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【発明の名称】 火災監視装置
【発明者】 【氏名】石田 憲

【氏名】根本 雅彦

【要約】 【課題】赤外線カメラで撮像した監視区域の画像処理により火災の炎を認識して高精度で火災を監視する。

【解決手段】炎に特有のCO2 共鳴放射の波長帯域(4.3μm付近)の赤外線を通過させる第1バンドパスフィルタ1aと、CO2 共鳴放射の波長を含まない隣接した波長帯域(例えば3.8μm付近)の赤外線を通過させる第2バンドパスフィルタ1bを赤外線カメラ2a,2bの前方に配置し、信号処理装置5において赤外線カメラ2a,2bから出力される各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】炎に特有のCO2 共鳴放射の波長帯域の赤外線を通過させる第1バンドパスフィルタと、前記CO2 共鳴放射の波長を含まない隣接した波長帯域の赤外線を通過させる第2のバンドパスフィルタと、前記第1バンドパスフィルタ及び第2バンドパスフィルタを前方に配置し、通過した赤外線をそれぞれ撮像し画像データとして出力する赤外線カメラと、前記第1バンドパスフィルタ及び第2バンドパスフィルタをそれぞれ配置した場合に前記赤外線カメラから出力される各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、該差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定する信号処理装置と、を設けたことを特徴とする火災監視装置。
【請求項2】請求項1記載の火災監視装置に於いて、前記第1バンドパスフィルタと第2バンドパスフィルタをそれぞれ別途設けた前記赤外線カメラの前方に配置したことを特徴とする火災監視装置。
【請求項3】請求項1記載の火災監視装置に於いて、前記第1バンドパスフィルタ及び第2バンドパスフィルタとして、光の透過波長帯域を変化することができる波長可変干渉フィルタを1台の前記赤外線カメラの前方に配置し、前記信号処理装置は、該波長可変干渉フィルタの透過波長帯域を第1バンドパスフィルタの波長帯域と第2バンドパスフィルタの波長帯域とに周期的に変化させた場合の前記赤外線カメラから出力される画像データをそれぞれ記憶し、記憶した各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、該差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定することを特徴とする火災監視装置。
【請求項4】請求項1記載の火災監視装置に於いて、更に、前記第1バンドパスフィルタと第2バンドパスフィルタを順次切り替えて1台の前記赤外線センサの前方に配置するフィルタ切替部を設け、前記信号処理装置は、前記フィルタ切替部の切替制御により第1バンドパスフィルタと第2バンドパスフィルタを1台の前記赤外線センサの前方に順次配置した場合の前記赤外線カメラからの画像データをそれぞれ記憶し、記憶した各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、該差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定することを特徴とする火災監視装置。
【請求項5】請求項1記載の火災監視装置に於いて、前記信号処理装置は、前記差分画像から炎部分を画像処理により切り出し、該切り出し部分の重心変化や面積変化等の変化を検出することで火災時に発生する炎を判定することを特徴とする火災監視装置。
【請求項6】請求項1記載の火災監視装置に於いて、前記信号処理装置は、前記差分画像に所定レベル以上の輝度領域が所定領域以上あった場合に火災時に発生する炎と判定することを特徴とする火災監視装置。
