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【発明の名称】 振動ジャイロ
【発明者】 【氏名】柳沢 徹

【要約】 【課題】高精度な振動ジャイロを提供する。

【解決手段】いずれの振動においても水晶4叉振動ジャイロ10の基部15が静止しており、保持方法により性能に影響が無く、加工組立精度に過大な期待をすることなく励振振幅を大きくとるための励振と検出の共振周波数の一致を実現できるので量産に向き、構造上共振検出方向の振幅が大きくとれ、コリオリ力以外の出力をキャンセルできる構成をとるのでノイズが少なく、高いS/Nを実現している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 4本の足と電極と基部を備え、足は弾性と圧電性をもつ水晶からなり、足は形状が四角柱であり、足は長手方向,巾方向および厚さ方向が、それぞれ水晶結晶軸のY−Z面内で回転したY’軸,Y−Z面内で回転したZ’軸およびX軸であり、足は四角柱の側面に施された金属蒸着膜からなる電極を有し、基部は弾性をもつ水晶からなり、基部は形状が四角柱であり、基部と4本の足は一体構造であり、4本の足は互いに平行に基部に田の字形に配置されており、第1の足の電極に印加した交流電圧により生じた第1の足の振動が基部を通して伝達してすべての足に生じた第1の屈曲振動が、回転によるコリオリ力により引き起こす、第1の屈曲振動に直交する方向の第2の屈曲振動の結果生じる電圧を、第2の足の電極により検出する振動ジャイロであって、足を一つの方向に駆動する電極の中に、矩形の水晶の隣り合う2つの面に連続して形成した電極を含み、足の一つの方向の振動を検出する電極の中に、矩形の水晶の隣り合う2つの面に連続して形成した電極を含むことを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項2】 4本の足と電極と基部を備え、足は弾性と圧電性をもつ水晶からなり、足は形状が四角柱であり、足は長手方向,巾方向および厚さ方向が、それぞれ水晶結晶軸のY−Z面内で回転したY’軸,Y−Z面内で回転したZ’軸およびX軸であり、足は四角柱の側面に施された金属蒸着膜からなる電極を有し、基部は弾性をもつ水晶からなり、基部は形状が四角柱であり、基部と4本の足は一体構造であり、4本の足は互いに平行に基部に田の字形に配置されており、第1の足の電極に印加した交流電圧により生じた第1の足の振動が基部を通して伝達してすべての足に生じた第1の屈曲振動が、回転によるコリオリ力により引き起こす、第1の屈曲振動に直交する方向の第2の屈曲振動の結果生じる電圧を、第2の足の電極により検出する振動ジャイロであって、足を一つの方向に駆動する電極を、複数の足に形成し、足の1つの方向の振動を検出する電極を、複数の足に形成したことを特徴とする振動ジャイロ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、角速度を検出する振動ジャイロに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から機械式の回転ジャイロスコープが、飛行機や船舶の慣性航行装置として使われているが、装置が大きく、価格が高く、したがって小型の電子機器や小型の輸送機械に組み込むことは困難である。
【0003】しかし、近年、ジャイロスコープも小型化の研究が進み、圧電磁器で振動体を励振させ、振動体が回転により受けるコリオリ力で起きる振動により発生する角速度電流を、振動体に設けた別の圧電磁器で検出する振動ジャイロの実用化が進み、自動車のナビゲーションシステムやビデオカメラの手振れ検出装置等に使われている。
【0004】以下に圧電磁器を使用した従来のジャイロを図面を用いて説明する。図13は従来の音叉型の振動ジャイロを示す斜視図である。
【0005】図13により従来技術の音叉型の振動ジャイロについて説明する。振動体71はエリンバなど恒弾性金属で形成された複合音叉型の構造を有している。すなわち振動体71は、音叉の第1の足72、73の上部に、第2の足74、75を結合した構造をもつものである。圧電磁器製の駆動部および駆動電極76は第1の足73に張り合わせてある。図示しないが同様の駆動部および駆動電極が第1の足73に張り合わせてある。圧電磁器製の検出部および検出電極77は第2の足75に張り合わせてある。図示しないが同様の検出部および検出電極が第2の足74に張り合わせてある。ここで、足の伸びた方向をz軸方向とする。
