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【発明の名称】 空調冷凍装置
【発明者】 【氏名】吉田 雄二
【氏名】松尾 光晴
【氏名】船倉 正三
【氏名】岡座 典穂
【課題】効率よく蓄冷および放冷が行える空調冷凍装置を提供する。

【解決手段】ホスト溶液として水を含み、ゲスト分子として、HC冷媒のR600a(イソブタン)、RC270(シクロプロパン)、R290(プロパン)、R1270(プロピレン)、R170(エタン)の各単一冷媒またはこれらの混合冷媒を含み、圧縮機2、凝縮器3、絞り装置4、蓄冷部1を直接接続し、蓄冷部1の温度および圧力を、各組合わせや重量割合に応じた、クラスレート生成範囲に制御して、クラスレートを蓄冷部1に生成することで蓄冷し、水とクラスレートの混合物を負荷10に送り放冷する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 HC冷媒を冷媒とし、少なくとも圧縮機、凝縮器、絞り装置および、ホスト溶液として水を含み、ゲスト分子として前記HC冷媒を含むクラスレート生成媒体を貯蔵する蓄冷部を有する1次冷凍サイクルと、制御手段とを備え、前記制御手段は、前記蓄冷部内の温度および圧力を、前記HC冷媒のクラスレートの臨界分解点である特定温度および圧力以下で、かつ、前記HC冷媒の飽和液圧力線とクラスレート生成限界線で挟まれた範囲に制御して、前記クラスレート生成媒体から前記クラスレートを生成させることによって、前記蓄冷部に蓄冷を行わせることを特徴とする空調冷凍装置。
【請求項2】 前記HC冷媒は、R600a(イソブタン)、RC270(シクロプロパン)、R290(プロパン)、R1270(プロピレン)、R170(エタン)の各単一冷媒又はこれらの混合冷媒であることを特徴とする請求項1に記載の空調冷凍装置。
【請求項3】 生成促進剤、融点変化剤、安定化剤またはその他の添加剤を、前記クラスレート生成媒体に混合して用いることを特徴とする請求項1または2に記載の空調冷凍装置。
【請求項4】 前記圧縮機用の冷凍機油として、前記HC冷媒と相互溶解しない化合物を含むものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空調冷凍装置。
【請求項5】 前記1次冷凍サイクルは、前記蓄冷部と前記圧縮機との間に、水分を除去するためのドライヤを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空調冷凍装置。
【請求項6】 前記クラスレート生成媒体を冷媒とし、少なくとも、放冷を行う負荷およびその負荷へ前記クラスレート生成媒体を搬送するためのポンプを有し、前記蓄冷部、前記負荷および前記ポンプによって冷凍サイクルを構成する2次冷凍サイクルを備え、前記負荷は、前記クラスレートを生成した状態の前記クラスレート生成媒体を分解することによって放冷運転することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空調冷凍装置。
【請求項7】 前記放冷運転時において、前記蓄冷部のクラスレート生成速度と、前記負荷のクラスレート分解速度を釣り合わせるように、前記圧縮機と前記ポンプの循環速度を制御することを特徴とする請求項6に記載の空調冷凍装置。
【請求項8】 前記蓄冷部を複数個備え、前記1次冷凍サイクルは、1つの前記凝縮器の出口に各々が接続され、前記各々の蓄冷部に接続された複数の前記絞り装置を有し、前記複数の絞り装置の開閉制御により、前記複数の蓄冷部のクラスレート生成による蓄冷のタイミングを制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空調冷凍装置。
