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【発明の名称】 光計測装置
【発明者】 【氏名】チャン キンプイ

【氏名】佐鳥 耕自

【要約】 【課題】本発明は、光散乱体にコヒーレント光を照射し、その被検体を経由(透過あるいは反射)した光を利用してその被検体の光計測を行なう光計測装置に関し、光ヘテロダイン検出法に連続出力のコヒーレント光を用いながらも、被検体を経由した信号光のうちの直進光と拡散光成分を有効に分離、検出する。

【解決手段】周波数が時間的に変調されたコヒーレント光11aを出射する光源11を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 周波数が時間的に変調されたコヒーレント光を出射する光源、被検体が配置される被検体配置部、前記光源から出射されたコヒーレント光を、前記被検体配置部を経由する信号光と、該被検体配置部を経由する光路とは異なる光路を経由する参照光とに二分するとともに、該被検体配置部を経由した後の信号光と、該異なる光路を経由した参照光とを互いに重畳することにより該信号光と該参照光とが干渉した干渉光を生成する干渉光学系、前記干渉光学系で得られた干渉光を受光することにより受光信号を得る光検出器、および前記光検出器で得られた受光信号の中から少なくとも1つの周波数成分を抽出する信号処理部を備えたことを特徴とする光計測装置。
【請求項2】 前記光計測装置が、光散乱体を被検体とするものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項3】 前記信号処理部が、前記光検出器で得られた受光信号を、複数の周波数成分に分離する手段を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項4】 前記信号処理部が、前記被検体配置部に配置された被検体の密度もしくは密度分布を求める手段を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項5】 前記干渉光学系が、前記被検体配置部に配置された被検体と該被検体配置部における信号光とのうちの少なくとも一方を所定の走査方向に相対的に移動させることにより該被検体を該走査方向に該信号光で走査する走査機構を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項6】 前記干渉光学系が、前記光源から出射されたコヒーレント光のビーム径を一次元的もしくは二次元的に拡大する拡大光学系を含み、前記光検出器が、前記コヒーレント光のビーム径が拡大された方向に対応した方向に一次元的もしくは二次元的に配列された複数の受光素子を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項7】 前記干渉光学系が、被検体配置部に配置された被検体と該被検体配置部における信号光の光路とのうちの少なくとも一方を相対的に回転させる回転機構を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項8】 前記光源が、所定の周波数範囲内でかつ所定の周期で繰り返し変調されたコヒーレント光を出射するものであることを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検体、特に光散乱体にコヒーレント光を照射し、その被検体を経由(透過あるいは反射)した光を利用して、その被検体の光計測を行なう光計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば人体やその他の生体組織のような光に対して顕著な散乱を生じる光散乱体を光計測する場合の最大の難点は、サンプルから四方八方に出射する透過光あるいは反射光のうち追跡が可能な光路に沿った信号光をどのようにして抽出するかということにある。これを可能にする方法の1つとして、極めて短いレーザパルス(ピコ秒;10-12 sec)をサンプルに入射して、その出射光の時間プロファイルを超高速ストリックカメラを用いて測定し、最短距離を通過した光成分、すなわち見かけ上の透過直進光成分を検出する時間分解法が知られている(例えばS.Anderson−Engeles,R.Berg,S.Svanberg,O.Jarlman,Optics Letters, vol.15,1179(1990)参照)。
