| 【発明の名称】 |
回転機械系システムの異常音検出装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】菅家 正康
【氏名】東川 仁
|
| 【要約】 |
【課題】回転体の過渡時にも明確な異常音を検出できる。
【解決手段】回転体の近傍に設けられたマイクからなる第1検出部11で回転体の音圧のデータを得る。回転体の回転数を第2検出部12で検出し、検出データはパルス間隔抽出部13に入力され、その出力に回転数に比例したパルスを得る。このパルスは同期検出部14に入力され、第1検出部11で検出した音圧データをサンプリングする際に、第2検出部12から得られたパルスの間隔に同期して第1検出部11で検出された音圧データをサンプリングしてサンプリングデータを得る。このサンプリングデータはサンプリングデータ抽出部15で抽出され、そのサンプリングデータはデータ入力部16、データ格納部17を介して判定処理部18に入力される。この判定処理部18でデータの処理が行われて、接線の平行度の評価が行われ、ノイズが加わったデータであるかが判定結果部19で識別されて出力部20に出力される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象とする回転機械系システムに設けられた音圧データを検出する第1検出部と、回転機械系システムの回転数を検出する第2検出部と、第2検出部で検出された回転数をパルス出力に変換し、そのパルス間隔を抽出するパルス間隔抽出部と、この抽出部で抽出されたパルス間隔に同期して第1検出部で検出された音圧データをサンプリングする同期検出部と、この同期検出部で検出されたサンプリングデータを抽出するサンプリングデータ抽出部と、この抽出部で抽出されたサンプリングデータを取り込むデータ入力部と、このデータ入力部に取り込まれたサンプリングデータを格納するデータ格納部と、このデータ格納部に格納されたデータからn次元状態空間に埋め込まれた軌道の接線が導出され、接線の平行度の評価を行ってその判定処理をする判定処理部と、この判定処理部により判定された接線の平行度の判定値から確率過程によるランダムノイズが加わったデータであるかを識別する判定結果部とを備えたことを特徴とする回転機械系システムの異常音検出装置。 【請求項2】 前記判定処理部は対象とする回転機械系システムからのサンプリングデータが入力され、サンプリングデータをある次元と遅れにてn次元状態空間に埋め込み処理を行うサンプリングデータの埋め込み処理部と、この処理部で埋め込み処理されたデータを入力し、その中から所望のデータベクトルを選択するデータベクトル選択部と、このデータベクトル選択部で選択されたデータベクトルに近い近傍ベクトルを検出する近傍ベクトル検出部と、前記データベクトル選択部と近傍ベクトル検出部で検出されたベクトルの軌道に対する接線方向を導出し演算する接線方向演算部と、この接線方向演算部で演算された接線方向の平行度が入力され、この平行度を評価する平行度評価部と、統計的誤差をなくすために平行度評価部で評価された平行度の平均を求め、それが「0」に近づく程、決定論に基づくサンプリングデータであると判定し、「1」に近づく程、確率過程に基づくサンプリングデータであると判定する平行度判定部とからなることを特徴とする請求項1記載の回転機械系システムの異常音検出装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、モータやギア等の回転機械系システムの異常音検出装置に関する。 【0002】 【従来の技術】例えば、上記回転機械系システムの軸振動異常音等を検出する際に、システムから決定論に基づいた時系列データとランダムノイズのような確率過程に基づいた時系列データが合成されて検出器で検出される。これら時系列データのうち、一見するとランダムに見える時系列データでも決定論に従ったものが多くある(決定論的カオス)。このような決定論的カオス系のダイナミクスは、ランダムノイズがわずかに加わった時(すなわち、僅かな異常が発生した時)には、表面上明確な違いが見られない。上記時系列データの特徴判定方法には、一般にFFT解析法が使用されるが、決定論的カオス系のダイナミクスの場合、それを構成する周波数成分が無限になるので、明確な周波数抽出が不可能となる。 【0003】図9はFFT等のスペクトル解析による周波数の特徴を抽出する方法のフローチャートで、まず、システムからの時系列データを、検出器で検出してステップS1でデータを得る。ステップS1で得られたデータは、ステップS2でFFTによりスペクトル解析される。このFFTによるスペクトル解析結果から特徴のある周波数をステップS3で選定する。このようにして選定した値と、正常な場合のデータで予めFFTによるスペクトル解析を行ったときの解析値とを、ステップS4で比較し、その比較結果からステップS3で選定した値が正常か異常かの判定を行う。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記のように時系列データをFFT等のスペクトル解析により周波数の特徴を抽出する方法では、決定論系に基づいた時系列データであるか、確率過程系の時系列データであるかの識別ができない場合がある。