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【発明の名称】 冷鉄源の溶解方法及び溶解設備
【発明者】 【氏名】水上 秀昭

【氏名】山口 隆二

【氏名】中山 剛

【要約】 【課題】電力原単位を低減するために高効率で冷鉄源を溶解することのできる溶解方法及び溶解設備を確立する。

【解決手段】アーク発生用電極6、7を備えた溶解室2と、溶解室に直結し、溶解室で発生する排ガスが導入されるシャフト型の予熱室3とを具備したアーク炉1での冷鉄源17の溶解方法において、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給しながら冷鉄源をアーク20にて溶解し、次いで、溶解室に少なくとも1ヒート分の溶鋼18が溜まった時点で溶解室を傾動して溶鋼と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶鋼を加熱して昇温した後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶鋼を出鋼する方法、及びそのための装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アーク発生用電極を備えた溶解室と、溶解室に直結するシャフト型の予熱室とを具備し、溶解室で発生する排ガスを予熱室に導入して冷鉄源を予熱しつつ溶解するアーク炉での冷鉄源の溶解方法において、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給しながら溶解室内の冷鉄源をアークにて溶解し、次いで、溶解室に少なくとも1ヒート分の溶鋼が溜まった時点で溶解室を傾動して溶鋼と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶鋼を加熱して昇温した後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶鋼を出鋼することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。
【請求項2】 溶解室の傾動時に、冷鉄源保持手段にて溶解室内の冷鉄源を保持し、溶鋼と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させることを特徴とする請求項1に記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項3】 溶解室を傾動した後、バーナーを併用して溶鋼を加熱して昇温することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項4】 溶解中及び出鋼中に、予熱室と溶解室とに連続して存在する冷鉄源を1ヒート分の50wt%以上とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項5】 炭材と酸素ガスとを溶解室内に供給することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項6】 前記酸素ガスの供給量を、溶鋼トン当たり25Nm3 以上とすることを特徴とする請求項5に記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項7】 冷鉄源を溶解するための溶解室と、溶解室の上部に直結し、溶解室で発生する排ガスにて冷鉄源を予熱する予熱室と、溶解室内で冷鉄源を溶解するためのアーク発生用電極と、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように予熱室へ冷鉄源を連続的又は断続的に供給する冷鉄源供給手段と、溶解室に炭材を供給する炭材供給手段と、溶解室に酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段と、溶解室を傾動させ、溶解室内の冷鉄源と生成する溶鋼との接触面積を減少させるための傾動手段と、溶解室に設けられた出鋼口とを具備したことを特徴とする冷鉄源の溶解設備。
【請求項8】 溶解室の傾動時に溶解室内の冷鉄源を保持するための冷鉄源保持手段が設けられたことを特徴とする請求項7に記載の冷鉄源の溶解設備。