【請求項9】 前記蓄冷部を複数個備え、前記1次冷凍サイクルは、1つの前記凝縮器の出口に各々が接続され、前記各々の蓄冷部に接続された複数の前記絞り装置を有し、前記2次冷凍サイクルは、前記各々の蓄冷部に接続されており、これらの接続を選択する接続選択部を有し、一部の前記複数個の蓄冷部は、他の一部の前記複数個の蓄冷部と熱交換が行える構成となっており、前記一部の前記複数個の蓄冷部が蓄冷を行っているときは、前記他の一部の前記複数個の蓄冷部が放冷を行うように、前記複数の絞り装置および前記接続選択部が操作されることを特徴とする請求項6または7に記載の空調冷凍装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空調冷凍装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の空調冷凍装置における作動媒体は、オゾン層に対する有害な影響があるとされる従来のCFC冷媒やHCFC冷媒から、オゾン層に対する脅威がない代替冷媒とされるHFC冷媒やHC冷媒に移行されつつある。
【0003】例えば冷凍用の作動媒体は、CFC冷媒のR12から、HFC冷媒のR134aや、HC冷媒のR600a(イソブタン、(CH3)2-CH-CH3、沸点−11.8 ℃)、RC270(シクロプロパン、-CH2-CH2-CH2-、沸点−33.5℃)、R290(プロパン、CH3-CH2-CH3、沸点−42.1℃)の各単一冷媒やこれらの混合冷媒への移行が提案されている。
【0004】また空調用の作動媒体は、HCFC冷媒のR22から、HFC冷媒のR32、R125、R134a等の混合冷媒や、HC冷媒のR290(プロパン)、R1270(プロピレン、CH3-CH=CH2、沸点−47.7℃)や、R170(エタン、CH3-CH3、沸点−88.8℃)との混合冷媒へ移行してきている。
【0005】ここで、HFC冷媒は、不燃性のR125やR134aを選択することや、弱燃性のR32には不燃性のR125やR134aを混合した混合冷媒とすることによって、燃焼性の低い空調冷凍装置を構成できるという利点をもつものの、物質としての地球温暖化係数が大きいという欠点をもつ。
【0006】一方、HC冷媒は、物質としての地球温暖化係数は小さいものの、R600a、RC270、R290、R1270、R170のいづれもが強燃性であり、これらを混合した混合冷媒も強燃性であるという欠点をもつ。
【0007】従って、HC冷媒を用いた空調冷凍装置においては、冷媒が漏洩しにくい機器構成を実現することが重要である。特に利用側におけるHC冷媒の漏洩を避けるためには、水等の別の2次冷媒と間接的に熱交換する2次冷媒システムの機器構成が考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したHC冷媒を用いた空調冷凍装置における2次冷媒システムは、水等の別の2次冷媒と間接的に熱交換する工程を含むため、特に冷熱を発生する1次冷凍システム側において、圧縮機の圧縮エネルギーが増大し、この観点から地球温暖化防止に貢献することが困難なものであった。
【0009】本発明は、上述した課題を考慮し、1次冷媒としてHC冷媒を用い、2次冷媒として、ホスト溶液として水を含み、ゲスト分子として前記HC冷媒を含むクラスレート生成媒体を用いることによって、効率よく蓄冷および放冷が行える空調冷凍装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の本発明は、HC冷媒を冷媒とし、少なくとも圧縮機、凝縮器、絞り装置および、ホスト溶液として水を含み、ゲスト分子として前記HC冷媒を含むクラスレート生成媒体を貯蔵する蓄冷部を有する1次冷凍サイクルと、制御手段とを備え、前記制御手段は、前記蓄冷部内の温度および圧力を、前記HC冷媒のクラスレートの臨界分解点である特定温度および圧力以下で、かつ、前記HC冷媒の飽和液圧力線とクラスレート生成限界線で挟まれた範囲に制御して、前記クラスレート生成媒体から前記クラスレートを生成させることによって、前記蓄冷部に蓄冷を行わせることを特徴とする空調冷凍装置である。
