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【発明の名称】 圧電振動ジャイロ
【発明者】 【氏名】田中 博文

【要約】 【課題】振動体の振動に呼応するリード線の共振による振動を抑圧して、コリオリ力に基づかない誤差信号が出力されることを防止した振動ジャイロを提供する。

【解決手段】振動体1の側面に圧電素子2、3、4が接着され、圧電素子2、3、4にはリード線2a、3a、4aが接続され、振動体1はノード部を支持部材5a、5bにより支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、リード線2a、3a、4aの全長に渡りポリパラキシリレン樹脂を被覆して、リード線2、3、4の共振による振動を抑え、リード線2a、3a、4aの振動が圧電素子2、3、4に作用して誤差信号が出力されることを防止した圧電振動ジャイロ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 振動体の側面に複数個の圧電素子が接着され、これらの圧電素子にはそれぞれリード線が接続され、前記振動体はノード部を支持部材に支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、真空成膜手段により、前記リード線、圧電素子および振動体が、ポリパラキシリレン樹脂により被覆されてなる圧電振動ジャイロ。
【請求項2】 振動体の側面に複数個の圧電素子が接着され、これらの圧電素子にはそれぞれリード線が接続され、前記振動体はノード部を支持部材に支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、前記リード線がその全長に渡りポリパラキシリレン樹脂により被覆されてなる圧電振動ジャイロ。
【請求項3】 振動体の側面に複数個の圧電素子が接着され、これらの圧電素子にはそれぞれリード線が接続され、前記振動体はノード部を支持部材に支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、前記リード線がその全長に渡り弾性体により被覆されてなる圧電振動ジャイロ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーナビゲーションシステム、カメラの手振れ防止装置などに使用される振動ジャイロに関する。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の振動ジャイロとして、特開平5−1916号公報に開示されている発明がある。この従来の振動ジャイロは、図5に示すように、正3角柱状の振動体11に圧電素子12を接着剤で接着し、この圧電素子12の外部電極にリード線13を弾性接着材14で取り付けたものであり、また、外部電極にリード線13を半田つけなどの通常の手段で接続し、このリード線13の一部にシリコーンなどの弾性接着剤14を塗布して、リード線13を振動体11に固定したものであり、この構成により、リード線13に伝わった外部振動を弾性接着剤14でダンピングして、外部振動がリード線13を介して圧電素子12に伝わらないようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の振動ジャイロは、印加されている駆動信号によって圧電素子12が伸縮して振動体11が屈曲振動をするに際し、リード線13の弾性接着剤14により被覆されていないリード線部分が振動体11の振動に共振して振動する。このリード線13の共振による振動が圧電素子12に作用して、圧電素子12に電圧を発生させ、この発生電圧がコリオリ力の検出信号に重畳して、コリオリ力に基づかない誤差信号を出力させていた。また、圧電振動ジャイロが回転していないときにも、コリオリ力に基づかない誤差信号が出力されていた。
【0004】そこで、本発明は、振動体の振動に呼応するリード線の共振による振動を抑圧して、コリオリ力に基づかない誤差信号が出力されることを防止した振動ジャイロを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、振動体の側面に複数個の圧電素子が接着され、これらの圧電素子にはそれぞれリード線が接続され、前記振動体はノード部を支持部材に支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、真空成膜手段により、前記リード線、圧電素子および振動体が、ポリパラキシリレン樹脂により被覆されてなるものである。
