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【発明の名称】 焼却炉及び焼却方法
【発明者】 【氏名】仁田 幸子

【要約】 【課題】ゴム、プラスチック等の製品の廃品の焼却に際しては、燃焼温度が極めて高いため完全燃焼しにくく、多量の黒煙が発生し所謂黒煙公害の原因の一つとなっていた。このような黒煙公害をなくそうとして、従来提案されていた焼却炉は、大型で高価であり、又、焼却炉内を高温に保つために多量の燃料を必要としていた。その上、未だ黒煙公害を完全になくすことができないという課題も有していた【解決手段】焼却炉1は、炉本体2と、炉本体2の上部に設けられている排気筒3とを有している。炉本体2は、側壁に設けられている被燃焼物を投入する投入口4と燃焼残渣物を取出す取出口5と燃焼を調整する所要数の空気流入調整手段6とを有し、排気筒3は、下部が炉本体内2まで延びており、底板8と側壁に設けられている所要数の通気孔9とを有している。

【解決手段】焼却炉1は、炉本体2と、炉本体2の上部に設けられている排気筒3とを有している。炉本体2は、側壁に設けられている被燃焼物を投入する投入口4と燃焼残渣物を取出す取出口5と燃焼を調整する所要数の空気流入調整手段6とを有し、排気筒3は、下部が炉本体内2まで延びており、底板8と側壁に設けられている所要数の通気孔9とを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼却炉であって、炉本体と、当該炉本体に設けられている排気筒と、を備えており、上記炉本体は、被燃焼物を投入する開閉可能な投入口と、燃焼残渣物を取出す開閉可能な取出口と、炉本体内部への空気流入量を調整する空気流入調整手段と、を含み、上記排気筒は、基端側を所要長さ上記炉本体内に突出させて導入されており、上記排気筒の基端部は閉塞されており、上記排気筒のうち、上記炉本体内の側壁には所要数の通気孔が設けられている、ことを特徴とする、焼却炉。
【請求項2】 上記炉本体及び/又は上記炉本体に設けられている排気筒が、ガスボンベ躯体を使用して製造されていることを特徴とする、請求項1記載の焼却炉。
【請求項3】 高分子化合物成形体の焼却方法であって、僅少の空気を外部から炉本体内に流入させながら被燃焼物である高分子化合物成形体を低酸素状態で燃焼させるステップを含むことを特徴とする、高分子化合物成形体の焼却方法。
【請求項4】 廃タイヤの焼却方法であって、僅少の空気を外部から炉本体内に流入させながら被燃焼物である廃タイヤを構成しているゴムを低酸素状態で燃焼させるステップ、上記ゴムが燃焼した後、廃タイヤを構成しているビードワイヤーを通常酸素状態で加熱し溶着させるステップ、を含むことを特徴とする、廃タイヤの焼却方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は焼却炉及び焼却方法に関するものである。更に詳しくは、被燃焼物中のゴムやプラスチック等の高分子化合物の燃焼による黒煙公害を防止できる焼却炉及び焼却方法に関するものである。又、別途燃料を必要としないで炉内を高温にすることができ、しかも安価に製造することができる焼却炉及び焼却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の生産の急激な伸びによりタイヤの生産も急激に伸びている。それに伴い廃タイヤも多量に発生している。これらの廃タイヤの一部は、再生ゴムや更生タイヤ等の生産に利用されている。しかし、その大部分は焼却等により処分されている。又、ゴム、プラスチック等の高分子化合物を使用して成形された産業用資材や家庭用品の生産の伸びによりこれらの廃品も多量に発生している。これらの成形体の廃品は、殆ど全てが焼却等により処分されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなゴムやプラスチック等の製品よりでる廃品の中でも量的に廃タイヤが際立って多い。しかも、タイヤは構造的にも複雑で焼却による処分が容易ではない。廃タイヤの焼却に際しては、ゴムは燃焼温度が極めて高いため完全燃焼しにくく、多量の黒煙が発生し所謂黒煙公害の原因の一つとなっていた。このような廃タイヤの焼却による黒煙公害をなくそうとして各種の焼却炉が提案されている。しかし、従来提案されていた焼却炉は、大型で高価であり、又、焼却炉内を高温に保つために多量の燃料を必要としていた。その上、未だ黒煙公害を完全になくすことができないという課題も有していた。上記産業用資材や家庭用品の廃品を焼却して処分するときも、上記廃タイヤの場合とほぼ同じ課題を有していた。