【0011】すなわち、夏季シーズン中の冷房のための空調機の使用は、主に日中、多量のエネルギーを要求するため、オフピークである夜間の電力を利用できる熱エネルギー貯蔵装置が望まれている。熱エネルギー貯蔵装置は、夜間、オフピークの間、冷凍されている作動媒体を含む。本発明は、水およびHC冷媒の直接接触から作られたクラスレート(包接化合物またはハイドレードともいう)を、熱エネルギー貯蔵装置の適当な蓄冷材や作動媒体として用いるものである。
【0012】クラスレートとは、「原子または分子が結合してできた三次元構造の内部に適当な大きさの空孔があって、その中に他の原子または分子が入り込んで特定の結晶構造を形成する物質」とされている。ホスト溶液は、三次元構造の骨格を作る物質であり、一般的には水が用いられる。ゲスト分子は、骨格の内部を満たし、クラスレートの氷構造を安定化させ、氷生成温度(0℃)よりもはるかに高い温度での生成を可能とする。クラスレートの構造は、通常、ゲスト分子の大きさに依存し、その生成および消滅条件(温度、圧力および臨界分解点)は、各ゲスト分子によって固有の値をもつ。
【0013】図1は、HC冷媒のクラスレート生成条件を、縦軸をlogスケール表示された圧力、横軸を温度とする座標平面で一般的に表したものである。クラスレートの生成条件である冷媒の圧力と温度を変化させてクラスレート生成の可否を調査した結果、図1の2本の直線で挟まれた網掛け部の範囲でのみ、クラスレートが生成されうることが確認されている(以下、この範囲を「クラスレート生成範囲」と呼ぶ)。上側の線は、当該HC冷媒の飽和液圧力線であり、下側の線は、一定圧力下で最も高温となるクラスレート生成点を結んだクラスレート生成限界線である。前記クラスレート生成限界線と前記飽和液圧力線の交点は臨界分解点と呼ばれている。この臨界分解点は、0℃よりもはるかに高い温度に相当し、この温度以上であれば、いかなる圧力においても、クラスレートを生成することはない。
【0014】すなわち、本発明の制御手段は、蓄冷部内の温度および圧力を、上記の「クラスレート生成範囲」に収まるように制御するものである。
【0015】請求項2の本発明は、前記HC冷媒は、R600a(イソブタン)、RC270(シクロプロパン)、R290(プロパン)、R1270(プロピレン)、R170(エタン)の各単一冷媒又はこれらの混合冷媒であることを特徴とする請求項1に記載の空調冷凍装置である。
【0016】請求項3の本発明は、生成促進剤、融点変化剤、安定化剤またはその他の添加剤を、前記クラスレート生成媒体に混合して用いることを特徴とする請求項1または2に記載の空調冷凍装置である。
【0017】すなわち、該クラスレート生成媒体は、クラスレート生成を促進するCO2、N2等の助ガスもしくは水とゲスト分子であるHC冷媒との間の接触を増加させることができる界面活性剤等の他の化合物が存在していてもよい。また融点を低下させるためにメタノール、エタノール、食塩、エチレングリコール等を添加したり、融点を上昇させるためにテトラエチレングリコールジメチルエーテル等を添加してもよい。
【0018】さらに該クラスレート生成媒体は、生成されたクラスレートの安定化のために、1,3−ジオキソラン、シクロブタノン、テトラヒドロフラン、シクロペンタノン、アセトン等の他の添加剤が存在していてもよい。このような性質を持つ物質としては、適当な大きさの有機鎖を持つアルコール類、ケトン類、アミン類等があげられる。
【0019】請求項4の本発明は、前記圧縮機用の冷凍機油として、前記HC冷媒と相互溶解しない化合物を含むものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空調冷凍装置である。
【0020】すなわち、圧縮機用冷凍機油として、HC冷媒と相互溶解しない化合物を用いることを特徴とするものであり、特に好ましくは、カーボネート化合物の炭酸エステル結合を構成する炭素数が、そのカーボネート化合物を構成する全炭素数の10%以上を占めることを特徴とするカーボネート化合物を基油とするものである。
