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【発明の名称】 車両灯具用部材の製造方法
【発明者】 【氏名】西本 健志

【氏名】橋本 芳彦

【要約】 【課題】熱板融着法によりランプボディをランプレンズに接合して車両灯具用部材を製造する際のランプボディを構成する合成樹脂の糸ひき性を改良する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ABS系樹脂からなるランプボディを熱板融着法により合成樹脂製のランプレンズに接合してなる車両灯具用部材の製造方法において、融着時のABS系樹脂の熱板融着温度を360℃〜500℃としてなることを特徴とする車両灯具用部材の製造方法。
【請求項2】 ランプボディが、下記グラフト共重合体(A)100〜5重量部と下記ビニル系共重合体(B)0〜95重量部との合計100重量部を主成分とする樹脂組成物(C)からなるABS系樹脂により成形された請求項1記載の車両灯具用部材の製造方法。
(A)ゴム状重合体20〜85重量%に単量体混合物80〜15重量%をグラフト重合させてなり、前記単量体混合物が、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、及びアルキル(メタ)アクリレート化合物から選ばれた少なくとも一種のビニル系化合物100〜70重量%、及び他の共重合可能なビニル系化合物0〜30重量%からなるグラフト共重合体。
(B)シアン化ビニル化合物0〜40重量%、芳香族ビニル化合物30〜90重量%、及び他の共重合可能なビニル系化合物0〜50重量%を反応させてなるビニル系共重合体。
【請求項3】 前記ビニル系共重合体(B)の芳香族ビニル化合物中、α−メチルスチレンの含有量が、ビニル系共重合体(B)中、30〜75重量%である請求項1又は2記載の車両灯具用部材の製造方法。
【請求項4】 ABS系樹脂からなるランプボディを、融着時のABS系樹脂の熱板融着温度を360℃〜500℃として熱板融着法により合成樹脂製のランプレンズに接合してなることを特徴とする車両灯具用部材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両灯具用部材の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、ヘッドランプ、ウィンカー、ストップランプ等の車両用灯具のランプボディをランプレンズに接合して車両灯具用部材を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、合成樹脂からなるランプボディとランプレンズとを接合する方法としては、一般ABS樹脂等の熱可塑性樹脂からなるランプボディに熱板を押し当てて溶融した後ランプレンズに圧着する、いわゆる熱板融着法が、溶剤をまったく使用しないことより、環境問題の観点から採用される場合が増えている。しかしながら、この熱板融着法では、前記ABS樹脂等のランプボディを構成する熱可塑性樹脂が熱板により溶融された後、熱板を引き離す際に樹脂が糸状に引き伸ばされ(以下「糸ひき性」という。)、これがランプレンズやランプボディの成形品表面に付着することにより外観不良となる不具合が生じることがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の問題点に鑑み、熱板融着法によりランプボディをランプレンズに接合して車両灯具用部材を製造する際の、ランプボディを構成する合成樹脂の糸ひき性を改良することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる欠点を改良すべく鋭意検討した結果、ABS系樹脂から成形されたランプボディを合成樹脂からなるランプレンズに熱板融着法により接合して車両灯具用部材を製造する際の熱板融着温度を360℃〜500℃とすることにより、糸ひき性を大幅に改良しうることを見出だし、本発明に至ったものである。なお、本発明で熱板融着温度とは、融着時の熱板表面温度をいう。
【0005】さらに、本発明は、前記のような車両灯具用部材の製造方法において、ランプボディを、下記グラフト共重合体(A)100〜5重量部と下記ビニル系共重合体(B)0〜95重量部との合計100重量部を主成分とする樹脂組成物(C)により成形することを内容とする。
(A)ゴム状重合体20〜85重量%に単量体混合物80〜15重量%をグラフト重合させてなり、前記単量体混合物が、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、及びアルキル(メタ)アクリレート化合物から選ばれた少なくとも一種のビニル系化合物100〜70重量%、及び他の共重合可能なビニル系化合物0〜30重量%からなるグラフト共重合体。
(B)シアン化ビニル化合物0〜40重量%、芳香族ビニル化合物30〜90重量%、及び他の共重合可能なビニル系化合物重量0〜50重量%を反応させてなるビニル系共重合体。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明で特に重要なのは、車両灯具用部材を熱板融着法により製造する際、ランプボディを構成するABS系樹脂の熱板融着温度を360℃〜500℃として製造することである。これにより、糸ひき性が著しく改善される。熱板融着温度のより好ましい温度条件は400℃〜450℃である。熱板融着温度が360℃未満では、十分な糸ひき性改善効果が得られず、500℃を越えると、ランプレンズとの融着強度が低下して好ましくない。
【0007】本発明で用いるランプボディを構成するABS系樹脂は、下記成分よりなる共重合体である。すなわち、ランプボディは、下記グラフト共重合体(A)100〜5重量部と下記ビニル系共重合体(B)0〜95重量部との合計100重量部を主成分とする樹脂組成物(C)により成形される。
(A)ゴム状重合体20〜85重量%に単量体混合物80〜15重量%をグラフト重合させてなり、前記単量体混合物が、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート化合物から選ばれた少なくとも一種のビニル系化合物100〜70重量%、及び他の共重合可能なビニル系化合物0〜30重量%からなるグラフト共重合体。
(B)シアン化ビニル化合物0〜40重量%、芳香族ビニル系化合物30〜90重量%、及び他の共重合可能なビニル化合物0〜50重量%を反応させてなるビニル系共重合体。