【請求項7】請求項1記載の火災監視装置に於いて、前記信号処理装置は、前記差分画像に所定レベル以上の輝度領域が予め設定した安全領域以外にあった場合に火災時に発生する炎と判定することを特徴とする火災監視装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、監視区域を赤外線カメラで撮像して画像処理することにより火災時の炎を判別して火災を監視する火災監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、火災時に発生する炎から発せられる赤外線を検出することで火災を監視するものとしては、炎に特有なスペクトル分布を検知するものがある。炎を伴う赤外線放射物体から放射される赤外線のスペクトル分布は、CO2 共鳴放射として知られる現象により、4.3μm付近に高いピークが現れる。
【0003】例えば、特公昭55−33119号、特公昭59−34252号にあっては、4.3μmの波長を通過するバンドパスフィルタと、4.3μmを含まない波長を通過するバンドパスフィルタの出力を1個の光電変換素子に受光し、それぞれのバンドパスフィルタを通過した赤外線の強度の差が所定値以上の場合に炎と判断するようにして、太陽光やランプなどによる非火災要因による誤報をなくしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の火災監視装置にあっては、1個の光電変換素子に受光した赤外線の強度の差を捕らえているだけなので、炎であることは検出できるものの、その炎が火災によって発生しているものなのか、火災以外の炎、例えばガスストーブ、ガスレンジなどの炎なのかは判別できず、誤報の要因となっていた。
【0005】本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、赤外線カメラで撮像した監視区域の画像信号を画像処理することで火災による炎を認識して高精度で火災を監視する火災監視装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明の火災監視装置は次のように構成されている。即ち、本発明の火災監視装置は、炎に特有のCO2 共鳴放射の波長帯域(4.3μm付近)の赤外線を通過させる第1バンドパスフィルタと、CO2 共鳴放射の波長を含まない隣接した波長帯域(例えば3.8μm付近)の赤外線を通過させる第2バンドパスフィルタと、第1バンドパスフィルタ及び第2バンドパスフィルタを前方に配置し、通過した赤外線をそれぞれ撮像し画像データとして出力する赤外線カメラと、第1バンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタをそれぞれ配置した場合に赤外線カメラから出力される各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定する信号処理装置とを設けたことを特徴としている。
【0007】このように構成することで、差分画像の生成で監視画像の中に存在する太陽光やランプ等の非火災要因の画像を除去して炎の画像領域のみを抽出することができ、更に抽出された炎の画像領域につき火災によるガスストーブ、ガスレンジ等の非火災要因による炎かを判定する信号処理を行うことで、火災時に発生する炎を確実に判定することができ、炎の位置と大きさも特定できる。
【0008】本発明における第1バンドパスフィルタ、第2バンドパスフィルタ及び赤外線カメラの構成としては、第1バンドパスフィルタと第2バンドパスフィルタをそれぞれ別途設けた赤外線カメラの前方に配置する。即ちバンドパスフィルタが2つ、赤外線カメラが2台の構成とする。また第1バンドパスフィルタと第2バンドパスフィルタとして光の透過波長帯域を変化することができる波長可変干渉フィルタを1台の赤外線カメラの前方に配置する。この場合、信号処理装置は、波長可変干渉フィルタの透過波長帯域を第1バンドパスフィルタの波長帯域と第2バンドパスフィルタの波長帯域に周期的に変化させた場合の赤外線カメラからの画像データをそれぞれ記憶し、記憶した各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定する。