【0004】本発明は、上記課題を解決するもので、廃タイヤや高分子化合物成形体の廃品等を焼却して処分するときに黒煙公害が発生するのを防ぐことができる焼却炉及び焼却方法を提供することを目的とする。又、本発明は、廃ガスボンベ躯体等を利用することにより安価に製造することができ、燃料を使わないでも焼却炉内を高温にすることができる焼却炉及び焼却方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために講じた本発明の手段は次のとおりである。第1の発明にあっては、焼却炉であって、炉本体と、当該炉本体に設けられている排気筒と、を備えており、上記炉本体は、被燃焼物を投入する開閉可能な投入口と、燃焼残渣物を取出す開閉可能な取出口と、炉本体内部への空気流入量を調整する空気流入調整手段と、を含み、上記排気筒は、基端側を所要長さ上記炉本体内に突出させて導入されており、上記排気筒の基端部は閉塞されており、上記排気筒のうち、上記炉本体内の側壁には所要数の通気孔が設けられている、ことを特徴とする、焼却炉である。
【0006】第2の発明にあっては、上記炉本体及び/又は上記炉本体の上部に設けられている排気筒が、ガスボンベ躯体を使用して製造されていることを特徴とする、第1の発明記載の焼却炉である。
【0007】第3の発明にあっては、高分子化合物成形体の焼却方法であって、僅少の空気を外部から炉本体内に流入させながら被燃焼物である高分子化合物成形体を低酸素状態で燃焼させるステップを含むことを特徴とする、高分子化合物成形体の焼却方法である。
【0008】第4の発明にあっては、廃タイヤの焼却方法であって、僅少の空気を外部から炉本体内に流入させながら被燃焼物である廃タイヤを構成しているゴムを低酸素状態で燃焼させるステップ、上記ゴムが燃焼した後、廃タイヤを構成しているビードワイヤーを通常酸素状態で加熱し溶着させるステップ、を含むことを特徴とする、廃タイヤの焼却方法である。
【0009】焼却炉を構成する炉本体と上記炉本体に設けられている排気筒には、廃タイヤ等の焼却を考慮して廃タイヤを構成しているビードワイヤーの融点以上の融点を有する材料のものが使用される。特に、かかる性質を有する材料で製造されているガスボンベが好ましい。製造コストを考慮すると廃ガスボンベが更に好ましい。排気筒は、炉本体内に上部から空気が流入し易くなるように、高さは比較的低く、内径は比較的大きい方が好ましい。
【0010】空気流入調整手段は、上記炉本体の側部に均等な配置で複数個設けられるのが好ましい。これは廃タイヤの焼却時に加熱されたビードワイヤーに空気をほぼ均等に当てるためである。排気筒の基端側は炉本体内に突出させて導入されている。その下面は底板で塞さがれている。これによって炉本体内で焼却時に発生する黒煙は、排気筒に直接入らず外部に直接出ることもない。その結果、黒煙は炉本体内で対流を起こし易くなる。上記排気筒の側壁には通気孔が設けられている。通気孔は均等な配置で複数個設けられている。排気筒の上部から取り入れられた空気が上記通気孔を通じて炉本体内に均等に入る。又、同時に炉本体内で対流後生じた白煙が上記通気孔を通って排気筒中に均等に入る。
【0011】(作用)上記のような焼却炉を使用して廃タイヤを燃焼する場合について説明する。廃タイヤは炉本体に側壁に設けられている投入口より投入され着火される。着火後空気流入調整手段は閉じられる。タイヤを構成しているゴムは、燃焼を始めると黒煙を生じ炉本体内に充満する。