【請求項9】 溶鋼を加熱するためのバーナーが、溶解室の出鋼口近傍に設けられたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の冷鉄源の溶解設備。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源を効率良く溶解する溶解方法及び溶解設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、鉄スクラップの発生量の増大と共に、世界的に製鋼用アーク炉が新設されている。このアーク炉では、アーク発生用電極から発生するアーク熱により鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源を加熱・溶解し、精錬して溶鋼を製造するが、多くの電力を消費するため、溶解中にアーク炉溶解室から発生する高温の排ガスを利用して冷鉄源を予熱し、予熱した冷鉄源を溶解することで電力使用量を極力少なくする方法が多数提案されている。
【0003】例えば、特開平7−180975号公報(以下、「先行技術1」と記す)には、1段又は2段以上の開閉可能な火格子を装着したシャフト型予熱室を、アーク炉溶解室の上方に鉄スクラップ導入路を介して接続して設け、シャフト型予熱室内でアーク炉溶解室の排ガスにより予熱された鉄スクラップを、シャフト型予熱室下部に設けたプッシャーにより、アーク炉溶解室内に連続的又は間歇的に装入する方法が開示されている。
【0004】特開平7−332874号公報(以下、「先行技術2」と記す)には、アーク炉溶解室の上蓋に接続する水平方向に配置したロータリードラム型の第1の予熱室と、第1の予熱室と底部で接続するシャフト型の第2の予熱室とを配置し、第2の予熱室内で溶解室から発生する排ガスにて冷鉄源を予熱した後、プッシャーにて第1の予熱室に冷鉄源を押し込み、そして、回転する第1の予熱室を介して、予熱された冷鉄源を溶解室内に装入する方法が開示されている。
【0005】又、特公平6−46145号公報(以下、「先行技術3」と記す)には、溶解室に直結するシャフト型予熱室を設け、溶解室内とシャフト型予熱室内とに1ヒート分の冷鉄源を溶解毎に装入し、排ガスでシャフト型予熱室内の冷鉄源を予熱しつつ、溶解された冷鉄源に見合う量を溶解室内に自由落下させ、こうして、溶解室内とシャフト型予熱室内とに装入された全ての冷鉄源を溶解する設備が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のような方法及び装置により、予熱効果の高いものでは、250〜270kWh/tの電力原単位が達成されるとしているが、上記先行技術1〜3には以下の問題点がある。
【0007】先行技術1及び先行技術2では、予熱された冷鉄源をアーク炉溶解室内に装入するために、プッシャー又はロータリードラムといった冷鉄源搬送用の装置が必要であり、このため、溶解室からの排ガスで予熱する際に、予熱温度に限界がある。即ち、溶解室に大量のコークス等の炭材と酸素ガスとを吹き込み、大量に生成する高温の排ガスで冷鉄源を予熱すれば、予熱温度が高くなり予熱効果が向上するが、上記の搬送用装置の熱変形や融着等の設備トラブルが発生するので、排ガス温度を上げることができない。
【0008】これに対して、先行技術3では、シャフト型予熱室が溶解室に直結されているため、前述した冷鉄源搬送用装置を必要とせず、従って、上記の問題点も発生しない。しかしながら、先行技術3では、1ヒート分の溶鋼量を溶解する毎に、予熱室内の冷鉄源を全て溶解し、予熱室内に冷鉄源が残らない状態で溶鋼を出鋼するため、次ヒートの最初に装入される冷鉄源の予熱ができず、排ガスの有効利用という点では十分とはいえない。
【0009】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、予熱室から溶解室への冷鉄源搬送用装置を必要とせず、又、次ヒートの初期に装入される冷鉄源の予熱も可能であり、そして、従来の排ガスを利用した予熱方法では達成できなかった高効率で冷鉄源を溶解することのできる冷鉄源の溶解方法及び溶解設備を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による冷鉄源の溶解方法は、アーク発生用電極を備えた溶解室と、溶解室に直結するシャフト型の予熱室とを具備し、溶解室で発生する排ガスを予熱室に導入して冷鉄源を予熱しつつ溶解するアーク炉での冷鉄源の溶解方法において、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給しながら溶解室内の冷鉄源をアークにて溶解し、次いで、溶解室に少なくとも1ヒート分の溶鋼が溜まった時点で溶解室を傾動して溶鋼と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶鋼を加熱して昇温した後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶鋼を出鋼することを特徴とするものである。