【0009】このように波長可変干渉フィルタを使うことで、赤外線カメラを1台にすることができ、構成を簡略化し小型化を図ることができる。また第1バンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタを切り替えて1台の赤外線センサの前方に順次配置するフィルタ切替部を設ける。この場合、信号処理装置は、フィルタ切替部の切替制御により第1バンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタを1台の赤外線カメラの前方に順次配置した場合の赤外線カメラからの画像データをそれぞれ記憶し、記憶した各画像データの画素毎の差分の絶対値を演算して差分画像を生成し、該差分画像を画像処理することで火災時に発生する炎を判定する。
【0010】この場合にも、第1バンドパスフィルタ及び第2バンドパスフィルタを順次切り替えることで、赤外線カメラを1台にすることができ、構成を簡略化し小型化を図ることができる。信号処理装置は、差分画像から炎部分を画像処理により切り出し、その後切り出した部分の重心変化や面積変化等の変化を検出することで火災時に発生する炎を判定する。また信号処理装置は、差分画像に所定レベル以上の輝度領域が所定領域以上あった場合に火災時に発生する炎と判定する。
【0011】更に、信号処理装置は、差分画像に所定レベル以上の輝度領域が予め設定した安全領域以外にあった場合に、火災時に発生する炎と判定することができる。このような画像処理を使った炎判定の処理を行うことで、火災時に発生する炎をより高精度で検出することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明の火災監視装置の第1実施形態であり、この実施形態にあっては2台のバンドパスフィルタと2台の赤外線カメラを用いたことを特徴とする。図1において、警戒区域を撮像するため第1バンドパスフィルタ1aを前方に配置した赤外線カメラ2aと、第2バンドパスフィルタ1bを前方に配置した赤外線カメラ2bが設けられる。第1バンドパスフィルタ1aは、炎に特有のCO2 の共鳴放射の波長帯域である中心波長4.3μmをもつ波長帯域の赤外線を通過させる。
【0013】これに対し第2バンドパスフィルタ1bは、第1バンドパスフィルタ1aを通過するCO2 共鳴放射の波長帯域の中心波長4.3μmを含まない隣接した波長帯域、例えば3.8μmを中心波長とする波長帯域の赤外線を通過させる。赤外線カメラ2a,2bは、光学レンズ3a,3bとPiSi、HgCdTa、ボロメータ等の撮像素子4a,4bを備え、第1,2バンドパスフィルタ1a,1bを通過した赤外線のそれぞれの画像を撮像し、画像データとして信号処理装置5に出力する。
【0014】信号処理装置5は、MPU6、AD変換器7a,7b、画像メモリ8及び出力インタフェース9を備え、それぞれMPU6に対しバス11で接続している。AD変換器7aは、第1バンドパスフィルタ1aの中心波長4.3μmの波長帯域を通過した赤外線の画像信号をデジタルデータに変換し、画像メモリ8に画像データAとして記憶する。
【0015】またAD変換器7bは、炎特有の中心波長4.3μmを含まない隣接した中心波長3.8μmの波長帯域を通過した赤外線の画像信号をデジタルデータに変換し、画像メモリ8に画像データBとして記憶する。更に出力インタフェース9にはモニタ10が接続され、画像メモリ8の画像を必要に応じて表示できるようにしている。
【0016】図2は図1に設けた第1バンドパスフィルタ1aと第2バンドパスフィルタ1bの赤外線通過帯域特性である。図2(A)は火災による炎の波長スペクトラムであり、炎に固有のCO2 共鳴放射により波長4.3μmに高いピークを持つ波長スペクトラムの分布が得られる。図2(B)は図1の第1バンドパスフィルタ1aと第2バンドパスフィルタ1bの通過波長帯域である。第1バンドパスフィルタ1aは実線のように、中心波長λ1=4.3μmの波長帯域を持っている。これに対し第2バンドパスフィルタ1bの通過波長帯域は、破線のようにλ1=4.3μmを含まない、例えばλ2=3.8μmを中心とした波長帯域の通過特性を設定している。
【0017】図3は図1の信号処理装置5に設けたMPU6のプログラム制御により実現される信号処理装置としての処理機能のブロック図である。図3において、画像メモリ8には赤外線カメラ2aから出力された画像信号のAD変換器7aによる変換で得られた画像データAと、赤外線カメラ2aからの画像信号をAD変換器7bで変換して得た画像データBが格納される。
