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【発明の名称】 積層型蒸発器
【発明者】 【氏名】吉井 桂一

【要約】 【課題】チューブ冷媒通路内に、インナーフィンにより区画された多数の小通路を形成する蒸発器において、冷却性能の向上を図る。

【解決手段】2枚の金属薄板4の接合により形成されるチューブの冷媒通路47、48内に波形状のインナーフィン49、50を配置して冷媒側の伝熱面積を拡大するとともに金属薄板4の長手方向に沿って多数の小通路49a、50aを形成する。タンク部40、41と小通路49a、50aの端部との間に形成される連通路部のうち、風上側の連通路部51、53の流通抵抗を風下側の連通路部55、57の流通抵抗より小さくすることにより、風上側小通路49a、50aへの冷媒量を多くし、風下側小通路49a、50aへの冷媒量を少なくする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 2枚の金属薄板(4、4)の接合により形成されるチューブ(2)を多数積層するとともに、前記チューブ(2)内を流れる冷媒と前記チューブ(2)の外部を流れる空気とを熱交換させる熱交換部(3)を有し、前記チューブ(2)には、前記金属薄板(4、4)の長手方向の端部から外方へ椀状に突出成形され、冷媒の分配、集合を行うタンク部(40〜43)と、このタンク部(40〜43)からの冷媒が流れる冷媒通路(47、48)とを形成し、前記冷媒通路(47、48)内には、冷媒側の伝熱面積を拡大するとともに前記金属薄板(4、4)の長手方向に沿って多数の小通路(49a、50a)を形成するインナーフィン(49、50)を配置し、前記小通路(49a、50a)のうち、前記空気の流れ方向に対して風上側に位置する小通路(49a、50a)への冷媒分配量を多くし、前記空気の流れ方向に対して風下側に位置する小通路(49a、50a)への冷媒分配量を少なくする冷媒分配調整手段(51〜58、71〜74、75〜78、45b、45c)を備えることを特徴とする積層型蒸発器。
【請求項2】 前記タンク部(40〜43)の幅寸法(W2 )を前記冷媒通路(47、48)の幅寸法(W1 )より小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の積層型蒸発器。
【請求項3】 前記インナーフィン(49、50)は、断面波形状に折り曲げ成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型蒸発器。
【請求項4】 前記冷媒分配調整手段により前記インナーフィン(49、50)の前記金属薄板(4、4)長手方向への位置決めを行うようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層型蒸発器。
【請求項5】 2枚の金属薄板(4、4)の接合により形成されるチューブ(2)を多数積層するとともに、前記チューブ(2)内を流れる冷媒と前記チューブ(2)の外部を流れる空気とを熱交換させる熱交換部(3)を有し、前記チューブ(2)には、前記金属薄板(4、4)の長手方向の端部から外方へ椀状に突出成形され、冷媒の分配、集合を行うタンク部(40〜43)と、このタンク部(40〜43)からの冷媒が流れる冷媒通路(47、48)とを形成し、前記冷媒通路(47、48)内には、冷媒側の伝熱面積を拡大するインナーフィン(49、50)を配置し、前記冷媒通路(47、48)のうち、前記空気の流れ方向に対して風上側に位置する部位への冷媒分配量を多くし、前記空気の流れ方向に対して風下側に位置する部位への冷媒分配量を少なくする冷媒分配調整手段(51〜58、71〜74、75〜78、45b、45c)を備え、この冷媒分配調整手段(51〜58、71〜74、75〜78、45b、45c)により前記インナーフィン(49、50)の前記金属薄板(4、4)長手方向への位置決めを行うようにしたことを特徴とする積層型蒸発器。