例を示すと、決定論的カオスの時系列データとして代表的なレスラーカオス時系列データ特性図(図10a、図11a)と、その時系列データに確率過程系の要素(ホワイトノイズ10%)を加えたレスラーカオス時系列データ特性図(図10b、図11b)で比較し、FFTによるスペクトル解析を行った結果、ノイズを加えた時系列データとノイズを加えない時系列データとのFFTによるスペクトル解析結果を比較しても図12a,b、図13a,bに示す特性図のように明確な差異は選られない。このため、決定論系の時系列データと確率過程系の時系列データとの識別は極めて困難である。この結果、回転機械系システムの軸振動異常音等を検出する際に、FFTによるスペクトル解析を行っても明確に、軸振動の異常音を検出できない問題がある。 【0005】また、回転機械系システムにおける回転体が一定回転のときには、決定論系の時系列データを得るためにサンプリングを行っても、一定のサンプリングデータが得られる。このために、データベクトルの軌道は過去のデータのデータベクトルの近傍を通過するので、このデータを用いれば回転体の異常音を明確に検出できる。しかし、回転体の過渡時(回転数の上昇、下降時)に決定論系の時系列データを得るためにサンプリングを行っても、例えば図14Aに示す回転数上昇時のときのサンプリングデータで図14Bに示すように埋め込みを行ってもデータベクトル軌道が過去のデータによるデータベクトルの近傍を通らないために、明確な回転体の異常音を検出できない問題がある。 【0006】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、決定論に基づいた時系列データと、ランダムノイズのような確率過程に基づいた時系列データとの識別が確実にできるとともに、回転体の過渡時にも明確な異常音を検出できる回転機械系システムの異常音検出装置を提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を達成するために、第1発明は、対象とする回転機械系システムに設けられた音圧データを検出する第1検出部と、回転機械系システムの回転数を検出する第2検出部と、第2検出部で検出された回転数をパルス出力に変換し、そのパルス間隔を抽出するパルス間隔抽出部と、この抽出部で抽出されたパルス間隔に同期して第1検出部で検出された音圧データをサンプリングする同期検出部と、この同期検出部で検出されたサンプリングデータを抽出するサンプリングデータ抽出部と、この抽出部で抽出されたサンプリングデータを取り込むデータ入力部と、このデータ入力部に取り込まれたサンプリングデータを格納するデータ格納部と、このデータ格納部に格納されたデータからn次元状態空間に埋め込まれた軌道の接線が導出され、接線の平行度の評価を行ってその判定処理をする判定処理部と、この判定処理部により判定された接線の平行度の判定値から確率過程によるランダムノイズが加わったデータであるかを識別する判定結果部とを備え、第1検出部と第2検出部を設けたので、回転機械系システムの加速又は減速中であってもサンプリングデータは見かけ上一定となる。このため、回転機械系システムの異常音を確実に検出できるようになる。 【0008】第2発明は、判定処理部が対象とする回転機械系システムからのサンプリングデータが入力され、サンプリングデータをある次元と遅れにてn次元状態空間に埋め込み処理を行うサンプリングデータの埋め込み処理部と、この処理部で埋め込み処理されたデータを入力し、その中から所望のデータベクトルを選択するデータベクトル選択部と、このデータベクトル選択部で選択されたデータベクトルに近い近傍ベクトルを検出する近傍ベクトル検出部と、前記データベクトル選択部と近傍ベクトル検出部で検出されたベクトルの軌道に対する接線方向を導出し演算する接線方向演算部と、この接線方向演算部で演算された接線方向の平行度が入力され、この平行度を評価する平行度評価部と、統計的誤差をなくすために平行度評価部で評価された平行度の平均を求め、それが「0」に近づく程、決定論に基づくサンプリングデータであると判定し、「1」に近づく程、確率過程に基づくサンプリングデータであると判定する平行度判定部とからなるものである。 【0009】 【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態を示すブロック構成図で、図1において、11は対象とする図示しない回転体の近傍に設けられたマイクロフォンからなる第1検出部で、この第1検出部11で図2Aに示す回転体の時間tに対する音圧のデータを得る。12は図示しない回転体に設けられた回転体の回転数を検出する第2検出部で、この第2検出部12で検出された回転数検出データ(図2Bに示す)はパルス間隔抽出部13に入力され、その出力に回転数に比例したパルスに変換される。変換されたパルス出力データは同期検出部14に入力される。同期検出部14では、第1検出部11で検出した音圧をサンプリングする際に、第2検出部12で得られたパルス出力データのパルス間隔に同期して、前記第1検出部11で検出された回転体の音圧データを、図2Aに示すサンプル点でサンプリングしてサンプリングデータを得る。このようにして得られたサンプリングデータ(時系列データ)をサンプリングデータ抽出部15で抽出する。このようにして抽出したサンプリングデータのデータベクトルの軌道は過去のデータによるデータベクトルによる近傍を通過するようになる。 【0010】抽出されたサンプリングデータ(時系列データ)はデータ入力部16に取り込まれる。取り込まれたサンプリングデータ(時系列データ)はデータ格納部17に格納される。