【0006】つぎに以上構成に基づく作用について説明する。駆動電極76に印加した交流電圧により第1の足72、73は左右に変位する第1の屈曲振動を発生する。以下これを、通常の音叉が1つの面内で振動を行うのを理想とする慣例から、面内振動と呼ぶ。この面内振動によって、第1の足72,73に結合された第2の足74,75は面内振動する。音叉全体をz軸の回りに角速度ωで回転させると、面内振動と直角な方向にコリオリ力Fcが働く。コリオリ力Fcは以下の式で表すことができる。
Fc=2・M・ω・Vここで、Mは第1の足72,73又は第2の足74,75の質量であり、Vは振動の速度である。このコリオリ力Fcによって、面内振動と直角方向に変位する第2の屈曲振動を励起する。以下これを面外振動と呼ぶ。この面外振動により発生する交流電圧を検出電極77で検出することによって、角速度ωを算出して知ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の振動ジャイロには以下のような問題がある。一般に振動体を支持する場合は、支持の影響が振動体に及ぶのを最小限にするため、振動体が振動中に動かない位置、すなわち振動の節を用いる。図13に示す音叉型の構成では面内振動の節は又の部分にあり、この周辺はほとんど動かないが、コリオリ力で励振される面外振動では、振動により動かない部分は存在しない。したがって、どの部分を、どのように支持しても支持の影響が振動体に及んでしまう。
【0008】一般に音叉型振動子は又の中央部あたりを支持するが、実際に、この部分を支持する場合と支持しない場合で、振動体71の面内振動の共振周波数がほとんど変わらないのに比べ、面外振動では、数%にも及ぶ共振周波数の変化がある。したがって、面外振動の共振周波数は支持の仕方によって数%も変化することになる。ここでは、面内振動の周波数をもつ交番コリオリ力で面外振動を励振するのだが、励振の効率は、面外振動の共振周波数に依存する。音叉の面内振動の共振周波数と面外振動の共振周波数が離れていると、面外振動に充分な励振を引き起こすことができないし、微妙な支持の変化で面外振動の共振周波数が大幅に変化するのでは、励振の効率が大幅に変化してしまい、精度のよい検出は不可能である。このような理由により、音叉型の振動ジャイロは、充分普及するに至っていない。
【0009】[発明の目的]本発明の目的は、上記課題を解決しようとするもので、検出感度が大きく、検出精度のよい、振動ジャイロを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するために、本発明の振動ジャイロは、以下に記載の構成を採用する。
【0011】本発明の振動ジャイロは、4本の足と電極と基部を備え、足は弾性と圧電性をもつ水晶からなり、足は形状が四角柱であり、足は長手方向,巾方向および厚さ方向が、それぞれ水晶結晶軸のY−Z面内で回転したY’軸,Y−Z面内で回転したZ’軸およびX軸であり、足は四角柱の側面に施された金属蒸着膜からなる電極を有し、基部は弾性をもつ水晶からなり、基部は形状が四角柱であり、基部と4本の足は一体構造であり、4本の足は互いに平行に基部に田の字形に配置されており、第1の足の電極に印加した交流電圧により生じた第1の足の振動が基部を通して伝達してすべての足に生じた第1の屈曲振動が、回転によるコリオリ力により引き起こす、第1の屈曲振動に直交する方向の第2の屈曲振動の結果生じる電圧を、第2の足の電極により検出する振動ジャイロであって、足を一つの方向に駆動する電極の中に、矩形の水晶の隣り合う2つの面に連続して形成した電極を含み、足の一つの方向の振動を検出する電極の中に、矩形の水晶の隣り合う2つの面に連続して形成した電極を含むことを特徴とする。
【0012】本発明の振動ジャイロは、4本の足と電極と基部を備え、足は弾性と圧電性をもつ水晶からなり、足は形状が四角柱であり、足は長手方向,巾方向および厚さ方向が、それぞれ水晶結晶軸のY−Z面内で回転したY’軸,Y−Z面内で回転したZ’軸およびX軸であり、足は四角柱の側面に施された金属蒸着膜からなる電極を有し、基部は弾性をもつ水晶からなり、基部は形状が四角柱であり、基部と4本の足は一体構造であり、4本の足は互いに平行に基部に田の字形に配置されており、第1の足の電極に印加した交流電圧により生じた第1の足の振動が基部を通して伝達してすべての足に生じた第1の屈曲振動が、回転によるコリオリ力により引き起こす、第1の屈曲振動に直交する方向の第2の屈曲振動の結果生じる電圧を、第2の足の電極により検出する振動ジャイロであって、足を一つの方向に駆動する電極を、複数の足に形成し、足の1つの方向の振動を検出する電極を、複数の足に形成したことを特徴とする。