【0006】この発明は、ポリパラキシリレン樹脂によりリード線などが被覆されて、ポリパラキシリレン樹脂の弾性または質量負荷により振動体の振動に基づくリード線の共振による振動が抑圧される。したがって、圧電素子にリード線の共振による振動が作用しないので、コリオリ力の出力信号に誤差信号が重畳することを防止することができる。また、圧電振動ジャイロが回転していないときのコリオリ力に基づかない誤差信号が出力されることも防止することができる。
【0007】また、この発明は、コリオリ力に基づかない誤差信号が出力される、組み立て後の特性不良品に、ポリパラキシリレン樹脂の真空成膜手段を用いて成膜することにより、このような特性不良品の良品化を図ることができる。
【0008】さらに、ポリパラキシリレン樹脂の真空成膜手段により、振動体および圧電素子からなる振動系にもポリパラキシリレン樹脂が被覆されるが、この被覆は厚みが数μmと薄いので、この被覆により振動系の振動が阻害されることはない。
【0009】請求項2に記載の発明は、振動体の側面に複数個の圧電素子が接着され、これらの圧電素子にはそれぞれリード線が接続され、前記振動体はノード部を支持部材に支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、前記リード線がその全長に渡りポリパラキシリレン樹脂により被覆されてなるものである。
【0010】この発明は、リード線がポリパラキシリレン樹脂により被覆されているので、ポリパラキシリレン樹脂の弾性または質量負荷により振動体の振動に基づくリード線の共振による振動、特にリード線の配線の形態から生じる共振による振動が抑圧される。したがって、このリード線の共振に基づく振動が圧電素子に作用しないので、コリオリ力の出力信号に誤差信号が重畳することを防止することができる。また、圧電振動ジャイロの回転停止時のコリオリ力に基づかない誤差信号が出力されることも防止することができる。
【0011】請求項3に記載の発明は、振動体の側面に複数個の圧電素子が接着され、これらの圧電素子にはそれぞれリード線が接続され、前記振動体はノード部を支持部材に支持されてなる圧電振動ジャイロにおいて、前記リード線がその全長に渡り弾性体により被覆されてなるものである。
【0012】この発明は、リード線をシリコン樹脂などの弾性体で被覆して、その弾性作用によりリード線の振動をダンピングする。したがって、請求項2に記載の発明と同様の作用を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、図1を参照して、本発明の実施例の振動ジャイロ10について説明する。1は正3角柱状の振動体で、エリンバ、鉄−ニッケル合金などの恒弾性金属材料から形成される。そして、この振動体1の3側面には、圧電素子2、3、4が接着剤で接着されている。これらの圧電素子2、3、4は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電板の両面に電極を形成したものである。そして、これらの圧電素子2、3、4には、それぞれ直径が50μmのリード線2a、3a、4aが半田により接続されている。5a、5bは、支持部材で、取り付け基板6に植設されている。これらの支持部材5a、5bには、振動体1がその2つのノ−ド部を半田付け又は溶接されている。
【0014】そして、圧電素子2、3、4、振動体1、リード線2a、3a、4a、支持部材5a,5b、取り付け基板6は、図1のように組み立てられた状態でCVD(化学気相成長)の真空槽中に入れられて、振動ジャイロ10の全体にポリパラキシリレン樹脂が5〜10μm程度の厚みに成膜される。この成膜により、例えば、図2に拡大断面図にて示すように、リード線2a、3a、4aは、その全長に渡ってポリパラキシリレン樹脂7により被覆される。
【0015】なお、リード線2a、3a、4aのみへのポリパラキシリレン樹脂の成膜(被覆)は、振動ジャイロ10の組み立て前において、リード線2a、3a、4aが線材の状態のときに行う。
