に取り出すことができるので、基板温度制御を必要としない赤外線撮像素子が得られる。
【0015】実施の形態2.図2はこの発明の実施の形態2を表わす図であり、図中Rf、Rsは各々金属ボロメータ7、抵抗体10を記号で表記したものであり、11は演算増幅器(オペアンプ)である。なお、オペアンプ11を駆動させるのに必要な電源、バイパスコンデンサ等は省略してある。
【0016】バイアス電圧Vin(一定値)をオペアンプ11に入力する。オペアンプ11はRfおよびRsにより反転増幅器を形成しており、オペアンプ出力Voutは、Vout=−Rf/Rs×Vin=−(Rfo・Vin/Rso)×exp(kf・ΔT)となる。以上の回路によりボロメータの赤外線放射量を電圧の形で原理的に取り出せる。
【0017】また、現実的な場合な金属ボロメータ7と抵抗10に同一の金属を選択しても、δk=kf−ks≠0となり、したがってVout=−(Rfo・Vin/Rso)×exp(kf・ΔT)×exp(δk・T2)となる。これに対しては、金属ボロメータ7と抵抗体10を薄膜製造プロセスにより同時に製膜することにより、物性をそろえ、δk≒0を実現し、実質的な誤差が出ないように対処する。
【0018】以上により、Voutをモニタすることにより、温度制御を行わなくても赤外線放射による影響のみを純粋に取り出すことができるので、基板温度制御を必要としない赤外線撮像素子が得られる。
【0019】実施の形態3.図3はこの発明の実施の形態3を表わす図であり、12は実施の形態1または2の赤外線撮像素子単体、13は2次元平面に赤外線撮像素子12を配置した赤外線センサである。また、図4は赤外線センサ13の運用の形態であり、14は赤外線センサ13上に赤外線画像を結像する赤外線レンズ、15は赤外線センサ13を駆動させる駆動回路である。
【0020】外部からの赤外線映像は、赤外線レンズ14により、赤外線センサ13上に結像され、各赤外線撮像素子12の温度を上昇させる。駆動回路15は赤外線センサ13上の各赤外線撮像素子単体12に対して、きめられた順番でVin印可し、その時のVoutを順次測定していく。
【0021】以上により、温度制御を行わない状態で、赤外線映像を得ることができる。なお、本例では赤外線撮像素子単体を2次元に配置したが、これは1次元でもかまわない。
【0022】
【発明の効果】第1の発明によれば、基板の温度の変化に原理的に依存しない赤外線撮像素子が得られ、赤外線撮像器の定消費電力化を実現する事ができる。
【0023】第2の発明によれば、基板の温度の変化に原理的に依存しない赤外線撮像素子が得られ、赤外線撮像器の定消費電力化を実現する事ができる。
【0024】第3の発明によれば、基板の温度の変化に依存しない赤外線映像が得られ、赤外線撮像器の定消費電力化を実現する事ができる。
【0025】第4の発明によれば第1の発明の赤外線撮像素子を1次元又は2次元に複数個配置することにより、赤外線画像を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月5日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−248530
【公開日】 平成11年(1999)9月17日
【出願番号】 特願平10−53648