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【発明の名称】 車両用ランプ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】手島 孝哉

【氏名】丹下 勝博

【要約】 【課題】ランプハウジングの所要個所に特定の銀メッキ層を備える反射膜が設けられた車両用ランプ、特に、ダイスライド射出成形法によってレンズとランプハウジングとが一体に成形された車両用ランプ及びその製造方法を提供する。

【解決手段】ランプハウジングの所要個所に、アルコキシチタニウムエステルと、エポキシシラン又はエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方とを含有するアルキッド樹脂塗料等を塗布し、乾燥させてアンダーコート層を形成し、その表面に特定の銀鏡反応によって銀メッキ層を形成し、これらアンダーコート層と銀メッキ層とを備える反射膜が設けられた車両用ランプを得る。また、ダイスライド射出成形法によって一体に形成されたレンズとランプハウジングとを備え、特に、そのランプハウジングの外表面に上記の特定のアンダーコート層と銀メッキ層とを備える反射膜が設けられた車両用ランプを得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レンズとランプハウジングとを備え、該ランプハウジングの所要個所に反射膜が設けられている車両用ランプにおいて、該反射膜は、上記ランプハウジングの内表面又は外表面に形成されるアンダーコート層と、該アンダーコート層の表面に形成される銀メッキ層とを有し、該アンダーコート層は、アルコキシチタニウムエステルと、エポキシ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方とを含有する塗料からなるアンダーコート剤を乾燥させ、形成させたものであることを特徴とする車両用ランプ。
【請求項2】 上記アルコキシチタニウムエステルは、ブチルチタネートダイマー又はテトラ−n−ブチルチタネートの重合体である請求項1記載の車両用ランプ。
【請求項3】 上記塗料に含まれる樹脂100重量部に対して、上記アルコキシチタニウムエステルは10〜25重量部である請求項1又は2記載の車両用ランプ。
【請求項4】 上記塗料に含まれる樹脂100重量部に対して、上記エポキシ基を有するシランカップリング剤は0.5〜5重量部であり、上記エポキシ樹脂は5〜15重量部である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の車両用ランプ。
【請求項5】 ダイスライド射出成形法によって一体に形成されたレンズとランプハウジングとを備えることを特徴とする車両用ランプ。
【請求項6】 上記ランプハウジングの外表面の所要個所に反射膜が設けられている請求項5記載の車両用ランプ。
【請求項7】 上記反射膜は、銀イオンを還元剤によって還元させて形成される銀メッキ層を備えるものである請求項6記載の車両用ランプ。
【請求項8】 ダイスライド射出成形法によって車両用ランプを製造する方法であって、1次射出工程において、一方の金型によってレンズを成形し、他方の金型によってランプハウジングを成形した後、型開きし、その後、上記レンズと上記ランプハウジングとが相対向する位置まで可動金型を移動させ、次いで、型閉めし、その後、2次射出工程において、上記レンズと上記ランプハウジングとの接触面の外周縁部に樹脂を射出し、上記レンズと上記ランプハウジングとを一体に接合することを特徴とする車両用ランプの製造方法。
【請求項9】 上記レンズと上記ランプハウジングとを一体に接合した後、上記ランプハウジングの外表面に、アルコキシチタニウムエステルと、エポキシ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方とを含有する塗料からなるアンダーコート剤を塗布し、乾燥させて、アンダーコート層を形成し、その後、該アンダーコート層の表面に、銀イオンを含有する水溶液と、還元剤を含有する水溶液とを塗布し、乾燥させることにより銀メッキ層を形成する請求項8記載の車両用ランプの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ランプハウジングの所定個所に、特定の組成のアンダーコート層と銀メッキ層とを有する反射膜が設けられた車両用ランプに関する。また、本発明は、ダイスライド射出成形法によって一体に形成されたレンズとランプハウジングとを備える車両用ランプ及びその製造方法に関する。このレンズとランプハウジングとが一体に形成された車両用ランプの、ランプハウジングの、特に、外表面に上記の特定の構成の反射膜を設けることにより、ランプ内への水、埃等の侵入が確実に防止され、且つ集光性能及び反射性能に優れた車両用ランプとすることができる。