【請求項6】 前記タンク部(40〜43)と前記冷媒通路(47、48)の端部との間に連通路部(51〜58)を形成するとともに、この連通路部(51〜58)のうち、前記風上側に位置する連通路部(51〜54)の流通抵抗を前記風下側に位置する連通路部(55〜58)の流通抵抗より小さくすることにより、前記冷媒分配調整手段を構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の積層型蒸発器。
【請求項7】 前記タンク部(40〜43)の位置を前記冷媒通路(47、48)の中央部よりも前記風上側にオフセット配置することにより、前記タンク部(40〜43)と前記冷媒通路(47、48)の端部との間の部位で、前記風下側の部位のみに連通路部(71〜74)を形成し、この風下側のみの連通路部(71〜74)により前記冷媒分配調整手段を構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の積層型蒸発器。
【請求項8】 前記タンク部(40〜43)と前記冷媒通路(47、48)の端部との間に連通路部(51〜58)を形成するとともに、この連通路部(51〜58)のうち、前記風下側に位置する連通路部(55〜58)のみに冷媒流れの抵抗となる抵抗体(75〜78)を配置し、この抵抗体(75〜78)により前記冷媒分配調整手段を構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の積層型蒸発器。
【請求項9】 前記風上側に位置する連通路部(51〜54)の外周縁部を区画する傾斜面(45b)の傾斜角度(θ1 )を、前記風下側に位置する連通路部(55〜58)の外周縁部を区画する傾斜面(45c)の傾斜角度(θ2 )より大きくしたことを特徴とする請求項6に記載の積層型蒸発器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はチューブ(冷媒通路)を金属薄板の積層構造により形成する積層型蒸発器に関するもので、例えば、車両用空調装置の冷媒蒸発器として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】近年、車両用空調装置の冷媒蒸発器では、高性能化のニーズに対応するため、金属薄板の積層構造により形成されるチューブ冷媒通路内にインナーフィンを挿入して、冷媒側の伝熱面積を拡大することにより、性能向上を図ることが行われている。ここで、インナーフィンとして波形の断面形状を持つものを用いると、インナーフィンの波形状により区画された直管状の複数の小通路を冷媒が独立に流れることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような独立の複数の小通路をチューブ冷媒通路内に形成するタイプの冷媒蒸発器について、本発明者らが実際に試作、検討したところ、次のごとき現象が発生して、蒸発器性能に悪影響を及ぼすことが判明した。すなわち、冷媒側の伝熱面積を拡大する手段として、チューブ冷媒通路内にクロスリブ等の凹凸形状部を打ち出し成形するものでは、チューブ冷媒通路内での冷媒流れがチューブ幅方向に拘束されていないので、仮にチューブ冷媒通路の入口部で、冷媒分配がチューブ幅方向に偏りがあっても、この冷媒分配の偏りがチューブ冷媒通路内で修正されるが、波形状のインナーフィンを用いるものでは、波形状により区画された直管状のインナーフィン小通路がそれぞれ完全に独立しているので、チューブ冷媒通路の入口部から出口部に至るまで、冷媒は他の小通路の冷媒と混合することなく流れる。
【0004】従って、チューブ冷媒通路の入口部での冷媒分配の偏り(過不足)の影響をそのまま受けることになる。ところで、蒸発器の通常の使用条件下では、冷媒の液に対してガスの体積は70倍程度に膨張して流通抵抗を増大するので、冷媒のガス域が大きいと、冷媒は流れにくくなる。しかも、空気側の熱負荷に対して冷媒量が不足したインナーフィン小通路では、冷媒量の多い他のインナーフィン小通路よりも、上流側で冷媒の蒸発が開始されてガスの領域が拡大するので、このことが、元々の冷媒不足を一層助長することになる。
【0005】これに反し、冷媒量の多いインナーフィン小通路では、冷媒量が不足したインナーフィン小通路よりも通路の下流側で冷媒の蒸発が開始されるため、相対的にガスの領域が小さくなることで、冷媒が流れやすくなり、その結果、元々の冷媒過多をさらに助長する。従って、蒸発器使用開始時における、空気側熱負荷に対する各インナーフィン小通路への冷媒分配の過不足が、冷媒と空気との間の熱交換の結果、より一層拡大されるという現象が発生する。