【0013】[作用]本発明による振動ジャイロは、4本の足を田の字型に対称性良く配置したことにより、音叉型における面外振動のような支持部に影響される振動を利用することなく使用するいずれの振動においても基部がほぼ静止しており、保持方法により性能に影響が無く、精度のよい角度検出ができる。また加工組立精度に過大な期待をすることなく出力信号を大きくとるための励振と検出の共振周波数の一致を実現でき、構造上共振検出方向の出力信号が大きくとれ、コリオリ力以外の出力をキャンセルできる構成をとるのでノイズが少なく高いS/Nを実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の振動ジャイロを実施するための最良の形態による実施の形態を図面を基に説明する。図1から図12および図14から図16は本発明の実施の形態である振動ジャイロであり、図1は、以後4叉型と呼ぶ、4脚音叉型の振動ジャイロの外観を示し、水晶原石から切り出す切断方位を示す斜視図であり、図2および図3は電極の位置を示し、振動調整のための又の位置を示す側面図であり、図4および図5は4叉型の足の先端側から見たY’軸方向の電極構造の断面および配線模式図であり、図6は4叉型を円筒状の管に封入した振動ジャイロの構成を示す外観図であり、図7,図8,図9および図10は4叉型の足の先端側から見たY’軸方向の断面を模式的に表した動作説明図であり、図11および図12は4叉型10の配線の様子を示す上面図であり、図14は別の実施の形態を示す4叉型10の足の先端側から見たY’軸方向の電極構造の断面および配線模式図であり、図15および図16は別の実施の形態を示す斜視図であり、図17は別の実施の形態を示す4叉型10の足の先端側から見たY’軸方向の電極構造の断面および配線模式図であり、図18は別の実施の形態を示す斜視図である。
【0015】[振動ジャイロの構造説明:図1から図6,図11および図12]図1に示すように、4叉型10は第1の足11,第2の足12,第3の足13および第4の足14と図示しない電極と基部15から構成される。足は弾性と圧電性をもつ水晶からなり、形状が四角柱であり、四角柱の側面に施された金属蒸着膜からなる電極を有している。基部は弾性をもつ水晶からなり、形状が四角柱である。第1の足11,第2の足12,第3の足13および第4の足14は互いに平行に方形の基部15の4つの頂点の位置に配置されており、基部15と第1の足11,第2の足12,第3の足13および第4の足14は一体構造である。
【0016】この実施の形態で使用する一般に振動子に使われている水晶は、Si02の単結晶で、常温では4つの結晶軸をもつ三方晶系に属する。結晶軸の1つはc軸と呼ばれ、結晶の頂点を通る結晶軸であり、残りの3つはa軸と呼ばれ、c軸に垂直な面内に互いに120度の角度を成す結晶軸である。ここでは、3つのa軸のいずれかをX軸とし、c軸をZ軸とし、X軸およびZ軸に直交する方向にY軸をとる。
【0017】4叉型10はX,Y,Z軸から0〜10度X軸の回りに回転させた座標軸Y’軸,Z’軸およびX軸に、各辺を平行にして切り出される。このとき長手方向すなわち足の伸びた方向をY’軸,巾方向をZ’軸および厚さ方向をX軸とする。こうして切り出された4叉型10の、長手方向,巾方向および厚さ方向は、それぞれY’軸,Z’軸およびX軸と平行となる。ただし、4叉型10はX−Z’面内で対称な形状をもつので、ここで用いた巾と厚さという言葉は特別な意味をもたない。以下ではX又はZ’方向の巾という言葉を用いる。
【0018】図2および図3に、一例として第1の足11,第2の足12に金属蒸着膜から成る電極を形成した様子を示す。第2図および図3は斜視図であり、図が煩雑になるので、第3の足と第4の足の電極はここでは図示しない。電極の形状はあらかじめ形状をエッチングで作成したマスクを作成しておき、これを電極を生成する水晶の面に張り付けて真空蒸着を施すことにより形成する。加振用として第1の足11に第1の電極23、24を蒸着し、極性の異なる第2の電極25、26を蒸着している。ここで第1の電極23と24は、第1の足の側面を利用して互いに連結してある。また第2の電極25、26も、第1の足の側面を利用して互いに連結してある。またさらに加振用として第2の足12に、第3の電極27、28を蒸着し、極性の異なる第4の電極29、30を蒸着している。ここで、第3の電極27、28は、第2の足の側面を利用して互いに連結してある。また、第4の電極29、30も、第2の足の側面を利用して互いに連結してある。図2においては斜視図なので電極24,25,28、30は図示できないため、側面を迂回して互いに連結する経路に符号を付した。
