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【発明の名称】 車輌用前照灯
【発明者】 【氏名】斉藤 記一

【氏名】岩間 貴史

【要約】 【課題】オーバヘッドサイン照射用の上向きレンズステップを備えた車両用前照灯において、灯具意匠上の制約を軽減した上で、所要のオーバヘッドサイン照射を行えるようにする。

【解決手段】副灯点灯時のリフレクタ反射光を上向き光として偏向透過させる上向きレンズステップ12s3を横筋状に延びるレリーフとして形成し、かつ、その上部と下部とで上向き偏向角を異なる値に設定する。これにより上向きレンズステップ12s3を1本形成するだけで、所定の上下照射幅を有するオーバヘッドサイン照射光を得られるようにし、灯具意匠上の制約を軽減する。上向きレンズステップ12s3は、上向き傾斜角の異なる2つのプリズムステップ12s3A、12s3Bを上下方向に段差なく接続するようにして形成する。これにより上向きレンズステップ12s3を容易に形成可能とし、かつリフレクタ反射光を各プリズムステップ12s3A、12s3Bにより各々画一的に上向き偏向せしめ、オーバヘッドサイン照射光の光量コントロールを容易にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源と、この光源からの光を前方へ反射させるリフレクタと、このリフレクタの前方に配置されたレンズとを備え、上記レンズに、副灯点灯時の上記リフレクタからの反射光を上向き光として偏向透過させる上向きレンズステップが形成されてなる車両用前照灯において、上記上向きレンズステップが、横筋状に延びるレリーフとして形成されており、上記上向きレンズステップの上向き偏向角が、該上向きレンズステップの上部と下部とで異なる値に設定されている、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】 上記上向きレンズステップが、上向き傾斜角の異なる複数のプリズムステップを上下方向に段差なく接続するようにして形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項3】 上記上向きレンズステップが、上下方向に隣接する上記プリズムステップを曲面で滑らかに接続するようにして形成されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用前照灯。
【請求項4】 上記上向きレンズステップの鉛直断面形状が、曲線形状に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項5】 上記上向きレンズステップが、上記リフレクタの前端開口よりも左右両側まで延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、いわゆるオーバヘッドサイン照射用の上向きレンズステップを備えた車両用前照灯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両用前照灯においては、対向車ドライバや歩行者にグレアを与えないようにするため、副灯点灯時には上方光を極力抑えた配光パターンとすることが要求される。その反面、上方光を全く発生させないようにした場合には、副灯点灯状態での車両走行時に前方上方の道路案内板や道路標識等のいわゆるオーバヘッドサインが見づらくなってしまう。
【0003】このため従来より、副灯点灯時のリフレクタ反射光を上向き光として偏向透過させる上向きレンズステップをレンズステップの一部として形成し、その透過光をオーバヘッドサイン照射用として用いる工夫がなされている。
【0004】ところで、リフレクタで配光制御して所要の配光パターンを得るように構成された灯具においては、レンズは素通しレンズあるいはこれに近いものとなるので、不用意に上向きレンズステップを形成した場合には、上向きレンズステップが外観上目立ってしまい灯具意匠を損なう原因となる。
【0005】そこで従来、上向きレンズステップを横筋状に延びるレリーフとして形成することにより、灯具意匠を損なうことなくオーバヘッドサイン照射光を得る工夫もなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の車両用前照灯においては、次のような問題がある。
【0007】すなわち、オーバヘッドサイン照射光には、ある程度の上下照射幅を持たせる必要があるが、従来の上向きレンズステップは単純なプリズム状に形成されているので、図12に示すように、上向き偏向角の異なるレンズステップ2sを上下複数箇所に形成する必要がある。このため灯具意匠上の制約が大きくなり、その分だけ灯具デザインの自由度が小さくなってしまう、という問題がある。