【0003】一方、散乱光の方向性、コヒーレンス、および偏向面の光波の特性の消失に着目して、これらの特性を保った透過直進光成分および近軸前方散乱光成分のみを検出する光へテロダイン検出法も提案されている(例えばM.Toida,M.Kondo,T.Ichimura,H.Inaba,ElectronicLetters, vol.26,700(1990)参照)。
【0004】この光へテロダイン検出法に基づく光計測は、本質的に散乱を受けずに直進する直進光成分のほか、散乱を受ながらも前進して入射光の時間コヒーレンスの一部を保持したまま散乱体から出射する近軸前方散乱光成分も検出されるという特徴をもっている(K.P.Chan,B.Devaraj,M.Yamada.H.Inaba,“Physics in Medicine and Biology”,vol.42,855(1997)参照)。また、このような近軸前方散乱光成分の影響により、光画像の空間分解能が著しく低減することが指摘されている(K.P.Chan,M.Yamada,H.Inaba,“Applied Physis”B,vol63,249(1996)参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記光へテロダイン検出法は、信号光と、局部発振光すなわち参照光との干渉に基づく検出法であって、信号光が光散乱体に入射しその光散乱体内で不定の経路を辿ってその光散乱体から出射した散乱光成分のうち、その光散乱体の入射光の時間コヒーレンスの一部を保持した成分が存在すれば、それらの成分は参照光と干渉することになる。このような散乱光成分に由来する光干渉信号(光へテロダイン信号)と直進光成分に由来する光干渉信号とを分離することは、光測定用の光源に連続出力のレーザを用いていたのは通常は不可能である。これに対し、超短レーザパルスを用いれば、原理的にはへテロダイン検出法に前記の時間分解法を付加することと等価であり、時間軸上で各信号成分を分離できることとなる(M.R.Hee,J.A.Izatt,J.M.Jacobson,J.G.Fujimoto,“Optics Letters”,vol.18,950(1993)参照)。ただし、この場合は、フェムト秒オーダ(1フェムト秒=10-15 秒)のレーザパルスを発することのできる高価なパルスレーザと高速検出用の光検出器システムが必要である。
【0006】本発明は、上記事情に鑑み、上記光へテロダイン検出法に光源として連続出力のコヒーレント光を用いても、被検体を経由した信号光のうちの直進光と散乱光成分を有効に分離検出することが可能な光計測装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の光計測装置は、周波数が時間的に変調されたコヒーレント光を出射する光源、被検体が配置される被検体配置部、上記光源から出射されたコヒーレント光を、被検体配置部を経由する信号光と、その被検体配置部を経由する光路とは異なる光路を経由する参照光とに二分するとともに、被検体配置部を経由した後の信号光と、異なる光路を経由した参照光とを互いに重畳することにより信号光と参照光とが干渉した干渉光を生成する干渉光学系、干渉光学系で得られた干渉光を受光することにより受光信号を得る光検出器、および光検出器で得られた受光信号の中から少なくとも1つの周波数成分を抽出する信号処理部を備えたことを特徴とする。
【0008】上記本発明の光計測装置は、光散乱体を被検体とするときにその効果が顕著である。ここで、上記本発明の光計測装置において、上記信号処理部が、光検出器で得られた受光信号を、複数の周波数成分に分離する手段を含むものであることが好ましい形態である。
【0009】また、上記本発明の光計測装置において、上記信号処理部は、被検体配置部に配置された被検体の密度もしくは密度分布を求める手段を含むものであることも好ましい形態である。また、干渉光学系に関しては、干渉光学系が、その被検体配置部に配置された被検体と被検体配置部における信号光とのうちの少なくとも一方を所定の走査方向に相対的に移動させることにより被検体をその走査方向に信号光で走査する走査機構を含むものであることが好ましく、あるいは、干渉光学系が、光源から出射されたコヒーレント光のビーム径を一次元的もしくは二次元的に拡大する拡大光学系を含み、光検出器が、そのコヒーレント光のビーム径が拡大された方向に対応した方向に一次元的もしくは二次元的に配列された複数の受光素子を備えたものであることも好ましい形態であり、さらには、干渉光学系が、被検体配置部に配置された被検体とその被検体配置部における信号光の光路とのうちの少なくとも一方を相対的に回転させる回転機構を含むものであることも好ましい形態である。