【0006】ところで、各インナーフィン小通路の入口で、空気側の熱負荷に対して冷媒分配の過不足が生じた場合、冷媒が不足したインナーフィン小通路では冷却性能の低いガス域が大きく拡がり、同時に、冷媒量の多いインナーフィン小通路では冷媒過多により出口でも液冷媒が残ることになる。しかし、インナーフィン小通路の出口に位置するタンク部では、冷媒が不足したインナーフィン小通路からの冷媒と冷媒過多のインナーフィン小通路からの冷媒が混合されるので、冷媒不足のインナーフィン小通路の余分なガス量を冷媒過多のインナーフィン小通路で余った液冷媒で補うことができる。そのため、表面的には、あたかも、全てのインナーフィン小通路で均等に冷媒の蒸発(熱交換)が行われたかのように、蒸発器への冷媒流量が制御される。
【0007】この結果、全てのインナーフィン小通路で均等に冷媒の蒸発(熱交換)が行われた場合(理想状態)に比して、冷媒不足のインナーフィン小通路でのガス域の拡大により蒸発器の冷却性能を大幅に低下させることが分かった。蒸発器における熱交換部内を空気が風上側から風下側へ流れる際、空気温度は風上側から風下側へと順次下がっていくので、必然的に、風上側の小通路の最適な冷媒分配量に対して風下側の小通路の最適な冷媒分配量が少なくなるが、各チューブ冷媒通路において入口部の冷媒分配の状態を均一にした場合は、各インナーフィン小通路の入口冷媒の状態はどの通路でも同一となるから、必然的に、風上側の小通路では冷媒不足が発生し、風下側の小通路では冷媒過多が発生して、上記した不具合が発生するのである。
【0008】本発明は上記点に鑑みてなされたもので、チューブ冷媒通路内に、インナーフィンにより区画された多数の小通路を形成する蒸発器において、冷却性能の向上を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、2枚の金属薄板(4、4)の接合により形成されるチューブ(2)の冷媒通路(47、48)内に、インナーフィン(49、50)を配置して、冷媒側の伝熱面積を拡大するとともに金属薄板(4、4)の長手方向に沿って多数の小通路(49a、50a)を形成する蒸発器において、この小通路(49a、50a)のうち、空気流れ方向に対して風上側に位置する小通路(49a、50a)への冷媒分配量を多くし、空気流れ方向に対して風下側に位置する小通路(49a、50a)への冷媒分配量を少なくする冷媒分配調整手段(51〜58、71〜74、75〜78、45b、45c)を備えることを特徴としている。
【0010】これによると、インナーフィン(49、50)による冷媒側の伝熱面積の拡大による性能向上、およびインナーフィン(49、50)の接合箇所による耐圧強度向上の利点を確保しつつ、インナーフィン(49、50)により区画される多数の小通路(49a、50a)への冷媒分配量を、風上側、風下側の双方とも、空気側熱負荷に対応した適切な量に設定することが可能となる。
【0011】その結果、従来技術のような冷媒分配の過不足によるガス域の拡大が発生せず、チューブ内にインナーフィンを配置した蒸発器において冷却性能を効果的に向上できる。また、請求項2記載の発明のように、タンク部(40〜43)の幅寸法(W2)を冷媒通路(47、48)の幅寸法(W1 )より小さくすれば、タンク部(40〜43)による受圧面積拡大を抑制でき、蒸発器の耐圧強度向上のために、有利である。
【0012】なお、インナーフィン(49、50)は、請求項3記載のように断面波形状に折り曲げ成形したもので構成できる。また、請求項4記載の発明のように、冷媒分配調整手段によりインナーフィン(49、50)の金属薄板(4、4)長手方向への位置決めを行うようにすれば、組付時にインナーフィン(49、50)の位置決めを正確に行うことができ、インナーフィン(49、50)の位置ずれによる耐圧強度の低下を防止できる。