【0002】
【従来の技術】車両用ランプのランプハウジングの内表面には、従来より、アルミニウム箔が貼着され、或いはアルミニウムが蒸着され、被膜が形成されて、集光及び反射がなされている。これらアルミニウム箔或いは蒸着被膜は所要の反射性能等を備え、特に問題なく使用されている。しかし、その集光、反射の性能は必ずしも十分ではないこともあり、より優れた性能を有する反射膜として、銀の皮膜の採用が考えられる。特に、簡易な操作、工程によって形成することがき、耐久性等に優れ、美しい外観を有する反射膜が設けられた車両用ランプが望まれている。
【0003】銀の皮膜を形成する方法としては、電気メッキ法、真空蒸着法及びホットスタンピング法等が挙げられるが、いずれも特定の装置を必要とし、操作も相当に複雑である。また、銀鏡反応を利用した化学メッキ法では、簡易な装置によって皮膜を形成することができるが、操作、工程は煩雑である。特に、集光、反射の性能に優れた銀メッキ層を得るためには、多くの処理工程が必要となり、且つそれらの工程を高度に管理しなければならない。尚、従来の化学メッキ法では、アンダーコート層と銀メッキ層との密着性も十分とはいえず、耐久性等、物性面からの改良も必要である。
【0004】また、従来、車両用ランプは、その断面を図2に示すように、別体として成形されたレンズ1とランプハウジング2とを組み合わせることにより構成されている。これらは、例えば、ランプハウジングの前部開口周縁に設けられた凹部と、レンズの内面周縁に設けられた凸部とを嵌合させ、嵌合部5にホットメルト接着剤6等を充填して、接合し、シールすることにより一体に形成される。この車両用ランプに使用されている光源バルブ8は、点灯時、相当に発熱する。そのため、レンズ及びランプハウジングを構成している樹脂は相応の耐熱性を必要とし、通常、80〜130℃程度の温度に相当時間耐えられる樹脂が用いられている。
【0005】光源バルブの発熱に耐えられる樹脂として、従来、ランプハウジングを構成する樹脂としてはタルク等の無機充填剤を配合したポリプロピレン等が使用されている。また、レンズを構成する樹脂としては、耐熱性の他に優れた透明性が要求されるため、ポリカーボネート或いはアクリル樹脂が用いられている。そして、ランプハウジングの内表面には、通常、アルミニウムからなる反射膜が設けられている。この反射膜は、塗装法、真空蒸着法、ホットスタンピング法などの常法によって形成されている。
【0006】しかし、レンズとランプハウジングの所要部位を嵌合し、接着剤等を充填し、接合し、シールした従来の車両用ランプでは、嵌合部を長期に渡って確実にシールすることは容易ではない。また、経時による接着剤等の劣化も避けられず、水、埃等がランプ内に侵入することもある。更に、従来の車両用ランプでは、ランプハウジングが不透明であるため、反射膜は必然的にランプハウジングの内表面に形成することになる。しかし、このランプハウジングの内面の凹部に、塗装、蒸着等、従来の方法によって均一な厚さを有する所要の反射膜を形成することは容易ではない。また、所定の膜厚とし、反射率を調整し、且つ反射率のばらつきの少ない反射膜とすることも容易ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、銀メッキ層を備える反射膜が設けられ、十分な密着性及び耐久性等を有し、且つ集光性能及び反射性能に優れた車両用ランプを提供することを目的とする。また、本発明は、レンズとランプハウジングとの一体性に優れ、少なくともこれらを接合した部位からの水、埃等の侵入が防止される車両用ランプ及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明においては、ランプハウジングを着色或いは無色透明とすることにより、ランプハウジングの外表面に反射膜を設けることができ、優れた集光、反射の性能を有する反射膜が設けられた車両用ランプを容易に得ることができる。