トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F25 冷凍または冷却;加熱と冷凍との組み合わせシステム;ヒ−トポンプシステム;氷の製造または貯蔵;気体の液化または固体化




【発明の名称】 吸収式冷凍機用吸収器
【発明者】 【氏名】信田 哲滋

【氏名】松尾 弘樹

【氏名】川久保 昌章

【要約】 【課題】吸収器に収容された吸収溶液の吸収能力の向上を図る。

【解決手段】仕切り部材144により、ケーシング141内の吸収溶液の液面より下方側で連通する第1、2空間142、143を形成する。これにより、冷媒の蒸発が進行すると、第1空間142の液面が第2空間143の液面より低くなるので、密度差と気泡による攪拌により吸収溶液に自然対流が発生し、吸収溶液を攪拌することができる。したがって、濃度の低い吸収溶液と濃度の高い吸収溶液とが混ざり合うので、冷房能力が低下することを防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒を蒸発吸収させる吸収式冷凍機に適用され、蒸発した蒸気冷媒を吸収する吸収溶液が収容される吸収式冷凍機用吸収器であって、前記吸収溶液が収容されるケーシング(141)と、前記ケーシング(141)内の空間を仕切り、前記ケーシング(141)内の吸収溶液の液面より下方側で連通する第1、2空間(142、143)を形成する仕切り部材(144)とを有し、前記ケーシング(141)のうち前記両空間(142、143)が連通する連通部位(142a)より上方側には、前記蒸気冷媒を前記第1空間(142)に導く導入口(145)が形成されていることを特徴とする吸収式冷凍機用吸収器。
【請求項2】 前記仕切り部材(144)は、前記導入口(145)が形成された部位(141b)からパイプ状に延びて前記両空間(142、143)を形成しており、さらに、前記仕切り部材(144)のうち前記連通部位(142a)側端部には、略波状に切り欠かれた切り欠き部(144a)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷凍機用吸収器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸収式冷凍機において、吸収溶液が収容される吸収器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】吸収式冷凍機は、周知のごとく、水などの液冷媒を蒸発させて、その蒸発潜熱により空気などの冷却対象物(流体)を冷却するとともに、蒸発した蒸気冷媒を臭化リチウム等の吸収溶液にて吸収するものである。そして、液冷媒が収容された蒸発器内の圧力は、通常、液冷媒を封入したときに略真空にされているため、空気の冷却(冷房)を継続するには、蒸気冷媒を吸収して蒸発器内の圧力が上昇することを防止する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、蒸気冷媒の吸収は、当然ながら蒸気冷媒と吸収溶液との接触面(界面)で進行するので、界面近傍の吸収溶液が下方側の吸収溶液より濃度が低下していく。そして、蒸気冷媒の吸収が進行して吸収溶液の濃度が低くなるほど、吸収溶液の密度が小さくなるので、吸収器内で吸収溶液の自然対流が発生し難くくなり、上方(界面)側の吸収溶液と、下方側に位置して濃度(密度)が高い吸収溶液とが混合し難くなる。
【0004】したがって、蒸気冷媒が濃度の高い吸収溶液に接触する時間(機会)が短くなり、蒸気冷媒の吸収能力(吸収量)が低下するので、蒸発器内の圧力が上昇し、冷房能力が低下する。本発明は、上記点に鑑み、吸収器に収容された吸収溶液の吸収能力の向上を図ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1、2に記載の発明では、仕切り部材(144)により、ケーシング(141)内の吸収溶液の液面より下方側で連通する第1、2空間(142、143)を形成するとともに、ケーシング(141)のうち両空間(142、143)が連通する連通部位(142a)より上方側に、蒸気冷媒を第1空間(142)内に導く導入口(145)を形成したことを特徴とする。