【0019】図4と図5には、図2に一部を示すものと同じ電極23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37、38を第1の足11と、第2の足12と、第3の足13と、第4の足14を切断するX−Z’面内の断面に示す。加振用として第1の足11に第1の電極23、24を蒸着し、極性の異なる第2の電極25,26を蒸着し、第2の足12に隣り合う2つの面に連続して形成した第3の電極27,28を蒸着し、隣り合う2つの面に連続して形成した極性の異なる第4の電極29,30を蒸着している。また検出用として第3の足13に、第5の電極31、32を蒸着し、極性の異なる第6の電極33,34を蒸着し、第4の足14に、隣り合う2つの面に連続して形成した第7の電極35,36を蒸着し、隣り合う2つの面に連続して形成した極性の異なる第8の電極37、38を蒸着している。
【0020】図4には加振用電極23,24,25,26,27,28,29,30に交流電圧を印加する発振回路43と検出用電極31,32,33,34からの信号を検出する第1の検出回路45,35,36,37,38からの信号を検出する第2の検出回路46を示し、これらのあいだの配線を示す。また図5には、加振用電極23,24,25,26に交流電圧を印加する第1の発振回路48,加振用電極27,28,29,30に交流電圧を印加する第2の発振回路49と検出用電極31,32,33,34からの信号を検出する第1の検出回路45,35,36,37,38からの信号を検出する第2の検出回路46を示し、これらの間の配線を示してある。
【0021】図6に4叉型10を円筒状の管に封入したジャイロ素子としての構成を示す。ベース16はセラミック等の絶縁性材料で構成されるが、上面には配線基板22が接着してある。4叉型10は基部15を配線基板22と接着固定する。4叉型10を固定したベース16は、金属製キャップ17に圧入し、ベース16と金属キャップ17で封止することにより、4叉型10が存在する内部環境を一定に保つ。この内部環境は例えば窒素等の不活性ガスの雰囲気とし、振動子としての4叉型10の振動特性、すなわちQ値やCI値が、振動ジャイロとして扱いやすいものとなるように考慮して、気圧を調節する。
【0022】4叉型10に蒸着された図2または図4および図5に示した電極23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37、38の端子部はベース16に気密圧入するリード18,19,20、21と電気的に接続する必要がある。図11および図12には、配線基板上に形成された配線63,64,65,66,67,68,69、70を示す。図11は図2に対応する配線を示し、図12は図3に対応する配線を示すが足の側面と基板を用いて自由に配線を行うことができる。電極23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37、38の端子部は、4叉型10の基部15の底面まで形成された電極の延長部であるが、あらかじめこの端子部と配線63,64,65,66,67,68,69、70は、位置が一致するように構成されており、各同じ極性のもの同士が容易にハンダまたは導電接着剤によって接合される。また、配線63,64,65,66,67,68,69、70の一部は、リード18,19,20、21を取り巻くように形成されており、配線とリードの各同じ極性のもの同士が容易に半田または導電接着剤により接合される。リード18,19,20、21は、図4に示した発振回路43と第1の検出回路45と第2の検出回路46に接続されるか、図5に示した第1の発振回路48および第2の発振回路49と第1の検出回路45および第2の検出回路46に接続される。
【0023】[振動ジャイロの動作・作用説明:図4,図5,図7から図10,図14から 図18]図4において、第1の足11のY’方向の屈曲振動の第1の中立線39を点で示し、第2の足12のY’方向の屈曲振動の第2の中立線40を点で示し、第3の足13のY’方向の屈曲振動の第3の中立線41を点で示し、第4の足14のY’方向の屈曲振動の第4の中立線42を点で示す。図の外側の線は各電極間の配線を模式的に示したもので、発振回路43と第1の検出回路45および第2の検出回路46に接続している。図中ある瞬間の電圧の様子を矢印で示すが、第1の電圧51を矢印で示し,第2の電圧52を矢印で示し,第3の電圧53を矢印で示し、第4の電圧54を矢印で示している。
