トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 波高計測方法及び装置
【発明者】 【氏名】後川 理

【要約】 【課題】計測波面を容易に特定し得て精度良く計測を行うことができ、しかも、夜間や暗闇での計測も可能にした波高計測方法及び装置を提供する。

【解決手段】一対のレーザ発振器1,1から可視レーザ光L,Lを波面Wに向け交差するように照射し、両レーザ発振器1,1を俯仰動作させることにより交差点P1を波面Wの上下変化より早く上下方向に走査して波面Wを識別し、これによって、識別される波面Wの上下位置の時間変化を時刻と共にビデオカメラ2で画像に記録し、その記録した画像データに基づき画面上での波面Wの上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求め、この点列データから波高及び波長を計測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 定点から可視レーザ光を波面に向け照射し、その可視レーザ光を波面の上下変化より早く上下方向に走査して波面を識別し、これによって、識別される波面の上下位置の時間変化を時刻と共に画像に記録し、その記録した画像データに基づき画面上での波面の上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求め、この点列データから波高及び波長を計測することを特徴とする波高計測方法。
【請求項2】 可視レーザ光を波面に向け照射し且つその可視レーザ光を上下方向に所定の周期で走査し得るよう俯仰するレーザ発振器と、該レーザ発振器からの可視レーザ光の照射により識別される波面の上下位置の時間変化を時刻と共に撮像する撮像装置と、該撮像装置により撮像された画像データに基づき画面上での波面の上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求めて該点列データから波高及び波長を計測する演算装置とを備えたことを特徴とする波高計測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可視レーザ光を用いた非接触式の波高計測方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来において、波の高さ及び波長を計測する手段としては、例えば、波面の直上位置から垂直にレーザ光またはマイクロ波を照射し、その反射波が戻ってくるまでの時間に基づいて波面までの距離を計測することにより波面の時間変化を計測する方法や、ステレオカメラによる二つの異なる位置の画像から計測波面を特定して波面の時間変化を計測する方法などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のようにレーザ光またはマイクロ波により計測を行う場合には、波面の直上位置に計測装置を配置しなければならなかった為、この計測装置を海上に張り出して支持する支持体に反射した波が計測位置の波面に影響を及ぼし易く、計測誤差が生じ易いという不具合があった。
【0004】また、ステレオカメラにより画像計測を行う場合にあっては、特長の少ない二つの波の画像から計測波面を特定することが困難である為に計測精度に問題があり、しかも、夜間や暗闇での計測が不可能であるという不具合もあった。
【0005】本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、計測波面を容易に特定し得て精度良く計測を行うことができ、しかも、夜間や暗闇での計測も可能にした波高計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、定点から可視レーザ光を波面に向け照射し、その可視レーザ光を波面の上下変化より早く上下方向に走査して波面を識別し、これによって、識別される波面の上下位置の時間変化を時刻と共に画像に記録し、その記録した画像データに基づき画面上での波面の上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求め、この点列データから波高及び波長を計測することを特徴とする波高計測方法、に係るものである。
【0007】このような波高計測方法によれば、定点から照射される可視レーザ光を、その照射方向に対し交差する所定方向から画像に記録することにより、実空間座標に任意点を特定することが可能となり、前記可視レーザ光を波面の上下変化より早く上下方向に走査させると、空気と水の屈折率の差により可視レーザ光の輝度などが波面に対し出没する位置で大きく変化するので、これによって、波面の位置が可視レーザ光の映像的な変化として特定されることになる。
【0008】そして、このような可視レーザ光の映像的な変化として識別される波面の上下位置の時間変化を時刻と共に画像に記録し、その記録した画像データに基づき画面上での波面の上下位置を実空間座標に変換して座標値の点列データを求めると、この点列データの最大値が波高として得られ、ある最大値から次の最大値までの間の時間差が波長として得られる。
