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【発明の名称】 冷媒封入方法
【発明者】 【氏名】榊原 久介

【氏名】黒田 泰孝

【氏名】戸松 義貴

【要約】 【課題】圧力制御弁の密閉空間内に冷媒を所定密度で封入する方法を提供する。

【解決手段】密閉空間305が形成されたエレメントケース315を臨界温度以上の所定温度に保たれた恒温室101内に配設した状態でCO2 を所定圧力で封入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放熱器(2)内の圧力が冷媒の臨界圧力(Pc)を越える蒸気圧縮式冷凍サイクルに適用されるとともに、前記放熱器(2)出口側の冷媒温度に応じて前記放熱器(2)出口側圧力を制御する圧力制御弁(3)において、前記圧力制御弁(3)内に形成された密閉空間(305)に、前記冷媒を所定密度で封入する冷媒封入方法であって、前記密閉空間(305)内の温度が前記冷媒の臨界温度(Tc)以上の所定温度となった状態にて、前記密閉空間(305)内の圧力が所定圧力となるように前記冷媒を封入することを特徴とする冷媒封入方法。
【請求項2】 雰囲気温度を前記所定温度に保つ恒温室(101)内に前記圧力制御弁(3)を配設した状態で、前記密閉空間(305)内に前記冷媒を封入することを特徴とする請求項1に記載の冷媒封入方法。
【請求項3】 放熱器(2)内の圧力が冷媒の臨界圧力(Pc)を越える蒸気圧縮式冷凍サイクルに適用されるとともに、前記放熱器(2)出口側の冷媒温度に応じて前記放熱器(2)出口側圧力を制御する圧力制御弁(3)において、前記圧力制御弁(3)内に形成された密閉空間(305)に、前記冷媒を所定密度で封入する冷媒封入装置であって、前記圧力制御弁(3)を収納し、雰囲気温度を前記冷媒の臨界温度(Tc)以上の所定温度に保つ恒温室(101)と、前記密閉空間(305)内に前記冷媒を所定圧力で封入する冷媒封入手段(102、103、104)とを有することを特徴とする冷媒封入装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二酸化炭素(以下、CO2 と記す。)を冷媒とする蒸気圧縮式冷凍サイクル(以下、CO2 サイクルと記す。)のごとく、放熱器内の圧力が冷媒の臨界圧力Pcを超える蒸気圧縮式冷凍サイクル(以下、超臨界サイクルと呼ぶ。)に適用される圧力制御弁の密閉空間内に冷媒を封入する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】CO2 サイクル用の圧力制御弁として、出願人は既に特願平8−11248号を出願しており、その圧力制御弁は、上記出願に記載のごとく、圧力制御弁内の密閉空間(制御室)内に所定密度で冷媒を封入し、その封入された冷媒の温度変化に伴う圧力変化を利用して、放熱器の出口側の冷媒温度に応じて放熱器の出口圧力を制御するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって、超臨界サイクルにおいては、圧力制御弁の密閉空間内に冷媒を所定密度で封入する必要があるのに対して、現状では未だ冷媒を所定密度で封入する方法が確立されていない。本発明は、上記点に鑑み、圧力制御弁の密閉空間内に冷媒を所定密度で封入する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1、2に記載の発明では、密閉空間(305)内の温度が冷媒の臨界温度(Tc)以上の所定温度となった状態にて、密閉空間(305)内の圧力が所定圧力となるように冷媒を封入することを特徴とする。
【0005】これにより、密閉空間(305)内に冷媒を所定密度で封入することができる。なお、密閉空間(305)内の温度を冷媒の臨界温度(Tc)以上の所定温度とするためには、請求項2に記載のごとく、雰囲気温度を前記所定温度に保つ恒温室(101)内に圧力制御弁(3)を配設した状態で冷媒を封入することが望ましい。
【0006】因みに、圧力制御弁(3)を恒温室(101)内に配設するとは、圧力制御弁(3)全体を恒温室(101)内に配設することは勿論、後述するように、密閉空間(305)が形成された圧力制御弁(3)の一部のみを恒温室(101)内に配設する場合も含む意味である。請求項3に記載の発明では、圧力制御弁(3)を収納し、雰囲気温度を冷媒の臨界温度(Tc)以上の所定温度に保つ恒温室(101)と、密閉空間(305)内に冷媒を所定圧力で封入する冷媒封入手段(102、103、104)とを有することを特徴とする。