しかも、冷媒分配調整手段に、インナーフィン(49、50)の位置決め手段としての役割を兼務させることができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0013】また、請求項5記載の発明では、チューブ(2)の冷媒通路(47、48)内に、冷媒側の伝熱面積を拡大するインナーフィン(49、50)を配置するとともに、冷媒通路(47、48)のうち、空気流れ方向に対して風上側に位置する部位への冷媒分配量を多くし、空気の流れ方向に対して風下側に位置する部位への冷媒分配量を少なくする冷媒分配調整手段(51〜58、71〜74、75〜78、45b、45c)を備え、この冷媒分配調整手段(51〜58、71〜74、75〜78、45b、45c)によりインナーフィン(49、50)の金属薄板(4、4)長手方向への位置決めを行うようにしたことを特徴としている。
【0014】これによると、請求項1記載の発明と同様に冷媒分配の適正化の効果を発揮できるとともに、冷媒分配調整手段にインナーフィン(49、50)の位置決め手段としての役割を兼務させることができる。また、請求項6記載の発明では、タンク部(40〜43)と冷媒通路(47、48)の端部との間に連通路部(51〜58)を形成するとともに、この連通路部(51〜58)のうち、風上側に位置する連通路部(51〜54)の流通抵抗を風下側に位置する連通路部(55〜58)の流通抵抗より小さくすることにより、冷媒分配調整手段を構成することを特徴としている。
【0015】これによると、連通路部の流通抵抗の差を持たせることにより冷媒分配調整手段を簡単に構成できる。また、請求項7記載の発明では、タンク部(40〜43)の位置を冷媒通路(47、48)の中央部よりも風上側にオフセット配置することにより、タンク部(40〜43)と冷媒通路(47、48)の端部との間の部位で、風下側の部位のみに連通路部(71〜74)を形成し、この風下側のみの連通路部(71〜74)により冷媒分配調整手段を構成することを特徴としている。
【0016】これによると、風下側のみに形成した連通路部(71〜74)により、冷媒分配調整手段を簡単に構成できる。また、請求項8記載の発明では、タンク部(40〜43)と冷媒通路(47、48)の端部との間に連通路部(51〜58)を形成するとともに、この連通路部(51〜58)のうち、風下側に位置する連通路部(55〜58)のみに冷媒流れの抵抗となる抵抗体(75〜78)を配置し、この抵抗体(75〜78)により冷媒分配調整手段を構成することを特徴としている。
【0017】これによると、風下側の連通路部(55〜58)のみに形成した抵抗体(75〜78)により、冷媒分配調整手段を簡単に構成できる。また、請求項9記載の発明では、請求項6において、風上側に位置する連通路部(51〜54)の外周縁部を区画する傾斜面(45b)の傾斜角度(θ1 )を、風下側に位置する連通路部(55〜58)の外周縁部を区画する傾斜面(45c)の傾斜角度(θ2 )より大きくしたことを特徴としている。
【0018】これによると、傾斜面(45b、45c)の傾斜角度(θ1 、θ2 )の差より冷媒分配調整手段を簡単に構成できる。なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
(第1実施形態)図1〜図5は本発明を車両用空調装置の冷凍サイクルにおける冷媒蒸発器1に適用した第1実施形態を示しており、この蒸発器1には、図示しない温度作動式膨張弁(減圧手段)で減圧され膨張した低温低圧の気液二相冷媒が流入するようになっている。
【0020】図1はこの蒸発器1の全体構成を示しており、蒸発器1は、図1に示す上下方向を上下にして、車両用空調装置の空調ユニットケース(図示せず)内に設置され、空調送風機の送風空気が図1の紙面垂直方向(図2の矢印a方向)に流れるようになっている。図1に示すように、蒸発器1は、並列に配置された多数のチューブ2を有しており、このチューブ2内を流れる冷媒とチューブ2の外部を流れる空調用送風空気(外部流体)とを熱交換させて、冷媒を蒸発させる熱交換部3を備えている。
【0021】このチューブ2は金属薄板(コアプレート)4の積層構造により形成されており、その具体的構造は基本的には公知のもの(本出願人の出願に係る特開平9−170850号公報)と同じでよいので、以下積層構造の概略を説明すると、金属薄板4は、具体的にはアルミニュウム心材の両面にろう材をクラッドした両面クラッド材を所定形状(図2参照)に成形して、これを2枚1組として多数組積層した上で、ろう付けにて接合することにより多数のチューブ2を並列に形成するものである。