特に、特定の銀鏡反応を利用することにより、短時間で、効率よく均一な厚さの反射膜を形成することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1発明の車両用ランプは、レンズとランプハウジングとを備え、該ランプハウジングの所要個所に反射膜が設けられている車両用ランプにおいて、該反射膜は、上記ランプハウジングの内表面又は外表面に形成されるアンダーコート層と、該アンダーコート層の表面に形成される銀メッキ層とを有し、該アンダーコート層は、アルコキシチタニウムエステルと、エポキシ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方とを含有する塗料からなるアンダーコート剤を乾燥させ、形成させたものであることを特徴とする。
【0009】上記「車両用ランプ」は、従来のようにレンズとランプハウジングとが別体となったものでもよいが、これらを一体に形成した車両用ランプでは、埃、水等のランプ内への侵入が確実に防止されるため好ましい。また、車両用ランプでは、通常、ランプハウジングには集光、反射のための反射膜が設けられる。この反射膜は、ランプハウジングが不透明である場合は、内表面に設けざるを得ない。また、ランプハウジングが透明であれば、外表面又は内表面のいずれに設けることもできる。しかし、ランプハウジングの外表面への反射膜の形成は、内表面に反射膜を設ける場合に比べ、非常に作業し易く、生産性も向上する。また、反射膜の厚さをより均一にすることができ、容易に反射率を調整することもできる。更に、たとえ膜厚のばらつき等があっても反射性能は何ら影響を受けることがない。そのため、レンズばかりではなく、ランプハウジングも透明な車両用ランプとすることが好ましい。
【0010】第1発明において、上記「反射膜」は、銀を含む溶液を用いて形成される上記「銀メッキ層」を備える。この銀鏡反応を利用した化学メッキ法によれば、短時間で、優れた集光性能及び反射性能を有する銀メッキ層を形成することができる。この銀メッキ層の形成においては、先ず、アンダーコート層を形成するためのアンダーコート剤の主成分となる上記「塗料」を選定する。この塗料としては、各種の合成樹脂塗料及びセルロース系塗料などを使用することができる。合成樹脂塗料としては、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アミノアルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びシリコーン樹脂などを含む塗料を用いることができる。
【0011】この塗料としては、特に、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂等を含む、常温で乾燥させることができる塗料が好ましい。これらの塗料は乾燥後の皮膜が強靭であり、銀メッキ層との接着性に優れ、且つ優れた外観を有する銀メッキ層を形成することができる。この合成樹脂塗料は、銀メッキ層の光沢等が反射膜の性能に及ぼす影響なども考慮し、適宜の組成に調製して保管する。尚、合成樹脂塗料のランプハウジングへの接着性が不十分である場合は、ランプハウジングの所定表面に透明なプライマーを塗布し、乾燥させて、プライマー層を形成してもよい。
【0012】また、塗料には上記「アルコキシチタニウムエステル」が配合される。このアルコキシチタニウムエステルとしては、ブチルチタネートダイマー(DBT)、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)及びその重合体、テトライソプロポキシチタン及びテトラステアリルオキシチタン等、各種のものを使用することができる。このアルコキシチタニウムエステルとしては、第2発明のように、DBT及びTBTの重合体等が、加水分解速度が遅く、安定であって好ましい。特に、DBTは、塗膜を乾燥した後、24時間を経過しても触媒機能が失われることがなく、作業上、非常に好都合である。更に、このDBTは、銀メッキ層とアンダーコート層との接着性を向上させる作用においても優れている。