【0007】これにより、請求項1に記載の発明と同様に、密閉空間(305)内に冷媒を所定密度にて封入することができる。なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)図1は本実施形態に係る圧力制御弁を用いたCO2 サイクルを車両用空調装置に適用したものであり、1は気相状態のCO2 を圧縮する圧縮機である。2は圧縮機1で圧縮されたCO2 を外気等との間で熱交換して冷却する放熱器(ガスクーラ)であり、3は放熱器2出口側でのCO2 温度に応じて放熱器2出口側圧力を制御する圧力制御弁である。なお、圧力制御弁3は、放熱器2出口側圧力を制御するとともに減圧器を兼ねており、CO2 は、この圧力制御弁3にて減圧されて低温低圧の気液2相状態のCO2 となる。
【0009】4は、車室内の空気冷却手段をなす蒸発器(吸熱器)で、気液2相状態のCO2 は蒸発器4内で気化(蒸発)する際に、車室内空気から蒸発潜熱を奪って車室内空気を冷却する。5は、気相状態のCO2 と液相状態のCO2 とを分離するとともに、液相状態のCO2 を一時的に蓄えるアキュームレータ(タンク手段)である。
【0010】そして、圧縮機1、放熱器2、圧力制御弁3、蒸発器4およびアキュームレータ5は、それぞれ配管6によって接続されて閉回路を形成している。なお、圧縮機1は、図示されていない駆動源(エンジン、モータ等)から駆動力を得て駆動し、放熱器2は、放熱器2内CO2 と外気との温度差をできるだけ大きくするために車両前方に配置されている。
【0011】なお、7は、圧力制御弁3の故障等により、放熱器2出口側の圧力が異常上昇したときに、圧力制御弁3を迂回してCO2 を流通させるリリーフ弁である。次に、圧力制御弁3の構造について図2を用いて述べる。301は放熱器2から蒸発器4に至るCO2 流路6aの一部を形成するととに、後述するエレメントケース315を収納するケーシングであり、301aは放熱器2側に接続される流入口301bを有する上蓋であり、301cは蒸発器4側に接続される流出口301dを有するケーシング本体である。
【0012】また、ケーシング301には、CO2 流路6aを上流側空間301eと下流側空間301fとに仕切る隔壁部302が配設されており、この隔壁部302には、上流側空間301eと下流側空間301fとを連通させる弁口303が形成されている。そして、弁口303は、針状のニードル弁体(以下、弁体と略す。)304により開閉され、この弁体303および後述するダイヤフラム306は、ダイヤフラム306の変位に連動して、ダイヤフラム306が中立状態から弁体303側(ダイヤフラム306の厚み方向他端側)に向けて変位したときに弁口303を閉じ、厚み方向一端側に向けて変位したときに弁口303の開度(弁口303を閉じた状態を基準とする弁体304の変位量)が最大となるように構成されている。 また、上流側空間301eには、密閉空間(ガス封入室)305が形成されており、この密閉空間305は、密閉空間305内外の圧力差に応じて変形変位する、ステンレス材からなる薄膜状のダイヤフラム(変位部材)306、およびダイヤフラム306の厚み方向一端側に配設されたダイヤフラム上側支持部材(形成部材)307から形成されている。
【0013】一方、ダイヤフラム306の厚み方向他端側には、ダイヤフラム上側支持部材(以下、上側支持部材と略す。)307と共にダイヤフラム306を保持固定するダイヤフラム下側支持部材(保持部材)308が配設されており、このダイヤフラム下側支持部材(以下、下側支持部材と略す。)308のうち、ダイヤフラム306に形成された変形促進部(変位部材変形部)306aに対応する部位には、図3、4に示すように、変形促進部306aに沿う形状に形成された凹部(保持部材変形部)308aが形成されている。
【0014】なお、変形促進部306aとは、ダイヤフラム306の径外方側の一部を波状に変形させたもので、ダイヤフラム306が密閉空間305内外の圧力差に略比例して変形変位するようにするためのものである。また、下側支持部材308のうちダイヤフラム306に面する部位には、弁口303が弁体304により閉じられた状態において、弁体304のうちダイヤフラム306に接触する面304aに対して略同一面となる下側平面部(保持部材平面部)308bが形成されている。
