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【発明の名称】 車輌用前照灯
【発明者】 【氏名】中村 浩一

【氏名】安間 英任

【氏名】相川 信治

【氏名】藁科 真理子

【要約】 【課題】1つの膜の形成により、灯室内における曇りを防止すると共に光源から出射される紫外線による前面レンズの変色を防止する。

【解決手段】ランプボデイ2と樹脂材料により形成された前面レンズ3とによって画成された灯室4内に光源として放電灯バルブ9を有する車輌用前照灯1であって、前面レンズの内面に防曇材料に紫外線吸収材料を混入して形成した紫外線吸収材料含有防曇膜12を塗布した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ランプボデイと樹脂材料により形成された前面レンズとによって画成された灯室内に光源として放電灯バルブを有する車輌用前照灯であって、前面レンズの内面に防曇材料に紫外線吸収材料を混入して形成した膜(以下、「紫外線吸収材料含有防曇膜」という。)を塗布したことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】 上記車輌用前照灯は、略楕円形状を為すリフレクターの前面開口部に投影レンズが組み付けられて形成された投射ユニットが上記灯室内に配置されて成る投射型前照灯であることを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】 上記防曇材料が、親水性重合体部分と疎水性重合体部分とから成るブロック共重合体に界面活性剤を含有した材料であり、上記紫外線吸収材料がベンゾトリアゾール系の材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】 紫外線吸収材料の防曇材料に対する重量比が10%以下であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車輌用前照灯。
【請求項5】 上記紫外線吸収材料含有防曇膜の膜厚が1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の車輌用前照灯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、1つの膜の形成により、灯室内における曇りを防止すると共に光源から出射される紫外線による前面レンズの変色を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ランプボデイと樹脂性の前面レンズとによって画成された灯室内に光源として放電灯バルブを有する車輌用前照灯があり、このような車輌用前照灯にあっては、特に、放電灯バルブから大きな紫外線エネルギーを有する光が出射され、紫外線によって前面レンズが変色(黄変)してしまう虞があり、中でも車輌用前照灯の前面レンズとして用いられることの多いポリカーボネート(PC)樹脂製のレンズにあっては、紫外線の照射によって特に変色し易い。
【0003】そこで、このような車輌用前照灯においては、例えば、ランプボデイの内面のうち反射面として形成された部分に紫外線吸収材料から成る紫外線吸収膜を塗布し前面レンズの変色を防止しているものがある。
【0004】そして、このような車輌用前照灯において、灯室内の曇りを防止するために、例えば、前面レンズの内面に防曇材料から成る防曇膜を塗布したものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記した従来の車輌用前照灯のように、紫外線吸収膜の塗布により紫外線による前面レンズの変色を防止すると共に防曇膜の塗布により灯室内の曇りを防止する場合にあっては、紫外線吸収膜と防曇膜とを各別に灯室内の別の部分に塗布するため、膜の塗布作業を各別に行わなければならず、手間がかかると共に作業時間が長くなりコスト高となってしまうという問題がある。
【0006】そこで、本発明車輌用前照灯は、上記した問題点を克服し、1つの膜の形成により、灯室内における曇りを防止すると共に光源から出射される紫外線による前面レンズの変色を防止することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、前面レンズの内面に防曇材料に紫外線吸収材料を混入して形成した紫外線吸収材料含有防曇膜を塗布したものである。
【0008】従って、本発明車輌用前照灯にあっては、灯室内における曇りを防止すると共に光源から出射される紫外線による前面レンズの変色を防止するために、灯室内の別の部分に各別に防曇膜と紫外線吸収膜とを塗布する必要がない。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明車輌用前照灯の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0010】尚、以下に示した実施の形態は、本発明車輌用前照灯を投影器の像映原理を利用した所謂投射型前照灯に適用したものである。
【0011】車輌用前照灯1はランプボデイ2とその前面開口を覆う樹脂材料、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂により形成された前面レンズ3とによって画成された灯室4内に投射ユニット5が配置されて成る。そして、前面レンズ3は略前後方向を向く主部3aと該主部3aの周縁から後方へ向けて突出された周壁部3bが一体に形成されて成り、周壁部3bの後端部がランプボデイ2の開口縁部に結合されている。