【0013】塗料に配合されるアルコキシチタニウムエステルには、上記「エポキシ基を有するシランカップリング剤」(以下、「エポキシシラン」という。)又は上記「エポキシ樹脂」のうちの少なくとも一方を添加して触媒溶液を調製する。エポキシシランとしては、塗料との親和性が高いβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びγ−グリシジルオキシプロピルメトキシシラン等を使用することができる。これらのエポキシシランは、第4発明のように、塗料に含まれるアルキッド樹脂等の合成樹脂100重量部に対して「0.5〜5重量部」、特に2〜4重量部となるように添加する。この添加量が0.5重量部未満では、アンダーコート層と銀メッキ層との接着性が低下する傾向にある。一方、エポキシシランが過剰であると、アンダーコート層の硬さが低下したり、しわが発生したりするため好ましくない。
【0014】また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、フェノールノボラック型及びクレゾールノボラック型等、各種のものを用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、第4発明のように、塗料に含まれる合成樹脂100重量部に対して「5〜15重量部」、特に7〜13重量部となるように添加する。この添加量が5重量部未満では、アンダーコート層と銀メッキ層との接着性が低下する。一方、エポキシシランが過剰であると、アンダーコート層のレベリング性が低下する傾向にある。アルコキシチタニウムエステルに適量のエポキシシラン又はエポキシ樹脂を添加することにより、アンダーコート層と銀メッキ層との接着性を十分に向上させることができる。
【0015】上記「アンダーコート剤」は、保管しておいた合成樹脂塗料等の塗料に、エポキシシラン及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方が添加されたアルコキシチタニウムエステルを配合し、調製する。この配合量は、第3発明のように、塗料に含まれている合成樹脂100重量部に対して、アルコキシチタニウムエステルが「10〜25重量部」、特に15〜20重量部となるようにすることが好ましい。このアンダーコート剤をランプハウジングの内表面又は外表面の所要個所に塗布する。アルコキシチタニウムエステルは銀の析出を促進する作用がある。また、このアルコキシチタニウムエステルによってアンダコート剤の乾燥も容易となり、且つアンダコート剤と銀メッキ層との密着性が向上する。ランプハウジングへのアンダコート剤の塗布は、刷毛塗り、吹き付け等、適宜の方法によって行うことができるが、吹き付け塗布することが好ましい。
【0016】また、アルコキシチタニウエステルにエポキシシラン又はエポキシ樹脂を添加したものは、通常、一ヶ月程度は安定に保存することができるため使用直前に混合する必要はない。しかし、塗料に混合した後は、塗料の種類によってポットライフがまったく異なるため、所要量のみを混合することが好ましい。更に、アルコキシチタニウムエステルは湿分に敏感であり、相対湿度65%以下での使用が望ましい。湿度が高い場合は、かぶり現象、レベリング不足による凹凸の発生等によって、ランプハウジングの内表面又は外表面に所要の反射性能を有する銀メッキ層を形成することができないことがある。
【0017】アンダーコート剤の塗膜の厚さは2〜15ミクロン、特に3〜8ミクロン程度が好ましく、これを乾燥させて上記「アンダーコート層」を形成する。このアンダーコート層は、清浄な表面を有し、銀を析出させるための高い触媒活性を備え、且つ銀メッキ層との接着性に優れる。また、アンダーコート層の組成等によって、得られる銀メッキ層の光沢を所望によって容易に調整することもできる。アルコキシチタニウムエステルの触媒作用により析出する銀は、エステル残基とエポキシシラン或いはエポキシ樹脂によって、アンダーコート層の表面に固着され、容易に剥離することがない。
【0018】ランプハウジングの内表面又は外表面に形成されるアンダーコート剤からなる塗膜は、熱風乾燥炉等によって60〜70℃の温度で、15〜30分乾燥させる。乾燥が不十分であると、残留する溶媒の影響によって銀メッキ層の曇り、亀裂などを生ずることがある。一方、乾燥が過度であると、アルコキシチタニウムエステルの加水分解が進み過ぎ、銀の析出不足及びアンダーコート層との接着不良の原因となる。この乾燥の温度は可能な限り低いほうが、乾燥時間の許容範囲が広くなるため、操作上、好都合である。また、塗料の種類によっては、20〜35℃程度の常温において2〜4時間程度乾燥させてもよい。更に、乾燥工程において空気中の塵、埃等が付着しないよう注意する必要があるが、銀鏡反応の直前に、アンダーコート層の表面を純水或いはその他の薬品によって1〜2秒洗浄することによって対処することができる。