【0012】上部からは空気が少量ずつ排気筒内に入りそして側壁に設けられている通気孔より炉本体内に入っていく。この空気は炉本体内の黒煙に比べると温度が低い。従って、空気は黒煙よりも重く、炉本体内で下方に向う。同時に温度が高い黒煙は上部に向かう。その結果炉本体内で対流が起こる。極めて僅少ではあるが、閉じられている投入口及び空気流入調整手段からも、蓋の隙間から空気が本体内に入ってくることも考えられる。炉本体内では、何れにしても空気は極めて希薄な状態となっている。本明細書ではこのような状態を低酸素状態という。
【0013】炉本体内で対流が進行すると、黒煙は漸次減少し白煙に変わり、その白煙の量も減少していく。これは対流中に空気中の酸素が反応性に富んだ活性な酸素に変わり、その酸素が黒煙と反応し白煙に変えたものと考えられる。
【0014】ゴムも低酸素状態のもとで一部は燃焼し、大部分は液体に変わる。これは上記反応性に富んだ活性な酸素の活性化エネルギーによりゴムの主鎖即ち炭素−炭素間の二重結合の一部が切断され低分子化し、固体から液体に変わるものと考えられる。この液体は重油の一種であり発熱量が大きい。この液体の燃焼により炉本体内は極めて高温となり、残ったビードワイヤーは溶融状態に近い状態になる。そして、液体が完全に燃焼し尽くすのは、排気筒から排出する煙が全て白煙となり、その白煙の量も極く少量になった時点である。このように、上記液体により炉本体内は極めて高温にでき、外から燃料を補充する必要がなく燃料費が不要である。
【0015】この時点で空気流入調整手段を開き、炉本体内に外部から多量の空気を入れる。本明細書ではこのような状態を通常酸素状態という。空気流入調整手段を開き瞬間的に通常酸素状態にすると、炉本体内も瞬間的に更に高温になり、ビードワイヤーは溶着する。冷却後溶着したビードワイヤーを取出口から取出し廃タイヤの焼却を完了する。このようにして、黒煙公害を防ぐことができる。
【0016】尚、タイヤ以外のゴムだけで構成されている成形体の場合の焼却時における作用は、上記廃タイヤのゴムの焼却時における作用と殆ど同じである。尚、プラスチックだけで構成されている成形体の場合も大体同じである。
【0017】焼却炉を構成する炉本体と上記炉本体に設けられている排気筒とがガスボンベ躯体特に廃ガスボンベ躯体で製造されているものは、廃ガスボンベ躯体等がタイヤ等で使用されているビードワイヤーの融点以上の融点を有するので、高温に耐え得る焼却炉を安価に製造することができる。又、廃ガスボンベの有効な活用にもなる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明を図面に示した実施の形態に基づき更に詳細に説明する。図1は本発明に係る焼却炉の斜視図、図2は要部の端面図である。焼却炉1は炉本体2と上記炉本体2の上部に設けられている排気筒3とよりなる。炉本体2は液化天然ガス500Kg用の廃ガスボンベ、排気筒3は液化天然ガス50Kg用の廃ガスボンベを利用し、これを加工して成形されている。
【0019】炉本体2は側壁の上方に被燃焼物を投入する投入口4、下方に燃焼残渣物を取出す取出口5、空気流入調整手段6、支脚7が設けられている。上記投入口4は回動することにより開閉可能な蓋41を備えている。上記取出口5は回動することにより開閉可能な蓋51を備えている。空気流入調整手段6は相対向して二か所に設けられており、スライドすることにより開閉可能な蓋61をそれぞれ備えている。支脚7は均等な配置で四本設けられている。排気筒3はほぼ下半分が炉本体2内に設けられている。排気筒3の下面は底板8で閉塞されており、側壁には炉本体2内で周方向に均等な配置で四個の通気孔9が設けられている。排気筒3の上方には、雨や雪等が降ってきても排気筒3内に入らないように笠部材11が設けられている。
【0020】(作用)図面を参照して本実施の形態の作用を説明する。ここでは乗用車の廃タイヤ15本を焼却する場合について説明する。取出口5の蓋51を閉じ、空気流入調整手段6の蓋61を開け、投入口4より廃タイヤ5本を投入し、その上に燃えている新聞紙を投入し廃タイヤに着火する。着火後残りの廃タイヤ10本を投入し、空気流入調整手段6を閉じる。廃タイヤを構成しているゴムは燃焼を始めると黒煙を生じ炉本体2内に充満する。同時に上部から僅少の空気が排気筒3内に入ってくる。この空気は炉本体2内の黒煙に比べると温度が低いので重く下方に向かい、側壁に設けられている通気孔9より炉本体2内に入っていく。