【0011】又、上記方法において、溶解室の傾動時に、冷鉄源保持手段にて溶解室内の冷鉄源を保持し、溶鋼と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させることや、溶解室を傾動した後、バーナーを併用して溶鋼を加熱して昇温することが好ましく、更に、溶解中及び出鋼中に、予熱室と溶解室とに連続して存在する冷鉄源を1ヒート分の50wt%以上とすることや、炭材と酸素ガスとを溶解室内に供給することが好ましい。その際に、酸素ガスの供給量を、溶鋼トン当たり25Nm3 以上とすることが特に好ましい。
【0012】本発明による冷鉄源の溶解設備は、冷鉄源を溶解するための溶解室と、溶解室の上部に直結し、溶解室で発生する排ガスにて冷鉄源を予熱する予熱室と、溶解室内で冷鉄源を溶解するためのアーク発生用電極と、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように予熱室へ冷鉄源を連続的又は断続的に供給する冷鉄源供給手段と、溶解室に炭材を供給する炭材供給手段と、溶解室に酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段と、溶解室を傾動させ、溶解室内の冷鉄源と生成する溶鋼との接触面積を減少させるための傾動手段と、溶解室に設けられた出鋼口とを具備したことを特徴とするものである。
【0013】又、上記設備において、溶解室の傾動時に溶解室内の冷鉄源を保持するための冷鉄源保持手段を設けることや、溶鋼を加熱するためのバーナーを溶解室の出鋼口近傍に設けることが好ましい。
【0014】本発明においては、溶解室の上部に直結したシャフト型予熱室内で予熱された冷鉄源が、溶解室内での冷鉄源の溶解速度に見合って、自然落下して溶解室に装入されるので、予熱室から溶解室への冷鉄源搬送用装置が不要であり、予熱温度を上昇させることができる。そして、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように予熱室への冷鉄源の供給を継続しながら溶解室内の冷鉄源を溶解し、又、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶鋼を出鋼するので、次ヒートに用いる冷鉄源が全て予熱され、極めて高い予熱効率で溶解することができる。
【0015】溶解室内において生成する溶鋼中に冷鉄源が埋没して共存していると、加えられた熱エネルギーは冷鉄源を溶解するための潜熱に使用され、溶鋼温度は上昇しにくい。しかし、本発明では、少なくとも1ヒート分の溶鋼が溜まった時点で溶解室を傾動し、溶鋼と冷鉄源との接触面積を減少させて溶鋼を加熱するので、冷鉄源の潜熱に費やされる熱エネルギーが減少して溶鋼温度が上昇する。そのため、出鋼中における出鋼口の閉塞等の溶鋼温度の低下によるトラブルを未然に防止することができる。
【0016】そして、溶解室の傾動時に、溶解室に設けた冷鉄源保持手段にて溶解室内の冷鉄源を保持することで、溶解室内での溶鋼と冷鉄源との接触面積は一層低減し、溶鋼温度をより速く上昇させることができる。又、アークと共にバーナーを併用して溶鋼を加熱することで、加えられる熱エネルギーが増加して溶鋼温度が迅速に上昇する。
【0017】又、溶解中及び出鋼中に、予熱室と溶解室とに連続して存在する冷鉄源を1ヒート分の50wt%以上とすることで、冷鉄源の予熱時間が確保され、高い予熱効果を得ることができる。更に、溶解室にコークス等の炭材と酸素ガスとを供給することにより、炭材の燃焼熱が電力エネルギーの代替となると同時に、発生するCOガスがCO2 ガスに燃焼して冷鉄源を予熱するので、電力原単位を一層低減することができる。この酸素ガスの供給量は、溶鋼トン当たり25Nm3 以上とすることが好ましい。溶鋼トン当たり25Nm3 以上とすることで、後述する実施例で示すように、電力原単位の目標値である250kWh/tを安定して達成できるからである。
【0018】尚、本発明の1ヒート分の溶鋼とは、連続鋳造等の鋳造作業に用いる取鍋等の溶鋼収納搬送容器の1つの容器に収納される溶鋼量であり、これは鋳造作業を実施する建物のクレーン等の吊り上げ荷重から決まる量である。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明を図面に基づき説明する。図1及び図2は、本発明の実施の形態の1例を示すアーク炉設備の縦断面概略図であり、図1は、溶解室が水平の場合を示し、図2は、溶解室を傾動させた場合を示す図である。