【0010】さらに、上記本発明の光計測装置において、上記光源は、所定の周波数範囲内でかつ所定の周期で繰り返し変調されたコヒーレント光を出射するものであることが好ましい。例えば被検体として光散乱体を用いたとき、その光散乱体から出射した光は、その光散乱体内で様々に散乱した光の集合体であり、換言すれば、その光散乱体から出射した光は、その光散乱体内で散乱した光ほど長い光路長(長い時間遅れ)を有する、様々な時間遅れを持った光の集合体である。従って時間的に変調された周波数を有するコヒーレント光を採用すると、その光散乱体から出射した光は、様々な光周波数の光の集合体となり、光ヘテロダイン検出器で得られたヘテロダイン光信号には様々な周波数成分が含まれる。したがってそのヘテロダイン光信号からある周波数成分の信号を抽出することにより例えば散乱されずに直進した直進光成分のみ抽出したり、その受信信号を複数の周波数成分に分離することにより散乱光成分を散乱の程度に応じて互いに分離することができる。このような抽出や分離を行なうことにより、その光散乱体の密度を求めたり、直進行のみの光CT画像を求めたりすることができる。
【0011】尚、本発明は、主には、光散乱体を被検体として採用するものであるが、光散乱体でなくても例えば透明ガラス等を被検体として採用し、その被検体の屈折率を計測することもできる。本発明は、上記のように被検体の各種の物性等の計測に用いるものであり、本発明とはその構成は大分異なるが、レーザ光源の周波数変調を行ない参照光と信号光の光路長差を光へテロダイン信号の周波数から測定するという広い概念で捉えた場合に本発明と共通する技術として、OFDR(Optical Frequency Domain Reflecter;光周波数領域反射測定器)が知られている(例えば、D.Uttam,B.Culshaw,IEEE Journal of Lightwave Technology, vol.LT−3,971(1985)参照)。
【0012】このOFDRは、例えば光ファイバの途中で断線が生じたときに、時間的に周波数変調をかけた信号光をその光ファイバに入射し、その断線が生じた箇所で反射して戻ってきた信号光に参照光を干渉させて受光し、その受光信号にあらわれたビート信号の所定時間内のゼロクロス点の数を計数し、その計数値に基づいて、光ファイバへの信号光の入射点と反射点との間の距離、すなわち、光ファイバの断線が生じた位置を見つけようというものである。このOFDRは、受光信号のゼロクロス点を計数するという方式をとっており、これがうまく機能するには信号光の反射点は一箇所である必要あり、受光信号に複数の周波数成分が含まれている時は距離は求められない。また、このOFDRは、レーザ光の周波数変調幅が極めて狭いレーザ光しか入手できないときに案出されたものであって、数メートルもの距離誤差を含み、したがって本発明のような散乱媒質を含む被検体の物性計測には適用不能である。
【0013】本発明は、近年のレーザの発達により光周波数の変調幅の大きなレーザが出現してきたことから、連続レーザ光を用いたときに時間分解能が得られないという従前のへテロダイン法の欠点を克服した、新たな光計測装置に想到したのである。すなわち、本発明の光計測装置は、光周波数変調(Frequency Modulation;FM)を導入することによって高い距離分解能を可能にし、連続出力のレーザ光源を用いた光へテロダイン検出イメージング法(例えば、M.Toida,M.Kondo,T.Ichimura,H.Inaba,“Electronics Letters”,vol.26,700(1990)参照)では実現できなかった、コヒーレント性を持った散乱光と直進光とを分離する能力が付与された光計測装置を実現させたのである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の光計測装置の第1実施形態の構成図、図2は各種波形図である。レーザ光源11は、周波数変調駆動部20により駆動され、図2(A)に示すような、光周波数fが時間的に周期Tmで鋸歯状に変化するレーザ光11aを出射する。レーザ光源11から出射されたレーザ光11aは、ビームスプリッタ12により、信号光11bと参照光11cとに二分される。