【0006】これにより、冷媒の蒸発が進行すると、後述するように、第1空間(142)内の圧力が第2空間(143)より高くなるので、第1空間(142)の液面(以下、この液面を第1液面と呼ぶ。)が、第2空間(143)の液面(以下、この液面を第2液面と呼ぶ。)より低くなる。このため、密度が小さい吸収溶液が多く集まっている第1液面の高さが、密度が大きい吸収溶液が多く集まっている第2液面の高さより低くなっているので、密度差により吸収溶液に自然対流が発生し、吸収溶液を攪拌することができる。
【0007】したがって、濃度の低い吸収溶液と濃度の高い吸収溶液とが混ざり合うので、蒸気冷媒が濃度の高い吸収溶液と接触する時間を長くすることができる。延いては、蒸気冷媒の吸収能力(吸収量)を上昇させることができるので、冷房能力が低下することを防止できる。請求項2に記載の発明では、仕切り部材(144)のうち連通部位(142a)側端部に、略波状に切り欠かれた切り欠き部(144a)を形成したことを特徴とする。
【0008】これにより、第1液面が変動して蒸気冷媒が、第2空間(143)側に移動する際に、大きな気泡となることを防止できる。したがって、細かな気泡を第1空間(142)から第2空間(143)側に移動発生させることができるので、この細かな気泡により吸収溶液をより攪拌することができる。なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0009】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1は本実施形態に係る吸収器140を用いた吸収式冷凍機100の模式図であり、この吸収式冷凍機100は、車両停止時(エンジン停止時)の補助冷房装置として使用するものである。
【0010】図1中、110は略真空状態(0.1mmHg以下)で液冷媒(本実施形態で水)が収容されるとともに、液冷媒を冷却対象流体(本実施形態では空気)の熱により蒸発させる蒸発器(冷媒側熱交換器)である。120は室内の空気を吸入して蒸発器110に向けて送風する第1送風機であり、この第1送風機120により送風された空気は、蒸発器110にて冷却された後に、再び室内に吹き出される。
【0011】なお、蒸発器110が配設されている部位は、図2に示すように、断熱性に優れた断熱材111に覆われているとともに、蒸発器110の外壁には、空気と冷媒との熱交換を促進するフィン112が形成されている。また、樹脂製の隔壁130を挟んで蒸発器110の反対側には、蒸発した冷媒(蒸気冷媒)を吸収する吸収溶液(本実施形態では臭化リチウム)を収容する吸収器(吸収側熱交換器)140が配設されており、この吸収器140の内部と蒸発器110の内部とは、連結管150を介して連通している。
【0012】そして、吸収器140は、図3に示すように、吸収溶液を収容するケーシング本体(タンク本体)141aと、ケーシング本体141aの上方側の開口部を閉塞する蓋141bと、ケーシング本体141aおよび蓋141bからなるケーシング141内の空間を仕切るとともに、第1、2空間142、143を形成する円筒パイプ状の仕切り部材144(図4参照)とから構成されている。なお、ケーシング本体141a、蓋141bおよび仕切り部材(隔壁)144は金属にて形成されて互いに溶接されている。
【0013】そして、両空間142、143は、ケーシング141(ケーシング本体141a)内の液面より下方側で連通し、蓋141aのうち液面より上方側には、蒸気冷媒を第1空間142内に導く導入口145が形成されている。したがって、第1空間142は蒸発器110内に直接的に連通するのに対して、第2空間143は第1空間142を介して間接的に蒸発器110内に連通する構造となる。
【0014】ところで、図1中、160は吸収器140に向けて空気を送風する第2送風機であり、この第2送風機160の空気流れ下流側には、吸収器140に送風される空気を加熱するPTCヒータ(加熱手段)170が配設されている。また、第2送風機160の空気流れ上流、および吸収器140の空気流れ下流側には、室外に向けて開口する外気開口部181、182を開閉する開閉ドア(開閉手段)191、192が配設されている。そして、これら開閉ドア191、192を開閉することにより、吸収器140に送風する空気を、吸収器140が収納されたケーシング200内を循環させる場合(内気循環)と、ケーシング200外から空気を吸入してケーシング200外に放出する場合(外気循環)とに切り替える。