【0018】即ち、MPU6は所定の監視周期ごとにAD変換器7aによる赤外線カメラ2aからの画像信号の画像メモリ8への取り込みと、AD変換器7bによる赤外線カメラ2bからの画像信号の画像メモリ8への取り込みを順次繰り返し行っている。差分画像生成部12は、画像メモリ8に画像データAと画像データBが得られた段階で画像データAと画像データBの画素ごとの差分の絶対値を演算して差分画像データSを生成する。
【0019】図4は図3の信号処理における処理画像の具体例を示している。図4(A)は、図1のように第1バンドパスフィルタ1aまたは第2バンドパスフィルタ1bを通さないで撮像した可視画像であり、可視画像には高温物体の例として電球30、火災による炎31及び室温と同じ物体の例として家具32が含まれている。このような可視画像について、図1の第1バンドパスフィルタ1aのもつ炎に固有のCO2 共鳴放射の中心波長λ1=4.3μmをもつ波長帯域の赤外線を通過させて赤外線カメラ2aで撮像して得られた出力画像Aは、図4(B)のようになる。この出力画像Aにあっては、λ1=4.3μmを中心波長とした波長帯域に波長スペクトラムをもつ電球30及び火災による炎31の画像が明瞭に得られ、家具32は画像としてほとんど得られない。
【0020】一方、図1の第2バンドパスフィルタ1bのもつ炎固有の中心波長λ1=4.3μmを含まない隣接した中心波長λ2=3.8μmの波長帯域を通過した赤外線カメラ2aで撮像した画像の出力画像Bは図4(C)のようになる。この出力画像Bは、中心波長λ2=3.8μmを含む広い波長帯域に亘り分布する電球30の画像は明瞭に得られる。この波長帯域にあっては、炎による赤外線の強度は炎固有の中心波長λ1に比べると少ないことから不明瞭な画像として得られる。家具32は画像としてほとんど得られない。
【0021】そして、このような出力画像Aと出力画像Bについて、図3の差分画像生成部12が画素ごとの差分の絶対値を演算することで、図4(D)のような差分画像Sを生成する。即ち、出力画像Aから出力画像Bを画素ごとに差し引いて絶対値を求めることで、出力画像A,Bの両方で同様な出力がある電球30及び家具32の画像は除去され、出力画像Aと出力画像Bの差分による絶対値が大きい炎31は、その画像を差分画像Sの中に出力画像Aより若干劣るが、明瞭に得ることができる。
【0022】再び図3を参照するに、差分画像生成部12で生成された差分画像データSは火災判定処理部13に与えられ、火災による炎か否かの判定処理が行われる。この火災の判定処理は、図5のように差分画像データに含まれる1または複数の画像部分についてラベリング処理を行ってオブジェクトを特定し、特定された1または複数のオブジェクトについて、火災による炎か否かの判定処理を行っている。
【0023】図5は図4(A)の可視画像を例にとってオブジェクトを特定するためのラベリング処理である。図5(A)の元画像には、電球30、炎31及び家具32が含まれており、この元画像の各画素ごとに所定の閾値を設定して輝度レベルを2値化してビット0,1を割り付け、図5(B)のオブジェクトの切出しを行う。続いて図5(B)のビット1の領域を対象に番号1,2,3を割付けるラベリングを行う。このラベリングにより、電球30、炎31及び家具32に対応するオブジェクト1,2,3が図5(C)のように特定できる。
【0024】火災判定処理部13は、図5のようなラベリング処理によるオブジェクトの特定を、図4(D)の差分画像Sに対し行って炎と推定される1又は複数の炎候補としてのオブジェクトを抽出する。そしてオブジェクト毎に火災による炎か否かの判定処理を行い、火災による炎を判定する。オブジェクトに対する炎か否かの判定は、■重心位置の変化を判定■面積の変化を判定を基本とする。例えば重心位置の変化による判定にあっては、火災による炎は画面の上下方向に炎が燃え上がる変化をすることから、オブジェクトを対象に縦方向の重心変動の有無を判定し、縦方向に重心変動があれば火災の炎と判定する。