【0024】まず、発振回路43からの交流電圧により、第1の足11の第1の電極23、24と第2の電極25、26を通じて第1の電圧51および第2の電圧52が印加され、第1の電圧51の方向が伸び、第2の電圧52の方向が縮むとすると、Z’軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともに、この方向は変化し、結果として、第1の足11はZ’軸方向に屈曲振動する。このとき、駆動する足が第1の足11のみであったとしても、発振回路43の周波数が4叉型10の弾性体としての共振周波数付近であれば、第1の足11の振動が基部15を通して伝達し、第2の足12,第3の足13,第4の足14が自動的に励振され、第1の足11と第3の足13が Y’−Z’面内で音叉型に振れ、 第2の足12と第4の足14がY−Z’面内で、第1の足11と第3の足13の振動と逆相で音叉型に振れる第1の屈曲振動が発生する。
【0025】これと同時に、発振回路43からの交流電圧により、第2の足12の第3の電極27、28と第4の電極29、30を通じて第3の電圧53および第4の電圧54が印加され、第3の電圧53の方向が伸び、第4の電圧54の方向が縮むとすると、X軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともに、この方向は変化し結果として、第2の足12はX軸方向に屈曲振動する。このとき駆動する足が第2の足12のみであったとしても、発振回路43の周波数が4叉型10の弾性体としての共振周波数付近であれば、第2の足12の振動が基部15を通して伝達し、第1の足11,第3の足13,第4の足14が自動的に励振され、第2の足12と第1の足11が Y’−X面内で音叉型に振れ、第4の足14と第3の足13がY−X面内で、第2の足12と第1の足11の振動と逆相で音叉型に振れる第2の屈曲振動が発生する。
【0026】図7に第1の屈曲振動を模式的に示す。第1の屈曲振動では4叉型10の第1の足11,第2の足12,第3の足13と第4の足14がY’−Z’面内で屈曲振動を行うが、ここではある瞬間の変位方向を矢印で示している。また図8に第2の屈曲振動を模式的に示す。第2の屈曲振動では4叉型10の第1の足11,第2の足12,第3の足13および第4の足14がY’−X面内で屈曲振動を行う。ここでもある瞬間の変位方向を実線矢印で示している。
【0027】図7に示した第1の屈曲振動および図8に示した第2の屈曲振動は4叉型10の試作品の動作確認により、弾性体としての共振周波数の存在がが確認されているものである。即ち第1の屈曲振動においては、すべての足はZ’方向に振動しており、第1の足11と第3の足13は通常の音叉型振動を行っており、この時同時に第2の足12と第4の足14は、第1の足11と第3の足13が行う振動の逆相の音叉型振動を行っている。一方第2の屈曲振動においては、すべての足はX方向に振動しており、第1の足11と第2の足12は通常の音叉型振動を行っており、この時同時に第3の足13と第4の足14は、第1の足11と第2の足12が行う振動の逆相の音叉型振動を行っている。これらの振動は4本の足が互いにバランスを取り合い、基部15は振動の節となっておりほとんど振動しないので、4叉型10は支持の方法により振動状態が変わることはほとんどない。
【0028】今たとえばあらかじめ図7に示す第1の屈曲振動を行わせておき、同時に図8に示した第2の屈曲振動を発生させる。しかしながら、一般に第1の屈曲振動と第2の屈曲振動の共振周波数は、X軸,Y’軸およびZ’軸方向に切り出された水晶からなる4叉型10では、第1の屈曲振動と第2の屈曲振動の弾性体としての共振周波数は、第1の足11,第2の足12,第3の足13,第4の足14および基部15のY’方向に垂直な断面形状がXとZ’方向で対称な場合は一致しない。
【0029】ここで、第1の屈曲振動の共振周波数と第2の屈曲振動の共振周波数を近づける工夫をする。棒状振動体の屈曲振動の周波数は屈曲方向の巾に比例するので、4叉型10のY’軸に垂直な断面を、ここでは正方形でなく、Z’方向をX方向に対して1%程度減じた長方形断面となるように変形する。この変形により、第2の屈曲振動の共振周波数は、第1の屈曲振動の共振周波数にほぼ一致する。
【0030】しかしながら、量産を考慮した場合、一般に水晶の加工に用いられるワイヤソーによる加工精度は巾で6μm程度であるが、例えば4叉型10の各の足の巾を300μm程度とすると、1%が加工精度の限界となる。これ以上の調整を必要とする場合は、棒状振動体の共振周波数は棒の長さの自乗に逆比例するので、図2に示す様にZ’方向から見た足の長さL1と、X方向から見た足の長さL2が異なるように各の又の深さが異なるように加工する。この部分だけを局部的に、さらに高精度に加工することにより、第1の屈曲振動の共振周波数と第2の屈曲振動の共振周波数をより精度良く一致させることができる。