【0021】また、圧縮機としては、圧縮機シリンダーの潤滑に用いた冷凍機油が、圧縮機の吐出口から微量ながら排出され、蓄冷部中に溜まって圧縮機へ戻せなくなることを避けるために、圧縮機の吐出口には油分離器を用いることが望ましいが、ここでHC冷媒と相互溶解する化合物を冷凍機油に用いると、余剰のHC冷媒を充填する必要があり、強燃性が強くなる。
【0022】請求項5の本発明は、前記1次冷凍サイクルは、前記蓄冷部と前記圧縮機との間に、水分を除去するためのドライヤを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空調冷凍装置である。
【0023】請求項6の本発明は、前記クラスレート生成媒体を冷媒とし、少なくとも、放冷を行う負荷およびその負荷へ前記クラスレート生成媒体を搬送するためのポンプを有し、前記蓄冷部、前記負荷および前記ポンプによって冷凍サイクルを構成する2次冷凍サイクルを備え、前記負荷は、前記クラスレートを生成した状態の前記クラスレート生成媒体を分解することによって放冷運転することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空調冷凍装置である。
【0024】請求項7の本発明は、前記放冷運転時において、前記蓄冷部のクラスレート生成速度と、前記負荷のクラスレート分解速度を釣り合わせるように、前記圧縮機と前記ポンプの循環速度を制御することを特徴とする請求項6に記載の空調冷凍装置である。
【0025】請求項8の本発明は、前記蓄冷部を複数個備え、前記1次冷凍サイクルは、1つの前記凝縮器の出口に各々が接続され、前記各々の蓄冷部に接続された複数の前記絞り装置を有し、前記複数の絞り装置の開閉制御により、前記複数の蓄冷部のクラスレート生成による蓄冷のタイミングを制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空調冷凍装置である。
【0026】請求項9の本発明は、前記蓄冷部を複数個備え、前記1次冷凍サイクルは、1つの前記凝縮器の出口に各々が接続され、前記各々の蓄冷部に接続された複数の前記絞り装置を有し、前記2次冷凍サイクルは、前記各々の蓄冷部に接続されており、これらの接続を選択する接続選択部を有し、一部の前記複数個の蓄冷部は、他の一部の前記複数個の蓄冷部と熱交換が行える構成となっており、前記一部の前記複数個の蓄冷部が蓄冷を行っているときは、前記他の一部の前記複数個の蓄冷部が放冷を行うように、前記複数の絞り装置および前記接続選択部が操作されることを特徴とする請求項6または7に記載の空調冷凍装置である。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0028】まず、クラストレート生成について説明する。クラスレート生成の際にゲスト分子となるHC冷媒の臨界分解点は、表1に示すとおりである。
【0029】
【表1】

【0030】表1の数値は、例えば、Felix Franks:"Water - A Comprehensive Treatise", Plenum Press (1973)の第124頁の表中の第7欄に、Q2における温度と圧力として示されている。
【0031】図2は、縦軸をlogスケール表示された圧力、横軸を温度としたときの、水と、HC冷媒のR600a(イソブタン)、RC270(シクロプロパン)、R290(プロパン)、R1270(プロピレン)、R170(エタン)の各単一冷媒のそれぞれのクラスレート臨界分解点を表示したものである。
【0032】ここで示されたHC冷媒の沸点はいずれも0℃以下であり、水とこれらHC冷媒の各単一冷媒や混合冷媒で生成されるクラスレート(0℃以上)の蒸気圧は、いずれも大気圧より高くなる。
【0033】HC冷媒の混合冷媒については、各単一冷媒の組合わせや重量割合に応じて、臨界分解点である特定温度および圧力を予測できる。