【0019】アンダーコート層の表面には銀イオンを含む水溶液が塗布される。この銀イオンを含む水溶液は、還元剤を含有する水溶液と同時に吹き付け、塗布することが好ましい。また、これらの水溶液を2頭ガンによって同時に吹き付けることがより好ましい。即ち、2頭ガンを有するスプレー塗布機等によって、アンモニア性硝酸銀水溶液及び還元性水溶液を同時に吹き付けることにより、1〜10秒、特に2〜7秒、更には2〜5秒程度の短時間のうちに良好な外観等を有する上記「銀メッキ層」を形成することができる。
【0020】上記両液の濃度が高いほど銀が速やかに析出し、濃度が薄ければ遅くなる。そのため、吹き付け面積の大小、作業環境の温度の高低等により濃度を適宜調整する必要がある。尚、銀イオンを含む水溶液のアンダーコート層に対する濡れ性を向上させるため、銀イオンを含む水溶液に界面活性剤を添加することもできる。銀イオンを含む水溶液はイオン性の溶液であるため、この界面活性剤としては、反応を生ずることのないノニオン系の界面活性剤、特に、親水基として酸化エチレン基及びヒドロキシル基を有するノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0021】また、銀イオンを含む水溶液は、20〜35℃程度の常温においては、アンモニア性硝酸銀水溶液では、0.3〜3重量%、特に0.6〜2重量%程度の硝酸銀を水に溶解させて調整する。また、還元性水溶液としては、グリオキザール等の還元剤を2〜10重量%、特に3〜7重量%程度含有する水溶液を用いる。そして、このような濃度の水溶液の等量をアンダーコート層の表面に同時に吹き付けることによって良好な銀メッキ層を形成することができる。
【0022】更に、作業環境の温度の影響は非常に大きく、10℃前後の低温では、上記の通常の濃度の水溶液では銀の析出はほとんどみられず、5〜6倍の濃度の水溶液を必要とするため不経済である。このような場合は水溶液の温度を高くする等の処置が必要となる。一方、温度が必要以上に高く、銀の析出の速度が大きすぎる場合は、銀メッキ層の曇りなどを生ずる。そのため、銀メッキ層が形成される速度、作業性、コスト等を総体的に考慮すれば、作業環境の温度を20〜35℃程度に設定することが好ましい。
【0023】また、必要に応じて銀メッキ層の表面にトップコート層を形成し、銀メッキ層を保護することもできる。このトップコート層としては、通常の電解メッキ法によって形成されるメッキ層の表面に用いられる塗料を使用することができる。しかし、この銀鏡反応によって形成される銀メッキ層は、一般的なアルミニウム皮膜などに比較してアンダーコート層との接着性が必ずしも優れているとはいえず、シリコーン変性樹脂塗料等の優れた接着性を有する塗料を用いることが好ましい。このトップコート層の厚さは特に限定はされず、銀メッキ層のすべてを覆ってアンダーコート層からの剥離を十分に防止することができる厚さとすればよい。
【0024】第5発明の車両用ランプは、ダイスライド射出成形法によって一体に成形されたレンズとランプハウジングとを備えることを特徴とする。
【0025】また、第8発明の車両用ランプの製造方法は、ダイスライド射出成形法によって車両用ランプを製造する方法であって、1次射出工程において、一方の金型によってレンズを成形し、他方の金型によってランプハウジングを成形した後、型開きし、その後、上記レンズと上記ランプハウジングとが相対向する位置まで可動金型を移動させ、次いで、型閉めし、その後、2次射出工程において、上記レンズと上記ランプハウジングとの接触面の外周縁部に樹脂を射出し、上記レンズと上記ランプハウジングとを一体に接合することを特徴とする。
【0026】車両用ランプのレンズとランプハウジングとは、ブロー成形法、射出成形法などによって、一体に形成することができる。車両用ランプは、レンズ及びランプハウジングともに複雑な局面により構成されているが、上記「ダイスライド射出成形法」によって容易に一体に形成することができる。また、1軸の射出成形機を使用した場合、レンズとランプハウジングとは同一の樹脂によって構成されることになるが、このレンズとランプハウジングとを一体に接合するために射出される樹脂としても同一或いは少なくとも同様の樹脂を使用することが好ましい。このように同一の樹脂からなるレンズとランプハウジングとを、同一或いは同様の樹脂によって接合することによって、より強固に一体となった車両用ランプを得ることができる。尚、この同様の樹脂とは、種類が同一であって分子量、結晶化度等が異なり、或いは各種の添加剤配合等を異にするものなどであることを意味する。