【0025】また面積の変化については、火災による炎の場合には炎が燃え上がることによりそのオブジェクト領域が変化しており、特に上下方向に変動することにより面積が変化することから、所定範囲の面積の変動があったときに火災による炎と判定する。このような重心位置及び面積の変化に加え、更にオブジェクトの形状の複雑度が炎固有の所定の範囲かどうか判定するようにしてもよい。
【0026】図3の火災判定処理部13は、オブジェクトの重心位置、面積、更には形状の複雑さ等の判定処理を行い、火災による炎か否かを判定し、火災による炎を判定した場合には、判定結果を出力して火災の警報処理を行わせる。また監視画像から炎を判定した場合には、監視区域における炎の位置が分かることから火災の位置情報も出力することができる。更に炎の面積から火災の規模がどの程度であるかの判定も可能である。
【0027】図6は、図3に示した図1の信号処理装置5による火災監視処理のフローチャートである。まずステップS1でAD変換器7aを指定し、赤外線カメラ2aで撮像している第1バンドパスフィルタ1aを通過した中心波長λ1=4.3μmの波長帯域の画像を選択し、ステップS2で赤外線カメラ2aからの画像信号をデジタル信号に変換し、画像メモリ8に画像データAとして記憶する。
【0028】次にステップS3で中心波長λ2=3.8μmを中心とした第2バンドパスフィルタ1bを選択し、ステップS4で第2バンドパスフィルタ1bを通過した赤外線の画像を赤外線カメラ2bで撮像し、AD変換器7bでデジタルデータに変換した後、画像メモリ8に画像データBとして記憶する。次に図5の差分画像生成部12により、画像メモリ8に記憶している中心波長λ1,λ2の波長帯域を持つ画像データA,Bの画素ごとの差分の絶対値により差分画像データSを生成する。次にステップS6で、火災判定処理部13が差分画像データSに基づく火災判定処理を行う。ステップS7で判定結果から火災判定であれば、ステップS8で火災警報を出力する。
【0029】図7は図6のステップS6の差分画像データに基づく火災判定処理のフローチャートである。この火災判定処理にあってはステップS1で、例えば図4(D)のような差分画像Sを対象に、各画素データが所定範囲値以上だった場合にビット1(白画素)、それ以外の時にビット0(黒画素)を割り当て、2値化データを作成する。
【0030】図4(D)のような差分画像Sの場合ならば炎だけがビット1に割り当てられるが、2値化データに図5(B)のように炎以外の要因が含まれていても以下の判断処理で取り除くことができる。ステップS2で2値化データを対象にビット1を持つ画素領域、すなわちオブジェクトごとに固有の番号付けすなわちラベリングを行って1つまたは複数の判別できるオブジェクトとする。
【0031】続いてステップS3で1つのオブジェクトに着目し、ステップS4でオブジェクトのパラメータとしてオブジェクトの重心位置(縦、横)、面積(画素数)、高さ、幅、複雑度を求める。ここで複雑度は、図形の複雑さの尺度であり、周囲長Lsと面積Aから複雑度=Ls2 /Aとして求める。
【0032】続いてステップS5で所定の時間間隔Δtごとに取得した過去のオブジェクトについて格納しているパラメータ相互間での照らし合わせを行う。具体的には、まず図8(A)に示すような新しくラベリング処理を行った結果から、着目したオブジェクトの重心位置に最も近い位置の過去のオブジェクトを、図8(B)に示すような過去のラベリング処理を行った結果から探しだし、ラベルを図8(C)のように付け直し、その後、着目したオブジェクトについてパラメータ相互間での照らし合わせを行う。
【0033】パラメータの照らし合わせは、つけ直されたオブジェクトのラベルごとに前回のパラメータ1個との単純比較、もしくは過去のオブジェクトのパラメータ任意個数を保存しておいて、複数個のパラメータの平均や時間的な変動を見るために分散率などを算出する。次に、ステップS6〜S10で火災であるかどうかの判定を行う。判定の順番はその重要度に応じて入れ替わってもよい。また火災判断の対象映像によっては判定のステップ数が減ることも有り得る。ステップS6では縦方向の重心位置の変動があるかどうかをチェックする。炎の場合には炎が上方に燃え上がることから縦方向に重心位置の変動が起こる。縦の重心変動があれば火災による炎の可能性があると見なし、ステップS7に進む。