【0021】炉本体2内は低酸素状態になっている。このとき炉本体2内は、上部では温度が低く重い空気が位置し、下部では温度が高く軽い黒煙が位置する。従って直ちに、温度が低い空気は下部に向かい、温度が高い黒煙は上部に向かい炉本体2内で対流が起こる。対流は四周に向かい炉本体2の内面と排気筒3の底板8に沿って起こるものと考えられる。
【0022】その間両者は徐々に均等に混合しつつ、空気中の酸素は、その低酸素状態と高温状態との二つの状態の相乗効果により、反応性に富んだ活性な酸素に変わるものと考えられる。このような反応性に富んだ活性な酸素が黒煙と反応し徐々に白煙に変えていくものと考えられる。このような反応は次々と繰り返され、黒煙は漸次減少し白煙に変わりその量も減少していくものと考えられる。
【0023】この間、同時にゴムも低酸素状態のもとで一部は燃焼し、大部分は上記反応性に富んだ活性な酸素にさらされ、ゴムの主鎖即ち炭素−炭素間の二重結合の一部が切断され低分子化し、固体から液体に変わるものと考えられる。この液体は重油の一種であり発熱量が大きい。この液体の燃焼により、炉本体2内は極めて高温となり、残ったビードワイヤーは溶融状態に近い状態になる。そして、液体が完全に燃焼し尽くすのは、排気筒から排出する煙が全て白煙となり、その白煙の量も極く少量になった時点である。このように、上記液体により炉本体2内は極めて高温にでき、外から燃料を補充する必要がなく燃料費が不要である。
【0024】この時点で空気流入調整手段6を開き、炉本体内2に外部から多量の空気を入れ、通常酸素状態とする。このように瞬間的に通常酸素状態にすると、炉本体2内も瞬間的に更に高温になり、ビードワイヤーは溶着し一体となる。冷却後溶着し一体となったビードワイヤーを取出口5から取出し廃タイヤの焼却を完了する。このようにして、黒煙公害を完全に防ぐことができる。
【0025】焼却炉1を構成する炉本体2と上記炉本体2の上部に設けられている排気筒3は、廃ガスボンベ躯体を使用して製造されている。これは、ビードワイヤーの融点以上の融点を有する。従って、高温に耐え得る焼却炉1を安価に製造することができる。
【0026】本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【0027】
【発明の効果】本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)ゴム等の高分子化合物の燃焼によって生じた黒煙は、炉本体内では排気筒から入ってくる僅少の空気と均一に混合しながら対流を起こす。その間黒煙は、少量の白煙に変わるので黒煙公害を防ぐことができる。
【0028】(b)排気筒の基端側は炉本体内に突出させて導入されており、その下面は底板で塞さがれている。この底板によって炉本体内で焼却時に発生する黒煙は、排気筒に直接入らず外部に直接出ることもない。その結果、黒煙は炉本体内で対流を起こし易くなり、白煙に変わるのが促進され黒煙公害を効率よく防ぐことができる。
【0029】(c)焼却炉を構成する炉本体と上記炉本体の上部に設けられている排気筒とが廃ガスボンベ躯体等を使用して製造されているものは、高温に耐え得る焼却炉を安価に製造することができる。
【0030】(d)焼却炉内は低酸素状態となっており、しかも高温状態でゴムの燃焼が進むので、ゴムは主鎖即ち炭素−炭素間の二重結合の一部が切断され低分子化し固体から高発熱量の液体に変わる。従って、この液体が高発熱量の燃料となり、焼却炉内を高温にすることができるので、燃料を外から補充する必要がなく燃料費が不要である。
【出願人】 【識別番号】599040872
【氏名又は名称】家永 一夫
【出願日】 平成9年(1997)1月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 克彦
【公開番号】 特開平11−337028
【公開日】 平成11年(1999)12月10日
【出願番号】 特願平11−131908