【0009】また、本発明は、可視レーザ光を波面に向け照射し且つその可視レーザ光を上下方向に所定の周期で走査し得るよう俯仰するレーザ発振器と、該レーザ発振器からの可視レーザ光の照射により識別される波面の上下位置の時間変化を時刻と共に撮像する撮像装置と、該撮像装置により撮像された画像データに基づき画面上での波面の上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求めて該点列データから波高及び波長を計測する演算装置とを備えたことを特徴とする波高計測装置、にも係るものである。
【0010】このような波高計測装置によれば、レーザ発振器から照射される可視レーザ光を、その照射方向に対し交差する所定方向から撮像装置で撮像することにより、実空間座標に任意点を特定することが可能となり、レーザ発振器を俯仰動作させることにより前記可視レーザ光を波面の上下変化より早く所定の周期で上下方向に走査させると、空気と水の屈折率の差により可視レーザ光の輝度などが波面に対し出没する位置で大きく変化するので、これを撮像装置により撮像すれば、可視レーザ光の映像的な変化として識別される波面の上下位置の時間変化が時刻と共に画像に記録され、その記録した画像データに基づき演算装置にて画面上での波面の上下位置が実空間座標に変換されて座標値の点列データが求められ、この点列データの最大値が波高として得られ、ある最大値から次の最大値までの間の時間差が波長として得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】図1〜図9は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1は本発明に係る波高計測装置の全体構成を概略的に示すもので、図中1,1は互いに所定の距離2lを隔てて離間する所定高さhの二つの定点A,Bに夫々設置されたレーザ発振器、2はこれら両レーザ発振器1,1間の中間位置lの所定高さeの定点Cに設置されたビデオカメラ(撮像装置)、3は前記両レーザ発振器1,1及びビデオカメラ2に夫々接続されて所要場所に配置された演算装置である。
【0013】前記両レーザ発振器1,1は、可視レーザ光L,Lを波面Wに向け交差するように照射し且つその交差点P1を鉛直方向に設定された後述する走査軸SS0上を上下方向に所定の周期で走査し得るよう俯仰可能に構成されており、一方、前記ビデオカメラ2は、前記走査軸SS0上の可視レーザ光L,Lの交差点P1の変動を撮像して時刻と共に画像に記録するようになっている。
【0014】また、前記演算装置3は、ビデオカメラ2により撮像された画像データに基づき画面上での波面Wの上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求め、該点列データから波高及び波長を計測し得るようになっている。
【0015】斯かる波高計測装置による波高及び波長(波周期)の具体的な計測手順について、一方の定点Aに設置したレーザ発振器1から照射される可視レーザ光Lを主体として以下に詳述するが、他方の定点Bに設置したレーザ発振器1から照射される可視レーザ光Lも同様に説明できるものであり、この定点Bからの可視レーザ光Lについての説明は省略する。
【0016】図2に示すように、固定点Oを全体座標系の原点とし、この固定点Oから計測すべき波面Wに向かう方向へ平水面と平行にX軸を取り、該平水面と直交する鉛直方向にY軸を取り、平水面と平行面でX軸と直交する右手系の方向にZ軸を取った場合に、レーザ発振器1が設置される定点Aの空間座標(X,Y,Z)は、X=0,Y=h,Z=lとなり、また、ビデオカメラ2が設置される定点Cの空間座標(X,Y,Z)は、X=0,Y=e,Z=0となる。
【0017】そして、原点OからX軸方向にcだけ離れた位置の空間座標(X=c,Y=0)上の点S0と、このS0点からY軸方向にhの高さ位置の空間座標(X=c,Y=h)上の点Sとを結ぶY軸に平行な線SS0を走査軸として設定し、この走査軸SS0上の点P(Y=d)を平水面とし、点Q(Y=d+w)を波面Wの位置として、走査軸SS0を狙って照射される可視レーザ光Lの発光角度(俯仰傾斜角:α)を上下方向に変動させる。
【0018】一方、図3に示すように、ビデオカメラ2の画面座標の水平方向の中心位置が走査軸SS0に合うようにし、その垂直方向の中心位置が走査軸SS0上のP点の平水面に合うようにカメラレンズの方向を予め調整しておく。尚、図4は可視レーザ光Lの発光角度(α)と実波高の関係を示すもので、点A0は原点OからZ軸方向にlだけ離れた位置、即ち、レーザ発振器1が設置される定点AのZ軸上の点、bはZ軸上のA0点からX軸上のS0点までの距離(b=√(c2+l2))である。
【0019】このような設定条件を下にし、A点での可視レーザ光Lの発光角度(α)を時間(t)に対して正弦波で周期的に変動させると、傾斜角の時間ステップ(αi)は、下記のような(1)式になる。
【0020】
【数1】