【0008】前記グラフト共重合体(A)において、ゴム状重合体が20重量%未満ではランプボディの衝撃強度が低下し、また85重量%をこえると樹脂の流動性が極端に劣るため好ましくない。より好ましくは、ゴム状重合体が30〜80重量%、特に好ましくは50〜70重量%である。
【0009】前記ゴム状重合体としては、特に制限はないが、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルアクリレート−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム、ポリブチルアクリレート等のアクリル系ゴム、エチレン−プロプレン−非共役ジエンゴム(EPDM)等のポリオレフィン系ゴム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。このゴム状重合体の平均粒子径は0.05〜5μmのものが好ましい。
【0010】グラフト共重合体(A)、及びビニル系共重合体(B)で使用されるシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示され、芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、パラメチルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、α−メチルスチレン等が例示される。また、アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が例示される。さらに、他の共重合可能なビニル系化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸、メタクリル酸、N−フェニルマレイミド、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル等が挙げられ、これらの内の一種又は二種以上を用いることができる。また、ビニル系共重合体(B)で使用される芳香族ビニル系化合物としては、α−メチルスチレンが、糸ひき性、耐熱性の観点から好ましく、その含有量はビニル系共重合体(B)中、30〜75重量%、より好ましくは50〜75重量%である。
【0011】上記グラフト共重合体(A)及びビニル系共重合体(B)は、好ましくは乳化重合によって得られるが、必ずしも乳化重合に限定されない。例えば、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、乳化−塊状重合、乳化−懸濁重合等が例示される。乳化重合は通常の方法により実施できる。例えば、グラフト共重合体(A)の場合、前記単量体混合物をゴム状重合体の存在下に水性媒体中、ラジカル開始剤で重合させればよい。その際、前記グラフト重合させる単量体混合物は、混合物として使用しても、また必要に応じ、分割して使用しても良い。さらに、前記単量体混合物の添加方法としては、一度に全量仕込んでも、また逐時添加しても良く、特に制限されるものではない。
【0012】重合時のラジカル開始剤としては、過硫酸カリ、過硫酸アンモニウム、キュメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の水溶性又は油溶性の過酸化物を例示することができる。その他、重合促進剤、重合度調節剤、乳化剤も適宜選択して使用できる。重合温度としては30〜90℃が好ましい。
【0013】本発明の車両灯具用部材のランプボディを構成する樹脂組成物(C)中のグラフト共重合体(A)と共重合体(B)とのブレンド比率は、目的とする物性特性を得るために適宜決定すれば良いが、グラフト共重合体(A)が100〜5重量部、好ましくは60〜10重量部、特に好ましくは50〜20重量部、ビニル系共重合体(B)が0〜95重量部、好ましくは40〜90重量部、特に好ましくは50〜80重量部である。また、グラフト共重合体(A)を重合した後に、同一の反応器で、ビニル系共重合体(B)を重合させることも可能である。
【0014】本発明の車両灯具用部材を構成するグラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)とを主成分とする樹脂組成物(C)の極限粘度は、メチルエチルケトン可溶成分で0.25〜1.5(dl/g)(N,N−ジメチルホルムアミド溶液、30℃)の範囲が好ましい。
【0015】グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)のラテックスから樹脂組成物(C)を得る方法は公知の方法でよい。例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩や塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等の酸類により凝固して得られる。また、必要に応じて、樹脂ブレンドする場合は、一般的な方法、例えばへンシェルミキサーやリボンブレンダー等のブレンダーを用い、所望の安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、充填剤、可塑剤を加えても良い。また、通常のABS系樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂等とブレンドして使用することも可能である。
【0016】
【発明の効果】本発明に係る車両灯具用部材の製造方法は、熱板融着法において著しく糸ひき性に優れるものであり、特にヘッドランプ、ウィンカー、ストップランプ等の車両用灯具に使用することができる。
【0017】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。尚、実施例の記載中で、「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0018】(イ)グラフト共重合体(A)の製造攪拌機付き反応缶に次の物質を仕込んだ。
水; 250部 ゴム状重合体; 表1に記載した種類、量 ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート;0.3部 硫酸第一鉄; 0.0025部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム; 0.01部脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、表1に示す単量体混合物を連続的に5時間で滴下添加し、添加終了後、さらに60℃で1時間撹拌を続け重合を終了した。
【0019】
【表1】