【0015】また、ダイヤフラム306の厚み方向一端側(密閉空間305内)には、図2に示すように、ダイヤフラム306を介して弁体304に対して弁口303を閉じる向きの弾性力を作用させる第1コイルばね(第1弾性部材)309が配設されており、一方、ダイヤフラム306の厚み方向他端側には、弁体304に対して弁口303を開く向きの弾性力を作用させる第2コイルバネ(第2弾性部材)310が配設されている。
【0016】また、311は第1コイルばね309のばね座を兼ねるプレート(剛体)であり、このプレート311は、ダイヤフラム306より剛性が高くなるように所定の厚みを有して金属にて構成されている。そして、プレート311は、図3、4に示すように、上側支持部材307に形成された段付き部(ストッパ部)307aに接触することにより、ダイヤフラム306が、その厚み方向一端側(密閉空間305側)に向けて所定値以上に変位することを規制している。
【0017】そして、上側支持部材307には、プレート311と段付き部307aとが接触したときに、プレート311のうちダイヤフラム306に接触する面311aに対して略同一面となる上側平面部(形成部材平面部)307bが形成されている。因みに、上側支持部材307の円筒部307cの内壁は、第1コイルばね309の案内部をも兼ねている。
【0018】なお、プレート311および弁体304は、両コイルばね309、310により互いにダイヤフラム306に向けて押し付けられているので、プレート311、弁体304およびダイヤフラム306は互いに接触した状態で一体的に変位(稼働)する。ところで、図2中、312は第2コイルばね310が弁体304に対して作用させる弾性力を調節するとともに、第2コイルばね310のプレートを兼ねる調節ネジ(弾性力調節機構)であり、この調節ネジ312は、隔壁部302に形成された雌ねじ302aにネジ結合している。因みに、両コイルバネ309、310による初期荷重(弁口303を閉じた状態での弾性力)は、ダイヤフラム306での圧力換算で約1MPaである。
【0019】また、313は密閉空間305内外に渡って上側支持部材307を貫通し、密閉空間305内にC2 を封入するための封入管(貫通部材)であり、この封入管313は、ステンレス製の上側支持部材307より熱伝導率の大きい銅等の材料から構成されている。なお、下側支持部材308もステンレス製である。そして、封入管313は、弁口303が閉じられた状態における密閉空間305内体積に対して約600kg/m3 の密度で封入した後、その端部を溶接等の接合手段により閉塞される。
【0020】なお、314は、隔壁部302〜封入管313からなるエレメントケース315をケーシング本体301c内に固定する円錐ばねであり、316はエレメントケース315(隔壁部302)とケーシング本体301cとの隙間を密閉するOリングである。因みに、図5の(a)はエレメントケース315のA矢視図であり、図5の(b)は(a)のB矢視図であり、図5から明らかなように、弁口303は隔壁部302の側面側にて上流側空間301eに連通している。
【0021】ここで、密閉空間305へのCO2 の封入方法について述べる。図6は、CO2 を所定密度で封入する冷媒封入装置100模式図であり、101は圧力制御弁3を収納するとともに、雰囲気温度をCO2 の臨界温度Tc以上の所定温度(本実施形態では約40℃)に保つ恒温室である。因みに、臨界温度Tcとは、周知のごとく、冷媒の臨界圧力Pcに対応する温度であり、CO2 では約31℃である。
【0022】なお、本実施形態では、密閉空間305はエレメントケース315内に形成されているため、恒温室101内には、圧力制御弁3全体ではなく、エレメントケース315のみを収納している。また、102は高圧(密閉空間305への封入圧より高い圧力であって、本実施形態では約13MPaである。)のCO2 が封入された制御ガスタンク(以下、タンク略す。)であり、このタンク102には、タンク102の吐出圧を一定に保つレギュレータ103が備えられ、封入管313は、レギュレータ103を介してタンク102に接続されている。
【0023】また、タンク102およびレギュレータ103は、エレメントケース315と同様に恒温室104内に収納されており、この恒温室104は、エレメントケース315が収納された恒温室101内の温度より高い温度(本実施形態では約45℃)に保たれている。なお、本実施形態では、タンク102、レギュレータ103および恒温室104により密閉空間305内に前記冷媒を所定圧力で封入する冷媒封入手段を構成している。