格納されたデータは判定処理部18に入力され、この判定処理部18で詳細を図3に示すような手段や各部で処理が行われて、データベクトルから後述するように接線が導出され、接線の平行度の評価が行われて平行度が判定される。この接線の平行度の判定値からノイズが加わったデータであるかが判定結果部19で識別される。この判定結果部19で識別された結果は、出力部20に送られて監視装置などに明示されるとともに、判定結果格納部21に格納される。 【0011】接線の平行度を評価するためには、音圧から得たサンプリングデータが回転体の一定の回転時に得られたデータで行わなければならないが、上記のように第1、第2検出部11、12を使用することにより、この評価が可能になり、回転体の過渡時の異常音の検出できるようになる。 【0012】図3は判定処理部14の詳細なブロック構成図で、図3において、21は対象とするシステムから時系列データを得る手段で、この手段21で得られた時系列データは時系列データの埋め込み処理部22に入力される。この処理部22では時系列データをある次元と遅れにて埋め込み処理を行う。ただし、次元と遅れは、対象とするシステムによって事前に設定する。処理部22で埋め込み処理されたデータはデータベクトル選択部23に入力され、ここで、詳細を後述する図4に示すように、ランダムにデータベクトルXiを選択する。データベクトルXiが選択されたなら、次に近傍ベクトル検出部24でデータベクトルXiに近い近傍ベクトルXj点を検出する。 【0013】25は接線方向演算部で、この演算部25ではデータベクトルXiと近傍ベクトルXjのトラジェクトリに対する接線方向TiとTjを導出する。導出された接線方向TiとTjは平行度評価部26に入力されて、TiとTjとの平行度が評価(平行度が高いほど0となる)される。平行度評価部26においての接線方向TiとTjとの平行度が設定された標本数(N個分)に達しているかを判断部27で判断し、達していなかったならデータベクトル選択部23から処理を再び行う。設定された標本数に達していたなら、平行度の平均を平行度判定部28で求めてそれが平均以上なら決定論に基づく時系列データであると判定し、平均以下なら確率過程に基づく時系列データ、すなわちランダムノイズであると判定する。 【0014】図4はアトラクタ(アトラクタについては特開平7−239838号などで詳述されているので、ここでは説明を省略する)の局所的特徴を示す説明図で、この図4に示すn次元状態空間に埋め込まれた時系列データの任意のデータベクトルは図5に示すような構成手段により得られる。 【0015】図5において、図4に示すn次元状態空間に埋め込まれた時系列データの任意のデータベクトルはデータベクトルXi検出手段1で得る。2はその近傍空間内(図4に示す)での、データベクトルXj(j;m個(事前に設定))の軌道(トラジェクトリ)に対する接線の方向Ti,Tjを得る接線方向検出手段である。この接線方向検出手段2で得られた接線方向がほぼ同一であるか、否であるかを判定手段3で判定する。この判定結果で、同一なら理想的な決定論に基づく時系列データであるとし、否であるなら図6に示すようにシステムに異常が加わった、すなわちランダムノイズ印加で接線方向がランダムになり確率過程に基づく時系列データであると分離識別手段4で分離識別される。 【0016】ここで、一例として、決定論的カオスの時系列データである代表的なレスラーカオスと、その時系列データに確率過程系の要素としてホワイトノイズを加えたデータで比較する。ノイズの影響を受けていないデータを埋め込んだときのアトラクタグラフは図7に示すような軌道を描く。しかし、ノイズの影響を受けたデータのときのアトラクタグラフは図8に示すように軌道が支離滅裂になる。この結果、図7から明かのように、ノイズの影響を受けないデータでは、埋め込まれたアトラクタの一部分を見るとそれぞれのデータが同じ方向に流れていることが判る。 【0017】 【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、回転体の過渡時にも明確な異常音を検出できるようになるとともに、少ないパラメータ(埋め込み次元、遅れ、近傍数/標本数)の設定により、時系列データの性質として決定論系と確率過程系とを分離識別が可能となる。これにより極めて早期に異常を検出することができるようになる。なぜなら、正常時は設計通りの動作により決定論的挙動が支配的であるが、異常が発生すると確率過程に基づくランダムノイズが重畳されるため、上記のような指標を用いると、極めてわずかなランダムノイズにも敏感に反応するようになる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006105 【氏名又は名称】株式会社明電舎
|
| 【出願日】 |
平成9年(1997)7月4日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】志賀 富士弥 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開平11−23360 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)1月29日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−178756 |
|