【0027】一方、2軸の射出成形機を用いれば、レンズとランプハウジングとを異なる樹脂によって構成することもできる。そして、レンズ及びランプハウジングを構成する樹脂のいずれとも十分な強度でもって接合し得る樹脂によってレンズとランプハウジングとを接合すれば、一体性、強度等、何ら問題のない車両用ランプを得ることができる。また、2軸の射出成形機によれば、レンズを着色透明或いは無色透明とし、ランプハウジングを不透明又は着色若しくは無色透明とすることもできる。特に、樹脂として、ポリカーボネート(以下、「PC」という。)又はポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」という。)等のアクリル樹脂を使用し、レンズ及びランプハウジングをともに着色若しくは無色透明とすることにより、実用性及び意匠性ともに高い車両用ランプとすることができる。尚、レンズは赤色、緑色、橙色、琥珀色、アンバ色等、ランプの種類によって所要の色に着色することができる。
【0028】車両用ランプでは、通常、ランプハウジングには反射膜が設けられるが、ダイスライド射出成形法によってレンズとランプハウジングとを一体に形成した場合、この反射膜は、第6発明のように、ランプハウジングの「外表面」の所要個所に設けられることになる。そのため、第5発明の車両用ランプでは、特に、2軸の射出成形機を用いた場合であっても、レンズばかりでなくランプハウジングも透明性に優れるPC又はPMMA等のアクリル樹脂によって形成することが好ましい。それによって優れた正反射率を有する車両用ランプとすることができる。PC又はPMMA等は、ランプハウジングを構成する樹脂として従来より使用されているタルク等の無機充填剤が配合されたポリプロピレンに比べて高価格である。しかし、剛性が高く、薄肉化することができるため、製品の価格の面で不利となることはない。
【0029】第5発明の車両用ランプでは、レンズとランプハウジングとがインラインで一体に接合される。そのため、反射膜は、上記のようにランプハウジングの外表面に形成されることになる。このようなランプハウジングの外表面への反射膜の形成は、内表面に反射膜を設ける場合に比べ、非常に作業し易く、生産性も向上する。また、反射膜の厚さをより均一にすることができ、容易に反射率を調整することができる。更に、たとえ膜厚のばらつき等があっても反射性能は何ら影響を受けることがない。この反射膜は、アルミニウム箔の貼着、或いは銀イオン等を含む溶液を塗布し、乾燥させることなどにより形成することができる。また、蒸着、スパッタリング等の方法によって製膜することもできるが、第7発明のように、銀メッキ層を備えるものとすることが好ましい。この銀メッキ層は、第9発明のように、第1発明の車両用ランプの場合と同様にして形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、ダイスライド射出成形法によってレンズとランプハウジングとを一体に形成する方法及びランプハウジングの外表面に、銀鏡反応によって反射膜を設ける方法について説明する。
(1)レンズとランプハウジングとの一体成形図3(a)は、1次射出工程により、可動金型Aと固定金型Bとの間に設けられた一方のキャビティにおいてレンズ1が成形され、他方のキャビティにおいてランプハウジング2が成形されている様子を表わしている。このようにしてPC又はPMMA等のアクリル樹脂からなるレンズ1とランプハウジング2とを成形した後、可動金型Aと固定金型Bとを型開きし、レンズ1が可動金型Aのキャビティに収容され、ランプハウジング2が固定金型Bのキャビティに収容されている様子を表わしているのが図3(b)である。
【0031】その後、図3(c)のように、油圧装置Cによって可動金型Aをスライドし、可動金型Aのキャビティに収容されているレンズ1を、固定金型Bに収容されているランプハウジング2と相対向する位置まで移動させる。次いで、レンズ1とランプハウジング2とが対向した位置で型閉めし、レンズ1とランプハウジング2とを、その端面周縁において一体に接触させた後、2次射出工程により、レンズ1とランプハウジング2との接触面の外周縁部に、好ましくはレンズ1及びランプハウジング2と同種の樹脂を射出し、レンズ1とランプハウジング2とを一体に接合した様子を表わしているのが図3(d)である。