【0022】金属薄板4の両端部には、図2に示すように、チューブ2よりも積層方向外方へ突出する椀状突出部(図4(b)参照)からなるタンク部40〜43が2個づつ(合計4個)形成されている。このタンク部40〜43にはそれぞれチューブ2内の冷媒通路をその両端部(図1の上端部および下端部)でそれぞれ互いに連通させる連通穴40a〜43aが形成されている。
【0023】ここで、金属薄板4の具体的形状についてより詳しく説明すると、金属薄板4の幅方向の中央部を長手方向に延びるリブ形状からなる中央仕切り部44と、金属薄板4の外縁部の全周にわたってリブ状に形成されている外周接合部45とを有している。そして、中央仕切り部44と外周接合部45との間には、この両部分44、45の面より所定寸法だけ外方へ凹んだ凹状部46(図3参照)を形成している。
【0024】従って、2枚の金属薄板4を互いに上記中央仕切り部44と外周接合部45の部分で接合することにより、上記中央仕切り部44の左右両側に2つの冷媒通路47、48を並列に形成している。この2つの冷媒通路47、48の内部には、それぞれ波形状(図4(b)参照)に成形されたインナーフィン49、50を配置している。
【0025】このインナーフィン49、50はろう材をクラッドしてないアルミニュウムベア材の薄板を波形状に成形したもので、図4(b)に示すように凹状部46の内壁面に波形状の折り曲げ頂部が接するように配置され、凹状部46の内壁面に波形状の折り曲げ頂部が一体に接合される。従って、インナーフィン49、50の波形状により区画される部分は、それぞれチューブ幅方向(図2左右方向)には独立した小通路49a、50aとなり、この小通路49a、50aを冷媒がそれぞれ独立にチューブ長手方向に流れる。
【0026】なお、図2では、上側のタンク部40、41がともに冷媒入口側のタンク部を構成し、下側のタンク部42、43がともに冷媒出口側のタンク部を構成しているので、インナーフィン49、50の多数の小通路49a、50aをそれぞれ冷媒が上方から下方へと流れる。さらに、本第1実施形態では、上下のタンク部40〜43と、2つの冷媒通路47、48(インナーフィン小通路49a、50a)の出入口部との間の連通路部の形態を次のごとく工夫している。すなわち、図3および図4の断面図に示すごとく、冷媒通路47(インナーフィン小通路49a)側、および冷媒通路48(インナーフィン小通路50a)側において、それぞれ、空気流れ方向aの風上側に位置する連通路部51〜54の通路断面積が、空気流れ方向aの風下側に位置する連通路部55〜58の通路断面積より大となるように、これら連通路部51〜58の形状を設定している。具体的には、風上側の連通路部51〜54では、2枚の金属薄板4間の間隔が大となり、風下側の連通路部55〜58では、2枚の金属薄板4間の間隔が小となるように、これら連通路部51〜58の打ち出し高さを設定している。
【0027】ところで、図1に示すように、熱交換部3において、隣接するチューブ2の外面側相互の間隙にコルゲートフィン(フィン手段)5を接合して空気側の伝熱面積の増大を図っている。このコルゲートフィン5は、ろう材をクラッドしてないアルミニュウムベア材にて波形状に成形されている。熱交換部3の金属薄板4の積層方向の一端部(図1の右端部)に位置するエンドプレート60、および、これに接合されるサイドプレート61、さらに上記積層方向の他端部(図1の左端部)に位置するエンドプレート62、および、これに接合されるサイドプレート63も、上記金属薄板4と同様に両面クラッド材から成形されており、但し、これらのプレート60、61、62、63は強度確保のため、上記金属薄板4より厚肉(例えば1mm程度)にしてある。
【0028】そして、エンドプレート60、62にも、上記金属薄板4のタンク部40〜43と同様のタンク部64〜67が形成され、さらに、右側のサイドプレート61には、上下に分断されたサイド冷媒通路14、15(図5参照)を構成する第1、第2の張出部68、69が形成され、左側のサイドプレート63には、サイド冷媒通路13(図5参照)を構成する張出部70が形成されている。