【0020】図において、内部を耐火物で構築され、底部に炉底電極6を備えた溶解室2の上部には、シャフト型の予熱室3と水冷構造の炉壁4とが配置され、この予熱室3で覆われない炉壁4の上部開口部は開閉自在な水冷構造の炉蓋5で覆われている。この炉蓋5を貫通して、溶解室2内へ上下移動可能な黒鉛製の上部電極7が設けられ、直流式アーク炉1が構成されている。溶解室2は、傾動手段として、溶解室2の4角に接続する4個の昇降シリンダー9から構成された傾動装置8により傾動され、又、アーク発生用電極である炉底電極6と上部電極7とは直流電源(図示せず)に連結し、炉底電極6と上部電極7との間でアーク20を発生させる。
【0021】予熱室3の上方には、冷鉄源供給手段として、走行台車25に吊り下げられた底開き型の冷鉄源供給用バケット16が設けられ、この冷鉄源供給用バケット16より、予熱室3の上部に設けた開閉自在な冷鉄源供給口21を介して予熱室3内に、鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源17が供給される。そして、予熱室3の上端に設けられたダクト22は集塵機(図示せず)に連結し、溶解室2で発生する高温の排ガスは、予熱室3、及びダクト22を順に通って吸引され、予熱室3内の冷鉄源17は予熱される。そして、予熱された冷鉄源17は、溶解室2内で溶解された量に見合って、溶解室2内に自由落下し、溶解室2へ装入される。
【0022】炉蓋5を貫通して、溶解室2内を上下移動可能な酸素ガス吹き込みランス10と炭材吹き込みランス11とが、それぞれ酸素ガス供給手段及び炭材供給手段として設けられ、酸素ガス吹き込みランス10からは酸素ガスが溶解室2内に吹き込まれ、そして、炭材吹き込みランス11からは空気や窒素ガス等を搬送用ガスとしてコークス、チャー、石炭、木炭、黒鉛等の等の炭材が溶解室2内に吹き込まれる。又、溶解室2の予熱室3を設置した部位の反対側には、その炉底に、扉23で出口側を押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出鋼口14と、その側壁に、扉24で出口側を押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出滓口15とが設けられている。そして、この出鋼口14の鉛直上方に対応する部位の炉蓋5には、バーナー12が取り付けられている。バーナー12は、重油、灯油、微粉炭、プロパンガス、天然ガス等の化石燃料を、空気又は酸素若しくは酸素富化空気により溶解室2内で燃焼させる。
【0023】この直流式アーク炉1における操業は、先ず、図1に示すように溶解室2を水平状態とし、冷鉄源供給バケット16より予熱室3内に冷鉄源17を供給する。予熱室3内に供給された冷鉄源17は、溶解室2内にも装入され、やがて予熱室3内を充填する。尚、溶解室2内へ冷鉄源17を均一に装入するため、炉蓋5を開けて予熱室3と反対側の溶解室2内に冷鉄源17を装入することもできる。次いで、炉底電極6と上部電極7との間に直流電流を給電しつつ上部電極7を昇降させ、上部電極7と炉底電極6及び装入した冷鉄源17との間でアーク20を発生させる。そして、発生するアーク熱により冷鉄源17を溶解し、溶鋼18を生成させる。溶鋼18の生成と共に、生石灰、蛍石等のフラックスを溶解室2内に装入して、溶融スラグ19を溶鋼18上に形成させ、溶鋼18の酸化を防止すると共に溶鋼18の保温を図る。溶融スラグ19の量が多すぎる場合には、操業中でも出滓口15から、排滓することができる。
【0024】溶鋼18の生成する頃から、酸素ガス吹き込みランス10及び炭材吹き込みランス11から、酸素ガスと炭材とを溶鋼18面又は溶融スラグ19中に吹き込むことが好ましい。吹き込まれて溶鋼18中に溶解した炭材又は溶融スラグ19中に懸濁した炭材と、吹き込まれる酸素ガスとが反応して燃焼熱を発生し、補助熱源として作用し、電力使用量を節約すると共に、反応生成物のCOガスが溶融スラグ19をフォーミングさせて、アーク20が溶融スラグ19に包まれるので、アークの着熱効率が上昇する。又、大量に発生する高温のCOガスで予熱室3内の冷鉄源17は効率良く予熱される。この炭材の吹き込み量は、吹き込む酸素ガスの量に対応して決める。即ち、吹き込まれる酸素ガスの化学等量に等しい程度の炭材を添加する。炭材が吹き込まれる酸素ガスに比べて少ないと、溶鋼18が過剰に酸化するので好ましくない。酸素ガスの吹き込み量は、溶鋼トン当たり25Nm3 以上とすることが好ましい。