【0031】図9に第1の屈曲振動と第2の屈曲振動が同時に存在する場合の4叉型10の屈曲振動の様子を模式的に示す。図4の回路構成においては、発振回路として1つの発振回路43で第1の屈曲振動と第2の屈曲振動を同時に発生させている。この場合第1の屈曲振動を行う4叉型10の機械振動系と第2の屈曲振動を行う4叉型10の機械振動系は、発振回路43と結合して、第1の屈曲振動の発振周波数f1および位相δ1と第2の屈曲振動の発振周波数f2および位相δ2は各同じになり、図9に示す第3の屈曲振動が発生する。
【0032】しかし、水晶の圧電性がX方向の電界にしかよらないため一般にZ’方向の屈曲を引き起こす電界はX方向の屈曲を引き起こす電界に比べて弱くなる。本実施形態においては、Z’方向の屈曲を引き起こす電界の発生効率がよい、隣り合う2つの面に連続して形成した第3の電極27、28,第4の電極29、30,第7の電極35、36,第8の電極37、38を用いたため、第1の屈曲振動に対して第2の屈曲振動は、ほぼ同等の振幅を得ることができる。
【0033】図5の回路構成においては、第1の発振回路48で第1の屈曲振動を生成し、第2の発振回路49で第2の屈曲振動を生成し、第2の発振回路49の発振を参照信号として第1の発振回路48の発振周波数との位相差を検出し、これを電圧に置き換え、第1の発振回路48のバリキャップにフィードバックするPLL回路50により、第1の屈曲振動の発振周波数f1および位相δ1と第2の屈曲振動の発振周波数f2および位相δ2を各同じにしている。結果として、図4に示した発振回路を1つだけ用いた回路構成と同じく、図9に示す第3の屈曲振動が発生する。この場合は、あらかじめ第1屈曲振動と、第2の屈曲振動の振幅を調整し、第3の屈曲振動の方向を調整することができる。
【0034】ところで、図9に示した第3の屈曲振動が発生している時、4叉型10がY’軸の回りに、角速度ωで回転すると、各の足は、変位する方向に直交する方向にコリオリ力を受け、このコリオリ力により図10に示す第4の屈曲振動が引き起こされる。第4の屈曲振動は、第3の屈曲振動と発振周波数が完全に一致している。したがって、第3の屈曲振動による第4の屈曲振動の励振は、強制振動の理論によれば、最高の効率で行われ、第4の屈曲振動は非常に大きな振幅を得ることができる。
【0035】第4の屈曲振動は、Z’方向に成分として、第5の屈曲振動を持ち、第5の屈曲振動に直交するX方向に成分として第6の屈曲振動をもつ。たとえば、第6の屈曲振動では、たとえば第4の足14においては、Y’−X面内の歪みを生じ、水晶の圧電基本式ey=d12*EXにより、第7の電圧57および第8の電圧58を発生する。ここにeyはY’方向歪み、d12は圧電定数、EXはX方向の電圧である。ここでは、他の圧電定数は小さいので割愛している。Y’方向歪みeyは、コリオリ力発生の原理に従い、角速度ωに比例するが、上式によればさらに第7の電圧57および第8の電圧58に比例することになる。したがって、第7の電圧57と第8の電圧58は角速度ωに比例した電圧として、図5示した第4の足14の電極35,36,37、38により導かれ、検出回路45に入力される。同様に第5の屈曲振動では、たとえば第3の足13においては、Y’−Z’面内に角速度ωに比例した電圧として、図5示した第3の足13の電極31,32,33、34により導かれ、検出回路46に入力される。
【0036】ところが検出回路45と検出回路46には、すでに第1に屈曲振動に起因する電圧と第2の屈曲振動に起因する電圧がすでに入力されている。検出回路45および検出回路46の出力は、差動アンプ47に入力されており、差動アンプ47は、あらかじめ第1の屈曲振動と第2の屈曲振動に起因する出力がキャンセルし出力が0になるように調整されている。Z’方向に働く第5の屈曲振動は、同じくZ’方向に働く第1の屈曲振動を弱めるように働き、X方向に働く第6の屈曲振動は、同じくX方向に働く第2の屈曲振動を強めるように働くので、差動アンプ50出力はコリオリ力によって発生した第4の屈曲振動の成分である第5の屈曲振動と第6の屈曲振動により発生する。これによって角速度ωの値を知ることができる。ここで、もし4叉型10に回転以外の加速度が加わった場合にも検出回路45と検出回路46には出力が現れるが、これらはキャンセルされるので差動アンプ50からは、回転に対応する出力のみが出力される。