【0029】右側のサイドプレート61において、上記第1の張出部68の下端部と、第2の張出部69の上端部との間に配管ジョイント8が配置され、接合されている。この配管ジョイント8は、アルミニュウムベア材にて略長円形のブロック体に成形されており、このブロック体の厚さ方向に外部冷媒回路との接続用の冷媒出口通路穴8aと冷媒入口通路穴8bが2つ並んで貫通している。
【0030】この冷媒出口通路穴8aは上記第1の張出部68内に開口して、上記のサイド冷媒通路14の下端部に連通しており、また、冷媒入口通路穴8bは第2の張出部69内に開口してサイド冷媒通路15の上端部に連通している。本例の配管ジョイント8は冷媒出口通路穴8aと冷媒入口通路穴8bをサイドプレート長手方向に配列している。この配管ジョイント8の冷媒入口通路穴8bは、図示しない膨張弁の出口側冷媒配管に連結され、また、冷媒出口通路穴8aは、図示しない圧縮機の吸入配管に連結される。
【0031】ここで、本実施形態の蒸発器1の製造方法を簡単に説明すると、蒸発器1は図1に示す状態にチューブ2を構成する金属薄板4、コルゲートフィン5等の各部品を積層して仮組付した後、この仮組付状態を適宜の治具にて保持して、ろう付け炉内に仮組付体を搬入する。次に、このろう付け炉内にて、仮組付体をアルミニウムクラッド材のろう材の融点(600°C付近)まで加熱して、蒸発器1各部の接合箇所を一体ろう付けする。
【0032】図5は蒸発器全体の冷媒通路構成の一例を示すものであって、空気流れ方向aの風上側のタンク部40、42、および風下側のタンク部41、43の積層方向の途中に仕切り部9a〜9dを設置することにより、タンク部40〜43を■〜■の部分に仕切って、図示の実線矢印のように冷媒をUターンさせて流すようになっている。
【0033】次に、上記構成において蒸発器の作用を説明する。図5の冷媒通路構成によると、図示しない膨張弁にて減圧された低圧の気液2相冷媒は、配管ジョイント8の冷媒入口通路穴8bに流入し、この入口通路穴8bから次の経路で流れる。すなわち、入口通路穴8b→サイド冷媒通路15→風下側の下側タンク部43の第1タンク部■→チューブ2内の風下側の冷媒通路48→風下側の上側タンク部41の第1タンク部■→チューブ2内の風下側の冷媒通路48→風下側の下側タンク部43の第2タンク部■→チューブ2内の風下側の冷媒通路48→風下側の上側タンク部41の第2タンク部■→チューブ2内の風下側の冷媒通路48→風下側の下側タンク部43の第3タンク部■→サイド冷媒通路13→風上側の上側タンク部40の第1タンク部■→チューブ2内の風上側の冷媒通路47→風上側の下側タンク部42→チューブ2内の風上側の冷媒通路47→風上側の上側タンク部40の第2タンク部■→サイド冷媒通路14→冷媒出口通路穴8aの経路で流れる。このような冷媒通路構成も、前述の特開平9−170850号公報により公知である。
【0034】そして、上記した経路で冷媒がUターンしながら流れる間に、冷媒はインナーフィン49、50、金属薄板4、エンドプレート60、62、およびコルゲートフィン5を介して、熱交換部3を通過する送風空気と熱交換して蒸発する。次に、本第1実施形態の特徴とする作用について説明すると、チューブ2内の冷媒通路47、48にはそれぞれ波形状のインナーフィン49、50を配設しており、チューブ2内の冷媒通路47、48はインナーフィン49、50の波形状により多数の独立の小通路49a、50aにより区画されているので、図2において、風上側の入口側タンク部40、41から冷媒は多数の独立のインナーフィン小通路49a、50aに分配され、各小通路49a、50aをそれぞれ独立に下方へ向かって流れ、風下側の出口側タンク部42、43に集合される。
【0035】ここで、風上側の冷媒通路47および風下側の冷媒通路48において、それぞれ、空気流れ方向aの風上側に位置する連通路部51〜54の通路断面積が、空気流れ方向aの風下側に位置する連通路部55〜58の通路断面積より大となるように、これら連通路部51〜58の形状を設定しているため、風上側の連通路部51〜54の流通抵抗が小となり、風下側の連通路部55〜58の流通抵抗が大となる。