【0025】溶鋼18の生成と共に、予熱室3内の冷鉄源17は、溶解室2内で溶解された量に見合って溶解室2内に自由落下して減少するので、この減少分を補うために、冷鉄源供給用バケット16から予熱室3へ冷鉄源17を供給する。この冷鉄源17の予熱室3内への供給は、冷鉄源17が予熱室3と溶解室2とに連続して存在する状態を保つように、連続的又は断続的に行う。その際に、予熱室3と溶解室2とに連続して存在する冷鉄源17の量を、1ヒート分の冷鉄源17の50wt%以上とすることが好ましい。予熱室3と溶解室2とに連続して存在する冷鉄源17を、常に1ヒート分の冷鉄源17の50wt%以上確保することで、予熱効果を高めることができる。
【0026】このようにして冷鉄源17を溶解し、溶解室2内に少なくとも1ヒート分の溶鋼18が溜まった時点で、図2に示すように、傾動装置8により予熱室3側を上昇し、逆に出鋼口14側を下降して溶解室2を傾動し、溶鋼18中に埋没する冷鉄源17を減少させ、溶解室2内における溶鋼18と冷鉄源17との接触面積を低減させる。傾動後、更にアーク20により溶鋼18を加熱して溶鋼温度を上昇させる。冷鉄源17と溶鋼18との接触面積が少なくなるので、溶鋼温度が上昇しやすくなる。その際に、バーナー12を併用して加熱することが好ましい。バーナー12の併用により、溶鋼18の昇温速度が一層上昇し、溶鋼温度は1580℃程度まで上昇し、溶鋼18の大きな過熱度が得られる。
【0027】そして、加熱・昇温後、必要により脱炭等の精錬を行い、出鋼口14から溶鋼保持容器(図示せず)に溶鋼18を出鋼する。出鋼後、溶鋼18は必要により取鍋精錬炉等にて精錬した後、連続鋳造機等で鋳造する。溶鋼18を出鋼し、更に溶融スラグ19を排滓した後、溶解炉2を傾動装置8にて水平に戻し、出鋼口14及び出滓口15内に詰め砂又はマッド材を充填し、溶解を再開する。次回のヒートは予熱された冷鉄源17で溶解を開始することができる。尚、出鋼時に、数トン〜数十トンの溶鋼18を溶解室2内に残留させて、次回ヒートの溶解を再開しても良い。こうすることで初期の溶解が促進され、溶解効率が一層向上する。
【0028】このようにして溶解することで、操業の最初に用いる冷鉄源17は予熱されないが、その後に装入される冷鉄源17は全て予熱されるので、予熱効率の極めて高い状態でアーク炉操業を行うことができ、電力原単位を大幅に低減することが可能になると共に、溶鋼温度の低下による操業トラブルを未然に防止することができ、安定した操業を行うことができる。
【0029】図3、図4及び図5は、本発明の実施の形態の他の例を示すアーク炉設備の縦断面概略図であり、図3は、溶解室が水平の場合を示し、図4及び図5は、溶解室を傾動させた場合で、図4と図5では逆方向に傾動した場合を示す図である。これらの図において、図1と同一の部分は同一符号により示し、その説明は省略する。
【0030】本実施の形態では、炉蓋5を貫通して溶解室2内を上下移動可能な1個又は2個以上の邪魔板13が、予熱室2の傾動時に予熱室3内の冷鉄源17を保持するための冷鉄源保持手段として溶解室2に設置されており、その他は、溶解室2の底部断面形状、及び溶解室2と予熱室3との取り付け角度が異なるのみで、図1に示すアーク炉1と同一である。尚、邪魔板13は、耐用性の点から水冷構造とすることが好ましく、溶解室2の幅方向に2個以上設置することで、冷鉄源17の保持が容易になる。図3に示すように、溶解室2の底部形状を出鋼口14側の平坦部が広くなるようにした理由は、溶解室2を出鋼口14側に傾動させた場合に溶鋼18と冷鉄源17との接触面積が少なくなるようにしたもので、又、予熱室3を外側に傾斜させて溶解室2と連結した理由は、溶解室2を出鋼口14側に傾動させた場合に予熱室3内の冷鉄源17が溶解室2内に落下し難いようにしたものである。
【0031】図3に示すアーク炉1による操業方法は、溶解室2内に少なくとも1ヒート分の溶鋼18を溜めるまでは、前述の邪魔板13を設置しないアーク炉1の操業と同様に行い、溶解室2内に少なくとも1ヒート分の溶鋼18を溜める。そして、溶解室2内に少なくとも1ヒート分の溶鋼18が溜まった時点で、邪魔板13を溶融スラグ19の直上まで溶解室2内に挿入し、次いで、図4に示すように、傾動装置8により予熱室3側を上昇し、出鋼口14側を下降して溶解室2を傾動する。溶解室2を傾動することで溶鋼18中に埋没する冷鉄源17が減少し、更に、予熱室3の直下側の溶解室2内の冷鉄源17は邪魔板13により出鋼口14側への移動が阻害されるので、溶解室2内における溶鋼18と冷鉄源17との接触面積を一層低減することができる。傾動後、溶鋼18を加熱して溶鋼温度を上昇させる。冷鉄源17と溶鋼18との接触面積が少なくなるので、溶鋼温度が一層上昇しやすくなる。そして、加熱後、前述に従い溶鋼18を出鋼して鋳造する。