【0021】また、上記(1)式において、1周期の時間分割数をnsとすると、下記のようになる。
【0022】
【数2】

【0023】そして、上記(1)式における最大設定振幅に対応する傾斜角(a)は、図4に示す可視レーザ光Lの発光角度(α)と実波高の関係から下記のような(2)式により計算でき、この計算式に基づいて可視レーザ光Lの走査が行われる。
【0024】
【数3】

【0025】図5は可視レーザ光Lと波面Wとの関係を示すものであり、図5(A)は平面AA0SS0内における可視レーザ光Lの発光角度(α)の変動を側面から見た状態を示し、図5(B)は同じく上面から見た状態を示し、この場合、波面Wが説明の便宜上から水平であるとすると、走査軸SS0を狙って照射されるレーザ発振器1からの可視レーザ光Lの発光角度(α)が、走査軸SS0上の点Q(Y=d+w)で接する波面Wの位置を基準として小さい場合に、走査軸SS0より外側の位置で波面Wに接し、また、可視レーザ光Lの発光角度(α)が大き過ぎる場合には、可視レーザ光Lは走査軸SS0より内側の位置で波面Wに接する。このとき、可視レーザ光Lは、A点から空中を通過中は直進して輝度も大きく、波面Wの位置で水中に突入すると、屈折して輝度も小さくなる。
【0026】この可視レーザ光Lの波面Wの挙動による輝度の変化は、ビデオカメラ2により撮像され、その画像は、先に図3に示したビデオカメラ2の画面座標に、図6(A)〜(C)に示す如く画像として表示される。尚、図6(A)は可視レーザ光Lが走査軸SS0より外側の波面位置で接する状態、図6(B)は可視レーザ光Lが走査軸SS0上の波面位置で接する状態、図6(C)は可視レーザ光Lが走査軸SS0より内側の波面位置で接する状態における可視レーザ光Lの変動時間ステップに合わせた時刻の画面を示す。
【0027】そして、このような可視レーザ光Lの変動時間ステップに合わせた時刻の画面から、画面の下の方から水平方向に走査して、可視レーザ光Lの輝度の大きい二点(a1,a2)を検出し、直線(la)を算出する。また、画面の上の方から水平方向に走査して、可視レーザ光Lの輝度の大きい二点(u1,u2)を検出し、直線(lu)を算出すると共に、これら直線(la)と直線(lu)との交点を求め、その画面座標系での交点の座標をx=xg、y=ygとする。このとき、図6(A)に示すような可視レーザ光Lが走査軸SS0より外側の波面位置で接する状態では、xg>x0、図6(C)に示すような可視レーザ光Lが走査軸SS0より内側の波面位置で接する状態では、xg<x0である。
【0028】ところが、図6(B)に示すように、可視レーザ光Lが走査軸SS0上の波面位置で接する状態を常に撮像されるとは限られない為に、図6(A)に示す可視レーザ光Lが走査軸SS0より外側の波面位置で接する状態から、図6(C)に示す可視レーザ光Lが走査軸SS0より内側の波面位置で接する状態へ変化する二つの状態から図6(B)に示すような可視レーザ光Lが走査軸SS0上の波面位置で接する状態を内挿して求め、その時の時刻をtq、y座標値をyqとし、これにより、画面上での波面位置と時刻の検出を行う。
【0029】図7は上記した走査軸SS0とビデオカメラ2の画面スクリーンの関係を示すもので、ビデオカメラ2のレンズと画面スクリーンとの間の距離をfとし、例えばレンズの特性で決まる定数をβ(図示の例では、β=1)とし、実波高をw、実波高に対応する画面上の波高をhgとした場合における関係式は、下記の(3)式及び(4)式のようになる。
【0030】
【数4】