【0036】その結果、各インナーフィン小通路49a、50aに冷媒が分配される際に、各インナーフィン小通路49a、50aの風上側の冷媒分配量を多くして、風下側の冷媒分配量を少なくすることができる。それ故、送風空気温度が風上側から風下側へ向かって順次低下して、空気側の熱負荷が風上側から風下側へ向かって順次低下しても、この熱負荷の変化に対応した、適切な冷媒分配量をインナーフィン小通路49a、50aの風上側および風下側の双方で設定できることになる。
【0037】従って、多数のインナーフィン小通路49a、50a内を冷媒が独立に流れる通路形態であっても、各小通路49a、50aに対して過不足なく適切な冷媒量を分配できる。すなわち、流通抵抗の大きい風下側の連通路部55〜58によって、風下側の小通路49a、50aへの冷媒量を抑制して、風下側の冷媒過多を防止できる。これに伴って、流通抵抗の小さい風上側の連通路部51〜54によって、風上側の小通路49a、50aへの冷媒量を増大して、風上側の冷媒不足を防止できる。
【0038】このように、風上側の冷媒不足を防止することにより、風上側の小通路49a、50aにおけるガス域の拡大を防止して、蒸発器全体としての冷却性能を効果的に向上できる。また、風上側に流通抵抗の小さい連通路部51〜54を設定することにより蒸発器全体としての圧損上昇を抑制できるので、圧損上昇による弊害(蒸発圧力の上昇による冷媒蒸発器温度の上昇→冷却性能の低下)をも防止できる。
【0039】また、本第1実施形態では、図2、4に示すように、冷媒通路47、48の幅寸法W1 (図4(b)参照)に比して、タンク部40〜43の幅寸法W2 (図4(b)参照)を十分小さくしている。例えば、W2 =0.6W1 程度である。タンク部40〜43の拡大は受圧面積の拡大につながり、大きな荷重がタンク部の周縁部に作用するので、耐圧強度の観点から不利であるが、第1実施形態によると、W1 >W2 の関係に設定することより、タンク部40〜43周縁の耐圧強度を確保できる。これと同時に、波形状のインナーフィン49、50の折り曲げ頂部を金属薄板4の凹状部46の内壁に広範囲にわたって接合することにより、冷媒通路47、48部分の耐圧強度を向上できる。従って、蒸発器全体としての耐圧強度を効果的に確保できる。
【0040】さらに、本第1実施形態の構成によると、図4に示すごとく、波形状のインナーフィン49、50を収容する凹状部46の打ち出し高さよりも、風下側の連通路部55〜58の打ち出し高さが低いので、この打ち出し高さの差異に基づく段差によってインナーフィン49、50組付時における位置決めを正確に行って、インナーフィン49、50の位置ずれを確実に防止できる。
【0041】インナーフィン49、50の位置ずれはインナーフィン49、50の接合不良による著しい耐圧強度の低下を招くが、本第1実施形態では、風下側の連通路部55〜58の形成によってインナーフィン49、50の位置ずれを確実に防止できるので、耐圧強度の確保のために極めて有利である。従って、蒸発器の高性能化と耐圧強度の確保との両面からみて極めて好都合である。
【0042】また、インナーフィン小通路49a、50aの出入口とタンク部40〜43との間に位置する連通路部51〜58により、各小通路49a、50aへの冷媒分配量の適正化を実現しているから、インナーフィン小通路49a、50aやタンク部40〜43自体の形状を風上側と風下側とで変更する必要は全くない。
(第2実施形態)図6は第2実施形態による金属薄板4を示しており、第1実施形態では、風上側の冷媒通路47および風下側の冷媒通路48の幅方向(W1 方向)に対して、タンク部40〜43をそれぞれ中央位置に配置しているが、第2実施形態では、この両冷媒通路47、48の幅方向に対してタンク部40〜43をそれぞれ中央位置よりも風上側にオフセットして配置している。
【0043】この結果、風上側の入口側タンク部40、41からの冷媒が風上側のインナーフィン小通路49a、50aには直接流入するが、風下側のインナーフィン小通路49a、50aに対しては、連通路部71、73を介して冷媒が流入し、また、インナーフィン小通路49a、50aの出口側においても、風下側のインナーフィン小通路49a、50aからの冷媒は連通路部72、74を介して下側の出口側タンク部42、43に流入する。
