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【発明の名称】 全熱交換素子用素材
【発明者】 【氏名】神▲野▼ 亮

【氏名】河原 克己

【要約】 【課題】潮解性物質ではない吸湿剤を使用することにより、高い吸脱湿性能を有する全熱交換素子用素材を提供する。

【解決手段】セルロース繊維をベースとし、炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトのうちの少なくとも1種類とからなる吸湿剤を塗布して構成して、潮解性による弊害をなくしつつ、高い透湿性能を保持し得るようにしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セルロース繊維をベースとし、炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトのうちの少なくとも1種類とからなる吸湿剤を塗布したことを特徴とする全熱交換素子用素材。
【請求項2】 リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等の汎用難燃剤を添加したことを特徴とする前記請求項1記載の全熱交換素子用素材。
【請求項3】 合成樹脂からなる成形向上材を添加したことを特徴とする前記請求項1および請求項2のいずれか一項記載の全熱交換素子用素材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、二つの流体(例えば、室外空気および室内空気)間で温度差による顕熱交換と湿度差による潜熱交換とを行う全熱交換器における全熱交換素子として使用される全熱交換素子用素材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、全熱交換器は、図1に示すように、二つの流体(例えば、室外空気Aおよび室内空気B)間で温度差による顕熱交換と湿度差による潜熱交換と(換言すれば、全熱交換)を行うこととなっているが、前記二つの流体A,Bがそれぞれ流れる通路1,2を、全熱交換を行うための全熱交換素子3で構成することとなっている。
【0003】前記全熱交換器素子は、高い吸脱湿性能を要求されるところから、全熱交換素子用素材として、従来から種々の材料が用いられている。
【0004】例えば、特公昭52−15071号公報に開示されているように、ハロゲン化リチウムが添加された水溶性高分子物質の溶液を通気性多孔質物体に含浸させまたは塗装した全熱交換素子用素材が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記公知例の全熱交換素子用素材の場合、吸湿剤として用いられているハロゲン化リチウムは、吸湿性能に優れてはいるものの、潮解性物質でもあるため、高湿時、特に全熱交換器の運転停止時に空気中の水分を多量に吸収すると、形くずれを起こして流体通路を十分に確保できなくなったり、全熱交換素子から水が滴下するという不具合が生じるおそれがある。
【0006】また、上記のような不具合発生を考慮して、吸湿剤であるハロゲン化リチウムの添加量を減少させると、吸湿性能が低下して潜熱交換が不十分となり、全熱交換効率が低下するという問題が生ずる。
【0007】本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、潮解性物質ではない吸湿剤を使用することにより、高い吸脱湿性能を有する全熱交換素子用素材を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明(請求項1の発明)にかかる全熱交換素子用素材は、上記課題を解決するものであり、セルロース繊維をベースとし、炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトのうちの少なくとも1種類とからなる吸湿剤を塗布して構成されている。
【0009】上記構成の全熱交換素子用素材の場合、潮解性物質ではなく、高い吸脱湿性能を有する炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトのうちの少なくとも1種類とからなる吸湿剤を用いているので、運転停止時において吸湿能力が飽和することとなり、セルロース繊維の限界保水量が少ない場合であっても結露や水の滴下が生ずることがない。
【0010】また、潮解性物質であるハロゲン化リチウム等に比べて吸湿能力はやや劣るものの、本願発明において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは多数の細孔をもっているので、セルロース繊維の1本、1本にその細孔構造をそのまま保った状態で定着できるため、吸脱湿能力が維持され、さらにセルロース繊維への塗布により吸脱湿能力が向上し、全熱交換効率が向上することとなる。
【0011】また、本願発明において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは難燃性物質であり、これをセルロース繊維に塗布することにより、難燃性を付与することができる。
【0012】また、ハロゲン化リチウムは金属に対する腐食性が大きいが、本願発明において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは中性物質のため腐食性を有していない。
【0013】また、本願発明において吸湿剤として用いられて貝化石は、石灰質や珪酸質などからなる各種ネクトン、プランクトン、藻類、海藻などが地殻変動により生きたまま集中堆積し、約8000万年後の今日、魚介類や有機物が化石とならず腐食溶性を帯びて結晶体となったものであり、酸性、中性、塩基性の有毒ガス、悪臭ガスを吸着するガス吸着性能に優れているため、全熱交換素子として使用した場合に室外空気中に含まれる有毒ガス、悪臭ガスを吸着し、これらの有毒ガス、悪臭ガスが室内へ侵入することがなくなる。
【0014】ちなみに、本願発明の全熱交換素子用素材(即ち、吸湿剤として貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを用いたもの)と、従来公知の全熱交換素子素材(即ち、吸湿剤としてハロゲンリチウムを用いたもの)とにおける吸脱湿性能を比較したところ、図2の結果が得られた。ここでは、温度20℃、湿度90%で所定時間保持した後、温度20℃、湿度45%で所定時間保持することを繰り返して吸脱湿性能テストを行った。これによると、本願発明の全熱交換素子素材の方が従来公知のものに比べて大幅な吸湿量の増加が得られるとともに、良好な脱湿性能を示すことが分かる。
【0015】請求項2の発明におけるように、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等の汎用難燃剤を添加した場合、難燃性がより一層向上する。
【0016】請求項3の発明におけるように、合成樹脂からなる成形向上材を添加した場合、強度および成形性が向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】本願発明の実施の形態にかかる全熱交換素子用素材は、図1に示す全熱交換器における全熱交換素子として使用されるものである。