【0032】溶鋼18を出鋼し、更に溶融スラグ19を排滓した後、溶解炉2を傾動装置8にて水平に戻し、更に、図5に示すように、予熱室3側に傾動させることが好ましい。このように傾動させることで、出鋼口14側は露出して出鋼口14及び出滓口15への詰め砂又はマッド材の充填作業を容易に行うことができる。出鋼口14及び出滓口15の整備完了後、溶解室2を水平に戻し、邪魔板13を溶解室2から上昇させて、次ヒートの溶解を再開する。邪魔板13は、溶鋼18の昇温期のみに溶解室2内に挿入されるので、従来の予熱設備に設けた冷鉄源搬送設備に見られるような熱負荷による設備トラブルは発生しない。
【0033】このようにして溶解することで、出鋼時の溶鋼温度は確保され、溶鋼温度の低下による操業トラブルを防止して安定した操業を行うことができる。
【0034】尚、上記説明では、直流式アーク炉1の場合について説明したが、交流式アーク炉でも全く支障なく本発明を適用でき、又、溶解室2における予熱室3と出鋼口14との位置関係は溶解室2の中心に対して180度の対向する位置に限るものではなく90度の位置であっても良く、更に、溶解室2の底部断面形状、傾動装置8、邪魔板13、及び炉底電極6等の構造も上記に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0035】
【実施例】[実施例1]図1に示す直流式アーク炉における実施例を以下に説明する。アーク炉は、溶解室が炉径7.2m、高さ4mであり、予熱室が幅3m、長さ5m、高さ7mの直方体形状で、炉容量が180トンである。
【0036】先ず溶解室及び予熱室内に鉄スクラップ150トンを装入し、直径28インチの黒鉛製上部電極を用い、最大600V、100KAの電源容量により溶解した。溶鋼の生成と共に、生石灰と蛍石とを添加して溶融スラグを形成し、次いで、酸素ガス吹き込みランスから酸素ガスを、炭材吹き込みランスからコークスを溶融スラグ中に吹き込んだ。酸素ガスとコークスの吹き込みにより、溶融スラグはフォーミングして上部電極の先端は溶融スラグ中に埋没した。この時の電圧を400Vに設定した。
【0037】予熱室内の鉄スクラップが溶解につれて下降したら、冷鉄源供給用バケットにより鉄スクラップを予熱室に供給し、予熱室内の鉄スクラップ高さを一定の高さに保持しながら溶解を続け、溶解室内に180トンの溶鋼が生成した時点で、溶解室を出鋼口側に15度傾動し、この状態で更に400Vの電圧によるアークと重油バーナーにより加熱し、溶鋼を1580℃まで昇温した後、約60トンを溶解室に残し1ヒート分の120トンの溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼時の溶鋼の炭素濃度は0.1wt%であった。出鋼後、溶解炉を水平に戻して出鋼口及び出滓口に詰め砂を充填した後に溶解を再開し、再度溶鋼が180トンとなったら溶解炉を傾動させ、溶鋼を1580℃まで昇温して120トンの溶鋼を出鋼することを繰り返し実施した。
【0038】この溶解中、酸素ガス吹き込み量及びコークス吹き込み量を5水準に変更した試験を行った。試験1では、酸素ガス吹き込み量を溶鋼トン当たり20Nm3 (以下、「Nm3 /t」と記す)、コークス吹き込み量を溶鋼トン当たり16kg(以下、「kg/t」と記す)とした。又、酸素ガス吹き込み量及びコークス吹き込み量をそれぞれ、試験2では25Nm3 /t、20kg/t、試験3では33Nm3 /t、26kg/t、試験4では38Nm3 /t、30kg/t、試験5では45Nm3 /t、36kg/tとした。
【0039】出鋼した溶鋼は取鍋精錬炉にて1620℃に昇温し、連続鋳造機により175mm平方の断面を有するビレットに鋳造した。取鍋精錬炉の電力使用量は、各試験共に平均35kWh/tであった。
【0040】又、比較のために図1に示すアーク炉にて、ヒート毎に120トンの鉄スクラップを溶解室と予熱室とに装入し、装入した鉄スクラップを全量溶解し、次いで1590℃に昇温し、120トンの溶鋼を出鋼する試験6も実施した。試験6での酸素ガス吹き込み量及びコークス吹き込み量は、それぞれ33Nm3 /t、26kg/tであり、試験3と同じ条件である。