それら信号光11bと参照光11cのうちの信号光11bは、全反射プリズム13で反射され、さらにミラー14で反射され、被検体載置台15に載置され光散乱体100に入射する。その光散乱体100を透過した信号光はビームスプリッタ16で反射し光検出器18に入射する。全反射ミラー13は、図1に示す矢印A−A方向に移動自在に備えられており、全反射プリズム13をA−A方向に移動させることにより信号光11aの光路長を調整することができる。また、被検体載置台15も矢印A−A方向に移動自在に備えられており、この被検体載置台15を矢印A−A方向に移動させると、そこに置かれた被検体100もA−A方向に移動し、被検体100が信号光11bによって矢印A−A方向に走査される。
【0015】一方、ビームスプリッタ12において信号光11bと分かれた参照光11cはミラー17で反射しビームスプリッタ16で信号光と重畳されて光検出器18に入射する。信号処理部19では、光検出器18で得られた受光信号の中からある特定の中心周波数を持った信号成分を抽出することにより直進光成分のみを抽出して図示しない画像表示部に直進光強度分布画像を表示させたり、受光信号を複数の周波数成分に分離し、それに基づいて光散乱体100の密度分布を求める。
【0016】図1に示されているマッハ・ツェンダ型干渉計において、被検体載置台15に光散乱体100を置かずに、全反射プリズム13の位置を調整して信号光の光路長が参照光の光路長よりΔdだけ長くなるようにすると、光検出器18に到達する2つの光ビームの光周波数は、光伝搬時間差Δt=Δd/c(c:光速)に起因して、周波数差が生じることになる(図2(B))。すなわち、図2(B)に示されるように、鋸歯状波の周波数変調の下がりの近傍の時間幅τの部分を除いて、参照光の光周波数fr は、信号光の光周波数fs よりも、fr −fs =δf=f’Δt=(Δf/Tm )・(Δd/c)
だけ高まる。
【0017】上記のような光周波数差δfを持つ2つの光ビームが重畳され、光検出器18によって光へテロダイン検出されると、よく知られているように、光へテロダイン信号ih は、中間周波数がδfに等しい交流信号として検出される。
h =K・Er・Es・cos(2π・δf・t+Δφ) ……(1)
ここで、ErとEsは、それぞれ参照光と信号光の電界振幅、Δφは位相差、Kは、検出効率を含めた定数である。
【0018】光ヘテロダイン信号の振幅と周波数の時間変化をそれぞれ図2(C)と図2(D)に示す。図1に示す方式における距離分解能と周波数変調幅との関係は以下のとおりである。信号光と参照光の光路長差Δd1 に対し、光へテロダイン信号の中間周波数fh1h1=(df/dt)・(Δd1 /c) ……(2)
図2(A)から(df/dt)=(Δf/Tm
を式(2)に代入してh1=(Δf/Tm )(Δd1 /c) ……(3)
同様に、光路長差Δd2 に対して fh2=(Δf/Tm )(Δd2 /c) ……(4)
したがって、本方式において、参照光との光路差がそれぞれΔd1 とΔd2 の経路を経由した各信号光を同時に検出したへテロダイン信号の中間周波数fh1とfh2の間に、Δfh12 =|fh1−fh2|の周波数差がある。式(4)から Δfh12 =(Δf/Tm ・c)Δd12 ……(5)
ただし、Δd12=|Δd1 −Δd2 |一方、測定時間Tm に対して、フーリエ変換の原理から測定が可能な最小の周波数シフト量Δfmin はΔfmin =1/Tm であるので、式(5)から、本方式における距離分解能Δdmin は、 Δdmin =Δfmin /{(Δf)/(Tm ・c)}
=(1/Tm )×{(Tm ・c)/(Δf)}
=c/Δf ……(6)
すなわち、距離分解能は、変調周波数の幅Δfに逆比例するが、周波数の変調レートには依存しないことが分る。ただし、Δfを一定とし、変調レートを高くすること、すなわち、Tm を短くすることは、測定時間を短縮することになり好ましい。
【0019】変調周波数幅Δfを波長同調(チューリング)量Δλに換算する式、Δλ=Δf・(λ2 /c)、すなわち、Δf=(cΔλ)/λ2を、式(6)に代入すると、 Δdmin =λ2 /Δλ ……(7)