【0024】そして、以上に述べた冷媒封入装置100において、タンク102のバルブ(図示せず)を開いてタンク102内のCO2 を密閉空間305に導き、密閉空間305内の温度が恒温室101内の雰囲気温度と等しくなるまで、バルブを開いた状態を保持する。その後、封入管313の先端を押し潰して、封入管313を仮閉塞した後に、溶接等接合手段により確実に封入管313を閉塞する。
【0025】次に、本実施形態に係る圧力制御弁3の作動を述べる。密閉空間305内には、約600kg/m3 でCO2 が封入されているので、密閉空間305内圧と温度とは、図7に示される600kg/m3 の等密度線に沿って変化する。したがって、例えば密閉空間305内温度が20℃の場合には、その内圧は約5.8MPaである。また、弁体304には、密閉空間305の内圧と両コイルばね309、310による初期荷重とが同時に作用しているので、その作用圧力は約6.8MPaである。
【0026】したがって、放熱器2側である上流側空間301eの圧力が6.8MPa以下の場合には、弁口303は弁体304によって閉止され、また、上流側空間301eの圧力が6.8MPaを越えると、弁口303は開弁する。同様に、例えば密閉空間12内温度が40℃の場合には、密閉空間305の内圧は図8より約9.7MPaであり、弁体304に作用する作用力は約10.7MPaである。したがって、上流側空間301eの圧力が10.7MPa以下の場合には、弁口303は弁来304によって閉止され、また、上流側空間3011eの圧力が10.7MPaを越えると、弁口303は開弁する。 次に、CO2 サイクルの作動を図7を用いて説明する。
【0027】ここで、例えば放熱器2の出口側温度が40℃、かつ、放熱器2出口圧力が10.7MPa以下のときは、前述のように、圧力制御弁3は閉じているので、圧縮機1は、アキュームレータ5内に蓄えられたCO2 を吸引して放熱器2へ向けて吐出する。これにより、放熱器2の出口側圧力が上昇していく(b’−c’→b”−c”)。
【0028】そして遂に、放熱器2の出口側圧力が10.7MPaを越える(B−C)と圧力制御弁3が開弁するので、CO2 は減圧しながら気相状態から気液2相状態に相変化して(C−D)蒸発器4内に流れ込む。そして、蒸発器4内で蒸発して(D−A)空気を冷却した後、再びアキュームレータ5に還流する。このとき、放熱器2の出口側圧力が再び低下するので、圧力制御弁3は再び閉じる。
【0029】すなわち、このCO2 サイクルは、圧力制御弁3を閉じるにより、放熱器2の出口側圧力を所定の圧力まで昇圧させた後、CO2 を減圧、蒸発させて空気を冷却するものである。なお、放熱器2の出口側温度が20℃の場合も、前述の作動と同様に、圧力制御弁3は、放熱器2の出口側圧力を約6.8MPaまで昇圧させた後、開弁する。
【0030】(その他の実施形態)ところで、上述の実施形態では、タンク102が収納された恒温室104の温度をエレメントケース315(圧力制御弁3)が収納された恒温室101の温度より高くしたが、これは、確実にタンク102内のCO2 を密閉空間305内封入するためであり、この温度は、タンク102内のCO2 密度により変更してもよい。
【0031】また、タンク102内の圧力を密閉空間305の封入圧力以下として、ポンプ等によって加圧して冷媒を封入してもよい。また、封入管313の閉塞方法は、レーザ溶接(図8参照)又は封入管313の先端にろう材を被覆するとともに、コイル105にて誘導加熱してろう付けしてもよい(図9参照)。
【0032】なお、この場合、封入管313の閉塞する部分は、恒温室101の温度と等しくするとともに、密閉空間305と同圧の雰囲気中で行う必要がある。また、封入管313は、溶接等の加熱によって密閉空間305内の温度が過度に上昇することがない程度に十分な長さを確保することが望ましい。また、本発明に係る冷媒の封入方法は、CO2 サイクルに使用が限定されるものではなく、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素等の超臨界域で使用する冷媒を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルにも適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)10月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開平11−132602
【公開日】 平成11年(1999)5月21日
【出願番号】 特願平9−294505