【0018】前記全熱交換器は、二つの流体(例えば、室外空気Aおよび室内空気B)が流通する直交状態の空気流通路1,2を全熱交換素子3,3で形成し、前記室外空気Aと室内空気Bとの間で温度差による顕熱交換と湿度差による潜熱交換とを行うものであり、前記全熱交換素子3としては、高い透湿性と低い透気性とが要求される。
【0019】本願発明の実施の形態にかかる全熱交換素子用素材は、65重量%のセルロース繊維と15重量%の吸湿剤と20重量%の成形向上材と少量の汎用難燃剤とからなっている。
【0020】前記吸湿剤としては、炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムとアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトとからなっており、これらを所定比率で混合してスラリーを調製する。
【0021】前記成形向上材は、前記スラリーに混入してセルロース繊維への吸湿剤の定着を向上させるとともにセルロース繊維の強度向上を図るものであり、この成形向上材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂材料が用いられるが、特に防炎性のあるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0022】前記汎用難燃剤も、前記スラリーに混入されるものであり、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等が用いられる。
【0023】そして、上記スラリーをセルロース紙の表面に塗布することにより全熱交換素子用素材が得られる。
【0024】上記のようにして得られた全熱交換素子用素材は、潮解性物質ではなく、高い吸脱湿性能を有する炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムとアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトとからなる吸湿剤を用いているので、運転停止時において吸湿能力が飽和することとなり、セルロース繊維の限界保水量が少ない場合であっても結露や水の滴下が生ずることがない。
【0025】また、潮解性物質であるハロゲン化リチウム等に比べて吸湿能力はやや劣るものの、本実施の形態において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは多数の細孔をもっているので、セルロース繊維の1本、1本にその細孔構造をそのまま保った状態で定着できるため、吸脱湿能力が維持され、さらにセルロース繊維への塗布により吸脱湿能力が向上し、全熱交換効率が向上することとなる。
【0026】また、本実施の形態において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは難燃性物質であり、これをセルロース繊維に塗布することにより、難燃性を付与することができる。
【0027】また、ハロゲン化リチウムは金属に対する腐食性が大きいが、本実施の形態において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは中性物質のため腐食性を有していない。
【0028】また、本実施の形態において吸湿剤として用いられて貝化石は、酸性、中性、塩基性の有毒ガス、悪臭ガスを吸着するガス吸着性能に優れているため、全熱交換素子として使用した場合に室外空気中に含まれる有毒ガス、悪臭ガスを吸着し、これらの有毒ガス、悪臭ガスが室内へ侵入することがなくなる。
【0029】ちなみに、本願発明の実施の形態にかかる全熱交換素子(即ち、吸湿剤として貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを用いたもの)と、従来公知の全熱交換素子(即ち、吸湿剤としてハロゲンリチウムを用いたもの)とにおける吸脱湿性能を比較したところ、図2の結果が得られた。ここでは、温度20℃、湿度90%で所定時間保持した後、温度20℃、湿度45%で所定時間保持することを繰り返して吸脱湿性能テストを行った。これによると、本願発明の全熱交換素子の方が従来公知のものに比べて大幅な吸湿量の増加が得られるとともに、良好な脱湿性能を示すことが分かる。従って、高い透湿性能を示すこととなる。
【0030】なお、セルロース繊維は65〜80重量%の範囲、吸湿剤は5〜15重量%の範囲、成形向上材は10〜20重量%の範囲としても、本実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】本願発明(請求項1の発明)によれば、潮解性物質ではなく、高い吸脱湿性能を有する炭酸カルシウムを主成分とする貝化石と水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダを含むゼオライトのうちの少なくとも1種類とからなる吸湿剤を用いているので、運転停止時において吸湿能力が飽和することとなり、セルロース繊維の限界保水量が少ない場合であっても結露や水の滴下が生ずることがないという優れた効果がある。
【0032】また、潮解性物質であるハロゲン化リチウム等に比べて吸湿能力はやや劣るものの、本願発明において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは多数の細孔をもっているので、セルロース繊維の1本、1本にその細孔構造をそのまま保った状態で定着できるため、吸脱湿能力が維持され、さらにセルロース繊維への塗布により吸脱湿能力が向上し、全熱交換効率が向上する。
【0033】また、本願発明において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは難燃性物質であり、これをセルロース繊維に塗布することにより、難燃性を付与することができる。
【0034】また、ハロゲン化リチウムは金属に対する腐食性が大きいが、本願発明において吸湿剤として用いられている貝化石、水酸化アルミニウムおよびアルミナ珪酸ソーダは中性物質のため腐食性を有していない。
【0035】また、本願発明において吸湿剤として用いられて貝化石は、酸性、中性、塩基性の有毒ガス、悪臭ガスを吸着するガス吸着性能に優れているため、全熱交換素子として使用した場合に室外空気中に含まれる有毒ガス、悪臭ガスを吸着し、これらの有毒ガス、悪臭ガスが室内へ侵入することがなくなる。
【0036】請求項2の発明におけるように、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等の汎用難燃剤を添加した場合、難燃性がより一層向上する。
【0037】請求項3の発明におけるように、合成樹脂からなる成形向上材を添加した場合、強度および成形性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大浜 博
【公開番号】 特開平11−108409
【公開日】 平成11年(1999)4月23日
【出願番号】 特願平9−276961