【0034】ステップS7では面積値の変動が所定の範囲内かどうかをチェックする。電球やその他の物体の場合面積はほとんど変化しない。また点滅灯や回転灯の場合、最大面積(点滅灯:全灯、回転灯:反射板がカメラ側)、面積ほぼ0(点滅灯:消灯、回転灯:反射板がカメラ以外向き)と変動が激しい。炎の場合は面積の変化があり、最も面積が小さくなったときでもある程度の火炎面積があるため変動が所定の範囲に収まっていれば火災による炎と見なしてステップS8に進む。
【0035】ステップS8においては、重心の移動について縦方向と横方向に分解して比較する。縦方向の変動は炎が燃え上がる現象によって、横方向の変動は炎の燃え広がりや風の影響によって発生する。また、縦・横の変動の違いを判断するためには単純にオブジェクトの幅の変動と高さの変動を比較しても良い。炎の周期変動のちらつきは縦方向だけに絞られるので横の変動よりも縦の変動の方が大きい場合に炎と見なしステップS9に進む。
【0036】ステップS9においては、重心の移動距離を横成分と縦成分に分解し、それぞれオブジェクトの幅と高さと比較する。炎の場合、その根元には必ず可燃物があり可燃物自体は移動しない。すなわち、走行中の自動車のヘッドランプ等、移動物体を火災と判断しない。移動距離がオブジェクトの大きさの範囲内だった場合は炎と見なしステップS10に進む。
【0037】ステップS10においては物体の複雑度を判断する。炎の場合、他の物体に比べ、輪郭に凹凸が多く面積に比べ周囲長が長く形状が複雑である。実験映像を実際に処理した場合、炎はその大きさによって複雑度自身が変動するが、その値のばらつきは比較的小さい範囲に収まる。これに対し、電灯やその他の物体は全く変動しない。そこで複雑度の範囲やその時間的変動が所定の範囲であれば炎と判断する。このようなステップS6〜S10の全ての判定結果をパスすると最終的にステップS11で火災と判定し図6のルーチンに戻る。
【0038】一方、ステップS6〜S10のいずれかの条件も満足しなかった場合には、火災ではないことからステップS12に進み、全てのオブジェクトについての判定が終了したか否かチェックし、判定を終了していなければ、再びステップS3に戻って次のオブジェクトに着目して同様な処理を行う。全てのオブジェクトの判定が終了した場合には、ステップS3で非火災判定を行って図6のメインルーチンにリターンする。
【0039】尚、図7の火災判定処理にあっては、重心、面積及び位置的な変化をチェックして火災による炎か否か判定しているが、これ以外に面積変化で検出する場合、面積変化から周波数成分を解析し、この周波数成分の解析結果から炎がちらつくことによって発生する炎特有の周波数、即ち15Hz以下の判定結果が得られれば炎とする判定処理を加えるようにしてもよい。
【0040】また差分画像の中にガスストーブやガスレンジ等のオブジェクトが存在する場合、このようなガスストーブやガスレンジの大きさ以上の輝度領域が判定された場合に真の火災と判定することもできる。更に、差分画像の中のガスストーブやガスレンジ等の炎が使用されるものが配置してある領域を予め安全領域として指定し、安全領域で炎が判定される場合には非火災と判定し、これに対し安全領域以外の場所で炎が判定された場合は真の火災と判定するようにしてもよい。
【0041】図9は本発明の第2実施形態であり、この実施形態にあっては、第1バンドパスフィルタ及び第2バンドパスフィルタとして光の透過波長帯域を変化することのできる波長可変干渉フィルタを用いたことを特徴とする。図9において、信号処理装置5に対しては1台の赤外線カメラ2が設けられており、赤外線カメラ2の前方に波長可変干渉フィルタ14を設置している。波長可変干渉フィルタ14は、信号処理装置5の出力インタフェース15を介して接続した駆動部16による駆動電圧の印加により、炎に固有のCO2 共鳴放射の中心波長λ1=4.3μmの波長をもつ第1バンドパスフィルタとしての機能と、中心波長λ1=4.3μmを含まない中心波長λ2=3.8μmの波長帯域の通過特性を持つ第2バンドパスフィルタとしての機能を切替設定できる。
【0042】図10は図9の波長可変干渉フィルタ14の構造説明図である。波長可変干渉フィルタ14は、Au等の金属膜18,20を蒸着した一対のガラス基板17,19を上下に配置した圧電素子21を介して対向配置し、その間にd1の空間を形成している。圧電素子21は駆動電圧源22による直流電圧の印加を受けて間隔d1を変化させることができる。