【0008】本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、灯具意匠上の制約を軽減した上で、所要のオーバヘッドサイン照射を行うことができる車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本願発明は、上向きレンズステップを横筋状に延びるレリーフとして形成した上で、その鉛直断面形状に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】すなわち、本願発明は、請求項1に記載したように、光源と、この光源からの光を前方へ反射させるリフレクタと、このリフレクタの前方に配置されたレンズとを備え、上記レンズに、副灯点灯時の上記リフレクタからの反射光を上向き光として偏向透過させる上向きレンズステップが形成されてなる車両用前照灯において、上記上向きレンズステップが、横筋状に延びるレリーフとして形成されており、上記上向きレンズステップの上向き偏向角が、該上向きレンズステップの上部と下部とで異なる値に設定されている、ことを特徴とするものである。
【0011】上記「上向きレンズステップ」は、横筋状に延びるレリーフ(すなわち浮き彫り)として形成されたものであれば、その奥行き、上下幅、左右長さ等の寸法値は特に限定されるものではない。また、この「上向きレンズステップ」は、その上部と下部とで上向き偏向角が異なる値に設定されたものであれば、その表面形状は特に限定されるものではない。
【0012】
【発明の作用効果】上記構成に示すように、本願発明においては、副灯点灯時のリフレクタ反射光を上向き光として偏向透過させる上向きレンズステップが、横筋状に延びるレリーフとして形成されており、かつ、その上部と下部とで上向き偏向角が異なる値に設定されているので、上向きレンズステップを1本形成するだけで、所定の上下照射幅を有するオーバヘッドサイン照射光を得ることが可能となる。
【0013】したがって本願発明によれば、灯具意匠上の制約を軽減した上で、所要のオーバヘッドサイン照射を行うことができる。そしてこれにより、灯具デザインの自由度を大きくすることができる。
【0014】なお、上記「所定の上下照射幅」の具体的角度範囲は特に限定されるものではないが、例えば、仰角2〜4°の角度範囲を含む角度範囲が設定可能である。
【0015】上記構成において、上向きレンズステップの表面形状が特に限定されるものではないことは上述したとおりであるが、以下の各構成を採用すれば各々特有の作用効果を得ることができる。
【0016】すなわち、請求項2に記載したように、上向き傾斜角の異なる複数のプリズムステップを上下方向に段差なく接続するようにして上向きレンズステップを形成すれば、上向きレンズステップの形成が容易となる。しかもこのようにした場合、リフレクタ反射光は各プリズムステップにより各々画一的に上向き偏向せしめられることとなるため、オーバヘッドサイン照射光の光量コントロールが容易となる。
【0017】その際、請求項3に記載したように、上下方向に隣接するプリズムステップを曲面で滑らかに接続するようにすれば、各段のプリズムステップにより形成される配光パターンを滑らかに接続することができる。したがって、上向きレンズステップに多少の製造誤差が生じた場合においても、オーバヘッドサイン照射光を切れ目なく形成することができる。
【0018】また、請求項4に記載したように、上向きレンズステップの鉛直断面形状を曲線形状に設定すれば、オーバヘッドサイン照射光として照射すべき角度範囲を略均一に照射することができる。
【0019】上記「上向きレンズステップ」の左右長さが限定されるものでないことも上述したとおりであるが、請求項5に記載したように、リフレクタの前端開口よりも左右両側まで延びるように上向きレンズステップを形成すれば、十分なオーバヘッドサイン照射光を確保することが可能となる。しかも、このような構成とすることにより、上向きレンズステップを形成したために生じ得る灯具意匠上の違和感を最小限に抑えることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0021】まず、本願発明の第1実施形態について説明する。
【0022】図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯を示す正面であり、図2は、その側断面図である。
【0023】これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、2輪車用の2灯式前照灯(4輪車用の4灯式前照灯に対応)に用いられる副灯用灯具であって、アウタレンズ12とランプボディ14とで形成される灯室内に、いわゆるPES型の灯具ユニット16が上下左右に傾動可能に設けられてなっている。
【0024】上記灯具ユニット16は、バルブ18と、リフレクタ20と、ホルダ22と、コンデンサレンズ24と、リテーニングリング26とを備えてなっている。