式(7)から分るように、距離分解能Δdmin は、波長同調量Δλに逆比例することが分る。一方、コヒーレント光源の可干渉距離(コヒーレンス長)dc は、dc ≒λ2 /Δλ(ただし、Δλは光源のスペクトル半値幅)であり、また低いコヒーレンス光源(Δλ>>10nm)を用いた光へテロダイン方式イメージング実験では画像の光伝搬方向の距離分解能はほぼdc に等しいこと(K.P.Chan,M.Yamada,H.Inaba,“Applied Physis”B,vol63,249(1996)参照)から、本発明における距離分解能は、低いコヒーレンス光源を用いたものと等価的に等しいことも明白である。
【0020】以下に、具体的数値例を示す。市販品の波長可変半導体レーザは、例えばNew Focus社製モデル6316は、中心波長850nmの半導体レーザであって、1秒間に7nmの波長同調、周波数に換算すると(換算式Δf=(c・Δλ)/λ2 )、70×40GHz/秒=2.8×1012Hz/秒が可能である。式(6)からΔdmin は約100μmと計算される。また、固体レーザ、例えば、Cr:LiSAFレーザは、最大100nmの波長同調が可能であることが報告されている(田口、井原、常包、陳、デバラジ、稲場“レーザー研究”,vol.23,864(1995)参照)。この固体レーザを用いれば、図1に示す装置に、約10μmの距離分解能を持たせることが可能である。
【0021】図1の装置を用いて、光路長差Δdの変化に伴う光ヘテロダイン信号の中間周波数の変化を測定した。波長1.064μmの半導体レーザ(出力50mW)に注入電流による直接周波数変調を行ない、約300GHz/msecの変調レートが得られた。図3(A)と図3(B)にそれぞれΔd=55mmとΔd=70mmにおいて測定したへテロダイン信号の時間波形を示す。光路長差1mmに対して、中間周波数が約1kHz異なっていることが分る。
【0022】図3(A)に示すΔd=55mmの場合、h =58.3kHzが検出され、また図3(B)に示すΔd=70mの場合、fh =72.5kHzが検出された。図3(A)、(B)のそれぞれの上部には、10kHzの電流変調に時間波形も示されている。
【0023】図1のレーザとして、中心波長1550nm、連続波長同調(チューニング)幅70nmの、市販品の広帯域波長可変半導体レーザ(米国New Focus社製、モデル6328)を用い、波長同調レートを20nm/secとして、また、波長同調領域を1550−1560nmの10nm間と一定にして、光路差の変化に伴う光へテロダイン信号の中間周波数の変化を測定した。
【0024】図4は、測定した光へテロダイン信号のフーリエ変換の結果を示す図である。ここには、光路長差Δdが、それぞれΔd=6mm,10mm,14mmのときの光へテロダイン信号の周波数分布が示されている。フーリエ変換は0.5秒間に記録した光へテロダインの時間信号について行なった。このように、各光路差に対して、光へテロダイン信号の周波数シフト量を読み取ることができるほかに、離散的ないし連続的な周波数分布が生ずる場合では、周波数分解能の制限内で、これら周波数成分を分離することも可能である。
【0025】図5は、上記方法で測定した、光路長差に対する周波数シフト量を示すグラフである。この図5から、光路長差1mmに対して、周波数シフト量は8.2Hzであることが分る。この実験は広帯域の波長同調が目的であり、波長同調は高速には行なわれていない。同調レートは20nm/secであり、式(5)から、Δfh12 /Δd12=8.27Hz/mmと計算され、実験結果と一致することが分った。また、図4と図5から、本実験における距離分解能は約250μmであり、式(7)による計算値(Δdmin =(1555nm)2 /10nm=242μm)によく一致することも実証された。
【0026】図6は、光散乱体内を伝播する光の光路の模式図(A)、および光路長差と周波数差との関係を示すグラフ(B)である。図6(A)に示すように、光散乱体に入射した光は四方八方に散乱しながらその光散乱体内を伝播するが、直進光aおよび散乱を受けながらも前方へ伝播する散乱光b,cの一部は入射光の時間コヒーレンスを保っていることが既に指摘されている(K.P.Chan, M.Yamada, H.Inaba, ’Applied Physics B’, vol63,249(1996)参照)。
【0027】本発明を用いれば、図6(B)に示されているように、散乱光b,cは直進光aとくらべて長い光路を経由し、その光路の長さに応じて参照光との間の光路長差が大きくなり、従って、散乱光と参照光の光周波数差が大きくなる。このように光散乱による光路差、すなわち光伝播時間差を光ヘテロダイン検出法に利用することによって、光伝播時間差をヘテロダイン信号の周波数に転換させることが可能であり、周波数軸上での信号処理を行えば、各光信号成分を互いに分離することが可能となる。