【0012】投射ユニット5は略楕円形状に形成されたリフレクター6の前方に略円筒状のフィッティング7を介して投影レンズ8が取着されて成り、リフレクター6には光源として放電灯バルブ9が取着されている。そして、フィッティング7には遮光板10が一体に設けられている。また、灯室4内の前部には、前方から見て灯室4内における投影レンズ8の周辺の部分を覆うエクステンション11が配置されている。
【0013】前面レンズ3の主部3aの内面には紫外線吸収材料含有防曇膜12が塗布されている。紫外線吸収材料含有防曇膜12は防曇材料に紫外線吸収材料を混入して成る材料であり、前面レンズ3の内面に吹き付けることにより塗布されている。
【0014】防曇材料としては、親水性重合体部分と疎水性重合体部分とから成るブロック共重合体に界面活性剤を含有した材料が用いられている。
【0015】親水性重合体部分と疎水性重合体部分とから成るブロック共重合体としては、例えば、ラジカル重合、カチオン開環重合、アニオンリビング重合、カチオンリビング重合等の公知の各種の製造方法によるブロック共重合体が挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤と陰イオン系界面活性剤の組み合せ等から成る活性剤が挙げられる。
【0016】尚、上記したブロック共重合体における親水性重合体部分と疎水性重合体部分との重量比は、界面活性剤とのなじみ等を考慮すると親水性重合体部分が少なくとも5%以上必要であり、また、耐水性や被塗装物との密着性等を考慮すると疎水性重合体部分が少なくとも5%以上必要であることが確認されている(特開平2−255854号)。
【0017】上記した親水性重合体部分と疎水性重合体部分とから成るブロック共重合体に界面活性剤を含む材料は、レンズ等の曇りを防止する防曇材料として優れ、また、被塗装物に対する良好な密着性や高い塗膜強度を有することが実証されている(特開平2−255854号)。
【0018】紫外線吸収材料としては、ベンゾトリアゾール系の材料、例えば、2(2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2´−ヒドロキシ−3´、5´−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2´−ヒドロキシ−3´−第3ブチル−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が用いられている。
【0019】紫外線吸収材料としては、従来から酸化亜鉛を使用することが多いが、酸化亜鉛は比較的高価でありコスト高となってしまうという欠点があった。
【0020】しかし、本発明にあっては、紫外線吸収材料として酸化亜鉛に比し安価なベンゾトリアゾール系の材料を用いることにより、車輌用前照灯のコストの低減を図ることができる。
【0021】尚、紫外線吸収材料としては、上記したベンゾトリアゾール系の材料の他、ベンゾフェノン系の材料、シアノアクリレート系の材料、サリシレート系の材料等を用いてもよい。
【0022】また、上記した防曇材料に対する紫外線吸収材料に対する重量比は10%以下が好適である。紫外線吸収材料の重量比が10%を超えると、後述するように防曇材料の効果が低下してしまう、即ち、灯室4内に曇りが発生し易いからである。
【0023】しかして、放電灯バルブ9から出射された光はリフレクター6の内面6a、即ち、反射面で反射され投影レンズ8及び前面レンズ3を介して外部に照射される。このとき放電灯バルブ9から出射された光は遮光板10の上縁付近に集光されて所定の光がカットされ、すれ違いビーム特有の所謂カットラインが形成される。
【0024】放電灯バルブ9から光が出射され、出射された光が前面レンズ3を透過しようとする際にはその内面に塗布された紫外線吸収材料含有防曇膜12によって紫外線がカットされる。
【0025】また、紫外線吸収材料含有防曇膜12に含まれる防曇材料によって灯室4内に曇りが発生せず、曇りによるレンズの配光特性の低下を来すようなことがない。
【0026】尚、上記した車輌用前照灯1は略楕円形状を為すリフレクター6の前面開口部に投影レンズ8が組み付けられて形成された投射ユニット5が灯室4内に配置されて成る投射型前照灯であり集光度が大きいため、紫外線によって前面レンズ3が特に変色し易いが、紫外線吸収材料含有防曇膜12によって前面レンズ3の紫外線による変色の防止が図られる。従って、紫外線吸収材料含有防曇膜12がこのような投射型前照灯に用いられた場合には紫外線を吸収するという効果が特に有効に発揮される。
【0027】図2に紫外線吸収材料含有防曇膜12の紫外線吸収効果についてのデータを示す。
【0028】図2に示すデータはPC樹脂により形成されたレンズに、異なる重量比(防曇材料に対する紫外線吸収材料の重量%)を有する紫外線吸収材料含有防曇膜12を塗布した場合の光の透過率と波長との関係を示したものである。尚、図2中、重量%0(図2のA)のデータは紫外線吸収材料が含まれていない防曇材料のみから成る材料についてのデータである。
【0029】紫外線の波長は、一般に、波長が300乃至400nmであることが知られており、図2から明らかなように、紫外線吸収材料含有防曇膜12を塗布した場合には、紫外線が透過されにくくなることが解かる。
【0030】図3に紫外線吸収材料含有防曇膜12の防曇材料に対する紫外線吸収材料の重量比の相違による防曇性能を表したデータを示す。