【0034】例えば、R12の代替冷媒となるR600a(イソブタン)/R290(プロパン)混合冷媒を冷媒とする場合には、R12と同等の蒸気圧とするために50/50重量%とすると、その臨界分解点は、R600a(イソブタン)の臨界分解点である温度1.88℃、圧力1.653atmと、R290(プロパン)の臨界分解点である温度5.7℃、圧力5.45atmの中間位であることが予測できる。
【0035】従って蒸発圧力がR600a(イソブタン)とR290(プロパン)の中間的な臨界分解圧力以下に制御され、圧縮機吸入温度がR600a(イソブタン)とR290(プロパン)の中間的な臨界分解温度以下に制御されているとき、クラスレートを生成する。
【0036】また、R22の代替冷媒となるR290(プロパン)/R170(エタン)混合冷媒の場合は、R22と同等の冷凍能力とするためには少量のR170(エタン)の混合でよいため、その臨界分解点は、R290(プロパン)の臨界分解点である温度5.7℃、圧力5.45atmと実質的に同一であることが予測できる。
【0037】従って蒸発圧力が実質的にR290(プロパン)と同一の臨界分解圧力以下に制御され、圧縮機吸入温度が実質的にR290(プロパン)と同一の臨界分解温度以下に制御されているとき、クラスレートを生成する。
【0038】なお、HC冷媒の中では、R600a(イソブタン)、RC270(シクロプロパン)、R290(プロパン)、R1270(プロピレン)、R170(エタン)の沸点の高い順に、クラスレート生成圧力を低くすることができ、生成されたクラスレートも安定化できる。
【0039】また、クラスレート生成による冷熱貯蔵時には発熱、クラスレート分解時には吸熱作用が起こるものである。
【0040】従って、これらのHC冷媒からなるクラスレートに、たとえ着火することがあっても、着火後に燃焼熱によりクラスレート表面が溶けて、表面を覆う水が燃焼熱を遮るため、HC冷媒を単独で用いる場合に懸念される、強燃性を回避できるものである。
【0041】さらに、該クラスレート生成媒体には、クラスレート生成を促進するための助ガスや界面活性剤、および融点を変化させたり、クラスレートを安定化させるための添加剤を混合してもよいことはもちろんのことである。界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましい。陰イオン界面活性剤等は大気中に蒸発し易いものが多く、クラスレートによる蓄冷材となった後で、水との分離が起こり乳化安定性が劣化し易い。以上に加えて、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、防かび剤等を加えることも差し支えない。また、水とクラスレートの混合体を循環させるに際して、機器壁で氷結するのを防止するための氷結防止剤を加えることも差し支えない。
【0042】(第1の実施の形態)図3は、本発明の第1の実施の形態における空調冷凍装置を示す構成図である。
【0043】クラスレートが生成貯蔵される蓄冷部1は、水で満たされており、蓄冷槽として用いられる。ゲスト分子としては、HC冷媒を含む。
【0044】この空調冷凍装置は、圧縮機2、凝縮器3、絞り装置4、噴霧ノズル5を、蒸発器に置き換えられたクラスレートが生成貯蔵される蓄冷部1と直接接続し、蓄冷部1のガス域は整流器6を介して、アキュームレータ7、圧縮機2の吸入ラインに接続した冷凍サイクルで構成されている。噴霧ノズル5は、ゲスト分子であるHC冷媒を蓄冷部1内に導入する。ゲスト分子の小滴は、水と混合して、水に近い密度を有する雪状のフレークに似ている場合、クラスレートを生成する。蓄冷部1は、水とガス冷媒を含む。HC冷媒は、1次冷凍サイクルの冷媒であると同時に、クラスレートのゲスト分子として機能する。
【0045】また、圧縮機2の吐出口には油分離器8が設けられ、その油戻り管はアキュームレータ7に接続されている。ここで圧縮機2用の冷凍機油としては、HC冷媒と相互溶解しないカーボネート化合物を基油として用いている。特に好ましくは、カーボネート化合物の炭酸エステル結合を構成する炭素数が、そのカーボネート化合物を構成する全炭素数の10%以上を占めることを特徴とするカーボネート化合物を基油とするものである。