【0025】上記バルブ18は、いわゆるC−8タイプのフィラメント18aを有するハロゲンバルブであり、リフレクタ20の光軸Ax上にフィラメント18aを位置せしめるようにしてリフレクタ20に取り付けられている。
【0026】上記リフレクタ20は、縦横の焦点距離が異なる楕円球をその楕円中心軸が光軸Axよりもやや上方に変位するように配置してなる反射面20aを有している。そしてこの反射面20aにより、鉛直断面内においてその第1焦点近傍に配置されたフィラメント18aからの光をその第2焦点に略収束させるようにして前方へ反射させるようになっている。
【0027】上記ホルダ22は、筒状に形成されており、その後端部においてリフレクタ20を固定支持するとともに、その前端部においてコンデンサレンズ24をリテーニングリング26を介して固定支持するようになっている。このホルダ22には、その内部空間の略下半部を塞ぐシェード28が一体形成されている。このシェード28は段違い水平上端縁28aを有しており、該シェード28でリフレクタ20からの反射光の一部を遮ることにより段違い水平カットオフラインを有する副灯配光パターンPo(図4参照)を形成するようになっている。
【0028】上記コンデンサレンズ24は、リフレクタ20の前端開口20bよりも大径に形成されており、シェード28の上方空間を通過したリフレクタ20からの反射光を集光させて、これを平行光に近づけて前方へ照射するようになっている。
【0029】上記アウタレンズ12は、そのコンデンサレンズ24の前方に位置する部分12aが、該コンデンサレンズ24よりも大径で前方へ一段突出する円形突出部として形成されている。この円形突出部12aにおける下部内面には、左右拡散用レンズステップ12s1が形成されている。また、アウタレンズ12における円形突出部12aよりも外周側に位置する部分の内面には、装飾用レンズステップ12s2が形成されている。さらに、アウタレンズ12における光軸Axのやや下方に位置する部位には、上向きレンズステップ12s3が形成されている。この上向きレンズステップ12s3は、横筋状に延びるレリーフとして形成されており、円形突出部12aの左右両端部まで延びている。
【0030】上記コンデンサレンズ24を透過したリフレクタ反射光は、やや下向き光としてアウタレンズ12の円形突出部12aに入射する。この入射光のうち上向きレンズステップ12s3に入射した光は、該上向きレンズステップ12s3により上向き光として偏向透過せしめられるようになっている。
【0031】図2のIII 部詳細図である図3に示すように、上向きレンズステップ12s3は、上向き傾斜角の異なる2つのプリズムステップ12s3A、12s3Bが上下方向に隣接して形成されてなっている。両プリズムステップ12s3A、12s3Bは、略同じ上下幅を有しており、上下方向に段差なく接続するようにして形成されている。上段に位置するプリズムステップ12s3Aは、リフレクタ反射光を水平面に対して2°上向きに偏向透過させ、下段に位置するプリズムステップ12s3Bは、リフレクタ反射光を水平面に対して4°上向きに偏向透過させるよう、両プリズムステップ12s3A、12s3Bの内面の上向き傾斜角の値が設定されている。
【0032】上記上向きレンズステップ12s3における最小奥行き寸法dは、レンズ成形の際に上向きレンズステップ12s3の形状が正確に得られるようにするため、0.2mm以上の値に設定されている。
【0033】図4は、上記車両用前照灯10により形成される副灯配光パターンを示す図である。
【0034】図示のように、本来の副灯配光パターンPoの上方には、車両前方の上方に設けられたオーバヘッドサインOHSを照射するための配光パターンP(A)、P(B)が形成される。これら配光パターンP(A)、P(B)は、上向きレンズステップ12s3からの上向き偏向透過光により形成されるものであり、プリズムステップ12s3Aにより配光パターンP(A)が形成され、プリズムステップ12s3Bにより配光パターンP(B)が形成される。
【0035】以上詳述したように、本実施形態においては、副灯点灯時のリフレクタ反射光を上向き光として偏向透過させる上向きレンズステップ12s3が、横筋状に延びるレリーフとして形成されており、かつ、その上部と下部とで上向き偏向角が異なる値に設定されているので、上向きレンズステップ12s3を1本形成するだけで、所定の上下照射幅を有するオーバヘッドサイン照射光を得ることが可能となる。
【0036】したがって本実施形態によれば、灯具意匠上の制約を軽減した上で、所要のオーバヘッドサイン照射を行うことができる。そしてこれにより、灯具デザインの自由度を大きくすることができる。
【0037】しかも、上向きレンズステップ12s3は、上向き傾斜角の異なる2つのプリズムステップ12s3Aおよび12s3Bを上下方向に段差なく接続するようにしてを形成されているので、上向きレンズステップ12s3を容易に形成することができるとともに、リフレクタ反射光が各プリズムステップ12s3A、12s3Bにより各々画一的に上向き偏向せしめられるため、オーバヘッドサイン照射光の光量コントロールを容易に行うことができる。