【0015】なお、ケーシング200は断熱性に優れた材質(本実施形態では樹脂)にて成形され、吸収器140の外壁には、吸収器140内と第2送風機160により送風された空気との熱交換を促進するフィン146(図2参照)が形成されている。次に、本実施形態の作動を述べる。
【0016】1.脱離モードこの脱離モードは、冷房運転を行う準備段階として行われるモードであり、両外気開口181、182を閉じた状態で、PTCヒータ170に通電するとともに、第1、2送風機120、160を稼動させる。これにより、吸収溶液が加熱されるので、吸収溶液に吸収された蒸気冷媒が脱離されるとともに、脱離された蒸気冷媒が蒸発器110にて冷却されて凝縮する(液冷媒になる)。
【0017】なお、PTCヒータ170は、吸収溶液の脱離作用に適した温度(臭化リチウムでは約100℃)となるように選定されている。
2.蓄冷モードこのモードは、脱離モード後、冷房運転前に行われるモードであり、両外気開口181、182を開いた状態で、PTCヒータ170への通電を停止するとともに、第1送風機120を停止し、かつ、第2送風機160を稼動させる。
【0018】これにより、蒸発器110内の液冷媒の蒸発が進行するとともに、蒸気冷媒が吸収溶液に吸収されるので、蒸発器110およびその雰囲気温度が低下していく。
3.冷房(放冷)モードこのモードでは、蓄冷モードで第1送風機120を稼動させる。これにより、室内に冷却された空気が送風される。
【0019】次に、本実施形態の特徴を述べる。蓄冷モードおよび冷房モードでは、蒸発器110内の液冷媒の蒸発が進行するので、これに呼応して蒸発器110内に直接的に連通した第1空間142の圧力が上昇するとともに、蒸気冷媒と第1空間142における吸収溶液との接触面(以下、この接触面を第1界面と呼ぶ。)で蒸気冷媒の吸収が進む。
【0020】一方、第2空間143は第1空間142を介して蒸発器110内に連通するとともに、両空間142、143の連通部分142a(図3参照)には、吸収溶液が充たされているので、第2空間143における吸収溶液は蒸気冷媒に直接的に接触することができない。したがって、第2空間143における吸収溶液は、その液面(以下、この液面を第2界面と呼ぶ。)より上部に形成された密閉空間143b(図3参照)中の蒸気冷媒を吸収するので、図5に示すように、第1空間142側の圧力P1が第2空間143側の圧力P2より高くなり、第1界面の高さが第2界面の高さより低くなる。
【0021】このため、密度が小さい吸収溶液が多く集まっている第1界面の高さが、密度が大きい吸収溶液が多く集まっている第2界面の高さより低くなっているので、密度差と気泡による攪拌により吸収溶液に自然対流が発生し、吸収溶液を攪拌することができる。したがって、濃度の低い吸収溶液と濃度の高い吸収溶液とが混ざり合うので、蒸気冷媒が濃度の高い吸収溶液に接触する時間を長くすることができ、蒸気冷媒の吸収能力(吸収量)を上昇させることができる。延いては、蒸発器110内の圧力上昇を抑制することができるので、冷房能力が低下することを防止できる。
【0022】(第2実施形態)上述の実施形態では、仕切り部材144を蓋141bから下方側に向けて延びる単純なパイプ状としたが、本実施形態は、図6に示すように、仕切り部材144のうち連通部位142a側端部に、略波状に切り欠かれた切り欠き部144aを形成したものである。
【0023】これにより、第1界面が変動して蒸気冷媒が、第2空間143(密閉空間143b)側に移動する際に、大きな気泡となることを防止できる。したがって、細かな気泡を第1空間142から第2空間143側に移動発生させることができるので、この細かな気泡により吸収溶液をより攪拌することができる。ところで、上述の実施形態では、導入口145を吸収溶液の液面(第1、2界面)より上方側に形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、導入口145を連通部位142aより上方側に形成すればよい。
【0024】また、仕切り部材144は、円筒パイプ状に限定されるものではなく、角パイプ状などその他形状であってもよい。また、冷媒をアンモニアとし、吸収溶液を水としてもよい。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成10年(1998)1月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開平11−201584
【公開日】 平成11年(1999)7月30日
【出願番号】 特願平10−7875