【0041】表1に、各試験の操業条件及び操業結果を示す。表1に示すようにアーク炉における電力原単位は、試験1で250kWh/t、試験2で230kWh/t、試験3で190kWh/t、試験4で165kWh/t、試験5で135kWh/tとなり、試験1〜5共に、試験6に比較してアーク炉における電力原単位は大幅に低減した。特に、酸素ガス吹き込み量及びコークス吹き込み量が同一な試験3と試験6との比較では、電力原単位は110kWh/t低下していた。又、取鍋精錬炉での使用電力を含めても、試験3では試験6に比較して100kWh/t低減することができた。又、出鋼から出鋼までの時間は、試験1で43分、試験2で42分、試験3で40分、試験4で39分、試験5で37分であった。
【0042】
【表1】

【0043】図6に、試験1〜5において得られた電力原単位に及ぼす酸素ガス吹き込み量の影響を示す。図6に示すように酸素ガス吹き込み量が増加するに従い電力原単位は低減し、電力原単位の目標を250kWh/tとすると、安定して250kWh/tを達成するためには、酸素ガス吹き込み量を25Nm3 /t以上とすれば良いことが分かった。このように、本発明により予熱効果が向上し、電力原単位を大幅に低減することができた。尚、表1の備考欄に本発明の範囲の試験を実施例とし、本発明以外の試験を比較例として表示した。
【0044】[実施例2]図3に示す直流式アーク炉における実施例を以下に説明する。アーク炉は、溶解室が炉径7m、高さ4mであり、予熱室が幅3m、長さ5m、高さ7mの直方体形状で、炉容量が180トンである。
【0045】先ず溶解室及び予熱室内に鉄スクラップ150トンを装入し、直径28インチの黒鉛製上部電極を用い、最大600V、100KAの電源容量により溶解した。溶鋼の生成と共に、生石灰と蛍石とを添加して溶融スラグを形成し、次いで、酸素ガス吹き込みランスから酸素ガスを33Nm3 /t、炭材吹き込みランスからコークスを26kg/t、溶融スラグ中に吹き込んだ。酸素ガスとコークスの吹き込みにより、溶融スラグはフォーミングして上部電極の先端は溶融スラグ中に埋没した。この時の電圧を400Vに設定した。
【0046】予熱室内の鉄スクラップが溶解につれて下降したら、冷鉄源供給用バケットにより鉄スクラップを予熱室に供給し、予熱室内の鉄スクラップ高さを一定の高さに保持しながら溶解を続け、溶解室内に180トンの溶鋼が生成した時点で、邪魔板を溶解室内に挿入すると共に溶解室を出鋼口側に15度傾動し、この状態で更に400Vの電圧によるアークと重油バーナーにより加熱し、溶鋼を1580℃まで昇温した後、約60トンを溶解室に残し1ヒート分の120トンの溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼時の溶鋼の炭素濃度は0.1wt%であった。出鋼後、溶解炉を水平に戻し、更に、予熱室側に10度傾動させて出鋼口及び出滓口に詰め砂を充填した後、溶解室を水平にして溶解を再開し、再度溶鋼が180トンとなったら溶解炉を出鋼口側に傾動させ、溶鋼を1580℃まで昇温して120トンの溶鋼を出鋼することを繰り返し実施した。又、出鋼した溶鋼は取鍋精錬炉により1620℃に昇温し、連続鋳造機により175mm平方の断面を有するビレットに鋳造した。取鍋精錬炉での電力使用量は平均35kWh/tであった。
【0047】この条件では、鉄スクラップと溶鋼との接触を一層少なくすることが可能となり、120トンの溶鋼を、アーク炉により電力原単位が175kWh/tで、39分間隔で出鋼することができた。そして、取鍋精錬炉での使用電力を含めても電力原単位は210kWh/tであり、電力使用量は大幅に低減した。又、邪魔板の熱による損傷は全く発生せず、安定した操業が可能であった。
【0048】
【発明の効果】本発明では、予熱室から溶解室への冷鉄源搬送用装置を必要としないため、排ガス温度を高めて冷鉄源の予熱温度を高めることが可能となり、且つ、溶解する冷鉄源のほとんどを予熱することが可能であるため、極めて高い予熱効率を維持して冷鉄源を溶解することができ、電力使用量を大幅に低減することが可能となる。又、所定量の溶鋼の溶解後は、溶解室を傾動して溶鋼と冷鉄源との接触面積を少なくし、溶鋼を加熱するので、大きな溶鋼過熱度を得ることができ、溶鋼温度の低下による操業トラブルもなく、安定して溶解することができる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】高野 茂
【公開番号】 特開平11−248356
【公開日】 平成11年(1999)9月14日
【出願番号】 特願平10−50499