【0046】カーボネート系冷凍機油とは、分子中に直鎖状または環状の炭酸エステル結合を有する液状物(油)を基油とする冷凍機用潤滑油を指す。炭酸エステル結合は分極率が大きく、これを分子中に有する化合物は極性が大きくなり、無極性のHC冷媒を溶解し難い。炭酸エステル結合部分以外の部分にエーテル結合、エステル結合、アミド結合あるいは尿素結合などのヘテロ原子を含有する結合部分を有する場合には、有しない場合に比べ、より極性が高くなり相互溶解し難くなる。さらに、カーボネート系冷凍機油の基油を構成するカーボネート化合物において、炭酸エステル結合を構成する炭素数が、そのカーボネート化合物を構成する全炭素数の10%以上を占める場合に、HC冷媒の冷凍機油への溶解度が小さくなるので好ましい。
【0047】さらに、直接接続される蓄冷部1と圧縮機2の間には、ゲスト分子であるHC冷媒と同時に微量の水分が圧縮機2に吸引されることを防止するために、ドライヤ9を備えている。本実施例では、同時に冷凍機油が圧縮機2の吐出口の油分離器8から油戻り管を経由するアキュームレータ7内にドライヤ9を配置している。
【0048】蓄冷運転時においては、蓄冷部1内のゲスト分子であるHC冷媒は、圧縮機2により吸引され圧縮された後、凝縮器3に導かれて凝縮液化する。この凝縮液は絞り装置4を経由して特定圧力以下まで圧力が下り、噴霧ノズル5による気化膨張の際に液冷媒が蒸発する。この際の蒸発潜熱で蓄冷部1の熱は除かれ、温度が低下して臨界分解温度以下になると、クラスレートが生成される。クラスレート生成が完了するとき、蓄冷部1はクラスレートとガス冷媒と水のみとなる。
【0049】ここでHC冷媒をゲスト分子とするときには、HC冷媒の臨界分解温度が0℃よりも高く、水との直接接触熱交換のため、蓄冷運転時の圧縮機2の圧縮エネルギーを低減でき、蓄冷効率を高めることができる。
【0050】放冷運転時においては、蓄冷部1と直接接続され、負荷10とポンプ11を介して結ぶ2次冷凍サイクル12が、蓄冷部1に熱を伝えるために使われる。水とクラスレートの混合体は負荷10に循環され、液状態で蓄冷部1に帰還し、クラスレートは特定された臨界分解温度以上に加温されて分解される。
【0051】なお、放冷運転時においては、1次側のクラスレート生成速度と2次側の負荷要求能力が釣り合うならば、1次側の圧縮機2と2次側のポンプ11の循環速度をインバータにより調整する如く制御してもよいことはもちろんのことである。
【0052】また一般に、クラスレート生成による冷熱貯蔵時には発熱、クラスレート分解時には吸熱作用が起こるため、図4に示すように、複数の蓄冷部1を設け、互いに熱交換できるようにして、冷熱貯蔵と分解時の熱回収を、複数の蓄冷部1間で行わせるようにしてもよい。
【0053】図4においては、凝縮器3の出口を複数に分岐して、複数の絞り装置4を設けて、複数の蓄冷部1に配置された複数の噴霧ノズル5からHC冷媒を導入できる構成とし、複数の絞り装置4を開閉制御すれば、複数の蓄冷部1のクラスレート生成による冷熱貯蔵のタイミングを制御することが可能となる。また、2次冷凍サイクル側においても、接続選択部13により、いずれの蓄冷部1を用いて放冷を行うかの選択が可能となっている。
【0054】さらに本発明になる空調冷凍装置に、四方弁や蓄冷部1中の間接熱交換器を設けて、四方弁の切換による加熱運転時には間接熱交換器により暖房や加温用の蓄熱を行わせるが如き変更は、すべて本発明に含まれるものである。
【0055】
【発明の効果】以上述べたところから明らかなように、本発明は、1次冷媒としてHC冷媒を用い、2次冷媒として、ホスト溶液として水を含み、ゲスト分子として前記HC冷媒を含むクラスレート生成媒体を用いることによって、効率よく蓄冷および放冷が行える空調冷凍装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
【公開番号】 特開平11−248263
【公開日】 平成11年(1999)9月14日
【出願番号】 特願平10−48219