【0043】この波長可変干渉フィルタ14は、ガラス基板19側からの入射光に対し金属膜18,20を光が透過することによって生ずる多重干渉に起因して、複数種類のスペクトルを有する光が間隔d1に対応して選択的に透過される。このような波長可変干渉フィルタ14としては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0044】図9の駆動部16にあっては、図10のような波長可変干渉フィルタ14について、その赤外線通過の波長帯域を炎特有のCO2 の共鳴放射の中心波長λ1=4.3μmを持つ波長帯域と中心波長λ1=4.3μmを含まない中心波長λ2=3.8μmの波長帯域の赤外線通過特性に切り替える。具体的には、駆動電圧源22に対する駆動電圧の可変により通過波長帯域の切替えを行う。
【0045】図11(A)は火災による炎の波長スペクトラムであり、中心波長λ1=4.3μm付近に炎に特有のCO2 の共鳴放射によるピークを持っている。図11(B)は図8の波長可変干渉フィルタ14の帯域通過特性であり、例えば駆動電圧0ボルトの状態で実線のように中心波長λ1=4.3μmの帯域波長をもつ多重干渉による狭帯域通過波長特性を設定し、図1の第1バンドパスフィルタ1aと同じ波長帯域特性を設定する。
【0046】これに対し、駆動電圧源22による圧電素子21に対する駆動電圧を変化させることで、図11(B)の破線のように中心波長λ2=3.8μmの波長帯域の通過特性となるように波長軸上でシフトさせた多重干渉による複数の狭帯域波長透過帯域を持つ特性に切り替え、図1の第2バンドパスフィルタ1bとしての機能を実現する。さらに、長波長透過フィルタ、短波長透過フィルタと組み合わせることにより、波長選択性をより高めることができる。
【0047】図9の信号処理装置5は、駆動部16により図11(B)のように、可変値を干渉フィルタ14の波長通過帯域を順番に切り替える点以外は、図1の信号処理装置5と同じである。この図9の実施形態によれば、波長可変干渉フィルタ14を用いたことで赤外線カメラ2を1台にすることができ、その分、装置構成が簡略化でき、コストダウンできる。
【0048】図12は本発明の第3実施形態であり、この実施形態にあっては、フィルタ切替えにより1台の赤外線カメラで済むようにしたことを特徴とする。図12において、信号処理装置5に対しては1台の赤外線カメラ2が設けられており、赤外線カメラ2の前面にフィルタ切替部24が設けられる。フィルタ切替部24は、第1バンドパスフィルタ1aと第2バンドパスフィルタ1bを、例えば円板の回転軸により回転自在に設置しており、駆動部23により赤外線カメラ2の前方にフィルタ切替部24の駆動で第1バンドパスフィルタ1aまたは第2バンドパスフィルタ1bを切替配置できるようにしている。この場合にも、信号処理装置5は図1の実施形態と基本的に同じである。
【0049】図13は本発明の第4実施形態であり、図9の波長可変干渉フィルタ14を用いた第2実施形態について、差分画像の生成をアナログ的に行うようにしたことを特徴とする。図13において、赤外線カメラ2、信号処理装置5、波長可変干渉フィルタ14及び駆動部16の構成は図8の第2実施形態と同じであるが、これに加えて新たに差分画像生成回路25を設けている。差分画像生成回路25は、遅延回路26と差分回路27を備える。遅延回路26は撮像素子4から出力される画像信号を1画像分遅延して差分回路27に出力する。
【0050】差分回路27は遅延回路26で1画像分遅延された画素信号と撮像素子4よりリアルタイムで出力される画素信号との差分の絶対値を求め、AD変換器7でデジタルデータに変換して画像メモリ8に格納して差分画像データを生成させる。即ち、MPU6による指示で出力インタフェース15を介して駆動部16により波長可変干渉フィルタ14に第1バンドパスフィルタ1aの中心波長λ1=4.3μmの波長帯域を設定して、透過した赤外線の画像を赤外線カメラ2より出力させて、まず遅延回路26に入力して1画像分遅延させる。