【0031】
【数5】

【0032】また、図6(B)に示すような可視レーザ光Lが走査軸SS0上の波面位置で接する状態において、可視レーザ光Lの発光角度(αq )が分かれば、下記の(5)式から実波高(w)を計算することができる。
【0033】
【数6】
w=h−d−b・tan(αq ) (5)
【0034】図8は上記した走査軸SS0における可視レーザ光Lの変動と波面Wの位置の時間変化を示すもので、所定の周期で上下方向に走査する可視レーザ光Lの走査線sと計測すべき波が交差するときの時間tqiとの波面Wqiの点列データにより、波面Wqiの最大値と次の最大値を求めると、波高hwが得られ、その間の時間差が波長(波周期)twとして得られる。
【0035】また、図9は本発明に係る波高計測装置の演算装置3の制御フローを示すブロック図であり、先ず設定した周期の時間ステップにより可視レーザ光Lの発光角度(α)をレーザ発振器1,1の俯仰動作を制御して変動させる。このとき、ビデオカメラ2のシャッタ時刻は、必ずしも可視レーザ光Lの発光角度(α)の時間ステップと連動させる必要はないが、それに近い時間ステップで可視レーザ光Lと波の状態を撮像する。そして、このように撮像された画像を演算装置3の画面上に映し出し、上述したような方法により画面上での可視レーザ光Lの水面への突入位置を抽出する。これにより、可視レーザ光Lと波面Wが走査軸SS0上に来たときの時刻と画面上での上下位置を実空間座標に変換した座標値の点列データを求めると共に、この点列データから走査軸SS0上の上下運動の周期と振幅(波高)を求めるようになっている。
【0036】従って、上記形態例によれば、二つの定点から照射される可視レーザ光L,Lの交差点P1により、実空間座標に任意点を容易に特定することができ、しかも、この交差点P1を波面Wの上下変化より早く上下方向に走査させることによって、計測波面Wの位置を交差点P1の映像的な変化として正確に特定することができるので、このように交差点P1の映像的な変化として識別される波面Wの上下位置の時間変化を時刻と共に画像に記録し、その記録した画像データに基づき画面上での波面Wの上下位置を実空間座標に変換して座標値の点列データを求め、この点列データから波高及び波長を計測するようにすれば、波高計測装置から離れた位置にある波面Wを計測対象として、意図しない反射波の影響を計測波面Wに及ぼすことなく計測誤差の少ない計測を実現することができ、従来より計測精度を大幅に向上することができる。
【0037】また、夜間や暗闇において特に識別性が向上する可視レーザ光L,Lの照射により計測を行うようにしているので、従来におけるステレオカメラなどでは不可能であった夜間や暗闇での計測をも精度良く行うことができる。
【0038】尚、本発明の波高計測方法及び装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、形態例中では、一対のレーザ発振器を用いて二つの定点から可視レーザ光を波面に向け交差するように照射して実空間座標に任意点を特定するよう説明したが、図2以降を参照した説明において、一方の定点からの可視レーザ光の照射で説明ができているように、基本的には一つの定点から照射される可視レーザ光を、その照射方向に対し交差する所定方向から画像に記録するようにすれば実空間座標に任意点を特定することができるのであり、より具体的には、図6におけるx=x0の位置が画面座標の水平方向の中心位置となるよう撮像装置を設置することにより、一つの定点からの可視レーザ光の照射で実空間座標に任意点を特定することが可能となること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0039】
【発明の効果】上記した本発明の波高計測方法及び装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0040】(I)定点から照射される可視レーザ光を、その照射方向に対し交差する所定方向から画像に記録することにより、実空間座標に任意点を容易に特定することができ、しかも、前記可視レーザ光を波面の上下変化より早く上下方向に走査させることによって、計測波面の位置を可視レーザ光の映像的な変化として正確に特定することができるので、このように可視レーザ光の映像的な変化として識別される波面の上下位置の時間変化を時刻と共に画像に記録し、その記録した画像データに基づき画面上での波面の上下位置を実空間座標に変換して座標値の点列データを求め、この点列データから波高及び波長を計測するようにすれば、波高計測装置から離れた位置にある波面を計測対象として、意図しない反射波の影響を計測波面に及ぼすことなく計測誤差の少ない計測を実現することができ、従来より計測精度を大幅に向上することができる。
【0041】(II)夜間や暗闇において特に識別性が向上する可視レーザ光の照射により計測を行うようにしているので、従来におけるステレオカメラなどでは不可能であった夜間や暗闇での計測をも精度良く行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山田 恒光 (外1名)
【公開番号】 特開平11−304483
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−112034