【0031】図3のデータは、各重量比(防曇材料に対する紫外線吸収材料の重量比)を有する紫外線吸収材料含有防曇膜12について、呼気防曇性テスト、スチームテスト(80°C)、40°Cの温水に240時間浸漬後の呼気防曇性テストの3項目の評価を行った結果を表している。
【0032】図3中の上段の呼気防曇性テストについては対象となる紫外線吸収材料含有防曇膜12が塗布されたレンズに呼気を吹きかけた結果を示し、中段のスチームテストについては対象となる紫外線吸収材料含有防曇膜12が塗布されたレンズを蒸気にさらした結果を示し、下段の温水に浸漬後の呼気防曇性テストについては対象となる紫外線吸収材料含有防曇膜12が塗布されたレンズを40°Cの温水に240時間浸漬した後に呼気を吹きかけた結果を示すものである。
【0033】図3に示すように、重量比が10%を超えると温水に浸漬後の呼気防曇性テストにおいてレンズに稍曇りが生じ、また、重量比が15%になると呼気防曇性テスト及びスチームテストにおいてレンズに稍曇りが生じると共に温水に浸漬後の呼気防曇性テストにおいてレンズの曇りが目立って生じるという結果が得られた。
【0034】従って、紫外線吸収材料含有防曇膜12については紫外線吸収材料の重量比が10%を超えると防曇材料の効果に影響が現われ防曇性能が低下してしまうが、重量比が10%以下であれば優れた防曇性能を維持できることが確認された。
【0035】図4に紫外線吸収材料含有防曇膜12の膜厚の相違による性能を表したデータを示す。
【0036】図4のデータは、各膜厚を有する紫外線吸収材料含有防曇膜12について、初期の外観、即ち、レンズに塗装した直後の外観、レンズに対する密着性、防曇性能の持続性(耐久性)の3項目の評価を行った結果を表している。
【0037】図4に示すように、膜厚0.5μmでは特に表面平滑性に欠け初期外観が劣るという結果が得られた。また、膜厚11μmではレンズの表面に滑剤等が白い粉末状や曇り模様の状態に吹き出るブルーミング現象の発生が顕著であると共にレンズに対する密着性も劣るという結果が得られた。
【0038】以上のように、紫外線吸収材料含有防曇膜12においては、膜厚0.5μm以下及び11μm以上では紫外線吸収材料含有防曇膜12としての性能に問題がある。従って、紫外線吸収材料含有防曇膜12は1μm以上10μm以下が好適な膜厚であるという結果が得られ、この膜厚の範囲内では紫外線吸収材料含有防曇膜12としての優れた性能を発揮する。
【0039】
【発明の効果】以上に記載したところから明らかなように、本発明車輌用前照灯は、ランプボデイと樹脂材料により形成された前面レンズとによって画成された灯室内に光源として放電灯バルブを有する車輌用前照灯であって、前面レンズの内面に防曇材料に紫外線吸収材料を混入して形成した紫外線吸収材料含有防曇膜を塗布したので、1つの膜の塗布により灯室内における曇りが防止されると共に光源から出射される紫外線による前面レンズの変色が防止されるため、灯室内の別の部分に各別に防曇膜と紫外線吸収膜とを塗布する必要がない。
【0040】従って、従来の膜の塗布作業に比し、手間がかからないと共に作業時間が短縮され、車輌用前照灯の製造コストの低減を図ることができる。
【0041】請求項2に記載した発明にあっては、上記車輌用前照灯を、略楕円形状を為すリフレクターの前面開口部に投影レンズが組み付けられて形成された投射ユニットが上記灯室内に配置されて成る投射型前照灯としたものであり、該投射型前照灯は集光度が大きいため紫外線によって前面レンズが特に変色し易いが、紫外線吸収材料含有防曇膜によって前面レンズの紫外線による変色の防止が図られ、紫外線吸収材料含有防曇膜がこのような投射型前照灯に用いられた場合には紫外線を吸収するという効果が特に有効に発揮される。
【0042】請求項3に記載した発明にあっては、上記防曇材料を、親水性重合体部分と疎水性重合体部分とから成るブロック共重合体に界面活性剤を含む材料であり、上記紫外線吸収材料がベンゾトリアゾール系の材料としたので、レンズの曇りの防止を図ることができレンズに対する良好な密着性や高い塗膜強度が得られると共にベンゾトリアゾール系の材料が紫外線吸収材料として用いられることの多い材料、例えば、酸化亜鉛に比し安価であり、車輌用前照灯の製造コストの低減を図ることができる。
【0043】請求項4に記載した発明にあっては、紫外線吸収材料の防曇材料に対する重量比を10%以下としたので、防曇材料の効果が低下せず灯室内の曇りが発生してしまうことがない。
【0044】請求項5に記載した発明にあっては、上記紫外線吸収材料含有防曇膜の膜厚を1μm以上10μm以下としたので、膜厚が薄すぎて表面平滑性に欠けるようなことがなく、また、膜厚が厚すぎてレンズの外観等に悪影響を及ぼすブルーミング現象の発生やレンズに対する密着性が低下することがなく、紫外線吸収材料含有防曇膜としての優れた性能を発揮する。
【0045】尚、上記した実施の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際しての具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成9年(1997)12月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小松 祐治
【公開番号】 特開平11−185502
【公開日】 平成11年(1999)7月9日
【出願番号】 特願平9−354981