【0016】つぎに、圧電振動ジャイロ10の動作について説明する。振動体1は、グランドに接続され、リード線2a、3aから例えば、25kHzの駆動周波数の交流電圧が圧電素子2、3に印加されて屈曲振動をする。そして、振動ジャイロ10は、振動体1の軸を中心にして回転すると、圧電素子2、3からそれぞれリード線2a、3aを介してコリオリ力に基づく信号が出力される。これらの2つの信号を差動増幅することにより、回転角速度信号を得ることができる。また、圧電素子4からはリード線4aを介して、振動体1を自励振動させるための帰還用の信号が取り出される。
【0017】つぎに、図3および図4を参照して、組み立て後の振動ジャイロ10の4個の試験サンプルを用いて、温度を−10℃〜+75℃まで変化した場合の出力電圧特性について説明する。図3はリード線2a、3a、4aにポリパラキシリレン樹脂7を塗布しない前の4個の試験サンプルの温度変化に対する出力電圧特性a、b、c、dを示すものである。また、図4はリード線2a、3a、4aにポリパラキシリレン樹脂を、5μmの厚みに蒸着した後の温度変化に対する出力電圧特性a1、b1、c1、d1を示すものである。
【0018】図3において、出力電圧特性a、b、cは40℃の近傍において、また出力電圧特性dは6℃の近傍においてそれぞれ共振点を有し、この共振点において非共振時に対し約1V近い共振電圧の増加を示している。この共振電圧は、コリオリ力に基づかない誤差電圧となるもので、この共振電圧すなわち誤差電圧は、振動体1の振動に伴って、リード線2a、3a、4aが共振による振動をして、この共振による振動が圧電素子1に作用し、出力されたものである。この共振現象は、定温状態では観察しにくく、温度を変えた場合に、共振点と非共振点の顕著な出力差として現れることにより観察される。
【0019】これに対し、リード線2a、3a、4aにポリパラキシリレン樹脂を成膜(被覆)した後の出力電圧特性を示す図4においては、図3に示す出力電圧特性a、b、c、dの共振波形がなくなり、それぞれ平坦な出力電圧特性a1、b1、c1、d1となっている。これはリード線2a、3a、4aの共振による振動がポリパラキシリレン樹脂の弾性または質量負荷によりダンピングされて、圧電素子2、3、4にリード線2a、3a、4aの共振による振動が作用しなくなったからである。
【0020】上記実施例においては、リード線の共振による振動をダンピングする材料として、蒸着に適したポリパラキシリレン樹脂を例示したが、このポリパラキシリレン樹脂の他に、弾性を有していてその弾性によりリード線の共振による振動をダンピングすることのできる、例えば、シリコン接着剤、シリコンゴム等のシリコン樹脂などの弾性体であってもよい。この弾性体は、リード線にその全長に渡り厚さ数10μm〜0.5mm程度に塗布などの手段により被覆される。
【0021】
【発明の効果】請求項1に記載の発明は、CVD法などの真空成膜手段により、リード線がポリパラキシリレン樹脂により被覆されて、振動体の振動に基づいてリード線が共振して振動するのが抑圧され、圧電素子にリード線の共振による振動が作用しないので、コリオリ力の出力信号にコリオリ力に基づかない誤差信号が重畳することを防止することができる。また、圧電振動ジャイロが回転していないときのコリオリ力に基づかない誤差信号が出力されることも防止することができる。
【0022】また、この発明は、コリオリ力に基づかない誤差信号が出力される、組み立て後の特性不良品に、特にそのリード線に、真空成膜手段により、ポリパラキシリレン樹脂を成膜することにより、特性不良品の良品化を図ることができる。
【0023】請求項2の記載の発明は、リード線がポリパラキシリレン樹脂により被覆されて、ポリパラキシリレン樹脂の弾性または質量負荷により振動体の振動に基づくリード線の共振による振動が抑圧され、圧電素子にリード線の共振による振動が作用しないので、コリオリ力の出力信号にコリオリ力に基づかない誤差信号が重畳することを防止することができる。また、圧電振動ジャイロが回転を停止しているときのコリオリ力に基づかない誤差信号が出力されることも防止することができる。
【0024】請求項3に記載の発明は、リード線がシリコン樹脂などの弾性体で被覆されているので、その弾性作用によりリード線の共振による振動が抑圧されて、請求項2に記載の発明と同様の効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【出願日】 平成9年(1997)12月18日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−183175
【公開日】 平成11年(1999)7月9日
【出願番号】 特願平9−349245