【0044】このように、第2実施形態によると、風下側のインナーフィン小通路49a、50aに対する冷媒の出入りが連通路部71〜74を介して行われる分だけ、風上側のインナーフィン小通路49a、50aに比較して冷媒流通抵抗が増大して、風下側の小通路49a、50aへの冷媒量を抑制して、風下側の冷媒過多を防止できる。これに伴って、風上側の小通路49a、50aへの冷媒量を増大して、風上側の冷媒不足を防止できる。従って、風上側、風下側の双方の小通路49a、50aに対して過不足なく適切な冷媒量を分配できる。
【0045】また、第2実施形態では、外周接合部45の一部に、連通路部71〜74の外周側縁部を区画する傾斜面45aを形成しており、この傾斜面45aは内側へ凹状に湾曲する形状であって、この傾斜面45aの端部によりインナーフィン49、50組付時における位置決めを正確に行うことができる。
(第3実施形態)図7は第3実施形態による金属薄板4を示しており、第1実施形態の変形であり、風上側の連通路部51〜54と風下側の連通路部55〜58のうち、風下側の連通路部55〜58のみに抵抗体75〜78を形成して、風上側の連通路部51〜54よりも風下側の連通路部55〜58の流通抵抗を大きくしたものである。抵抗体75〜78は、具体的には、図7(b)の断面図に示すように、金属薄板4の凹状部46の底面から内方へ打ち出された円形突起により構成している。この円形突起の頂部は互いに当接して接合される。
【0046】このような第3実施形態の構成によっても、第1実施形態と同じ作用効果を発揮できる。なお、インナーフィン49、50組付時における位置決めは、抵抗体75〜78により正確に行うことができる。
(第4実施形態)図8は第4実施形態による金属薄板4を示しており、第4実施形態は第1、第3実施形態のごとく風上側の冷媒通路47および風下側の冷媒通路48の幅方向(W1 方向)に対して、タンク部40〜43をそれぞれ中央位置に配置する場合において、外周接合部45の一部に、連通路部51〜58の外周側縁部を区画する傾斜面45b、45cを形成するとともに、この傾斜面45b、45cの傾斜角度θ1 、θ2 を次のように設定している。
【0047】すなわち、連通路部51〜58のうち、風上側の連通路部51〜54の傾斜面45bの傾斜角度(インナーフィン49、50の長手方向端面に対する傾斜角度)θ1 を大とし、風下側の連通路部55〜58の傾斜面45cの傾斜角度(インナーフィン49、50の長手方向端面に対する傾斜角度)θ2 を小に(θ1 >θ2 )設定している。
【0048】これによると、上記θ1 >θ2 の設定により、風上側の連通路部51〜54の流通抵抗が風下側の連通路部55〜58の流通抵抗より小さくなる。その結果、風上側のインナーフィン小通路49a、50aの冷媒分配量を多くして、風下側の冷媒分配量を少なくすることができ、上記各実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0049】なお、具体的な設計例としては、20°≦θ1 ≦45°、0°≦θ2 ≦30°程度が好ましい。また、インナーフィン49、50の位置決めは、傾斜面45b、45cの端部で行うことができる。
(他の実施形態)なお、本発明の要部はインナーフィン49、50の小通路49a、50aへの冷媒分配量の改善にあるから、蒸発器1全体としての冷媒通路構成等は種々変更してもよいことは勿論である。例えば、チューブ2内の冷媒通路として、2つに仕切られた冷媒通路47、48を形成せずに、チューブ2内に1つの冷媒通路のみを形成するタイプのものにも本発明は適用できる。
【0050】また、チューブ2(金属薄板4)の長手方向の両端部にタンク部40〜43を配置するものでなく、チューブ2(金属薄板4)の長手方向の一端部のみにタンク部を配置し、チューブ2(金属薄板4)の長手方向の他端部で冷媒流れをUターンさせるタイプにも本発明は適用できる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)12月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開平11−173704
【公開日】 平成11年(1999)7月2日
【出願番号】 特願平9−340314