【0032】(2)アンダーコート層、銀メッキ層及びトップコート層からなる反射膜の形成溶剤としてトルエンを用い、この溶剤34mlにアルキッド樹脂を30g溶解させて塗料を調製した。一方、DBT(三菱ガス化学株式会社製)5gにエポキシシラン(信越シリコーン株式会社製、商品名「KP−392」)1gを添加した。その後、このエポキシシランが添加されたDBTを塗料に配合し、攪拌、混合してアンダーコート剤を調製した。次いで、このアンダーコート剤を(1)において成形したランプハウジング2の外表面の所要個所にスプレー法によって塗布し、厚さ5ミクロンの塗膜を形成した。その後、熱風乾燥炉によって、65℃の温度で20分乾燥し、厚さ5ミクロンのアンダーコート層を形成した。
【0033】次いで、このアンダーコート層の表面に銀イオンを含む水溶液及び還元剤を含む水溶液を2頭ガンを有するスプレー塗布機によって吹き付け、塗布した。銀イオンを含む水溶液としては、1.5重量%の硝酸銀を含有する水溶液を使用した。また、還元剤を含む水溶液としては、グリオキザールを5重量%含有する水溶液を用いた。これら水溶液の温度も含め、作業環境の温度を25℃とし、両水溶液の等量を吹き付けた。数秒後には、曇りのない、且つ光沢のある美しい外観を有する銀メッキ層が形成された。この銀メッキ層の付着性(接着性)をJISK 5400の碁盤目法によって評価したところ、剥がれはほとんどなく、非常に優れた密着性を有することが分かった。
【0034】その後、この銀メッキ層の表面にシリコーン変性樹脂塗料(信越化学株式会社製、商品名「KR−5206」)を同様にスプレー法によって塗布し、厚さ5ミクロンの塗膜を形成した。次いで、これを熱風乾燥炉によって、75℃の温度で40分乾燥し、トップコート層を形成した。このトップコート層によって銀メッキ層は十分に保護されていた。
【0035】
【発明の効果】第1発明の車両用ランプでは、特定の組成を有し、ランプハウジングとの密着性に優れたアンダーコート層の表面に、銀メッキ層が形成される。そのため、簡易な操作、工程によって、集光、反射の性能に優れた反射膜を形成することができる。この反射膜は耐久性等にも優れる。
【0036】また、第5発明の車両用ランプでは、ダイスライド射出成形法によってレンズとランプハウジングとを一体に形成することにより、レンズとランプハウジングとの嵌合部におけるシール不良による水、埃等のランプ内への侵入が確実に防止される。更に、接着剤等のシール剤が不要となり、意匠性に優れた製品が得られる。また、嵌合のためのシール代も不要となり、ランプの幅を略光源バルブと同じ幅にすることも可能になり、製品の小型化が容易である。
【0037】更に、ランプハウジングを透明性に優れる樹脂によって構成することにより、その外表面に反射膜を成形することができ、作業がし易く、生産性が向上し、反射膜の膜厚を均一にすることができる。また、たとえ膜厚のばらつき等があったとしても反射膜の機能が何ら損なわれることがない。尚、レンズ、ランプハウジング及びこれらを一体に接合する樹脂として、同質或いは同様のものを使用すればリサイクルもし易い。更に、この車両用ランプでは、レンズ、ランプハウジングともレンズカット成形が可能であり、集光性能或いは意匠性に優れる。
【0038】また、第8発明の車両用ランプの製造方法によれば、第5発明のレンズとランプハウジングとが一体に形成され、優れた特性を有する車両用ランプを容易に製造することができる。この車両用ランプの製造方法では、レンズとランプハウジングとを2次射出工程において溶融し、接合するため一体性が非常に高い。更に、工程が簡易であり、金型を少なくすることができるため、製品コストを引き下げることもできる。
【出願人】 【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
【識別番号】597042641
【氏名又は名称】株式会社箔栄社
【出願日】 平成10年(1998)2月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
【公開番号】 特開平11−250702
【公開日】 平成11年(1999)9月17日
【出願番号】 特願平10−64664