【0051】次に出力インタフェース15により駆動部16を切り替え、波長可変干渉フィルタ14の通過帯域を波長λ2=3.8μmの波長帯域とし、この波長帯域の通過で得られた赤外線の画像信号を出力する際に遅延回路26で遅延された1画像分前の画素と赤外線カメラ2よりリアルタイムで出力される画素の差分の絶対値を差分回路27で求め、AD変換器7でデジタルデータに変換して画像メモリ8の差分画像の画素データとして格納する。
【0052】このような差分画像生成回路25によるアナログ的な差分画像の生成により、リアルタイムで差分画像を信号処理装置5に取り込むことができ、信号処理装置5における差分画像の生成処理の負担が低減し、処理時間と処理負荷の低減を図ることができる。図14は図12の差分画像生成回路25を外部に設けた信号処理装置5による火災監視処理のフローチャートである。まずステップS1で中心波長λ1=4.3μmの波長帯域を波長可変干渉フィルタ14に設定し、ステップS2で中心波長λ1=4.3μmの波長帯域を通過した赤外線の画像を撮像し、この画像信号を差分画像生成回路25の遅延回路26に出力して遅延させる。
【0053】次にステップS3で中心波長λ2=3.8μmの波長帯域を波長可変干渉フィルタ14に設定し、ステップS4でそのときの波長可変干渉フィルタ14を通過した赤外線画像の撮像による画像信号を差分画像作成回路25の差分回路27に出力し、ステップS2で入力して遅延回路26で遅延されている中心波長λ1の波長帯域の画像信号との差分の絶対値を各画素ごとに求めてAD変換した後に、画像メモリ8に差分画像データSとして記憶する。
【0054】続いてステップS5で図7のフローチャートに従った火災判定処理を行い、ステップS6で火災であれば、ステップS7で火災警報出力を行うことになる。図15はアナログ的な差分画像の生成を行う本発明の実施形態であり、この実施形態については、図12のフィルタ切替部24を備えた第3実施形態についてアナログ的な差分画像生成を適用したことを特徴とする。即ち図15において、図12と同じ構成を持つ赤外線カメラ2、駆動部23、フィルタ切替部24及び信号処理装置5に対し、新たに差分画像生成回路25を設け、差分画像生成回路25は遅延回路26と差分回路27で構成される。
【0055】この差分画像生成回路25は図13の実施形態と同じであり、信号処理装置5に設けた出力インタフェース15による駆動部23で、フィルタ切替部24の第1バンドパスフィルタ1aを赤外線カメラ2の前部に図示のように配置した状態で、その画像信号を遅延回路26に入力して遅延する。次に駆動部23によりフィルタ切替部24の第2バンドパスフィルタ1bを赤外線カメラ2の前方に切り替え、この状態で得られる画像信号を差分回路27に入力し、遅延回路26で既に遅延された画像信号との差分の絶対値を各画素ごとに求め、AD変換器7でデジタルデータに変換し、画像メモリ8の差分画像の画素データとして記憶する。
【0056】尚、上記の実施形態にあっては、炎に特有のCO2 共鳴放射の中心波長λ1=4.3μmの波長帯域の赤外線を通過させる第1バンドパスフィルタ1aに対し、第2バンドパスフィルタ1bとして、低い中心波長λ2=3.8μmの波長帯域をもつように設定しているが、λ1=4.3μmに対し高い波長帯域、例えばλ3=4.5μmの波長帯域を持つフィルタを第2バンドパスフィルタとしてもよいことはもちろんである。
【0057】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明によれば、炎特有の波長帯域を持つ画像と炎特有の波長帯域を外れる画像との差分画像の生成で、監視画像の中に存在する太陽光やランプなどの非火災要因の画像を除去して炎の画像領域のみを抽出することができ、更に抽出された炎の画像領域について火災による炎かガスストーブやガスレンジ等の非火災要因による炎かを判定することで、火災時に発生する炎を確実に判定することができ、高精度で火災を監視することができる。
【出願人】 【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進 (外1名)
【公開番号】 特開平11−160158
【公開日】 平成11年(1999)6月18日
【出願番号】 特願平9−327339