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【発明の名称】 水素吸蔵合金追加速弾
【発明者】 【氏名】中村 諭

【要約】 【課題】従来の追加速弾は、弾の内部に反応物質を内蔵しているため、弾の強度が弱く飛翔中に破壊されることもあった。また、弾の体積も他の弾よりも倍近くとなっていた。

【解決手段】本発明による水素吸蔵合金追加速弾は、弾(2)に設けられたフィン(13)、サボ(12)、プッシャープレート(10)の一部又は全部を水素吸蔵合金で構成したため、全体形状が小形化されて追加速が可能となる構成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 砲身(1)内に装填した弾(2)を高圧ガスにより加速させる追加速弾において、前記弾(2)に設けられたフィン(13)、前記フィン(13)に接続されたサボ(12)及びプッシャープレート(10)が水素吸蔵合金よりなることを特徴とする水素吸蔵合金追加速弾。
【請求項2】 前記弾(2)、フィン(13)及びプッシャープレート(10)の何れかに、前記水素吸蔵合金中に吸蔵される水素の燃焼に必要な酸素を有する酸化剤(11)を設けたことを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金追加速弾。
【請求項3】 砲身(1)内に装填した弾(2)を高圧ガスにより加速させる追加速弾において、前記弾(2)の弾底に水素吸蔵合金製もしくは水素吸蔵合金を含むプッシャープレート(10)を設けたことを特徴とする水素吸蔵合金追加速弾。
【請求項4】 前記弾(2)及び/又はプッシャープレート(10)に、前記水素吸蔵合金中に吸蔵される水素の燃焼に必要な酸素を有する酸化剤(11)を設けたことを特徴とする請求項3記載の水素吸蔵合金追加速弾。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素吸蔵合金追加速弾に関し、特に、フィン、サボ、プッシャープレートの何れか又は全てを水素吸蔵合金で構成することにより、弾の追加速を砲身内又は砲身外の何れでも可能とするための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種の追加速弾としては、例えば、図5で示す特開平5−322484号公報に開示された移動装薬型飛翔体の加速方法及び移動装薬型飛翔体を挙げることができる。すなわち、図5において符号1で示されるものは砲身であり、この砲身1の内腔1a内には反応物質8を内蔵した反応チャンバー9を有する弾2が装填されている。この弾2の弾底側には分離膜2bを介して例えば水とアルミニウム線5からなる周知の電熱化学反応による高温高圧ガスを発生する加速部10が設けられている。従って、この加速部10のアルミニウム線5に通電してアルミニウム線5が高温となると水素が発生するため水と反応して高温高圧の高圧ガスが発生する。この反応ガスにより弾2は加速を開始すると共に、この高圧ガスによって分離膜2bが破壊され、反応チャンバー9内の反応物質8がこの高圧ガスと熱化学反応して弾2は追加速される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の追加速弾は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、弾の内部に反応物質を内蔵しているため、弾の設計に制約があり、弾が飛翔中に破壊される恐れもあった。また、反応物質を入れない他の弾に比べると体積は倍近くとなり、高圧ガスによって破壊される分離膜も破壊時期が一定でなく、性能上も問題があった。
【0004】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、フィン、サボ、プッシャープレートの何れか又は全てを水素吸蔵合金で構成することにより、弾の追加速を砲身内、外の何れでも可能とするようにした水素吸蔵合金追加速弾を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明による水素吸蔵合金追加速弾は、砲身内に装填した弾を高圧ガスにより加速させる追加速弾において、前記弾に設けられたフィン、前記フィンに接続されたサボ及びプッシャープレートが水素吸蔵合金よりなる構成であり、また、前記弾、フィン及びプッシャープレートの何れかに、前記水素吸蔵合金中に吸蔵される水素の燃焼に必要な酸素を有する酸化剤を設けた構成であり、また、砲身内に装填した弾を高圧ガスにより加速させる追加速弾において、前記弾の弾底に水素吸蔵合金製もしくは水素吸蔵合金を含むプッシャープレートを設けた構成であり、さらに、前記弾及び/又はプッシャープレートに、前記水素吸蔵合金中に吸蔵される水素の燃焼に必要な酸素を有する酸化剤を設けた構成である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明による水素吸蔵合金追加速弾の好適な実施の形態について説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。図1において、符号2で示されるものは従来と同じ砲身1内に装填され前述の高圧ガスにより発射される弾であり、この弾2の外周の後部側には90度間隔で4枚のフィン13が設けられ、この弾2の弾底には、フィン孔14に前記各フィン13を保持することができるように構成され弾孔15を有するサボ12が接続されている。前記サボ12の後部には板状に形成された酸化剤11及びプッシャープレート10が設けられている。前述のフィン13、サボ12、プッシャープレート10は、例えばエポキシ樹脂で固めた水素吸蔵合金製又は水素吸蔵合金を含む材料よりなり、前記酸化剤11は、前記水素吸蔵合金中に吸蔵される水素の燃焼に必要な量の酸素を有する酸化剤で構成されている。
【0007】前記水素吸蔵合金として、例えばMg2Al3−H系を材料として使用した場合圧力が約20atm、350℃で水素放出が始まる。これより高い圧力であれば高い温度が必要であるが、後方より来る高圧ガスは水素を放出するために十分な高温、高圧である。放出される水素ガスはMg0.62 Al0.38 で水素吸蔵量が2.3wt%であるのでMg0.62 Al0.38 合金1モル(25.14g)中2.89モル(5.78g)である。この水素を砲身内で全て放出したとすると推進ガスの平均分子量は下がり、弾2の速度はガスの熱速度uが大きい程良く、uは【0008】
【数1】

【0009】R:ガス定数、T:ガス温度、m:平均分子量、γ:比熱比、で表されるので平均分子量が小さい方が性能が向上する。また、放出される水素の燃焼に十分な酸化剤11を加えた場合、水素2モルで2H2+O2→2H2O+571.66KJ (1)式の反応が起こり、571.66KJのエネルギーが推進ガスに供給される。平均分子量も従来の火薬により発生する推進ガスが20より大きいのに比べ、H2Oは18なので下がる。また、水素の放出が、砲身を出た後に始まる様にすると、弾2の形状により発生する衝撃波により温められた水素と空気中の酸素が(1)式の反応を起こし、噴出されることによりロケット効果で弾2が追加速される。
【0010】図3は、他の形態を示すもので、弾2の形状を菱形に変更することにより、砲身外において、フィン13に発生する衝撃波で熱せられた水素吸蔵合金が水素を放出し、空気中の酸素と反応し、追加速を行うことができる。なお、図1と同一部分には同一符号を付しその説明は省略する。また、図4は図1の弾2の他の形態を示すためのもので、弾2の弾底に直接プッシャープレート10を取付けた構成であり、図示していないがこのプッシャープレート10と弾底との間に酸化剤11を取付けることもできる。
【0011】
【発明の効果】本発明による水素吸蔵合金追加速弾は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、水素吸蔵合金でサボ、プッシャープレート及びフィンの全て又は一部を作ることにより、弾の追加速が砲身内、外の何れでも可能となり、性能面においても従来よりも高性能となる。
【出願人】 【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
【出願日】 平成9年(1997)12月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開平11−183097
【公開日】 平成11年(1999)7月6日
【出願番号】 特願平9−350932