【0037】以上の発明により、検出回路45と検出回路46の入力はかなり大きなものとなるが検出精度を上げるためにはS/N比の大きな増幅器が必要である。S/N比の大きな増幅器としては一般にロックインアンプと呼ばれるものがある。ロックインアンプは、参照信号で検出信号をフィルタリングする思想のものである。
【0038】本発明における4叉型10の第1の屈曲振動は、発振回路43または第1の発振回路48と第2の発振回路49と結合して、非常に大きなQ値をもつ水晶発振器を構成している。すなわち非常に安定した周波数をもつ信号である。言い換えると、これを用いることにより角速度ωに起因する信号以外のノイズをほとんど除外できる。図4と図5の検出回路45、46は、プリアンプとロックインアンプから構成されており、発振回路43又は第1の発振回路48の信号を、参照信号として用いている。したがって、第1の屈曲振動からの信号を参照信号とするロックインアンプは、第5の屈曲振動と第6の屈曲振動からの信号の検出に際して、大きなS/N比をもつ増幅を実現できる。
【0039】ところで、図5に示した発振回路を2つもつ構成においては、第1の屈曲振動と第2の屈曲振動の振幅をあらかじめ調整できるのであるから、製造しやすさを優先し、電極を形成しやすい形状に変更しても差し支えない。本実施の形態において電極は、あらかじめ形状をエッチングで作成したマスクを作成しておき、これを電極を生成する水晶の面に張り付けて真空蒸着を施すことにより形成しているが、叉の間のマスクは工程が複雑になるので、なるべく単純にしたい。
【0040】図14から図16に、図4と図5で示したものとは別の電極を示す。図14において、第1の発振回路48からの交流電圧により、第2の足12の電極83と電極84を通じて電圧103および電圧104が印加され、電圧103の方向が伸び、電圧104の方向が縮むとすると、X軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともに、この方向は変化し、結果として、第2の足12はX軸方向に屈曲振動する。このとき、駆動する足が第2の足12のみであったとしても、第1の発振回路48の周波数が4叉型10の弾性体としての共振周波数付近であれば、第2の足12の振動が基部15を通して伝達し、第1の足11,第3の足13,第4の足14が自動的に励振され、第1の足11と第2の足12がY’−X面内で音叉型に振れ、第3の足13と第4の足14がY−X面内で、第1の足11と第2の足12の振動と逆相で音叉型に振れる第1の屈曲振動が発生する。
【0041】これと同時に、第2の発振回路49からの交流電圧により第4の足14の電極89、90と電極91、92を通じて電圧107と電圧108が印加され、電圧107の方向が伸び、電圧108の方向が縮むとすると、Z’軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともにこの方向は変化し、その結果第4の足14はZ’軸方向に屈曲振動する。このとき駆動する足が第4の足14のみであったとしても、第2の発振回路49の周波数が4叉型10の弾性体として共振周波数付近であれば、第4の足14の振動が基部15を通して伝達し第1の足11,第2の足12,第3の足13が自動的に励振され、第3の足13と第1の足11がY’−Z’面内で音叉型に振れ、第4の足14と第2の足12がY−Z’面内で、第3の足13と第1の足11の振動と逆相で音叉型に振れる第2の屈曲振動が発生する。
【0042】図14に示した電極も、図4および図5に示した電極と同じく、隣り合う2つの面に連続して形成した電極を含み、効率よく電界を発生する。さらに図14に示す電極では、叉の間のマスク工程が少なく、より低コストに4叉型10を製造することができる。
【0043】図4,図5および図14に示したような電界を発生させる効率のよい電極を用いる方法とは別に単純な電極を複数用いる方法もある。図17と図18に複数の足を同時に励振させる電極を示す。図17において、第1の発振回路48からの交流電圧により、第2の足12の電極116,電極117および電極118を通じて電圧131および電圧132が印加され、電圧131の方向が伸び、電圧132の方向が縮むとすると、X軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともにこの方向は変化し、結果として、第2の足12はX軸方向に屈曲振動する。