【0028】ここで、光散乱体の密度は、以下のようにして求められる。受光光量をD、密度をN,吸収断面積をσ、光散乱体内での光路長をL、比例定数をAとしたとき、 D=A・exp(−σ・N・L) …(8)
の関係が成り立つ。ここで、吸収断面積σは物質毎に既知であるが、光散乱体の場合、各散乱光ごとにLが異なるため、Lが不定であり、比例定数Aも不明であり、受光光量Dを測定しても密度Nを求めることはできない。
【0029】図1に示す装置によれば、各光路長L1 ,L2 ,L3 …毎の受光光量D1 ,D2 ,D3 ,…が求められるため、D1 =A・exp(−σ・N・L1
2 =A・exp(−σ・N・L2
3 =A・exp(−σ・N・L3
……………………が求められ、これらを連立させ、あるいは最小二乗近似することにより、密度Nを求めることができ、光散乱体100を図1に示す矢印A−Aに沿って移動させながら、各点の密度N(一次元的な密度分布)を求めることもできる。さらに、図1に示す被検体載置台15を、図1の紙面に垂直な方向にも移動可能に構成すると、光散乱体100の二次元的な密度分布もを求めることができる。
【0030】図7は、本発明の光計測装置の第2実施形態の構成図である。図1に示す第1実施形態との相違点について説明する。被検体載置部15は、図7に示す矢印B−B方向に回転自在に構成されており、ミラー14で反射した信号光はビームエキスパンダ21により二次元的にそのビーム径が拡大される。光散乱体100を透過した信号光はリレーレンズ22により二次元的に広がった状態でビームスプリッタ16に入射する。
【0031】一方、参照光11cも、ビームスプリッタ23で二次元的にそのビーム径が拡大されてビームスプリッタ16に入射し信号光と重畳される。光検出器18は、二次元的に配列された複数の受光素子18aからなり、この光検出器18では、信号光と参照光とが重畳してなる干渉光の、二次元的な強度分布が得られる。信号処理部19では、被検体載置台15が矢印B−B方向に少しずつ回転する間の、光検出器18で得られた受光信号に基づいて、光散乱体100の立体的な光CT画像が求められる。光CT画像の求め方のアルゴリズムは広く知られており、ここでの主題でもないので説明は省略する。
【0032】この図7に示すように、ビームを広げて一度に複数点の受光を行なうことにより、計測時間を短縮することができる。図8は、本発明の光計測装置の第3実施形態の構成図である。レーザ光源11から出射したレーザ光11aは、入射レンズ31を経由して光ファイバ32に入射し、ファイバカップラ33により、信号光と参照光とに二分される。信号光は、光ファイバ34を経由して出射レンズ35から出射し、全反射プリズム13を経由し、入射レンズ36を経由して光ファイバ37に入射し、さらに光ファイバ37内を伝達して出射レンズ38から出射し、光散乱体100に入射する。被検体100から出射した信号光は、入射レンズ39を経由して光ファイバ40に入射しファイバカップラ41に至る。一方、参照光は、光ファイバ42を経由してファイバカップラ41に至る。信号光と参照光はファイバカップラ41にで互いに重畳されて光検出器16に入射する。
【0033】この図8に示すように、光ファイバを使って本装置を構成してもよい。この場合、コンパクトな装置を構成することができる。尚、上記各実施形態では光散乱体の計測を例に挙げて説明したが、本発明は、光散乱体以外にも、透明体ないし、吸収による光伝送損失の大きい被検体に対しても適用できることは明白である。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、連続発振レーザを用いる光ヘテロダイン検出法では従来不可能であった、直進透過光成分とコヒーレンスを保った散乱光成分とを互いに分離することができ、被検体の様々な物性計測に適用することができる。
【出願人】 【識別番号】393012286
【氏名又は名称】株式会社生体光情報研究所
【出願日】 平成9年(1997)9月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀 (外1名)
【公開番号】 特開平11−108763
【公開日】 平成11年(1999)4月23日
【出願番号】 特願平9−266504