【0020】(ロ)ビニル共重合体(B)の製造攪拌機付き反応缶に次の物質を仕込んだ。
水; 250部 ラウリン酸ソーダ; 3部 ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート; 0.4部 硫酸第一鉄; 0.0025部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム; 0.01部脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、表2に示すモノマー(I)を仕込んだ。十分乳化させた後、表2に示すモノマー(II)を連続的に6時間で滴下添加した。添加終了後、さらに60℃で1時間撹拌を続け重合を終了した。
【0021】
【表2】

【0022】(ハ)車両灯具用ランプボディ樹脂(C)の製造前記(イ)、(ロ)で製造したグラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)を、それぞれラテックス状態で表3に記載した比率(固形分)で混合し、この混合ラテックスに酸化防止剤を添加し、塩化カルシウムで凝固させた後、加熱、脱水、水洗、乾燥後、得られたパウダーを250℃の温度で押出機(大阪精機株式会社製、40mmφ単軸押出機)にてペレットを得た。得られたペレットから、150ton射出成形機(FANUC製)を使用し、250℃の温度でASTMの1号ダンベルを成形した。
【0023】(ニ)糸ひき性評価上記のようにして成形したASTM1号ダンベルを用いて下記の糸ひき性の評価を実施し、結果を表3を示した。試験は、所定の温度(表面温度)に加熱したアルミ製の平板に、射出成形にて得られたASTM1号ダンベルを5kgf/cm2 の圧力で60秒間押しつけた後、このダンベルを500mm/minの速度で引き上げた時に融着面に発生した糸の長さ(cm)を測定した。
【0024】
【表3】

【0025】表3の結果から明らかなように、熱板融着温度を400℃程度の高温条件とすることにより、融着時の糸ひき性が大幅に改善される。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
【公開番号】 特開平11−273406
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−75565