このとき同時に第3の足13の電極121,電極122および電極123を通じて電圧134および電圧135が印加され、電圧135の方向が伸びて、電圧134の方向が縮むとすると、X軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともにこの方向は変化し、結果として第3の足13はX軸方向に屈曲振動する。このとき、駆動する足が第2の足12および第3の足13のみであったとしても、第1の発振回路48の周波数が4叉型10の弾性体としての共振周波数付近であれば、第2の足12および第3の足13の振動が基部15を通して伝達し、第1の足11および第4の足14が自動的に励振され、第1の足11と第2の足12が Y’−X面内で音叉型に振れ、 第3の足13と第4の足14がY−X面内で、第1の足11と第2の足12の振動と逆相で音叉型に振れる第1の屈曲振動が発生する。
【0044】図17において、これと同時に第2の発振回路49からの交流電圧により、第2の足12の電極119および電極120を通じて電圧131および電圧133が印加され、電圧131の方向が伸び、電圧133の方向が縮むとすると、Z’軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともに、この方向は変化し、結果として、第2の足12はZ’軸方向に屈曲振動する。これと同時に、第2の発振回路49からの交流電圧により、第3の足13の電極124と電極125を通じて電圧134および電圧136が印加され、電圧134の方向が伸び、電圧136の方向が縮むとすると、Z’軸方向に屈曲変位が起こる。時間の経過とともにこの方向は変化し、結果として、第3の足13はZ’軸方向に屈曲振動する。このとき駆動する足が第2の足12と第3の足13のみであったとしても、第2の発振回路49の周波数が4叉型10の弾性体としての共振周波数付近であれば、第2の足12および第3の足13の振動が基部15を通して伝達し、第1の足11および第4の足14が自動的に励振され、第3の足13と第1の足11がY’−Z’面内で音叉型に振れ、 第4の足14と第2の足12がY−Z’面内で、第3の足13と第1の足11の振動と逆相で音叉型に振れる第2の屈曲振動が発生する。
【0045】図17に示す回路では、第1の屈曲振動と第2の屈曲振動の合成振動である第3の屈曲振動からコリオリ力により発生する第4の屈曲振動のX方向の成分である第5の屈曲振動を検出する第1の足11に形成する検出電極111,112、113の発生する電圧は、第1の検出回路45に入力され第4の屈曲振動のZ’方向の成分である第6の屈曲振動を検出する第1の足11に形成された検出電極114、115の発生する電圧は第2の検出回路46に入力され、第1の検出回路45の出力と第2の検出回路47の出力は差動アンプ47で差動増幅される。さらに第5の屈曲振動を検出する第4の足14に形成された検出電極126,127、128の発生する電圧は、第3の検出回路97に入力され、第6の屈曲振動を検出する第4の足14に形成された検出電極129、130の発生する電圧は、第4の検出回路98に入力され、第3の検出回路97の出力と第4の検出回路98の出力は差動アンプ99で差動増幅される。そして差動アンプ47および差動アンプ99の出力は差動アンプ100で合成される結果として、差動アンプ100の出力は、コリオリ力以外のノイズの影響の非常に少ないものとなる。
【0046】図17に示した電極では、図4,図5および図14に示した電界発生効率のよい電極ではなく、通常の電極を複数の足に形成し、効率よく励振を行う。図17に示す電極は、叉の間のマスク工程がなく、より低コストに4叉型10を製造することができる。
【0047】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明による振動ジャイロは4本の足を対称性良く配置したことにより、いずれの振動においても基部が静止しており、保持方法により性能に影響が無く、加工組立精度に過大な期待をすることなくゲインを大きくとるための励振と検出の共振周波数の一致を実現できるので量産に向き、構造上共振検出方向のゲインが大きくとれ、コリオリ力以外の出力をキャンセルできる構成をとるのでノイズが少なく、高いS/Nを実現している。
【出願人】 【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月28日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−132769
【公開日】 平成11年(1999)5月21日
【出願番号】 特願平9−295319