【0038】また、上向きレンズステップ12s3は、アウタレンズ12の円形突出部12aの左右両端部まで延びるように(すなわちリフレクタ20の前端開口20bよりも左右両側まで延びるように)形成されているので、十分なオーバヘッドサイン照射光を確保することができ、かつ、上向きレンズステップ12s3を形成したために生じ得る灯具意匠上の違和感を最小限に抑えることができる。
【0039】なお、図5に示すように、プリズムステップ12s3Aとプリズムステップ12s3Bとを上下逆に入れ替えて上向きレンズステップ12s3を形成するようにした場合においても、図4に示す配光パターンP(A)、P(B)を得ることができる。
【0040】次に、本願発明の第2実施形態を、図6〜8に基づいて説明する。
【0041】図6〜8は、第1実施形態の図3〜5と略同様の図である。
【0042】図6に示すように、本実施形態においても、第1実施形態と同様、上向きレンズステップ12s3が上向き傾斜角の異なる2つのプリズムステップ12s3Aおよび12s3Bを有しているが、本実施形態においては、これらプリズムステップ12s3Aおよび12s3B間に、両プリズムステップを曲面で滑らかに接続する中間ステップ12s3Cが形成されている。
【0043】このような中間ステップ12s3Cを介在させることにより、図7に示すように、プリズムステップ12s3A、12s3Bにより形成される配光パターン配光パターンP(A)、P(B)を配光パターンP(C)で滑らかに接続することができる。したがって、上向きレンズステップ12s3に多少の製造誤差が生じた場合(具体的にはプリズムステップ12s3A、12s3Bの上向き傾斜角に多少のバラツキが生じた場合)においても、オーバヘッドサイン照射光を切れ目なく形成することができ、これによりオーバヘッドサインOHSを確実に照射することができる。
【0044】なお、図8に示すように、プリズムステップ12s3Aとプリズムステップ12s3Bとを上下逆に入れ替えて上向きレンズステップ12s3を形成するようにした場合においても、その間に両プリズムステップ12s3A、12s3Bを曲面で滑らかに接続する中間ステップ12s3Cを形成することにより、図7に示す配光パターンP(A)、P(B)、P(C)を得ることができる。
【0045】次に、本願発明の第3実施形態を、図9〜11に基づいて説明する。
【0046】図9〜11は、第1実施形態の図3〜5と略同様の図である。
【0047】図9に示すように、本実施形態においても、第1実施形態と同様、上向きレンズステップ12s3が、その上部と下部とで上向き偏向角が異なる値に設定されているが、本実施形態における上向きレンズステップ12s3は、その鉛直断面形状が凸曲線形状に設定されたシリンドリカルレンズで構成されている。その際、上向きレンズステップ12s3の上下各端部を透過した光の上向き偏向角が各々2°、4°になるよう、その傾斜角および曲率半径の値が設定されている。
【0048】上向きレンズステップ12s3の透過偏向光により、図10に示すような配光パターンPが形成される。この配光パターンPは、均一な照度分布ないし中心部から端部にかけて徐々に暗くなる照度分布を有するものとなるため、オーバヘッドサイン照射光として照射すべき角度範囲を略均一に照射することができる。
【0049】なお、図11に示すように、上向きレンズステップ12s3を、その鉛直断面形状が凹曲線形状に設定された逆シリンドリカルレンズで構成するようにした場合においても、その傾斜角および曲率半径の値を適正に設定することにより、図10に示す配光パターンPを得ることができる。
【0050】本実施形態においては、PES型の灯具ユニット16を備えた車両用前照灯について説明したが、これ以外にもステップリフレクタユニット等のように配光制御機能を有する灯具ユニットを備えた車両用前照灯においては、アウタレンズが素通しレンズあるいはこれに近いものとなるので、本実施形態と同様の構成を採用することにより本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】また、本実施形態においては、2輪車用の2灯式前照灯に用いられる副灯用灯具について説明したが、4輪車用の4灯式前照灯に用いられる副灯用灯具の場合においても同様の作用効果を得ることができることはもちろんである。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成10年(1998)5月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
【公開番号】 特開平11−329008
【公開日】 平成11年(1999)11月30日
【出願番号】 特願平10−156790